特許第6771551号(P6771551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディンフー バイオターゲット カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000019
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000020
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000021
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000022
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000023
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000024
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000025
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000026
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000027
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000028
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000029
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000030
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000031
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000032
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000033
  • 特許6771551-抗OX40抗体及びその応用 図000034
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771551
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】抗OX40抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20201012BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20201012BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20201012BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   C12N15/13
   C12P21/08
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 U
   A61P35/00
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-519051(P2018-519051)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公表番号】特表2018-534924(P2018-534924A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】CN2015091958
(87)【国際公開番号】WO2017063162
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】517179262
【氏名又は名称】ディンフー バイオターゲット カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 霆
(72)【発明者】
【氏名】▲ルアン▼ 彦
(72)【発明者】
【氏名】汪 ▲シャオ▼▲シャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 建建
(72)【発明者】
【氏名】馬 樹立
(72)【発明者】
【氏名】馬 慧
(72)【発明者】
【氏名】潘 暁龍
(72)【発明者】
【氏名】傅 士龍
(72)【発明者】
【氏名】寧 ▲シャン▼▲シャン▼
(72)【発明者】
【氏名】費 ▲イェ▼▲チォン▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 猛
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523248(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148895(WO,A1)
【文献】 特表2014−527814(JP,A)
【文献】 特表2013−538057(JP,A)
【文献】 国際公開第03/106498(WO,A2)
【文献】 特表2011−505836(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/153513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号5〜7で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号14〜16で示されることと、
2)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号23〜25で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号32〜34で示されることと、
3)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41〜43で示されるか、又は、H33位でSがGに変異、H96位でNがDに変異及びH65位でSがNに変異からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む該領域の変異体であり、
軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されるか、又は、L30位でSがGに変異及びL90位でLがQに変異からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む該領域の変異体であること、
からなる群より選択されるCDR領域を含むことを特徴とする、抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
1)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号5〜7で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号14〜16で示されることと、
2)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号23〜25で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号32〜34で示されることと、
3)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41〜43で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されることと、
4)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号63、42、43で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されることと、
5)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41、67、43で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されることと、
6)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41、42、70で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されることと、
7)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号63、67、70で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号75〜77で示されることと、
8)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41、42、70で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号75〜77で示されることと、
からなる群より選択されるCDR領域を含むことを特徴とする、抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
配列が配列番号4、22及び40で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域か、又は、
配列番号40で示される重鎖可変領域の変異体であって、H28位でSがNに変異、H33位でSがGに変異、H96位でNがDに変異及びH65位でSがNに変異からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む該領域の変異体、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
配列が配列番号4、22、40、62、66、69、72及び79で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域を含むことを特徴とする、請求項3に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
配列が配列番号13、31及び49で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域か、又は、
配列番号49で示される軽鎖可変領域の変異体であって、L30位でSがGに変異及びL90位でLがQに変異からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む該領域の変異体、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
配列が配列番号13、31、49及び74で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、請求項5に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
完全抗体、二重特異性抗体、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2又はFvであることを特徴とする、請求項1に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
抗OX40抗体の重鎖可変領域をコード可能な核酸配列、及び該抗体の軽鎖可変領域をコード可能な核酸配列を含み、
該重鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号5〜7で示されるアミノ酸配列を含み、該軽鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号14〜16で示されるアミノ酸配列を含むか、
該重鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号23〜25で示されるアミノ酸配列を含み、該軽鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号32〜34で示されるアミノ酸配列を含むか、
該重鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号41〜43で示されるアミノ酸配列を含み、該軽鎖可変領域が、CDR1〜3として、配列番号50〜52で示されるアミノ酸配列を含む
ことを特徴とする、核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の核酸分子、又は請求項9に記載のベクターを含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗OX40抗体又はその抗原結合部分と、他の生物活性物質とを含み、該抗OX40抗体又はその抗原結合部分が、直接又はリンカーフラグメントを通じて他の生物活性物質に共役していることを特徴とする、複合体。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗OX40抗体若しくはその抗原結合部分、又は請求項11に記載の複合体と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、他の生物活性物質とを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項13】
腫瘍を予防又は治療するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗OX40抗体若しくはその抗原結合部分、請求項11に記載の複合体、又は請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品・バイオ分野に関し、特に、抗OX40抗体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞の活性化には、2つのシグナルの共同作用が必要である。1つ目のシグナルは、T細胞抗原受容体(TCR)により抗原の発生が認識され、CD3分子を介して細胞内に伝達されるものであり、1つ目のシグナルがT細胞の適応免疫応答における特異性を決定する。2つ目のシグナルは、抗原提示細胞(APC)又は標的細胞の表面の共刺激分子(costimulator)と、対応するT細胞表面の共刺激分子受容体との相互作用により発生するものである。共刺激シグナルの刺激により、抗原特異的T細胞が増殖し、エフェクターT細胞に分化する。共刺激シグナルが不足していると、T細胞は反応しなくなるか、又は自身が免疫寛容の状態になり、さらには、プログラム細胞死となる。
【0003】
OX40(TNFRSF4、ACT35、CD134、IMD16又はTXGP1Lとも称する)は、TNFR受容体スーパーファミリーのメンバーであり、I型膜貫通タンパク質であり、主に、活性化したCD4+T細胞とCD8+T細胞とに発現する(非特許文献1)。その細胞外領域は、3つのシステインリッチドメインと、C末端が不完全な1つのCRDとにより組成されている(非特許文献2)。OX40は、副共刺激分子である。CD28とは異なり、OX40は、休止したT細胞の表面には発現せず、T細胞の活性化後、24時間〜72時間で比較的高く発現する。そのリガンドのOX40L(TNFSF4、TXGP1、OX−40L、gp34又はCD252)は、II型膜貫通タンパク質であり、樹状細胞、B細胞等の活性化した抗原提示細胞に発現する(非特許文献3)。OX40/OX40Lシグナルは、T細胞の活性化、増殖及びアポトーシス阻害のプロセスにおいて非常に重要な役割を果たす。アゴニストタイプのOX40抗体はT細胞の増殖及び活性化を効果的に促進し、良好な抗腫瘍作用を生じさせることが可能であることが研究により明らかになっている(非特許文献4)。
【0004】
Stefanie N. Linch他により、OX40アゴニスト抗体と腫瘍を治療する他の方法との併用について詳細に整理され、説明されている(非特許文献5)。放射線治療とOX40アゴニスト抗体との併用時にはマウスの生存期間が著しく延長され得ることも報告されている(非特許文献6)。
【0005】
この分野では、OX40と高親和的に結合可能な、OX40アゴニスト活性を有する抗OX40抗体が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Paterson他、(1987) MolImmunol 24:1281-1290
【非特許文献2】Deanne M他、(2006) Structure 14:1321-1330
【非特許文献3】Godfrey、W.R他、(1994) JExpMed 180:757-762
【非特許文献4】Brendan D. Curti他、(2013) CancerRes 73:7189-7198
【非特許文献5】Stefanie N. Linch他、(2015) frontiers in oncology 5:1-14
【非特許文献6】Gough M J他、(2010) J Immunother 33(8):798-809、Kjaergaard J他、(2005) 103(1):156-164
【発明の概要】
【0007】
上述した技術的課題を解決するために、本発明は、良好な特異性と比較的高い親和性と安定性とを備えた抗OX40抗体及びその応用を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の第1の態様は、
1)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号5〜7で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号14〜16で示されるか、又は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことと、
2)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号23〜25で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号32〜34で示されるか、又は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことと、
3)重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号41〜43で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の配列がそれぞれ配列番号50〜52で示されるか、又は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことと、
からなる群より選択されるCDR領域を含む、抗OX40抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0009】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分は、
1)重鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号8〜11で示されることと、
2)重鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号26〜29で示されることと、
3)重鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号44〜47で示されることと、
からなる群より選択される重鎖可変領域のフレームワーク領域を更に含む。
【0010】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分は、
1)軽鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号17〜20で示されることと、
2)軽鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号35〜38で示されることと、
3)軽鎖可変領域FR1、FR2、FR3、FR4の配列がそれぞれ配列番号53〜56で示されることと、
からなる群より選択される軽鎖可変領域のフレームワーク領域を更に含む。
【0011】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分は、配列が配列番号4、22及び40で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域か、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たす重鎖可変領域を含む。
【0012】
さらに、配列が配列番号4、22及び40で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)突然変異したアミノ酸の個数が3以下である配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことからなる群より選択される重鎖可変領域のCDR領域を含む。
【0013】
さらに、配列が配列番号4、22、40、62、66、69、72及び79で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域を含む。
【0014】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分は、配列が配列番号13、31及び49で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域か、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たす軽鎖可変領域のCDR領域を含む。
【0015】
さらに、配列が配列番号13、31及び49で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域か、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)突然変異したアミノ酸の個数が3以下である配列との両者のうち少なくとも1つを満たす軽鎖可変領域を含む。
【0016】
さらに、配列が配列番号13、31、49及び74で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域を含む。
【0017】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分は、完全抗体、二重特異性抗体、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2又はFvである。
【0018】
本発明の一実施の形態において、scFvである場合に、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間にリンカーペプチドが含まれていてもよく、該リンカーペプチドの配列が、配列番号1で示される。
【0019】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分では、重鎖定常領域が、IgG、IgM、IgE、IgD及びIgAから選択される。
【0020】
本発明の実施の形態において、重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択される。
【0021】
本発明の具体的な実施の形態において、重鎖定常領域が、IgG1又はIgG4である。
【0022】
本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分では、軽鎖定常領域が、κ又はλである。
【0023】
本発明の第2の態様は、抗体の重鎖可変領域をコード可能な核酸配列を含み、該重鎖可変領域が、
(1)配列番号5〜7と、
(2)配列番号23〜25と、
(3)配列番号41〜43と、
(4)前記(1)〜(3)の配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことと、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、核酸分子に関する。
【0024】
さらに、前記重鎖可変領域が、
配列番号4、22及び40、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすこと、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
さらに、配列が配列番号4、22及び40で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域か、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)突然変異したアミノ酸の個数が3以下である配列との両者のうち少なくとも1つを満たす重鎖可変領域を含む。
【0026】
さらに、配列が配列番号4、22、40、62、66、69、72及び79で示されることからなる群より選択される重鎖可変領域を含む。
【0027】
本発明の実施の形態において、前記核酸分子が、抗体の重鎖定常領域をコード可能な核酸配列を更に含み、該重鎖定常領域が、IgG、IgM、IgE、IgD及びIgAから選択される。
【0028】
本発明の実施の形態において、重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択される。
【0029】
本発明の具体的な実施の形態において、重鎖定常領域が、IgG1又はIgG4である。
【0030】
本発明の第2の態様は、抗体の軽鎖可変領域をコード可能な核酸配列を含み、該軽鎖可変領域が、
(1)配列番号14〜16と、
(2)配列番号32〜34と、
(3)配列番号50〜52と、
(4)前記(1)〜(3)の配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすことと、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、核酸分子に関する。
【0031】
さらに、前記重鎖可変領域が、
配列番号13、31及び49、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)同一性が70%、80%、85%、90%又は97%を超える配列との両者のうち少なくとも1つを満たすこと、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
さらに、配列が配列番号13、31及び49で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域か、又は、該配列に比べて、a)同じ抗原エピトープに結合する配列と、b)突然変異したアミノ酸の個数が3以下である配列との両者のうち少なくとも1つを満たす軽鎖可変領域を含む。
【0033】
さらに、配列が配列番号13、31、49及び74で示されることからなる群より選択される軽鎖可変領域を含む。
【0034】
本発明の実施の形態において、前記核酸分子が、抗体の軽鎖定常領域をコード可能な核酸配列を更に含み、該軽鎖定常領域が、κ型又はλ型である。
【0035】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様又は第3の態様のいずれか一項の核酸分子を含む、ベクターに関する。
【0036】
本発明の第4の態様のいずれか一項のベクターは、本発明の第2の態様のいずれか一項の核酸分子と、第3の態様のいずれか一項の核酸分子とを含む。
【0037】
本発明の第5の態様は、本発明の第2の態様若しくは第3の態様のいずれか一項の核酸分子、又は本発明の第4の態様のいずれか一項のベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0038】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体又はその抗原結合部分と、他の生物活性物質とを含み、該抗OX40抗体又はその抗原結合部分が、直接又はリンカーフラグメントを通じて他の生物活性物質に共役している、複合体に関する。
【0039】
本発明の実施の形態において、前記他の生物活性物質が、腫瘍細胞の増殖を間接的に阻害するか、又は有機体の免疫反応を活性化することによって細胞を阻害若しくは死滅させて、腫瘍を治療することが可能な、例えばインターロイキン類、腫瘍壊死因子、ケモカイン、ナノ粒子等の化学物質、ポリペプチド、酵素、サイトカイン、又は生物活性を有する他の単一物質若しくは混合物質から選択される。
【0040】
本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体若しくはその抗原結合部分、第2の態様若しくは第3の態様のいずれか一項の核酸分子、第4の態様のいずれか一項のベクター、第5の態様のいずれか一項の宿主細胞、又は本発明の第6の態様のいずれか一項の複合体と、任意選択の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意選択の他の生物活性物質とを含む、組成物(例えば医薬組成物)に関する。本発明の第7の態様のいずれか一項の組成物(例えば医薬組成物)では、前記他の生物活性物質が、制限されないが、他の抗体、融合タンパク質、又は医薬品(例えば放射線、化学療法の薬剤等の抗腫瘍薬)を含む。
【0041】
さらに、本発明は、本発明の第1の態様のいずれか一項の抗OX40抗体若しくはその抗原結合部分、第2の態様若しくは第3の態様のいずれか一項の核酸分子、第4の態様のいずれか一項のベクター、第5の態様のいずれか一項の宿主細胞、第6の態様のいずれか一項の複合体、又は第7の態様のいずれか一項の組成物を、腫瘍を予防又は治療する調製に用いる、用途に関する。
【発明の効果】
【0042】
上述した形態によれば、本発明は、少なくとも次の利点を有する。
【0043】
本発明は、酵母ディスプレイ技術を用い、スクリーニングと更なる親和性成熟とによって、良好な特異性と比較的高い親和性と安定性とを備えた抗OX40抗体が得られるものであり、この抗体は、特異的にヒトOX40と結合することができ、活性化したT細胞との結合によってT細胞の活性化作用を更に増強させることができ、腫瘍の増殖に対して著しい阻害作用を有している。また、本発明の抗OX40抗体は、完全ヒト抗体であり、従来のマウス由来、キメラ抗体及びヒト化抗体に比べて、免疫原性がより低く、患者の拒絶反応が低減され、医薬品化により適している。
【0044】
上述の説明は、本発明の実施態様の概述にすぎず、本発明の技術的手段をより明確に理解し、明細書の内容通りに実施することができるように、以下に、図面を参照して本発明のより好ましい実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】hOX40に対する精製された抗hOX40scFvの結合の結果を示す図であり、なお、x軸はEGFPの蛍光強度を示し、Y軸は抗hlg−PEの蛍光強度を示している。
図2】抗OX40抗体の特異性の検出を示す図であり、なお、x軸はEGFPの蛍光強度を示し、Y軸は抗hlg−PEの蛍光強度を示している。
図3】親和性が向上された酵母単クローンの染色結果を示す図である。
図4】ELISA法により検出された3種類の抗体とhOX40との結合能を示す図である。
図5】ELISA法により検出された親和性成熟後のそれぞれの重鎖変異体とhOX40との結合能を示す図である。
図6】ELISA法により検出された親和性成熟後のH96位重鎖変異体及びそれぞれの軽鎖変異体とhOX40との結合能を示す図である。
図7】抗hOX40抗体のin vitroアゴニスト活性の検出結果を示す図である。
図8】H96−L80の3種類のIgGサブタイプのin vitroアゴニスト活性を示す比較図である。
図9】抗OX40抗体とヒト及びアカゲザルのCD4+T細胞及びCD8+T細胞との結合能の検出を示す図である。
図10】O21scFv抗体のアゴニスト活性の検出結果を示す図である。
図11】O21scFv及びlgGの2つの形態のアゴニスト活性の検出結果を示す図である。
図12】H96−L80のIgG1及びIgG4の2種類のサブタイプのin vitroにおけるT細胞サブタイプに対する影響を示す図である。
図13】O21mAbのin vivoにおける腫瘍(PC−3)増殖阻害作用の結果を示す図である。
図14】O21mAbのin vivoにおける腫瘍(A375)増殖阻害作用の結果を示す図である。
図15】45℃の加速安定性試験により抗OX40抗体の安定性を評価した結果を示す図であり、Aは濃度検出、Bはモノマー含有量の検出、Cはin vitro活性に対するNF−κb系の検出を示している。
図16】H96−L80抗体の薬物動態の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の説明に用いられるものであるが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
以下、本発明を更に説明する。本発明において、特に断らない限り、本文で用いられる科学技術的用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。また、本文で用いられるタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学に関連する用語及び実験室の操作手順は、いずれも該当分野において広く用いられる用語及び通常の手順であるものとする。また、本発明の更なる理解のために、以下、関連する用語の定義及び解釈を提供する。
【0048】
本発明において、「抗体」という用語は、一般に2対の同じポリペプチド鎖(各対が1本の「軽」(L)鎖と1本の「重」(H)鎖とを有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体の軽鎖はκ軽鎖とλ軽鎖とに分けることができる。重鎖はμ、δ、γ、α又はεに分けることができ、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。軽鎖及び重鎖では、可変領域と定常領域とが約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖には約3つ以上のアミノ酸の「D」領域が更に含まれている。各重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とからなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とからなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は免疫グロブリンと宿主組織又は宿主因子とを媒介することができ、これには免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)と代表的な補体系の第1成分(C1q)との結合が含まれる。VH領域及びVL領域は更に、変化しやすい領域(相補性決定領域(CDR))に細分することができ、その間には保存的なフレームワーク領域(FR)という領域が分散している。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でN末端からC末端まで配列された3つのCDRと4つのFRとからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)はそれぞれ、抗体結合部位を形成している。アミノ酸から各領域又はドメインまでの割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia他(1989) Nature 342:878-883の定義に従うものとする。本発明に記載されたアミノ酸の位置は、オンラインツールのabysisに基づいて比較して得られたものであり(http://www.bioinf.org.uk/abysis/index.html)、アミノ酸の配列における実際の順位を表しているわけではない。
【0049】
「抗体」という用語は、いずれかの特定の抗体生産方法に制限されるものではない。抗体には特に、例えば、組換え抗体と、モノクローナル抗体と、ポリクローナル抗体とが含まれる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えば、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体とすることができる。
【0050】
本発明において、抗体の「抗原結合部分」という用語は、全長抗体の1つ以上の部分を指し、上記部分は抗体により結合される同一抗原(例えばOX40)を結合する能力を保持しており、抗原に対する特異的結合が完全抗体と競合する。一般に、Fundamental Immunology, Ch.7 (Paul, W., ed.、第2版、Raven Press, N.Y. (1989))は、全ての目的で引用することにより本明細書の一部をなす。組換えDNA技術又は完全抗体の酵素触媒作用若しくは化学的切断によって抗原結合部分を産生することができる。いくつかの場合では、抗原結合部分には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(例えばscFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体(diabody)、並びにこのようなポリペプチドが含まれており、ポリペプチドに特異的抗原結合能を与えるのに十分な抗体の少なくとも一部分が含まれる。
【0051】
本発明において、「ベクター」という用語は、或るタンパク質をコードするポリヌクレオチドが挿入され、タンパク質を発現させることが可能な核酸を運ぶ手段を指す。ベクターは、宿主細胞の形質転換、伝達又はトランスフェクションによって、ベクターが持つ遺伝物質エレメントを宿主細胞内で発現させることができる。例示すると、ベクターには、プラスミド;ファージミド;コスミド;例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来の人工染色体(PAC)のような人工染色体;例えばλファージ又はM13ファージのようなファージ、及び動物ウイルス等が含まれる。ベクターとして用いられる動物ウイルスの種類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)がある。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素及びレポーター遺伝子が含まれる発現を制御する複数の要素を含み得る。また、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。ベクターは、例えばウイルス粒子、リポソーム又はタンパク膜のような細胞への進入を助ける成分を更に含む可能性があるが、これらに限られるものではない。
【0052】
本発明において、「宿主細胞」という用語は、ベクターが導入される細胞を指し、例えば、大腸菌若しくは枯草菌等の原核細胞、酵母細胞若しくはアスペルギルス等の真菌細胞、ショウジョウバエS2細胞若しくはSf9等の昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞若しくはヒト細胞等の動物細胞のような多くの種類が含まれる。
【0053】
本発明において、「特異的結合」とは、例えば抗体と当該抗体を産生させる抗原との間の反応のような2つの分子間の非ランダムな結合反応をいう。ここで、第1の抗原に結合する抗体の第2の抗原に対する結合親和性は、検出されないか、又は弱いものである。或るいくつかの実施形態において、或る1つの抗原特異的抗体とは、親和性(KD)≦10−5M(例えば10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、10−10M等)で当該抗原に結合するものをいい、式中、KDは、解離率と結合率との比(koff/kon)とし、当業者に既知の方法によって測定することができる。
【実施例】
【0054】
実施例1 組換えヒトOX40の発現及び関連するEGFP細胞の調製
S1.1
タンパク質データベースUniprotにおけるヒトOX40のアミノ酸配列(P43489)に基づいて、ヒトOX40の細胞外ドメインのアミノ酸配列(hOX40)(すなわち、P43489における1位の残基〜216位の残基)を取得した。
【0055】
S1.2
タンパク質データベースUniprotにおけるヒト免疫グロブリンgamma1(IgG1)の定常領域のアミノ酸配列(P01857)に基づいて、ヒトIgG1−Fc(hFc)のドメインのアミノ酸配列(すなわち、P01857における104位の残基〜330位の残基)を取得した。
【0056】
S1.3
タンパク質データベースUniprotにおけるマウス免疫グロブリンgamma1(IgG1)の定常領域のアミノ酸配列(P01868)に基づいて、マウスIgG1−Fc(muFc)のドメインのアミノ酸配列(すなわち、P01868における98位の残基〜324位の残基)を取得した。
【0057】
S1.4
人工合成の手法によってステップS1.1〜S1.3におけるDNA断片を取得し、合成された遺伝子配列は、それぞれFermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによって市販のベクターpcDNA4/myc−HisA(Invitrogen、V863−20)にサブクローニングし、プラスミド構築の正確性をシークエンシングして検証し、組換えプラスミドDNA、すなわち、pcDNA4−hOX40−hFc、pcDNA4−hOX40−muFcを取得した。
【0058】
S1.5
タンパク質データベースUniprotにおける情報に基づいて、高感度緑色蛍光タンパク質EGFPのアミノ酸配列(C5MKY7)、ヒトOX40のアミノ酸配列(P43489)、マウスOX40のアミノ酸配列(P47741)、ヒトCD137のアミノ酸配列(Q07011)、ヒトCD27のアミノ酸配列(P26842)を取得した。
【0059】
S1.6
人工合成の手法によってステップS1.5におけるDNA断片を取得し、合成された遺伝子配列は、それぞれFermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによって市販のベクターpcDNA4/myc−HisA(Invitrogen、V863−20)にサブクローニングし、プラスミド構築の正確性をシークエンシングして検証し、組換えプラスミドDNA、すなわち、pcDNA4−hOX40−EGFP、pcDNA4−hCD137−EGFP、pcDNA4−mOX40−EGFP、及びpcDNA4−hCD27−EGFPを取得した。
【0060】
S1.7
ステップS1.6におけるEGFP組換えプラスミドをHEK293(ATCC、CRL−1573(商標))細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションの48時間後に蛍光活性化シグナルソーター(FACS)によってhOX40、hCD137、mOX40、hCD27の発現を確認した。
【0061】
S1.8
pcDNA4−hOX40−Fc、pcDNA4−hOX40−muFcをタンパク質産生用のHEK293細胞に一過性トランスフェクションした。組換え発現プラスミドをFreestyle293培地で希釈して形質転換に必要なPEI(ポリエチレンイミン)溶液に加え、プラスミド/PEI混合物をグループ毎にそれぞれ細胞懸濁液に加え、37℃で静置し、10%のCO、90rpmで培養した。5日〜6日培養した後に一過性発現培養上清を集め、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーによってhOX40−Fc、hOX40−muFcのタンパク質サンプルを予備精製し、以下の各実施例に用いた。得られたタンパク質サンプルはSDS−PAGEによって一次検出を行い、目的のバンドをはっきりと見ることができた。
【0062】
実施例2 酵母ディスプレイライブラリーからの抗hOX40抗体のスクリーニング、クローニング、発現及び同定
2.1 方法
ヒトOX40を対象とした完全ヒト抗体を酵母ディスプレイ技術によってスクリーニングした。健康な150人に由来するPBMCのIgM及びIgGのcDNAにおけるVH及びVL遺伝子を特定のベクターにクローニングすることによって、容量5×10のscFV酵母ディスプレイライブラリーを構築した(VHとVLとの間の結合配列はGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1)リンカーペプチドである)。10倍の容量の酵母バンクを回復させ、酵母表面での抗体発現を誘導し、100nMのビオチン化hOX40抗原を用いて磁気分離の手法によって2回濃縮し、その後、ビオチン化hOX40を用いてフローサイトメトリー分離によって更に2回濃縮した。得られた酵母コーティングプレートは、単クローンを選択した。単クローン酵母は増殖及び誘導によって発現した後、抗myc抗体及びビオチン化hOX40又は対照抗原hCD137を用いて染色、分析し、抗原陽性/対照抗原陰性の酵母を陽性酵母とした。
【0063】
FACSによって確認された酵母クローンについて酵母コロニーのPCR及びシークエンシングを行った。PCRプライマーは配列F:CGTAGAATCGAGACCGAGGAGA(配列番号2)、配列R:CTGGTGGTGGTGGTTCTGCTAGC(配列番号3)とし、シークエンシングプライマーは配列Rとした。シークエンシングの結果を得て、ソフトウェアBioEditを用いて配列を比較分析した。
【0064】
このようにして得られた一本鎖抗体のscFv遺伝子を上述したヒトIgG1−Fc遺伝子と融合させた後、Fermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによって市販のベクターpcDNA4/myc−HisAにクローニングし、分子クローニングの標準操作通りにクローニングしてプラスミドを小量抽出した。抽出したプラスミドは、HEK293細胞で一過性発現させ、proteinAカラムで精製した。
【0065】
hOX40−EGFP細胞を0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、上述の精製した2μgの抗hOX40scFv抗体を加え、同時に、関連の対照をセットした。陰性対照は、2μgのhIgG1タンパク質とした。二次抗体は、eBioscienceの抗hIg−PEとした。染色が終わってからフローサイトメーターで検出した。細胞表面のhOX40抗原に結合可能な抗体をこの手法で同定した。
【0066】
スクリーニング及び同定によって得られた比較的特性が良い3株の抗体は、それぞれO3scFv、O19scFv、O21scFvであった。図1に示すように、3株の抗hOX40抗体はいずれも細胞表面のhOX40と結合することができ、陰性対照は細胞表面のhOX40と結合することができなかった。上述した抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間には、リンカーペプチド配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1)が含まれる。
【0067】
2.2 配列
2.2.1 O3scFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCGFNGEYFTDYFWTWVRQPPGEALEWLALIYWDDDERYSPSLKNRLIITKDISKNQVVLTMTHMEPADTGTYYCARWGGSLMNAFDVWGPGTMVTVSS(配列番号4)
下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号5〜7とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号8〜11とする。
【0068】
その対応するDNA配列
CAGGTGCAGCTACAGCAGTGGGGCGCAGGACTGTTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCGGTTTCAATGGAGAATACTTCACTGATTACTTCTGGACCTGGGTCCGGCAGCCCCCCGGAGAGGCCCTGGAGTGGCTTGCACTCATTTATTGGGATGATGATGAGCGCTACAGCCCATCTCTGAAGAACAGACTCATCATCACCAAGGACATTTCCAAAAACCAGGTGGTCCTTACAATGACCCACATGGAGCCTGCGGACACAGGCACCTATTACTGTGCGAGATGGGGTGGTTCTTTAATGAACGCTTTTGATGTCTGGGGCCCAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCA(配列番号12)
【0069】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
QSALIQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQRHPGKAPRLMIYDVTKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSIAVFGGGTQLTVL(配列番号13)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号14〜16とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号17〜20とする。
【0070】
その対応するDNA配列
CAGTCTGCCCTGATTCAGCCTGCCTCCGTGTCTGGGTCTCCTGGACAGTCGATCACCATCTCCTGCACTGGAACCAGTAGTGACGTTGGTGGTTATAATTATGTCTCCTGGTACCAACGACACCCAGGCAAAGCCCCCAGACTCATGATTTATGATGTCACTAAGCGGCCCTCAGGGGTTTCTAATCGCTTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCAACACGGCCTCCCTGACCATCTCTGGGCTCCAGGCTGAGGACGAGGCTGATTATTACTGCAGCTCATATACAAGCAGCAGCATTGCTGTGTTCGGAGGAGGCACCCAGCTGACCGTCCTC(配列番号21)
【0071】
2.2.2 O19scFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列
QVQLVESEGGLVQPGGSLRLSCAASRFTFSNYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYMDSVKGRFTISRDNAKNSLFLQMNTLRAEDTAMYYCTRVSFGVPTYDDFWRSYATPAWYFDFWGRGTLVTVSS(配列番号22)
下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号23〜25とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号26〜29とする。
【0072】
その対応するDNA配列
CAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGAGGGAGGCTTGGTCCAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGCGCAGCCTCTAGATTCACGTTTAGTAACTATTGGATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAAGGGCTGGAGTGGGTGGCCAATATAAAGCAAGATGGAAGTGAGAAATATTATATGGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCACTGTTTCTGCAGATGAACACCCTAAGAGCCGAGGACACGGCTATGTATTACTGTACGAGGGTTAGTTTCGGAGTGCCGACGTATGACGATTTTTGGAGGAGTTACGCGACGCCCGCTTGGTACTTCGATTTTTGGGGCCGTGGTACCCTGGTCACTGTCTCCTCA(配列番号30)
【0073】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
QSALIQPASVSGSPGQSITISCTGISSDDGYYKYVSWYQQYPGKAPKLMIYDVSKRPSGISFRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSNMTPYVFGTGTKVTVL(配列番号31)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号32〜34とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号35〜38とする。
【0074】
その対応するDNA配列
CAGTCTGCTCTGATTCAGCCTGCCTCCGTGTCTGGGTCTCCTGGACAGTCGATCACCATCTCCTGCACTGGAATTAGTAGTGACGATGGTTATTATAAGTATGTCTCCTGGTACCAACAATATCCAGGCAAAGCCCCCAAACTCATGATTTATGATGTCAGTAAGCGGCCCTCAGGGATTTCTTTTCGCTTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCAACACGGCCTCCCTGACCATCTCTGGGCTCCAGGCTGAGGACGAGGCTGATTATTACTGCAGCTCATATACAAGTAACATGACCCCCTATGTCTTCGGCACTGGGACCAAGGTCACCGTCCTA(配列番号39)
【0075】
2.2.3 O21scFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSVSWDWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNEYAVSVESRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAIYFCVRNNYFFDLWGRGTLVTVSS(配列番号40)
下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号41〜43とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号44〜47とする。
【0076】
その対応するDNA配列
CAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGGTCCAGGACTGGTGAAGCCCTCGCAGACCCTCTCACTCACCTGTGCCATCTCCGGGGACAGTGTCTCTAGCAACAGTGTCTCTTGGGACTGGATCAGGCAGTCCCCCTCGAGGGGCCTTGAGTGGCTGGGAAGGACATACTATAGGTCCAAGTGGTATAATGAGTATGCAGTATCTGTGGAAAGTCGAATAACCATCAACCCAGACACATCCAAGAACCAGTTCTCCCTGCAACTGAACTCTGTGACTCCCGAGGACACGGCTATATATTTCTGTGTAAGAAATAACTACTTCTTCGATCTCTGGGGCCGTGGTACCCTGGTCACCGTCTCCTCA(配列番号48)
【0077】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASDRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQLRSNWPPGYTFGQGTKVEIK(配列番号49)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号50〜52とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号53〜56とする。
【0078】
その対応するDNA配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCGACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCTGCGTAGCAACTGGCCTCCGGGGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGGTGGAGATCAAA(配列番号57)
【0079】
実施例3 3株の抗体のscFv型抗体からIgG型抗体へのフォーマット化
タンパク質データベースUniprotにおけるヒト免疫グロブリンgamma4(IgG4)の定常領域のアミノ酸配列(P01861)に基づいて、ヒトIgG4の定常領域のアミノ酸配列を取得した。スクリーニングして得られたO3、O19、O21の重鎖可変領域VHの配列をヒトIgG4の定常領域の遺伝子配列と一緒にアセンブリングし、アセンブリングされた遺伝子を合成し、Fermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによってベクターpcDNA4/myc−HisAにサブクローニングし、pcDNA4−O21HC、pcDNA4−O3HC、pcDNA4−O19HCを取得した。
【0080】
タンパク質データベースUniprotにおけるヒト免疫グロブリンKappaの定常領域のアミノ酸配列(P01834)に基づいて、ヒトKappaの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を取得した。スクリーニングして得られたO21の軽鎖可変領域VLの配列をヒトKappaの軽鎖定常領域の遺伝子配列と一緒にアセンブリングした。タンパク質データベースUniprotにおけるヒト免疫グロブリンlambdaの定常領域のアミノ酸配列(A0M8Q6)に基づいて、ヒトlambdaの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を取得し、スクリーニングして得られたO3、O19の軽鎖可変領域VLの配列をヒトlambdaの軽鎖定常領域の遺伝子配列と一緒にアセンブリングした。アセンブリングされた遺伝子を合成し、Fermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによってベクターpcDNA4/myc−HisAにサブクローニングし、pcDNA4−O21LC、pcDNA4−O3LC、pcDNA4−O19LCを取得した。
【0081】
このようにして得られた重鎖及び軽鎖のプラスミドをAidLab社の提供するプラスミド大量抽出キット(PL14)を用いて大量抽出した。組み換えられ、構築された軽鎖及び重鎖のプラスミドの共トランスフェクションHEK293細胞について抗体を発現させた。組換え発現プラスミドをFreestyle293培地で希釈して形質転換に必要なPEI(ポリエチレンイミン)溶液に加え、プラスミド/PEI混合物をグループ毎にそれぞれ細胞懸濁液に加え、37℃で静置し、10%のCO、120rpmで培養し、5日〜6日培養した後に一過性発現培養上清を集め、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーによって抗hOX40抗体、すなわちO3mAb、O19mAb及びO21mAbを精製して得た。
【0082】
実施例4 抗hOX40抗体の特性の同定
抗体のhOX40に対する特異的認識の有無の同定
精製された抗hOX40抗体と、hOX40、hCD137及びhCD27タンパク質との結合
hOX40−EGFP、hCD137−EGFP及びhCD27−EGFPを発現した実施例1で構築されたHEK293細胞を0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、抗hOX40mAbタンパク質を加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、eBioscienceの二次抗体の抗hIg−PEを加え、氷上で20分。洗浄後、細胞を500μlの0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。結果は図2に示す通りであり、3株の抗体(O3mAb、O19mAb及びO21mAb)はいずれもhOX40−EGFP細胞と結合することができ、他のいくつかの種類のEGFP細胞(hCD137−RGFP−293F、hCD27−RGFP−293F)とは結合することができず、良好な特異性が示された。
【0083】
実施例5 抗OX40抗体のin vitroにおける親和性の向上
3株の抗体(O3mAb、O19mAb及びO21mAb)はいずれもhOX40−EGFP細胞と特異的に結合することができ、試験により、O21scFvとhOX40とにはより高い親和性があり、また、一過性トランスフェクションでは安定的で高い発現量があることがわかったので、O21scFv抗体を選択して更にin vitro親和性向上試験を行った。なお、in vitro親和性向上試験は抗体親和性に対する変異率の影響の研究を目的としており、試験の結果はO21scFvの判定に限らないものとし、O3scFv、O19scFv及びO21scFvを含む抗体の変異率の抗体親和性に対する影響として理解するものとする。
【0084】
5.1 抗OX40 21#ScFvの親和性改善の酵母ライブラリーの構築
実施例1で構築されたpcDNA4−OX40−21−Fcプラスミドをテンプレートとし、pcDNA4−F:TCTGGTGGTGGTGGTTCTGCTAGC(配列番号58)及びcMyc−BBXhoI:GCCAGATCTCGAGCTATTACAAGTCTTCTTCAGAAATAAGCTTTTGTTCTAGAATTCCG(配列番号59)をプライマーとして標準的なPCR反応を行った。得られたPCR産物は、Fermentas社のNheI及びBglII酵素消化によって組換えプラスミドを構築した。続いて、文献Ginger他、(2006) Nat Protoc 1(2):755-68の方法を参照し、エラープローンPCR法によって、scFvがランダム変異したPCR産物を得た。使用するプライマーは、ep−F:TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号60)及びep−R:GGCAGCCCCATAAACACACAGTAT(配列番号61)とした。得られたPCR産物は、Fermentas社のGeneJET DNA purification Kitで精製してからエタノール沈殿で濃度が1μg/μlを超えるまで濃縮した。残りの操作方法は、文献Ginger他、(2006) Nat Protoc 1(2):755-68の方法を参照し、酵母電気穿孔法及びin vivo組換え法によって、親和性が成熟した酵母バンクを得た。
【0085】
5.2 生産され、親和性が改善した酵母の抗OX40 21#scFvのスクリーニング
このようにして得られた親和性成熟後の酵母バンクを10nM及び1nMのhOX40−Fcタンパク質を用いて2回のフローサイトメトリーによって分離した。分離して得られた酵母産物のコーティングプレートは、単クローンを選択して同定した。低濃度の抗原染色法によって、事前に得られた野生型酵母を対照として、フローサイトメトリー染色で親和性が向上した酵母単クローンを特定し、FACSで確認された酵母クローンに対して、上述した方法と同様に酵母コロニーPCRとシークエンシングとを行った。シークエンシングして得られた配列について、ソフトウェアBioEditによって変異部位を分析した。
【0086】
抗体親和性に対して影響がなく、更には親和性が向上したO21scFvの変異部位を整理した。結果は表1に示す通りである。表1の結果から、O21scFvでは表1に示されるように1つ以上の変異が発生しており、親和性に対して影響がなく、更には或る程度向上していることがわかる。これに対応するスクリーニングされた酵母単クローンの配列の分析結果は、表2に示す通りである。表2から、表1で列記された変異部位に表2に示されたいくつかの変異の組合せがある場合には抗体の親和性を向上させることができるとわかる。表2に示された酵母染色の結果は図3に示す通りであり、O21scFvと比べると、抗体の親和性向上の程度が異なっていることがわかる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表2からわかるように、O21scFvの重鎖CDR領域及び軽鎖CDR領域については、既存の実験では、3つのアミノ酸及び2つのアミノ酸をそれぞれ変異させても(実施例6における抗OX40 21#H96−L80mAb、その軽鎖の変異は3つのアミノ酸まで可能)、抗体の親和性を維持し、更には向上させることができると指摘されており、一方、O21scFvの重鎖可変領域には119個のアミノ酸(なお、CDR領域の32個のアミノ酸、FR領域の87個のアミノ酸)が、軽鎖可変領域には109個のアミノ酸(なお、CDR領域の29個のアミノ酸、FR領域の80個のアミノ酸)が含まれることが現在知られており、そこで、重鎖CDR領域又は軽鎖CDR領域との相同性が90%以上である場合には、抗体親和性を維持し、更には向上させる能力が依然としてあると考えられる。実際には、抗体の親和性と配列の相同性のパーセンテージとの間に決定的な関係はなく、抗体エピトープ(又は「抗原決定部位」という)を決定可能なキーアミノ酸残基の影響をより大きく受け、これらのキーアミノ酸残基では変異が生じていないか、又は変異に決定的な改変作用がないことを前提として、配列相同性は70%まで下げることができる。
【0090】
実施例6 scFv型抗体からIgG型抗体へのフォーマット化
実施例3の方法に従って、親和性成熟後のscFv型抗体をIgG型抗体にフォーマット化し、一連の抗OX40 21#mAbの変異体を得た。具体的な配列情報は、次の通りである。
【0091】
【0092】
【0093】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASDRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQLRSNWPPGYTFGQGTKVEIK(配列番号49)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号50〜52とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号53〜56とする。
【0094】
その対応するDNA配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCGACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCTGCGTAGCAACTGGCCTCCGGGGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGGTGGAGATCAAA(配列番号57)
【0095】
【0096】
【0097】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASDRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQLRSNWPPGYTFGQGTKVEIK(配列番号49)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号50〜52とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号53〜56とする。
【0098】
その対応するDNA配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCGACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCTGCGTAGCAACTGGCCTCCGGGGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGGTGGAGATCAAA(配列番号57)
【0099】
【0100】
【0101】
その軽鎖可変領域のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASDRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQLRSNWPPGYTFGQGTKVEIK(配列番号49)
なお、下線部分はそれぞれCDR1、CDR2、CDR3であり、その配列番号をそれぞれ配列番号50〜52とし、下線を引いていない部分はそれぞれFR1、FR2、FR3、FR4であり、その配列番号をそれぞれ配列番号53〜56とする。
【0102】
その対応するDNA配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCGACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCTGCGTAGCAACTGGCCTCCGGGGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGGTGGAGATCAAA(配列番号57)
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
実施例7 抗hOX40抗体の特性同定
7.1 精製された抗hOX40抗体とhOX40との結合能の検出(ELISA法)
コーティングバッファー(50mM、NaCO、NaHCO、pH9.6)でhOX40−muFcを2μg/mlに希釈し、100μL/ウェル、4℃で一晩静置した。プレート洗浄後、3%のBSA−PBS、37℃で1時間密閉した。抗hOX40抗体をそれぞれ2000ng/mlから始めて合計11個の濃度で2倍段階希釈を行い、希釈液(1%のBSA−PBS)を対照とし、37℃で2時間インキュベートした。ヤギ抗ヒトIgG−HRP(Goat anti-human IgG-HRP conjugated)を加え、37℃で1時間インキュベートした。可溶性で単一成分のTMB基質発色液を加え、室温、遮光下で5分〜10分発色させた。2NのHSO、50μL/ウェルで発色反応を終了させた。マイクロプレートリーダーMD SpectraMax Plus384に置いてOD450nm〜650nmにおける値を読み取り、ソフトウェアSoftMax Pro v5.4でデータを処理し、作図、解析した。結果は図4図6に示す通りである。図4からわかるように、ScFvからIgG型抗体に転換された後、O19mAbの親和性は依然として比較的低く、O21mAbの親和性はあまり変化せず、比較的良好であり、O3mAbの親和性は著しく向上した。図5及び図6から分かるように、上述した抗OX40 21#mAbの変異体はいずれもOX40と結合することができ、また、in vitroで親和性が成熟された抗OX40 21#VHnew−L80mAb、抗OX40 21#H96−L80mAbは、抗OX40 21#mAbと比較すると、親和性が略2倍向上した。
【0112】
7.2 表面プラズモン共鳴(SPR)によるa−hOX40mAbsとhOX40との動力学親和性定数の解析
組換えヒトOX40に対する抗hOX40抗体の結合反応速度は、表面プラズモン共鳴(SRP:surface plasmon resonance)法によって計測器BIAcore X100を用いて測定した。チップCM5に抗ヒトFc抗体(マウスFcを交差認識しない)をカップリングし、被験抗体をランニングバッファーで5nMに希釈し、リガンドとしてチップ上の抗体により捕獲した。OX40−muFcは、ランニングバッファーで1000nMから1.37nMに2倍希釈した。注入時間は180秒とし、解離時間は1800秒とし、再生時間は60秒とした。ランニングバッファーはHBS−EP+とし、再生バッファーは10mMのグリシン−HCl(pH2.0)とした。シンプルな1対1のLanguir結合モデル(BIAcore評価ソフトウェア3.2版(BIAcore Evaluation Software version 3.2))によって結合速度(kon)及び解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(kD)は、koff/konの比率で算出した。表3からわかるように、親和性成熟後の抗OX40 21#H96−L80mAbの親和性は、略2倍向上した。
【0113】
【表3】
【0114】
7.3 NF−κb系の抗hOX40抗体in vitroアゴニスト活性の検出
OX40−CD40プラスミドの構築
タンパク質データベースUniprotにおけるヒトOX40のアミノ酸配列(P43489)に基づいて、ヒトOX40の細胞外ドメイン及び膜貫通領域のアミノ酸配列(すなわち、P43489における1位の残基〜235位の残基)を取得した。タンパク質データベースUniprotにおけるヒトCD40のアミノ酸配列(P25942)に基づいて、ヒトCD40の細胞内領域のアミノ酸配列(すなわち、P25942における216位の残基〜277位の残基)を取得した。遺伝子合成法によって両者を一緒にアセンブリングし、Fermentas社のHindIII及びEcoRIのダブルダイジェストによって市販のベクターpcDNA4/myc−HisA(Invitrogen、V863−20)にサブクローニングし、プラスミド構築の正確性をシークエンシングして検証し、組換えプラスミドDNA、すなわち、pcDNA4−OX40−CD40(すなわち、下記で指摘するOX40−CD40)を取得した。
【0115】
293T−NF−κB安定発現株
293T細胞を24ウェルプレートに1×10/ウェル、1ウェル当たり200μlのDMEM完全培地で播種し、同時にMOI=2で20μlのNF−κB−ルシフェラーゼ−レンチウイルス(Qiagen、cat:CLS−013L)を加えた。感染の24時間後に上清を捨て、DMEM完全培地を1ml加えて培養を続け、24時間後にpromycinを0.3μg/ml含むDMEM完全培地に交換して培養を続け、細胞を培養、増幅させて凍結保存した。promycinでスクリーニングされた293T−NF−κB細胞を24ウェルプレートに1×10/ウェルで播種し、10ng/mlのTNF−αで6時間刺激した後に、溶解した細胞についてルシフェラーゼを検出した。その結果、TNF−αで刺激された細胞のルシフェラーゼの値は刺激されていない細胞よりも明らかに高いことがわかり、NF−κB−ルシフェラーゼが既に293T細胞に安定的に発現されていることが証明された。
【0116】
ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液を含まない培地で5×10の293T−NF−κB細胞を再懸濁し、6ウェルプレートに播種した。24時間後、上清を捨て、PBSで1回洗浄し、ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液がなく無血清の培養液を1.8ml加えた。プラスミド:リポソームが1:3の割合で、0.2μgのOX40−CD40プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後、上清を捨て、新鮮な完全培養液に交換し、培養を続けた。トランスフェクションの翌日、細胞を5×10/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一連の濃度段階の抗体(初濃度10μg/ml、10倍希釈で7段階)を加え、同じ濃度のcross−link(Jackson Immuno Research Laboratories、109−006−008)を同時に加えて培養を6時間続け、溶解された細胞についてルシフェラーゼを検出した。図7に示すように、図7のA、C、E及びGはそれぞれO3mAb、O21mAb、抗OX40 21#VHnew−L80mAb及び抗OX40 21#H96−L80mAbのそれぞれの濃度におけるin vitroアゴニスト活性の検出結果を示しており、図7のB、D、F及びHはそれぞれ対数(log)を取ったin vitroアゴニスト活性の検出結果を示す図であり、その結果、O3mAb及びO21mAbがいずれもin vitroにおいて良好なアゴニスト活性を有することが示され、良好な用量依存性が示された。親和性が向上した抗OX40 21#VHnew−L80mAb、抗OX40 21#H96−L80mAbは、アゴニスト活性が略2倍向上した。
【0117】
実施例8 抗体アゴニスト活性に対するそれぞれのサブタイプの影響
抗OX40 21#mAbの各種変異体はいずれもhOX40に対して特異的な高親和性を有しており、hOX40との結合反応速度の結果がいずれも良好であり、このうちの抗OX40 21#H96−L80mAbはアゴニスト活性が略2倍向上したので、本願では抗OX40 21#H96−L80mAb(以下、「H96−L80」と略称する)を例として更に説明するものとし、その他の各変異体については説明を省略する。なお、以降の各実施例ではH96−L80についてのみ説明をしているが、抗OX40 21#mAbの各種変異体にその特性がないか、又は他の2種類の抗体(O3mAb、O19mAb)にその特性がないと理解するものではない。以降の各実施例におけるH96−L80についての更なる実験データは、本発明の方法により得られる各種抗OX40抗体が比較的高い活性、親和性、機能性又は安定性を有することを証明するためのみに使用される。
【0118】
タンパク質データベースUniprotにおけるヒト免疫グロブリンgamma1(IgG1)及びヒト免疫グロブリンgamma2(IgG2)の定常領域のアミノ酸配列(それぞれP01857及びP01859)に基づいて、ヒトIgG1及びIgG2の定常領域のアミノ酸配列を取得した。その他は上述した方法に従って操作し、抗OX40 21#H96−L80IgG1mAb及び抗OX40 21#H96−L80IgG2mAbを取得した。実施例7の方法に従って実験し、結果は図8に示す通りである。なお、図8のA及び図8のBはそれぞれIgG1及びIgG2の2種類のサブタイプのそれぞれの濃度におけるin vitroアゴニスト活性の検出結果であり、図8のCはIgG1及びIgG2の2種類のサブタイプの対数を取った比較結果を示す図であり、図8のDは0.1ug/mlの濃度におけるものであり、H96−L80の3種類のサブタイプの抗体アゴニスト活性が略同じであることがわかる。
【0119】
実施例9 精製されたH96−L80抗体と、ヒト及びアカゲザルの活性化されたCD4+T細胞及びCD8+T細胞との結合能の検出
ヒトリンパ球分離溶液(Tianjin Hanyang)の密度勾配遠心によって健康なボランティアの末梢血濃縮白血球から末梢血単核球PBMCを分離し、RPMI完全培地に播種した。終濃度5ug/mlのPHAを用いてPBMCを48時間活性化した。細胞を0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、H96−L80タンパク質を加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、biolegendの二次抗体FITC抗hIgG(Cat#409310)又はBiolegendの抗体PE抗hOX40(Cat#350003)と、biolegendの抗体APC抗ヒトCD4(Cat#317416)とを加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、細胞を500μl、0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。結果は図9のAに示す通りであり、H96−L80は活性化されたCD4+T細胞に対して良好に結合することができた。
【0120】
H96−L80とCD4+細胞におけるTreg及びTeffとの結合能を検出するために、上述の活性化されたヒトPBMCを用いて染色した。細胞を0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、H96−L80タンパク質を加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、biolegendの二次抗体FITC抗hIgGと、biolegendの抗体APC抗ヒトCD4とを加え、氷上で20分インキュベートし、洗浄後、膜透過固定液(BD、51−2090KZ)を1時間作用させ、膜透過液(eBioscience、00−8333−56)で洗浄した後に再び膜透過液で再懸濁し、PE抗ヒトFoxp3(Cat#320208)を加え、4℃で染色して一晩静置し、洗浄後、細胞を500μl、0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。結果は図9のBに示す通りであり、H96−L80は活性化されたCD4+Foxp3+Treg細胞及びCD4+Foxp3−Teff細胞に対して良好に結合することができた。
【0121】
H96−L80とアカゲザルOX40との結合能を検出するために、上述したステップによって、活性化されたアカゲザルの末梢血単核球PBMCを取得した。細胞を0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、H96−L80タンパク質を加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、biolegendの二次抗体FITC抗hIgGと、biolegendの抗体APC抗ヒトCD4及びPE抗ヒトCD8a(Cat#301008)とを加え、氷上で20分インキュベートした。洗浄後、細胞を500μl、0.5%のPBS−BSAバッファーに再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。結果は図9のCに示す通りであり、H96−L80は活性化されたアカゲザルのCD4+T細胞及びCD8+T細胞に対して良好に結合することができ、H96−L80がアカゲザルOX40と結合可能であることが示された。
【0122】
実施例10 抗OX40抗体によるT細胞の活性化及び増殖の促進
10.1 T細胞の活性化及び増殖による抗OX40scFv抗体のin vitro活性の研究及びそのアゴニスト機能の評価。
ヒトリンパ球分離溶液(Tianjin Hanyang)の密度勾配遠心によって健康なボランティアの末梢血濃縮白血球から末梢血単核球PBMCを分離し、RPMI完全培地に播種した。予め50μl、1μg/mlの抗CD3で96ウェルプレートをコーティングして4℃で一晩静置した。実験群は50μl、2μg/mlのO21scFvを用いて37℃で2時間コーティングし、可溶性で終濃度2μg/mlのO21scFv+終濃度4μg/mlのcross−link(Jackson Immuno Research Laboratories、109−006−008)を同時に加え、陰性対照はRPMI完全培地とした。PBMCの量は2×10/ウェルとし、5日間培養した後に上清を取った。図10に示すように、IFN−γELISA検出キット(ebioscience)によって上清中のIFN−γのレベルを検出し(図10のA)、BrdU染色キット(Roche、11647229001)によってT細胞の増殖を検出した(図10のB)。このことからわかるように、O21scFvは、コーティングとcross−linkとの2種類の方法のいずれにおいても、良好にPBMCを活性化させるとともにT細胞の増殖を促進する活性を有している。
【0123】
10.2 in vitroにおけるPBMC及びCD4+T細胞の活性化によるO21scFv及びIgGの2種類の形式のアゴニスト活性の評価
ヒトリンパ球分離溶液(Tianjin Hanyang)の密度勾配遠心によって健康なボランティアの末梢血濃縮白血球から末梢血単核球PBMCを分離し、RPMI完全培地に播種した。CD4+T細胞分離キット(Miltenyi、cat#130−096−533)を用いてPBMCからCD4+T細胞を分離した。予め50μl、1μg/mlの抗CD3で96ウェルプレートをコーティングして4℃で一晩静置した。実験群は50μl、2μg/mlのO21scFv又はO21mAbを用いて37℃で2時間コーティングし、陰性対照は同等の用量のhIgG−Fcとした。PBMC及びCD4+T細胞の量は2×10/ウェルとし、5日間培養した後に上清を取り、IFN−γELISA検出キット(ebioscience)によって上清中のIFN−γのレベルを検出した。
【0124】
図11に示すように、PBMC(図11のA)及びCD4+T細胞(図11のB)に関して、in vitroにおけるO21抗体の完全抗体であるmab型がscFv型よりも良好なアゴニスト活性を有することがわかる。
【0125】
実施例11 T細胞亜群に対するIgG1及びIgG4のサブタイプの抗OX40抗体H96−L80の影響
実施例10の操作に従ってヒト末梢血単核球(PBMC)を取得し、溶解した抗CD28(0.5μg/ml)と、結合プレートの抗CD3(3μg/ml)と、抗ヒトOX40mAb H96−L80IgG1又はIgG4(10μg/ml)とを用いてPBMCを刺激した。48時間後に細胞を採取した。biolegendの抗体APC抗ヒトCD4及びPE抗ヒトCD8a(Cat#301008)で染色するか、又はbiolegendの抗体APC抗ヒトCD4及びPE抗ヒトFoxp3(Cat#320208)で染色して、フローサイトメーターで検出した。結果は図12のA及びBに示す通りであり、O21mAb H96−L80IgG1及びIgG4の2種類のサブタイプはCD4+T細胞におけるCD4+Foxp3+Tregの比率を減少させることができたが(図12A)、CD4+T細胞とCD8+T細胞との比率には影響がなかった(図12B)。
【0126】
実施例12 マウスin vivoにおける腫瘍増殖に対する抗OX40抗体の阻害作用
12.1 腫瘍細胞PC−3及びヒトPBMCを移植したNOD−SCIDマウス腫瘍モデルを用いた抗OX40抗体のin vivoにおける薬効の評価
0日目にPC−3(ATCC、CRL−1435(商標))をヒトの末梢血単核球(PBMC)と共にマウスに皮下(SC)注射し、0日目及び7日目に10mg/kgのO21mAb又はPBSを、PBSを陰性対照として各グループ5匹ずつのマウスに腹腔内注射により投与した。腫瘍の形成を毎週2回観察し、腫瘍の長径及び短径をノギスで測定し、腫瘍体積を算出して、腫瘍増殖曲線を作図した。結果は図13に示す通りであり、抗体O21mAbが腫瘍の増殖を著しく阻害可能であることがわかる。
【0127】
12.2 腫瘍細胞A375及びヒトPBMCを移植したNOD−SCIDマウス腫瘍モデルを用いた抗OX40抗体のin vivoにおける薬効の評価
0日目に7×10のA375(ATCC、CRL−1619(商標))を1×10のヒト末梢血単核球(PBMC)と共にマウスに皮下(SC)注射し、0日目及び7日目に1mg/kgのO21mAb又はPBSを、PBSを陰性対照として各グループ5匹ずつのマウスに腹腔内注射により投与した。腫瘍の形成を毎週2回観察し、腫瘍の長径及び短径をノギスで測定し、腫瘍体積を算出して、腫瘍増殖曲線を作図した。図14に示すように、抗体O21mAbが腫瘍の増殖を著しく阻害可能であることがわかる。
【0128】
実施例13 抗OX40抗体の安定性の検出
抗hOX40抗体O21mAbの安定性について45℃の加速安定性試験により検出した。具体的な試験方法は、抗O21mAb抗体を約10mg/mlに濃縮し、45℃で水浴させ、0日目、10日目、20日目、30日目に試料を採取して、濃度、SEC−HPLC、NF−κbの解析試験を行った。島津製作所のLC20ATによるHPLC(液体クロマトグラフィー)を採用したSEC−HPLCによって解析試験を行い、試料を1mg/mlに濃縮し、流速を0.5ml/分として添加し、総添加量を50ugとし、添加後に30分間勾配溶離した。NF−κbは、実施例7に従って操作した。結果は図15に示す通りであり、抗hOX40抗体O21mAbがin vitroにおいて良好な安定性を有することがわかる。
【0129】
実施例14 抗hOX40抗体O21mAbの薬物動態の評価
10mg/kg及び1mg/kgの用量でH96−L80IgG1抗体の薬物動態を評価した。8週齢の雌のBalb/Cマウスを16匹用い、それぞれの用量をA/Bの2グループに分けて各グループ4匹ずつとした。全てのマウスに対してH96−L80IgG1抗体を200μg(10mg/kg)又は20ug(1mg/kg)静脈注射し、投与後、14個の時点に分け、2グループ交互に各時点で1グループのマウスからそれぞれ100μlずつ採血した。血清を分離した。血清中の被験タンパク質の濃度をELISA法によって検出した。hOX40−muFcコーティングプレートに対して、希釈度が適切な血清サンプルを加えた後に、ヤギ抗ヒトIgG HRP(Sigma、CatNO:A0170)を加え、TMBで発色させた。標準タンパク質としてH96−L80IgG1抗体を用い、標準曲線を作成した。ソフトウェアWinNolinを用いて薬物動態パラメータを算出した。平均C−T曲線は図16に示す通りであり、検出の結果、本発明のH96−L80IgG1抗体は比較的安定しており、用量1mg/kgのin vivo半減期が平均205時間であり、用量10mg/kgのin vivo半減期が平均371時間であった。検出の結果、抗H96−L80の抗体産生はなかった。
【0130】
以上の記載は本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を制限するものではない。なお、当業者にとって、本発明の技術的原理を逸脱しない限り、いくつかの改良及び変形を行ってもよく、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲とみなされるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]