(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771353
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電気モータを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
G01N11/00 B
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-199095(P2016-199095)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-75943(P2017-75943A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2019年7月16日
(31)【優先権主張番号】A 50864/2015
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513304183
【氏名又は名称】アントン パール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Anton Paar GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート フック
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ロイガー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ シュテッティン
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/145475(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0100098(US,A1)
【文献】
特開2001−208734(JP,A)
【文献】
特開2013−156092(JP,A)
【文献】
特開平08−338802(JP,A)
【文献】
特開平09−304268(JP,A)
【文献】
特開平11−218483(JP,A)
【文献】
米国特許第06205862(US,B1)
【文献】
特開2015−155906(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0233807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G01N 11/14
H02P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にレオメータのための駆動軸を振動的に回転させるために電気モータ(1)を動作させる方法であって、
a)前記電気モータ(1)は、前記電気モータ(1)の駆動エネルギを、前記電気モータ(1)の振動に抵抗する試料(2)に伝達する、
方法において、
b)ひずみ(w)又は試料トルク(M)に関して、所定の周期的な形状を有する実現すべき所期の時間分布(e(t))を予め定め、
c)前記ひずみ(w)又は前記試料トルク(M)の実際値(y)を、測定変数(y(t))として連続的に検出し、
d)前記電気モータ(1)に印加される電圧(UM)又は前記電気モータ(1)を流れる電流(IM)の形態の操作変数(u(t))を予め定めることによって、前記電気モータ(1)を動作させ、
e)少なくとも、前記所定の周期的な形状を有する所期の時間分布(e(t))の最大値と最小値との間の範囲内において、前記測定変数(y(t))と前記操作変数(u(t))とは、互いに関して非線形に挙動し、
f)前記所期の時間分布(e(t))に対して、必要に応じて時間的にオフセットされた複数の所定の周期的な基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として近似関数(e’(t))を構築し、且つ、個々の前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)に対して使用される重みを、所期のパラメータベクトル(E)として構築し、
g)前記操作変数(u(t))を、操作パラメータベクトル(U)の操作パラメータによって重み付けされた前記複数の基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の和として予め定め、この際にはまず初めに、所定の係数(x)によって乗算された前記所期のパラメータベクトル(E)を、前記操作パラメータベクトル(U)として予め定め、次いで、以下に記載のステップh)からk)、すなわち、
h)前記測定変数(y(t))を連続的にサンプリングして、所定の時間窓(W)内において最後に検出された前記測定変数(y(t))のサンプル値を使用するステップと、
i)前記時間窓(W)内の前記測定変数(y(t))の前記サンプル値に対して、前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として近似関数(y’(t))を構築し、且つ、個々の前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)に対して使用される重みを、実際のパラメータベクトル(Y)として構築するステップと、
j)前記所期のパラメータベクトル(E)と前記実際のパラメータベクトル(Y)との差(D)を形成し、前記差(D)を、場合により別の所定の係数によって重み付けして、前記操作パラメータベクトル(U)から減算するステップと、
k)次に使用する操作変数(u(t))を、前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として予め定め、新たに生成された前記操作パラメータベクトル(U)の値を、次のステップh)からj)における重みとして使用するステップと、
を調整過程に従って連続的且つ反復的に実施する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
・前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)として、正弦振動及び余弦振動を使用し、
及び/又は、
・第1基底関数(f1(t))は、所定の基本形状を有し、以降の基底関数(f2(t),・・・)を、fn(t)=f1(n×t)のように、前記第1基底関数(f1(t))に関連して所定の整数値nによって圧縮し、
及び/又は、
・前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の個数は、5未満である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
・前記基底関数を周期関数として予め定め、
・最も長い周期を有する前記基底関数の周期中に100を超えるサンプルが採取されるように、前記サンプリングを選択する、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
・前記基底関数を周期的に予め定め、
・前記時間窓(W)であって、前記時間窓内のサンプルが使用される前記時間窓(W)は、最も長い周期を有する前記基底関数の周期の25%〜100%の期間を有する、
請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
・前記基底関数を周期関数として予め定め、
・請求項1に記載のステップh)からk)の適合を周期的に繰り返し、この際には、いずれの場合にも2回の適合の間に、最も長い周期を有する前記基底関数の周期の25%〜100%の期間が存在する、
請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
特に試料(2)の粘度を測定するレオメータのための駆動軸を振動的に回転させる装置であって、
前記装置は、電気モータ(1)とモータレギュレータ(3)とを含み、
a)前記電気モータ(1)は、前記電気モータ(1)の駆動エネルギを前記試料(2)に伝達するための駆動軸を含む、
装置において、
b)前記レギュレータ(3)のために、ひずみ(w)又は試料トルク(M)に関して、実現すべき周期的な所期の時間分布(e(t))が前もって予め定められており、
c)前記ひずみ(w)又は前記試料トルク(M)の実際値(y)を測定変数(y(t))として連続的に検出して前記レギュレータ(3)に送信する測定装置が設けられており、
d)前記レギュレータ(3)は、前記電気モータ(1)に印加される電圧(UM)又は前記電気モータ(1)を流れる電流(IM)の形態の操作変数(u(t))を予め定めることによって、前記電気モータ(1)を動作させ、
e)少なくとも、予め定められた前記周期的な所期の時間分布(e(t))の最大値と最小値との間の範囲内において、前記測定変数(y(t))と前記操作変数(u(t))とは、互いに関して非線形に挙動し、
f)前記レギュレータ(3)は、前記所期の時間分布(e(t))に対して、必要に応じて時間的にオフセットされた複数の所定の周期的な基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として近似関数(e’(t))を構築し、且つ、個々の前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)に対して使用される重みを、所期のパラメータベクトル(E)として構築し、
g)前記レギュレータ(3)は、前記操作変数(u(t))を、操作パラメータベクトル(U)の操作パラメータによって重み付けされた前記複数の基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の和として予め定め、この際にはまず初めに、前記レギュレータ(3)は、所定の係数(x)によって乗算された前記所期のパラメータベクトル(E)を、前記操作パラメータベクトル(U)として予め定め、次いで、前記レギュレータ(3)は、以下に記載のステップh)からk)、すなわち、
h)前記レギュレータ(3)が、前記測定装置から前記測定変数(y(t))を連続的にサンプリングして、所定の時間窓(W)内において最後に検出された前記測定変数(y(t))のサンプル値を使用するステップと、
i)前記レギュレータ(3)が、前記時間窓(W)内の前記測定変数(y(t))の前記サンプル値に対して、前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として近似関数(y’(t))を構築し、且つ、個々の前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)に対して使用される重みを、実際のパラメータベクトル(Y)として構築するステップと、
j)前記レギュレータ(3)が、前記所期のパラメータベクトル(E)と前記実際のパラメータベクトル(Y)との差(D)を形成し、前記レギュレータ(3)が、前記差(D)を、場合により別の所定の係数によって重み付けして、前記操作パラメータベクトル(U)から減算するステップと、
k)前記レギュレータ(3)が、次に使用する操作変数(u(t))を、前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の加重和として予め定め、前記レギュレータ(3)が、新たに生成した操作パラメータベクトル(U)の値を、次のステップh)からj)における重みとして使用するステップと、
を調整過程に従って連続的且つ反復的に実施する、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
・前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)として、正弦振動及び余弦振動が使用され、
及び/又は、
・第1基底関数(f1(t))は、所定の基本形状を有し、以降の基底関数(f2(t),・・・)は、fn(t)=f1(n×t)のように、前記第1基底関数(f1(t))に関連して所定の整数値nによって圧縮され、
及び/又は、
・前記基底関数(f1(t),f2(t),・・・)の個数は、5未満である、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
・前記基底関数は、周期関数として予め定められ、
・最も長い周期を有する前記基底関数の周期中に100を超えるサンプルが採取されるように、前記サンプリングが選択される、
請求項6又は7記載の装置。
【請求項9】
・前記基底関数は周期的であり、
・前記時間窓(W)であって、前記時間窓(W)内のサンプルが使用される前記時間窓(W)は、最も長い周期を有する前記基底関数の周期の25%〜100%の期間を有する、
請求項6から8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
・前記基底関数は周期的であり、
・前記レギュレータ(3)は、請求項6に記載のステップh)からk)の適合を周期的に繰り返し、この際には、いずれの場合にも2回の適合の間に、最も長い周期を有する前記基底関数(f1(t))の周期の25%〜100%の期間が存在する、
請求項6から9のいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレオメータのための駆動軸を振動的に回転させるために電気モータを動作させる方法に関する。本発明はさらに、特に試料の粘度を測定するレオメータのための駆動軸を振動的に回転させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、電気モータに関して、電気モータを励磁して駆動軸を振動的に回転させる様々な閉ループ動作制御を開示している。このような方法は特に、媒体の非線形のレオロジー特性を測定するために使用され、この場合には、モータの駆動軸が被検媒体の領域内に導かれ、この被検媒体中で駆動軸を動かすことによって媒体の非線形のレオロジー特性が検出される。この場合には、大きいひずみ振幅を有する回転振動が特に好ましい。なぜなら、使用される媒体又は試料は、採用されたひずみ振幅が特定の閾値を超えたときに非線形の挙動を示すからである。特に、2つの測定部の間において周期的な負荷の下での、特に膨張及び収縮の下での変形挙動を試験するという従来技術が開示されており、この場合には、2つの測定部の少なくとも一方がモータの駆動軸に結合されている。このように構成されたいわゆる回転型のレオメータは、複数のせん断プレートを有しており、これらのせん断プレートの間に被検試料が配置され、せん断プレートの1つは、電気モータの駆動軸に結合されている。
【0003】
従来技術は、例えば回転試験、応力緩和試験、及び振動試験のような種々の試験によって粘弾性の試料の流動挙動を特定するための機器として、回転型及び振動型のレオメータを開示している。このプロセスでは、液体の流動挙動と固体の変形挙動の双方を試験することができる。一般的に現実の試料は、弾性の挙動と可塑性の挙動とが組み合わさった挙動を示す。被検試料材料は、2つの測定部の間に設けられた測定空間内に導かれ、これら2つの測定部の間の間隔は、高さ調整手段と適切なセンサとによって決定される。上側の測定部と下側の測定部は、1本の共通の回転軸を中心にして相対的に互いに対抗して動かされる。測定部同士が互いに反対向きに回転されることにより、試料はせん断負荷を受ける。このような測定装置では、回転運動と回転振動運動の双方が実施可能である。原則的に、このような試験装置に関して複数の異なる幾何形状を使用することが可能であり、特に、2つのプレートの間で媒体がクランプされる形式の測定システムか、又は、1つのコーンと1つのプレートとの間で媒体がクランプされる形式の測定システムか、又は、互いに対抗して回転する2つの同心円状に配置された円筒の間に媒体が配置される形式の測定システム、を使用することが可能である。
【0004】
従来技術は、駆動用及びトルク決定用に設計されたモータによってトルク決定が実施される形式の種々のレオメータを開示している。しかしながらこれに代えて、それぞれ2つの測定部の一方に配置される2つの互いに別個である駆動ユニットと回転ユニットとを用いてトルク決定を実施することも可能である。さらには、例えばオーストリア国特許発明第508706号明細書(AT 508.706 B1)から、2つの測定モータを有する装置も公知である。
【0005】
本発明の範囲内においては、モータの種類に関係なく、永久磁石を有する同期モータ又は非同期モータを使用することができる。本発明の範囲内においては、振動運動の振幅、振動周波数、モータの回転速度、又は、試料に作用するトルクを予め定めることができる。
【0006】
一般的にトルクは、それぞれの電気モータの消費電力によって測定することができる。この場合には、使用されるモータ又は装置の種類に応じて、トルクに対するモータの電力消費量との関数関係が存在する。すなわち、N=c
1×I、又は、N=c
2×I
2であり、但し、2つの定数c
1及びc
2は、装置固有である。
【0007】
振動モータのひずみは、種々の方法で、とりわけ光学的に検出することができる。
【0008】
試料を測定する目的は、種々異なる振幅、ひずみ、及び周波数に対して異なる測定値を獲得することにあり、この振幅とひずみと周波数とは、互いに個々に変更することができる。このようにして検出された測定値は、被検材料のレオロジー指紋と呼ばれる。
【0009】
しかしながらこの場合には、媒体又は試料の非線形挙動によって、それぞれの励磁状態も変更してしまうという重要な問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、振動的に回転させるために電気モータを動作させる方法を発展させて、トルクの時間分布又はひずみの時間分布を前もって自由に設定可能にすることである。特に、本発明の課題は、トルクの時間分布又はひずみの時間分布が、高精度で正弦振動又は余弦振動の形状をとるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、請求項1に記載の特徴的構成によって上記の課題を解決する。
【0012】
この目的のために本発明は、電気モータの特定の動作方法を提案する。本発明によれば、特にレオメータのための駆動軸を振動的に回転させるために電気モータを動作させる方法であって、
a)前記電気モータは、該電気モータの駆動エネルギを、該電気モータの振動に抵抗する試料に伝達し、
b)ひずみ又は試料トルクに関して、所定の周期的な形状を有する実現すべき所期の時間分布を予め定め、
c)前記ひずみ又は前記試料トルクの実際値を、測定変数として連続的に検出し、
d)前記電気モータに印加される電圧又は前記電気モータを流れる電流の形態の操作変数を予め定めることによって、前記電気モータを動作させ、
e)少なくとも、前記所定の周期的な形状を有する所期の時間分布の最大値と最小値との間の範囲内において、前記測定変数と前記操作変数とは、互いに関して非線形に挙動し、
f)前記所期の時間分布に対して、必要に応じて時間的にオフセットされた複数の所定の周期的な基底関数の加重和として近似関数を構築し、且つ、個々の前記基底関数に対して使用される重みを、所期のパラメータベクトルとして構築し、
g)前記操作変数を、操作パラメータベクトルの操作パラメータによって重み付けされた前記複数の基底関数の和として予め定め、この際にはまず初めに、所定の係数によって乗算された所期のパラメータベクトルを、前記操作パラメータベクトルとして予め定め、次いで、以下に記載のステップh)からk)、すなわち、
h)前記測定変数を連続的にサンプリングして、所定の時間窓内において最後に検出された前記測定変数のサンプル値を使用するステップと、
i)前記時間窓内の前記測定変数の前記サンプル値に対して、前記基底関数の加重和として近似関数を構築し、且つ、個々の前記基底関数に対して使用される重みを、実際のパラメータベクトルとして構築するステップと、
j)前記所期のパラメータベクトルと前記実際のパラメータベクトルとの差を形成し、前記差を、場合により別の所定の係数によって重み付けして、前記操作パラメータベクトルから減算するステップと、
k)次に使用する操作変数を、前記基底関数の加重和として予め定め、新たに生成された前記操作パラメータベクトルの値を、次のステップh)からj)における重みとして使用するステップと
を、調整過程に従って連続的且つ反復的に実施する、
方法が提案される。
【0013】
本発明は、請求項6に記載の、レギュレータとモータとを含む装置にも関する。
【0014】
本発明では、被検媒体又は被検試料を非線形の力範囲又は張力範囲で動作させる大きな信号振幅を使用した場合に、著しい改善が生じる。特に本発明によれば、電気モータのトルク又はひずみの、非常に精確な正弦波形及び余弦波形を予め定めることが可能となる。
【0015】
試料の個々の非線形効果の周波数依存性をより良好に考慮できるようにするために、正弦波のトルク及び余弦波のトルクを基底関数として使用することを提案することができる。
【0016】
複数の異なる周波数のスペクトルを簡単に生成できるようにするために、第1基底関数が、所定の基本形状を有するようにし、以降の基底関数を、f
n(t)=f
1(n×t)のように、それぞれ前記第1基底関数に関連して所定の整数値によって圧縮することを提案することができる。
【0017】
所要の演算時間を短縮する目的で、選択される基底関数の個数を5未満にすることを提案することができる。
【0018】
実時間における信号の迅速な適合を可能にする本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記基底関数が周期関数として予め定められ、最も長い周期を有する前記基底関数の周期中に100を超えるサンプルが採取されるように、前記サンプリングが選択される。
【0019】
同じ目的で、前記基底関数を周期的に予め定め、サンプルが実施される範囲である前記時間窓が、最も長い周期を有する前記基底関数の周期の25%〜50%の期間を有するようにすることを提案することができる。
【0020】
所期の信号と実際の信号との間の良好な相関を得るために、請求項1の特徴h)からk)に記載される適合を、複数回に亘って実施することが好ましい。この目的のために有利には、前記基底関数を周期関数として予め定め、請求項1に記載のステップh)からk)の適合を周期的に繰り返すことを提案することができ、この際には、いずれの場合にも2回の適合の間に、最も長い周期を有する前記基底関数の周期の25%〜100%の期間が存在する。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態は、図面により詳細に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、モータ1を示す。モータ1には、レギュレータ3により電圧源を介して、予め定められた電圧分布U
M又は電流分布I
Mが印加される。レギュレータ3は、モータのひずみw又は試料トルクMに関して予め定められた所期の時間分布に依存して、電流の時間分布又は電圧の時間分布を操作変数u(t)として相応に設定する。電気モータ1は、該電気モータ1の駆動軸を振動的に回転させるために動作される。電気モータ1は、該電気モータ1の駆動エネルギを、モータ軸を介して試料2に伝達する。この試料2は、2つのプレートの間に位置しており、これら2つのプレートの少なくとも一方は、試料2に対抗して回転され、これによって全体として試料2は、せん断運動又は回転運動を受ける。モータ軸上には、試料2の比粘度が原因で、電気モータ1の駆動軸のひずみに応じて異なるトルクが発生する。検出又は設定されたこれらのひずみw及びトルクMは、相互に関連させることができ、その結果、被検試料2の比粘弾性挙動を検出することが可能となる。
【0024】
全体としてこのような測定を実施することが可能となるように、試料トルクM又はひずみwが、所期の変数e(t)の形態で前もって予め定められる。ここではこの所期の時間分布e(t)は、所定の周期的な形状を有し、レギュレータ3のために予め定められている。
【0025】
図1の装置は、ひずみwの実際値又は試料トルクMの実際値を連続的に検出する測定装置(図示せず)を含む。最終的にこの測定装置は、ひずみwの実際値又は試料トルクMの実際値を測定変数y(t)として供給し、これらの測定変数y(t)をレギュレータ3に送信する。
【0026】
本発明の範囲内では、試料2は非線形挙動を示すものと仮定する。モータ1の駆動軸が動作点を中心に小さいひずみ範囲内でのみ運動している場合には、試料2は通常、当該動作点の周囲で線形の挙動を示す。しかしながら非線形の試料2の場合には、ひずみwが増大されると、少なくとも、予め定められた前記周期的な所期の時間分布e(t)の最大値と最小値との間の範囲内において、測定変数y(t)と操作変数u(t)とが互いに関連して非線形に挙動するという結果となる。この非線形挙動が原因で、最終的に所期の時間分布e(t)を実現する操作変数u(t)を、既に前もって推定しておくことも形成しておくことも不可能である。さらには、測定中に試料2が変化するという問題、特にヒステリシスを示す挙動を示すという問題が発生するおそれもあり、従って、所定の所期の時間分布e(t)を実現するために操作変数u(t)を前もって設定しておくことも不可能である。上記の理由により、本発明は、以下により詳細に説明する反復法を使用し、この反復法において、ひずみw又は試料トルクMのための所定の所期の時間分布e(t)が、最終的に簡単に実現される。
【0027】
まず初めに、すなわち反復的な調整前に、所期の時間分布e(t)に対して近似関数e’(t)が構築される。この近似関数e’(t)は、複数の所定の周期的な基底関数f
1(t),f
2(t),・・・の加重和として構築される。これらの周期的な基底関数は、必要に応じて時間的にオフセットされていてもよい。
【0028】
有利には、基底関数f
1(t),f
2(t),・・・として、正弦振動又は余弦振動f
1(t)=sin(a
0t),f
2(t)=sin(2a
0t),・・・が使用される。但し、a
0は、特に1Hzの基本周波数を表しており、第1基底関数f
1(t)は、所定の基本形状を有し、以降の基底関数は、いずれの場合にも、f
n(t)=f
1(n×t)のように、第1基底関数に関連して所定の整数値によって圧縮される。好ましくは、合計して少数の基底関数しか使用されず、本実施例では合計して3つの基底関数だけが使用される。
【0029】
基底関数の有利な実施例が、一例として
図2により詳細に示されている。所期の時間分布e(t)を近似関数e’(t)で表すことを企図する場合には、個々の重みを生成する必要があり、最終的に所期の時間分布e(t)にできるだけ一致した時間分布に至らしめるために、これらの重みを用いて基底関数f
1(t),f
2(t),・・・を重み付けすることが企図されるe(t)〜e’(t)=e
1f
1(t)+e
2f
2(t)+・・・。従って、これらの重みe
1,e
2,・・・は、所期のパラメータベクトルE=[e
1,e
2,・・・]として構築され、以降の手順のために利用可能に保持される。所期のパラメータベクトルEの値は、正弦振動及び余弦振動が使用される限りにおいて、例えば離散フーリエ変換又は高速フーリエ変換(FFT)を用いて構築することができる。
【0030】
操作変数u(t)を初めに設定する目的で、操作パラメータベクトルU=[u
1,u
2,・・・]が予め定められる。操作パラメータベクトルの個々の要素は、重みを表しており、−基底関数によって乗算された−これらの重みは、加重和として近似的に操作変数u(t)を再現している。
u(t)〜u’(t)=u
1f
1(t)+u
2f
2(t)+・・・
【0031】
所定の係数xによって乗算された所期のパラメータベクトルEは、操作パラメータベクトルUのための初期値として予め定められる。所定の係数xは、前もって以下のように設定され、すなわち、Mが予め定められる場合には0.5であるように、また、wが予め定められる場合には0.5×J×(2×pi×f
n)
2である(J:測定駆動部の慣性)ように設定される。
【0032】
以下では、反復法について説明する。レギュレータ3は、この反復法を用いて、予め定められた所期の時間分布e(t)に即したひずみw又は試料トルクMを形成するために、操作変数u(t)を連続的に適合させる。
図3に示されるように、測定変数y(t)−ひずみw又は試料トルクM−が、この目的のためにサンプリングされる。サンプリングは、有利には非常に短い間隔で実施され、それぞれ最も長い周期を有する基底関数f
1(t)の周期に関連して、このような周期中に100を超えるサンプルが採取される。基底関数f
1(t)の周期が1000msである場合には、サンプリングレートは、好ましくは512Hzである。好ましくは、256個〜512個のサンプル値、特に256個又は512個のサンプル値が、1振動ごとに記録される。
【0033】
それぞれの現在時刻の直前の時間窓W内のサンプル値が使用される。前記時間窓Wであって、該時間窓W内のサンプルが使用される前記時間窓Wは、例えば最も長い周期を有する基底関数f
1(t)の周期の25%〜100%の間の期間に設定される。
【0034】
次いで、時間窓W内の測定変数y(t)のサンプル値に対して、所期の時間分布と同じ分析が行われる。基底関数の加重和として、近似関数y’(t)が構築される。個々の基底関数に対する、このようにして構築された個々の重みは、実際のパラメータベクトルYを生成するために結合される。
y(t)〜y’(t)=y
1f
1(t)+y
2f
2(t)+・・・;Y=[y
1,y
2,・・・]
【0035】
次のステップでは、所期のパラメータベクトルEと実際のパラメータベクトルYとの差Dが形成される。この差Dは、特に0.2〜0.5の間にある所定の係数vによって重み付けされる。この差Dは、操作パラメータU
nから減算され、このようにして、次の反復ステップのための操作パラメータU
n+1が構築される。
U
n+1:=U
n−D=U
n−(E−Y)×v
【0036】
最後のステップでは、次の反復ステップのための操作変数u(t)が、新たに構築された操作パラメータベクトルU
n+1に基づいて基底関数の加重和として構築される。u(t)=u
1f
1(t)+u
2f
2(t)。その後、次の時間窓W内においてサンプリングが再度実施され、実際のパラメータベクトルYが再度検出され、所期のパラメータベクトルEと実際のパラメータベクトルYとの差Dが形成され、この差Dが、操作パラメータベクトルUから減算され、そしてこの操作パラメータベクトルUが再度使用されて、操作変数u(t)が生成される。このプロセスは、測定変数、すなわちひずみw又は試料トルクMに対する適切な適合を実現するためにレギュレータ3によって連続的に実施される。
【0037】
この適合は、所望の頻度で繰り返すことができる。いずれの場合にもそれぞれ2回の適合の間に、最も長い周期を有する基底関数f
1(t)の周期の25%〜100%の期間が存在する。