(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1解体対象領域は、前記第1支持部と前記作業辺部との間に形成される領域部における前記構造部材を取り除く工程をさらに含む、請求項2に記載の建物の屋根を解体する方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る解体方法が適用される建物を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2の(a)部は、
図1に示された屋根構造体を平面視した図であり、
図2の(b)部は屋根構造体を正面視した図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る解体方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図4】
図4の(a)部は第1解体ステップにおける支持トラスを指定する工程を示す平面図であり、
図4の(b)部は第1解体ステップにおける第1解体対象領域を指定する工程と第1解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図である。
【
図5】
図5の(a)部は第1解体ステップにおける第2解体対象領域を指定する工程と第2解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図であり、
図5の(b)部は第2解体ステップにおける支持トラスを指定する工程を示す平面図である。
【
図6】
図6の(a)部は第2解体ステップにおける第1解体対象領域を指定する工程と第1解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図であり、
図6の(b)部は第2解体ステップにおける第2解体対象領域を指定する工程と第2解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図である。
【
図7】
図7の(a)部は第3解体ステップにおける支持トラスを指定する工程を示す平面図であり、
図7の(b)部は第3解体ステップにおける第1解体対象領域を指定する工程と第1解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図である。
【
図8】
図8の(a)部は第3解体ステップにおける第2解体対象領域を指定する工程と第2解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図であり、
図8の(b)部は第4解体ステップにおける支持トラスを指定する工程を示す平面図である。
【
図9】
図9の(a)部は第4解体ステップにおける第1解体対象領域を指定する工程と第1解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図であり、
図9の(b)部は第4解体ステップにおける第2解体対象領域を指定する工程と第2解体対象領域のトラス部材を除去する工程とを示す平面図である。
【
図10】
図10の(a)部は最終解体ステップにおける解体対象領域を指定する工程を示す平面図であり、
図10の(b)部は最終解体ステップにおける解体対象領域のトラス部材を除去する工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
<屋根構造体>
本実施形態に係る解体方法は、
図1に示されるスタジアムの可動式屋根といった大規模な屋根構造体を有する建物1の解体に用いられる。建物1は、支持構造体2と、屋根構造体3とを有する。屋根構造体3は、支持構造体2の間に架け渡されている。
【0014】
支持構造体2は、屋根構造体3の荷重を支持するものである。この支持とは、屋根構造体3の質量に起因する鉛直方向の荷重や屋根構造体3の上に積もった雪による雪荷重といった屋根構造体3に積載する荷重などを支えるという意味である。従って、支持構造体2は、屋根構造体3の水平方向への移動を許容してもよい。また、支持構造体2は、屋根構造体3の移動を許さず、支持構造体2に屋根構造体3が固定されてもよい。
【0015】
支持構造体2は、一対の壁構造体2A,2Bを有する。壁構造体2A,2Bは、X方向に沿って延びる。そして、一方の壁構造体2Aは、他方の壁構造体2Bに対してY方向に離間している。壁構造体2A,2Bの下端側は、地盤に埋め込まれるなどして固定され、地盤に対して略鉛直方向に延びている。壁構造体2A,2Bの上端側には、屋根構造体3に連結される。
【0016】
屋根構造体3は、壁構造体2A,2Bの間に形成された所定の領域4を覆うように設けられ、日光や雨などを遮る。所定の領域4には、例えば、種々のスポーツ競技が行われるフィールド、航空機を整備するための駐機エリアなどがあり得る。このような用途に用いられる領域4には、支持柱といった支持構造体は基本的に配置されないが、本実施形態に係る解体方法は、支持構造体が配置された構造物にも適用可能である。
【0017】
上述したように、屋根構造体3は、一方の壁構造体2Aから他方の壁構造体2Bに亘ってアーチ状に掛け渡される。従って、屋根構造体3は、Y−Z平面に含まれる円弧状の断面を有し、当該円弧状の断面をX方向に掃引したような外形形状を有する。
【0018】
屋根構造体3は、平面視して矩形状を有する。屋根構造体3は、支持辺部6と、自由辺部7と、を有する。支持辺部6は、X方向にそれぞれ延びている。すなわち、一対の支持辺部6は、壁構造体2A,2Bと同じ方向に延びている。支持辺部6は、壁構造体2A,2Bに対して連結されている。従って、支持辺部6は、構造上、壁構造体2A,2Bから支持力が付与された単純支持端である。一対の自由辺部7は、一対の支持辺部6をそれぞれ連結するようにY方向に延びている。自由辺部7と地面との間には、壁構造体2A,2Bのような支持構造体が配置されていない。従って、自由辺部7は、構造上、壁構造体2A,2Bなどから支持力が付与されない自由端である。
【0019】
建物1の解体方法は、屋根構造体3をX方向に沿って順次解体する。例えば、一方の自由辺部7から他方の自由辺部7に向かって解体作業を進める。そこで、説明の便宜上、屋根構造体3の解体を開始すると共に、解体が行われる辺部を作業辺部7Aと呼び、解体作業において最後に残る辺部を後自由辺部7Bと呼ぶことにする。
【0020】
屋根構造体3は、いわゆるトラス構造を有する構造体であり、当該トラス構造にシートといった膜状の部材が配置されて屋根が構成される。
図2の(a)部は、上方から屋根構造体3を見下ろした簡易的な平面図であり、
図2の(b)部は屋根構造体3の正面図である。なお、
図2は、壁構造体2A,2B及び屋根構造体3におけるトラス構造を図示し、シートいった付随する構成要素の図示は省略している。
【0021】
トラス構造は、複数のトラス部材(複数の構造部材)が組み合わされた三角形状の単位構造を有する。トラス構造は、これら単位構造が複数組み合わされて構成される。従って、屋根構造体3を微視的に見ると、複数の三角形の領域が確認できると共に、複数の四角形の領域も確認できる。一方、屋根構造体3を巨視的に見ると、複数の縦トラス8と、複数の横トラス9と、複数の斜めトラスT(支持部)とが確認できる。
【0022】
縦トラス8は、X方向に延びており、X方向に平行に配置された複数のトラス部材Pの端部同士が連結されて構成される。従って、縦トラス8とは、一端8aが作業辺部7Aに含まれ、他端8bが後自由辺部7Bに含まれた長尺状を呈する。屋根構造体3は、26本の縦トラス8を有する。これら縦トラス8は、Y方向に所定の間隔を設けて複数配置され、互いに隣接する縦トラス8同士は横トラス9によって互いに連結される。
【0023】
横トラス9は、Y方向に延びており、Y方向に平行に配置された複数のトラス部材Pの端部同士が連結されて構成される。従って、横トラス9とは、一端9aが一方の支持辺部6Aに含まれ、他端9bが他方の支持辺部6Bに含まれた長尺状を呈する。屋根構造体3は、11本の横トラス9を有する。そして、横トラス9は、X方向に所定の間隔を設けて複数配置され、互いに隣接する横トラス9同士は縦トラス8によって互いに連結される。横トラス9の延びる方向をY方向としているが、正確にいえば横トラス9の延びる方向はY−Z平面における円弧状である(
図2の(b)部参照)。以下の説明においては、アーチ状の屋根構造体3を平面視して解体方法を説明するので、横トラス9の延びる方向はY方向であるとする。
【0024】
斜めトラスTは、縦トラス8と横トラス9とにより形成される四角形状の領域において、対角同士を結ぶ複数のトラス部材Pにより構成される。斜めトラスTは、X方向或いはY方向に所定の間隔を設けて複数配置されている。これら複数の斜めトラスTには、例えば斜めトラスTR1のように、その一端(支持端SR1)が支持辺部6Aに含まれると共に他端(自由端SR1a)が後自由辺部7Bに含まれるものがある。このような斜めトラスTを、以下の説明において支持トラスと呼ぶ。例えば、
図2の(a)部において、右側の斜めトラスTR1〜TR5は、それぞれの支持端SR1〜SR5が支持辺部6Aに含まれるので支持トラスである。同様に、左側の斜めトラスTL1〜TL5は、それぞれの支持端SL1〜SL5が支持辺部6Bに含まれるので支持トラスである。例えば、斜めトラスTNは、一端が作業辺部7Aに含まれると共に他端が後自由辺部7Bに含まれており、いずれの端部も支持辺部に含まれないので、支持トラスではない。
【0025】
なお、
図1及び
図2に示した屋根構造体3は、例示である、従って、本実施形態に係る解体方法が適用される屋根構造体は、
図1及び
図2に示した屋根構造体3に限定されない。
例えば、本実施形態に係る解体方法は、アーチ状の屋根構造体の解体に限定されることはなく、平板状であってもよい。
【0026】
<屋根構造体の解体方法>
以下、
図2に示したトラス構造を有する屋根構造体3を解体する工程について詳細に説明する。
図3に示されるように、本実施形態に係る解体方法は、第1解体工程S1(n)と、第2解体工程S2(n)とを一つの解体ステップとして、当該解体ステップを繰り返し実施する。なお、nは1以上の整数であり、ステップの繰り返し数を示すものとする。例えば、第1解体工程S1(1)、第2解体工程S2(1)は、1回目の解体ステップを示す。また、第1解体工程S1(2)、第2解体工程S2(2)は、2回目の解体ステップを示す。
【0027】
<第1解体ステップ>
まず第1解体工程S1(1)を実施する。第1解体工程S1(1)は、支持トラスを指定する工程S1a(1)と、第1解体対象領域を指定する工程S1b(1)と、第1解体対象領域におけるトラス部材Pを取り除く工程S1c(1)と、を有する。
【0028】
図4の(a)部に示されるように、支持トラスを指定する(工程S1a(1))。斜めトラスTR1を第1支持トラス(第1支持部)に指定し、斜めトラスTR2を第2支持トラス(第2支持部)に指定する。第1支持トラスは、複数の支持端SR1〜SR5のうち、作業辺部7Aに最も近い支持端SR1(第1支持端)を有する。従って、作業辺部7A側からトラス部材を取り除いていくと、作業辺部7Aに最も近い支持端を有する斜めトラスTは、斜めトラスTR1、斜めトラスTR2、斜めトラスTR3、斜めトラスTR4、の順に変わっていく。第2支持トラスは、第1支持トラスよりも後自由辺部7B側に位置する。今、斜めトラスTR1を第1支持トラスと指定したとき、斜めトラスTR2,TR3,TR4,TR5のいずれか一つを第2支持トラスとして指定できる。ここでは、斜めトラスTR1に隣接し、支持端SR2(第2支持端)を有する斜めトラスTR2を第2支持トラスとして指定する。
【0029】
次に、
図4の(b)部に示されるように、第1解体対象領域FD(1)を指定する(工程S1b(1))。第1解体対象領域FD(1)は、第2支持トラスである斜めトラスTR2の支持端SR2を含む仮想基準線L1と作業辺部7Aとの間において、第1支持トラスである斜めトラスTR1を含まないように指定される。より具体的には、第1解体対象領域FD(1)は、斜めトラスTR1の支持端SR1を含まないように指定される。
【0030】
次に、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を取り除く(工程S1c(1))。具体的には、まず第1領域部F1(1)におけるトラス部材を全て取り除く。その後、第2領域部F2(1)におけるトラス部材Pを全て取り除く。ここで、第1解体対象領域FD(1)には、複数のトラス部材が存在する。トラス部材を取り除く場合には、例えば、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス構造を保ったまま、一度に取り外してもよい。具体的には、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス構造を保持した後に、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス構造と第1解体対象領域FD(1)外のトラス構造を連結しているいくつかのトラス部材を切断することにより、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス構造を取り外してもよい。また、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を、いくつかのトラス部材ごとに取り外してもよい。さらに、トラス部材を一つづつ取り外してもよい。このように、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を、分割して取り外す場合には、作業をより簡易に行うことができる。
【0031】
第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材が取り除かれた状態において、斜めトラスTR1〜TR5の支持端SR1〜SR5は、それぞれ壁構造体2Aに連結される。また、斜めトラスTL1〜TL5の支持端SL1〜SL5は、壁構造体2Bに連結される。従って、これらの斜めトラスTR1〜TR5,TL1〜TL5がいわゆる火打ちの役割を果たすので屋根構造体3の強度低下を抑制している。
【0032】
次に、第2解体工程S2(1)を実施する。第2解体工程S2(1)は、第2解体対象領域を指定する工程S2a(1)と、第2解体対象領域におけるトラス部材Pを取り除く工程S2b(1)と、を有する。
【0033】
図5の(a)部に示されるように、第2解体対象領域SD(1)を指定する(工程S2a(1))。第2解体対象領域SD(1)は、第1支持トラスである斜めトラスTR1の一部を含む領域である。斜めトラスTR1の一部とは、斜めトラスTR1の支持端SR1である。
【0034】
次に、第2解体対象領域SD(1)におけるトラス部材を取り除く(工程S2b(1))。第2解体工程S2(1)において、当初の第1支持トラスに指定されていた斜めトラスTR1は、その支持端SR1が取り除かれる。従って、支持端SR1が取り除かれた状態では、左側に配置された斜めトラスTL1,TL2,TL3,TL4,TL5及び右側に配置された斜めトラスTR2,TR3,TR4,TR5が支持トラスとなり屋根構造体3の強度低下を抑制している。
【0035】
本実施形態に係る解体方法は、上述した第1解体工程S1(n)と第2解体工程S2(n)とを繰り返すことにより、屋根構造体3の解体作業を進める。解体作業が進むに従って、指定される支持トラス、第1解体対象領域FD(n)、第2解体対象領域SD(n)が都度指定される。以下、具体的な解体作業の進め方と、都度指定される支持トラス、第1解体対象領域FD(n)、第2解体対象領域SD(n)を示しながら本実施形態に係る解体方法をさらに説明する。
【0036】
<第2解体ステップ>
第2解体ステップを実施する。第2解体ステップは、第1解体工程S1(2)と、第2解体工程S2(2)とを有する。
【0037】
第1解体工程S1(2)を実施する。
図5の(b)部に示されるように、支持トラスを指定する(工程S1a(2))。
図5の(b)部に示された状態では、左側の支持端SL1〜SL5のうち、作業辺部7Aに最も近いものは支持端SL1である。従って、支持端SL1を有する斜めトラスTL1を第1支持トラスとして指定する。そして、斜めトラスTL1よりも作業辺部7Aから離れている斜めトラスTL3を第2支持トラスとして指定する。第2支持トラスとして斜めトラスTL3を指定することにより、斜めトラスTL3の支持端SR3を通る仮想基準線L2が決まる。
【0038】
図6の(a)部に示されるように、第1解体対象領域FD(2)を指定する(工程S1b(2))。第1解体対象領域FD(2)は、仮想基準線L2と作業辺部7Aとの間において、第1支持トラスである斜めトラスTL1を含まないように指定される。より具体的には、第1解体対象領域FD(2)は、斜めトラスTL1の支持端SL1を含まないように指定される。次に、第1解体対象領域FD(2)におけるトラス部材Pを取り除く(工程S1c(2))。具体的には、まず第1領域部F1(2)におけるトラス部材Pを全て取り除く。その後、第2領域部F2(2)におけるトラス部材Pを全て取り除く。最後に、第3領域部F3(2)におけるトラス部材Pを全て取り除く。
【0039】
次に、第2解体工程S2(2)を実施する。
図6の(b)部に示されるように、第2解体対象領域SD(2)を指定する(工程S2a(2))。第2解体対象領域SD(2)は、第1支持トラスである斜めトラスTL1の一部を含む領域である。斜めトラスTL1の一部とは、具体的には斜めトラスTL1の支持端SL1である。次に、第2解体対象領域SD(2)におけるトラス部材を取り除く(工程S2b(2))。第2解体工程S2(2)において、当初の第1支持トラスに指定されていた斜めトラスTL1は、その支持端SL1が取り除かれる。従って、
図6の(b)部に示された状態では、右側に配置された斜めトラスTR2,TR3,TR4,TR5及び左側に配置された斜めトラスTL2,TL3,TL4,TL5が支持トラスとなり屋根構造体3の強度低下を抑制している。
【0040】
<第3解体ステップ>
第3解体ステップを実施する。第3解体ステップは、第1解体工程S1(3)と、第2解体工程S2(3)とを有する。
【0041】
第1解体工程S1(3)を実施する。
図7の(a)部に示されるように、支持トラスを指定する(工程S1a(3))。
図7の(a)部に示された状態では、左側の支持端SL2〜SL5のうち、作業辺部7Aに最も近いものは支持端SL2である。従って、支持端SL2を有する斜めトラスTL2を第1支持トラスとして指定する。そして、斜めトラスTL2よりも作業辺部7Aから離れている斜めトラスTL5を第2支持トラスとして指定する。第2支持トラスとして斜めトラスTL5を指定することにより、斜めトラスTL5の支持端SL5を通る仮想基準線L3が決まる。
【0042】
図7の(b)部に示されるように、第1解体対象領域FD(3)を指定する(工程S1b(3))。第1解体対象領域FD(3)は、仮想基準線L3と作業辺部7Aとの間において、第1支持トラスである斜めトラスTL2を含まないように指定される。より具体的には、第1解体対象領域FD(3)は、斜めトラスTL2の支持端SL2を含まないように指定される。次に、第1解体対象領域FD(3)におけるトラス部材を取り除く(工程S1c(3))。具体的には、まず、第1解体対象領域FD(3)を複数の領域部である第1領域部F1(3)〜第15領域部F15(3)に分割する。そして、第1領域部F1(3)〜第15領域部F15(3)の順に、それぞれの領域部におけるトラス部材を取り除く。ここで、第10領域F10(3)は、第1支持トラスである斜めトラスTL2と作業辺部7Aとの間に形成される領域部(第3領域部)である。この支持端SL2周辺の第10領域F10(3)を取り除くことにより、支持端SL2に余分な力がかからなくなり、安定してアーチトラスを支持することができる。
【0043】
次に、第2解体工程S2(3)を実施する。
図8の(a)部に示されるように、第2解体対象領域SD(3)を指定する(工程S2a(3))。第2解体対象領域SD(3)は、第1支持トラスである斜めトラスTL2の一部を含む領域である。斜めトラスTL2の一部とは、具体的には斜めトラスTL2の支持端SL2である。次に、第2解体対象領域SD(3)におけるトラス部材を取り除く(工程S2b(3))。第2解体工程S2(3)において、当初の第1支持トラスに指定されていた斜めトラスTL2は、その支持端SL2が取り除かれる。従って、
図8の(a)部に示された状態では、右側に配置された斜めトラスTR2,TR3,TR4,TR5及び左側に配置された斜めトラスTL3,TL4,TL5が支持トラスとなり屋根構造体3の強度低下を抑制している。
【0044】
<第4解体ステップ>
第4解体ステップを実施する。第4解体ステップは、第1解体工程S1(4)と、第2解体工程S2(4)とを有する。
【0045】
第1解体工程S1(4)を実施する。
図8の(b)部に示されるように、支持トラスを指定する(工程S1a(4))。
図8の(b)部に示された状態では、右側の支持端SR2〜SR5のうち、作業辺部7Aに最も近いものは支持端SR2である。従って、支持端SR2を有する斜めトラスTR2を第1支持トラスとして指定する。そして、斜めトラスTR2よりも作業辺部7Aから離れている斜めトラスTR5を第2支持トラスとして指定する。第2支持トラスとして斜めトラスTR5を指定することにより、斜めトラスTR5の支持端SR5を通る仮想基準線L4が決まる。
【0046】
図9の(a)部に示されるように、第1解体対象領域FD(4)を指定する(工程S1b(4))。第1解体対象領域FD(4)は、仮想基準線L4と作業辺部7Aとの間において、第1支持トラスである斜めトラスTR2を含まないように指定される。より具体的には、第1解体対象領域FD(4)は、斜めトラスTR2の支持端SR2を含まないように指定される。次に、第1解体対象領域FD(4)におけるトラス部材を取り除く(工程S1c(4))。
【0047】
次に、第2解体工程S2(4)を実施する。
図9の(b)部に示されるように、第2解体対象領域SD(4)を指定する(工程S2a(4))。第2解体対象領域SD(4)は、第1支持トラスである斜めトラスTR2の一部を含む領域である。斜めトラスTR2の一部とは、具体的には斜めトラスTR2の支持端SR2である。次に、第2解体対象領域SD(4)におけるトラス部材を取り除く(工程S2b(4))。第2解体工程S2(4)において、当初の第1支持トラスに指定されていた斜めトラスTR2は、その支持端SR2が取り除かれる。従って、
図9の(b)部に示された状態では、右側に配置された斜めトラスTR3,TR4,TR5及び左側に配置された斜めトラスTL3,TL4,TL5が支持トラスとなり屋根構造体3の強度低下を抑制している。また、一面となった垂直トラスである横トラス9がアーチ効果を奏するので、たわみの発生が抑制される。
【0048】
<最終解体ステップ>
図10の(a)部に示されるように、最終解体ステップでは、解体対象領域部N1〜解体対象領域部N8の順に、それぞれの領域部におけるトラス部材を取り除く。
【0049】
図10の(b)部に示されるように、第1解体ステップから第4解体ステップまで繰り返し実施した後に、最終解体ステップを実施することにより、屋根構造体3の解体が完了する。
【0050】
ところで、ドーム型の屋根構造体3を解体する場合、ドーム屋根の外周部から一方向に向かって順次解体する方法が一般的である。しかし、この方法では、未解体部分の安定性が損なわれる可能性がある。そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、
図2に示される屋根構造体3は、縦トラス8及び横トラス9に加えて、さらに斜めトラスTも有する。このうち、横トラス9及び斜めトラスTはアーチ効果を有し、屋根構造体3の強度に寄与している。そこで、発明者らは、横トラス9のアーチ効果と斜めトラスTの支持端SR,SLとに注目した。具体的には、斜めトラスTをできるだけ有効に残しながら(すなわち、支持端SR,SLができるだけ多くなるように)、その内側のトラス部材を取り除いていく。この方法によれば、斜めトラスTで未解体の屋根構造体3を支持しながら(未解体部分の屋根を自立させながら)横トラス9を作業辺部7Aから順に解体することが可能になる。
【0051】
上述した解体方法によれば、第1解体対象領域のトラス部材を取り除くことにより、支持端SL,SRに作用する負荷が低減される。基礎部分の不安定さを解消する。さらに、斜めトラスTが火打ちの役割を奏するので、アーチトラス屋根を解体の最終段階まで安定性を維持できる。具体的には、解体方法は、2個以上の支持端SL,SRによって解体の最終段階までトラス構造の全体を支持しながら、解体作業を進めることができる。従って、屋根構造体3のバランスを維持しながら解体作業を進めることができる。また、解体方法によれば、支持端SL,SRのトラス構造の軽量化を図りながら、支持端SL,SRに作用する荷重の低減が図られる。さらに、斜めトラスTが火打ちの役割を果たすので、一面トラス構造のたわみが抑制されて屋根構造体3を自立させることができ、引っ張り荷重にも対抗するため傾きの発生を抑制しさらに安定性を維持することができる。そして、最終の一面トラスを解体する場合、手前(又は後方)に引っ張ることにより斜めトラスTが折れ点となるので、安定して解体することができる。
【0052】
要するに、本実施形態に係る解体方法は、屋根構造体3を構成する各トラス部材を除去するに際し、斜めトラスTR1〜4,TL1〜4をいわゆる火打ちとして機能させることにより、解体中の屋根構造体3の強度低下を抑制するものである。まず、屋根構造体3の強度への寄与度が高い領域のトラス部材(すなわち支持トラス)を残すようにトラス部材Pを取り除く。そうすると、取り除いたトラス部材Pだけ屋根構造体3が軽くなる。屋根構造体3の質量が減少すると、取り除いても差支えがない支持トラスが現れる。そこで差支えがない支持トラスを除去することができる。これらの工程を繰り返し行うことにより、屋根構造体3への強度低下を抑制しながら解体作業を進めることが可能になる。ひいては、解体に要する費用を低減し且つ工期の短縮を図りつつ、安全性を確保できる。
【0053】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0054】
例えば、解体方法の適用は、トラス構造を有する屋根構造体に限定されない。アーチ効果を有する構造(例えば鉄筋コンクリート)を有する屋根構造体にも適用可能である。さらに、上記実施形態では、支持構造体として壁構造体を例示したが、支持構造体は壁構造体に限定されることはない。支持構造体は、屋根構造体を支持するものであれば特に限定はされず、例えば柱構造体などであってもよい。そのうえ、上記実施形態では、屋根構造体がトラス構造にシートといった膜状の部材を配置した構成として説明した。しかし、解体方法は、トラス構造を有している屋根構造体に対して適用可能であるので、例えばシートといった膜状の部材に代えて、金属製の屋根板が取り付けられたものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、当初の屋根構造体が、一対の支持辺部6と一対の自由辺部7とを有するものを例示した。本発明に係る解体方法の適用は、このような屋根構造体に限定されない。例えば、屋根構造体は、平面視して矩形状であって、四個の辺のうち、三辺が支持辺部であり、一辺が自由辺部であってもよい。また、屋根構造体は、平面視して矩形状であって、四個の辺のうち、全ての辺が支持辺部であってもよい。
【0056】
本発明に係る解体方法は、第1解体工程の後に第2解体工程を実施するものであればよく、上述した解体の順番に限定されない。
【0057】
例えば、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を取り除いた後に、第1解体対象領域FD(2)におけるトラス部材を取り除く。その後に、第2解体対象領域SD(1)におけるトラス部材を取り除いた後に第2解体対象領域SD(2)におけるトラス部材を取り除いてもよい。この場合にも、第1解体工程(第1解体対象領域FD(1)及び第1解体対象領域FD(2)におけるトラス部材を取り除く工程)の後に、第2解体工程(第2解体対象領域SD(1)及び第2解体対象領域SD(2)におけるトラス部材を取り除く工程)を実施することになる。
【0058】
また、第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を取り除いた後に、第2解体対象領域SD(1),SD(2)におけるトラス部材を取り除いてもよい。この場合にも、第1解体工程(第1解体対象領域FD(1)におけるトラス部材を取り除く工程)の後に、第2解体工程(第2解体対象領域SD(1),SD(2)におけるトラス部材を取り除く工程)を実施することになる。