(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の駆動系は、機械エネルギ、油圧エネルギ、又は電気エネルギにより前記所定のアクチュエータを駆動すると共に、前記所定のアクチュエータの余剰動力に基づく前記余剰電力、又は前記電気エネルギを蓄電する蓄電手段の前記余剰電力を前記電動機に供給する、
請求項3に記載の作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係る作業機械の特徴について説明をする。
【0013】
図1は、本実施形態に係る作業機械300の特徴的な構成の一例を概念的に示す図である。
【0014】
本実施形態に係る作業機械300は、第1の駆動系310と、第2の駆動系320を含む。
【0015】
尚、作業機械300において、第1の駆動系310の駆動対象(油圧アクチュエータ314)が主たる動作要素で、第2の駆動系の駆動対象(例えば、後述するアクチュエータ321)が補助的な動作要素であってもよいし、その逆であってもよい。また、図中、第1の駆動系310と、第2の駆動系320とは、便宜上、分離された構成とされているが、一部の構成が共有される態様であってもよい。例えば、後述する第2の駆動系320のエネルギ供給部322からアクチュエータ321への動力伝達経路として、油圧回路313の一部が共用される構成であってもよい。
【0016】
第1の駆動系310は、電動機311と、油圧ポンプ312と、油圧回路313と、油圧アクチュエータ314と、蓄圧器315と、制御部316を含む。
【0017】
電動機311は、油圧ポンプ312と機械的に接続され、所定の電力源(例えば、図示しない蓄電装置や後述する第2の駆動系320)から供給される電力で作動し、油圧ポンプ312を駆動する。
【0018】
油圧ポンプ312は、上述の如く、電動機311と機械的に接続され、電動機311により駆動される。油圧ポンプ312は、電動機311で駆動されることにより、作動油タンク(不図示)から作動油を吸い込み、油圧回路313に吐出する。
【0019】
油圧回路313は、例えば、オペレータの操作に応じて、油圧ポンプ312から吐出される作動油を油圧アクチュエータ314に供給可能に構成される。また、油圧回路313は、例えば、制御部316からの制御指令に応じて、油圧ポンプ312から吐出される作動油を蓄圧器315に供給可能に構成される。また、例えば、油圧回路313は、制御部316からの制御指令に応じて、蓄圧器315に蓄圧された油圧エネルギを油圧アクチュエータ314に駆動動力として供給可能に構成される。例えば、油圧回路313は、油圧アクチュエータ314への作動油の流量及び流れる方向を切り替え可能な油圧制御弁を含む。また、例えば、油圧回路313は、油圧ポンプ312と蓄圧器315との油圧ラインの連通/非連通を切り替える、図示しない蓄圧制御弁(切替弁)を含む。また、該蓄圧制御弁は、制御部316からの制御指令に応じて、油圧ポンプ312から蓄圧器315への油圧ラインを連通させる状態と、蓄圧器315から油圧アクチュエータ314に作動油(蓄圧された油圧エネルギ)を供給する状態とを切り替え可能な構成であってもよい。これにより、油圧回路313は、該蓄圧制御弁を利用して、油圧ポンプ312から吐出される作動油を蓄圧器315に供給し、蓄圧させたり、蓄圧器315に蓄圧された油圧エネルギを油圧アクチュエータ314に供給し、再利用したりすることができる。
【0020】
油圧アクチュエータ314は、油圧回路313から供給される作動油により動作する。例えば、油圧アクチュエータ314は、作業機械300のオペレータによる操作状態に応じて、その動作が油圧制御される。油圧アクチュエータ314は、例えば、作業機械の各種作業要素(ブーム、アーム、バケット等)を駆動する油圧シリンダであってよい。
【0021】
蓄圧器315は、油圧回路313から供給される作動油を油圧エネルギとして蓄圧する。また、蓄圧器315は、油圧回路313を通じて、蓄圧した油圧エネルギ(作動油)を油圧アクチュエータ314に供給することができる。
【0022】
制御部316は、上述の如く、油圧回路313の動作を制御する。
【0023】
第2の駆動系320は、アクチュエータ321、エネルギ供給部322、動力伝達部323を含む。
【0024】
アクチュエータ321(所定のアクチュエータ)は、エネルギ供給部322から供給される、機械エネルギ、油圧エネルギ、又は電気エネルギにより駆動される。例えば、アクチュエータ321は、エネルギ供給部322としてのエンジンの出力で機械的に駆動される態様であってもよいし、エネルギ供給部322としての油圧ポンプから供給される作動油で油圧駆動される態様あってもよいし、エネルギ供給部322としての蓄電装置から供給される電力で電気駆動される態様であってもよい。
【0025】
また、アクチュエータ321は、余剰動力(余剰エネルギ)が発生すると、動力伝達部323を介して、余剰動力に基づく余剰電力を電動機311に供給することができる。当該余剰動力は、例えば、アクチュエータ321が制動する際の回生エネルギである。
【0026】
エネルギ供給部322は、上述の如く、アクチュエータ321の駆動動力(駆動エネルギ)としての機械エネルギ、油圧エネルギ、又は電気エネルギを供給する。また、エネルギ供給部322は、アクチュエータ321に電気エネルギを供給する構成である場合、余剰電力を電動機311に供給する。当該余剰電力は、例えば、エネルギ供給部322としての蓄電装置を構成する複数の単位セルをセルバランスするための強制放電の電力である。
【0027】
動力伝達部323は、アクチュエータ321の余剰動力を、電動機311で利用可能な電力(余剰電力)として供給する。例えば、余剰動力が機械エネルギである場合、動力伝達部323は、機械エネルギを電力に変換する発電機を含んでよい。また、例えば、余剰動力が油圧エネルギである場合、動力伝達部323は、余剰動力としての油圧エネルギで回転する油圧モータと該油圧モータと同軸に配置される発電機を含んでよい。
【0028】
かかる構成の作業機械300において、制御部316は、第2の駆動系320から上述の余剰電力が供給されると、油圧回路313を制御し、油圧ポンプ312から吐出される作動油を蓄圧器315に供給させる。より具体的には、制御部316は、第2の駆動系320から余剰電力が供給されると、上述の蓄圧制御弁を制御し、油圧ポンプ312と蓄圧器315との間の油圧ラインを連通させてよい。これにより、第2の駆動系320から供給される余剰電力を油圧エネルギとして蓄圧器315に蓄えることができる。また、通常、油圧アクチュエータ314が作動していない状況では、第2の駆動系320から供給される余剰電力を、電動機311、油圧ポンプ312、油圧回路313を介して油圧アクチュエータ314で再利用(消費)できないところ、蓄圧器315を設けることにより、油圧アクチュエータ314の作動状態に依らず、余剰電力を再利用可能な状態で蓄積することができる。
【0029】
また、制御部316は、油圧アクチュエータ314が作動すると(例えば、オペレータによる油圧アクチュエータ314を作動させる操作が行われると)、油圧回路313を制御し、蓄圧器315に蓄圧された油圧エネルギにより、蓄圧器315から油圧アクチュエータ314に作動油を供給させる。より具体的には、制御部316は、油圧アクチュエータ314が作動すると、上述の蓄圧制御弁を制御し、蓄圧器315と油圧アクチュエータ314との間の油圧ラインを連通させてよい。これにより、蓄圧器315に蓄積された余剰電力に基づく油圧エネルギを油圧アクチュエータ314の動力源として再利用することができる。
【0030】
このように、本実施形態に係る作業機械300によれば、他の駆動系(第2の駆動系320)で発生する余剰電力を事後的に利用可能な態様で蓄電装置以外(蓄圧器315)に蓄積させることができる。
【0031】
以下、上述の特徴を有する作業機械について、より具体的な構成を提示する実施例を用いて説明をする。
【0033】
まず、
図2〜
図4を参照して、本実施形態に係る作業機械の一例としてのショベルの構成について説明をする。
【0034】
図2は、本実施形態に係るショベルを示す側面図である。
【0035】
図2に示すように、油圧モータ1A,1B(
図3参照)により油圧駆動される下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられる。アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、オペレータが搭乗するキャビン10が設けられると共に、エンジン11(
図3参照)等が搭載される。
【0036】
尚、以下において、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6をショベルの動作要素と称する場合がある。また、ショベルの動作要素のうち、後述の如く、エネルギ回生に利用される上部旋回体3を第1動作要素と称する場合がある。また、ショベルの動作要素のうち、油圧駆動される下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を第2動作要素と称する場合がある。
【0037】
図3は、ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図中、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
【0038】
本実施形態に係るショベルにおけるメイン駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、減速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続される。減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。即ち、エンジン11は、減速機13を介してメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動し、電動発電機12は、エンジン11をアシストしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動することができる。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続される。
【0039】
メインポンプ14(油圧ポンプの一例)は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。メインポンプ14は、後述の如く、2つのメインポンプ14A、14Bを含む。
【0040】
パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプである。
【0041】
コントロールバルブ17は、操作装置26における操作に応じて、油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)、1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」と称する場合がある)は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。コントロールバルブ17は、メインポンプ14と各油圧アクチュエータとの間に設けられ、メインポンプ14(14A,14B)から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁を含む。具体的には、コントロールバルブ17は、油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のそれぞれに対して設けられる走行制御弁(右用)、走行制御弁(左用)、ブーム制御弁17A(
図5等参照)、アーム制御弁17B(
図5等参照)、バケット制御弁17C(
図5等参照)等を含む。また、コントロールバルブ17は、後述する蓄圧制御弁17D(
図5等参照)を含む。即ち、コントロールバルブ17は、油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁と、蓄圧制御弁17Dとを同一の筐体内に含む制御弁ユニットである。コントロールバルブ17を含む油圧回路の詳細は後述する。
【0042】
電動発電機12(電動機の一例)には、インバータ18Aを介して、蓄電装置としてのキャパシタ19(
図4参照)を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A,26B、ペダル26Cを含み、下部走行体1(油圧モータ1A,1B)、上部旋回体3(後述する旋回用電動機21)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)等の操作を行うための操作手段である。レバー26A,26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び油圧ライン28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。圧力センサ29は、コントローラ30に接続される。これにより、コントローラ30には、操作装置26における上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じた圧力信号が入力される。
【0043】
また、本実施形態に係るショベルは、旋回機構2(所定のアクチュエータの一例)が電動化され、旋回機構2(上部旋回体3)を駆動する旋回用電動機21(他の電動機の一例)が設けられる。旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して蓄電系120に接続される。旋回用電動機21は、上部旋回体3(複数の動作要素に含まれる第1動作要素の一例)の旋回減速動作に応じて、回生発電を行う。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。
【0044】
コントローラ30は、ショベルにおける駆動制御を行う主たる制御装置である。コントローラ30は、例えば、CPU、ROM等を含む演算処理装置で構成され、ROMに格納される各種駆動制御用のプログラムをCPU上で実行することにより各種駆動制御が実現される。
【0045】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される圧力信号(操作装置26における上部旋回体3の操作状態を表す信号)を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。尚、圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるための操作装置26における操作量を表す信号である。
【0046】
また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧コンバータ100(
図4参照)を駆動制御することによるキャパシタ19(
図4参照)の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0047】
また、コントローラ30は、後述する蓄圧制御弁17Dの動作制御を実行する。コントローラ30は、かかる蓄圧制御弁17Dの動作制御に関連する機能部として、蓄圧制御部30a、回生電力量算出部30b、受入電力量算出部30c、駆動動力算出部30dを含む。各機能部の詳細は、後述する。
【0048】
図4は、蓄電系120の構成の一例を示す回路図である。
【0049】
蓄電系120は、キャパシタ19、昇降圧コンバータ100、DCバス110等を含む。
【0050】
DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ19の電圧値、及び電流値を検出するキャパシタ電圧検出部112、及びキャパシタ電流検出部113が設けられる。キャパシタ電圧検出部112、及びキャパシタ電流検出部113により検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0051】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。DCバス110は、インバータ18A、18Bと昇降圧コンバータ100との間に配設され、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21は、DCバス110を介して、電力の授受を行う。
【0052】
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111により検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112により検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113により検出されるキャパシタ電流値に基づき、コントローラ30により実行される。
【0053】
キャパシタ19は、予め定格電流値(電流の上限値)が規定されている。コントローラ30は、キャパシタ電流検出部113により検出されるキャパシタ電流値に基づき、キャパシタ電流値が定格電流値を超えるような状況にある場合、キャパシタ19の充放電を制限し、キャパシタ電流値が定格電流値を超えないように制御する。
【0054】
次に、
図5〜
図7を参照して、本実施形態に係るショベルにおける油圧アクチュエータを駆動する油圧回路の詳細について説明する。
【0055】
図5〜
図7は、本実施形態に係るショベルの油圧回路の一例を示す図である。具体的には、
図5は、ショベルが旋回動作を行っていない場合(ブーム上げ動作を単独で行う場合)における油圧回路の状態を示す図である。また、
図6は、ショベルがブーム下げ旋回動作(ブーム下げ動作と旋回動作とを同時に行う複合動作)を行う場合における油圧回路の状態を表す図である。また、
図7は、ショベルがアーム開き動作を単独で行う場合における油圧回路の状態を示す図である。
【0056】
尚、
図5〜
図7では、上述した走行制御弁(右用、左用)やインバータ18A,18B等は、省略されている。
【0057】
[油圧回路の構成]
図5〜
図7に示すように、コントロールバルブ17は、上述の如く、メインポンプ14からブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のそれぞれに供給される作動油の流量(油圧)及び流れる方向を制御するブーム制御弁17A、アーム制御弁17B、及びバケット制御弁17Cを含む。また、本実施形態に係るショベルは、メインポンプ14から供給される作動油で蓄圧可能なアキュムレータ40(蓄圧器の一例)を更に含み、コントロールバルブ17は、メインポンプ14からアキュムレータ40への作動油の供給の有無を切替可能な蓄圧制御弁17D(切替弁の一例)を含む。
【0058】
尚、図中の太い実線は、電力系統を表し、二重線は、機械的動力系統を表し、細い実線は、油圧系統を表す。また、ブーム制御弁17A、アーム制御弁17B、及びバケット制御弁17Cは、それぞれ、操作装置26から入力されるパイロット信号に応じて、スプールが移動することにより、操作装置26における操作状態に応じたブーム4、アーム5、及びバケット6の作動状態を実現する、即ち、ブーム4、アーム5、及びバケット6における所望の動作を実現する。また、蓄圧制御弁17Dには、コントローラ30(蓄圧制御部30a)の制御指令に基づくパイロット信号(パイロットポンプ15で生成されるパイロット圧をコントローラ30の制御指令に応じて図示しない電磁弁等で調整したパイロット信号)が入力される。そして、蓄圧制御弁17Dは、かかるパイロット信号に応じて、スプールが移動し、後述する作動状態を実現する。
【0059】
メインポンプ14は、上述の如く、2つのメインポンプ14A,14Bを含む。メインポンプ14Aは、アーム制御弁17B、及び蓄圧制御弁17Dのそれぞれを介して、アームシリンダ8、及びアキュムレータ40に作動油を供給することができる。また、メインポンプ14Bは、ブーム制御弁17A、及びバケット制御弁17Cのそれぞれを介して、ブームシリンダ7、及びバケットシリンダ9に作動油を供給することができる。
【0060】
メインポンプ14Aから延出する高圧油圧ライン16(16A)は、コントロールバルブ17内のセンターバイパスライン201に接続される。センターバイパスライン201は、作動油タンク50に接続され、作動油タンク50に至るまでのセンターバイパスライン201上において、アーム制御弁17B、及び蓄圧制御弁17Dは、上流側(メインポンプ14側)から蓄圧制御弁17D、アーム制御弁17Bの順で、直列(タンデム)関係で配置されている。
【0061】
また、センターバイパスライン201から油圧ライン202、及び油圧ライン203が分岐し、それぞれ、蓄圧制御弁17D、及びアーム制御弁17Bのポートに接続される。
【0062】
油圧ライン202は、センターバイパスライン201のうち、最上流の油圧ライン201aから分岐し、チェック弁205を介して、蓄圧制御弁17Dのポートに接続される。これにより、蓄圧制御弁17Dのかかるポートとアキュムレータ40が接続されるポートとの間を連通させる位置にスプールを移動させることにより、油圧ライン202を通じてメインポンプ14Aからアキュムレータ40に作動油を供給することができる。
【0063】
油圧ライン203は、センターバイパスライン201のうち、蓄圧制御弁17Dとアーム制御弁17Bとの間の油圧ライン201bから分岐し、チェック弁206を介して、アーム制御弁17Bのポートに接続される。これにより、アーム制御弁17Bのかかるポートとアームシリンダ8のボトム側油室に接続されるポート或いはロッド側油室に接続されるポートとの間を連通させる位置にスプールを移動させることにより、アームシリンダ8を伸縮させることができる。
【0064】
アーム制御弁17Bには、戻り油ライン209が接続され、センターバイパスライン201(最下流の油圧ライン201c)と合流し、アームシリンダ8からの作動油(戻り油)を作動油タンク50に戻すことができる。
【0065】
尚、蓄圧制御弁17Dにも、戻り油ライン208が接続されるが、本実施形態に係るショベルでは使用されない。後述の如く、アキュムレータ40に蓄圧された圧力エネルギ(作動油)は、作動油タンクではなく、油圧アクチュエータに供給されるからである。
【0066】
また、蓄圧制御弁17Dをバイパスしてメインポンプ14Aの作動油を下流側のアーム制御弁17Bに導入するため、パラレルライン204が設けられる。パラレルライン204は、油圧ライン202のチェック弁205の上流側から分岐し、チェック弁207を介して、油圧ライン203のチェック弁206の下流側に合流する。これにより、蓄圧制御弁17Dにより、油圧ライン201aと油圧ライン201bとの間が非連通状態である場合であっても、パラレルライン204を通じて、メインポンプ14Aからの作動油をアーム制御弁17B(アームシリンダ8)に供給することができる。
【0067】
メインポンプ14Bから延出する高圧油圧ライン16(16B)は、コントロールバルブ17内のセンターバイパスライン211に接続される。センターバイパスライン211は、作動油タンク50に接続され、作動油タンク50に至るまでのセンターバイパスライン211上において、ブーム制御弁17A、及びバケット制御弁17Cは、上流側(メインポンプ14側)からバケット制御弁17C、ブーム制御弁17Aの順で、直列(タンデム)関係で配置されている。
【0068】
また、センターバイパスライン211から油圧ライン212、及び油圧ライン213が分岐し、それぞれ、バケット制御弁17C、及びブーム制御弁17Aのポートに接続される。
【0069】
油圧ライン212は、センターバイパスライン211のうち、最上流の油圧ライン211aから分岐し、チェック弁215を介して、バケット制御弁17Cのポートに接続される。これにより、バケット制御弁17Cのかかるポートとバケットシリンダ9のボトム側油室に接続されるポート或いはロッド側油室に接続されるポートとの間を連通させる位置にスプールを移動させることにより、バケットシリンダ9を伸縮させることができる。
【0070】
油圧ライン213は、センターバイパスライン211のうち、バケット制御弁17Cとブーム制御弁17Aとの間の油圧ライン211bから分岐し、チェック弁216を介して、ブーム制御弁17Aのポートに接続される。これにより、ブーム制御弁17Aのかかるポートとブームシリンダ7のボトム側油室に接続されるポート或いはロッド側油室に接続されるポートとの間を連通させる位置にスプールを移動させることにより、ブームシリンダ7を伸縮させることができる。
【0071】
ブーム制御弁17A、及びバケット制御弁17Cには、戻り油ライン218、及び戻り油ライン219がそれぞれ接続され、センターバイパスライン211(最下流の油圧ライン211c)と合流し、ブームシリンダ7、及びバケットシリンダ9それぞれからの作動油(戻り油)を作動油タンク50に戻すことができる。
【0072】
また、バケット制御弁17Cをバイパスしてメインポンプ14Bの作動油を下流側のブーム制御弁17Aに導入するため、パラレルライン214が設けられる。パラレルライン214は、油圧ライン212のチェック弁215の上流側から分岐し、チェック弁217を介して、油圧ライン213のチェック弁216の下流側に合流する。これにより、バケット制御弁17Cにより、油圧ライン211aと油圧ライン211bとの間が非連通状態である場合であっても、パラレルライン214を通じて、メインポンプ14Bからの作動油をブーム制御弁17A(ブームシリンダ7)に供給することができる。
【0073】
[油圧回路の動作]
図5に示すように、ショベルの上部旋回体3が旋回動作を行っていない場合、エンジン11の駆動力、及び蓄電系120から供給される電力による電動発電機12の駆動力が減速機13を介してメインポンプ14(14A、14B)に伝達される。そして、かかる駆動力によりメインポンプ14(14A、14B)が作動し、メインポンプ14(14A、14B)から供給される作動油で各油圧アクチュエータが作動する。
図5の一例では、ショベルがブーム下げの単独動作を行っており、ブーム制御弁17Aは、油圧ライン213に接続されるポートとブームシリンダ7のロッド側油室に接続されるポートを連通状態にし、メインポンプ14Bから供給される作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に送り込む。また、ブーム制御弁17Aは、ブーム再生回路を有し、ブームシリンダ7のボトム側油室からの戻り油を一部をブームシリンダ7のロッド側油室に供給して再利用している。これにより、メインポンプ14Bの負荷を低減することができる。
【0074】
このとき、蓄圧制御弁17Dは、センターバイパスライン201(油圧ライン201aと油圧ライン201bとの間)を連通状態にし、油圧ライン202に接続されるポートとアキュムレータ40に接続されるポートとの間を非連通状態にする。
【0075】
一方、
図6に示すように、ショベルの上部旋回体3が旋回動作を行っている場合、
図5の場合と同様、メインポンプ14(14A、14B)から供給される作動油で各油圧アクチュエータが作動すると共に、アキュムレータ40が蓄圧を行う。
図6の一例では、ショベルがブーム下げ旋回動作を行っており、ブーム制御弁17Aは、
図5の場合と同様の状態になる。また、蓄圧制御弁17Dは、センターバイパスライン201(油圧ライン201aと油圧ライン201bとの間)を非連通状態にし、油圧ライン202に接続されるポートとアキュムレータ40に接続されるポートとの間を連通状態にする。これにより、メインポンプ14Aからアキュムレータ40に作動油が供給され(図中点線矢印)、アキュムレータ40は蓄圧する。
【0076】
図6の一例では、ショベルがブーム下げ動作を行っているが、ブーム下げ動作の際、ブーム4、アーム5、バケット6等の自重でブーム4が下がる分の仕事量が存在する。そのため、メインポンプ14Bの吸収動力は比較的低くなる(例えば、図中では、8kW)。また、アーム5は、そもそも動作していないため、メインポンプ14Aは、アームシリンダ8に作動油を供給する必要がない。このように、ショベルの油圧アクチュエータが比較的軽負荷で駆動可能な状態では、メインポンプ14A,14Bが油圧アクチュエータを駆動するための吸収動力は非常に低くなる。
【0077】
これに対して、
図6の一例では、ブーム下げ動作と同時に、旋回動作を行っているため、操作装置26における操作に応じた旋回停止(旋回減速)の際、旋回用電動機21が上部旋回体3を回生制動させる必要がある。旋回用電動機21による回生電力は、主に、蓄電系120のキャパシタ19に供給される。
【0078】
但し、上述の如く、キャパシタ19には定格電流値が設けられるため、定格電流値を超えるような電力をキャパシタ19に蓄電することはできない。即ち、操作装置26における旋回動作(上部旋回体3)の操作状態に応じて必要とされる制動トルクに相当する回生電力(例えば、図中では、60kW)よりもキャパシタ19の定格電流値に基づく受入可能な電力(例えば、図中では、40kW)が小さい場合がある。よって、かかる場合、残りの回生電力(例えば、図中では、20kW)は、電動発電機12に供給され、電動発電機12がメインポンプ14(14A,14B)、パイロットポンプ15を駆動することにより消費される。
【0079】
上述の如く、油圧アクチュエータが比較的軽負荷で駆動可能な状態では、メインポンプ14A,14Bが油圧アクチュエータを駆動するための吸収動力は非常に低くなる。しかし、本実施形態では、メインポンプ14Aから蓄圧制御弁17Dを通じてアキュムレータ40に作動油を供給し、メインポンプ14Aの吸収動力を圧力エネルギとして蓄えることができる。そのため、残りの回生電力(図中では、20kW)による電動発電機12の駆動動力は、ブーム下げ動作に応じて、メインポンプ14Bで消費される(図中では、8kW)と共に、メインポンプ14Aで消費され、アキュムレータ40に圧力エネルギとして蓄えられる(図中では、12kW)。
【0080】
このように、アキュムレータ40は、キャパシタ19の容量や定格電流値に基づく受入電力量の限界や、油圧アクチュエータを駆動するためのメインポンプ14A,14Bの吸収動力の限界がある場合、旋回用電動機21による回生電力の余剰分を圧力エネルギとして、蓄えることができる。このとき、回生エネルギ(上部旋回体3の旋回減速時における運動エネルギ)、即ち、旋回用電動機21の回生電力は、電気エネルギとしてキャパシタ19に蓄積されると同時に、圧力エネルギとしてアキュムレータ40に蓄積される。
【0081】
図5に示すように、アキュムレータ40に蓄圧された回生電力に基づく圧力エネルギは、蓄圧制御弁17Dを通じて、油圧アクチュエータに供給される。
図5の一例では、ショベルがアーム開き単独動作を行っており、アーム制御弁17Bは、油圧ライン203に接続されるポートとアームシリンダ8のロッド側油室に接続されるポートを連通状態にする共に、戻り油ライン209に接続されるポートとアームシリンダ8のボトム側油室に接続されるポートとの間を連通状態にする。このとき、蓄圧制御弁17Dは、アキュムレータ40が接続されるポートと油圧ライン201bに接続されるポートとの間を連通状態にする。これにより、アキュムレータ40に蓄えられた圧力エネルギ(作動油)は、油圧ライン201b、油圧ライン203、及びアーム制御弁17Bを通じて、アームシリンダ8(のロッド側油室)に供給され、アームシリンダ8の動作に応じて消費される。これにより、アーム開き動作のためのメインポンプ14Aの吸収動力を減少させることができる。即ち、ショベルのエネルギ消費(燃費)を向上させることができる。
【0082】
このように、本実施形態に係るショベルは、回生エネルギ(上部旋回体3の旋回減速時の運動エネルギ)を事後的に利用可能な態様で蓄電装置(キャパシタ19)以外に蓄積することができる。即ち、油圧アクチュエータを駆動する油圧回路内のアキュムレータ40に圧力エネルギとして、旋回減速時の回生エネルギを蓄積することができる。
【0083】
[蓄圧制御弁の制御]
まず、蓄圧制御弁17Dの第1制御例について説明する。
【0084】
コントローラ30は、上述の如く、蓄圧制御部30a、回生電力量算出部30b、受入電力量算出部30c、駆動動力算出部30dを含む。
【0085】
蓄圧制御部30a(制御部の一例)は、圧力センサ29からの圧力信号に基づき、操作装置26における旋回動作(上部旋回体3)の操作状態を認識する。そして、蓄圧制御部30aは、ショベルが旋回減速動作を行っている場合、即ち、旋回用電動機21が上部旋回体3を回生制動する場合、メインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。具体的には、蓄圧制御部30aは、図示しない電磁弁等に制御指令を送信し、蓄圧制御弁17Dの油圧ライン202に接続されるポートとアキュムレータ40に接続されるポートとを連通させる位置にスプールを移動させるパイロット信号(パイロット圧)を生成させる。そして、かかるパイロット信号が蓄圧制御弁17Dに入力されることにより、蓄圧制御弁17Dの油圧ライン202に接続されるポートとアキュムレータ40に接続されるポートとが連通する。これにより、
図6に示す油圧回路の動作が実現される。
【0086】
続いて、蓄圧制御弁17Dの第2制御例について説明する。
【0087】
本例において、蓄圧制御部30aは、上部旋回体3が旋回減速動作を行う状況のうち、旋回用電動機21が操作装置26における旋回動作(上部旋回体3)の操作状態に応じた要求トルクを発生できない可能性がある場合に限定してメインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。即ち、キャパシタ19に蓄電可能な電力が制限され、旋回用電動機21が十分な制動トルクを発生できない可能性がある場合に限定して、メインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。
【0088】
具体的には、蓄圧制御部30aは、上部旋回体3が旋回減速動作を行っている場合であって、キャパシタ19の充電率が所定閾値以下である場合、メインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。キャパシタ19の充電電流は、充電率が低くなる程大きくなる傾向にあるため、定格電流値に応じたキャパシタ19が受け入れ可能な電力は、充電率が低くなる程、小さくなる。そのため、所定閾値を適宜設定することにより、キャパシタ19の充電率が所定閾値以下である場合は、旋回用電動機21が十分な制動トルクを発生できない可能性があると判断することができる。
【0089】
尚、蓄圧制御部30aは、キャパシタ電圧検出部112により検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113により検出されるキャパシタ電流値等に基づき、既知の手法を用いて、キャパシタ19の充電率を算出することができる。
【0090】
続いて、蓄圧制御弁17Dの第3制御例について説明する。
【0091】
本例において、蓄圧制御部30aは、第2制御例と同様、上部旋回体3が旋回減速動作を行う状況のうち、旋回用電動機21が操作装置26における旋回動作(上部旋回体3)の操作状態に応じた要求トルクを発生できない可能性がある場合に限定してメインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。具体的には、蓄圧制御部30aは、キャパシタ19が受け入れ可能な電力量、及び油圧アクチュエータを駆動するために電動発電機12を介してメインポンプ14で消費可能な動力の和が、要求トルク(操作装置26における上部旋回体3の操作状態に応じた制動トルク)に対して不足するか否かを判定する。
【0092】
かかる場合、回生電力量算出部30bは、操作装置26における旋回動作(上部旋回体3)の操作状態に応じて、旋回用電動機21の回生電力量(操作状態に応じた旋回減速度を発生させるために必要な発電量)を算出する。
【0093】
また、受入電力量算出部30cは、キャパシタ19の定格電流値に基づき、旋回用電動機21が回生制動する際にキャパシタ19が受け入れ可能な電力量(受入電力量)を算出する。例えば、キャパシタ19の充電電流は、上述の如く、充電率が低くなる程大きくなる傾向にある。そのため、予めキャパシタ19の仕様等に応じて、充電率と受入電力量の関係を表す制御マップ等をコントローラ30の内部メモリ等に格納しておくことにより、受入電力量算出部30cは、キャパシタ19の受入電力量を算出する。
【0094】
また、駆動動力算出部30dは、操作装置26における第2動作要素(下部走行体1、ブーム4、アーム5、バケット6)の操作状態に応じて、油圧アクチュエータを駆動するために、電動発電機12が出力可能な駆動動力(メインポンプ14からアキュムレータ40への作動油の供給がされない場合において、エンジン11をアシストしてメインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する動力の上限値)を算出する。
【0095】
そして、蓄圧制御部30aは、旋回用電動機21が上部旋回体3を回生制動する場合であって、受入電力量算出部30cにより算出される電力量と駆動動力算出部30dにより算出される駆動動力との和が回生電力量算出部30bにより算出される電力量より小さい場合、メインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。
【0096】
尚、第1制御例、第2制御例を採用する場合、回生電力量算出部30b、受入電力量算出部30c、駆動動力算出部30dは、省略されてよい。
【0097】
[作用]
図8の比較例を参照して、本実施形態に係るショベルの作用について説明する。
【0098】
図8は、比較例に係るショベルの油圧回路を示す図である。具体的には、比較例に係るショベルがブーム上げ旋回動作を行う場合、即ち、
図6に示す例と同様の動作を行う場合における油圧回路の状態を表す図である。
【0099】
尚、
図5〜
図7に示す例と同様の構成には同一の符号を付している。また、
図5〜
図7と同様、図中の太い実線は、電力系統を表し、二重線は、機械動力系統を表し、細い実線は、油圧系統を表す。また、比較例に係るショベルの油圧制御弁17Dcは、常時、センターバイパスライン201(油圧ライン201aと油圧ライン201cとの間)を連通状態にしている。
【0100】
図8に示すように、比較例に係るショベルは、アキュムレータ40が設けられない点と、コントロールバルブ17がコントロールバルブ17cに置換される点、具体的には、蓄圧制御弁17Dが油圧制御弁17Dcに置換される点が主に異なる。
【0101】
比較例に係るショベルは、ショベルがブーム下げ動作を行う場合(油圧アクチュエータが軽負荷状態にある場合)におけるメインポンプ14A、14Bの吸収動力は、それぞれ、非常に小さくなる(図中では、それぞれ、2kW、8kW)。そのため、電動発電機12が出力可能な駆動動力がメインポンプ14A、14Bの吸収動力の和に略制限されてしまう。そのため、キャパシタ19の定格電流値に基づく受け入れ可能な電力量の上限(図中では、40kW)と電動発電機12が出力可能な駆動動力の上限(図中では、10kW)の和が、オペレータの操作に応じて要求される制動トルク、即ち、回生電力(図中では、60kW)より小さい場合、旋回減速時の制動トルクが制限されてしまう(図中では、50kW)。即ち、オペレータが想定する旋回減速度が発生せず、旋回時の操作性が悪化してしまう可能性がある。
【0102】
これに対して、本実施形態に係るショベル(
図5〜
図7参照)では、アキュムレータ40が設けられ、蓄圧制御部30aは、旋回用電動機21が上部旋回体3を回生制動する場合、メインポンプ14(14A)からアキュムレータ40への作動油の供給経路を連通させる。そのため、油圧アクチュエータが軽負荷状態にある場合であっても、アキュムレータ40に作動油を供給するためにメインポンプ14Aの負荷を高めることができる。即ち、アキュムレータ40の蓄圧可能な容量に応じて、電動発電機12が出力可能な駆動動力の上限を引き上げることができるため、アキュムレータ40の容量を適宜設定することで、制動トルクが制限されるような事態を回避することができる。即ち、ショベルの旋回時における操作性の悪化を防止することができる。
【0103】
また、キャパシタ19は、充電率が低くなる程充電電流が大きくなる、即ち、受け入れ可能な電力量が小さくなるため、比較例に係るショベルでは、操作性の悪化を抑制するには、キャパシタ19の充電率をあまり下げることができない。そのため、本来、電動発電機12のアシスト運転を行った方が良いような状況であっても、エンジン11だけでメインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する等して、燃料消費率が悪化する可能性もある。
【0104】
これに対して、本実施形態に係るショベルでは、アキュムレータ40の容量を適宜設定することで、充電率が低い状態であっても、制動トルクが制限されるような事態を回避することができる。そのため、キャパシタ19をより充電率の低い領域で運用することが可能になるため、ショベルのエネルギマネジメントを適切に行い、燃費向上を図ることができる。換言すれば、アキュムレータ40の容量を適宜設定することで、制動トルクが制限されるような事態を回避しつつ、キャパシタ19の蓄電容量自体を小さくすることができる。そのため、比較的高価なキャパシタ19等の蓄電装置のコストダウンを図ることができる。
【0105】
また、本実施形態に係るショベルにおける蓄圧制御弁17Dは、メインポンプ14からアキュムレータ40に作動油を供給する経路を連通させる状態と、アキュムレータ40から油圧アクチュエータに作動油を供給可能な状態とを切り替え可能である。そのため、アキュムレータ40に蓄圧された圧力エネルギは、油圧アクチュエータを駆動する動力として利用することができる。即ち、本実施形態に係るショベルは、回生エネルギ(上部旋回体3の旋回減速時の運動エネルギ)を事後的に利用可能な態様で蓄電装置(キャパシタ19)以外に蓄積することができる。
【0106】
また、本実施形態に係るショベルにおける蓄圧制御弁17Dは、スプールの移動により各種状態を実現する構成である。即ち、蓄圧制御弁17Dは、スプールを交換することにより、油圧ショベルの旋回用油圧モータに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する油圧制御弁(旋回制御弁)として使用することができる。そのため、本実施形態に係る旋回機構2を電動化したハイブリッド型のショベルと旋回機構2が油圧駆動される油圧ショベルとの間で、コントロールバルブ17を共用することができる。そのため、コントロールバルブ17のコストダウンを図ることができる。
【0107】
また、比較例に係るショベルでは、キャパシタ19の故障を含め、蓄電系120が故障すると、旋回用電動機21の回生電力をキャパシタ19に充電することができず、十分な制動トルクを発生できないため、ショベルを異常停止させる必要がある。
【0108】
これに対して、本実施形態に係るショベルでは、アキュムレータ40の容量を適宜設定することにより、メインポンプ14(14A)の負荷を高めて、蓄電系120の故障時であっても、十分な制動トルクを発生させることができる。そのため、ショベルを異常停止させることなく、例えば、旋回速度等を制限する等して、継続運転することができる。
【0109】
[油圧回路の構成の他の例]
本実施形態に係るショベルの油圧回路において、アキュムレータ40や蓄圧制御弁17Dの配置場所は、任意であり、
図5〜
図7に示す例の態様には限定されない。
【0110】
例えば、
図9〜
図11は、本実施形態に係るショベルの油圧回路の他の例を示す図である。具体的には、
図9は、ショベルが旋回動作を行っていない場合(
図4に示す例と同様、ブーム上げ動作を単独で行う場合)における油圧回路の状態を示す図である。
図10は、ショベルが、
図5に示す例と同様、ブーム下げ旋回動作を行う場合における油圧回路の状態を表す図である。
図11は、ショベルが、
図6に示す例と同様、アーム開き動作を単独で行う場合における油圧回路の状態を示す図である。
【0111】
尚、
図5〜
図7に示す例と同様の構成には同一の符号を付している。また、
図5〜
図7と同様、図中の太い実線は、電力系統を表し、二重線は、機械的動力系統を表し、細い実線は、油圧系統を表す。
【0112】
図9〜
図11に示すように、本例に係るショベルの油圧回路は、
図5〜
図7に示す例の油圧回路に対して、センターバイパスライン201における蓄圧制御弁17Dとアーム制御弁17Bの配置が入れ替えられている点が主に異なる。
【0113】
このように、センターバイパスライン201において、蓄圧制御弁17Dがアーム制御弁17Bの下流側に配置される場合でも、
図10に示すように、上部旋回体3が回生制動する場合、メインポンプ14Aの作動油をアキュムレータ40に供給することができる(図中点線矢印)。
【0114】
尚、本例の場合、蓄圧制御弁17Dのポートと油圧ライン202とを接続する油圧ライン221が追加される。これにより、
図11に示すように、アキュムレータ40に蓄圧された圧力エネルギ(作動油)を、センターバイパスライン201における上流側に配置されるアームシリンダ8に供給することができる。
【0115】
[油圧回路の構成の更に他の例]
本実施形態に係るショベルの油圧回路において、アキュムレータ40や蓄圧制御弁17Dの配置場所は、上述の如く、任意であり、
図5〜
図7に示す例や
図9〜
図11に示す例の態様には限定されない。また、本実施形態に係るショベルの油圧回路において、アキュムレータ40が蓄圧した圧力エネルギを供給する対象となる油圧アクチュエータは、任意であり、
図5〜
図7に示す例、及び
図9〜
図11に示す例の油圧アクチュエータ(アームシリンダ8)には限定されない。
【0116】
例えば、
図12〜
図14は、本実施形態に係るショベルの油圧回路の更に他の例を示す図である。具体的には、
図12は、ショベルが旋回動作を行っていない場合(ショベルの非動作時)における油圧回路の状態を示す図である。
図13は、ショベルが、ブーム下げ動作を単独で行う場合における油圧回路の状態を表す図である。
図14は、ショベルがブーム上げ動作を単独で行う場合における油圧回路の状態を示す図である。
【0117】
尚、
図5〜
図7に示す例と同様の構成には同一の符号を付している。また、
図5〜
図7と同様、図中の太い実線は、電力系統を表し、二重線は、機械的動力系統を表し、細い実線は、油圧系統を表す。
【0118】
図12〜
図14に示すように、本例に係るショベルの油圧回路は、
図5〜
図7に示す例の油圧回路に対して、蓄圧制御弁17Dとバケット制御弁17Cの配置が入れ替えられている点が異なる。即ち、蓄圧制御弁17Dは、
図5〜
図7に示す例と異なり、メインポンプ14Bの高圧油圧ライン16Bに接続されるセンターバイパスライン211上で、ブーム制御弁17Aの上流側に直列(タンデム)関係で配置される。また、バケット制御弁17Cは、メインポンプ14Aの高圧油圧ライン16Aに接続されるセンターバイパスライン201上で、アーム制御弁17Bの上流側に直列(タンデム)関係で配置される。
【0119】
このように、蓄圧制御弁17Dがセンターバイパスライン211上に配置される場合でも、
図13に示すように、上部旋回体3が回生制動する場合、メインポンプ14Bの作動油をアキュムレータ40に供給することができる(図中点線矢印)。
【0120】
また、本例に係るショベルの油圧回路では、
図5〜
図7に示す例の油圧回路に対して、アキュムレータ40が蓄圧した圧力エネルギを供給する対象である油圧アクチュエータが異なる。即ち、本例に係るショベルの油圧回路では、
図14に示すように、アキュムレータ40は、蓄圧した圧力エネルギをブームシリンダ7に供給する(図中点線矢印)。
【0121】
このように、アキュムレータ40は、蓄圧した圧力エネルギを油圧アクチュエータの何れかに供給可能な態様であればよい。
【0122】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0123】
例えば、上述した実施形態では、蓄電系120が設けられるが、
図15(変形例に係るショベルの駆動系の構成を示す図)、
図16(変形例に係るショベルの油圧回路を示す図)に示すように、蓄電系120は、省略されてもよい。
【0124】
尚、
図15、
図16に示す変形例では、蓄電系120が省略されるため、コントローラ30の受入電力量算出部30cは、省略される。
【0125】
かかる変形例の場合、旋回用電動機21は、エンジン11の動力を用いて電動発電機12が発電した電力で駆動されると共に、旋回用電動機21による回生電力は、電動発電機12のアシスト運転により消費される。
図16に示すように、蓄電系120が省略される場合でも、アキュムレータ40の容量を適宜設定することで、オペレータの操作に応じた必要な回生電力(図中の60kW)の大部分をメインポンプ14Aの吸収動力として消費させて、アキュムレータ40に圧力エネルギとして蓄えることができる。そのため、上述した実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0126】
また、上述した実施形態では、作業機械の一例としてのショベルを用いて説明を行ったが、旋回式の作業機械であれば、ショベルには限定されない。
【0127】
また、上述した実施形態では、作業機械の一例であるショベルにおける上部旋回体3の旋回減速時の回生エネルギ(運動エネルギ)を蓄圧器(アキュムレータ40)に蓄積させる構成を採用したが、かかる構成には限定されない。即ち、回生エネルギは、上部旋回体3の旋回減速時のものには限定されず、例えば、ブーム回生時の回生エネルギ(位置エネルギ)を蓄圧器に蓄積させる構成であってもよい。具体的には、ブーム下げ動作時にブームシリンダ(所定のアクチュエータの一例)のボトム側油室から流出する作動油で、他の電動機(第1電動発電機)と同軸配置される油圧モータを駆動することにより、第1電動発電機が回生発電すると共に、エンジンをアシストして電動機(第2電動発電機)が油圧ポンプを駆動し、回生エネルギ(位置エネルギ)を蓄圧器に蓄圧可能な構成を採用してもよい。また、例えば、作業機械の一例としてのホイルローダの走行減速時の回生エネルギ(運動エネルギ)を蓄圧器に蓄積させる構成であってもよい。具体的には、ホイルローダの走行減速時に他の電動機としての走行用モータ(第1電動発電機)が車輪(所定のアクチュエータの一例)側から回されることにより、回生発電すると共に、エンジンをアシストして電動機(第2電動発電機)が油圧ポンプを駆動し、回生エネルギ(運動エネルギ)を蓄圧器に蓄積させる構成であってもよい。即ち、作業機械は、エネルギ回生に利用される第1動作要素を駆動可能な第1電動発電機であって、第1動作要素における所定の動作(旋回減速動作、ブーム下げ動作、走行減速動作等)に応じて、回生発電を行う第1電動発電機と、油圧駆動される第2動作要素を駆動する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動するエンジンと、第1電動発電機における回生発電による電力でエンジンをアシストして油圧ポンプを駆動可能な第2電動発電機であって、エンジンの動力で発電し発電電力を第1電動発電機に供給可能な第2電動発電機と、油圧ポンプから供給される作動油で蓄圧可能な蓄圧器と、油圧ポンプから蓄圧器への作動油の供給経路の連通/非連通を切り替える制御部と、を備え、第2電動発電機は、第1電動発電機が回生発電を行う場合、油圧ポンプを駆動し、制御部は、第1電動発電機が回生発電を行う場合、油圧ポンプから蓄圧器への作動油の供給経路を連通させる構成であればよい。これにより、上述の実施形態と同様、回生エネルギを事後的に利用可能な態様で蓄電装置以外に蓄積することができる。具体的には、回生エネルギを、事後的に油圧アクチュエータを駆動するために利用可能な態様で、蓄圧器に圧力エネルギとして蓄積させることが可能になると共に、その他、上述した実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0128】
尚、本願は、2015年12月7日に出願した日本国特許出願2015−238886号に基づく優先権を主張するものであり、その日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。