特許第6771465号(P6771465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許6771465エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法
<>
  • 特許6771465-エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法 図000006
  • 特許6771465-エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法 図000007
  • 特許6771465-エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法 図000008
  • 特許6771465-エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771465
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】エアロゾルの特性を制御するためのエアロゾルの生成を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20201012BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20201012BHJP
【FI】
   A24F40/57
   A24F47/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-531234(P2017-531234)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-537638(P2017-537638A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015078690
(87)【国際公開番号】WO2016096482
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月4日
(31)【優先権主張番号】14198062.3
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】クックザイ アルカディウシュ
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−530632(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098405(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0104916(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0291791(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/147114(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02399636(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/00−47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発熱体を備えるヒーターと、
前記発熱体によって加熱可能なように配置されるエアロゾル形成基体と、
前記発熱体に電力を供給する電源とを備えるエアロゾル発生装置におけるエアロゾル生成を制御する方法であって、
前記エアロゾル形成基体上に一定期間中にガスフロー速度が変化する前記一定期間のガスフローを供給するステップと、
前記エアロゾル形成基体が加熱され、前記エアロゾル形成基体の揮発成分が前記ガスフロー中に同伴されるように前記発熱体に電力を供給し、それにより、同伴ガスフローを形成するステップと、
前記揮発成分が濃縮してエアロゾルを形成するように前記同伴ガスフローを冷却することを可能にするステップとを備え、
同伴ガスフローの前記揮発成分の混合効率および同伴ガスフローの揮発成分の冷却速度を、前記一定期間のガスフローの間、実質的に一定に維持するように、前記一定期間のガスフローの間、前記発熱体に供給される前記電力が制御される方法。
【請求項2】
揮発成分の濃度、液滴数密度および液滴サイズから成るリストから選択される前記エアロゾルの1つ以上の物理的特性が、前記一定期間のガスフローの間、実質的に一定の値で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガスフロー速度、ガスフロー温度、蒸発速度、および発熱体温度からなるリストから選択される1つ以上のパラメータを表す値は、前記一定期間のガスフローの間、リアルタイムに測定または計算され、発熱体に供給される電力を制御するように使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一定期間のガスフローの間の1つ以上の期間に、前記発熱体に供給される前記電力がゼロに低減される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エアロゾル発生装置が、電気作動式エアロゾル発生装置であり、前記一定期間のガスフローが、前記装置で吸煙するユーザーによって提供される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電気作動式エアロゾル発生装置であって、
少なくとも1つの発熱体を備えるヒーターと、
前記発熱体によって加熱可能なように配置されるエアロゾル形成基体と、
前記エアロゾル形成基体を加熱するよう、前記発熱体に電力を供給する電源であって、これにより、前記エアロゾル形成基体上に一定期間ガスフローが供給されるとき、前記エアロゾル形成基体の揮発成分が前記ガスフロー中に同伴される、電源を備え、前記電気作動式エアロゾル発生装置において、
前記エアロゾル発生装置が、1つ以上のパラメータを感知する1つ以上のセンサを備えて、前記同伴ガスフローの冷却で前記エアロゾル発生装置によって生成されるエアロゾルをリアルタイムで特性評価することを可能にし、コントローラが、前記エアロゾルをリアルタイムで特性評価することに基づいて前記発熱体に供給される前記電力を制御し、これにより、同伴された前記ガスフローにおける前記揮発成分の混合効率および当該同伴されたガスフローにおける前記揮発成分の冷却速度が前記一定期間の間、実質的に一定であ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルの生成を制御する方法に関する。本発明はさらに、エアロゾル発生装置に関し、より具体的には、喫煙デバイスなどの電気作動式エアロゾル発生装置に関する。本発明は、一貫したエアロゾルを送達するための、エアロゾル発生装置におけるエアロゾル生成を制御する方法として特定の用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
国際特許公報第WO−A−2009/132793号には、電気加熱式の喫煙デバイスおよび喫煙システムの例が開示されている。このデバイスでは、液体が液体貯蔵部分内に貯蔵されており、および毛細管芯は、その中の液体と接するように液体貯蔵部分内に延びる第一の端と、液体貯蔵部分から外に延びる第二の端とを持つ。発熱体は毛細管芯の第二の端を加熱する。発熱体は、電源と電気的に接続された、らせん状に巻かれた電気発熱体の形態であり、毛細管芯の第二の端を囲む。使用時に、発熱体はユーザーが起動して電源のスイッチをオンにする場合がある。ユーザーがマウスピースを加えて吸い込むことで、空気が毛細管芯および発熱体を通して電気加熱式の喫煙システムに引き出され、その後ユーザーの口に入る。
【0003】
一般に、電気作動式エアロゾル発生装置は、少なくとも1つの発熱体からなり、発熱体は、送達された電力を参照することにより、通常は熱的に制御されている。代替として、発熱体(単一または複数)は、発熱体の温度を参照することにより熱的に制御可能である。加熱は、ユーザーの要求毎に開始する、または適切な吸煙検出システムにより起動することができる。電力制御装置および温度制御装置の両方は、吸煙持続中の制御されない加熱プロセスに起因して、送達されたエアロゾルの特性および特質の制御が不能であるという問題がある。
【0004】
ユーザーがエアロゾル発生装置を吸煙すると、空気がこの装置を流れる。電力制御装置は、一定の電力を発熱体に送達する。この装置を貫通する周囲の流速が増すと、発熱体の温度が低下する。これは、形成されたエアロゾル液滴の化学的および/または物理的特性化の変化をもたらす。例えば、発熱体の温度が低下すると、別のエアロゾル成分の形成につながる可能性がある。温度の低下および流速の増加は、エアロゾル液滴サイズを変化させる、冷却速度の低下を引き起こす傾向がある。
【0005】
温度制御システムでは、発熱体に対する気流は、発熱フィラメントの局所冷却に起因して、発熱体へ供給される電力を増加させる。こうした電力の増加は、気流での冷却により、対流拡散の規定するエネルギーの局所損失を埋め合わせる。流速の変化は、空気の混合効率およびヒーターにより発生するエアロゾルの成分の変動をもたらし、ならびにエアロゾル液滴のサイズに影響を与える冷却速度の変化を起こす可能性がある。流速に基づいた電力消費の増加はまた、電池の寿命を減少させる。
【発明の概要】
【0006】
エアロゾル発生装置におけるエアロゾル生成を制御する方法を提供する。このエアロゾル発生装置は、少なくとも1つの発熱体を備えるヒーター、発熱体によって加熱可能なように配置されるエアロゾル形成基体、および発熱体に電力を供給する電力源を備える。この方法は、エアロゾル形成基体上に、一定期間中にガスフロー速度が変化する一定期間のガスフローを供給し、エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾル形成基体の揮発成分をガスフローに同伴されるように発熱体に電力を供給し、それにより同伴ガスフローを形成し、揮発成分が濃縮してエアロゾルを形成するように同伴ガスフローを冷却することを可能にするステップを含む。一定期間のガスフローの間、発熱体に供給される電力は、エアロゾルの1つ以上の物理的および/または化学的特性を一定期間のガスフローの間、実質的に一定の値で維持するように制御される。実質的に一定ということは、特性が、一定期間のガスフローの間、10%より大きく変化しないことを意味することができる。好ましくは、特性は、一定期間のガスフローの間、5%より大きく変化しない。
【0007】
一定期間のガスフローの間、発熱体に供給される電力は、同伴ガスフローの混合効率および/または同伴ガスフローの冷却速度を一定期間のガスフローの間、実質的に定常状態に維持するように制御可能である。
【0008】
同伴揮発成分を有する加熱ガスは、一定期間のガスフローの間、冷却ガスと混合する。組み合わされたガス流は冷却して、エアロゾルを形成することを可能にする。混合または混合効率は、ある条件の下、均質な混合物を生成する装置の能力を示すために使用可能なパラメータである。混合効率は、装置形状、ガスフロー速度、およびガスの相対温度を含む、多くの要因に起因することができる。混合効率は、標準化パラメータによって表すことが可能である。例えば、混合効率は、
【数1】
によって表すことが可能で、式中、
【数2】
。このパラメータは、2つの異なる温度を有する同じ量のガスの究極の混合状態は、
【数3】
をもたらし、その結果、
【数4】
となるという仮定に基づいている。所与の装置形状では、この混合効率は、ガスフロー速度および発熱体の温度の関数として、かなり変化する可能性がある。混合効率の制御は、ガスフローの持続期間にわたって、一貫したエアロゾルを形成するために、混合効率が、任意の好適なパラメータにより表されるように、ガスフローの持続期間にわたって、実質的に一定であることが好ましい。このように、発熱体にガスフローの持続期間を越えて供給される電力は、ガスフロー期間中、実質的に一定のレベルに混合効率を維持するように制御されるのが好ましい可能性がある。
【0009】
同伴揮発成分を保持するガスの冷却速度は、エアロゾルのパラメータ、具体的には、エアロゾルの液滴サイズに大きく影響する。一定のエアロゾル液滴サイズを有するエアロゾルを得るために、発熱体に供給される電力は、ガスフロー期間中、実質的に一定のレベルに冷却速度を維持するように制御されるのが好ましい可能性がある。
【0010】
ほぼ一定の冷却速度と混合効率を最大化し生成する任意の装置用の加熱プロファイルを設計するのが好ましい可能性がある。こうした加熱プロファイルおよび熱プロファイルは、任意の特定の装置用に生成されて、この装置の体積流量センサからのフィードバックに基づいた加熱プロファイルを適合させることにより、リアルタイムで実装可能である。
【0011】
好ましくは、揮発成分の濃度、液滴数密度および液滴サイズから成るリストから選択されたエアロゾルの1つ以上の物理的特性は、一定期間のガスフローの間、実質的に一定の値で維持される。
【0012】
リアルタイムでパラメータを監視し、ほぼ一定の冷却速度と混合効率を最大化し生成する加熱プロファイルを制御するのが好ましい可能性がある。ガスフロー速度、ガスフロー温度、蒸発速度、および発熱体温度からなるリストから選択された1つ以上のパラメータを表す値を、一定期間のガスフローの間、リアルタイムに測定または計算し、発熱体に供給される電力を制御するために使用することができる。
【0013】
予め設定されたまたはリアルタイムに生成された、いずれかの加熱プロファイルは、一定期間のガスフロー間の1つ以上の期間に、ゼロに低減される発熱体に供給される電力を含むことができる。
【0014】
エアロゾル発生装置におけるエアロゾル生成を制御する方法は、エアロゾル形成基体が加熱され、エアロゾル形成基体の揮発成分がガスフロー中に同伴されるように発熱体に電力を供給するステップを含み、それにより、同伴ガスフローを形成し、揮発成分が濃縮してエアロゾルを形成するように同伴ガスフローを冷却することを可能にすることができる。その方法では、エアロゾルの物理的および/または化学的特性を制御するようにガスフロー速度を参照して、発熱体に供給される電力を制御する。発熱体への電力は、一定期間のガスフローの終了前にスイッチオフされてもよい。
【0015】
エアロゾル発生装置は、例えば、喫煙デバイスなどの電気作動式エアロゾル発生装置であってよく、この装置で吸煙するユーザーが、一定期間のガスフローを提供することができる。
【0016】
ヒーターは、単一の発熱体を含みうる。別の方法として、ヒーターは、2個以上の発熱体、例えば2個、または3個、または4個、または5個、または6個またはそれ以上の発熱体を含みうる。発熱体(単一または複数)は、最も効果的にエアロゾル形成基体を加熱するように適切に配設される場合がある。
【0017】
少なくとも一つの発熱体は、電気抵抗性の材料を含むことが好ましい。適切な電気抵抗性の材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金およびセラミック材料および金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含む場合がある。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープシリコン炭化物が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル-、コバルト-、クロミウム-、アルミニウム-チタン-ジルコニウム-、ハフニウム-、ニオビウム-、モリブデン-、タンタル-、タングステン-、スズ-、ガリウム-、マンガン-および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金および鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporation(1999 Broadway Suite 4300, Denver, Colorado)の登録商標である。複合材料では、電気抵抗性の材料は、必要なエネルギー移動の動態学および外部の物理化学的性質に応じて、随意に断熱材料へ埋込、封入、または塗布されてもよく、あるいはその逆であってもよい。発熱体は、2層の不活性材料の間で絶縁された、金属製でエッチング加工が施された箔を備える場合がある。その場合、不活性材料はKapton(登録商標)、全層ポリイミドまたはマイカ箔を含んでもよい。
【0018】
Kapton(登録商標)は、E.I. du Pont de Nemours and Company(1007 Market Street、Wilmington、Delaware 19898、United States of America)の登録商標である。
【0019】
別の方法として、少なくとも一つの発熱体は赤外線発熱体、光子供給源、または誘導発熱体を備える場合がある。
【0020】
少なくとも一つの発熱体は電気発熱体であってよく、任意の適切な形態をとる場合がある。例えば、少なくとも1つの電気発熱体は加熱用ブレードの形態をとる場合がある。別の方法として、少なくとも1つの電気発熱体は、異なる導電性部分または電気抵抗性の金属チューブを持つケーシングまたは基体の形態をとってもよい。エアロゾル形成基体が容器内に提供されている液体である場合、容器は使い捨ての発熱体を組み込んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体の中心を貫通する1つ以上の加熱用の針または棒も適切である場合がある。あるいは、少なくとも一つの発熱体は、ディスク型の(末端の)ヒーターまたはディスク型のヒーターと加熱用の針または棒を組み合わせたものであってもよい。別の方法として、少なくとも1つの電気発熱体は、エアロゾル形成基体を囲むかまたは部分的に囲むように配設された柔軟な材料シートを備えてもよい。その他の代替物としては、加熱用のワイヤーまたはフィラメント、例えばNi−Cr、プラチナ、タングステンまたは合金製のワイヤーまたは加熱プレートが挙げられる。任意選択的に、発熱体は固い担体材料内またはその上に蒸着される場合がある。
【0021】
少なくとも1つの発熱体は、熱を吸収、貯蔵して、その後、ある期間にわたりエアロゾル形成基体に熱を放出する能力を持つ材料を含む、ヒートシンクまたは蓄熱体を含みうる。ヒートシンクは、適切な金属またはセラミック材料など、任意の適切な材料で形成しうる。材料は高い熱容量(目的に適った熱貯蔵材料)を持つか、または熱を吸収しその後で可逆的な過程(高温相変化など)を経て放出する能力を持つ材料であることが好ましい。目的に適った適切な熱貯蔵材料は、シリカゲル、アルミナ、炭素、ガラスマット、ガラス繊維、鉱物、金属または合金(アルミニウム、銀または鉛)、およびセルロース系材料(紙など)を含む。可逆的な相変化により熱を放出するその他の適切な材料は、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタリン、ろう、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物または合金を含む。
【0022】
ヒートシンクまたは蓄熱体は、エアロゾル形成基体と直に接するよう、かつ貯蔵した熱を基体に直かに伝達できるように配置されうる。別の方法として、ヒートシンクまたは蓄熱体に貯蔵された熱は、金属チューブなどの熱導体の手段によってエアロゾル形成基体に伝達されうる。
【0023】
少なくとも1つの発熱体は伝導によりエアロゾル形成基体を加熱する場合がある。発熱体は基体と、または基体が付着している担体と、少なくとも部分的に接触する場合がある。別の方法として、発熱体からの熱は熱伝導性要素に伝導する場合がある。
【0024】
別の方法として、少なくとも1つの発熱体は、使用中に電気加熱式のエアロゾル発生装置を通して引き出された、入ってくる周囲空気に熱を伝達する場合があり、これが次に対流によってエアロゾル形成基体を加熱する。周囲空気はエアロゾル形成基体を通過する前に加熱される場合がある。別の方法として、エアロゾル形成基体が液体基体である場合、周囲空気はまず基体を通して引き出され、その後加熱される場合がある。
【0025】
エアロゾル形成基体は固体のエアロゾル形成基体でもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含むことが好ましい。エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含みうる。エアロゾル形成基体は、たばこ含有材料および非たばこ含有材料を備えうる。エアロゾル形成基体は、さらにエアロゾル形成体を含むことが好ましい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0026】
別の方法として、エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体としうる。一つの実施形態で、エアロゾル発生装置はさらに液体貯蔵部分を含む。液体エアロゾル形成基体は、液体貯蔵部分内に貯蔵されることが好ましい。一つの実施形態で、電気加熱式のエアロゾル発生装置はさらに、液体貯蔵部分と連通する毛細管芯を含む。液体を保持するための毛細管芯は、液体貯蔵部分なしに提供されることも可能である。その実施形態では、毛細管芯には予め液体を装填しうる。
【0027】
液体貯蔵部分内の液体と接触するように毛細管芯を配置するのが好ましい。その場合、使用時に、液体は毛細管芯内での毛細管作用によって、液体貯蔵部分から少なくとも一つの電気発熱体に向かって移動される。一つの実施形態で、毛細管芯は第一の端と第二の端を持ち、第一の端はその内部で液体と接するための液体貯蔵部分内に延び、また少なくとも一つの電気発熱体は第二の端内の液体を加熱するように配置される場合がある。発熱体が活性化されると、毛細管芯の第二の端での液体がヒーターによって気化され、過飽和蒸気を形成する。過飽和蒸気は気流と混合されて運ばれる。ガスフロー(気流)中に、蒸気は凝縮してエアロゾルを形成し、エアロゾルはユーザーの口に向かって運ばれる。毛細管芯と組み合わせた発熱体は、素早い反応を提供することができる。というのも、その配設により、発熱体に液体の広い表面積を提供することができるためである。従って本発明による発熱体の制御は、毛細管芯の配設の構造に依存する場合がある。
【0028】
液体基体は、適切な任意の吸収性のプラグまたは本体、例えば、発泡性の金属またはプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維またはセラミックで作成しうる多孔性担体材料に吸収されうる。液体基体は、電気加熱式のエアロゾル発生装置を使用する前に多孔性担体材料内に保持されてもよく、あるいは別の方法として、液体基体材料は使用中またはその直前に多孔性の担体材料内に放出されてもよい。例えば、液体基体はカプセル内に提供される場合がある。カプセルのシェルは加熱に伴い溶けて、液体基体を多孔性担体材料に放出することが好ましい。カプセルは液体と組み合わされて、任意選択的に固体を含む場合がある。
【0029】
エアロゾル形成基体が液体基体である場合、液体は特定の物理的特性を持つ。これらには、エアロゾル発生装置内での使用に適したものとするために、例えば、沸点、蒸気圧、および表面張力の特性が含まれる。少なくとも一つの電気発熱体の制御は、液体基体の物理的特性に依存する場合がある。液体は、加熱されると液体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、液体は非たばこ材料を含む場合がある。液体は水、溶剤、エタノール、植物エキスおよび天然または人工の風味を含む場合がある。液体はさらにエアロゾル形成体を含むことが好ましい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0030】
液体貯蔵部分を提供することの利点は、高いレベルの衛生状態が維持できることである。液体と電気発熱体との間に延びる毛細管芯を使用することで、装置の構造を比較的簡単にすることができる。液体は、液体が毛細管作用によって毛細管芯を通して運ばれるようにする粘性および表面張力を含む物理的特性を持つ。液体貯蔵部分は、容器が好ましい。液体貯蔵部分は、再充填できない。従って、液体貯蔵部分内の液体が使い尽くされた時、液体貯蔵部分またはエアロゾル発生装置全体が交換される。別の方法として、液体貯蔵部分は再充填可能でもよい。その場合、エアロゾル発生装置は、液体貯蔵部分の一定充填回数の後で交換されうる。液体貯蔵部分は、所定の吸煙回数のための液体を保持するよう配置されることが好ましい。
【0031】
毛細管芯は繊維質または海綿状の構造を有する場合がある。毛細管芯は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管芯は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含む場合がある。繊維または糸は一般的に、エアロゾル発生装置の長軸方向に配列される場合がある。別の方法として、毛細管芯はロッド形状に形成された海綿体様または発泡体様の材料を含む場合がある。ロッド形状はエアロゾル発生装置の長軸方向に沿って延びる場合がある。芯の構造は複数の小さな穴またはチューブを形成し、それを通して液体が毛細管作用によって電気発熱体に移動できる。毛細管芯は適切な任意の材料または材料の組み合わせを含みうる。適切な材料の例には、繊維または焼結粉末の形態のセラミックまたはグラファイトをベースにした材料がある。毛細管芯は密度、粘性、表面張力および蒸気圧といった異なる液体物理特性で使用されるように、適切な任意の毛管現象および多孔性を有する場合がある。芯の毛細管の性質は、液体の性質と相まって、加熱領域内で芯が常に湿っていることを確実にする。
【0032】
エアロゾル形成基体は別の方法として、その他任意の種類の基体(例えば、ガス基体)、または様々な基体タイプの任意の組み合わせとしうる。動作中、基体は、電気加熱式のエアロゾル発生装置内部に完全に収容されうる。その場合に、ユーザーは、電気加熱式のエアロゾル発生装置のマウスピースで喫煙しうる。別の方法として、動作中、基体は、電気加熱式のエアロゾル発生装置内部に部分的に収容されうる。その場合に、基体は別個の物品の部分を形成してもよく、またユーザーは別個の物品を直接吸煙してもよい。
【0033】
電気加熱式エアロゾル発生装置は、電気加熱式喫煙デバイスであるのが好ましい。電気加熱式エアロゾル発生装置は、エアロゾルがそこで過飽和蒸気から形成されるエアロゾル形成チャンバーを備える場合があり、エアロゾルは次にユーザーの口内に運ばれる。空気吸込み口、空気出口およびチャンバーは、エアロゾルを空気出口に運び、ユーザーの口内に入れるように、空気吸込み口からエアロゾル形成チャンバーを経由して空気出口への気流の経路を画定するように配置されることが好ましい。
【0034】
エアロゾル発生装置はハウジングを含むことが好ましい。ハウジングは細長いことが好ましい。ハウジングの構造及び形状は、エアロゾルに影響を及ぼす。ハウジングは、シェルおよびマウスピースを備えうる。その場合、すべての構成要素は、シェルまたはマウスピースのいずれかに含まれうる。ハウジングは適切な任意の材料または材料の組み合わせを含む場合がある。適切な材料の例としては、金属、合金、プラスチックもしくはそれらの1つ以上の材料を含有する複合材料、または、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエチレンなど、食品または医薬品の用途に適した熱可塑性物質が挙げられる。材料は軽量であり、脆くないことが好ましい。
【0035】
電気作動式エアロゾル発生装置を、提供することができる。この装置は、少なくとも1つの発熱体を備えるヒーター、発熱体によって加熱可能なように配置されるエアロゾル形成基体、および発熱体に電力を供給する電源を備える。このエアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置によって発生されるエアロゾルをリアルタイムで特性評価することを可能にする1つ以上のパラメータを感知する1つ以上のセンサおよびエアロゾルのリアルタイムでの特性評価に基づいて発熱体に供給される電力を制御するコントローラを備えることができる。
【0036】
エアロゾル発生装置は携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生装置は、喫煙装置とすることができ、従来型の葉巻たばこや紙巻たばこと匹敵するサイズを有する場合がある。喫煙装置の全長は、およそ30mm〜およそ150mmである場合がある。喫煙装置の外径は、およそ5mm〜およそ30mmである場合がある。
【0037】
本発明の1つの態様に関連して説明した特徴は、本発明の別の態様に適用されうる。
本発明は、ほんの例証として、添付図面を参照しながら、さらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】電気作動式エアロゾル発生装置の一例を示す。
図2】複数のエアロゾル発生装置の吸煙の間の冷却速度の変化を図示するグラフである。
図3】複数のエアロゾル発生装置の吸煙の間の混合効率の変化を図示するグラフである。
図4】吸引持続期間にわたって所望のエアロゾル特性およびこれらの特性に到達するための例示的な加熱プロファイルを図示する概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、電気加熱式エアロゾル発生装置の一例を示す。図1では、この装置は液体貯蔵部を有する喫煙デバイスである。図1の喫煙デバイス100は、マウスピース端103および本体端105を有するハウジング101を含む。本体端には、電池107の形態の電源とハードウェアの形態の電気回路109と吸煙検知デバイス111が提供されている。マウスピース端には、液体115を保持するカートリッジ113の形態の液体貯蔵部分、毛細管芯117および少なくとも1つの発熱体を含むヒーター119が提供されている。このヒーターは、図1には、ほんの概略を示していることに留意されたい。毛細管芯117の一方の端はカートリッジ113内に延び、毛細管芯117の他方の端はヒーター119によって囲まれている。このヒーターは、接続部121を介して電気回路に接続されている。ハウジング101はまた、空気吸込み口123、マウスピース端にある空気出口125、エアロゾル形成チャンバー127を含む。
【0040】
使用時、動作は以下の通りである。液体115は、カートリッジ113からの毛細管作用によって、カートリッジ内に延びる芯117の一方の端からヒーター119によって囲まれる芯117の他方の端へ移送される、または運ばれる。ユーザーが空気出口125で装置を吸うと、周囲空気は空気吸込み口123を通して吸い込まれる。図1に示す配設では、吸煙検知デバイス111は、吸煙を感知し、ヒーター119を起動する。電池107がエネルギーをヒーター119に供給して、ヒーターによって囲まれる芯117の端を加熱する。芯117の端にある液体は、ヒーター119によって気化され、過飽和蒸気を生成する。同時に、気化された液体は、毛細管作用により芯117に沿って移動するさらなる液体で置き換えられる。(これは、「ポンプ作用」と呼ばれることが多い。)生成された過飽和蒸気は、気流と混合されて空気吸込み口123から気流によって運ばれる。エアロゾル形成チャンバー127内で、蒸気は凝縮して吸引可能なエアロゾルを形成し、これが空気出口125に向かって運ばれ、ユーザーの口内に入る。
【0041】
毛細管芯は、様々な多孔性または毛細管材料で作成され、既知の予め設定された毛管現象を有するのが好ましい。例として、繊維または焼結粉末の形態のセラミックまたはグラファイトをベースにした材料がある。別の多孔性の芯を使用して、密度、粘度、表面張力および蒸気圧などの物理的特性の異なる液体を収容することができる。この芯は、要求される液体の量を発熱体に送達できるように適したものでなければならない。この芯および発熱体は、要求されるエアロゾルの量をユーザーに運ぶことができるように適したものでなければならない。
【0042】
図1に示す実施形態では、吸煙中の流速およびヒーターの温度が、吸煙中に監視される。冷却速度および混合効率を表す値が生成され、コントローラは、ヒーターへの電力を制御する。これにより、吸煙持続中の加熱プロファイルが、冷却速度および混合効率をおよそ一定のレベルに維持するようになされる。
【0043】
図1は、本発明で併用されうる電気加熱式エアロゾル発生装置の一例を示す。ただし、その他の数多くの例を本発明と併用できる。この電気加熱式エアロゾル発生装置は、電気回路の制御の下で電源により給電される、少なくとも1つの電気発熱体によって加熱可能なエアロゾル形成基体を含むまたは受容することが単に必要である。例えば、この装置は、喫煙デバイスである必要はない。例えば、エアロゾル形成基体は、液体基体よりも固定基体としうる。あるいは、このエアロゾル形成基体は、ガス基体などの他の基体の形態である場合がある。発熱体は任意の適切な形態をとる場合がある。ハウジングの全体的な形状およびサイズは、変更可能であり、ハウジングが、別のシェルおよびマウスピースを備えてもよい。他の変形形態も、もちろん可能である。
【0044】
図2は、吸煙持続期間にわたりエアロゾル発生装置を介して引き込まれた空気の冷却速度の変化を図示するグラフである。図3は、吸煙持続期間にわたりエアロゾル発生装置を介して引き込まれた空気の混合効率の変化を図示するグラフである。図2および図3両方の結果は、違う形状を有する4つの異なるエアロゾル発生装置を表している。すべてのエアロゾル発生装置は、発熱体が一定の温度を維持するように制御されている。発熱体が一定の温度であるにも拘わらず、冷却速度および混合効率が、吸煙プロファイルにわたり、大きく変化するのをはっきり見ることができる。このように、発生したエアロゾルの特性は、吸煙プロファイルにわたり、変化する。
【0045】
図4は、種濃度、冷却速度および混合効率などの特質が、吸煙プロファイルの大きな変化にも拘わらず、吸煙持続期間中、ほぼ一定の状態に維持される所望の状態を図示している。例示的な熱プロファイルが、所望の結果を達成することを目的として図示されている。この所望の結果は、特定の装置構造および形状の特定の熱プロファイルを設計し、この装置を介する流速の測定値に基づいて熱プロファイルを実施することにより達成可能である。あるいは、所望の結果は、混合効率および/または冷却速度を表すパラメータを監視し、これらのパラメータに基づいてヒーターに供給される電力を制御することにより達成可能である。これらの方法のうちの1つを用いて、吸煙持続期間にわたって一定のエアロゾルを生成することが可能になる。
図1
図2
図3
図4