【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、レオロジー改質剤として特定の多相ポリマーを使用することにより、これらの基準の全て(粘度、懸濁性能および透明度)に対応する配合物の入手が可能になることを見出した。
【0013】
より詳細には、本発明は、これの第1の態様により、45重量%から95重量%のP1と示される第1のポリマーおよび5重量%から55重量%のP2と示される第2のポリマーを含む多相ポリマーに関し、ポリマーP1およびP2は別個の組成である。
【0014】
(1)前記ポリマーP1であって:
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つのアニオン性モノマー(a)、
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つの非イオン性疎水性モノマー(b)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c)、
−重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する少なくとも1つの会合性モノマー(d)ならびに
−場合により、モノマー(b)とは異なる少なくとも1つの追加の非イオン性モノマー(e)
を含むモノマーの混合物からの重合によって得られるポリマーP1。
【0015】
(2)前記ポリマーP2であって:
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つのアニオン性モノマー(a’)、
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つの非イオン性疎水性モノマー(b’)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c’)、
−場合により、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する少なくとも1つの会合性モノマー(d’)ならびに
−場合により、モノマー(b’)とは異なる少なくとも1つの追加の非イオン性モノマー(e’)
を含むモノマーの混合物からの重合によって得られるポリマーP2。
【0016】
有利には、以下の実施例に示すように、本発明による多相ポリマーは、多相ポリマーが酸性pHにて配合される場合でも、多相ポリマーが良好な懸濁特性、増粘特性および透明度特性で使用される配合物を提供する。
【0017】
上で規定した具体的な組成物P1およびP2を有する多相ポリマーは、テキストの続きにおいて「本発明によるポリマー」という名称でより簡単に示す。
【0018】
「多相ポリマー」という表現は、本発明の意味において、ポリマーの多相粒子、即ち少なくとも2つの別個のモノマー組成物から少なくとも2つのステップで逐次重合法によって調製された不均一な組成を有するポリマー粒子を示すものである。
【0019】
本発明による多相粒子は、特に、コア/シェルとして構成され得て、第1のポリマーは「コア」を構成し、第2のポリマーは「シェル」を構成する。しかし、この「コア/シェル」という用語は、「コア」部分が「シェル」部分によって完全に被覆されているか、またはカプセル化されている粒子を示すとして希釈されるべきではないが、しかし2つの別個の相を有する制御された形態を有する粒子を示すとして解釈されるべきである。
【0020】
「ポリマーP1」という表現は、上で定義した単一のポリマーP1または逐次重合によって得た複数のポリマーP1を意味するとして理解され得る。
【0021】
同様に、「ポリマーP2」という表現は、上で定義した単一のポリマーP2または逐次重合によって得た複数のポリマーP2を意味するとして理解され得る。
【0022】
「懸濁特性」または「懸濁力」は、例えば組成物の保存中に、特に経時的に安定な方法で、組成物が粒子を組成物の連続相中で懸濁状態に保つ能力を示すものである。
【0023】
懸濁される「粒子」は、各種の形状、テクスチャー、構造、組成、色または最終特性によって特徴付けされ得る、完全または中空固体物質、配合物と非混和性であるもしくはカプセル化された液体物質、または気体物質を意味すると理解される。指摘すれば、剥離粒子(例えばポリエチレン粒子、粉砕された果実の殻、軽石)、栄養価の高い粒子(例えばコラーゲン球体)、真珠光沢性粒子(例えば雲母チタン、グリコールジステアレート)および審美性粒子(例えば場合により着色されている気泡、フレークまたは顔料)が挙げられる。組成物中の気泡の懸濁に関して、粒子は特に1、2または3mmのサイズを有し得る。
【0024】
懸濁性能は、以下の実施例に記載するように、45℃のヒートチャンバ内に保存した組成物中の標準化粒子の懸濁物の安定性を観察することによって評価され得る。
【0025】
組成物の「透明度」は、組成物の透過率を測定することによって評価され得る。透過率の測定方法は以下の実施例に記載する。透過率はパーセンテージで表す。組成物は、500nmの波長では、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%およびなおより好ましくは少なくとも80%の透過率を有する場合に透明であると見なされる。
【0026】
本発明による多相ポリマーの他の特徴、利点および利用形態は、例証のために、および暗示的に限定せずに、以下の説明および実施例を読むことにより明らかとなる。
【0027】
テキストの続きでは、「...と...の間」、「...と...の間の」、「...から...の範囲に及ぶ」および「...から...まで変化する」という表現は同等であり、別途記載しない限り、限界値が含まれることを示すものである。
【0028】
別途記載しない限り、「1つを含む」という表現は、「少なくとも1つを含む」と理解されるべきである。
【0029】
多相ポリマー
上記のように、本発明による多相ポリマーは特に、45重量%から95重量%の第1ポリマーP1および5重量%から55重量%の第2ポリマーP2を含み、ポリマーP1およびP2の組成は異なる。
【0030】
(1)前記ポリマーP1であって:
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つのアニオン性モノマー(a)、
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つの非イオン性疎水性モノマー(b)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c)、
−重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する少なくとも1つの会合性モノマー(d)ならびに
−場合により、モノマー(b)とは異なる少なくとも1つの追加の非イオン性モノマー(e)
を含むモノマーの混合物からの重合によって得られるポリマーP1。
【0031】
(2)前記ポリマーP2であって:
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つのアニオン性モノマー(a’)、
−重合性ビニル基を有する少なくとも1つの非イオン性疎水性モノマー(b’)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c’)、
−場合により、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する少なくとも1つの会合性モノマー(d’)ならびに
−場合により、モノマー(b’)とは異なる少なくとも1つの追加の非イオン性モノマー(e’)
を含むモノマーの混合物からの重合によって得られるポリマーP2。
【0032】
テキストの続きにおいて、ポリマーP1中の組成に関与するモノマー(それぞれポリマーP2)の割合は、ポリマーP1(それぞれポリマーP2)を形成するために使用されるモノマーの全重量に基づいて、パーセンテージで表す。
【0033】
特定の実施形態により、ポリマーP1は、モノマー(a)、(b)、(c)および(d)以外のモノマー単位を含まない(移動剤または重合開始剤の断片の任意選択の存在を除く)。
【0034】
特定の実施形態により、ポリマーP2は、モノマー(a’)、(b’)、(c’)および(d’)以外のモノマー単位を含まない(移動剤または重合開始剤の断片の任意選択の存在を除く)。
【0035】
換言すると、代替的な実施形態により、ポリマーP1の組成のモノマー(a)、(b)、(c)および(d)(それぞれポリマーP2の組成の(a’)、(b’)、(c’)および場合により(d’))の含有率の和は、100%に等しい。
【0036】
別の代替的な実施形態により、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、さらに、モノマー(a)、(b)、(c)および(d)(それぞれ(a’)、(b’)、(c’)および(d’))とは異なる1つ以上の追加のモノマー単位を含み得る。
【0037】
特に、テキストの続きでより具体的に詳細に記載するように、ポリマーP1の(それぞれポリマーP2の)組成物はさらに、1つ以上の追加の非イオン性追加モノマー(e)(それぞれ(e’))を含み得る。
【0038】
さらに、ポリマーP1およびポリマーP2の組成に関与するモノマー(a)および(a’)(それぞれ(b)および(b’)、それぞれ(c)および(c’)、それぞれ(d)および(d’)、それぞれ(e)および(e’))は、ポリマーP1およびポリマーP2において同じ性質であってよいか、または異なる性質であってよい。
【0039】
ポリマーP1の組成のモノマー(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は異なり、即ちモノマー(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は互いに異なる。特に、前記モノマー(b)は、前記モノマー(d)とは異なる。特に、前記モノマー(a)は、前記モノマー(d)とは異なる。ポリマーP2の組成のモノマー(a’)、(b’)、(c’)、(d’)および(e’)についても同様である。従って、特に、前記モノマー(b’)は、前記モノマー(d’)とは異なる。特に、前記モノマー(a’)は、前記モノマー(d’)とは異なる。
【0040】
特定の実施形態により、本発明による多相ポリマーのポリマーP1/ポリマーP2の重量比は、45/55から95/5の間、特に60/40から95/5の間である。
【0041】
重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー
特定の実施形態により、重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー(a)および(a’)は、テキストの続きにおいてより簡単に「アニオン性モノマー」と呼び、少なくとも1個のカルボキシル基を含む。
【0042】
特にアニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸およびこれらの混合物ならびに/またはこれの酸の塩から選ばれ得る。
【0043】
特定の実施形態により、アニオン性モノマーは、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸モノマーならびに/またはこれらの塩の1つから選ばれ得る。
【0044】
好ましくは、本発明による多相ポリマーのポリマーP1のアニオン性モノマー(a)およびポリマーP2の(a’)は、メタクリル酸(MAA)である。
【0045】
前記アニオン性モノマー(a)は、ポリマーP1を構成するモノマーの全重量に基づいて、20重量%から53重量%、特に25重量%から48重量%、およびより詳細には30重量%から43重量%に相当し得る。
【0046】
前記アニオン性モノマー(a’)は、ポリマーP2を構成するモノマーの全重量に基づいて、10重量%から53重量%、特に15重量%から48重量%、およびより詳細には20重量%から43重量%に相当し得る。
【0047】
前記アニオン性モノマー(a)および(a’)は、本発明の多相ポリマーを構成するモノマーの全重量の、14.5重量%から53重量%、特に19.5重量%から48重量%、より詳細には24.5重量%から43重量に相当し得る。
【0048】
重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー
重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー(b)および(b’)は、テキストの続きにおいてより簡単に「非イオン性疎水性モノマー」と呼ぶが、水溶液中で正電荷も負電荷も持たないモノマーである。
【0049】
これらはアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、アミドもしくはニトリル、またはアクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、ジイソブチレン、ビニルピロリドンもしくはビニルカプロラクタムから選ばれ得る。
【0050】
非常に詳細には、非イオン性疎水性モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのC
1−C
8アルキルアクリレートまたはC
1−C
8アルキルメタクリレートおよびこれらの混合物から選ばれ得る。
【0051】
特定の実施形態により、非イオン性疎水性モノマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレートおよびこれらの混合物から選ばれ得る。
【0052】
特に、本発明による多相ポリマーのポリマーP1の非イオン性疎水性モノマー(b)およびポリマーP2の(b’)は、エチルアクリレート(EA)であってよい。
【0053】
前記非イオン性疎水性モノマー(b)は、ポリマーP1を構成するモノマーの全重量に基づいて、40重量%から75重量%、特に45重量%から70重量%、およびより詳細には50重量%から65重量%に相当し得る。
【0054】
前記非イオン性疎水性モノマー(b’)は、ポリマーP2を構成するモノマーの全重量に基づいて、50重量%から85重量%、特に55重量%から80重量%、およびより詳細には60重量%から75重量%に相当し得る。
【0055】
前記非イオン性疎水性モノマー(b)および(b’)は、本発明の多相ポリマーを構成するモノマーの全重量の、40重量%から83重量%、特に45重量%から78重量%、より詳細には50重量%から73重量に相当し得る。
【0056】
特に好ましい実施形態により、ポリマーP2中のモノマー(b’)の質量割合(ポリマーP2を構成するモノマーの全重量に基づくモノマー(b’)の質量含有率)は、ポリマーP1中(ポリマーP1を構成するモノマーの全重量に基づくモノマー(b)の質量含有率)よりも高い。
【0057】
前記アニオン性モノマー(a)および(a’)ならびに前記非イオン性疎水性モノマー(b)および(b’)は、本発明の多相ポリマーの組成全体の83重量%超、特に83重量%から99.3重量%の間に相当し得る。
【0058】
「組成全体」は、多相ポリマーの合成に使用されるモノマーの全重量を意味すると理解される。
【0059】
好ましくは、ポリマーP2の組成の非イオン性疎水性モノマー(b’)/アニオン性モノマー(a’)の重量比は、60/40から85/15の間、特に65/35から80/20の間である。
【0060】
特定の実施形態により、ポリマーP1の組成の非イオン性疎水性モノマー(b)/アニオン性モノマー(a)の重量比は、53/47から70/30の間、特に55/45から68/32の間である。
特定の実施形態により、本発明による多相ポリマーは、
−ポリマーP1およびP2のアニオン性モノマー(a)および(a’)が、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸ならびに/またはこれらの塩の1つから選ばれ、特にモノマー(a)およびモノマー(a’)は、メタクリル酸であり、ならびに
−ポリマーP1およびP2の非イオン性疎水性モノマー(b)および(b’)は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレートまたはこれらの混合物から選ばれ、特にモノマー(b)およびモノマー(b’)は、エチルアクリレートであるような多相ポリマーである。
【0061】
架橋性モノマー
本発明による多相ポリマーのポリマーP1およびポリマーP2は、部分的または完全に架橋されている。
【0062】
ポリマーP1およびポリマーP2の組成このためどちらも、1つ以上の架橋性モノマーをさらに含む。
【0063】
特定の実施形態により、本発明による多相ポリマーは、単一の架橋性モノマーを含む。別の実施形態により、多相ポリマーは2つの異なる架橋性モノマーを含む。架橋性モノマーを使用して、三次元ネットワークの形態のポリマーを生成する。
【0064】
本発明により、多価不飽和化合物であるモノマーを架橋性モノマーとして使用する。この化合物は、2つ、3つまたは幾つかのエチレン性不飽和を含み得る。
【0065】
架橋性モノマーは、親水性、疎水性または両親媒性を有し得る。
【0066】
これらの化合物の例としては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、特にポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートまたは1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートだけでなく、2,2’−ビス(4−(アクリルオキシ−プロピロキシ)−フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(アクリルオキシ−ジエトキシ)−フェニル)プロパンおよび亜鉛アクリレート;トリ(メタ)アクリレート化合物、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびテトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート;テトラ(メタ)アクリレート化合物、例えばジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ヘキサ(メタ)アクリレート化合物、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;ペンタ(メタ)アクリレート化合物、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;アリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフマレートおよびジアリルマレエート;1分子に付き2から8個の基を有するスクロースのポリアリルエーテル、ペンタエリスリトールのポリアリルエーテル、例えばペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルおよびペンタエリスリトールテトラアリルエーテル;またはトリメチロールプロパンのポリアリルエーテル、例えばトリメチロールプロパンジアリルエーテルおよびトリメチロールプロパントリアリルエーテルが挙げられる。他の多価不飽和化合物としては、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、ジビニルシクロヘキサンおよびメチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0067】
別の態様によれば、架橋性モノマーは、ポリオールと不飽和無水物、例えば無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸とのエステル化反応によって、またはイソシアネート、例えば(3−イソプロペニル)ジメチルベンゼンイソシアネートとの付加反応によって調製され得る。
【0068】
架橋性モノマーを得るために、以下の化合物も使用され得る:ポリハロアルカノール、例えば1,3−ジクロロイソプロパノールおよび1,3−ジブロモイソプロパノール;ハロエポキシアルカン、例えばエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、
2−メチルエピクロルヒドリンおよびエピチオヒドリン;ポリグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタジエンジオールジグリシジルエーテル、グリセロール1,3−ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエピクロロヒドリンエポキシ樹脂ならびに混合物。
【0069】
特定の実施形態により、ポリマーP1およびポリマーP2で使用される架橋性モノマーは、3官能性架橋剤から選ばれる。
【0070】
該架橋剤は特に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)であってよい。
【0071】
ポリマーP1の組成中の架橋性モノマー(c)の含有率は、より詳細には、ポリマーP1を構成するモノマーの全重量に基づいて、0.3重量%以上、特に0.4重量%以上、および好ましくは0.4重量%から5重量%の間であり得る。
【0072】
ポリマーP2の組成中の架橋性モノマー(c’)の含有率は、より詳細には、ポリマーP2を構成するモノマーの全重量に基づいて、0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、および特に0.3重量%から5重量%の間であり得る。
【0073】
前記架橋性モノマー(c)および(c’)は、本発明の多相ポリマーを構成するモノマーの全重量の0.2重量%から5重量%、特に0.3重量%から5重量%に相当し得る。
【0074】
会合性モノマー
重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する会合性モノマーは、好ましくはアルコキシル化モノマーから選ばれる。これらは、より詳細には、以下の式(I)のモノマーから選ばれ得る:
T−[(EO)
n(PO)
n’(BO)
n’’]−Z (I)
式中、
−Tは、会合性モノマーの共重合を可能にする末端を表し、
−[(EO)
n(PO)
n’(BO)
n’’]は、エトキシル化単位EO、プロポキシル化単位POおよびブトキシル化単位BOから選ばれる、交互またはランダムにブロックで分布したアルコキシル化単位から成るポリアルコキシル化鎖を表し、
−n、n’およびn″は、互いに独立して、0または1から150に及ぶ整数を表し、ならびに
−Zは、少なくとも12個の炭素原子の、場合により、飽和、部分飽和または芳香族である1個以上の5員から7員環式基を含む、直鎖または分枝脂肪鎖を表し;前記基は、場合により置換されていてよい。
【0075】
同様に、会合性モノマーは、以下の式(II)によって表され得る:
T−A−Z(II)
式中、
−Tは、会合性モノマーの共重合を可能にする末端を表し、
−Aは:
−式−CH
2CHR
1O−(式中、R
1は1から4個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基またはエチル基を表し、mは0から150に及ぶ)のm個のアルキレンオキシド単位、
−式−CH
2CHR
2O−(式中、R
2は1から4個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基またはエチル基を表し、pは0から150の範囲に及ぶ。)のp個のアルキレンオキシド単位
−0から150、または10もしくは15から150、または10もしくは15から100、または15から50、または15から30まで変化する、n個のエチレンオキシド単位から成り、
m+n+p≧0であり、
式−CH
2CHR
1O−のアルキレンオキシド単位、式−CH
2CHR
2O−のアルキレンオキシド単位およびエチレンオキシド単位が交互またはランダムのブロックである、
ポリマー鎖を表し、ならびに
−Zは上で定義した通りである。
【0076】
「プロポキシル化単位PO」および「ブトキシル化単位BO」は、エトキシル化単位であって、これらの炭素の一方または他方にメチル基またはエチル基をそれぞれ有するエトキシル化単位を意味すると理解される。エトキシル化単位は、−CH
2−CH
2−O単位である。
【0077】
「脂肪鎖」は、少なくとも12個の炭素原子、または12から36個の炭素原子、または12から32個の炭素原子を含む脂肪酸の直鎖または分枝脂肪族炭化水素鎖を意味すると理解される。
【0078】
Z鎖は、例えば、2から10個の芳香族環式基を含み得る。
【0079】
特定の実施形態により、脂肪鎖Zは、例えばジスチリルフェノール基、トリスチリルフェノール基および/またはペンタステリルクミルフェノール基などの1個以上のスチリル基を有する1個以上のフェノール基を含み得る。
【0080】
好ましくは、Z鎖は、16個の炭素原子を含む分枝鎖である。
【0081】
末端Tは、より詳細には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルまたはクロトン酸エステルの群に属する重合性不飽和基を含有する基を表す。末端Tは、特にアクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、メタクリルウレタン基およびα,α−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルウレタン基から選ばれ得る。
【0082】
特定の実施形態により、会合性モノマーは、式(III):
CH
2=C(R
1)−COO−[(EO)
n(PO)
n’(BO)
n’’]−Z (III)
に相当し、式中、
−R
1はHまたはCH
3を表し、ならびに
−n、n’、n″およびZは、上式(I)と同じ定義を有する。
【0083】
同様に、会合性モノマーは、以下の式(IV):
CH
2=C(R
1)−COO−A−Z (IV)
に相当し、式中、
−R
1はHまたはCH
3を表し、ならびに
−AおよびZは、上式(II)と同じ定義を有する。
【0084】
特定の実施形態により、上記式(I)または(III)のn’およびn″は0であり、nは好ましくは15から150、特に15から50、とりわけ15から30である。換言すれば、上記式(II)および(IV)中のAは、15から150個、特に15から50個、とりわけ15から30個のエチレンオキシド単位から成るポリマー鎖を表す。
【0085】
一例として、会合性モノマーは、n’およびn″が0であり、nが25の値を有し、R
1がCH
3を表し、Zが16個の炭素原子を含む分枝鎖である式(III)に相当し得る。
【0086】
上で示したように、前記会合性モノマーは、ポリマーP1中に単独で存在し得る。
【0087】
または、前記会合性モノマーは、本発明の多相ポリマーのポリマーP1中およびポリマーP2中の両方に存在し得る。
【0088】
前記会合性モノマー(d)および場合により(d’)は、本発明の多相ポリマーの組成全体の少なくとも0.5重量%に相当し得る。
【0089】
「組成全体」は、多相ポリマーの合成に使用されるモノマーの全重量を意味すると理解される。
【0090】
特に、前記会合性モノマー(d)は、ポリマーP1を構成するモノマーの全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、特に0.5から12重量%の割合で使用され得る。
【0091】
追加の非イオン性モノマー
ポリマーP1およびP2は、1つ以上の追加の非イオン性モノマー(e)および/または(e’)を含み得る。これらの追加の非イオン性モノマー(e)および(e’)は、より詳細には以下から選ばれ得る
:
−式(e1)のモノマー:
【0092】
【化1】
(式中、
−R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立して、HまたはCH
3を表し、
−nは、1または2に等しい整数である。)
ならびに
−式(e2)のモノマー:
【0093】
【化2】
(式中、
−R
a’、R
b’、R
c’およびR
d’は、互いに独立して、HまたはCH
3を表し、
−Xは、(C=O)または(CH
2)
rを表し、r=0、1または2であり、
−(AO)は、エトキシル化単位EO、プロポキシル化単位POおよびブトキシル化単位BOから選択される、交互またはランダムにブロックで分布したアルコキシル化単位から成るポリアルコキシル化鎖を表し、ならびに
−qは、0または1から150の整数を表す。)。
【0094】
特に、式(e1)の追加のモノマーは、アリルアルコール(n=1)、メタアリルアルコール(n=1)およびイソプレノール(n=2)から選ばれ得る。有利には、任意選択のモノマーはイソプレノールである。
【0095】
追加のイオン性モノマー
ポリマーP1およびP2は、1つ以上の追加のイオン性モノマーを含み得る。これらの追加のイオン性モノマーは、より詳細には以下から選ばれ得る:
−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、
−アクリル酸の不飽和テロマー、
「アクリル酸の不飽和テロマー」は、式(V):
【0096】
【化3】
のアクリル酸またはアクリロイルオキシプロピオン酸のオリゴマーを意味すると理解され、式中、nは1から10まで変化する整数である。これらの異なるオリゴマーは、混合物であってよい。n=1の場合、オリゴマーはアクリル酸ダイマーである。
【0097】
本発明による多相ポリマーのアニオン性、非イオン性疎水性、架橋性および会合性モノマーのそれぞれについて記載された異なる特定の実施形態が組み合わされ得ることが理解される。
【0098】
前記追加の非イオン性モノマー(e)および(e’)は、本発明の多相ポリマーの組成物全体の50重量%未満、特に40重量%未満、より詳細には1%から30重量%に相当し得る。
【0099】
特に好ましい実施形態により、本発明による多相ポリマーは以下から成る:
(1)以下を含む、実際には以下から構成さえされるモノマーの混合物から重合によって得られるポリマーP1:
−30重量%から43重量%の、少なくとも1つの、重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー(a)、
−50重量%から65重量%の、少なくとも1つの、重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー(b)、
−0.4重量%から5重量%の、少なくとも1つの架橋性モノマー(c)、
−少なくとも0.5重量%の、少なくとも1つの、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する会合性モノマー(d)ならびに
−場合により、少なくとも1つの、モノマー(b)とは異なる追加の非イオン性モノマー(e)ならびに
(2)以下を含む、実際には以下から構成さえされるモノマーの混合物から重合によって得られるポリマーP2:
−20重量%から43重量%の、少なくとも1つの、重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー(a’)、
−60重量%から75重量%の、少なくとも1つの、重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー(b’)、
−0.3重量%から5重量%の、少なくとも1つの架橋性モノマー(c’)、
−場合により、少なくとも1つの、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する会合性モノマー(d’)ならびに
−場合により、少なくとも1つの、モノマー(b’)とは異なる追加の非イオン性モノマー(e’)。
【0100】
特定の実施形態により、本発明による多相ポリマーは、少なくとも以下のモノマーから得られる:
−アクリル酸および/もしくはメタクリル酸ならびに/またはこれらの塩の1つから選ばれる1つ以上のアニオン性モノマー、特にメタクリル酸、
−エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレートまたはこれらの混合物から選ばれる1つ以上の非イオン性疎水性モノマー、特にエチルアクリレート、
−特に上で定義したような1つ以上架橋性モノマー、より詳細にはトリメチロールプロパントリアクリレート、
−上記式(II)または(III)、特に上記式(IV)または(V)のおよびより詳細には上で記載したような、1つ以上の会合性モノマー、ならびに
−場合により、上で記載したような1つ以上の追加の非イオン性モノマー。
【0101】
本発明による多相ポリマーの製造
本発明による多相ポリマーは、乳化、分散または溶液ラジカル重合法によって逐次的に調製され得る。
【0102】
好ましくは、該多相ポリマーは、少なくとも2つのステップでラジカル重合によって調製され、ポリマーP1およびポリマーP2は2つの逐次乳化重合ステップ、特にP1の次にP2というこの順序で製造される。
【0103】
重合は、既知の開始剤の存在下で、適切な溶媒中で行われる。
【0104】
一例として、重合開始剤は、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩であってよい。
【0105】
乳化ラジカル重合は、有利には、少なくとも1つの界面活性剤および場合により少なくとも1つの連鎖移動剤の存在下で実施され得て、重合中に生成される鎖の分子量を調節することが可能となる。
【0106】
使用されやすい界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、例えば脂肪酸塩、アルキルサルフェート塩(例えばナトリウムラウリルサルフェート)、アルキルエーテルサルフェート塩(例えばナトリウムラウリルエーテルサルフェート)、アルキルベンゼンスルホネート塩(例えばナトリウムドデシルベンゼンスルホネート)、アルキルホスフェート塩またはスルホスクシネートジエステル塩、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレン脂肪酸エステル、カチオン性界面活性剤、例えば4級アルキルおよび/もしくはアリールアンモニウムハライド、またはカチオン界面活性剤、または双性イオン性または両性界面活性剤、例えばベタイン基を含む界面活性剤が挙げられる。
【0107】
連鎖移動剤として、少なくとも4個の炭素原子を含むメルカプタン化合物、例えばブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンまたはtert−ドデシルメルカプタンが有利に挙げられる。
【0108】
乳化重合は、通常、水性分散媒中で行われる。
【0109】
従って、本発明は、より詳細には、少なくとも以下の連続ステップを含む、本発明による多相ポリマーの製造方法を対象とする:
(i)以下を含むモノマーの第1の混合物からポリマーP1を重合するステップ:
−少なくとも1つの、重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー(a)、
−少なくとも1つの、重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー(b)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c)、
−少なくとも1つの、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する会合性モノマー(d)ならびに
−場合により、少なくとも1つの、モノマー(b)とは異なる追加の非イオン性モノマー(e)ならびに、
(ii)上で得られたポリマーP1の存在下で、以下を含むモノマーの第2の混合物を重合するステップ:
−少なくとも1つの、重合性ビニル基を有するアニオン性モノマー(a’)、
−少なくとも1つの、重合性ビニル基を有する非イオン性疎水性モノマー(b’)、
−少なくとも1つの架橋性モノマー(c’)、
−場合により、重合性ビニル基および疎水性炭化水素鎖を有する会合性モノマー(d’)ならびに
−場合により、モノマー(b’)とは異なる追加の非イオン性モノマー(e’)。
【0110】
実用的な観点から、第1のステップは、ポリマーP1の組成への関与を目的とするモノマーを重合開始剤と接触させることに存し、この接触操作をバッチ式でまたは半連続的に行うことが可能である(接触操作は、数分から数時間の範囲に及び得る期間にわたって行う。)。
【0111】
実用的な観点から、第2のステップ(ポリマーP2を製造するステップ)は、以下のように行ってよい:
−ポリマーP2の組成への関与を目的とするモノマーを事前に生成されたポリマーP1を含む分散媒へ添加するステップであって、この添加をバッチ式でまたは半連続的に行うことが可能である(接触操作は、数分から数時間の範囲に及び得る期間にわたって行う。)および
−半連続モードでは同時に、またはバッチ式ではこの添加ステップに続いて、重合開始剤を導入するステップ。
【0112】
利用
本発明による多相ポリマーは、広範囲の水性組成物において、特にケア組成物または保守組成物などの界面活性剤を含む洗浄組成物においてレオロジー改質剤として特に有効であることが判明している。「ケア組成物」という表現は、例えば、シャンプー組成物などのヒトまたは動物の体(皮膚、髪、爪を含む。)に適用するための、化粧品組成物、パーソナル衛生組成物、トイレタリーおよび洗浄組成物を含む。「保守組成物」という表現は、例えばキッチンまたは浴室における清掃または衛生状態の維持に使用される組成物、洗剤製品、洗濯製品などを含む。
【0113】
従って、本発明は、また別のこれの態様により、本発明によるまたは上記方法に従って得られたような少なくとも1つの多相ポリマーを含む水性組成物に関する。
【0114】
本発明による多相ポリマーは、組成物の全重量に基づいて、0.1重量%から20重量%、特に0.5重量%から12重量%の割合にて水性組成物中で使用され得る。
【0115】
後続する実施例に示すように、本発明によるポリマーによって、増粘効果、透明度および懸濁特性の点で性能を有利に組み合わせることが可能となる。換言すれば、所望の粘度を有し、透明連続相および連続相中に均一に分布した懸濁粒子を含む水性組成物を得ることが可能となる。
【0116】
従って、本発明は、より詳細には、増粘剤および懸濁化剤としての、水性組成物中での本発明による多相ポリマーの使用に関する。
【0117】
本発明は、上で定義したような多相ポリマーの、透明連続相および好ましくは6以下のpHを有する、該連続相中に分布した懸濁粒子を含む安定な水性組成物を調製するための使用にも関する。
【0118】
本発明は、本発明による多相ポリマーを含む、透明連続相および特に6以下のpHを有する、該連続相中に分布した、懸濁粒子を含む安定な水性組成物を得るための薬剤にも関する。
【0119】
本発明の薬剤はゆえに、該薬剤が寄与する透明性に加えて、組成物中に存在する粒子を懸濁状態に保つことを可能にする。従って、このように配合した組成物の使用には、たとえ組成物が数週間、実際には数ヶ月にわたって貯蔵されたとしても、いずれの混合ステップも不要である。
【0120】
本発明による組成物は、上記の配合物において通常使用される成分を含み得る。上記のように、該組成物は、該組成物のいかなる利用分野でも、任意の形態で1つ以上の有効成分(または活性剤)を含むことができる。有効成分は、組成物の連続相中に溶解されていてよく、および/または有効成分は、連続相に不溶性の粒子形態であり、懸濁粒子の全部または一部を構成してよい。
【0121】
該組成物は、特にアニオン性、双性イオン性または両性、カチオン性または非イオン性界面活性剤およびこれらの混合物から選択される、1つ以上の界面活性剤を含み得る。
【0122】
本発明は、より詳細には、連続相および該連続相中の懸濁粒子を含む水性化粧用組成物であって、前記連続相および/または前記粒子が化粧用有効成分を含みおよび/または化粧用有効成分から成り、前記組成物が上で定義した多相ポリマーを含む、水性化粧用組成物に関する。
【0123】
該組成物は、有効成分として、身体および/または毛髪用の洗浄基剤を含み得る。
【0124】
有利には、本発明によるレオロジー改質剤によって、特に該レオロジー改質剤が6以下、特に5.5以下、特に5以下およびとりわけ4から5の間のpHを有する組成物に配合される場合に、広いpH範囲にわたって粘度、透明度および懸濁効果の所望の特性を得ることが可能となる。
【0125】
このようなpH値は、ヒト皮膚の平均pH値に近い。従って、本発明によるレオロジー改質剤は、化粧品において非常に有利である。
【0126】
本発明をここで以下の実施例によって説明するが、もちろん例証のためであり、本発明を限定するものではない。