特許第6771475号(P6771475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル・クロップサイエンス・アーゲーの特許一覧

特許67714753−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート類の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771475
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/28 20060101AFI20201012BHJP
   C07C 309/66 20060101ALI20201012BHJP
   C07C 69/63 20060101ALI20201012BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C07C303/28
   C07C309/66
   C07C69/63CSP
   C07C69/96 A
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-546123(P2017-546123)
(86)(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公表番号】特表2018-507871(P2018-507871A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016054189
(87)【国際公開番号】WO2016139161
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】15157832.5
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブルエッチュナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヒムラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】パツエノク,セルギー
(72)【発明者】
【氏名】フォード,マルク・ジェイムズ
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−140137(JP,A)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,1944年,Vol.66, No.8,p.1295-1297
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/00−311/65
C07C 37/00−39/44
C07C 45/00−49/92
C07C 69/00−69/96
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート誘導体:
【化1】

[式中、Rは、C−C−アルキル、フェニル、4−メチルフェニルまたはベンジルを表す。]の製造方法であって、
段階(A)で、塩基および溶媒の存在下に、
下記式(II)の3−クロロ−2−メチルフェノール:
【化2】

を、下記一般式(III)の化合物:
【化3】

[式中、
HalはF、Cl、またはBrを表し、
はF、Cl、Br、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表す。]
と反応させ、
または、下記一般式(IV)の酸誘導体:
【化4】

[式中、RおよびRは互いに独立に、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCを表す。]と反応させ、
または、トリホスゲンと反応させて、
下記一般式(V)の化合物:
【化5】

[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す。]を形成すること、
ならびに
段階(B)で、式(V)の化合物を塩素化剤と反応させて、下記式(VI)の化合物:
【化6】

[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す。]を得ること、
ならびに
段階(C)で、一般式(VI)の化合物を、酸性条件下または水中で高温下で反応させ、2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド(VII):
【化7】

とすること、
ならびに
段階(D)で、(VII)の化合物式またはそれのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩を、溶媒の存在下に、下記式(VIII)の化合物:
【化8】

[式中、QはLi、Na、K、MgCl、MgBrまたはMgIを表す。]と反応させて、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX):
【化9】

を得ること、
ならびに
段階(E)で、式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネートが、式(IX)の化合物を塩基の存在下に、下記一般式(X)の化合物:
【化10】

[式中、
Wは、F、Cl、BrまたはOSOを表し、
は、上記で開示の意味を有する。]と反応させることで形成されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、フェニル、4−メチルフェニルまたはベンジルを表し;
F、Cl、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表し、
およびR互いに独立に、FC、FHC、ClC、ClHCまたはClHCを表し;
F、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
F、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表し;
WがF、ClまたはOSOを表し;
QがNa、K、MgClまたはMgBrを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチル、エチル、n−プロピル、フェニル、4−メチルフェニルを表し;
F、Cl、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表し、
およびR互いに独立に、FC、ClC、ClHC、ClHCを表し;
F、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、FHCまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
F、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、FHCまたは3−クロロ−2−(ジクロロチルフェノキシを表し;
WがF、ClまたはOSOを表し;
QがNa、K、MgClまたはMgBrを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メチルまたは4−メチルフェニルを表し;
F、Cl、FCまたはClCOを表し;
およびR互いに独立に、FCまたはClCを表し;
F、Cl、CCl、FCまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
F、Cl、CCl、FCまたは3−クロロ−2−(ジクロロチルフェノキシを表し;
Wが、F、ClまたはOSOを表し;
QがMgClまたはMgBrを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階(A)において、3−メチルピリジンおよび2−メチル−5−エチルピリジンを塩基として用い、ジクロロメタン、トルエン、クロロベンゼンまたはジクロロメタンを溶媒として用いる請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(B)において塩素を塩素化剤として用いる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階(C)において、HCOOH、CHCOOH、HSO、またはHClを酸として用いる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階(C)を、80℃から140℃の温度で水中で行う、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階(D)において、MeMgClまたはMeMgBrを有機金属試薬として用い、THF、2−Me−THF、トルエンまたはキシレンを溶媒として用いる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階(E)において、アルカリ金属の炭酸塩もしくは水酸化物、トリエチルアミンまたはピリジンを塩基として用いる、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
下記式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート誘導体:
【化11】

[式中、Rは、請求項1に記載の定義を有する]の製造方法であって、
請求項1に記載の式(IX)の化合物を、段階(A)から(D)を介して式(II)の化合物から調製し、
及び
得られた式(IX)の化合物を、酸および溶媒の存在下に3−クロロ−2−ビニルフェノール(XII):
【化12】

に変換し(段階F)、
次に、請求項1に記載の式(X)の化合物および塩基の存在下に、一般式(I)の化合物に変換する(段階G)、前記方法。
【請求項12】
下記式(V)の化合物。
【化13】

[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す。]
【請求項13】
下記式(VI)の化合物。
【化14】

[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHF、または3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート誘導体類の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート類は、農薬合成のための重要な中間体である。特に、3−クロロ−2−ビニルフェニル−メタンスルホネートは、殺菌有効成分の貴重な前駆体である(例えば、WO2011/076699またはWO2014/206896)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/076699
【特許文献2】WO2014/206896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート類の代表的合成は、3−クロロ−2−ビニルフェノールのアリール−またはアルキルスルホクロライドとの反応である。原料3−クロロ−2−ビニルフェノールの合成はすでに公知であり(EP0511036B1):シクロヘキサノンの塩素化によって製造しなければならないものであるテトラクロロシクロヘキサノンから出発して、ビニルマグネシウムブロミドを加えて、所望のビニルテトラ(tetetra)クロロシクロヘキサノールを形成し、さらに変換してビニル−2−オキサ−7−ビシクロヘプタンとしていた。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中還流下にそれを開環させることで、最終的に低い総収率で3−クロロ−2−ビニルフェノールが得られた。従って、この方法は商業的応用には適さない。特に、原料のテトラクロロシクロヘキサノン中で提供される4個の塩素原子から、1個のみが分子中に残ることから、この方法の原子エコノミーは不十分である。
【0005】
簡単な保護されていないビニルフェノール類は、重合やさらなる副反応を非常に起こしやすい(Chemistry Letters 1980, 7, 793)。これらの化合物の合成の代表的な手順には、Al、KHSOまたはHSOによって促進されるヒドロキシエチル置換されたフェニル類の脱水(Journal of the American Chemical Society, 1958, 80, 3645)が含まれ、それにより、通常は低収率で、かなりの量の副生成物を伴って、生成物が得られる。パラ−ビニル−フェノール誘導体の1例が、マイクロ波条件下にイオン性液体中で収率56%で得られているが(Eur. J. Org. Chem. 2008, 33, 5577)、それは工業的規模では実行可能ではない。さらに、脱離による保護されていないオルト−ビニル−フェノール類の合成は、文献には全く記載されていない。従って本発明者らは、保護されていないメタ−クロロ−オルト−(1−ヒドロキシエチル)フェノールの脱離が進行して、良好な収率で相当するオルト−ビニルフェノール誘導体となることを見出して驚いた。
【0006】
上記の先行技術を考慮すると、本発明の目的は、上記の欠点を持たないことで、高収率で3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート誘導体を得る経路を与える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネート類:
【化1】
【0008】
[式中、Rは、C−C−アルキル、フェニル、4−メチルフェニルまたはベンジルを表す。]の製造方法であって、
段階(A)で、下記式(II)の3−クロロ−2−メチルフェノール:
【化2】
【0009】
を、下記一般式(III)の化合物:
【化3】
【0010】
[式中、
HalはF、Cl、またはBrを表し、
はF、Cl、Br、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表す。]
と反応させ、
または、下記一般式(IV)の酸誘導体:
【化4】
【0011】
[式中、RおよびRは互いに独立に、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCを表す。]と反応させ、
または、塩基および溶媒の存在下に、トリホスゲンと反応させて、
下記一般式(V)の化合物:
【化5】
【0012】
[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す。]を形成すること、
ならびに
段階(B)で、式(V)の化合物を塩素化剤と反応させて、下記式(VI)の化合物:
【化6】
【0013】
[式中、RはF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す。]を得ること、
ならびに
段階(C)で、一般式(VI)の化合物を、酸性条件下または水中で高温下で反応させ、2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド(VII):
【化7】
【0014】
とすること、
ならびに
段階(D)で、(VII)の化合物式またはそれのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩を、溶媒の存在下に、下記式(VIII)の化合物:
【化8】
【0015】
[式中、QはLi、Na、K、MgCl、MgBrまたはMgIを表す。]と反応させて、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX):
【化9】
【0016】
を得ること、
ならびに
段階(E)で、式(I)の3−クロロ−2−ビニルフェニルスルホネートが、
式(IX)の化合物を塩基の存在下に、下記一般式(X)の化合物:
【化10】
【0017】
[式中、
Wは、F、Cl、BrまたはOSOを表し、
は、上記で開示の意味を有する。]と反応させることで形成されること
を特徴とする方法によって達成された。
【0018】
式(I)から(X)における基が下記のように定義される、すなわち
がメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、フェニル、4−メチルフェニルまたはベンジルを表し;
がF、Cl、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表し、
およびRが互いに独立に、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCを表し;
がF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
がF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表し;
WがF、ClまたはOSOを表し;
QがNa、K、MgClまたはMgBrを表す、本発明による方法が好ましい
【0019】
式(I)から(X)における基が下記のように定義される、すなわち
がメチル、エチル、n−プロピル、フェニル、4−メチルフェニルを表し;
がF、Cl、FC、FHC、ClC、ClHC、ClHCまたはClCOを表し、
およびRが互いに独立に、FC、ClC、ClHC、ClHCを表し;
がF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、FHCまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
がF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、FHCまたは3−クロロ−2−(ジクロロ)メチルフェノキシを表し;
WがF、ClまたはOSOを表し;
QがNa、K、MgClまたはMgBrを表す、本発明による方法が特別に好ましい
【0020】
式(I)から(X)における基が下記のように定義される、すなわち
がメチルまたは4−メチルフェニルを表し;
がF、Cl、FCまたはClCOを表し;
およびRが互いに独立に、FCまたはClCを表し;
がF、Cl、CCl、FCまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表し;
がF、Cl、CCl、FCまたは3−クロロ−2−(ジクロロ)メチルフェノキシを表し;
WがF、ClまたはOSOを表し;
QがMgClまたはMgBrを表す、本発明による方法が最も好ましい
【0021】
本発明のさらなる態様は、下記式(V)の化合物である。
【化11】
【0022】
式中、
はF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHFまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す。
【0023】
がF、Cl、CCl、CHCl、CHClまたは3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す、式(V)の化合物が好ましい。
【0024】
がCl、CCl、または3−クロロ−2−メチルフェノキシを表す式(V)の化合物が特別に好ましい。
【0025】
本発明のさらなる態様は、下記式(VI)の化合物である。
【化12】
【0026】
式中、
はF、Cl、CCl、CHCl、CHCl、CF、CHF、または3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す。
【0027】
がF、Cl、CCl、CHCl、CHClまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す式(VI)の化合物が好ましい。
【0028】
がCl、CClまたは3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェノキシを表す式(VI)の化合物が特別に好ましい。
【0029】
本発明のさらなる態様は、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX):
【化13】
【0030】
である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一般定義
本発明の文脈において、「ハロゲン」(Hal)という用語は、異なって定義されていない限り、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素、塩素および臭素、より好ましくはフッ素および塩素を含む群から選択される元素を含む。
【0032】
本発明の文脈におけるアルキル基は、異なって定義されていない限り、直鎖もしくは分岐の飽和ヒドロカルビル基である。定義C−C−アルキルは、アルキル基について本明細書で定義の最も広い範囲を包含するものである。具体的には、この定義は、例えば、メチル、エチル、n−、イソプロピル、n−、イソ−、sec−およびt−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチルの意味を包含する。
【0033】
方法の説明
本発明の方法を、図式1に示している。
【0034】
図式1:
【化14】
【0035】
段階A:
本発明の段階(A)において、フェノール(II)を、塩基および溶媒の存在下に一般式(III)の化合物または一般式(IV)の化合物またはトリホスゲンと反応させて、一般式(V)の化合物を得る。
【0036】
2−メチル−3−クロロフェノール(II)は公知であり、WO2001/083417に従って、安価な原料である2,6−ジクロロフェノールから製造することができる。
【0037】
式(V)の化合物を製造するための最も好ましい式(III)の化合物は、ジクロロアセチルクロライド、トリクロロセチルクロライド、ホスゲン、ジホスゲン、およびジフルオロホスゲンである。一般式(IV)の化合物、最も好ましくは無水ジクロロ酢酸、無水トリクロロ酢酸または無水トリフルオロ酢酸を用いて一般式(V)の化合物を発生させるか、トリホスゲンを用いることもできる。これらの化合物は市販されている。
【0038】
本発明による段階(A)は、0℃から+120℃の温度、好ましくは0℃から+100℃の温度、より好ましくは20℃から+60℃で行う。
【0039】
段階(A)の反応は常圧下で行うが、減圧下もしくは加圧下で行うこともできる。
【0040】
段階(A)は、塩基の存在下に行う。代表的な塩基は、トリアルキルアミン類、ピリジン、アルキルピリジン類、またはジアザビシクロウンデセン(DBU)である。アルキルピリジン類が好ましい塩基である。最も好ましいものは、3−メチルピリジンおよび2−メチル−5−エチルピリジンである。
【0041】
段階(A)における塩基の量は、式(II)の化合物1モルにつき、塩基1から2モルであり、好ましくは1から1.5モルである。
【0042】
反応時間はあまり重要ではなく、バッチの大きさおよび温度に応じて、数分から数時間の範囲内で選択することができる。
【0043】
段階(A)において、式(III)の酸誘導体1から2モル、好ましくは1から1.5モル、最も好ましくは1から1.2モルを、式(II)の化合物1モルと反応させる。
【0044】
好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)、トルエン、キシレンまたはデカリン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;アミド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)またはヘキサメチルホスホルアミド;スルホキシド類、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)またはスルホン類、例えばスルホラン、またはこれらの化合物の混合物である。好ましいものは、例えば、THF、アセトニトリル、エーテル類、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはMCH、またはこれらの溶媒の混合物であり;特に好ましいものは、ジクロロメタン、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロメタン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0045】
生成される式(V)の化合物を、事前に後処理せずに次の段階に用いることができる。
【0046】
あるいは、式(V)の化合物を、好適な後処理段階によって単離し、特性決定し、適宜にさらに精製することができる。
【0047】
段階B
段階(B)において、式(V)の化合物を塩素化剤と反応させて、式(VI)の化合物を製造する。
【0048】
段階(B)に関しては、溶媒を用いることができる。好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;または溶媒の混合物である。
【0049】
段階(B)を無溶媒で行うことも可能である。
【0050】
好ましいものは、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、またはこれらの溶媒の混合物である。特に好ましいものは、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0051】
段階(B)の塩素化反応は、元素状塩素(Cl)または塩化スルフリル(SOCl)などの塩素化剤を用いて行うことができる。Clの使用が好ましい
【0052】
段階(B)の塩素化反応の場合、塩素化剤は、化学量論量または過剰量で用いる。塩素化剤を使わない場合は、トリクロロメチル置換された化合物への過剰塩素化は認められない。
【0053】
本発明の段階(B)は、異なる温度で、例えば0℃から200℃の範囲で行うことができる。50℃から150℃の範囲で反応を行うことが好ましい
【0054】
本発明の段階(B)の塩素化は、いわゆるラジカル開始剤、例えばアゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、ジ−(tert−ブチル)−ペルオキシドまたはジベンゾイルペルオキシドを加えることで、またはUV灯によって反応混合物を照射することで加速することができる。UV灯によって反応混合物を照射することで加速することが好ましい
【0055】
段階(B)の反応は、常圧で行うが、減圧下もしくは加圧下で行うこともできる。
【0056】
段階C
段階(C)において、式(VI)の3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニルオキシ誘導体を、酸性条件下または水中で高温下で、式(VII)の2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒドに変換する。
【0057】
酸性条件
好適な酸は、鉱酸、例えばHSO、HCl、HF、HBr、HI、HPOまたは有機酸、例えばCHCOOH、CFCOOH、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。好ましいものは、HCOOH、CHCOOH、HSO、およびHClである。酸は、純粋な形で、または水溶液として用いることができると考えられる。
【0058】
段階(C)において、式(VI)の化合物1モルに対して、酸0.1モルから20モル、好ましくは0.3から15モルを用いる。その反応は、50℃から+120℃の温度で、好ましくは60℃から+100℃の温度で、より好ましくは70℃から+100℃で行う。段階(C)の反応は、常圧または加圧下で行う。
【0059】
追加の有機溶媒を用いることができるものと考えられる。
【0060】
水中での高温
高温下で水中のみで、酸を用いずにその反応を行うことも可能である。水中でのその反応は、80から+140℃の温度で行う。100℃より高い温度で水中で反応を行うためには、10から20バールまでのさらなる圧力が必要である。
【0061】
追加の有機溶媒を用いることができると考えられる。
【0062】
段階(C)に好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;アミド類、例えばDMF、DMAC、N−メチルホルムアニリド、NMPまたはヘキサメチルホスホルアミド;スルホキシド類、例えばDMSOまたはスルホン類、例えばスルホラン、またはこれらの溶媒の混合物である。好ましいものは、アセトニトリル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはMCH、またはこれらの溶媒の混合物であり;特に好ましいものは、アセトニトリル、THF、トルエンまたはキシレン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0063】
反応が完了した後、溶媒を除去し、生成物を濾過によって単離するか、生成物を最初に水で洗浄し、抽出し、有機相を分離し、溶媒を減圧下に除去する。
【0064】
その反応は、各種触媒によって加速することができる。好ましいものは、FeCl、FeCl、FeSO、CuSO、およびNiClである。
【0065】
段階D
段階(D)において、2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド(VII)またはそれのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩を、(VII)を式(VIII)の有機金属試薬と溶媒の存在下に反応させることで、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX)に変換する。
【0066】
この変換に好ましい式(VIII)の有機金属試薬はMeLi、MeMgCl、MeMgBr、MeMgIであり;最も好ましいものはMeMgClおよびMeMgBrである。
【0067】
式(VIII)の有機金属試薬の量は、式(VII)の化合物1当量に対して1から3当量;好ましくは1から2当量の範囲である。
【0068】
添加時の温度は、0から100℃、好ましくは20から80℃、最も好ましくは40から70℃の範囲である。
【0069】
段階(D)に好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、キシレンまたはデカリン、およびエーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、(THF)、2−メチル−THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソールまたは溶媒の混合物である。好ましいものは、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、MCH、MTBE、2−Me−THF、およびTHF、またはこれらの溶媒の混合物であり、特に好ましいものはTHF、2−Me−THF、トルエンまたはキシレン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0070】
段階(D)の反応は通常、常圧下に行うが、減圧下もしくは加圧下でも行うことができる。
【0071】
段階E
段階(E)において、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX)を、塩基の存在下に式(X)の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得る。
【0072】
好適な試薬(X)は、メタンスルホン酸クロライド、メタンスルホン酸フルオリド−無水メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸クロライド、ベンゼンスルホン酸クロライドである。
【0073】
試薬の量は、式(IX)の化合物1当量に対して0.8から3.5当量、好ましくは1から3当量、最も好ましくは1.2から2.5当量である。
【0074】
その変換は、塩基の存在下に行う。段階(E)に好適な塩基は、有機塩基、例えば、トリエチルアミン、エチル−ジイソプロピルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ナトリウムメタノレート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、またはカリウム−tert−ブチレートである。好適な無機塩基は、水酸化および炭酸ナトリウム、水酸化および炭酸カリウム、水酸化および炭酸カルシウムである。好ましいものは、アルカリ金属炭酸塩および水酸化物、トリエチルアミンおよびピリジンである。
【0075】
塩基の量は、式(IX)の化合物1当量に対して0.5から5当量、好ましくは1から3当量の範囲である。
【0076】
段階(E)については、溶媒を用いることができる。好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、THF、2−Me−THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;または溶媒の混合物である。好ましいものは、トルエン、アセトニトリル、MTBE、THF、または2−Me−THF、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0077】
段階(E)の反応は常圧下に行うが、減圧下もしくは加圧下で行うことも可能である。
【0078】
反応が完了した後、生成物を水系酸で洗浄し、抽出し、有機層を分離し、溶媒を減圧下に留去する。
【0079】
式(IX)の化合物を3−クロロ−2−ビニルフェノール(XII)(図式2、段階F)に変換し、形成された生成物(XII)をイン・サイツでまたは単離後に、式(I)の化合物に変換することも可能である(図式2、段階G)。
【0080】
図式2
【化15】
【0081】
段階F
段階(F)において、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(IX)を、酸および溶媒の存在下に、3−クロロ−2−ビニルフェノール(XII)に変換する。
【0082】
好適な有機酸は、カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸;スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。
【0083】
好適な無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、重硫酸ナトリウム、およびリン酸二ナトリウムである。好ましいものは、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびトリルスルホン酸である。
【0084】
酸の量は、式(IX)の化合物1当量に対して0.001から2当量、好ましくは0.01から1.5当量、最も好ましくは0.05から1当量の範囲である。
【0085】
好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、THF、2−Me−THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;アミド類、例えばDMF、DMAC、N−メチルホルムアニリド、NMPまたはヘキサメチルホスホルアミド;スルホキシド類、例えばDMSOまたはスルホン類、例えばスルホラン、または溶媒の混合物である。好ましいものは、トルエン、キシレン、デカリン、クロロベンゼン、DMF、DMAC、およびNMP、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0086】
その温度は、0から200℃、好ましくは80から180℃、より好ましくは120から170℃の範囲である。
【0087】
段階(F)の反応は、常圧下に行うが、減圧下もしくは加圧下で行うこともできる。
【0088】
段階G
段階(G)において、3−クロロ−2−ビニルフェノール(XII)を、(X)および塩基の存在下に一般式(I)の化合物に変換する。
【0089】
好適な試薬(X)は、メタンスルホン酸クロライド、メタンスルホン酸フルオリド−無水メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸クロライド、ベンゼンスルホン酸クロライドである。
【0090】
試薬(X)の量は、式(XII)の化合物1当量に対して0.8から2当量、好ましくは0.8から1.8当量、より好ましくは0.8から1.5当量である。
【0091】
その変換は、塩基の存在下に行う。段階(G)に好適な塩基は、有機塩基、例えば、トリエチルアミン、エチル−ジイソプロピルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、DBU、ナトリウムメタノレート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、またはカリウム−tert−ブチレートである。好適な無機塩基は、水酸化および炭酸ナトリウム、水酸化および炭酸カリウム、水酸化および炭酸カルシウムである。好ましいものは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、トリエチルアミンおよびピリジンである。
【0092】
塩基の量は、式(XII)の化合物1当量に対して0.5から2当量、好ましくは0.8から1.5当量の範囲である。
【0093】
反応温度は、−20から+100℃、好ましくは−10から+60℃、最も好ましくは−5から+25℃の範囲である。
【0094】
段階(G)には、溶媒を用いることができる。好適な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、MCH、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、MTBE、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、THF、2−Me−THF、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−またはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;またはこれらの溶媒の混合物である。特に好ましいものは、トルエン、アセトニトリル、MTBEまたはTHF、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0095】
段階(G)の反応は常圧下に行うが、減圧下もしくは加圧下で行うこともできる。
【0096】
実験例
実施例1
【化16】
【0097】
トリクロロ酢酸3−クロロ−2−メチルフェニル
2−メチル−3−クロロフェノール142gおよびピリジン90gをトルエン700mLに入れた。トリクロロアセチルクロライド180gを、このスラリーに2時間以内で加えた。混合物を20℃で2時間撹拌し、沈殿(ピリジニウム塩酸塩)を濾去した。濾液を冷水200mLで2回洗浄し、MgSOで脱水した。溶媒を減圧下に除去して、黄色液体288gを得た(収率98%)。
【0098】
m/z=288。
【0099】
1H−NMR(CDCl):δ:7.36(d、1H)、7.2(t、1H)、7.08(d、1H)ppm。
【0100】
実施例2
【化17】
【0101】
3−クロロ−2−メチルフェニルカルボノクロリデート
2−メチル−3−クロロフェノール14.2gおよびホスゲン14g(20%トルエン中溶液として)を反応フラスコに入れた。混合物を冷却して10℃とし、N,N−ジメチルアニリン12.2gをこの温度で1時間以内に加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。その後、沈殿を濾去した。トルエンを減圧下に除去し、得られた残留物をメチル−tert−ブチルエーテル100mLに溶かした。生成した新たな沈殿を濾去し、濾液を減圧下に濃縮して、淡黄色液体18.4gを得た。
【0102】
m/z=205。
【0103】
H−NMR(CDCl):δ:7.30(m、1H)、7.15(t、1H)、7.15(m、1H)ppm。
【0104】
実施例3
【化18】
【0105】
トリクロロ酢酸3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニル
実施例1の化合物85g(0.295mol)の四塩化炭素(280mL)中溶液を、塩素ガス用導入管およびUV灯付き浸漬管を搭載したガラスリアクター(Heraeus TQ−Strahler 150/56001725)に入れた。溶液を加熱して60℃とし、Cl 96g(1.354mol)を、UV照射下に490分以内で溶液に吹き込んだ。四塩化炭素を留去して、純度91.2%(GC)の明黄色油状物111.6g(理論値の97%の収率を表す)を得た。
【0106】
GC/MS:m/z=354(M、6×35Cl、18%)、319(M−Cl、100%)。
【0107】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ=7.2(m、1H)、7.3(s、1H、Ar−CH(Cl))、7.4−7.47(m、2H)ppm。
【0108】
実施例4
【化19】
【0109】
3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニルカルボノクロリデート
実施例2の化合物4.1g(20mmol)の四塩化炭素(90mL)中溶液を、塩素ガス用導入管およびUV灯付き浸漬管を搭載したガラスリアクター(Heraeus TQ−Strahler 150/56001725)に入れた。溶液を加熱して50℃とし、Cl 21g(296mmol)を、UV照射下に450分以内で溶液に吹き込んだ。四塩化炭素を留去して、標的化合物を収率98%で得た。
【0110】
GC/MS:m/z=272(M、4×35Cl;18%)、237(M−35;40%)、193(M−OC(O)Cl;100%)。
【0111】
H−NMR(CDCl):δ=7.3(m、1H)、7.38−7.47(m、3H)ppm。
【0112】
実施例5
【化20】
【0113】
2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド
トリクロロ酢酸3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニル36g、酢酸30mLおよび100mL水の混合物を90から95℃で加熱した。6時間後、混合物を冷却して室温とし、生成物を、それぞれ酢酸エチル50mLで3回抽出した。有機抽出液を水100mLで洗浄し、溶媒を減圧下に除去して、黄色固体14.8gを得た。
【0114】
m/z=156。
【0115】
H−NMR(CDCl):δ:11.5(s、1H)、10.4(s、1H)、7.5(t、1H)、7.1(d、1H)、6,9(s、1H)ppm。
【0116】
実施例6
2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド
3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニルカルボノクロリデート27g、酢酸30mLおよび水80mLの混合物を90から95℃で加熱した。4時間後、混合物を冷却して室温とし、生成物を、それぞれ酢酸エチル50mLで3回抽出した。有機抽出液を水100mLで洗浄し、溶媒を減圧下に除去して、黄色固体14.5gを得た。
【0117】
H NMR(CDCl):δ:11.5(s、1H)、10.4(s、1H)、7.5(t、1H)、7.1(d、1H)、6,9(s、1H)ppm。
【0118】
実施例7
2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド
トリクロロ酢酸3−クロロ−2−(ジクロロメチル)フェニル36g、ギ酸30mLおよび水100mLの混合物を90℃で加熱した。6時間後、混合物を冷却して室温とし、生成物を、それぞれ酢酸エチル50mLで3回抽出した。有機抽出液を水100mLで洗浄し、溶媒を減圧下に除去して、黄色固体14.7gを得た。
【0119】
H NMR(CDCl):δ:11.5(s、1H)、10.4(s、1H)、7.5(t、1H)、7,1(d、1H)、6.9(s、1H)ppm。
【0120】
実施例8
【化21】
【0121】
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール
3M MeMgCl/THF溶液500mLに、2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒドの60℃の温溶融物107gを30から60分かけて加える。添加中、混合物の温度は還流に維持する。ガス発生が認められる。添加完了した後、混合物を冷却して室温とし、冷却下に10%HCl水溶液650mLに加える。有機層を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、MgSOで脱水し、濾過し、溶媒を除去して、3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール123g(理論値の91%)を得る。
【0122】
定量的NMR:87%。
【0123】
H NMR(DMSO−d6):δ=10.0(brs、1H)、7.1(t、1H)、6.9(d、1H)、6.7(s、1H)、5.28−5.31(m、1H)、1.4(d、3H)ppm。
【0124】
実施例9
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール
2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒドのカリウム塩5.8gのTHF(20g)中混合物に、還流温度で30分以内で3M MeMgCl/THF溶液10.4mLを加えた。HPLCでは、80%変換が示された。
【0125】
実施例10
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール
2−クロロ−6−ヒドロキシベンズアルデヒドのカリウム塩のTHF(9g)中混合物に、1.6Mメチルリチウム/エーテル溶液3.5mLを0℃で加えた。HPLCでは、生成物:アルデヒドの1:3混合物が示された。
【0126】
実施例11
3−クロロ−2−ビニルフェノール
【化22】
【0127】
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール(純度87%)50gのDMAc(280g)中溶液に、160℃でメタンスルホン酸24gを加え、90分間撹拌する。混合物を冷却し、トルエン250mLおよび水200mLを加え、有機層を飽和水溶液NaHCOで洗浄する。粗生成物を薄膜蒸留によって濃縮して、3−クロロ−2−ビニルフェノールを60重量%DMAc中溶液として得て(定量的NMRによる測定)、それは収率約78%に相当する。
【0128】
H NMR(DMSO−d6):δ=10.1(s、1H)、7.06(t、1H)、6.90−6.79(m、3H)、6.13−6.10(m、1H)、5.54−5.51(m、1H)ppm。
【0129】
実施例12
3−クロロ−2−ビニルフェノール
16.8g3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノールのDMAC/キシレン(27g/54g)中混合物に、160℃でメタンスルホン酸9.3gを加え、90分間撹拌する。混合物を薄膜蒸留によって濃縮して、3−クロロ−2−ビニルフェノール37.5gをDMAC中溶液として得て(定量的NMRによる測定で純度34%)、それは収率85%に相当する。
【0130】
実施例13
3−クロロ−2−ビニルフェノール
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール17.4gのDMAC(180g)中混合物に、160℃でトリフルオロメチルスルホン酸7.6gを加え、30分間撹拌する。混合物を冷却し、薄膜蒸留を介して濃縮して、3−クロロ−2−ビニルフェノール35.7gをDMAC中溶液として得て(定量的NMRによる測定で純度34%)、それは収率77%に相当する。
【0131】
実施例14
3−クロロ−2−ビニルフェノール
7.4g3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノールのDMAC/トルエン(18g/36g)中混合物に、160℃でメタンスルホン酸4.1gを加え、120分間撹拌する。生成する水は、ディーン−スターク装置によって連続的に除去する。混合物を冷却し、有機層を飽和NaHCO水溶液で洗浄する。粗生成物を濃縮して、8.5g3−クロロ−2−ビニルフェノールを57重量%DMAC中溶液として得て(定量的NMRによって測定)、それは収率73%に相当する。
【0132】
実施例15
3−クロロ−2−ビニルフェノール
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール1gのテトラメチル尿素(9g)中混合物に、140℃でメタンスルホン酸0.5gを加え、60分間撹拌する。HPLCは、88%変換および82%3−クロロ−2−ビニルフェノールを示している。
【0133】
実施例16
3−クロロ−2−ビニルフェノール
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール0.5gのDMAc(4.5g)中混合物に、160℃でメタンスルホン酸0.025gを加え、120分間撹拌する。HPLCは、94%変換および77%3−クロロ−2−ビニルフェノールを示している。
【0134】
実施例17
【化23】
【0135】
3−クロロ−2−ビニルフェニルメタンスルホネート
実施例11のDMAC中溶液を、MTBE 400g中のトリエチルアミン17gを加える。0から5℃で、メタンスルホン酸クロライド19.1gを、シリンジポンプによって1時間以内で加える。さらに10分後、混合物を15%塩酸水溶液250mLに加え、有機層をMgSOで脱水し、減圧下に濃縮して、粗3−クロロ−2−ビニルフェニルメタンスルホネート53gを得る(定量的NMR純度82%;理論値の95%)。
【0136】
メチルシクロヘキサン/MTBE中での再結晶によって、生成物34.5gを得る(定量的NMR:純度96%;理論値の72%)。
【0137】
H NMR(DMSO−d6):δ=7.52−7.51(m、1H)、7.44−7.39(m、2H)、6.75−6.70(m、1H)、5.87−5.84(m、1H)、5.76−5.74(m、1H)、5.54−5.51(m、1H)、3.44(s、3H)ppm。
【0138】
実施例18
3−クロロ−2−ビニルフェニルメタンスルホネート
3−クロロ−2−(1−ヒドロキシエチル)フェノール2.59gおよびメタンスルホン酸クロライド4.3gのメチル−tert−ブチルエーテル(50mL)中溶液に、トリエチルアミン3.79gを0℃でゆっくり加えた。混合物を0℃で1時間、20℃で5時間撹拌した。生成した懸濁液に水50mLを加え、有機相を分離し、水50mLで洗浄した。溶媒留去しおよび生成物をMCH/MTBE混合液からの結晶化によって精製して、白色固体2.64g(76%)を得た。
【0139】
H NMR(DMSO−d6):δ=7.52−7.51(m、1H)、7.44−7.39(m、2H)、6.75−6.70(m、1H)、5.87−5.84(m、1H)、5.76−5.74(m、1H)、5.54−5.51(m、1H)、3.44(s、3H)ppm。