特許第6771346号(P6771346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771346電子デバイスの製造方法、および、電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771346
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法、および、電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20201012BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20201012BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H05K3/32 B
   H05K3/12 610D
   H01L21/60 311S
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-185462(P2016-185462)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-49982(P2018-49982A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半谷 明彦
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−13867(JP,A)
【文献】 特開2006−303353(JP,A)
【文献】 特開2014−17364(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/072010(WO,A1)
【文献】 特開2015−142120(JP,A)
【文献】 特開2016−184618(JP,A)
【文献】 特開2016−184621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S41/00−45/70
H01L21/60,33/00
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液、もしくは、絶縁材料層で被覆された前記導電性粒子が分散された溶液を、光を透過する基板の表面に塗布し、前記絶縁材料で被覆された前記導電性粒子の膜を形成する第1工程と、
電極を有する電子部品を、前記電極が前記膜に接するように搭載する第2工程と、
前記膜の前記電極直下の領域に、前記基板の裏面側から前記基板を透過させて所定の照射径の光束を照射し、前記膜の一部の領域のみの前記導電性粒子を焼結し、前記電極および前記基板の前記電極に対向する面にそれぞれ固着した導電性の電極接続領域を形成する第3工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第3工程で形成される前記電極接続領域は、多孔質であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第3工程で照射する前記光束は、レーザー光であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記光束の前記膜への照射径は、前記電極よりも小さいことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第1工程の後で前記第2工程の前、または、前記第2工程の後で第3工程の前に、前記第3工程で前記電極接続領域を形成する領域以外の、前記膜の一部に前記基板の裏面側から前記基板を透過させて、所定のパターンに光束を照射し、前記光束が照射されたパターンの前記導電性粒子を焼結することにより、前記第3工程で前記電極接続領域が形成された場合に前記電極接続領域と接する回路パターンを形成する第4工程をさらに有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第3工程の後に、前記膜の一部に、前記基板の裏面側から前記基板を透過させて、所定のパターンに光束を照射し、前記光束が照射されたパターンの前記導電性粒子を焼結することにより、前記電極接続領域と接続された回路パターンを形成する第4工程をさらに有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第3工程および前記第4工程の少なくとも一方では、前記光束を走査することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし6のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第4工程の光束の照射条件は、前記第3工程の光束の照射条件とは異なることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記光束の前記膜への単位面積当たりの照射エネルギーは、前記第3工程の方が第4工程よりも大きいことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液、もしくは、絶縁材料層で被覆された前記導電性粒子が分散された溶液を、前記基板の表面に塗布することにより、前記第1工程で形成する膜よりも厚い、前記絶縁材料で被覆された前記導電性粒子の第2の膜を形成する第5工程と、
前記第2の膜に対して、前記基板の裏面側から前記基板を透過させて光束を照射し、前記光束によって前記第2の膜の導電性粒子を焼結することにより、第2の回路パターンを形成する第6工程とをさらに有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第5および第6工程を前記第1工程の前に行うことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第5工程を前記第4工程よりも前のいずれかの段階に行い、前記第6工程を前記第4工程と同時または連続して行うことにより、前記膜と前記第2の膜に光束を同時にまたは連続して照射することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第1工程で形成される前記膜に含まれる前記導電性粒子は、粒径が1μm未満であるナノサイズ粒子を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第1工程で形成される前記膜に含まれる前記導電性粒子は、前記ナノサイズ粒子に加えて、粒径が1μm以上であるマイクロサイズ粒子をさらに含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第5工程で形成される前記第2の膜に含まれる前記導電性粒子は、粒径1μm未満のナノサイズ粒子と、粒径が1μm以上であるマイクロサイズ粒子とを含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
請求項10、11、12および15のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記第6工程で形成される前記第2の回路パターンは、多孔質であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記基板には、予め遮光性の回路パターンが形成され、前記第2工程では、前記電子部品の前記電極は、前記遮光性の回路パターンと一部が重なるように配置され、
前記第3工程では、前記基板の裏面側から、前記電極の直下の前記膜のさらに直下の、前記遮光性の回路パターンの一部に形成された光透過部に前記光束を照射することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記基板には、予め光透過性の回路パターンが形成され、前記第2工程では、前記電子部品の前記電極は、前記光透過性の回路パターンと一部が重なるように配置され、
前記第3工程では、前記基板の裏面側から、前記電極の直下の前記膜のさらに直下の、前記光透過性の回路パターンに前記光束を照射することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
光透過性の基板と、前記基板に配置された回路パターンと、前記基板上に搭載された。電極を有する電子部品と、前記回路パターンと前記電極とを接続する電極接続領域とを有し、
前記回路パターンと前記電極接続領域は、いずれも多孔質の導電体からなり、前記回路パターンは、前記基板の表面に、前記電極接続領域は、前記基板の表面と前記電極に、それぞれ直接固着していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項20】
請求項19の電子デバイスであって、前記回路パターンは、光透過性であることを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な基板上に電子部品を搭載した電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の基板への実装方法としては、予め回路パターンが形成された基板にAuワイヤなどでバンプボールを形成し、その上に電子部品を搭載し、熱と超音波の照射により電気的に接続するとともに、電子部品を回路パターンに固着する方法が知られている。また、基板上の回路パターンにはんだペーストなどを塗布し、その上に電子部品を搭載し、加熱してはんだを溶融することで電気的に接続するとともに、電子部品を回路パターンに固着する方法も知られている。
【0003】
回路パターンの形成方法としては、銅箔をマスキングしてエッチングする方法が広く用いられているが、この方法は、製造プロセスが複雑で時間がかかり、製造装置も高価である。そのため、特許文献1には、電子部品を実装した基板の製造プロセスを容易にし、生産性を向上させる技術が開示されている。この技術では、金属ナノ粒子とポリマー等の分散剤とを液状媒体に分散させた導電性インクによって配線パターンを基板上に印刷等で形成した後、配線パターン上に電子部品をその外部端子が没入するように搭載し、さらに基板の裏面側から光を照射することにより配線パターンの金属ナノ粒子を光焼成する。また、配線パターンを印刷した後、液状媒体の含有量が0.01〜3質量%の範囲になるように、液状媒体を除去した後、電子部品を搭載している。これにより、電子部品を配線パターンに搭載する際に配線パターンが崩れるのを防ぐとともに、光焼成時に配線パターンの内部に空孔が生じるのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−17364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、金属ナノ粒子を分散した液状媒体を予め配線パターンの形状に印刷し、基板裏面から基板全体に光を照射することにより金属ナノ粒子を光焼成するため、金属ナノ粒子を焼成できる強度の強い光が、基板全体に照射される。このため、薄いフレキシブルな樹脂製の基板を用いた場合、光照射により基板が変形する可能性がある。また、配線パターンの内部に空孔が生じないように金属ナノ粒子を光焼成しているため、焼成後の配線パターンは可撓性が小さく、フレキシブルな基板を用いた場合には、配線パターンにひび割れが生じたり、基板からはがれたりする可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、導電性粒子を光焼成することにより、基板に電子部品を実装する方法でありながら、光照射によるダメージを基板に与えにくく、かつ、フレキシブルな導電性領域を形成可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、本発明の電子デバイスの製造方法は、導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液、もしくは、絶縁材料層で被覆された導電性粒子が分散された溶液を、光を透過する基板の表面に塗布し、絶縁材料で被覆された導電性粒子の膜を形成する第1工程と、電極を有する電子部品を、電極が膜に接するように搭載する第2工程と、膜の電極直下の領域に、基板の裏面側から基板を透過させて所定のサイズの光束を照射し、膜の一部の領域のみの導電性粒子を焼結し、電極および基板の電極に対向する面にそれぞれ固着した導電性の電極接続領域を形成する第3工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子デバイスの製造方法は、導電性粒子を焼成する光によって基板にダメージを与えにくく、かつ、フレキシブルな導電性領域を形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)〜(c)第1の実施形態の電子デバイスの製造方法を示す説明図。
図2】第1の実施形態で形成された電極接続領域40が多孔質であることを示す説明図。
図3】(a)〜(d)第2の実施形態の電子デバイスの製造方法を示す説明図。
図4】(a)〜(d)第2の実施形態の電子デバイスの別の製造方法を示す説明図。
図5】(a)〜(d)第2の実施形態の電子デバイスのさらに別の製造方法を示す説明図。
図6】(a)〜(f)第3の実施形態の電子デバイスの製造方法を示す説明図。
図7】(a)〜(f)第3の実施形態の電子デバイスの製造方法を示す説明図。
図8】第4の実施形態で製造される電子デバイスの(a)基板10の上面に垂直な方向の断面図、(b)は、C−C’断面図。
図9】第5の実施形態の電子デバイスの(a)上面図、(b)A−A断面図、(c)B−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態の電子デバイスの製造方法について説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の電子デバイスの製造方法を図1(a)〜(c)を用いて説明する。
【0012】
まず、図1(a)のように、光を透過する基板10を用意し、導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液、もしくは、絶縁材料層で被覆された導電性粒子が分散された溶液を、基板10の表面に所望の形状で塗布する。これにより、基板10の表面に、絶縁材料で被覆された導電性粒子の膜41を形成する。基板10には、予め配線パターン11が形成されていてもよい。予め配線パターン11を配置する場合、配線パターン11は図1(a)、(b)、(c)に記載されているように基板10の凹部に埋め込まれた形状で配置されていてもよいし、基板10の上面に配線パターン11が凸部となるように配置されていてもよい。必要に応じて膜41を加熱し、溶媒を蒸発させて乾燥させる。膜41内には、たとえば導電性ナノ粒子に代表される導電性粒子が分散され、導電性ナノ粒子の周囲は絶縁材料で覆われた状態である。よって、本工程では、膜41は非導電性である。
【0013】
つぎに、図1(b)のように、電極31を有する電子部品30を、電極31が膜41に接するように搭載する。
【0014】
つぎに、図1(c)のように、膜41の電極31直下の領域に、基板10の裏面側から基板10を透過させて所定の照射径の光束12を照射する。膜41の光束12が照射された領域は、導電性粒子が光のエネルギーを吸収して温度が上昇する。これにより、導電性粒子は、その粒子を構成する材料のバルクの融点よりも低い温度で溶融するとともに、導電性粒子の温度上昇に伴い、周囲の絶縁材料層は多くが蒸発し、一部が残存した場合で軟化する。そのため、溶融した導電性ナノ粒子は、隣接する粒子と直接融合するか、もしくは、軟化した絶縁材料層を突き破って隣接する粒子と融合する。これにより、導電性粒子同士が焼結され、導電性の電極接続領域40が形成される。このとき、溶融した導電性粒子は、直接接している電極31の表面および基板10の表面にもそれぞれ固着するため、形成される導電性の電極接続領域40は、電極31および基板10の電極31に対向する面にそれぞれ固着する。電極31の直下の基板10の表面に配線パターン11が形成されている場合には、電極接続領域40は配線パターンの表面にも固着し、電気的に接続される。これにより、基板10上に電子部品30を実装した電子デバイスを製造することができる。
【0015】
上述のように、膜41の光束12の照射を受けた領域の導電性粒子は、光を照射することにより温度が上昇する。この熱は、導電性粒子の焼結に用いられるとともに、周囲の膜41、基板10、ならびに、電極31を介して電子部品30に伝導し、放熱される。よって、膜41のうち光束12の照射を受けた領域のみ、もしくは、その光束12の照射を受けた領域とその近傍領域のみが、導電性粒子が焼結される温度に到達し、その外側領域の膜41や基板10および電子部品30の温度は、それらを構成する材料を溶融させたり変質させたりする温度には到達しない。
【0016】
すなわち、本実施形態では、膜41の一部領域(電極31の直下領域)のみに光束12を照射することにより、基板10や電子部品30のみならず、周囲の膜41にも熱伝導して放熱することができるため、基板10や電子部品30の温度上昇を抑制することができる。よって、基板10が薄いフレキシブルな樹脂等のように、熱により変形を生じやすいものであっても、光焼結による変形や歪、白濁等の変質を防止することができる。また、基板10がフレキシブルである場合にはそのフレキシブル性を維持することができる。さらに、電子部品30に対しても、熱によるダメージを与えにくい。
【0017】
図1(c)の工程では、形成される電極接続領域40が図2のように多孔質(ポーラス)となるように形成することが望ましい。すなわち、隣接する導電性粒子同士は、全体が完全に溶融して混ざりあうのではなく、接触する界面で焼結され、焼結後の導電性粒子間の少なくとも一部に空孔40aを形成するような温度で光焼結することが望ましい。例えば、光束12として、レーザー光を用い、通過する基板10を溶融させない程度の照射強度で膜41に照射することにより、光束12が照射された膜41の領域に短時間に比較的大きなエネルギーを投入でき、導電性粒子を加熱して溶融させ焼結できるとともに、レーザー光の光束12の照射を停止することにより、周囲の膜41や基板10や電子部品30への熱伝導により速やかに冷却することができるため、多孔質の電極接続領域40を形成することができる。
【0018】
言い換えると、膜41をレーザー光の光束12で焼結するときに、膜41が適切な温度になるように、光束12の照射強度を調節することで、多孔質の電極接続領域41を形成できる。具体例としては、基板10としては、延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(融点250℃程度、耐熱温度150℃程度)を用い、基板10の形状が維持されるようにレーザー光の光束12の強度を調整して基板10の裏面から膜41に照射し、膜41の導電性粒子を焼結した場合、多孔質の電極接続領域40を形成することができる。
【0019】
電極接続領域40が多孔質である場合には、電極接続領域40自体が追随性(可撓性)を有するため、フレキシブルな基板10の変形させた場合にも、それに伴って電極接続領域40が追随するため、電極接続領域40が基板10からはがれにくく、ひび割れ等も生じにくい。よって、断線の生じにくい、フレキシブルな実装基板を提供することができる。
【0020】
なお、図1(c)の工程において、膜41への光束12の照射径を、電極31よりも小さくしてもよい。この場合、必要な電極接続領域40の大きさが照射径よりも大きい場合には、光束12を走査させてもよい。
【0021】
照射する光束12の波長は、膜41に含まれる導電性粒子に吸収される波長であって、基板10に吸収されにくい波長を選択して用いる。照射する光は、紫外、可視、赤外いずれの光であってもよい。例えば導電性粒子として、Ag、Cu、Au、Pdなどを用いた場合、400〜600nmの可視光を用いることができる。
【0022】
また、光束12は、開口を有するマスクを通して、所定のビーム形状に成形したものであってもよい。
【0023】
光を照射していない膜41の領域は、焼結が生じないため、非導電性のまま残る。非導電性の膜41は、この後の工程で除去してもよい。例えば、有機溶媒等を用いて膜41を除去することが可能である。また、加熱などの手段により、別途導電化させても良い。
【0024】
基板10の材質としては、少なくとも表面が絶縁性であり、光束12の照射を可能とする透光性を備え、光束12が膜41に照射された際の基板10が到達する温度に耐えることができるものであればどのような材質であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド、エポキシ、シリコーン、ガラスエポキシ基板、紙フェノール等の有機物や、セラミック、ガラス等の無機物を用いることができる。また、照射する光の少なくとも一部を透過すれば、フレキシブルプリント基板や表面を絶縁層で被覆した金属基板などであってもよい。また、基板10は、フィルム状のものを用いることも可能である。
【0025】
膜41に含有される導電性粒子の材料としては、Au、Ag、Cu、Pd、Ni、ITO、Pt、Feなどの導電性金属および導電性金属酸化物のうちの1つ以上を用いることができる。導電性粒子の粒子径は、1μm未満のナノ粒子のみであってもよいし、1μm未満のナノ粒子と1μm以上のマイクロ粒子とが混合されていてもよい。
【0026】
膜41に少なくとも含有される絶縁材料、または、膜41の導電性粒子を被覆する絶縁材料としては、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、および、アクリル樹脂などの有機材料、ならびに、SiO、Al、TiOなどの無機材料、また有機と無機のハイブリット材料のうちの1以上を用いることができる。また、膜41において導電性ナノ粒子を被覆する絶縁材料層の厚みは、1nm〜10μm程度であることが好ましい。絶縁材料層が薄すぎると、非導電性の膜41の耐電圧性が低下する。また、絶縁材料層が厚すぎると、光照射によって焼結した後の電極接続領域40の電気導電率が低下し、熱抵抗値が大きくなる。
【0027】
導電性粒子および絶縁材料、もしくは、絶縁材料の層で被覆された導電性粒子は、溶媒に分散することにより図1(a)の工程で塗布する溶液とする。溶媒としては、有機溶媒や水を用いることができる。
【0028】
電極接続領域40の大きさは、例えば1μm以上、厚みは、1nm〜10μm程度に形成することが可能である。また、電極接続領域40の電気抵抗値は、10−4Ω/cm2以下であることが望ましく、特に、10−6Ω/cm2オーダー以下の低抵抗であることが望ましい。
【0029】
電子部品30としては、どのようなものを用いてもよいが、一例としては、発光素子(LED,LD)、受光素子、集積回路、表示素子(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等)を用いることができる。また、図1では、基板10上に、電子部品30を一つのみ搭載しているが、2以上の電子部品30を搭載することももちろん可能である。
【0030】
また、図1(a)の工程で、膜41を形成する方法は、所望の膜厚の膜41が形成できる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。印刷により膜41を形成する場合、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷などを用いることができる。
【0031】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図3図5を用いて説明する。
【0032】
第1の実施形態では、膜41に電極接続領域40を形成したが、第2の実施形態では、電極接続領域40だけでなく、電極接続領域40に接続される回路パターン43を光束12の照射により、膜41を形成する。
【0033】
回路パターン43を形成するタイミングは、図3(d)のように、電極接続領域40を形成する工程(図3(a)〜(c))の後であってもよいし、図4(c)のように、膜41を形成して電子部品30を膜に搭載する工程(図4(a)、(b))の後であって、電極接続領域40を形成する工程(図4(d))の前でもよい。また、図5(b)のように、膜41を形成する工程(図5(a))の後であって、電子部品30を搭載し、電極接続領域40を形成する工程(図5(c)、(d))の前であってもよい。
【0034】
いずれのタイミングで行う場合も、基板10の裏面側から基板10を透過させて、膜41の一部に、所定のパターンに光束12を照射し、光束12が照射されたパターンの導電性粒子を焼結する。これにより、電極接続領域40と接続される回路パターン43を形成する。
【0035】
この際、光束12を走査することにより、所定の照射径の光束12で所望の形状の回路パターンを形成することができる。また、マスク等を通して、所望のパターン形状にビーム形状を成形した光束12を照射してもよい。
【0036】
回路パターン43も、電極接続領域40と同様に、膜41の一部のみに光束12を照射することにより形成するため、焼結部の熱を周囲の膜41および基板10に熱伝導して放熱することができるため、基板10の温度上昇を抑制することができる。よって、基板10が薄いフレキシブルな樹脂等のように、熱により変形を生じやすいものであっても、光焼結による変形や歪、白濁等の変質を防止することができる。また、基板10がフレキシブルである場合にはそのフレキシブル性を維持することができる。
【0037】
また、回路パターン43も、電極接続領域40と同様に、多孔質であることが望ましい。回路パターン43に追随性が生じ、基板10からはがれにくく、断線を生じにくいためである。
【0038】
回路パターン43を形成する際に照射する光束12が多孔質となるように、光束12の照射エネルギーを調整することが望ましい。なお、回路パターン43の直上には電子部品30が搭載されていないため電子部品30へ熱が伝導しない。よって、電極接続領域40を光焼成するための光束12の照射条件とは、異なる条件で回路パターン43を焼成するための光束12を照射することが望ましい。例えば、回路パターン43を光焼成する際の単位面積当たりの照射エネルギーを、電極接続領域40の光焼成する際よりも小さくすることで焼成を行うことができる。
【0039】
なお、図3または図4の製造工程は、電極接続領域40と回路パターン43の形成のための光束12の照射を連続して、または、同時に照射することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0040】
第2の実施形態において、上述した以外の工程や構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
<第3の実施形態>
第3の実施形態の電子デバイスの製造方法について説明する。
【0042】
第3の実施形態では、第2の実施形態で形成する回路パターン43に接続される第2の回路パターン44を光焼成により形成する工程をさらに有する。第2の回路パターン44は、回路パターン43よりも厚さが大きく、電気抵抗が低い。これにより、外部電源からの電力を回路パターン43まで効率よく伝導して、電子部品30に供給することができる。
【0043】
具体的には、図6(a)のように、導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液、もしくは、絶縁材料層で被覆された導電性粒子が分散された溶液を、基板10の表面に塗布することにより、膜41よりも厚い、絶縁材料で被覆された導電性粒子の第2の膜45を形成する。
【0044】
そして、図6(b)のように、第2の膜45に対して、基板10の裏面側から基板10を透過させて光束12を照射し、光束12によって第2の膜45の導電性粒子を焼結し、第2の回路パターン44を形成する。
【0045】
これらの工程は、図6(c)〜(f)に示した第2の実施形態で説明した電極接続領域40および回路パターン43を形成する工程の前に行うことができる。なお、図6(c)〜(f)の工程は、第2の実施形態で説明した図3図5等の他の工程に置き換えることが可能である。
【0046】
また、第2の膜45を形成する工程を、図7(a)〜(f)のように、第2の実施形態で説明した工程の途中に行ってもよい。例えば、膜45を形成する工程は、光束12の照射により回路パターン43を光焼成する工程(図7(e))よりの前のいずれかの段階に、図7(a)のように行えばよく(他の例としては、たとえば、膜41を形成した後に第2の膜45を形成してもよい)、光束12の照射により第2の回路パターン44を光焼成する工程は、回路パターン43を光焼成する工程(図7(e))と同時または連続して図7(f)のように行うことができる。これにより、膜41と第2の膜45に光束12を同時にまたは連続して照射して回路パターン43および第2の回路パターン44を形成することができるため、製造効率を向上させることができる。なお、図7(b)から(e)の各工程は、第2の実施形態で説明した図3図5等の他の工程に置き換えることが可能である。
【0047】
なお、膜45に含まれる導電性粒子は、ナノサイズ粒子のみとすることも可能であるし、ナノサイズ粒子に加えて、粒径が1μm以上であるマイクロサイズ粒子をさらに含む構成にすることも可能である。導電性粒子がナノ粒子とマイクロサイズ粒子を両方含むことにより、厚膜の第2の回路パターンを容易に形成することができる。具体的には、膜45がナノ粒子とマイクロサイズ粒子を両方含むことにより、ナノ粒子のみを含む場合よりも、厚膜の膜45を比較的容易に形成できる。また、膜45がナノ粒子とマイクロサイズ粒子を両方含むことにより、光束12を膜45に照射した場合、導電性ナノ粒子が導電性マイクロ粒子よりも低温で溶融し、隣接する導電性ナノ粒子および導電性マイクロ粒子と融合するため、ナノ粒子を起点として焼結が生じる。よって、膜45がマイクロサイズ粒子のみを含む場合よりも、低温で焼結することが可能である。
【0048】
また、第2の回路パターン44は、回路パターン43や電極接続領域40と同様に、多孔質であることが望ましい。よって、多孔質の第2の回路パターンが形成されるように、光束12の照射エネルギーを、回路パターン43の形成時と同様に調整することが望ましい。
【0049】
第2の回路パターン44にマイクロ粒子を含有させる場合、含まれるマイクロサイズの導電性粒子は、粒径1μm〜100μmが望ましい。第2回路パターン44の配線幅は、10μm以上にすることができ、例えば100μm程度に形成することが可能である。第2回路パターン44の厚みは、1μm〜100μm程度、例えば20μm程度に形成することが可能である。また、第2回路パターン44の電気抵抗値は、10−4Ω/cm2以下であることが望ましく、特に、10−6Ω/cm2オーダー以下の低抵抗であることが望ましい。
【0050】
第3の実施形態において、上述した以外の工程や構成は、第1および第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、第1の実施形態において図1に示したように、基板10に配線パターン11が予め設けられている。本実施形態では、図8(a),(b)のように配線パターン11と電極31とが重なって配置されているが、配線パターン11に光束12を透過させるための開口等の光透過部11aを設けている。これにより、基板10の裏面から照射した光束12を、光透過部11aを通して膜41に照射し、電極接続領域40を設けることができる。これにより遮光性の配線パターン11であっても、電極31と重なるように配置できる。よって、配線パターン11と電極接続領域40と電極31とが重なりあう面積を大きくすることができるため、配線パターン11と電極31と電気接合の信頼性を向上させることができる。また、配線パターン11は、それ自体が光透過性を有するものであってもよく、その場合は、配線パターン11に光透過部11aを設けなくても、配線パターン11を通して膜41に照射し、電極接続領域40を設けることができる。光透過性を有する配線パターンとしては、ITOのような透明導電部材を利用してもよい。また、配線パターンに微細なメッシュ状とすることや光透過のための微細孔を設けることで、光透過性を有する配線パターンとしても良い。さらに、配線パターンの材料に多孔質なものを利用することで、光透過性を有する配線パターンとすることもできる。
【0052】
<第5の実施形態>
第1〜第5の実施形態の製造方法により製造することができる電子回路デバイスの全体構成の例を図9(a)、(b)、(c)を用いて説明する。
【0053】
図9の電子回路デバイスは、回路パターンを備えた基板10と、電子部品30とを備えている。基板10には、電子部品30を搭載するための領域20が設けられ、領域20内には電子部品30と電気的に接続される回路パターン43(以下第1回路パターン43と呼ぶ)が配置されている。また、基板10には、第2回路パターン44が配置され、第2回路パターン44は、領域20の周縁部で第1回路パターン43に接続されている。第2回路パターン44は、領域20の外側に配置された電源60から第1回路パターン43に電流を供給する。
【0054】
第1回路パターン43および電極接続領域40は、粒径が1μm未満である導電性ナノ粒子を焼結した多孔質の導電体によって構成されている。光を照射した部分のみを焼結させて第1回路パターン43および電極接続領域40を形成するため、電子部品30の電極31のサイズおよび配置に合わせて、微細な第1回路パターン43および電極接続領域40を、所望の形状に形成することができる。膜41の光を照射されていない領域がある場合は、焼結されないため非導電性のままであり、第1回路パターン43に連続して残存する。なお、焼結されない非導電性の膜41の領域は、残存させたままでもよいし、後の工程で除去してもよい。
【0055】
第2回路パターン44の厚さは、図9(b)のように、第1回路パターン43の厚さよりも大きい。本実施形態では、微細な配線が必要な、電子部品30を搭載する領域20内のみを第1回路パターン43で形成し、領域20の外側は厚膜の第2回路パターン44によって構成することにより、電子部品30への大きな電流の供給を可能にしている。
【0056】
なお、電源60は必ずしも基板10上に配置されていなくてもよい。例えば、基板10に電源60の代わりにコネクタを配置してもよい。この場合、基板10に搭載されていない電源をケーブル等を介してコネクタに接続することができる。コネクタは、第2回路パターンに接続される。また、電源60として太陽電池等の発電装置を用いることも可能である。
【0057】
基板10は、図9(b)、(c)のように、湾曲した形状にすることも可能である。この場合、第1回路パターン43および第2回路パターン44は、湾曲した基板10の表面に沿って配置されている。本実施形態では、電極接続領域40、第1回路パターン43および第2回路パターン44は、導電性の粒子を光焼結させて形成した多孔質の導電体で形成されているため、可撓性があり、基板10を湾曲させても断線しにくい。
【0058】
上述してきたように、本実施形態の電子デバイス製造方法によれば、導電性粒子を光焼成することにより、基板に電子部品を実装する方法でありながら、光照射によるダメージを基板に与えにくく、かつ、フレキシブルな導電性領域を形成可能である。また、光を透過する基板10の裏面側から光を照射することにより、電子部品30の電極31に接続される電極接続領域40や、所望のパターンの回路パターン43、44を直接形成することができる。搭載後の電子部品30の位置を基準として光照射することができるため、電子部品30と電極接続領域40との位置の誤差を防ぐことができ、位置ずれによる接続不良を低減することができる。よって、はんだ等の別途の接合材を不要とすることができる。
【0059】
また、光の照射により、微細な第1回路パターンを高密度に形成することができるため、電子部品30を高密度に搭載することが可能になる。
【0060】
さらに、電子部品30の搭載ずれ、接合材供給ずれ(位置・量)を予測した回路パターンを設計する必要がないため、第1回路パターン43をより高精細に設計することができ、電子部品30をより高密度に搭載することが可能となる。
【0061】
また、第1回路パターンを、厚膜の第2回路パターン44と連結して形成することができる。よって、低抵抗の厚膜の第2回路パターン44から大きな電流を第1回路パターン43を介して電子部品30に供給することができる。
【0062】
電子部品30の搭載後に電極接続領域40を形成することができるため、電子部品30の搭載位置精度が向上する。さらに、電子部品30の端子部よりも小さいエリアで、電極接続領域40と電極との電気接続と固着も可能になる。また、電子部品30の基板10への搭載と同時に持続的な固定が可能になるため、生産タクトアップなどが図れる。
【0063】
本実施形態によれば、種々の電子部品を高精度に、高密度に、少ない製造工程で一括して実装して、電子デバイスを製造できる。また、光を照射する位置を制御することで、回路パターンを容易に変更できるため、設計変更にも容易に対応することができる。
【0064】
なお、上述してきた実施形態では、光束を照射して焼結を行ったが、膜の一部分のみにエネルギーを供給し加熱する方法であれば、光束照射以外の方法を用いても同様の作用および効果が得られる。例えば、マイクロ波を収束して照射する方法や、膜に針状の探触子を接触または接近させて、電流や電力を局所的に供給する方法を用いることができる。
【0065】
本実施形態の電子デバイスは、電子部品を基板に搭載したデバイスであればどのようなものでも適用可能である。例えば、自動車のインストルメント・パネル(計器表示盤)やゲーム機の表示部等に適用できる。また、基板を湾曲させることができるため、ウエアラブル(体に装着可能な)な電子デバイス(メガネ、時計、ディスプレイ、医療機器等)や、湾曲したディスプレイに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10・・・基板、20・・・電子部品搭載のための領域、30・・・電子部品、31・・・電極、40・・・電極搭載領域、43・・・回路パターン、41・・・膜、44・・・第2回路パターン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9