(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエーテルカーボネートポリオールは、ポリエーテルカーボネートポリオールの総重量に基づいて5〜25重量%の二酸化炭素を有する、請求項1または2に記載の混合物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先に述べたように、本発明の第一の態様は、
a)少なくとも25重量%の、ポリエーテルカーボネートポリオールの総重量に基づいて0.5〜30重量%の範囲の化学構造中のCO
2の含有量を有するポリエーテルカーボネートポリオール;および
b)75重量%以下のポリプロピレンカーボネート
を含んでなる混合物に関する。
【0026】
ポリエーテルカーボネートポリオール
用語「ポリエーテルカーボネートポリオール」は、その化学構造にランダムに組み込まれたCO
2基を有するポリエーテルポリオールと理解されるべきである。特に、ポリエーテルポリオール構造中のCO
2の重量割合は0.5〜30重量%の範囲である。
【0027】
ポリエーテルカーボネートポリオールの調製は、複金属シアン化物触媒(DMC)の存在下、1種以上のH−官能性開始剤物質、1種以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を共重合することを含む方法によって実施される。
【0028】
典型的には、2〜24個の炭素原子を有するアルキレンオキシドが使用される。該アルキレンオキシドの例としては、とりわけ、任意に置換されたエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、ヘプテンオキシド、オクテンオキシド、ノネンオキシド、デセンオキシド、ウンデセンオキシド、ドデセンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキサンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシドおよびスチレンオキシドからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。置換されたアルキレンオキシドとは、好ましくは、C
1−C
6アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルで置換されたアルキレンオキシドをいう。好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、スチレンオキシドおよびそれらの混合物である。特定の態様において、アルキレンオキシドはプロピレンオキシドである。
【0029】
用語「H−官能性開始剤物質」とは、例えば、アルコール、第一級もしくは第二級アミン、またはカルボン酸等の、アルコキシル化に活性なH原子を有する化合物をいう。適当なH−官能性開始剤物質は、一価もしくは多価アルコール、多価アミン、多価チオール、アミノアルコール、チオアルコール、ヒドロキシエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリエーテルアミン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフランアミン、ポリエーテルチオール、ポリアクリレートポリオール、ヒマシ油、リシノール酸のモノ−もしくはジ−グリセリド、脂肪酸のモノグリセリド、脂肪酸の化学的に修飾されたモノ−、ジ−および/またはトリ−グリセリド、および平均して一分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基を有するC
1−C
24−アルキル脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0030】
特定の態様において、H−官能性開始剤物質は、ポリオールとしても知られている多価アルコールであり、より具体的には、100〜4,000Daの数平均分子量を好ましくは有するポリエーテルポリオールである。より好ましくは、ポリエーテルポリオールは2〜8の官能価を有する、すなわち、一分子当たり2〜8個のヒドロキシル基を有する。さらに好ましくは、ジオールまたはトリオールである。
【0031】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、エチレンオキシドキャップトポリ(オキシプロピレン)ポリオール、混合エチレンオキシド−プロピレンオキシドポリオール、ブチレンオキシドポリマー、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのブチレンオキシドコポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を包含する。最も好ましいものは、2,000Da未満、より好ましくは200〜1,000Da、さらに好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有し、特に2〜8個のヒドロキシル基を有するポリ(オキシプロピレン)ポリオール、より好ましくはジオールおよびトリオールである。
【0032】
より好ましくは、H−官能性開始剤物質として用いるポリエーテルポリオールは、酸性触媒作用によって、すなわち、活性水素含有開始剤および酸性触媒の存在下でエポキシドを重合することによって合成されたものである。適当な酸性触媒の例は、BF
3、SbF
5、Y(CF
3SO
3)
3等のルイス酸、またはCF
3SO
3H、HBF
4、HPF
6、HSbF
6等のブレンステッド酸を包含する。
【0033】
特定の態様において、H−官能性開始剤物質は、酸性触媒作用によって合成されたポリエーテルポリオールである。好ましくは、それは、酸性触媒作用によって合成され、2,000Da未満、好ましくは200〜1,000Da、より好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するポリエーテルポリオールである。
【0034】
本発明の混合物で用いるポリエーテルカーボネートポリオールは、少なくとも2、好ましくは2〜8の官能価、さらに好ましくは2または3の官能価を有する、すなわち、一分子当たり2または3個のヒドロキシル基を有する。従って、ポリエーテルカーボネートポリオールは、好ましくはポリエーテルカーボネートジオールまたはポリエーテルカーボネートトリオールであり、さらに好ましくはポリエーテルカーボネートトリオールである。この官能価は、それを調製するのに用いるH−官能性開始剤物質の官能価と一致する。
【0035】
特定の態様において、ポリエーテルカーボネートポリオールの数平均分子量は、500〜20,000Da、好ましくは1,000〜12,000Da、より好ましくは1,000〜5,000Daの範囲である。
【0036】
好ましくは、(ポリエーテルカーボネートポリオール鎖全体をいう)ポリエーテルカーボネートポリオールは、ポリエーテルカーボネートポリオールの総重量に基づいて、5〜25重量%、好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%、さらにより好ましくは12〜20重量%の二酸化炭素を有する。
【0037】
好ましい態様において、ポリエーテルカーボネートポリオールは、複金属シアン化物触媒の存在下で、1種以上のH−官能性開始剤物質、1種以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を共重合することを含む方法によって製造され、該複金属シアン化物触媒は、
a)有機錯化剤およびポリエーテルポリオールリガンドの存在下で固体複金属シアン化物触媒を合成し;
b)工程a)で得られた触媒を、まず、
・90〜100重量%の水;および
・0〜10重量%のポリエーテルポリオールリガンド
を含んでなる水溶液で洗浄してスラリーを形成することを含む方法によって得られ、前記水溶液は、ポリエーテルポリオールリガンド以外の有機錯化剤を含有しない。
【0038】
特定の態様において、前記方法は、さらに、
c)工程b)で得られたスラリーから触媒を分離し;次いで、
d)工程c)で得られた固体触媒を、
・90〜100重量%の有機錯化剤、および
・0〜10重量%のポリエーテルポリオールリガンド
を含んでなる溶液で洗浄することを含む。
【0039】
工程a)
この工程は、DMC触媒の合成のための先行技術で知られた任意の方法によって行うことができる。特定の態様において、この工程は、ポリエーテルポリオールリガンドおよび有機錯化剤の存在下で、水溶性金属塩(過剰)および水溶性金属シアニド塩を水溶液中で反応させることによって行うことができる。
【0040】
好ましい態様において、水溶性金属塩および水溶性金属シアニド塩の水溶液を、まず、効果的な混合を用いて、有機錯化剤の存在下で反応させて、触媒スラリーを生成する。金属塩は過剰に用い;好ましくは、金属塩と金属シアニド塩とのモル比は2:1〜50:1、より好ましくは10:1〜40:1である。この触媒スラリーは、複金属シアニド化合物である、金属塩および金属シアニド塩の反応生成物を含有する。また、過剰の金属塩、水、および有機錯化剤を存在させ、その全てを触媒構造にある程度組み込む。別の好ましい態様において、水溶性金属塩を含有する水溶液および水溶性金属シアニド塩を含有する水溶液の混合は、30〜70℃、より好ましくは40〜60℃の範囲の、さらに好ましくは約50℃の温度で行う。
【0041】
水溶性金属塩は、好ましくは、一般式:MA
n
[式中、MはZn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(IV)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)およびCr(III)からなる群から選択されるカチオンであり;
Aはハライド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、バナデート、シアニド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートおよびニトレートからなる群から選択されるアニオンであり;
nは1、2または3であって、Mの原子価状態を満足する]
で示される。好ましくは、MはZn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)およびCo(II)から選択されるカチオンである。好ましくは、Aはハライドから選択されるカチオンである。
【0042】
適当な金属塩の例は、限定されるものではないが、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセトネート、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、ギ酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)等およびそれらの混合物を包含する。特定の態様において、水溶性金属塩は塩化亜鉛である。
【0043】
水溶性金属シアニド塩は、好ましくは、式:D
x[E
y(CN)
6]
[式中、Dはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンであり;
EはCo(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Mn(II)、Mn(III)、Cr(II)、Cr(III)、Ni(II)、Ir(III)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)およびV(V)からなる群から選択されるカチオンであり;
xおよびyは1以上の整数であり、xおよびyの電荷の和はシアニド(CN)基の電荷とバランスしている]
で示される。好ましくは、EはCo(II)、Fe(II)、Ni(II)、Co(III)およびFe(III)から選択される。
【0044】
適当な水溶性金属シアニド塩は、限定されるものではないが、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸リチウム等を包含する。特定の態様において、金属シアニド塩はヘキサシアノコバルト(III)酸カリウムである。
【0045】
有機錯化剤は、塩水溶液の一方または両方と一緒に含めることができるか、あるいはDMC化合物の沈殿の直後に触媒スラリーに加えることができる。有機錯化剤を、反応体を混合する前にいずれかの水溶液と予め混合することが一般に好ましい。通常、過剰量の錯化剤を用いる。典型的には、錯化剤と金属シアニド塩とのモル比は、10:1〜100:1、好ましくは10:1〜50:1、より好ましくは20:1〜40:1である。
【0046】
一般に、錯化剤は水に比較的可溶性でなければならない。適当な有機錯化剤は、例えばUS 5,158,922における当該分野で通常知られたものである。好ましい有機錯化剤は、複金属シアニド化合物と錯体形成できる水溶性ヘテロ原子含有有機化合物である。本発明において、有機錯化剤はポリエーテルポリオールではない。より好ましくは、有機錯化剤は、モノアルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ウレア、ニトリル、スルフィドおよびそれらの混合物から選択される水溶性ヘテロ原子含有化合物である。好ましい有機錯化剤は、水溶性脂肪族アルコール、好ましくは、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールおよびtert−ブチルアルコールからなる群から選択されるC
1−C
6脂肪族アルコールである。tert−ブチルアルコール(TBA)が特に好ましい。
【0047】
好ましくは、金属塩および金属シアニド塩水溶液(またはそれらのDMC反応生成物)を有機錯化剤と効果的に混合する。効果的な混合を達成するには、便宜にはスターラーを用いることができる。
【0048】
この反応から得られる複金属シアニド化合物の例は、例えば、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(II)酸ニッケル、ヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト等を包含する。ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛が好ましい。
【0049】
次いで、有機錯化剤の存在下で水溶液を混合した後に生じた触媒スラリーをポリエーテルポリオールリガンドと混合する。この工程は、好ましくは、触媒スラリーおよびポリエーテルポリオールの効果的な混合が行われるようにスターラーを用いて行う。
【0050】
この混合は、好ましくは、30〜70℃、より好ましくは40〜60℃の範囲の、さらに好ましくは約50℃の温度で行う。
【0051】
適当なポリエーテルポリオールは、環状エーテルの開環重合によって生成したものを包含し、エポキシドポリマー、オキセタンポリマー、テトラヒドロフランポリマー等を包含する。触媒作用の任意の方法を用いてポリエーテルを調製することもできる。ポリエーテルは、例えば、ヒドロキシル、アミン、エステル、エーテル等を包含する任意の所望の末端基を有することもできる。好ましいポリエーテルは、約2〜約8の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエーテルポリオールである。また、2,000Da未満、より好ましくは200〜1,000Da、さらに好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するポリエーテルポリオールも好ましい。これらは、通常、活性水素含有開始剤および(DMC触媒を包含する)塩基性、酸性もしくは有機金属触媒の存在下でエポキシドを重合することによって調製される。
【0052】
有用なポリエーテルポリオールは、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、エチレンオキシドキャップトポリ(オキシプロピレン)ポリオール、混合エチレンオキシド−プロピレンオキシドポリオール、ブチレンオキシドポリマー、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのブチレンオキシドコポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を包含する。最も好ましいものは、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、特に、2,000Da未満、より好ましくは200〜1,000Da、さらに好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するジオールおよびトリオールである。
【0053】
より好ましくは、DMC触媒の調製で用いるポリエーテルポリオールは、酸性触媒作用によって、すなわち、活性水素含有開始剤および酸性触媒の存在下でエポキシドを重合することによって合成されたものである。適当な酸性触媒の例は、BF
3、SbF
5、Y(CF
3SO
3)
3等のルイス酸、またはCF
3SO
3H、HBF
4、HPF
6、HSbF
6等のブレンステッド酸を包含する。
【0054】
特定の態様において、ポリエーテルポリオールリガンドは、塩基性触媒作用によって得られた、200〜1,000Da、好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するポリ(オキシプロピレン)ポリオールである。
【0055】
別の態様において、ポリエーテルポリオールリガンドは、酸性触媒作用によって得られた、200〜1,000Da、好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するポリ(オキシプロピレン)ポリオールである。
【0056】
DMC触媒の調製において酸性触媒作用によって得られたポリエーテルポリオールを用いるのが好ましい。ポリエーテルポリオールを複金属シアニド化合物と混合すると、ポリエーテルポリオール含有固体触媒を触媒スラリーから分離する。これは、濾過、遠心分離等の任意の便宜な手段によって達成される。
【0057】
特定の態様において、十分な反応体を用いて、
・30〜80重量%の複金属シアニド化合物;
・1〜10重量%の水;
・1〜30重量%の有機錯化剤;および
・1〜30重量%のポリエーテルポリオールリガンド
を含有する固体DMC触媒を得る。
【0058】
好ましくは、有機錯化剤およびポリエーテルポリオールの総量は、触媒の総重量に対して、5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0059】
工程b)
次いで、分離したポリエーテルポリオール含有固体触媒を、まず、90〜100重量%の水および0〜10重量%のポリエーテルポリオールを含む水溶液で洗浄する。この水溶液は、前記したものと同様にいずれの有機錯化剤も含まない。分離した固体DMC触媒を工程a)で得たら、この最初の洗浄工程より前に他の洗浄工程を行わない。
【0060】
工程b)で用いるポリエーテルポリオールは、工程a)のために定義した通りである。
【0061】
水溶液中の成分の重量パーセントは、該水溶液の総重量に基づく。
【0062】
この洗浄工程で用いる水溶液の特定の組成が、ポリエーテルカーボネートポリオールを調製するための改良された方法を提供する複金属シアン化物触媒をもたらすことが見いだされた。
【0063】
好ましくは、工程b)における水溶液中のポリエーテルポリオールリガンドの量は、水溶液の総重量に対して5重量%未満である。さらなる特定の態様によると、工程b)における水溶液中のポリエーテルポリオールリガンドの量は、溶液の総重量に対して4重量%未満であり、好ましくは3重量%未満である。さらなる態様によると、工程b)における水溶液中のポリエーテルポリオールリガンドの量は、溶液の総重量に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましくは0.3〜1.8重量%である。さらなる特定の態様において、工程b)における水溶液中のポリエーテルポリオールリガンドの量は0重量%である。
【0064】
工程b)において、水およびポリエーテルポリオールリガンドは、同時にまたは順次、工程a)で得た触媒と接触させることができる。すなわち、工程b)における水溶液は、工程a)で得られた触媒と接触させる場合、水およびポリエーテルポリオールリガンドの双方を既に含有することができ(「同時接触」)、または工程a)で得た触媒を、まず、個々の成分(水またはポリエーテルポリオールリガンド)の一方と接触させ、次いで、得られた混合物を他方の個々の成分と接触させることができる(「順次接触」)。特定の態様において、水およびポリエーテルポリオールリガンドは、工程a)で得た触媒と順次接触させる。
【0065】
好ましい態様において、工程a)で得た触媒を、まず、水と接触させ、次いで、水溶液の総重量に対して好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%であるポリエーテルポリオールリガンドと接触させる。
【0066】
この洗浄工程は、一般に、水溶液中で触媒を再スラリー化し、続いて、濾過等の任意の便宜な手段を用いた触媒分離工程を行うことによって達成される。
【0067】
工程a)および/またはd)における過剰量の有機錯化剤との混合において、洗浄工程b)におけるこの水溶液を用いることも特に有利である。
【0068】
工程d)
単一の洗浄工程で十分であるが、1回を超えて触媒を洗浄することが好ましい。好ましい態様において、後続の洗浄は、非水性であって、有機錯化剤中の、または先の洗浄工程で用いた有機錯化剤およびポリエーテルポリオールの混合物中の複金属シアン化物触媒の再スラリー化を包含する。より好ましくは、複金属シアン化物触媒は、90〜100重量%の有機錯化剤および0〜10重量%のポリエーテルポリオールを含んでなる溶液で洗浄する。
【0069】
工程d)で用いるポリエーテルポリオールは、工程a)のために定義した通りである。
【0070】
溶液中の成分の重量パーセントは、該溶液の総重量に基づく。
【0071】
好ましくは、工程d)における溶液中のポリエーテルポリオールの量は、溶液の総重量に対して5重量%未満である。さらなる特定の態様によると、ポリエーテルポリオールリガンドの量は、溶液の総重量に対して4重量%未満であり、好ましくは3重量%未満である。さらなる態様によると、工程d)におけるポリエーテルポリオールの量は、溶液の総重量に対して0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましくは0.3〜1.8重量%である。
【0072】
有機錯化剤は、好ましくはtert−ブチルアルコールである。ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリ(オキシプロピレン)ポリオール、より好ましくは、2,000Da未満、より好ましくは200〜1,000Daまたは300〜800Daの数平均分子量を有するポリ(オキシプロピレン)ポリオールである。特定の態様において、ポリエーテルポリオールは酸性触媒作用によって合成されたものである。
【0073】
典型的には、錯化剤と金属シアニド塩とのモル比は、10:1〜200:1、好ましくは20:1〜150:1、より好ましくは50:1〜150:1である。
【0074】
工程d)において、有機錯化剤およびポリエーテルポリオールは、同時にまたは順次、工程c)で得た固体触媒と接触させることができる。特定の態様において、それらは、順次、工程c)で得た固体触媒と接触させる。好ましくは、工程c)で得た触媒を、まず、有機錯化剤と接触させ、次いで、ポリエーテルポリオールと接触させる。
【0075】
触媒を洗浄した後、触媒が一定の重量に達するまで、それを真空下で乾燥することが通常好ましい。触媒は約50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜110℃、さらに好ましくは90℃〜110℃の範囲内の温度で乾燥することができる。乾燥した触媒を粉砕して、本発明の共重合方法で用いるのに適した粉末形態の高度に活性な触媒を得ることができる。
【0076】
特定の態様において、複金属シアニド化合物はヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛であり、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールはポリ(オキシプロピレン)ポリオールである。好ましくは、ポリエーテルポリオールはポリ(オキシプロピレン)ポリオール、より好ましくは、2,000Da未満、より好ましくは200〜1,000Daまたは300〜800Daの数平均分子量を有するポリ(オキシプロピレン)ポリオールである。特定の態様において、ポリエーテルポリオールは酸性触媒作用によって合成されたものである。
【0077】
特定の態様において、前記方法によって得られる触媒は、
・少なくとも1種の複金属シアニド化合物;
・少なくとも1種の有機錯化剤;および
・2,000Da未満の数平均分子量を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオールリガンド
を含んでなることを特徴とする。
【0078】
特定の態様において、複金属シアニド化合物はヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛であり、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールは2,000Da未満の数平均分子量を有する。最も好ましいポリエーテルポリオールは、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、特に、200〜1,000Da、より好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有するジオールまたはトリオールである。
【0079】
特定の態様において、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールは酸性触媒作用によって合成されたものである。好ましくは、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールは2,000Da未満、好ましくは200〜1,000Da、より好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有し、酸性触媒作用によって合成されたものである。
【0080】
別の態様において、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールは塩基性触媒作用によって合成されたものである。好ましくは、有機錯化剤はtert−ブチルアルコールであって、ポリエーテルポリオールは2,000Da未満、好ましくは200〜1,000Da、より好ましくは300〜800Daの数平均分子量を有し、塩基性触媒作用によって合成されたものである。
【0081】
特定の態様において、前記方法によって得られる複金属シアン化物触媒は、
・30〜80重量%の複金属シアニド化合物;
・1〜10重量%の水;
・1〜30重量%の有機錯化剤;および
・1〜30重量%のポリエーテルポリオールリガンド
を含んでなる。
【0082】
好ましくは、有機錯化剤およびポリエーテルポリオールの総量は触媒の総重量に対して5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0083】
ポリプロピレンカーボネート
本発明の混合物に含まれるPPCともいうポリプロピレンカーボネートは、触媒の存在下におけるCO
2とプロピレンオキシドとの共重合の結果としての生成物である。該反応は、下記構造:
【化1】
[式中、nは5〜150の範囲の整数である]
で示される主たる反復ユニットを有する化合物をもたらす。
【0084】
従って、好ましい態様において、ポリマーの全ての末端基はヒドロキシル基である。
【0085】
しかしながら、いくつかの態様では、ヒドロキシル基に代えて、エポキシドを開環できる結合形態の求核試薬に相当する基等の他の末端基を存在させることができる。例えば、別の好ましい態様では、85%を超える末端基がヒドロキシル基である。
【0086】
特定の態様において、nは10〜150、さらに好ましくは10〜100の範囲の整数である。
【0087】
特定の態様において、前記ポリプロピレンカーボネートは、金属サレン触媒、例えば、コバルトサレン触媒またはグルタル酸亜鉛触媒といった遷移金属触媒の存在下におけるCO
2およびプロピレンオキシドの共重合によって得られる。適当な触媒および方法は、例えば、WO2010/022388、WO2010/028362、WO2012/071505、US 8,507,708、US 4,789,727、Angew. Chem. Int., 2003, 42, 5484-5487;Angew. Chem. Int., 2004, 43, 6618-6639;およびMacromolecules, 2010, 43, 7398-7401に記載のものを包含する。
【0088】
ペンディングメチル基の位置は、ポリマー鎖中の隣接反復ユニットの位置化学に依存する。以下に示す3つの位置化学的可能性が存在する:
【化2】
【0089】
モノマーユニットの特定の位置化学的配向は、本明細書においてポリマー構造の例示に示され得るが、これは、ポリマー構造を例示した位置化学的配置に限定することを意図するものではなく、示された、対向位置化学、ランダム混合物、アイソタクチック材料、シンジオタクチック材料、ラセミ材料、および/またはエナンチオマーリッチ材料およびこれらの組合せを含めた全ての位置化学的配置を包含すると解釈されるべきである。
【0090】
好ましい態様において、本発明の混合物で用いるポリプロピレンカーボネートは、平均して、約80%を超えるヘッドトゥテール配向の隣接モノマーユニットを有し、より好ましくは85%を超える隣接モノマーユニットはヘッドトゥテール配向であり、さらに好ましくは95%を超える隣接モノマーユニットはヘッドトゥテール配向である。特定の態様において、ポリプロピレンカーボネート中の実質的に全ての隣接モノマーユニットはヘッドトゥテール配向である。
【0091】
別の特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは、高い割合のカーボネート結合を有することを特徴とする。好ましくは、ポリプロピレンカーボネートは、平均して、約80%を超える、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマーユニットと、約20%未満のエーテル結合を有する。より好ましくは、ポリプロピレンカーボネートは、平均して約90%を超える、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマーユニットを有する。さらに好ましくは、ポリプロピレンカーボネートは、平均して約95%を超える、より好ましくは97%を超える、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマーユニットを有する。特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは、平均して全ての、カーボネート結合を介して連結されたその隣接モノマーユニットを有する。
【0092】
別の特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは約2未満、好ましくは約1.8未満、より好ましくは1.5未満、さらに好ましくは1.2未満のPDIを有する。ある態様において、ポリプロピレンカーボネートは約1.0〜1.2のPDIを有する。
【0093】
別の特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは、低い環状カーボネート含有量を有することを特徴とする。好ましくは、ポリプロピレンカーボネートは、約5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満の環状カーボネート含有量を有する。ある態様において、ポリプロピレンカーボネートは実質的に環状カーボネートを含有しない。
【0094】
別の特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは15,000Da未満、好ましくは500〜10,000Da、より好ましくは700〜5,000Daの数平均分子量を有し、重量平均分子量は17,000Da未満である。なお好ましい態様において、ポリプロピレンカーボネートは約1,000〜約3,500Daの数平均分子量を有する。
【0095】
別の好ましい態様において、ポリプロピレンカーボネートの全ての末端基はヒドロキシル基である。従って、本発明の混合物で用いるポリプロピレンカーボネートはジオールである。
【0096】
別の特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは、本発明の混合物の総重量に対して5〜45重量%、より好ましくは20〜45重量%の重量割合で該混合物に含まれる。
【0097】
特定の態様において、本発明の混合物は、
a)少なくとも50重量%の、ポリエーテルカーボネートポリオールの総重量に基づいて5〜25重量%の範囲の構造中のCO
2の含有量を有するポリエーテルカーボネートポリオール;および
b)50重量%以下のポリプロピレンカーボネート
を含んでなる。
【0098】
本発明の第二の態様は、先に定義したポリプロピレンカーボネートおよび先に定義したポリエーテルカーボネートポリオールを含んでなる混合物の製造方法に関する。
【0099】
この方法は、均一な混合物を得るのに必要な時間、所定の割合で双方の成分を物理的に混合することを含む。典型的には、双方の成分を含む混合物を、スピードミキサー中で、好ましくは3,500rpmで少なくとも3分間調製する。
【0100】
特定の態様において、ポリプロピレンカーボネートは、混合物の総重量に対して5〜45重量%、より好ましくは20〜45重量%の重量割合で混合物に添加する。
【0101】
本発明の混合物の成分を、ポリプロピレンカーボネートとCO
2不含有ポリエーテルポリオールとを含んでなる混合物と比較すると、当該成分は向上した混和性および熱的安定性を示す。特に、本明細書の実施例の部において示すように、双方の成分のポリマー鎖の異なる化学構造および移動性にもかかわらず、混合物は、純粋な成分の対応するTgの間であって、理論値に近接する(本明細書においては、成分単独のTgと区別するためにTg
1’ともいう)1つのTgを呈することが観察された。この挙動は、典型的にはアモルファスポリマー間の優れた混和性標準を構成するので[Bull. Am. Phys. Soc., 1956, 1, 123]、このデータは、双方の成分の良好な混和性を示す。
【0102】
ポリエーテルカーボネートポリオールが10重量%までのCO
2を有し、混合物が高い割合のポリプロピレンカーボネートを含有する場合に限り、(本明細書中においては、Tg
1’およびTg
2’ともいう)2つのTgが観察されるが、それらは成分単独のTgに対してシフトしており、混和性は、ポリプロピレンカーボネートおよびCO
2不含有ポリエーテルポリオールを含んでなる混合物に対して常に増加する。
【0103】
特定の態様において、本発明の混合物のTg
1’は−25℃〜−62℃、より好ましくは−25℃〜−60℃、さらに好ましくは25℃〜−55℃の範囲である。この温度は、主として、双方の成分の含有量、ならびにポリエーテルカーボネートポリオール中のCO
2の含有量に依存する。ポリプロピレンカーボネートの重量割合が高いほど、混合物のTgは高い。さらに、ポリエーテルカーボネートポリオール中のCO
2の割合が高いほど、混合物のTgは高い。
【0104】
成分単独のTg値に対してシフトした2つのTgを与える混合物の特別な場合において、(本明細書中においてはTg
1’ともいう)Tgの一方は−40℃〜−60℃、より好ましくは−50℃〜−55℃の範囲である。
【0105】
本発明の混合物の混和性を考慮すると、それをジ−および/またはポリイソシアネートとの反応によって処理して、フォーム、接着剤、被覆剤、熱可塑性ポリウレタン等を調製するため等の、異なる技術的用途のためのポリウレタンを得ることができる。
【0106】
さらに、ポリプロピレンカーボネートへのポリエーテルカーボネートポリオールの混合は、比較的低い分解温度を有するポリプロピレンカーボネートの熱的安定性を向上させる。意外なことに、この向上した安定性は、CO
2不含有ポリエーテルポリオールをポリプロピレンカーボネートに混合した場合と比較して顕著に高い。
【0107】
加えて、混合物中のCO
2の総含有量は、後続のその持続可能性の向上に伴って増加する。
【0108】
従って、本発明のさらなる態様は、ポリウレタン組成物の製造方法に関し、この方法は、前記混合物と1種以上のポリイソシアネート化合物とを反応させることを含む。
【0109】
前記イソシアネートは混合物の成分の反応性末端基と反応して、鎖延長および/または架橋を介して構造をより高い分子量とする。得られたポリマーは、ウレタン結合を介して連結されたポリエーテルカーボネートポリオールおよびポリプロピレンカーボネートに由来する複数のセグメントを含んでなる。
【0110】
特定の態様において、ポリウレタンは、先に定義した混合物を、化学量論的に過剰な1種以上のジイソシアネートと反応させることによって得られる。当業者に理解されるように、重合度は、イソシアネートの相対的な量ならびに試薬の添加順序および反応条件を制御することによって変えることができる。
【0111】
ポリウレタンを得るための方法で用いることができる非常に多数のイソシアネートが当該分野で知られている。しかしながら、特定の態様において、該ポリウレタンを調製するのに用いるイソシアネートは、一分子当たり2個以上のイソシアネート基を有する。
【0112】
特定の態様において、イソシアネートはジイソシアネートである。別の特定の態様において、イソシアネートはトリイソシアネート、テトライソシアネート、イソシアネートポリマーもしくはオリゴマー等といった、高級ポリイソシアネートである、それらは、典型的には、主としてジイソシアネートの混合物の少量成分である。
【0113】
特定の態様において、イソシアネートは脂肪族もしくは脂環式ポリイソシアネートまたはその誘導体、または脂肪族もしくは脂環式ポリイソシアネートのオリゴマーである。別の特定の態様において、イソシアネートは芳香族ポリイソシアネートまたはその誘導体、または芳香族ポリイソシアネートのオリゴマーである。別の特定の態様において、イソシアネートは、前記タイプのイソシアネートのいずれかの2以上の混合物を含んでよい。
【0114】
適当な脂肪族および脂環式イソシアネート化合物としては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート;1,4−テトラメチレンジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;1,9−ノナメチレンジイソシアネート;1,10−デカメチレンジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート;水添キシリレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネート−ビウレットが挙げられる。
【0115】
芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート;トリレンジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート;4,4’−ジフェニルジイソシアネート;2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート−トリメチロールプロパンアダクト;トリフェニルメタントリイソシアネート;4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート;テトラクロロフェニレンジイソシアネート;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;およびトリイソシアネートフェニルチオホスフェートが挙げられる。
【0116】
特定の態様において、イソシアネートは、1,6−ヘキサメチルアミンジイソシアネート(HDI);イソホロンジイソシアネート(IPDI);4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H
12MDI);2,4−トルエンジイソシアネート(TDI);2,6−トルエンジイソシアネート(TDI);4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);キシリレンジイソシアネート(XDI);1,3−ビス(イソシアンメチル)シクロヘキサン(H6−XDI);2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN);4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート;トリス(p−イソシアナトメチル)チオスルフェート;1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン;1,4−テトラメチレンジイソシアネート;トリメチルヘキサンジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;1,4−シクロヘキシルジイソシアネート;リシンジイソシアネート;HDIアロフォネート三量体;HDI三量体およびそれらのいずれかの2以上の混合物からなる群から選択される。
【0117】
好ましい態様において、ポリウレタンを調製するのに用いるイソシアネートは、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)である。
【0118】
ポリウレタンを得るのに適したイソシアネートは、当業者に既に知られた手順に従って合成することができる。しかしながら、それらはまた、種々のグレードおよび組成で、様々な商品名で市販されている。ポリウレタンを製造するための反応体として適した市販イソシアネートの選択は、ポリウレタン技術分野における当業者の能力内である。
【0119】
本発明の特定の態様において、ポリウレタンを得るための方法は、さらに、触媒を反応混合物に添加することを含む。アミン化合物またはスズ化合物を含んでなる慣用的な触媒を用いて、本発明の混合物およびイソシアネートの間の重合反応を促進してよい。
【0120】
第三級アミン化合物および有機金属化合物を含めた任意の適当なウレタン触媒を用いてよい。第三級アミン化合物の例としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1−メチル−4−ジメチルアミノエチルピペラジン、3−メトキシ−N−ジメチルプロピルアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチル−N,N’−ジメチルイソプロピルプロピレンジアミン、N,N−ジエチル−3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、DABCO、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチルエーテル)、ジメチルシクロヘキシルアミン、DMT−30、トリアザビシクロデセン(TBD)、N−メチルTBD、アンモニウム塩およびそれらの組合せが挙げられる。有機金属触媒の例としては、有機水銀、有機鉛、有機第二鉄および有機スズ触媒が挙げられる。
【0121】
適当なスズ触媒としては、塩化第一スズ;ジブチルスズジラウレート等のカルボン酸のスズ塩;ジブチルビス(ラウリルチオ)スタネート、ジブチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)およびジブチルスズビス(イソオクチルマレエート)およびオクタン酸スズが挙げられる。
【0122】
触媒の典型的な量は、混合物中の総ポリオール100重量部当たり0.001〜10部の触媒である。
【0123】
先に記載したポリウレタン成分に加えて、慣用的な補助剤および/または添加剤を加えることもできる。そのような添加剤としては、限定されるものではないが、可塑剤、滑剤、安定剤、着色剤、難燃剤、無機および/または有機充填剤、および補強剤が挙げられ得る。
【0124】
レオロジー特性を所望のコンシステンシーに変更するのに可塑剤を用いてもよい。そのような可塑剤は、水を含まず、イソシアネート基に対して不活性であって、ポリマーと適合性のものとすべきである。適当な可塑剤は当業者によく知られており、限定されるものではないが、ジオクチルフタレートまたはジブチルフタレート等のアルキルフタレート、部分的に水素化されたテルペン、リン酸トリオクチル、エポキシ可塑剤、トルエンスルファミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油、トルエンおよびアルキルナフタレンが挙げられる。可塑剤は、所望のレオロジー特性を提供し、系に存在させてよい任意の触媒を分散させるのに十分な量で組成物に加える。
【0125】
滑剤として、非反応性液体を用いて、ポリウレタンを軟化させるか、または向上した処理のためにその粘度を低下させることができる。滑剤の例としては、脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミドが挙げられる。
【0126】
安定剤は、酸化安定剤、加水分解安定剤および/またはUV安定剤を包含する。加水分解安定剤の例としては、オリゴマーおよび/またはポリマーの脂肪族または芳香族カルボジイミドが挙げられる。UV安定剤として、ヒドロキシベンゾトリアゾール、亜鉛ジブチルチオカルバメート、2,6−ジ第三級ブチルカテコール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒンダードアミンおよびホスファイトを用いて、ポリウレタンの光安定性を改善することができる。この目的のために着色顔料も用いられている。
【0127】
本発明のポリウレタン組成物は、さらに、1種以上の適当な着色剤を含んでよい。典型的な無機着色剤としては、限定されるものではないが、二酸化チタン、酸化鉄および酸化クロムが挙げられる。有機顔料としては、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニンおよびジオキサジンならびにカーボンブラックが挙げられ得る。
【0128】
本発明のポリウレタン組成物は、さらに、可燃性を低下させるために、1種以上の適当な難燃剤を含んでもよい。任意の特定のポリウレタン組成物のための難燃剤の選択は、しばしば、そのポリウレタンの意図された供給用途およびその用途に適用される付随的な可燃性試験に依存する。そのような難燃剤の例としては、塩素化ホスフェートエステル、塩素化パラフィンおよびメラミン粉末が挙げられる。
【0129】
本発明のポリウレタン組成物の任意の添加剤としては充填剤が挙げられる。そのような充填剤は当業者によく知られており、限定されるものではないが、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、表面処理されたシリカ、酸化チタン、ヒュームシリカ、タルク、アルミニウム三水和物等が挙げられる。ある態様において、補強充填剤は、組成物の強度を増加させ、および/またはチクソトロピー特性を組成物に付与するのに十分な量で用いる。
【0130】
本発明の組成物で用いられる他の任意の添加剤としては粘土が挙げられる。適当な粘土としては、限定されるものではないが、カオリン、表面処理されたカオリン、焼成カオリン、ケイ酸アルミニウムおよび表面処理された無水ケイ酸アルミニウムが挙げられる。粘土はいずれの形態で用いてもよい。好ましくは、粘土は、粉砕粉、噴霧乾燥ビーズまたは微粉砕粒子の形態である。
【0131】
前記添加剤の量は、所望の用途に応じて変化させる。
【0132】
先に述べた方法に従って得られたポリウレタンは、ヒドロキシルもしくはイソシアネート末端基を有してよい。例えば、このように得られたポリウレタンは、一分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子を有する化合物、または一分子当たり2個のイソシアネート基を有する化合物と反応させることによって、直鎖状に、または三次元ネットワーク構造にさらに重合させることができる。また、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する化合物、または少なくとも3個のイソシアネート基反応性水素原子を有する化合物と反応させることによって、ポリウレタンを、その中に導入された架橋構造で修飾することもできる。
【0133】
本発明の別の態様は、先に定義した方法によって得られるポリウレタン組成物を対象とする。
【0134】
先に記載したポリウレタン組成物は、多くの他の可能な用途の中でも、接着剤組成物、熱可塑性ポリウレタンおよびポリウレタンフォームの調製のために用いることができる。
【0135】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。当業者であれば、本発明の機能を変えることなく実施できる多くの変形を理解するであろう。
【実施例】
【0136】
実施例1 混合物の調製
様々な混合物を調製するのに用いたポリプロピレンカーボネート(PPC)は、下記特性:
Mn:1,000Da
Tg:6.6℃
CO
2含有量:PPCの総重量に基づいて37.6重量%
を有していた。
【0137】
これは、Angew. Chem. Int., 2003, 42, 5484−5487;Angew. Chem. Int., 2004, 43, 6618−6639;Macromolecules, 2010, 43, 7398−7401に記載された手順に従って調製することができる。
【0138】
前記ポリプロピレンカーボネートを、異なるCO
2含有量(0重量%、10重量%および20重量%)を有し、その異なる割合を採るポリエーテルカーボネートポリオールと混合した。
【0139】
ポリエーテルカーボネートポリオールは、例えばWO 2012/156431およびWO 2015/022290に記載された手順に従って得られる。
【0140】
混合手順
ポリエーテルカーボネートポリオールおよびポリプロピレンカーボネートを、後述の表Iに示された割合で混合した。それらを混合する前に、各成分をオーブン中、80℃で30分間加熱した。次いで、それらを、均一な混合物を得るのに必要な時間、典型的には3,500rpmで3分間、Dual Asymmetric Centrifugal Mixer System(デュアル非対称遠心ミキサーシステム)中で混合した。
【0141】
得ると、混合物を、それらのTg、数平均分子量および粘度によって特徴付けた。
【0142】
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定した。窒素流下でDSC TA Instruments Q2000を用いて非等温(−85〜200℃まで10℃/分)実験を実施し、窒素流下で内部冷却器を伴って運転した。温度および熱流の較正は、標準としてインジウムを用いて行った。ガラス転移温度は第二の加熱から採用した。
【0143】
理論Tgは、完全混和性系に適用される下記フォックス等式:
【数1】
[式中、w1およびw2は混合物中の両成分の重量割合であり、Tg
1およびTg
2は、独立して採用された両成分のガラス転移温度に相当する]
に従って決定した。
【0144】
数平均分子量(Mn)および多分散性指数(Mw/Mn)は、偏向RI検出器を備えたBruker3800を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってPEG標準に対して測定した。1mL/分の流速でテトラヒドロフランを室温で溶離剤として用いた。
【0145】
熱重量測定には、Mettler TGA機器を用いた。非等温実験は、窒素雰囲気中、5℃/分の加熱速度で、温度範囲30〜700℃にて行った。TGA値は、微分熱重量曲線(DTG)の最初の極大から採用した。
【0146】
ブルックフィールド粘度は、Brookfield DV-III ULTRAレオメーターを用いて25℃で測定した。
【0147】
得られたポリエーテルカーボネートポリオールに組み込まれたCO
2の重量(重量%単位)、およびポリエーテルカーボネートポリオールに対するプロピレンカーボネートの比は、
1H−NMR(Bruker AV III HD 500、500MHz、パルスプログラムzg30、待ち時間dl:1s、120スキャン)を用いて測定した。試料を重水素化クロロホルムに溶解した。
1H−NMRにおける(TMS=0ppmに基づく)関連共鳴は以下の通りである:環状カーボネート=1.50ppm(3H);ポリエーテルカーボネートポリオール=1.35−1.25ppm(3H);ポリエーテルポリオール:1.25−1.05ppm(3H)。
【0148】
ポリエーテルカーボネートポリオール中のポリマー結合カーボネート(CP)の重量(重量%単位)は、式(I):
CP=F(1.35−1.25)×102×100/Np (I)
[式中、
・F(1.35−1.25)は、ポリエーテルカーボネートポリオールについての1.35−1.25ppmにおける共鳴面積であり(3H原子に対応);
・Np(「分母」Np)についての値は、式(II):
Np=F(1.35−1.25)×102+F(1.25−1.05)×58 (II)
〔ここで、F(1.25−1.05)はポリエーテルポリオールについての1.25−1.05ppmにおける共鳴面積である(3H原子に対応)〕
に従って計算した]
に従って計算した。
【0149】
係数102は、CO
2のモル質量(モル質量44g/モル)およびプロピレンオキシドのモル質量(モル質量58g/モル)の和から得られ、係数58は、プロピレンオキシドのモル質量から得られる。
【0150】
ポリマー中のCO
2の重量(重量%単位)は、式(III):
ポリマー中の%CO
2=CP×44/102 (III)
に従って計算した。
【0151】
反応混合物中の環状カーボネート(CC’)の重量(重量%)は、式(IV):
CC’=F(1.50)×102×100/N (IV)
[式中、
・F(1.50)は環状カーボネートについての1.50ppmにおける共鳴面積であり(3H原子に対応);
・N(「分母」N)についての値は、式(V):
N=F(1.35−1.25)×102+F(1.50)×102+F(1.25−1.05)×58 (V)
に従って計算した]
に従って計算した。
【0152】
式(III)は、ポリプロピレンカーボネート(PPC)中のCO
2の重量(重量%単位)を計算するためにも用いた。
【0153】
下記表Iは、調製された混合物の粘度およびガラス転移温度、ならびに先に説明したフォックス等式に従った各混合物のTgの理論的推定値に関する実験データを示す。
【0154】
【表1】
【0155】
図1は、10重量%のPPCおよび90重量%のポリエーテルカーボネートポリオールを有する混合物に対応するTgを示す示差走査熱量測定のグラフを示す。該ポリエーテルカーボネートポリオールは、その構造中に異なる割合のCO
2〔A)0重量%、B)10重量%およびC)20重量%〕を有する。
【0156】
図2は、20重量%のPPCおよび80重量%のポリエーテルカーボネートポリオールを有する混合物に対応するTgを示す示差走査熱量測定のグラフを示す。該ポリエーテルカーボネートポリオールは、その構造中に異なる割合のCO
2〔A)0重量%、B)10重量%およびC)20重量%〕を有する
【0157】
図3は、40重量%のPPCおよび60重量%のポリエーテルカーボネートポリオールを有する混合物に対応するTgを示す示差走査熱量測定のグラフを示す。該ポリエーテルカーボネートポリオールは、その構造中に異なる割合のCO
2〔A)0重量%、B)10重量%およびC)20重量%〕を有する
【0158】
ガラス転移温度は特に、微量な局所的修飾、特に、異なる化学構造および移動性を有するポリマー鎖のセグメントの完全な混合物によって生じたものに影響を受けやすい。従って、もし混合物が独立成分と同じ位置に2つのTgを供するならば、系は完全に非混和性と考えられる。もし混合物が独立成分に対応するTgと異なる位置に2つのTgを供するならば、系は部分的に混和性と考えられる。しかしながら、もし2つの成分の濃度およびTgに応じた位置に唯1つのTgが観察されるならば、系は混和性と考えられる[Bull. Am. Phys. Soc., 1956, 1, 123]。
【0159】
全てのこれらの図面および表Iに示されたデータから観察されるように、ポリプロピレンカーボネートおよびポリエーテルカーボネートポリオールの異なる混合物は、混合物6を除いて(Tg
1’ともいう)唯1つのTgを示す。さらに、Tg
1’値は理論値に近接しており、CO
2不含有ポリエーテルポリオールを含有する混合物の結果と比較するとなおさらそうであり、混合物を構成する両成分の良好な混和性は注目される。
【0160】
加えて、10重量%のCO
2を有するポリエーテルカーボネートポリオールと40重量%のPPCとを含んでなる混合物(混合物6)もまた、CO
2不含有ポリエーテルポリオールを含有する混合物と比較すると増加した混和性を示す。2つの成分単独のTgに対してシフトした2つのTgが観察される場合、増加した混和性をやはり示すことは注目すべきである。Tgのシフトが高いほど、混和性は高い。
【0161】
ポリエーテルカーボネートポリオール中のCO
2の含有量が高いほど、両成分の混和性はより良好であることも観察される。
【0162】
図4は、40重量%のPPCおよび60重量%のポリエーテルカーボネートポリオールを有する混合物のTGA(熱重量分析)のグラフを示す。該ポリエーテルカーボネートポリオールは、その構造中に異なる割合のCO
2〔B)0重量%およびC)10重量%〕を有する。PPC TGA曲線は(A)を参照としてプロットされている。この図に示されるように、PPCは比較的低い熱的安定性を有する(155℃前後において段階極大)。しかしながら、混合物の2つの成分の間の混和性が増加すると、熱的に安定な混合物も増加する。
【0163】
先に述べたように、ポリプロピレンカーボネートへのポリエーテルカーボネートポリオールの混合は、比較的低い分解温度を有するポリプロピレンカーボネートの熱的安定性を向上させる。意外なことに、この向上した安定性は、CO
2不含有ポリエーテルポリオールをポリプロピレンカーボネートに混同した場合と比較すると顕著に高い。
【0164】
加えて、混合物中のCO
2の総含有量は、後続のその持続可能性の向上に伴って増加する。