特許第6771385号(P6771385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771385
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】二重特異性抗体および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20201012BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   C07K16/28
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61P35/00
   !C12N15/13
【請求項の数】38
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2016-554200(P2016-554200)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2017-512756(P2017-512756A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】NL2015050124
(87)【国際公開番号】WO2015130172
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年12月7日
(31)【優先権主張番号】14157351.9
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ロフテンベルフ, トン
(72)【発明者】
【氏名】トロスビー, マルク
(72)【発明者】
【氏名】ルーフェルス, ロベルトュス コルネリス
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−521196(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/148315(WO,A1)
【文献】 特表2010−518820(JP,A)
【文献】 特表2013−506622(JP,A)
【文献】 特表2008−531557(JP,A)
【文献】 Cancer Cell (2011) vol.20, no.4, p. 472-486
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C07K 16/46
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体であって、
BxPC3細胞(ATCC CRL−1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよびErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、200pM未満の半数成長阻害濃度(IC50)を有する二重特異性抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の二重特異性抗体において、
BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよびErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、100pM未満のIC50を有する、二重特異性抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二重特異性抗体において、
BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよびErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、50pM未満のIC50を有する、二重特異性抗体。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよびErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、20pM未満のIC50を有する、二重特異性抗体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
前記第1の抗原結合部位が、EGFRのドメインIまたはドメインIIIに結合する、二重特異性抗体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
EGFRおよびErbB−3陽性細胞上のErbB−3のリガンド誘導性受容体機能を低減できる、二重特異性抗体。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
リガンド誘導された前記BxPC3細胞が、EGFRおよびErbB−3リガンド誘導されたBxPC3細胞である、二重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
前記リガンドが、EGF、ニューレグリン1またはそれらの組み合わせを含む、二重特異性抗体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含み、
前記第2の抗原結合部位が、ErbB−3のドメインIIIに結合する、二重特異性抗体。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
前記抗体は、EGFRおよびErbB−3陽性細胞のリガンド誘導性成長を低減できる、二重特異性抗体。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
ErbB−3陽性細胞に対する前記第2の抗原結合部位の親和性(KD)が、2.0nM以下である、二重特異性抗体。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
ErbB−3陽性細胞に対する前記第2の抗原結合部位の親和性(KD)が、1.39nM以下である、二重特異性抗体。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
ErbB−3陽性細胞に対する前記第2の抗原結合部位の親和性(KD)が、0.99nM以下である、二重特異性抗体。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
R426およびネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置する、表面に露出したアミノ酸残基からなる群から選択される、ErbB−3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する抗原結合部位を含む、二重特異性抗体。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
配列番号6〜152のアミノ酸配列を含む、二重特異性抗体。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
配列番号88(MF3178)、配列番号98(MF3163)、配列番号108(MF3307)、配列番号113(MF6055)、配列番号115(MF6056)、配列番号117(MF6057)、配列番号119(MF6058)、配列番号121(MF6059)、配列番号123(MF6060)、配列番号125(MF6061)、配列番号127(MF6062)、配列番号129(MF6063)、配列番号131(MF6064)、配列番号133(MF6065)、配列番号135(MF6066)、配列番号137(MF6067)、配列番号139(MF6068)、配列番号141(MF6069)、配列番号143(MF6070)、配列番号145(MF6071)、配列番号147(MF6072)、配列番号149(MF6073)および配列番号151(MF6074)からなる群から選択される配列番号に示されるErbB−3特異的重鎖可変領域のCDR3配列を少なくとも含む、二重特異性抗体。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を示す、二重特異性抗体。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
ADCCを増強するために非フコシル化されている、二重特異性抗体。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
ヒトまたはヒト化抗体である、二重特異性抗体。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
適合的なヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項21】
請求項20に記載の二重特異性抗体において、
前記適合的なヘテロ二量体化ドメインは、適合的な免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである、二重特異性抗体。
【請求項22】
請求項20または21に記載の二重特異性抗体において、
適合的なヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
共通の軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項24】
請求項23に記載の二重特異性抗体において、
前記軽鎖は、軽鎖可変領域IGKV1−39を含む、二重特異性抗体。
【請求項25】
請求項23または24に記載の二重特異性抗体において、
前記軽鎖は、生殖系列IGKV1−39軽鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む医薬組成物。
【請求項27】
請求項1から25までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
標識をさらに含む、二重特異性抗体。
【請求項28】
請求項1から25まで、および27のいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
in vivo画像化のための標識をさらに含む、二重特異性抗体。
【請求項29】
請求項1から25まで、27および28のいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、または有するリスクがある対象の処置における使用のための、二重特異性抗体。
【請求項30】
請求項1から25まで、および、27から29までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
セツキシマブと比較して、より少ない皮膚毒性を誘導する、二重特異性抗体。
【請求項31】
請求項1から25まで、27および28のいずれか一項に記載の二重特異性抗体において、
EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞の転移の形成の処置または予防における使用のための、EGFRに結合する第1の抗原結合部位および、前記第1の抗原結合部位とは異なる特異性を有しErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項32】
請求項31に記載の使用のための二重特異性抗体において、
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも70%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項33】
請求項31または32に記載の使用のための二重特異性抗体において、
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも80%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項34】
請求項31から33までのいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体において、
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも85%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項35】
請求項31から34までのいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体において、
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも90%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項36】
請求項31から35までのいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体において、
前記EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも95%のヘレグリン発現レベルを有する、二重特異性抗体。
【請求項37】
請求項29から36までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体であって、
前記対象が、細胞1つ当たり1.000.000未満のErbB−2細胞表面受容体を有するEGFRまたはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、二重特異性抗体。
【請求項38】
請求項29から37までのいずれか一項に記載の二重特異性抗体であって、
前記腫瘍細胞が、乳癌細胞、卵巣癌細胞、胃癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞または肺癌細胞である、二重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の分野に関する。詳細には、本発明は、異常な細胞を伴う疾患の処置のための治療的(ヒト)抗体の分野に関する。より詳細には、本発明は、EGFRおよびErbB−3に結合する抗体、ならびにEGFRおよびErbB−3陽性細胞、特に腫瘍細胞との結合におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮増殖因子(EGF)受容体(EGFR)は、上皮増殖因子ファミリー(EGFファミリー)という細胞外タンパク質リガンドのメンバーに対する、プロトタイプの細胞表面受容体である。EGFRは、ErbB−1受容体としても知られている。この受容体には、過去に種々の名称を与えられている(EGFR;ERBB;ERBB1;HER1;PIG61;mENA)。本発明では、ヒトにおける名称ErbB−1、EGFRまたはHER1は、相互交換可能に使用される。EGFRは、ErbBファミリーの受容体のメンバーであり、4つの密接に関連する受容体チロシン・キナーゼのサブファミリー:ErbB−1(EGFR)、ErbB−2(HER2/c−neu;Her2)、ErbB−3(Her3)およびErbB−4(Her4)である。
【0003】
EGFRは、細胞表面上に存在し、上皮増殖因子およびトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)を含むその特異的リガンドの結合によって活性化される。その増殖因子リガンドによる活性化の際に、この受容体は、不活性な主に単量体の形態から活性ホモ二量体へと移行する。リガンド結合後にホモ二量体を形成することに加えて、EGFRは、ErbB受容体ファミリーの別のメンバー、例えばErbB2とペアリングして、活性化されたヘテロ二量体を生じ得る。リガンド結合の非存在下で二量体が形成され、活性化されたEGFRのクラスターがリガンド結合後に形成されることを示唆する証拠もある。
【0004】
EGFRの二量体化は、その固有の細胞内タンパク質チロシン・キナーゼ(PTK)活性を刺激する。この活性は、細胞の増殖および分化をもたらすいくつかのシグナル伝達カスケードを誘導する。EGFRのキナーゼ・ドメインは、共に複合体化する他の受容体のチロシン残基を交差リン酸化し得、自分自身もそのように活性化され得る。
【0005】
EGFRにおける変異が、いくつかの型の癌において同定されており、これは、拡大するクラスの抗癌治療の標的である。これらには、肺癌に対するゲフィチニブおよびエルロチニブなどのEGFRを標的とした小分子、ならびに結腸癌および頭頸部癌に対するセツキシマブおよびパニツムマブなどの抗体が含まれる。
【0006】
セツキシマブおよびパニツムマブは、この受容体を阻害するモノクローナル抗体である。臨床開発中の他のモノクローナルは、ザルツムマブ、ニモツズマブおよびマツズマブである。これらのモノクローナル抗体は、主に受容体へのリガンド結合を遮断することによって、細胞外リガンド誘導性受容体活性化を遮断することを目的としている。結合部位が遮断されると、シグナル誘導分子は、効率的に結合できず、従って、下流のシグナル伝達を活性化することもできない。しかし、リガンド誘導性受容体活性化は、不活性な受容体コンフォメーションの安定化によっても阻害され得る(マツズマブ)。
【0007】
EGFRを標的とした抗体治療はいくらか成功しているが、そのほとんどでは、いずれ処置耐性の発生が伴う。EGFR陽性腫瘍が標的化治療を逃れることができる方法の1つは、別の受容体(二量体)を介したシグナル伝達によるものである。例えば、増加したHER3発現またはヘレグリン発現に起因する、EGFR/ErbB−3(HER1/HER3)二量体による増加したシグナル伝達は、肺癌および頭頸部癌におけるEGFR関連の薬物耐性と関連する。処置耐性の誘導とは別に、EGFR標的化抗体のいくつかの副作用が観察されている。1つの例は、効率的なEGFR阻害と関連する皮疹の発症である。極端な場合、かかる発疹は、処置サイクルの低減および/または処置の未完終了をもたらし得る。
【0008】
ErbB−3は、それ自体のキナーゼ不活性は有さない。従って、ErbB−3受容体シグナル伝達の有効な阻害は、小分子チロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)では達成できない。最近、MEHD7945Aと称されるモノクローナル抗体が、EGFR陽性腫瘍の前臨床設定において有望であることが見出された。MEHD7945Aは、2つの同一の抗原結合部位を有するモノクローナル抗体である。MEHD7945Aは、各々が個々に、EGFRまたはErbB−3のいずれかに結合する能力を有するが他の受容体に結合する能力は有さない2つの同一の抗原結合アームを有するという、独自の特性を有する。一旦抗原が結合すると、この抗原結合部位は、他の抗原に対しては遮断される。従って、MEHD7945A(「ツー・イン・ワン」抗体と呼ばれる)は、EGFR標的化抗体およびHER3標的化抗体の両方とみなされ得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL−1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、200pM未満の半数成長阻害濃度(IC50)を有する。
【0010】
EGFRに結合する抗原結合部位を含む抗体がさらに提供され、この抗体は、EGFRに結合し、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する免疫グロブリン重鎖を含み、好ましくは、免疫グロブリン軽鎖可変領域は、図11Cのアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明は、ErbB−3に結合する抗原結合部位を含む抗体をさらに提供し、この抗体は、ErbB−3に結合し、図11Bに示されるVH鎖MF3178;MF3176;MF3163;MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061またはMF6065のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する免疫グロブリン重鎖を含み、好ましくは、免疫グロブリン軽鎖可変領域は、図11Cのアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明の抗体は、特記しない限り、好ましくは、二重特異性抗体である。
【0013】
本発明はさらに、本発明に従う抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
標識、好ましくは、in vivo画像化のための標識をさらに含む、本発明の抗体もまた提供される。
【0015】
本発明は、EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、またはこの腫瘍を有するリスクがある対象の処置のための方法をさらに提供し、この方法は、本発明に従う二重特異性抗体を対象に投与することを含む。EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、または有するリスクがある対象の処置における使用のための、本発明に従う二重特異性抗体がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】キメラ・カニクイザル−ヒトEGFRコード構築物の注釈付き配列を示す図である。再クローニングに使用した制限部位(Nhe1−Not1)は、大文字で示される。成熟ペプチドの開始は、下線付きの太字で示される。膜貫通領域は、太字のイタリックである。
図1B】キメラ・カニクイザル−ヒトEGFRコード構築物の注釈付き配列を示す図である。再クローニングに使用した制限部位(Nhe1−Not1)は、大文字で示される。成熟ペプチドの開始は、下線付きの太字で示される。膜貫通領域は、太字のイタリックである。
図1C】キメラ・カニクイザル−ヒトEGFRコード構築物の注釈付き配列を示す図である。再クローニングに使用した制限部位(Nhe1−Not1)は、大文字で示される。成熟ペプチドの開始は、下線付きの太字で示される。膜貫通領域は、太字のイタリックである。
図2】EGFR「交換ドメイン(swap−domain)・バリアント」の細胞外ドメイン(ECD)のアミノ酸配列を示す図である。ヒトEGFR ECDを骨格として使用し、特定のドメインを、ヒトHER3配列に交換した。HER3由来配列が示される。これらの配列を、c−Myc由来エピトープ・タグ、および血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の膜貫通領域と、イン・フレームでクローニングした。
図3】結合についての公知の文献由来の抗体との競合による、ファージ上で発現された抗EGFR Fab(MF番号;「免疫」ファージ・ライブラリーから選択される)のエピトープ・マッピングを示す図である。示された抗体の存在(または非存在)下での固定化されたEGFRへのファージ結合の、ELISAにおける試験の後に得られた、代表的OD値。ND:決定せず。コントロール抗体のドメイン特異性が示される。
図4】EGFR交換ドメイン変異体を使用したFACS染色による、選択された抗EGFR共通の軽鎖(cLC)IgG(PG番号)のエピトープ・マッピングの例を示す図である。抗体を、示されたEGFR交換変異体(HER3の対応するドメインに交換されたwtEGFR配列中のドメイン)を安定に発現するCHO細胞への結合について試験した。明るい線:陰性コントロール(無関係(irrelevant)の抗体)染色;暗い線:抗体染色。vIII:ドメインI、およびドメインIIのほとんどを欠く、EGFRバリアントIII。コントロール:陰性コントロール染色(無関係の一次抗体を添加)。決定されたドメイン特異性は、図の右側に示される。
図5】A431細胞のEGF誘導性死を阻害することにおける抗EGFR cLC IgG(PG番号)の機能性の例を示す図である。Y軸(計数)は、使用した抗体の濃度(X軸)の関数としての、代謝的に活性な細胞の数を連想させるアッセイの蛍光読み出しを示す。機能的EGFR遮断活性を示す抗体は、EGF誘導性細胞死を用量依存的に阻害し、従って、漸増する抗体濃度と共に、細胞の増強された成長を示す。臨床的に使用されている抗体セツキシマブを、内部標準として全ての実験において使用した(ひし形)。
図6】MEHD7945A抗体の活性と比較した、抗EGFR×HER3二重特異性のスクリーニングの概観を示す図である。全てのバーは、BxPC−3リガンド非依存的アッセイ(明るいバー)およびリガンド駆動性アッセイ(暗いバー)における二重特異性抗EGFR×HER3抗体の活性を示す。MEHD7945A抗体の平均活性は、それぞれ非依存的アッセイおよび依存的アッセイについて、明るい(上)線および暗い(下)線によって示される。成長を、未処置のコントロールに対して標準化した。800を超える二重特異性抗EGFR×HER3抗体をスクリーニングした。
図7】MEHD7945Aと比較した、2つの最良の性能の二重特異性体(PB番号)のBxPC−3細胞増殖阻害についてのIC50の決定を示す図である。Y軸は、コントロール状況(即ち、両方のリガンドの存在下での、阻害されない成長)に対して標準化した成長の百分率を示し、X軸は使用した抗体濃度を示す。IC50値が示される。
図8】同所性に移植されたBxPC−3細胞の成長に対する、二重特異性抗体(PB番号)処置の治療効果を示す図である。Y軸は、時間(X軸)の関数としての、マウスにおけるルシフェリンの注射後のバイオルミネセンス(BLI)読み出し(生存腫瘍細胞の数を連想させる)を示す。MEHD7945A抗体を参照として使用し、無関係の(抗RSV)抗体を陰性コントロール抗体として使用した(四角)。明確さのために、エラー・バーは図から省略した。
図9】0.3mg/kg用量のMEHD7945Aのものと比較した、リード二重特異性体PB4522の治療効果を示す図である。Y軸は、時間(X軸)の関数としての、生存腫瘍細胞の数を連想させるin vivoバイオルミネセンス(BLI)を示す。NC:陰性コントロール抗体(抗RSV、30mg/kg用量)。明確さのために、エラー・バーは図から省略した。
図10】0.3mg/kgのMEHD7945A(群G4)またはPB4522(群G7)のいずれかで処置したマウスから単離された腫瘍の研究の38日目にex vivoで測定した腫瘍重量を示す図である。左のパネルは、全ての個々のマウスの腫瘍の重量を示し、右のパネルは、処置した7匹のマウスの平均重量を示す。**p<0.05。
図11AA図11は、本発明の抗体のVH鎖、共通の軽鎖および重鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。図11中にリーダー配列が示される場合、これは、VH鎖の一部でも抗体の一部でもなく、典型的には、タンパク質を産生する細胞におけるタンパク質のプロセシングの間に切断される。テキストでの大文字MGとその後の数字とによって示された重鎖のVH鎖配列は、文字VHが先行する同じ数字によって本明細書に示される。図11bは、erbB−3結合抗体MF6055〜MF6074の重鎖可変領域配列のアミノ酸配列をさらに特定する。この可変重鎖配列は、重鎖可変領域MF3178のバリアントである。点は、その位置におけるMF3178と同じアミノ酸を示す。CDR領域は、スペースによって分離されており、太字で示される。
図11AB】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AC】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AD】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AE】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AF】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AG】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AH】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11AI】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BA】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BB】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BC】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BD】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BE】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BF】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BG】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BH】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BI】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BJ】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BK】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BL】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11BM】本発明の抗体のVH鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11C】本発明の抗体の共通の軽鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図11D】本発明の抗体の重鎖の核酸およびアミノ酸配列を示す図である。
図12】異なるIgGで刺激した初代ケラチノサイトにおけるCXCL14およびRnase7発現を示す図である。発現を、2つの抗体濃度の存在下でQ−PCRによって測定した。
図13A】高いEGFR発現細胞(A431)に対する、MEHD7945Aおよびセツキシマブと比較した、非フコシル化されたPB4522のADCC活性を示す図である。「コントロールAb」は、破傷風トキソイドに対するIgGである。
図13B】中程度のEGFR発現細胞(A549)に対する、MEHD7945Aおよびセツキシマブと比較した、非フコシル化されたPB4522のADCC活性を示す図である。「コントロールAb」は、破傷風トキソイドに対するIgGである。
図13C】中程度のEGFR発現細胞(BxPC3)に対する、MEHD7945Aおよびセツキシマブと比較した、非フコシル化されたPB4522のADCC活性を示す図である。「コントロールAb」は、破傷風トキソイドに対するIgGである。
図14】HRG依存的N87アッセイにおけるHER3モノクローナル抗体の滴定曲線を示す図である。PG6058、PG6061およびPG6065は、PG3178のバリアントである。PG1337は、破傷風トキソイドに特異的な陰性コントロールである。データは、各プレート上に存在するリガンドを用いた基底増殖に対して標準化した。
図15A】HER3モノクローナル抗体のCIEX−HPLCプロファイルを示す図である。PG6058、PG6061およびPG6065は、PG3178のバリアントである。VH領域の計算された等電点(pI)および主要ピークの保持時間(tR)が、各抗体について与えられる。
図15B】HER3モノクローナル抗体のCIEX−HPLCプロファイルを示す図である。PG6058、PG6061およびPG6065は、PG3178のバリアントである。VH領域の計算された等電点(pI)および主要ピークの保持時間(tR)が、各抗体について与えられる。
図16A】a)灰色球のエピトープ残基Arg426、および黒色球の、Arg426から11.2オングストローム半径以内の全ての、表面に露出した残基を示す、HER3結晶構造(PDB#4P59)を示す図である。
図16B】b)灰色で示されるArg426および遠位残基、および黒色で示されるArg426から11.2オングストローム半径以内の全ての、表面に露出した残基を用いた、エピトープ領域の溶媒に露出した表面を示す図である。
図16C】c)薄い灰色のエピトープ領域中の残基Arg426および暗い灰色の周囲の残基(全て標識されている)を示す図である。図16について、図および分析は、Yasara(www.yasara.org)で行った。
図17】HER3結晶構造中に示される、PG3178結合のための重要残基を示す図である。PG3178結合について同定された重要残基は、HER3結晶構造上で黒色球として示される(PDB ID#4P59)。
図18】HER3に対するPG3175のための重要結合残基としてのR426の確認を示す図である。2つの抗HER3抗体を、コントロール抗体として含めた。結合を、FACS滴定において決定し、結合を、WT HER3に対する結合と比較したAUCとして表現する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「抗原結合部位」とは、抗原に結合することが可能な抗体上の部位を指す。未改変の抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインによって形成され、かかる抗体の可変ドメイン中に存在する。一実施形態では、本発明の抗体可変ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、組み合わされたVH/VL可変ドメイン中に、またはVH領域中にだけ、もしくはVL領域中にだけ、存在し得る。抗原結合部位が、可変ドメインの2つの領域のうち一方中にだけ存在する場合、対応物の可変領域は、結合性可変領域のフォールディングおよび/または安定性に寄与し得るが、抗原の結合自体には顕著には寄与しない。
【0018】
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体のランダムな非特異的付着とは対照的に、抗体の相補性決定領域(CDR)ならびに抗原および可変ドメインの両方の特異的三次元構造を介して媒介され、これによって、これら2つの構造が正確に一緒に結合することが可能となる(錠および鍵と類似の相互作用)。抗体は、典型的には、抗原の一部のみ(エピトープと呼ばれる)を認識し、かかるエピトープは、他の、好ましくは非ヒトの化合物中にも同様に存在し得るので、EGFRおよび/またはErbB−3に結合する本発明に従う抗体は、かかる他の化合物が同じエピトープを含む場合、好ましくは他のヒト・タンパク質ではない、他のタンパク質も同様に認識し得る。従って、用語「結合」は、別のタンパク質または同じエピトープを含むタンパク質(複数可)への抗体の結合を排除しない。かかる他のタンパク質(複数可)は、好ましくは、ヒト・タンパク質ではない。その代わり、交差反応性は許容される。本発明において定義されるEGFR抗原結合部位およびErbB−3抗原結合部位は、典型的には、出生後の、好ましくは成人のヒトでは、細胞の膜上の他のタンパク質に結合しない。本発明に従う抗体は、典型的には、以下により詳細に概説されるように、少なくとも1×10e−6Mの結合親和性(即ち、平衡解離定数KD)で、EGFRおよびErbB−3に結合することが可能である。
【0019】
本明細書で使用する場合、抗原結合とは、その抗原への抗体の典型的結合能力を指す。EGFRに結合する抗原結合部位を含む抗体は、EGFRに結合し、他の点は同一の条件下で、同じ種の相同受容体ErbB−2およびErbB−4に、少なくとも100分の1低く結合する。ErbB−3に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ErbB−3に結合し、他の点は同一の条件下で、同じ種の相同受容体ErbB−2およびErbB−4には結合しない。ErbBファミリーが細胞表面受容体のファミリーであることを考慮すると、結合は、典型的には、受容体(複数可)を発現する細胞上で評価される。抗原への抗体の結合は、種々の方法で評価され得る。
【0020】
用語「結合を妨害する」とは、本明細書で使用する場合、抗体が、ErbB−3上のエピトープに対するものであり、抗体が、ErbB−3への結合についてリガンドと競合することを意味する。抗体は、リガンド結合を減退させ得、リガンドがErbB−3に既に結合している場合にはこれを置き換え得、または、例えば立体障害を介して、リガンドがErbB−3に結合する可能性を少なくとも部分的に防止し得る。抗原結合部位の結合を測定するための1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)と共にインキュベートし、未結合の抗体を除去し(好ましくは、洗浄工程によって)、結合した抗体の定常ドメインに結合する標識された抗体によって、結合した抗体を検出することである。測定値は、好ましくは、陽性および陰性参照と比較される。細胞の場合、この陰性参照は、抗原を発現しない細胞である。
【0021】
用語「抗体」とは、本明細書で使用する場合、タンパク質性分子、好ましくは、抗原上のエピトープに結合する1または複数の可変ドメインを含む免疫グロブリン・クラスのタンパク質に属するものを意味し、ここで、かかるドメインは、抗体の可変ドメイン由来であるか、またはかかる可変ドメインと配列相同性を共有する。本発明の抗体は、好ましくは、2つの可変ドメインを含む。治療的使用のための抗体は、好ましくは、処置される対象の天然抗体に可能な限り近い(例えば、ヒト対象に対してヒト抗体)。抗体結合は、特異性および親和性に関して表現され得る。特異性は、どの抗原またはそのエピトープが結合ドメインによって特異的に結合されるかを決定する。親和性は、特定の抗原またはエピトープへの結合の強さについての尺度である。特異的結合は、少なくとも1×10e−6Mの、より好ましくは1×10e−7Mの、より好ましくは1×10e−9Mよりも高い親和性(KD)での結合として定義される。典型的には、治療的適用のための抗体は、最大で1×10e−10Mまたはそれより高い親和性を有する。本発明の二重特異性抗体などの抗体は、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含む。本発明の抗体は、典型的には、好ましくはヒトIgGサブクラスの、二重特異性全長抗体である。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトIgG1サブクラスの抗体である。本発明のかかる抗体は、良好なADCC特性を有し、ヒトへのin vivo投与の際に好ましい半減期を有し、クローナル細胞における共発現の際にホモ二量体よりもヘテロ二量体を優先的に形成する改変された重鎖を提供できるCH3操作テクノロジーが存在する。例えば、抗体自体が低いADCC活性を有する場合、抗体の定常領域を僅かに改変することによって、抗体のADCC活性は改善され得る(Junttila,T.T.、K.Parsonsら(2010)、「Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2−Amplified Breast Cancer」、Cancer Research 70(11):4481〜4489)。
【0022】
本発明の抗体は、好ましくは、「全長」抗体である。本発明に従う用語「全長」は、本質的に完全な抗体を含むと定義されるが、かかる抗体は、インタクトな抗体の全ての機能を有する必要はない。誤解を避けるために、全長抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各鎖は、定常(C)領域および可変(V)領域を含み、これらは、CH1、CH2、CH3、VH、およびCL、VLと称されるドメインへと解体され得る。抗体は、Fab部分中に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメインを介して、主にFc部分を介して、免疫系の分子および細胞と相互作用できる。用語「可変ドメイン」、「VH/VL対」、「VH/VL」は、本明細書で相互交換可能に使用される。本発明に従う全長抗体は、所望の特徴を提供する変異が存在し得る抗体を包含する。かかる変異は、これらの領域のいずれかの実質的な部分の欠失であるべきではない。しかし、得られた抗体の結合特徴を本質的に変更することなしに1または数個のアミノ酸残基が欠失されている抗体は、用語「全長抗体」内に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域中に、1〜20アミノ酸残基の挿入、欠失またはそれらの組み合わせを有し得る。
【0023】
全長IgG抗体は、それらの好ましい半減期、および免疫原性を理由として完全に自己の(ヒト)分子に近くある必要性に起因して、好ましい。本発明の抗体は、好ましくは、二重特異性IgG抗体、好ましくは、二重特異性全長IgG1抗体である。IgG1は、ヒトにおけるその長い循環半減期に基づいて好ましい。本発明に従う二重特異性IgG抗体は、ヒトIgG1であることが好ましい。
【0024】
用語「二重特異性」(bs)とは、抗体の1つの部分(上に定義される)が抗原上の1つのエピトープに結合する一方で、第2の部分がその抗原上または異なる抗原上の異なるエピトープに結合することを意味する。この異なるエピトープは、典型的には、異なる抗原上に存在する。本発明によれば、この第1および第2の抗原は、事実上、2つの異なるタンパク質である。好ましい二重特異性抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体の部分を含む抗体であり、結果として、2つの異なる型の抗原に結合する。二重特異性抗体の一方のアームは、典型的には、1つの抗体の可変ドメインを含み、他方のアームは、別の抗体の可変ドメインを含む。本発明の二重特異性抗体の重鎖可変領域は、互いに異なるが、軽鎖可変領域は、好ましくは、本発明の二重特異性抗体において同じである。即ち、本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、同じ軽鎖を有する2つの親抗体(即ち、共通の軽鎖の抗体)から構成される。異なる重鎖可変領域が同じまたは共通の軽鎖と結び付けられている二重特異性抗体は、共通の軽鎖を有する二重特異性抗体とも呼ばれる。従って、両方のアームが共通の軽鎖を含む、本発明に従う二重特異性抗体が、さらに提供される。
【0025】
好ましい二重特異性抗体は、単一細胞における2つの異なる重鎖および1つの共通の軽鎖の共発現によって得ることができる。野生型CH3ドメインが使用される場合、2つの異なる重鎖および1つの共通の軽鎖の共発現は、3つの異なる種、AA、ABおよびBBを生じる。所望の二重特異性産物(AB)の百分率を増加させるために、CH3操作が使用でき、または言い換えれば、本明細書の以下に定義されるような、適合的なヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用できる。
【0026】
用語「適合的なヘテロ二量体化ドメイン」とは、本明細書で使用する場合、操作されたドメインA’が、操作されたドメインB’とのヘテロ二量体を優先的に形成し、逆もまた然りであるが、A’−A’間およびB’−B’間のホモ二量体化は好まないように操作されている、タンパク質ドメインを指す。
【0027】
本発明に従う用語「共通の軽鎖」とは、同一であり得るか、または全長抗体の結合特異性は影響されないが、いくらかのアミノ酸配列差異を有し得る軽鎖を指す。例えば、本明細書で使用する場合、共通の軽鎖の定義の範囲内で、例えば、保存的アミノ酸変化、重鎖とペアリングした場合に結合特異性に寄与しないまたは部分的にのみ寄与する領域中のアミノ酸の変化を導入および試験することなどによって、同一ではないがなおも機能的に等価物である軽鎖を調製および見出すことが可能である。用語「共通の軽鎖」、「共通のVL」、「単一軽鎖」、「単一VL」は、全て、用語「再編成された」の付加ありまたはなしで、本明細書で相互交換可能に使用される。機能的な抗原結合ドメインを有する抗体を形成するために異なる重鎖と組み合わせられるヒト軽鎖を共通の軽鎖として使用することは、本発明の一態様である(WO2004/009618、WO2009/157771、Merchantら、1998、Nissimら、1994)。好ましくは、共通の軽鎖は、生殖系列配列を有する。好ましい生殖系列配列は、ヒト・レパートリーにおいて頻繁に使用され、良好な熱力学的安定性、収量および溶解度を有する軽鎖可変領域である。好ましい生殖系列軽鎖は、O12に基づいており、好ましくは、再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVκ1−3901/IGJκ101またはその断片もしくは機能的等価物(即ち、同じIgVκ1−39遺伝子セグメントであるが、異なるIGJκ遺伝子セグメント)である(imgt.orgにおけるIMGTデータベース・ワールドワイド・ウェブに従う命名法)。従って、共通の軽鎖が、生殖系列軽鎖、好ましくは、IgVKl−39遺伝子セグメントを含む再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖、最も好ましくは、再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVKl−3901/IGJKl01である、本発明に従う二重特異性抗体が、さらに提供される。用語、再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVκ1−3901/IGJκ101、IGKV1−39/IGKJ1、huVκ1−39軽鎖、または短くhuVκ1−39は、本出願を通じて相互交換可能に使用される。明らかに、当業者は、「共通の」が、そのアミノ酸配列が同一でない、軽鎖の機能的等価物もまた指すことを認識する。機能的結合領域の形成に実質的に影響しない変異(欠失、置換、付加)が存在する、上記軽鎖の多くのバリアントが存在する。本発明の軽鎖はまた、1〜5アミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせを有する、本明細書の上で特定した軽鎖であり得る。
【0028】
VHが、第1の抗原を特異的に認識することが可能であり、免疫グロブリン可変ドメイン中のVHとペアリングしたVLが、第2の抗原を特異的に認識することが可能である抗体もまた、企図される。得られたVH/VL対は、抗原1または抗原2のいずれかに結合する。例えばWO2008/027236、WO2010/108127およびSchaeferら(Cancer Cell 20、472〜486、2011年10月)に記載される、かかるいわゆる「ツー・イン・ワン抗体」は、本発明の二重特異性抗体とは異なり、さらに「ツー・イン・ワン抗体」と呼ばれる。かかる「ツー・イン・ワン」抗体は、同一のアームを有し、本発明の抗体ではない。
【0029】
EGFRは、Her−またはcErbB−1、−2、−3および−4と称される、4つの受容体チロシン・キナーゼ(RTK)のファミリーのメンバーである。EGFRは、4つのサブ・ドメインから構成される細胞外ドメイン(ECD)を有し、そのうち2つはリガンド結合に関与し、そのうちの1つはホモ二量体化およびヘテロ二量体化に関与する1、2(概説については、参考文献3を参照のこと)。このセクションにおいて使用される参考文献番号は、「本明細書で引用した参考文献」の見出しのリスト中の参考文献の番号付けを指す。EGFRは、種々のリガンドからの細胞外シグナルを統合して、多様な細胞内応答を生じる4、5。EGFRによって活性化される主要なシグナル伝達経路は、Rasマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)分裂促進性シグナル伝達カスケードから構成される。この経路の活性化は、チロシン・リン酸化されたEGFRへのGrb2の動員によって開始される6、7。これは、Grb2が結合したRasグアニン・ヌクレオチド交換因子サン・オブ・セブンレス(Son of Sevenless)(SOS)を介したRasの活性化をもたらす。さらに、PI3キナーゼ−Aktシグナル伝達経路もまた、EGFRによって活性化されるが、この活性化は、Her3の共発現が存在する場合には、はるかに強い8、9。EGFRは、いくつかのヒト上皮悪性腫瘍、特に、乳房、膀胱、非小細胞肺癌肺、結腸、卵巣、頭頸部および脳の癌に関与する10。自己分泌活性化ループを生じる、遺伝子中の活性化変異、ならびに受容体およびそのリガンドの過剰発現が見出されている(概説については、参考文献11を参照のこと)。従って、このRTKは、癌治療のための標的として広範に使用されている。RTKを標的化する小分子阻害剤および細胞外リガンド結合ドメインに対するモノクローナル抗体(mAb)の両方が開発されており、主に選択された群の患者についてであるが、いくつかの臨床的成功がこれまでに示されている12。ヒトEGFRタンパク質およびそれをコードする遺伝子についてのデータベース登録番号は、(GenBank NM_005228.3)である。登録番号は、標的としてのEGFRタンパク質の同定のさらなる方法を提供するために主に与えられ、抗体によって結合されるEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、一部の癌において生じるものなどの、コード遺伝子中の変異などに起因して、変動し得る。本明細書でEGFRに対する言及がなされる場合、この言及は、特記しない限り、ヒトEGFRを指す。EGFRに結合する抗原結合部位は、EGFRおよびその種々のバリアント、例えば、一部のEGFR陽性腫瘍上で発現されるものに結合する。
【0030】
用語「ErbB−3」とは、本明細書で使用する場合、ヒトにおける、ERBB3遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。この遺伝子またはタンパク質の代替名は、HER3;LCCS2;MDA−BF−1;c−ErbB−3;c−ErbB3;ErbB3−S;p180−ErbB3;p45−sErbB3;およびp85−sErbB3である。本明細書でErbB−3に対する言及がなされる場合、この言及は、ヒトErbB−3を指す。ErbB−3に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ヒトErbB−3に結合する。ErbB−3抗原結合部位は、ヒト・オルソログと他の哺乳動物オルソログとの間の配列および三次構造の類似性に起因して、かかるオルソログにも結合し得るが、必ずしも結合しなくともよい。ヒトErbB−3タンパク質およびそれをコードする遺伝子についてのデータベース登録番号は、(NP_001005915.1 NP_001973.2、NC_000012.11 NC_018923.2 NT_029419.12)である。これらの登録番号は、標的としてのErbB−3の同定のさらなる方法を提供するために主に与えられ、抗体によって結合されるErbB−3タンパク質の実際の配列は、例えば、一部の癌において生じるものなどの、コード遺伝子中の変異などに起因して、変動し得る。ErbB−3抗原結合部位は、ErbB−3およびそれらの種々のバリアント、例えば、一部のErbB−2陽性腫瘍細胞によって発現されるものに結合する。ErbB−3に結合する抗原結合部位は、好ましくは、ErbB−3のドメインIIIに結合する。好ましい一実施形態では、ErbB−3陽性細胞に対する抗原結合部位の親和性(KD)は、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.39nM以下、より好ましくは0.99nM以下である。好ましい一実施形態では、本発明に従う抗体は、好ましくは、R426およびネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置する、表面に露出したアミノ酸残基からなる群から選択される、ErbB−3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する抗原結合部位を含む。好ましい一実施形態では、SK−BR−3細胞上のErbB−3に対する抗原結合部位の親和性(KD)は、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.39nM以下、好ましくは0.99nM以下である。一実施形態では、この親和性(KD)は、1.39〜0.59nMの範囲内である。好ましい一実施形態では、BT−474細胞上のErbB−3に対する抗原結合部位の親和性(KD)は、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.0nM以下、より好ましくは0.5nM未満、より好ましくは0.31nM以下、より好ましくは0.23nM以下である。一実施形態では、この親和性(KD)は、0.31〜0.15nMの範囲内である。上述の親和性は、好ましくは、定常状態細胞親和性測定を使用して測定され、ここで、実施例に記載されるように、細胞は、放射活性標識された抗体を使用して4℃でインキュベートされ、その後、細胞に結合した放射活性が測定される。
【0031】
ErbB−3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する抗原結合部位は、好ましくは、R426およびネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置する、表面に露出したアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸に結合する。アミノ酸残基番号付けは、Protein Data Bank(PDB)ID #4P59のものである。実施例に示されるように、ErbB−3のドメインIIIのこの領域に結合する抗体は、特に良好な結合特徴を示し、これらは、ErbB−3陽性細胞上のErbB−3の活性に対抗することが可能である。用語「ネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置する、表面に露出したアミノ酸残基」とは、R426から11.2オングストローム以内に空間的に位置するErbB−3タンパク質の三次構造中にあり、タンパク質の外側に少なくとも一部露出しており、その結果、抗体によって結合され得る、アミノ酸残基を指す。好ましくは、ネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置するアミノ酸残基は、L423、Y424、N425、G427、G452、R453、Y455、E480、R481、L482、D483およびK485からなる群から選択される(例えば、図16および表8を参照のこと)。好ましい一実施形態では、本発明に従う二重特異性抗体が提供され、この抗体は、ErbB−3のドメインIIIのR426を少なくとも結合する抗原結合部位を含む。好ましくは、この抗体は、ErbB−3のドメインIIIのR426と少なくとも結合する抗原結合部位を含む。
【0032】
本発明は、ErbB−3のドメインIIIのR426と少なくとも結合する抗原結合部位を含む二重特異性抗体をさらに提供する。好ましくは、この抗体は、ErbB−3のドメインIIIのR426と少なくとも結合する抗原結合部位を含む。好ましくは、この抗体は、図11Bに示される可変領域をさらに含む。好ましい一実施形態では、この抗体は、EGFRに対する結合部位をさらに含む。この可変領域は、好ましくは、図11aに示される配列を含む。
【0033】
本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、改善されたADCC活性を有する。抗体のADCCを増強するための1つの技術は、非フコシル化である(例えば、Junttila,T.T.、K.Parsonsら(2010)、「Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2−Amplified Breast Cancer」、Cancer Research 70(11):4481〜4489を参照のこと)。従って、非フコシル化されている、本発明に従う二重特異性抗体が、さらに提供される。代替的に、またはさらに、例えば糖鎖工学(Kyowa Hakko/Biowa、GlycArt(Roche)およびEureka Therapeutics)および変異誘発(XencorおよびMacrogenics)を含む複数の他の戦略が、ADCC増強を達成するために使用され得、これらの戦略は全て、低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善し、および/または低親和性阻害性FcγRIIbへの結合を低減させようとするものである。本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、ADCC活性を増強するために非フコシル化されている。本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、正常CHO細胞中で産生される同じ抗体と比較した場合、Fc領域中に、N結合型炭水化物構造の、低減された量のフコシル化を含む。
【0034】
本発明は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL−1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、200pM未満の半数成長阻害濃度(IC50)を有する。この抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、好ましくは100pM未満、好ましくは50pM未満、より好ましくは20pM未満のIC50を有する。本発明の抗体は、好ましくは、BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、1pM超のIC50を有する。
【0035】
本発明は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性をさらに提供し、この抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL−1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、他の点では同じ条件下でこれらの細胞の成長を阻害することについての抗体MEHD7945AのIC50よりも低い半数成長阻害濃度(IC50)を有する。抗EGFR/抗HER3抗体MEHD7945Aは、WO2010/108127に記載されている。好ましくは、BxPC3細胞またはBxPC3−luc2細胞のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについての、本発明の抗体のIC50は、他の点では同じ条件下でこれらの細胞の成長を阻害することについてのMEHD7945AのIC50の90%未満、好ましくは、抗体MEHD7945AのIC50の80%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満である。本発明の抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、好ましくは、他の点では同じ条件下でこれらの細胞の成長を阻害することについての抗体MEHD7945AのIC50の1%超のIC50を有する。本発明の抗体は、好ましくは、BxPC3細胞(ATCC CRL 1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRおよびErbB−3リガンド誘導性成長を阻害することについて、示されたIC50を有する。
【0036】
比較的低濃度の抗体において有効な抗体が、本発明において好ましい。かかる抗体は、より低い量でおよび/またはより低い頻度の投与で提供され得、抗体の有用性をより経済的なものにする。比較的低濃度の抗体において有効な抗体は、特により低い濃度において、腫瘍細胞の増殖をin vivoでより効率的に阻害する。かかる抗体はまた、より良い治療濃度域を有し、より低頻度でまたはより長い投与間隔で投与され得る。
【0037】
EGFRおよびErbB−3は各々、多くのリガンドに結合でき、BxPC3細胞またはBxPC3−luc2細胞の成長を刺激できる。一方または両方の受容体に対するリガンドの存在下で、BxPC3細胞またはBxPC3−luc2細胞の成長が刺激される。BxPC3細胞のEGFRおよび/またはErbB−3リガンド誘導性成長は、リガンドの非存在下および存在下で細胞の成長を比較することによって測定され得る。BxPC3またはBxPC3−luc2細胞のEGFRリガンド誘導性成長を測定するための好ましいEGFRリガンドは、EGFである。BxPC3またはBxPC3−luc2細胞のErbB−3リガンド誘導性成長を測定するための好ましいErbB−3リガンドは、NRG1である。このリガンド誘導性成長は、好ましくは、飽和量のリガンドを使用して測定される。好ましい一実施形態では、EGFは、培養培地1ml当たり100ngの量で使用される。NRG1は、好ましくは、10ng/mlの培養培地で使用される。半数成長阻害濃度(IC50)は、EGFRおよびErbB−3リガンド誘導されたBxPC3またはBxPC3−luc2細胞上で測定されることが好ましい。このアッセイでは、EGFがEGFRリガンドであり、NRG1がErbB−3リガンドであることが好ましい。IC50アッセイのための適切な試験は、実施例に記載されている。
【0038】
過剰なErbB−2の存在下では、ErbB−2/ErbB−3ヘテロ二量体は、このヘテロ二量体中のErbB−3鎖に対する検出可能なリガンドの非存在下で、発現細胞に成長シグナルを提供し得る。このErbB−3受容体機能は、本明細書で、ErbB−3のリガンド非依存的受容体機能と呼ばれる。このErbB−2/ErbB−3ヘテロ二量体は、ErbB−3リガンドの存在下でも、発現細胞に成長シグナルを提供する。このErbB−3受容体機能は、本明細書で、ErbB−3のリガンド誘導性受容体機能と呼ばれる。
【0039】
EGFおよびNRG1は、好ましくは、実施例に記載されるように、R&D systemsのカタログ番号396−HBおよび236−EGのEGFおよびNRG1である。
【0040】
ErbB−3に結合する抗原結合部位を含む本発明の抗体は、好ましくは、ErbB−3陽性細胞上のErbB−3のリガンド誘導性受容体機能を低減できる。この抗体は、EGFRとの二量体化を介したErbB−3シグナル伝達を低減することが可能である。この抗体は、ErbB−2を介したErbB−3シグナル伝達を低減することが可能である。このErbB−3陽性細胞は、好ましくは、ErbB−2についても陽性である。このErbB−3陽性細胞は、好ましくは、EGFRについても陽性である。ErbB−3のリガンド誘導性受容体機能は、好ましくは、ErbB−2およびErbB−3陽性細胞のErbB−3リガンド誘導性成長である。好ましい一実施形態では、このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、細胞表面上に少なくとも50.000のErbB−2受容体を含む。好ましい一実施形態では、少なくとも100.000のErbB−2受容体。好ましい一実施形態では、このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、細胞表面上に1.000.000以下のErbB−2受容体を含む。好ましい一実施形態では、このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、細胞表面上に1.000.000超のErbB−2受容体を含む。好ましい一実施形態では、このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、BxPC3細胞(ATCC CRL−1687)またはBxPC3−luc2細胞(Perkin Elmer 125058);MCF−7細胞(ATCC(登録商標)HTB−22(商標))、SKBR3細胞(ATCC(登録商標)HTB−30(商標))NCI−87細胞(ATCC(登録商標)CRL−5822(商標))またはA431細胞(ATCC(登録商標)CRL−1555(商標))である。好ましくは、このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、EGFR陽性でもある。このErbB−2およびErbB−3陽性細胞は、好ましくは、本明細書で上に示されるような、BxPC3またはBxPC3−luc2細胞である。
【0041】
本明細書で使用する場合、リガンド誘導性受容体機能は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30、40、50 60または少なくとも70%低減され、特に好ましい一実施形態では、このリガンド誘導性受容体機能は、80%、より好ましくは90%低減される。この低減は、好ましくは、本発明の二重特異性抗体の存在下でリガンド誘導性受容体機能を決定し、それを、他の点では同一の条件下で抗体の非存在下での同じ機能と比較することによって、決定される。これらの条件は、ErbB−3リガンドの存在を少なくとも含む。存在するリガンドの量は、好ましくは、ErbB−2およびErbB−3陽性細胞株の最大成長の半分を誘導する量である。この試験のためのErbB−2およびErbB−3陽性細胞株は、好ましくは、本明細書で上に示されるような、BxPC3またはBxPC3−luc2細胞である。ErbB−3リガンド誘導性受容体機能を決定するための試験および/またはリガンドは、好ましくは、実施例に特定されるような、ErbB−3リガンド誘導性成長低減についての試験である。
【0042】
ErbB−3に結合する抗原結合部位を含む本発明の抗体は、ErbB−3へのErbB−3リガンドの結合を好ましくは妨害する。かかる抗体は、特に、EGFRに結合する抗原結合部位もまた含む抗体の背景で、BxPC3またはBxPC3−luc2細胞のリガンド誘導性成長を低減する際により有効である。
【0043】
用語「ErbB−3リガンド」とは、本明細書で使用する場合、ErbB−3に結合および活性化するポリペプチドを指す。ErbB−3リガンドの例には、ニューレグリン1(NRG1)およびニューレグリン2(NRG2)が含まれるがこれらに限定されない(概説については、Olayioye MAら;EMBO J(2000)第19巻:3159〜3167頁)。この用語は、天然に存在するポリペプチドの生物学的に活性な断片および/またはバリアントを含む。
【0044】
用語「EGFRリガンド」とは、本明細書で使用する場合、EGFRに結合および活性化するポリペプチドを指す。EGFRリガンドの例には、EGF、TGF−α、HB−EGF、アンフィレグリン、ベータセルリンおよびエピレグリンが含まれるがこれらに限定されない(概説については、Olayioye MAら;EMBO J(2000)第19巻:3159〜3167頁)。この用語は、天然に存在するポリペプチドの生物学的に活性な断片および/またはバリアントを含む。
【0045】
本発明の抗体の第1の抗原結合部位は、好ましくは、EGFRのドメインIまたはドメインIIIに結合する。好ましくは、この抗体は、EGFRのドメインIIIに結合する。この抗体は、好ましくは、BxPC3またはBxPC3−luc2細胞のEGF誘導性増殖を阻害する。
【0046】
本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を含む。低い固有のADCC活性を有する抗体には、さらなるADCC活性が提供され得る。この抗体は、ADCC活性を増強するために操作され得る(概説については、Cancer Sci.2009年9月;100(9):1566〜72頁。Engineered therapeutic antibodies with improved effector functions.Kubota T、Niwa R、Satoh M、Akinaga S、Shitara K、Hanai Nを参照のこと)。ADCCを惹起することにおける抗体またはエフェクター細胞の効力を決定するための、いくつかのin vitro方法が存在する。これらには、クロム−51[Cr51]放出アッセイ、ユーロピウム[Eu]放出アッセイおよび硫黄−35[S35]放出アッセイがある。通常、表面に露出した特定の抗原を発現する標識された標的細胞株が、その抗原に特異的な抗体と共にインキュベートされる。洗浄後、Fc受容体CD16を発現するエフェクター細胞は、抗体標識された標的細胞と共に共インキュベートされる。標的細胞溶解は、引き続いて、シンチレーション・カウンターまたは分光光度法によって、細胞内標識の放出によって測定される。好ましい試験は、実施例中に詳述される。本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、非フコシル化されている。本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、正常CHO細胞中で産生される同じ抗体と比較した場合、Fc領域中に、N結合型炭水化物構造の、低減された量のフコシル化を含む。
【0047】
本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、ヒトにおいて使用される。この目的のために、本発明の抗体は、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0048】
ポリペプチドに対するヒトの寛容は、多くの異なる局面によって支配される。T細胞媒介性、B細胞媒介性などである免疫は、ポリペプチドに対するヒトの寛容に包含される変数の1つである。本発明の二重特異性抗体の定常領域は、好ましくは、ヒト定常領域である。この定常領域は、天然に存在するヒト抗体の定常領域と、1または複数の、好ましくは10以下の、好ましくは5アミノ酸以下の差異を含み得る。定常部分が、天然に存在するヒト抗体に完全に由来することが好ましい。本明細書で産生される種々の抗体は、ヒト抗体可変ドメイン・ライブラリーに由来する。かかるこれらの可変ドメインは、ヒトのものである。ユニークCDR領域は、ヒト由来、合成、または別の生物由来であり得る。可変領域は、CDR領域を別にして、天然に存在するヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する場合、ヒト可変領域とみなされる。本発明の抗体中のEGFR結合VH、ErbB−3結合VHまたは軽鎖の可変領域は、CDR領域のアミノ酸配列中の潜在的差異を数に入れずに、天然に存在するヒト抗体の可変領域と、1または複数の、好ましくは10以下の、好ましくは5アミノ酸以下の差異を含み得る。かかる変異は、体細胞超変異に関しても天然に存在する。
【0049】
抗体は、重鎖可変領域に関しては少なくとも、種々の動物種由来であり得る。例えば、マウス重鎖可変領域などをヒト化することは、一般的実務である。これが達成され得る種々の方法が存在し、マウス重鎖可変領域の3D構造とマッチする3D構造を有するヒト重鎖可変領域中へのCDR移植や、マウス重鎖可変領域から既知のまたは疑わしいT細胞エピトープまたはB細胞エピトープを除去することによって好ましくは実施される、マウス重鎖可変領域の脱免疫化、がその中にある。除去は、典型的には、エピトープ中のアミノ酸のうちの1または複数を、別の(典型的には保存的)アミノ酸に置換することにより、その結果、エピトープの配列は、もはやT細胞エピトープでもB細胞エピトープでもないように、改変される。
【0050】
脱免疫化されたマウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域よりも、ヒトにおいて免疫原性が低い。好ましくは、本発明の可変領域またはドメインは、さらにヒト化、例えば、ベニヤ化(veneered)などされる。ベニヤ化技術を使用することによって、免疫系が容易に遭遇する外面残基は、弱い免疫原性のベニヤ化表面または実質的に非免疫原性のベニヤ化表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供するために、ヒト残基で選択的に置き換えられる。本発明において使用される動物は、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
【0051】
本発明に従う二重特異性抗体は、好ましくは、ヒト抗体の定常領域を含む。それらの重鎖定常ドメインにおける差異に従って、抗体は、5つのクラスまたはアイソタイプにグループ分けされる:IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE。これらのクラスまたはアイソタイプは、対応するギリシャ文字を用いて名付けられた、上記重鎖のうち少なくとも1つを含む。好ましい一実施形態では、本発明は、本発明に従う抗体を提供し、その定常領域は、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEの定常領域の群から選択され、より好ましくは、この定常領域は、IgG定常領域、より好ましくはIgG1定常領域、好ましくは変異したIgG1定常領域を含む。IgG1の定常領域におけるいくつかのバリエーションが、天然に存在し、ならびに/または得られた抗体の免疫学的特性を変化させることなしに許容される。典型的には、約1〜10の間のアミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせが、定常領域において許容される。
【0052】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、この抗体は、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR3配列を少なくとも含み、またはこの抗体は、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列を含む。この抗体は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;またはMF3370の少なくともCDR3配列を含む。
【0053】
この抗体は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列、または図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なる、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。この抗体は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;またはMF3370のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。
【0054】
本発明は、ErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体もまた提供し、この抗体は、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるErbB−3特異的重鎖可変領域のCDR3配列を少なくとも含み、またはこの抗体は、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列を含む。この抗体は、好ましくは、MF3178、MF3176またはMF3163の少なくともCDR3配列、最も好ましくはMF3178の少なくともCDR3配列を含む。この抗体は、好ましくは、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるErbB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3配列、またはMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なる、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を、少なくとも含む。この抗体は、好ましくは、MF3178、MF3176またはMF3163の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3配列、最も好ましくは、MF3178の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0055】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、または図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる、重鎖CDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、図16Bもしくは図16Eに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるErbB−3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、または、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列を少なくとも含む。この第1の抗原結合部位は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;またはMF3370のCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、好ましくは、図11BのMF3178、MF3176またはMF3163の少なくともCDR3配列、最も好ましくは、MF3178の少なくともCDR3配列を含む。この第1の抗原結合部位は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列、または図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なる、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、好ましくは、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065からなる群から選択されるErbB3特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列、またはMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なる重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。この第1の抗原結合部位は、好ましくは、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;またはMF3370のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、好ましくは、MF3178、MF3176またはMF3163の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3配列、最も好ましくは、MF3178の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0056】
好ましい一実施形態は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、図11Aに示されるMF3998のCDR3配列、または図11Aに示されるMF3998のCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR3配列、またはMF3178のCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列を少なくとも含む。
【0057】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、MF3998のCDR1、CDR2およびCDR3配列、またはMF3958のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なるCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR1、CDR2およびCDR3配列、またはMF3178のCDR1、CDR2およびCDR3配列と、多くて3つ、好ましくは多くて2つ、好ましくは多くて1つのアミノ酸が異なるCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。
【0058】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、MF3998のCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR3配列を少なくとも含む。
【0059】
本発明は、一実施形態では、ErbB−2に結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、MF3998のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。
【0060】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、MF4280のCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR3配列を少なくとも含む。
【0061】
本発明は、一実施形態では、ErbB−2に結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を提供し、この第1の抗原結合部位は、MF4280のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含み、第2の抗原結合部位は、MF3178のCDR1、CDR2およびCDR3配列を少なくとも含む。
【0062】
CDR配列は、好ましくは、抗体の結合効力または安定性を改善するために、例えば、最適化目的のために変化させられる。最適化は、例えば変異誘発手順によって実施され、その後、得られた抗体の安定性および/または結合親和性が好ましくは試験され、改善されたEGFRまたはErbB3特異的CDR配列が好ましくは選択される。当業者は、本発明に従う少なくとも1つの変更されたCDR配列を含む抗体バリアントを作製することが十分に可能である。例えば、保存的アミノ酸置換が適用される。保存的アミノ酸置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水性残基の、別の疎水性残基への置換、および1つの極性残基の別の極性残基への置換、例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、またはグルタミンのアスパラギンへの置換が含まれる。
【0063】
本発明は、一実施形態では、EGFRに結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、この可変ドメインのVH鎖は、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752のアミノ酸配列を含み、または図11AのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752のアミノ酸配列を含む。この抗体は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインを含み、この可変ドメインのVH鎖は、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370のアミノ酸配列を含み、または図11AのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370のアミノ酸配列を含む。EGFRに結合する可変ドメインを含む抗体は、好ましくは、ErbB−3に結合する可変ドメインをさらに含む。EGFRに結合する可変ドメインを含む抗体は、好ましくは、ErbB−3に結合する可変ドメインを好ましくはさらに含む二重特異性抗体である。Erb−B3に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、図11Bに示されるVH鎖MF3178;MF3176;MF3163;MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH MF3178;MF3176;MF3163;MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065のアミノ酸配列を含む。Erb−B3に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、MF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含み、または図11AのそれぞれのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるMF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、MF3178のアミノ酸配列を含み、またはこのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるMF3178のアミノ酸配列を含む。
【0064】
好ましくは、本明細書で特定されるようなVHまたはVL中の上述のアミノ酸の挿入、欠失および置換は、CDR3領域中には存在しない。上述のアミノ酸の挿入、欠失および置換は、好ましくは、CDR1およびCDR2領域中にも存在しない。上述のアミノ酸の挿入、欠失および置換は、好ましくは、FR4領域中にも存在しない。
【0065】
本発明は、ErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体をさらに提供し、この可変領域のVH鎖は、図11Bに示されるVH鎖MF3178;MF3176;MF3163もしくはMF3307のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH MF3178;MF3176;MF3163;MF3307;MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065のアミノ酸配列を含む。ErbB3に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、VH鎖MF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH鎖MF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、図11Bに示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含み、またはこのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。抗体は、EGFRに結合する可変ドメインを好ましくはさらに含む。EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、図11AのVH鎖のアミノ酸配列を含む。
【0066】
本発明に従う抗体がさらに提供され、この抗体は、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域配列を含み、またはこの抗体は、図11Aに示されるMF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752の重鎖可変領域配列と、多くて15アミノ酸が異なる、重鎖可変領域配列を含む。
【0067】
本発明に従う抗体がさらに提供され、この抗体は、図11Bに示されるMF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるErbB−3特異的重鎖可変領域配列を含み、またはこの抗体は、MF3178、MF3176、MF3163、MF3307、MF6055〜MF6074、好ましくはMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061もしくはMF6065の重鎖可変領域配列と、多くて15アミノ酸が異なる、重鎖可変領域配列を含む。
【0068】
本発明は、各々がEGFRに結合する2つの可変ドメインを含む抗体をさらに提供し、これらの可変ドメインのVHは、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752のアミノ酸配列を含み、または図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4002;MF4003;MF4010;MF4289;MF3370;MF3751;MF3752のアミノ酸配列を含み、このVH鎖は、図11AのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する。このVHは、好ましくは、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370のアミノ酸配列、または図11AのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Aに示されるVH鎖MF3998;MF4280;MF4003;MF4010;MF4289;もしくはMF3370のアミノ酸配列を含む。抗体のこれらの可変ドメインは、好ましくは、図11Aに示される配列を好ましくは有する、同一のVH鎖を含む。同一のVH鎖を有する可変ドメインを有する抗体は、二重特異性抗体ではない。これらのVH鎖は、図11に示されるのと同じVH鎖配列、または図11AのVH鎖配列に関して、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを別にして同じVH鎖配列を含む場合、本発明にとって同一である。
【0069】
本発明は、各々がErbB3に結合する2つの可変ドメインを含む抗体をさらに提供し、これらの可変ドメインのVHは、図11Bに示されるVH鎖MF3178;MF3176;MF3163もしくはMF3307のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH鎖MF3178;MF3176;MF3163もしくはMF3307のアミノ酸配列を含む。このVHは、好ましくは、VH鎖MF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH鎖MF3178、MF3176もしくはMF3163のアミノ酸配列を含む。このVHは、好ましくは、VH鎖MF3178のアミノ酸配列を含み、または図11BのVH鎖配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10を有する、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Bに示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。抗体のこれらの可変ドメインは、好ましくは、図11Bに示される配列を好ましくは有する、同一のVH鎖を含む。同一のVH鎖を有する可変ドメインを有する抗体は、二重特異性抗体ではない。これらのVH鎖は、図11Bに示されるのと同じVH鎖配列、または図11BのVH鎖配列に関して、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを別にして同じVH鎖配列を含む場合、同一である。
【0070】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3998のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3998のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列
を含む。
【0071】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF4280のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF4280のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列
を含む。
【0072】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF4003のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF4003のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列
を含む。
【0073】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF4010のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF4010のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列
を含む。
【0074】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF4289のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF4289のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3178のアミノ酸配列
を含む。
【0075】
本発明は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメインおよびErbB−3に結合する可変ドメインを含む抗体を提供し、
EGFRに結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3370のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3370のアミノ酸配列
を含み、
ErbB−3に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図11に示されるVH鎖MF3163のアミノ酸配列、または
− このVHに関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11に示されるVH鎖MF3163のアミノ酸配列
を含む。この抗体は、ヒトEGFRおよびマウスEGFRに結合し、マウスにおいて標的効果を研究するために使用され得る。
【0076】
図11中の配列と比較した場合、VH鎖の挙動は、典型的には、このVH鎖が、図11に示されるVH鎖のアミノ酸配列に関して、15アミノ酸超の変化を有する場合、顕著に異なり始める。図11に示されるVH鎖に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせを有するVH鎖は、図11に示されるVH鎖に関して、1、2、3、4または5アミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせ、図11に示されるVH鎖に関して、好ましくは1、2、3または4の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせ、好ましくは1、2または3の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせ、より好ましくは1または2の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせ、好ましくは1の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせを、好ましくは有する。1または複数のアミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域中には存在しない。これらは、好ましくは、FR4領域中にも存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
【0077】
好ましい一実施形態では、本発明は、図11Dに示されるアミノ酸配列、または図11Dの配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する図11Dのアミノ酸配列を含む重鎖を有する抗体を提供する。好ましい一実施形態では、この抗体は、図11Dに示されるアミノ酸配列、または図11Dの配列に関して、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する図11Dのアミノ酸配列を各々が含む、2つの重鎖を有する。この、多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、好ましくは1、2、3 4もしくは5アミノ酸の置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR3領域中には存在せず、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域中には存在せず、好ましくは、FR4領域中には存在しない。
【0078】
ヒト背景において非ヒト残基の含量を最小化することに向け、合理的方法が進化している。種々の方法が、抗体の抗原結合特性を別の抗体に首尾よく移植するために利用可能である。抗体の結合特性は、圧倒的に、CDR3領域の配列そのものにあり、これは、全体としての可変ドメインの適切な構造と組み合わせた、可変ドメイン中のCDR1およびCDR2領域の配列によってしばしば支持される。種々の方法が、CDR領域を別の抗体の適切な可変ドメインに移植するために、現在利用可能である。これらの方法の一部は、本明細書に参照により含まれる、J.C.Almagro1およびJ.Fransson(2008)Frontiers in Bioscience 13、1619〜1633において概説されている。従って、本発明は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含むヒトまたはヒト化二重特異性抗体をさらに提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、図11Aに示されるVH CDR3配列を含み、ErbB−3結合部位を含む可変ドメインは、図11Bに示されるVH CDR3領域を含む。EGFR結合部位を含むVH可変領域は、好ましくは、図11A中のVH鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域の配列を含む。ErbB−3結合部位を含むVH可変領域は、好ましくは、図11B中のVH鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域の配列を含む。CDR移植は、図11のVHのCDR領域を有するが、異なるフレームワークを有する、VH鎖を産生するためにも使用され得る。この異なるフレームワークは、別のヒトVHまたは異なる哺乳動物のものであり得る。
【0079】
上述の多くて15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10、好ましくは1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR3領域中には存在せず、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2またはCDR3領域中には存在せず、好ましくは、FR4領域中には存在しない。
【0080】
図11に示される可変重鎖配列を含む可変ドメインの軽鎖は、好ましくは、O12の、もしくはO12に基づいた生殖系列軽鎖、好ましくは、再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVκ1−3901/IGJκ101またはその断片もしくは機能的誘導体である(imgt.orgにおけるIMGTデータベース・ワールドワイド・ウェブに従う命名法)。再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVκ1−3901/IGJκ101、IGKV1−39/IGKJ1、huVκ1−39軽鎖または短くhuVκ1−39の用語が使用される。この軽鎖は、1、2、3、4または5アミノ酸の挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせを有し得る。上述の1、2、3、4または5アミノ酸の置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換またはそれらの組み合わせは、好ましくは、VL鎖のCDR3領域中には存在せず、好ましくは、VL鎖のCDR1、CDR2もしくはCDR3領域またはFR4領域中には存在しない。
【0081】
種々の方法が、二重特異性抗体を産生するために利用可能である。1つの方法には、細胞における2つの異なる重鎖および2つの異なる軽鎖の発現、ならびに細胞によって産生される抗体を収集することを伴う。この方法で産生された抗体は、典型的には、重鎖および軽鎖の異なる組み合わせを有する一群の抗体を含み、その一部は、所望の二重特異性抗体である。この二重特異性抗体は、引き続いて、この一群の抗体から精製され得る。細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性抗体の比率は、種々の方法で増加され得る。本発明の好ましい一実施形態では、この比率は、細胞において、2つの異なる軽鎖を発現させず、2つの本質的に同一の軽鎖を発現させることによって、増加される。この概念は、当技術分野で、「共通の軽鎖」方法とも呼ばれる。本質的に同一な軽鎖が、2つの異なる重鎖と一緒に機能して、異なる抗原結合部位および付随する異なる結合特性を有する可変ドメインの形成を可能にする場合、細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性抗体の比率は、2つの異なる軽鎖の発現よりも顕著に改善される。細胞によって産生される二重特異性抗体の比率は、2つの同一の重鎖のペアリングよりも、2つの異なる重鎖の互いとのペアリングを刺激することによって、さらに改善され得る。当技術分野は、重鎖のかかるヘテロ二量体化が達成され得る種々の方法を記載している。1つの方法は、「ノブ・イントゥー・ホール」二重特異性抗体を作製することである。米国特許出願公開第20030078385号(Arathoonら、−Genentech)を参照のこと。別の方法は、Gunasekaran(JBC 2010、第285巻、19637〜19646頁)に記載されるような荷電操作を使用することによるものである。別のおよび好ましい方法は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第61/635,935号とそれに続く米国特許出願第13/866,747およびPCT出願PCT/NL2013/050294(WO2013/157954A1)に記載されている。(単一細胞から)二重特異性抗体を産生するための方法および手段は、開示されており、それによって、単一特異性抗体の形成よりも、二重特異性抗体の形成が優先される手段が提供される。これらの方法は、本発明においても好ましく使用され得る。従って、本発明は、(単一細胞から)本発明に従う二重特異性抗体を産生するための方法を提供し、この二重特異性抗体は、接触面を形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、この方法は、この細胞中に、a)第1のCH3ドメイン含有重鎖をコードする第1の核酸分子、b)第2のCH3ドメイン含有重鎖をコードする第2の核酸分子を用意することを含み、これらの核酸分子には、第1および第2のCH3ドメイン含有重鎖の優先的ペアリングのための手段が提供され、この方法は、宿主細胞を培養するステップ、およびこれら2つの核酸分子の発現を可能にするステップ、および培養物から二重特異性抗体を回収するステップをさらに含む。この第1および第2の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクターまたは遺伝子送達ビヒクルの一部であり得、宿主細胞のゲノムの同じ部位において組み込まれ得る。あるいは、この第1および第2の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。
【0082】
好ましい一実施形態は、単一細胞から本発明に従う二重特異性抗体を産生するための方法を提供し、この二重特異性抗体は、接触面を形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、この方法は、
− a)EGFRに結合し、第1のCH3ドメインを含む抗原結合部位を含む重鎖をコードする第1の核酸分子、およびb)ErbB−3に結合し、第2のCH3ドメインを含む抗原結合部位を含む重鎖をコードする第2の核酸分子を有する細胞を用意することを含み、これらの核酸分子には、これら第1および第2のCH3ドメインの優先的ペアリングのための手段が提供され、
この方法は、上記細胞を培養するステップ、およびこれら2つの核酸分子によってコードされるタンパク質の発現を可能にするステップ、および培養物から二重特異性IgG抗体を回収するステップをさらに含む。特に好ましい一実施形態では、この細胞は、共通の軽鎖をコードする第3の核酸分子もまた有する。この第1、第2および第3の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクターまたは遺伝子送達ビヒクルの一部であり得、宿主細胞のゲノムの同じ部位において組み込まれ得る。あるいは、この第1、第2および第3の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。好ましい共通の軽鎖は、上記のように、O12に基づき、好ましくは、再編成された生殖系列ヒト・カッパ軽鎖IgVκ1 3901/IGJκ101である。この第1および第2のCH3ドメインの優先的ペアリングのための手段は、好ましくは、重鎖コード領域のCH3ドメイン中の、対応する変異である。本質的に二重特異性抗体のみを産生するための好ましい変異は、第1のCH3ドメイン中のアミノ酸置換L351KおよびT366K(Kabatに従う番号付け)、ならびに第2のCH3ドメイン中のアミノ酸置換L351DおよびL368Eであり、または逆もまた然りである。従って、二重特異性抗体を産生するための本発明に従う方法がさらに提供され、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351KおよびT366K(Kabatに従う番号付け)を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351DおよびL368Eを含み、この方法は、上記細胞を培養するステップ、およびこれらの核酸分子によってコードされるタンパク質の発現を可能にするステップ、および培養物から二重特異性抗体を回収するステップをさらに含む。二重特異性抗体を産生するための本発明に従う方法もまた提供され、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351DおよびL368E(Kabatに従う番号付け)を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351KおよびT366Kを含み、この方法は、上記細胞を培養するステップ、およびこれらの核酸分子の発現を可能にするステップ、および培養物から二重特異性抗体を回収するステップをさらに含む。これらの方法によって産生され得る抗体もまた、本発明の一部である。これらのCH3ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、IgG1ヘテロ二量体化ドメインである。これらのCH3ヘテロ二量体化ドメインを含む重鎖定常領域は、好ましくは、IgG1定常領域である。
【0083】
一実施形態では、本発明は、本発明に従う抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子を提供する。核酸分子(典型的には、in vitroの、単離されたまたは組換え核酸分子)は、好ましくは、図11Aもしくは図11Bに示される重鎖可変領域、または1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換もしくはそれらの組み合わせを有する、図11Aもしくは図11Bに示される重鎖可変領域をコードする。好ましい一実施形態では、この核酸分子は、図11に示される配列を含む。別の好ましい一実施形態では、この核酸分子は、図11に示される核酸と同じアミノ酸配列をコードするが、1または複数の異なるコドンをコードするので、異なる配列を有する。本発明は、図11Dの重鎖をコードする核酸配列をさらに提供する。
【0084】
本発明で使用される核酸分子は、排他的ではないが典型的には、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。代替的な核酸は、当業者に入手可能である。本発明に従う核酸は、例えば、細胞中に含まれる。この核酸が細胞において発現される場合、この細胞は、本発明に従う抗体を産生することができる。従って、本発明は、一実施形態では、本発明に従う抗体および/または本発明に従う核酸を含む細胞を提供する。この細胞は、好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは霊長類細胞、最も好ましくはヒト細胞である。本発明の目的のために、適切な細胞は、本発明に従う抗体および/または本発明に従う核酸を含むことが可能な、好ましくはそれを産生することが可能な、任意の細胞である。
【0085】
本発明は、本発明に従う抗体を含む細胞をさらに提供する。好ましくは、この細胞(典型的には、in vitroの、単離されたまたは組換え細胞)は、この抗体を産生する。好ましい一実施形態では、この細胞は、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞またはPER−C6(商標)細胞である。特に好ましい一実施形態では、この細胞は、CHO細胞である。本発明に従う細胞を含む細胞培養物がさらに提供される。種々の機関および会社が、例えば臨床使用のために、抗体の大規模産生のための細胞株を開発している。かかる細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞またはPER.C6(商標)細胞である。これらの細胞は、タンパク質の産生などの他の目的のためにも使用される。タンパク質および抗体の産業規模産生のために開発された細胞株は、本明細書で、産業的細胞株とさらに呼ばれる。従って、好ましい一実施形態では、本発明は、本発明の抗体の産生に、抗体の大規模産生のために開発された細胞株の使用を提供する。本発明は、図11に示されるVH、VLおよび/または重鎖をコードする核酸分子を含む、抗体を産生するための細胞をさらに提供する。好ましくは、この核酸分子は、図11aまたは11bに示される配列を含む。
【0086】
本発明は、本発明の細胞を培養すること、およびこの培養物から抗体を回収することを含む、抗体の生産方法をさらに提供する。好ましくは、この細胞は、無血清培地中で培養される。好ましくは、この細胞は、浮遊成長(suspension growth)に適応される。本発明に従う抗体の生産方法によって得ることができる抗体が、さらに提供される。この抗体は、好ましくは、培養の培地から精製される。好ましくは、この抗体は、アフィニティ精製される。
【0087】
本発明の細胞は、例えば、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞、293F細胞、NS0細胞、または臨床目的のための抗体産生についてのその適切性が既知の別の細胞型である。特に好ましい一実施形態では、この細胞は、ヒト細胞である。好ましくは、アデノウイルスE1領域またはその機能的等価物によって形質転換された細胞。かかる細胞株の好ましい例は、PER.C6(商標)細胞株またはその等価物である。特に好ましい一実施形態では、この細胞は、CHO細胞またはそのバリアントである。好ましくは、抗体の発現のためにグルタミン・シンテターゼ(GS)ベクター系を使用するバリアント。
【0088】
本発明は、本発明に従う抗体を含む、医薬組成物をさらに提供する。この医薬組成物は、好ましくは医薬的に許容される賦形剤または担体を好ましくは含む。好ましい一実施形態では、この医薬組成物は、5〜50mMのヒスチジン、100〜300mMのトレハロース、0.1〜03g/Lのポリソルベート20またはそれらの組み合わせを含む。pHは、好ましくは、pH=5.5〜6.5に設定される。好ましい一実施形態では、この医薬組成物は、25mMのヒスチジン、220mMのトレハロース、0.2g/Lのポリソルベート20またはそれらの組み合わせを含む。pHは、好ましくはpH=5.5〜6.5、最も好ましくはpH=6に設定される。
【0089】
本発明の抗体は、好ましくは、標識、好ましくは、in vivo画像化のための標識をさらに含む。かかる標識は、典型的には、治療的適用には必要でない。例えば診断設定では、例えば、身体中の標的細胞を可視化する際に、標識は有用であり得る。種々の標識が適しており、多くが当技術分野で周知である。好ましい一実施形態では、この標識は、検出のための放射活性標識である。別の好ましい一実施形態では、この標識は、赤外標識である。好ましくは、この赤外標識は、in vivo画像化に適している。種々の赤外標識が、当業者に入手可能である。好ましい赤外標識は、例えば、IRDye 800;IRDye 680RD;IRDye 680LT;IRDye 750;IRDye 700DX;IRDye 800RS IRDye 650;IRDye 700ホスホロアミダイト(phosphoramidite);IRDye 800ホスホロアミダイト(LI−COR USA;4647 Superior Street;Lincoln、Nebraska)である。
【0090】
本発明は、EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、またはこの腫瘍を有するリスクがある対象の処置のための方法であって、本発明に従う抗体または医薬組成物を対象に投与することを含む方法をさらに提供する。この処置の開始前に、この方法は、好ましくは、対象が、かかるEGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有するかどうか、またはそのリスクがあるかどうかを決定するステップを含む。本発明は、EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する、または有するリスクがある対象の処置における使用のための、本発明の抗体または医薬組成物をさらに提供する。
【0091】
腫瘍がEGFRについて陽性であるかどうかを確立するために、当業者は、例えば、EGFR増幅および/または免疫組織化学染色を決定できる。生検中の少なくとも10%の腫瘍細胞が、陽性であるべきである。生検はまた、20%、30% 40% 50% 60% 70%またはそれ超の陽性細胞を含み得る。腫瘍がHER3について陽性であるかどうかを確立するために、当業者は、例えば、HER3増幅および/または免疫組織化学における染色を決定できる。生検中の少なくとも10%の腫瘍細胞が、陽性であるべきである。生検はまた、20%、30% 40% 50% 60% 70%またはそれ超の陽性細胞を含み得る。
【0092】
この腫瘍は、好ましくは、EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性癌である。好ましくは、この陽性癌は、乳癌、例えば、早期乳癌である。しかし、本発明は、広範なEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性癌、例えば、乳癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、膀胱癌などに適用され得る。この対象は、好ましくはヒト対象である。この対象は、好ましくは、セツキシマブなどのEGFR特異的抗体を使用した抗体治療に適格な対象である。好ましい一実施形態では、この対象は、腫瘍、好ましくはEGFR/ErbB−3陽性癌、好ましくはEGFRモノクローナル抗体耐性表現型を有する腫瘍/癌を含む。
【0093】
患者に投与される本発明に従う抗体の量は、典型的には、治療濃度域中にあり、これは、治療効果を得るために十分な量が使用されるが、その量は、許容できない程度の副作用をもたらす閾値を超えないことを意味する。所望の治療効果を得るために必要とされる抗体の量が低くなるほど、治療濃度域は典型的には大きくなる。従って、低い投薬量で十分な治療効果を発揮する本発明に従う抗体が好ましい。この投薬量は、セツキシマブの投薬レジームの範囲中にあり得る。この投薬量は、より低くてもよい。
【0094】
本発明に従う二重特異性抗体は、好ましくは、他の点では類似の過程の条件下のセツキシマブと比較して、より少ない皮膚毒性を誘導する。本発明に従う二重特異性抗体は、好ましくは、他の点では類似の過程の条件下のセツキシマブと比較して、より少ない炎症促進性ケモカイン、好ましくはCXCL14を産生する。本発明に従う二重特異性抗体は、好ましくは、他の点では類似の過程の条件下のセツキシマブと比較して、抗菌RNAses、好ましくはRnase7のより少ない障害を誘導する。
【0095】
本発明は、とりわけ、EGFR受容体およびErbB−3受容体を標的化し、癌細胞株のin vitroでの強力な増殖阻害およびin vivoでの腫瘍成長阻害を生じる抗体を記載する。EGFRまたはErbB−3のいずれかに特異的なヒトおよびFab結合アームの多様なパネルが同定された。これらは、重鎖のヘテロ二量体化を駆動するCH3領域中の変異を含む相補的発現ベクター中にそれらをクローニングすることによって、二重特異性抗体として産生された。多くの二重特異性抗体を、小規模で産生し、癌細胞株に対する結合アッセイおよび機能的アッセイにおいて試験した。種々の二重特異性抗体を選択し、BxPC3−luc2細胞株を使用する同所性異種移植モデルにおいて試験した。この細胞株は、EGFRおよびErbB−3受容体の両方を発現し、成長についてEGFRリガンドおよびErbB−3リガンドの存在に部分的に依存する。BxPC3モデルは、堅固でストリンジェントなスクリーニング・モデルである。本発明の抗体、特に本発明の二重特異性抗体は、低い毒性プロファイルを高い効力と組み合わせることができる。本発明の抗体は、種々の型および系統のEGFR標的化治療において有用であり得る。本発明の抗体は、両方のアームで同じ抗原(複数可)に結合する抗体と比較した場合、増加した治療濃度域を有し得る。本発明の二重特異性抗体は、MEHD7945A抗体と比較した場合に、in vitro、in vivoまたはそれらの組み合わせで、より良い成長阻害効果を示し得る。
【0096】
本発明の好ましい実施形態は、ヘレグリン・ストレス条件下での、本発明に従う抗体の使用を提供する。ヘレグリンは、ErbB−3陽性腫瘍細胞の成長に関与する増殖因子である。典型的には、腫瘍細胞が高レベルのヘレグリン(ヘレグリン・ストレスと呼ばれる)を発現する場合、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびラパチニブなどの現在公知の治療は、腫瘍成長を阻害することがもはや可能ではない。この現象は、ヘレグリン耐性と呼ばれる。しかし、驚くべきことに、本発明に従う抗体は、高レベルのヘレグリンを発現する腫瘍細胞の成長に対抗することも可能である。本明細書で使用する場合、ヘレグリンの発現レベルは、細胞が、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する場合、高いとみなされる。ヘレグリン発現レベルは、例えば、腫瘍RNAを用いたqPCRを使用して(例えば、Shamesら、PLOS ONE、2013年2月、第8巻、第2号、1〜10頁およびYonesakaら、Sci.transl.Med.、第3巻、第99号(2011);1〜11頁などに記載されている)、または血液、血漿もしくは血清サンプルを好ましくは使用する、例えばELISAなどのタンパク質検出方法を使用して(例えば、Yonesakaら、Sci.transl.Med.、第3巻、第99号(2011);1〜11頁などに記載されている)、測定される。
【0097】
EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する対象における転移の形成に対抗するための方法もまた提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有し、この方法は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を、対象に投与することを含む。EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞の接着斑の処置もしくは予防における使用のため、または転移の形成の処置もしくは予防における使用のための、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体もまた提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。EGFR、ErbB−3もしくはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞の接着斑の処置もしくは予防のための、または転移の形成の処置もしくは予防のための医薬の調製のための、本発明に従う二重特異性抗体の使用がさらに提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍は、好ましくは、乳癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、膀胱癌などである。最も好ましくは、この腫瘍は、乳癌である。従って、乳癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、膀胱癌など、好ましくは乳癌の細胞の接着斑のまたは転移の形成の処置または予防における使用のための、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む本発明に従う二重特異性抗体がさらに提供され、この細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。本発明に従う抗体は、典型的には、ErbB2およびErbB3陽性細胞上のErbB3のリガンド誘導性受容体機能、好ましくはリガンド誘導性成長を低減することが可能である。本発明に従う抗体は、好ましくは、ErbB−3のドメインIIIに結合する抗原結合部位を含む。ErbB−3陽性細胞に対するErbB−3抗原結合部位の親和性(KD)は、好ましくは2.0nM以下、より好ましくは1.39nM以下、より好ましくは0.99nM以下である。
【0098】
好ましい一実施形態では、本発明に従う抗体は、好ましくは、R426およびネイティブErbB−3タンパク質中のR426から11.2オングストローム以内に位置する、表面に露出したアミノ酸残基からなる群から選択される、ErbB−3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する抗原結合部位を含む。
【0099】
好ましい一実施形態は、EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍の処置のための医薬の調製のための本発明に従う抗体の使用を提供し、この腫瘍の細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍は、好ましくは、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、胃食道癌、食道癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝臓癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、明細胞肉腫、唾液腺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌または黒色腫である。最も好ましくは、この腫瘍は、乳癌である。従って、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、胃食道癌、食道癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝臓癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、明細胞肉腫、唾液腺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌もしくは黒色腫、好ましくは乳癌を有する、または有するリスクがある対象の処置における使用のための、本発明に従う抗体がさらに提供され、この癌の細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。
【0100】
高いヘレグリン・レベルは、典型的には、転移の形成(即ち、腫瘍細胞または腫瘍開始細胞の遊走、浸潤、成長および/または分化)の間に存在する。典型的には、腫瘍開始細胞は、CD44などの幹細胞マーカーに基づいて同定される。従って、これらのプロセスが、トラスツズマブおよびペルツズマブなどの現在公知の治療によっては、ほとんど対抗されない。本発明に従う抗体は、高レベルのヘレグリンを発現する腫瘍細胞または腫瘍開始細胞の成長および/または分化に対抗することが可能であるので、本発明に従うかかる抗体は、転移の形成に対抗するのにも特に適切である。従って、EGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍を有する対象における転移の形成に対抗するための方法が、さらに提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有し、この方法は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体を対象に投与することを含む。転移の形成の処置または予防における使用のための、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体もまた提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。転移の形成の処置または予防のための医薬の調製のための、本発明に従う二重特異性抗体の使用がさらに提供され、このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。このEGFR、ErbB−3またはEGFR/ErbB−3陽性腫瘍は、好ましくは、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、胃食道癌、食道癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝臓癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、明細胞肉腫、唾液腺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌または黒色腫である。最も好ましくは、この腫瘍は、乳癌である。従って、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、胃食道癌、食道癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝臓癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、明細胞肉腫、唾液腺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌または黒色腫の細胞、好ましくは乳癌細胞の転移の形成の処置または予防における使用のための、EGFRに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3に結合する第2の抗原結合部位を含む、本発明に従う二重特異性抗体がさらに提供され、これらの細胞は、BXPC3またはMCF7細胞のヘレグリン発現レベルの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%または95%であるヘレグリン発現レベルを有する。本発明に従う抗体は、典型的には、EGFRおよびErbB−3陽性細胞上のErbB−3のリガンド誘導性受容体機能、好ましくはリガンド誘導性成長を低減することが可能である。本発明に従う抗体は、好ましくは、EGFRのドメインIに結合する第1の抗原結合部位およびErbB−3のドメインIIIに結合する第2の抗原結合部位を含む。ErbB−3陽性細胞に対する第2の抗原結合部位の親和性は、好ましくは2.0nM以下、より好ましくは1.39nM以下、より好ましくは0.99nM以下である。
【0101】
一実施形態では、この二重特異性抗体は、本明細書で上により詳細に説明されるように、ヘレグリン・ストレス条件下での対象の処置における使用のためのものである。
【0102】
本発明の抗体は、懸濁(suspension)293F細胞における一過的トランスフェクション後に、>50mg/Lの水準で産生され得る。これらの二重特異性抗体は、70%超の収率で、98%よりも高い純度に精製され得る。分析的特徴付け研究は、二価単一特異性lgG1と匹敵する、二重特異性lgGl抗体プロファイルを示している。機能的活性に関して、本発明の二重特異性抗体は、MEHD7945Aと比較して、in vitroおよびin vivoで優れた強度(potency)を実証できる。
【0103】
明確さおよび簡潔な記述を目的として、特徴は、同じまたは別々の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載された特徴の全てまたは一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解される。
【0104】
(実施例)
細胞株:
BxPC−3−luc2(Perkin Elmer 125058)、CHO−K1(DSMZ ACC110)、293F(Invitrogen R790−07)、A549 ATCC(登録商標)CCL−185(商標)Homo sapiens肺癌腫、BxPC−3 ATCC(登録商標)CRL−1687(商標)Homo sapiens膵臓腺癌およびA431細胞DSMZ ACC 91を購入し、10%胎仔熱不活化ウシ血清(FBS)を補充した成長培地中で慣用的に維持した。293F Freestyle細胞を、Invitrogenから取得し、293 FreeStyle培地中で慣用的に維持した。BxPc−3−luc2(Bioware(登録商標)Ultra Light Producing)細胞株は、ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子(luc2)で安定にトランスフェクトされたルシフェラーゼ発現細胞株である。この細胞株を、ヒト・ユビキチンCプロモーターの制御下にルシフェラーゼ2遺伝子を含むレンチウイルス(pGL4 luc2)を形質導入することによって確立した。この細胞株は一般にBxPc−3−luc2と呼ばれ、これは、BxPC−3 ATCC(CRL−1687(商標))由来のヒト細胞膵臓腺癌細胞株である。in vitroでのバイオルミネセンス:およそ370光子/秒/細胞。正確な数は、画像化および培養条件に依存して変動する。
【0105】
カニクイザルEGFRおよびEGFR交換ドメイン構築物をコードするcDNAのクローニング
ヒト膜貫通ドメインおよび細胞内尾部に融合させたカニクイザルEGFRの細胞外ドメイン(ECD)を含むキメラ受容体をコードする構築物は、Micromet(米国特許出願公開第2010/0183615号A1)による公開された特許出願からコピーした。その配列は図1に示される。このcDNAを、GeneArtによって合成によって作製し、制限部位NheIおよびNotIを隣接させて、ベクターpMK−RQ中にクローニングした。このcDNAを、これら2つの酵素を使用してこのベクターから切り出し、次いで、哺乳動物発現ベクターpCDNA3.1中にクローニングした。このcDNAを、完全に配列決定して、これが設計された構築物と一致したことを確認したところ、変異は見出されなかった。
【0106】
エピトープ・マッピングを目的として、EGFRの細胞外ドメイン(ECD)中の異なるドメイン(L1、CR1、L2およびCR2、ドメインI〜IVとも称する:[1])をHER3の対応するドメインに交換した構築物を作製した:図2。次いで、これらを、細胞外cMyc由来エピトープ・タグ、および血小板由来増殖因子受容体の膜貫通領域とイン・フレームで、(抗原陰性)CHO細胞における一過的発現のために発現ベクター中にクローニングした。構築物を設計し、GeneArtにより合成し、引き続いて、Sfi1−Sal1断片としてpDisplay中にクローニングした。全ての構築物を配列決定したところ、正確であることが示され、発現について試験した。ドメインI交換バリアント(HER3のドメインIとHER1ドメインII〜IV)だけが、トランスフェクトされた細胞の表面上に検出可能な量のタンパク質を生じないことが示された(示さず)。
【0107】
実施例において使用される参考文献番号は、「実施例で引用した参考文献」の見出しのリスト中の参考文献の番号付けを指す。
【0108】
rhEGFR−Fc融合タンパク質、および抗原を過剰発現するA431細胞による、MeMoの免疫化
再編成されたヒトVL、ならびにマウス定常領域遺伝子に作動可能に連結された再編成されていないヒトVH、DHおよびJH遺伝子セグメントの多様なセットについてトランスジェニックであるマウス(MeMo(登録商標);WO2009/157771も参照のこと)を、14日間の間隔で、TitermaxGoldアジュバント(TMG、Sigma Aldrich、カタログ番号T2684)で乳化させたEGFR−Fcタンパク質(R&D Systems、カタログ番号344−ER)で免疫化した。MeMoは、抗原への曝露に際して共通の軽鎖(cLC)抗体を産生する、即ち:Memoからの全ての抗体は、本質的に同じ軽鎖を保有するが、それらの重鎖は多様化されている。0日目および14日目に、マウスに皮下(s.c.)でワクチン接種して、マウスのTMG誘導性の不快感を最小化した。全ての後の時点では、マウスを、腹腔内(i.p.)経路を介して免疫化して、脾臓において抗原が効率的に取り込まれ提示されることを保証した。35日目に、抗EGFR血清力価を、EGFR過剰発現性細胞株A431を使用してFACSによって決定した。35日目に血清力価>1/1,000を生じたマウスは、42日目に、PBS中に溶解させたEGFR−Fcタンパク質による最終腹腔内追加免疫を受け、その3日後に脾臓およびリンパ節を収集した。35日目に低すぎるEGFR血清力価を有するマウスは、49日目にTMG中のEGFR−Fcのさらなる腹腔内追加免疫を受けた。引き続いて、血清力価を、ELISAによって56日目に決定した。56日目に受け入れ基準を上回る血清力価を有していたマウスは、63日目に、PBS中に溶解させたEGFR−Fcタンパク質による最終腹腔内追加免疫を受け、その後脾臓およびリンパ節を収集した。マウスに、125μlのTMGまたは200μlのPBS中に溶解させた20μgのEGFR−Fcタンパク質を注射した。
【0109】
EGFR−Fcで免疫化した2匹のMeMoマウスは、A431細胞による追加免疫も受けた。これは、これらのマウスは、Fc尾部に主に対して生じたa−EGFR−Fc IgG血清力価が低かったからである。EGFR応答を特異的に追加免疫するために、これらのマウスを、49日目に200μlのPBS中の2E+6 A431細胞の単回腹腔内注射で追加免疫した。
【0110】
FACSにおいて、全長ヒトEGFRを安定に発現するCHO細胞およびEGFRを過剰発現するA431細胞とのそれらの反応性によって証明されるように、全てのマウスが、EGFRの細胞外ドメインに対する顕著な応答を開始したことが示された。
【0111】
免疫化したマウスからの「免疫」ファージ抗体ライブラリーの作製
免疫化後、RNAを、リンパ組織(リンパ節、脾臓)から抽出し、VHコードcDNAのポリクローナル・プールを、以前に記載されたように(例えば、欧州2604625号)、VHファミリー特異的プライマーを使用して増幅した。2匹のマウスの材料を、ライブラリー構築のためにプールした。次いで、得られたPCR産物を、制限酵素Sfi1およびBstEIIを用いて切断し、本質的に[2]に記載されるように、糸状バクテリオファージ上でのディスプレイのためにバクテリオファージ遺伝子IIIとイン・フレームでクローニングした。このファージミド・ベクターだけが、Vκ1−39生殖系列VL遺伝子を既に含んでいた。ファージ・ライブラリーML1155を、最も高いα−EGFR血清力価を有する2匹のマウス(マウスE094#12およびE094#18)から作製した。ライブラリーML1156を、さらなるA431追加免疫を受けた2匹のマウス(マウスE094#14およびE094#16)から作製した。ライブラリーの特徴を表1に示す。
【0112】
EGFR結合クローンについてのファージ選択
EGFRのエクト・ドメインの(Fc−)免疫−融合物(R&D systems)を、PBS中に希釈し(その2倍希釈で5μg/mlに)、Maxisorp免疫−プレートのウェルにコートした。次いで、ファージを、記載されたように結合についてパニングした[3]。Fc反応性クローンの選択を、ファージとコートされた抗原とのインキュベーションの間に(10μgの)可溶性IgGを使用するストリンジェントな対抗選択によって回避した。EGFRに対する選択をリガンド結合(L1)ドメインIに向けるために、過剰のEGFRバリアントIII(vIII)免疫−融合物との競合もまた実施した。受容体を阻害することにおいて機能性を有するcLC抗体を得るために、固定化された抗原に対するファージ選択を、リガンド(EGF)または文献からコピーした抗体(マツズマブ、セツキシマブ)のいずれかを使用するエピトープ特異的溶出[4]と組み合わせて実施した。EGFR反応性ファージの溶出もまた、ドメインI特異的抗体ICR10(Abcam、番号ab231)およびドメインII特異的抗体EGFR.1(Thermo Scientific、番号MS−311)を使用して実施した。A431細胞[5]は、EGFR遺伝子の増幅を保有することが示されており[6]、従って高い数のEGFRを発現するので、これらを、EGFR反応性ファージの選択に使用した。
【0113】
アウトプット・ファージ力価を決定し、アウトプット・ファージ力価が背景を1.5倍上回る全ての選択(抗原コートされていないウェル上での選択)のために、48の異なるクローンを取り、ファージを、ELISAにおいてそれぞれの抗原への結合についてスクリーニングした。全てのクローンを、ELISAにおいてヒトIgGへの結合についても試験して、選択に使用した免疫−融合物のFc部分への結合剤を同定した。高い百分率の陽性クローン(ELISAにおいてそれぞれの免疫−融合物を認識するが、IgG反応性ではないクローンとして規定される)が、コートされた免疫−融合物の全ての選択アウトプット(最大0.625μg/ml)において見出された。次いで、hIgGに対してではなくEGFR−Fcに対して、ファージELISAにおいて陽性とスコアリングされたクローンを、配列決定し、配列を比較した。配列を、以前に記載されたように(欧州2604625号)分析し、それらのVH遺伝子セグメント用法および重鎖CDR3(HCDR3)配列に基づいてグループ分けした。抗体クラスターを、同じ長さを有し、そのHCDR3中に70%を上回る配列同一性を有するHCDR3を有する同じ生殖系列VHセグメントを使用する全ての配列として規定した。合計で17の抗体クラスターが、免疫化されたMeMoマウスから同定された。
【0114】
大きい合成cLCレパートリー(社内で合成した)およびrhEGFR−Fcに対する選択(上記のとおり)を使用して、多くのEGFR特異的クローンが単離され、そのうちの1つだけ(MF3370)が、EGF誘導性A431細胞死を阻害することができると後に示された。従って、このクローンもまた、より詳細に分析し、引き続くEGFR×HER3スクリーニング・アッセイにおいて使用した。
【0115】
コントロール抗体との競合的結合について、選択された抗EGFRファージ抗体を試験する
代表的抗EGFR Fabによって認識されるエピトープを描写するために、それらを、過剰のコントロールの文献由来のIgG[7]の存在下で、EGFRへの結合について試験した(ファージ上で発現させたFabとして:「MF」と称される)。これらの競合実験に使用したコントロールIgGを、表2に列挙する。
【0116】
選択されたFabを発現するファージを、過剰のこれらのコントロール抗体の存在下でELISAにおいて抗原への結合について試験した場合、いくつかは、コントロール抗体のうちの1または複数による結合について競合を受けることが見出された:図3。これらの結果は、抗EGFRパネルが、エピトープ認識において多様であることを示している。
【0117】
選択された抗EGFR cLC Fabの再クローニング、cLC IgG1の発現および精製
EGFR特異的ファージ・クローン(「MF」と称される)を、293F細胞におけるIgGの一過的発現のために、発現ベクター中にVHコード遺伝子断片(Sfi1−BstEII断片として)(「MG」と称される)を再クローニングすることによって、単一特異性の二価IgG(「PG」と称される)として再クローニングした。293F細胞の一過的トランスフェクションによる産生後に、分泌されたIgG(「PG」と称される)を、標準化された手順を使用するプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィーによって培養物上清から精製した。
【0118】
カニクイザルEGFRおよびマウスEGFRとの交差反応性についての、抗EGFR抗体の試験
抗EGFR cLC IgGがカニクイザルEGFRと反応性であるかどうかを試験するために、全長ヒトEGFRをコードする構築物、ならびにキメラ・カニクイザル/ヒトEGFRをコードする新たに合成された発現構築物(図1)を、共に(抗原陰性)CHO細胞中にトランスフェクトし、次いで、細胞を、5μg/mlの抗EGFR cLC IgG(PG)で染色し、最後にFACSによって分析した。染色についての陽性コントロールとして、臨床的に使用されている抗体セツキシマブを使用したが、それは、この抗体が、カニクイザルEGFRと交差反応することが公知だからである[8]。キメラ・カニクイザル−ヒト受容体をコードする構築物は、トランスフェクトされた細胞の表面上で発現されている高いレベルのキメラ構築物を生じた(セツキシマブを使用する染色によって判断される)。さらに、全てのcLC IgGが、カニクイザルEGFRと反応性であることが示されたが、それは、ヒトEGFRを発現する細胞の染色が、キメラ受容体を発現する細胞の染色と、視覚的に識別不能だったからである。
【0119】
マウスEGFRとの交差反応性について抗EGFR cLC IgGを試験するために、ELISAを実施した。ヒトIgG1 Fcに融合させたマウスEGFR ECDから構成される精製されたタンパク質を、Sino Biologicalsから購入し(カタログ番号51091−M02H)、連続2倍希釈のこの抗原を使用して、5μg/mlで開始してELISAプレートのウェルをコートした。次いで、この抗原への抗EGFR cLC IgGの結合を、5μg/mlの固定された濃度で試験した。これらの抗体の免疫反応性についての陽性コントロールとして、同じELISAの設定を、抗原としてヒトEGFR ECD−Fc融合タンパク質(R&D systems)を使用して実施した。上記17全ての抗体クラスターから、少なくとも1つの代表的抗体を試験した。さらに、合成ライブラリー由来のクローンMF3370もまた、IgG(PG3370)として試験した。1つ以外全てのcLC抗体が、マウスEGFRを認識しないことが示されたが、それは、これらが、ELISAにおいて融合タンパク質と反応しなかったからである。しかし、抗体PG3370は、類似の親和性で、マウスEGFR、ならびにヒトEGFRを認識することが示された(データ示さず):表3はそのデータをまとめる。
【0120】
FACSにおいて、EGFR交換ドメイン構築物を使用して抗EGFR抗体のドメイン特異性を試験する
抗EGFR cLC IgGのドメイン特異性を明白に実証するために、これらを、「交換ドメイン」構築物を安定に発現するCHO細胞への結合について試験した:即ち、特定のドメインがHer3の対応するドメインに置き換えられているEGFRの変異体を発現するCHO細胞を、FACSにおいて試験した(図2)。図4は、得られたFACSデータの一例を示す;データは表3にまとめられる。
【0121】
リガンド誘導性シグナル伝達に対する効果について、抗EGFR抗体を試験する
EGF誘導性シグナル伝達に対する効果について、選択された抗EGFR cLC IgGを試験するために、これらを、A431細胞のEGF誘導性細胞死を防止するそれらの能力について試験した。簡潔に述べると、高い(10nM)濃度のEGFは、A431細胞において(アポトーシス)細胞死を誘導する[9]。この効果は、リガンド遮断性抗EGFR抗体、例えばセツキシマブ(マウス225抗体は、セツキシマブのマウス等価物である:[9])の添加によって、用量依存的に復帰され得る。抗体を、10μg/mlから上への連続片対数希釈において、受容体阻害に対するそれらの影響についてこのアッセイで試験した。全てのアッセイにおいて、EGFR遮断性の、臨床的に使用されている抗体セツキシマブを、陽性コントロールとして含めた。抗EGFR抗体は、EGF誘導性細胞死を阻害することにおいて、様々な強度を有することが見出された。一部は、EGF誘導性効果をレスキューすることにおいてセツキシマブよりも強力であり(例えば、PG3998:図5)、一部は、そこまで強力ではなく(例えば、PG4289、図5)、一部は、非常に僅かの活性を有していた〜活性を有していなかった(例えば、PG4000、図5)。表3は、セツキシマブのものと比較した、受容体を阻害することにおける、EGFRに対するcLC抗体の活性を示す。
【0122】
BxPC−3細胞増殖を阻害する能力についての、二重特異性抗EGFR×HER3抗体のスクリーニング
EGFRおよびHER3抗体パネルからのVHコードcDNA断片を、293F細胞中への一過的トランスフェクション後に二重特異性抗体(二重特異性タンパク質の代わりに、「PB」と称される)の生成を強いる、荷電操作したCH3ドメインをコードするベクター(Gunasekaranら、JBC 2010;PCT/NL2013/050294)中に、再クローニングした。3つの異なる戦略を、二重特異性IgG形式でEGFRアームおよびHER3アームを組み合わせる際に使用した:I)両方の親抗体が、それぞれの細胞アッセイ(EGFRについてA431アッセイおよびHer3についてMCF−7アッセイ)において、受容体に対するリガンド遮断活性が証明された、120のユニーク二重特異性抗体(表4)を生じる、二重特異性体;II)アームの一方のみ(抗Her3または抗EGFRのいずれか)が、上述のアッセイにおいて機能性を有していた、二重特異性体(合計440のユニーク二重特異性抗体、非表示)、およびIII)両方のFabアームが、これらのアッセイにおいて機能性を有さない(またはほとんど有さない)、二重特異性体(合計320のユニーク二重特異性抗体、非表示)。合計で880のユニーク二重特異性抗体を、BxPC−3細胞の成長を阻害するそれらの能力について試験した。
【0123】
880全ての二重特異性抗体を、293F細胞における共トランスフェクションおよび一過的共発現によって産生した。標準化された手順に従って、IgGを、培養物上清から精製し、タンパク質が維持される緩衝液を、PBSに交換した。精製されたタンパク質を、Octet分析を使用して定量化した。二重特異性体を、リガンド(EGFおよびNRG)依存的アッセイ(10ng/mlのNRGの次に、100ng/mlのEGFの添加)、ならびにリガンド非依存的アッセイ(リガンド添加せず)において、2つの濃度(1μg/mlおよび100ng/ml)で試験した。
【0124】
最初に、抗体を、化学組成が既知の飢餓培地(CDS:1ml当たり80Uのペニシリンおよび80μgのストレプトマイシン、0.05%(w/v)BSAならびに10μg/mlのホロ・トランスフェリンを含むRPMI1640培地)中に希釈し、希釈した抗体の50μlを、96ウェル黒色ウェル透明底プレート(Costar)のウェルに添加した。リガンドを添加した(CDS中に希釈した、40ng/mlのNRGおよび400ng/mlのEGF:R&D systems、カタログ番号396−HBおよび236−EGを含む、1ウェル当たり50μlのストック溶液)。リガンド非依存的アッセイの場合、リガンドは添加せず、その代わりに50μlのCDSだけを添加した。BxPC−3細胞を、トリプシン処理し、回収し、計数し、100μlのCDS中8000の細胞を、プレートの各ウェルに添加した。プレートを、室温で1時間そのままにし、その後、37℃の細胞培養インキュベーターの内側で3日間、コンテナ中に置いた。4日目に、Alamar blue(Invitrogen、#DAL1100)を添加し(1ウェル当たり20μl)、蛍光を、Biotek Synergy 2 Multi−modeマイクロプレート・リーダーで、560nmの励起および590nmの読み出しを使用して、Alamar blueとの6時間のインキュベーション(37℃)後に測定した。蛍光値を、阻害されていない成長(抗体は添加していないが、両方のリガンドを添加した)に対して標準化した。
【0125】
IC50決定
880の二重特異性抗体のスクリーニング・データの概観を、図6に示す。MEHD7945Aは、ベンチマーク抗体として機能した。図5の上の点線は、リガンド非依存的アッセイにおいて観察された平均活性を示し、下の点線は、リガンド依存的アッセイにおいて観察された抗体の平均活性を示す。次いで、両方のアッセイにおいて、MEHD7945A抗体のものと少なくとも同等に良好であった強度を有していた20の二重特異性体を、再産生し、再精製し、リガンド駆動性BxPC−3増殖アッセイにおいて再度試験して、IC50値を決定した。抗体を、10μg/mlから下にCDS中に連続的に希釈し、1ウェル当たり50μlの抗体溶液を添加した。リガンドおよび細胞を、上記のように添加し、細胞を、Alamar Blueの添加および蛍光読み出しの前に3日間インキュベートした。重ねて、値を、阻害されていない成長に対して標準化し、IC50値を、GraphPad Prismソフトウェア(非線形曲線フィッティング)を使用して計算した。6つの最良の性能の二重特異性体を、両方のアッセイにおいてコンパレーター抗体MEHD7945Aのものよりも低いIC50に基づいて選択した。図7は、これらの最良の性能の抗体のうち2つのIC50決定を示す。表6は、親モノクローナル抗体の各々の混合物の活性と比較した、これら6つの二重特異性体についてのデータをまとめている(以下を参照のこと)。
【0126】
同所性に移植されたBxPC−3腫瘍の成長に対するそれらの効果について、抗EGFR×HER3二重特異性体を試験する。
研究の開始時に8〜10週齢のCB17 SCID雌性マウスに、20μl中1×10の腫瘍細胞を、膵臓中に同所性に移植した。従って、マウスを麻酔し、右側を下にして寝かせて左側を露出させ、0.5cmの切開を左側腹領域に作製する。膵臓および脾臓を剥き出しにし、20μl中1×10の腫瘍細胞を、膵尾部の嚢下(sub−capsulary)空間中に注射した。移植の1週間後、バイオルミネセンス(BLI)データを生成した。左側の表示をBLI画像化するために(1週間に1回または2回)、全てのマウスが、画像化の15分前、150mg/kgのルシフェリン(D−ルシフェリン−EFカリウム塩、カタログ番号E6552、Promega)の腹腔内注射を受けた。異常値動物−BLI/腫瘍体積に基づく−を除去し、マウスを、各々7匹のマウスの群中にランダムに分配した。実験8日目に、処置を開始した。抗体処置群中の動物に、3連続週にわたって毎週(0日目、7日目、14日目および21日目)、30mg/kgの抗体を投薬した。処置の0日目に、これらの動物は、初回負荷量の2倍、即ち、60mg/kgの抗体を投与された。最終画像化を、31日目に実施した。
【0127】
6つ全ての二重特異性体が、このモデルにおいてBxPC−3腫瘍増生を有意に減少させることが示された(p<0.001)(図8)。しかし、コンパレーター抗体MEHD7945Aの治療効果と、これら6つの二重特異性体のうち2つ、PB4522およびPB4510の治療効果との間には、有意差は存在しなかった(データ示さず)。従って、用量漸増研究を、二重特異性抗体のうちの1つ、PB4522、およびコンパレーター抗体MEHD7945Aを用いて実施した。正確に同じin vivoモデルおよび投薬スケジュールを使用して、異なる群のマウスを、30mg/kgから3mg/kgに、最後には0.3mg/kgに低下させた漸減する抗体用量で処置した。図9は、0.3mg/kgで処置した群についてのデータを示す。30mg/kgおよび3mg/kgのMEHD7945AまたはPB4522のいずれかで処置した全ての群間で、治療効果における有意差は存在しなかった(データ示さず)。しかし、0.3mg/kg用量では、MEHD7945Aによる処置とPB4522による処置との間に治療効果における有意差が存在し、後者は、腫瘍成長の低減においてより強力であった。マウスをこの研究から引き上げた後、それらの全ての腫瘍の重量を、ex vivoで決定した。図10は、PB4522(0.3mg/kg)で処置したマウスから採取した腫瘍の平均重量が、MEHD7945A(0.3mg/kg)で処置したマウスのものよりも、有意に低かった(P=0.007、対応の無い(unpaired)T検定)ことを示している。
【0128】
BxPC−3細胞増殖阻害における異なる抗体形式の強度の比較
細胞増殖阻害における異なる抗体形式の強度を比較するために、精製された二重特異性抗EGFR×HER3抗体を、親抗体の等モル・ミックスと比較して、BxPC−3細胞増殖を阻害する能力について試験した。全てのアッセイ・プレートにおいて、試験されている抗体のIC50を、「ツー・イン・ワン」MEHD7945Aと直接比較することができるように、MEHD7945Aを、陽性コントロールとして使用した。滴定を、10μg/mlから開始して6回の10倍希釈で実施した。抗体のこれらの連続希釈を、濃度範囲全体にわたって2連で試験した。得られたシグモイド曲線から、IC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算した。表6は、そのデータをまとめる。
【0129】
表6で見られるように、全ての場合において、二重特異性形式は、BxPC−3腫瘍細胞の増殖を阻害することにおいて、2つの親抗体のミックスよりも強力であり、従って、この形式が、EGFRおよびHER3の同時標的化のための好ましい形式であった。同じ二重特異性の増殖阻害についてのIC50値を数回測定した場合、僅かに異なる値が異なるアッセイにおいて得られた。しかし、これらの差異は、不可避の小さい実験的変動であるとみなした。
【0130】
ケラチノサイト・アッセイ
EGFR遮断は、ケラチノサイトにおけるケモカイン発現に影響を与えることが実証されている(Pastore、Masciaら、2005)。EGFR阻害剤(EGFRI)の皮膚毒性の最近の分析により、発疹の初期炎症性浸潤が、樹状細胞、マクロファージ、顆粒球、肥満細胞およびT細胞によって支配されることが示されている。EGFR阻害は、上皮ケラチノサイトにおけるケモカイン(CCL2、CCL5、CCL27、CXCL14)の発現を誘導するが、抗菌ペプチドおよび皮膚障壁タンパク質、例えばRnase7の産生は、障害される。in vivoで観察された皮膚毒性は、Q−PCR分析と組み合わせて、初代ケラチノサイト系を使用してin vitroで解釈できた(Lichtenberger、Gerberら、Science Translational Medicine、2013)。MEHD7945Aおよびセツキシマブと比較したPB4522の効果を、ヒト初代上皮ケラチノサイトに対して、10nMおよび100nMの濃度で試験した。ヒト初代上皮ケラチノサイトを単離し、37℃、5%CO2で、SFM細胞成長培地(Invitrogen)中で、6ウェル・プレート中に1ウェル当たり100.000細胞の密度で播種した。細胞を、10ng/mlのTNF−α(AbD Serotec、Kidlington、UK)および5ng/mlのIL−1β(R&D Systems,Inc.、Minneapolis、MN)の非存在下または存在下で、24時間処置した。2連の各条件を準備した。24時間後、細胞を回収し、RNAを、TRIzol(登録商標)試薬を使用することによって細胞から抽出した。cDNAを、逆転写酵素Superscript II(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、異なるメッセンジャーRNA(mRNA)鋳型から合成した。qPCRのための遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、Applied BiosystemsによるTaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysとして取得した。CXCL14およびRnase7ならびに18SおよびGAPDHハウスキーピング遺伝子の発現を決定した。PB4522は、セツキシマブおよびMEHD7945Aと比較して、より少ないCXCL14を誘導する。対照的に、Rnase7発現は、セツキシマブおよびMEHD7945Aと比較して、PB4522によってはあまり重度に妨害されなかった。
【0131】
PB4522は、MEHD7945Aと比較して優れたADCC活性を示す
ADCC活性は、癌における、治療的抗体にとって重要な抗腫瘍作用機構である。セツキシマブおよびトラスツズマブなどの、HERファミリーの受容体に対するヒト・モノクローナル抗体は、ADCCを誘導する。糖鎖工学および変異誘発を含む複数の戦略が、ADCC増強を達成するために使用されてきた。これらは全て、低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善し、および/または低親和性阻害性FcγRIIbへの結合を低減させようとするものである。糖鎖工学においてADCC増強を達成するために使用される方法の1つは、フコースの除去である。フコースの除去は、いくつかのin vivoモデルにおいて、増加した抗腫瘍活性を生じている[Junttila、2010]。PB4522の活性を最大化するために、非フコシル化テクノロジーを適用して(LiuおよびLee.2009[13〜17])、Fc領域中のN結合型炭水化物構造からフコースを除去した。
【0132】
MEDH7945aおよびセツキシマブと比較してPB4522のADCC活性を決定するために、ADCC Reporter Bioassay(Promega)を使用した。3つの異なる細胞株を試験した;EGFR増幅された、高EGFR発現性の頭頸部細胞株A431、中程度のEGFR発現性の肺癌細胞株A549、および中程度のEGFR発現性の膵臓癌細胞株BxPC3。
【0133】
このバイオアッセイは、FcγRIIIa受容体のV158(高親和性)またはF158(低親和性)バリアントのいずれかを安定に発現する操作されたJurkat細胞、およびFcγR活性化についての尺度であるホタル・ルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを使用する。このアッセイを、古典的51Cr放出アッセイに対して、ADCC Reporter Bioassayを用いて得られたデータを比較することによって検証しており、両方のアッセイが、類似の結果を生じる。これらのADCCアッセイを、384白色ウェル・プレートを使用して、Promega ADCC Bioassayキットを使用して実施した。この実験設定では、A431細胞、BxPC3細胞およびA549細胞を、バイオアッセイの20〜24時間前に、30μlのアッセイ培地(4%の低IgG血清を含むRPMI)中、1000細胞/ウェルの密度でプレートした。次の日、培養培地を除去した。次に、抗体PB4522およびそのコンパレーター抗体セツキシマブ、MEHD7945Aならびにコントロール抗体の連続希釈を、2連で調製した。10μlのこれらの抗体希釈を、ウェルに添加した。抗体の出発濃度は10μg/mlであり、10点の5倍連続希釈を作製して、完全用量応答曲線を提供した。最後に、5μlのADCC Bioassayエフェクター細胞(15000細胞/ウェル、V158)を添加した。これらの細胞を、37℃で6時間インキュベートした。次に、15μlのBIO−Gloルシフェラーゼ基質を添加し、5分後、ルミネセンスを、プレート・リーダーで検出した。得られたデータを図13に示す。PB4522およびセツキシマブの両方が、中間のEGFR発現性細胞BxPC3およびA549に対してADCC活性を示し、セツキシマブのEC50は、PB4522と比較してより低かった。しかし、PB4522の総ADCC活性−曲線下面積(AUC)−および最大ADCC活性は、セツキシマブと比較してより高かった。3つ全ての抗体が、EGFR増幅された細胞株A431に対してADCC活性を示し、セツキシマブは、最も高いADCC活性を示し、PB4522およびセツキシマブがその次であった。中程度のEGFR発現性の細胞株が、患者由来の腫瘍細胞サンプル上で発現されたEGFRの数を代表することに留意されたい。3つ全ての細胞株において、PB4522の最大ADCCおよびAUCは、MEHD7945Aと比較してより高かった。3つ全ての細胞株において、PB4522のEC50は、MEHD7945Aと比較してより低かった。
【0134】
HER3
FACSにおける、HER3 ECD変異体への、0.25μg/mlのPG3178 IgGの結合分析により、コントロールmAbの結合が保持されつつ、アラニンへの変異がWT HER3と比較して結合の実質的な喪失を引き起こした、2つのいわゆる「重要」残基(F409、R426)が同定された(表7および図17)。両方の残基は、HER3のドメインIII中に位置し、空間的に遠位である。さらに、F409は、HER3疎水性コア中に埋められ、PG3178エピトープの一部である可能性は低くなっている。
【0135】
確認実験HER3エピトープ
CHO−K1細胞に、HER3 ECD変異構築物(表7中に列挙した)、WT HER3 ECDおよび2つのコントロール構築物(H407AおよびY424A)をトランスフェクトした。HER3 ECDバリアントへのPG3178結合を、FACS滴定実験において試験した。HER3のドメインI(MM−121)およびドメインIII(MEHD7945A)に結合する2つのコントロール抗体を、細胞表面上のHER3 ECD発現を検証するために含めた。平均MFI値をプロットし、各曲線について、AUCを、GraphPad Prism 5ソフトウェアを使用して計算した。WT HER3結合を使用して、データを標準化した。R426A変異は、PG3178結合に重要であることが示されたが、F409Aへの結合は、細胞表面の発現の喪失に起因して確認できなかった(図18)。
【0136】
実施例で引用した参考文献
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