(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず一般的なスクリュー圧縮機について説明する。
図1は一般的なスクリュー圧縮機の系統図である。
吸込空気は圧縮機から発生する騒音を低減する防音カバに設けられた開口部から吸入フィルタ1、吸入弁2を通過し、圧縮機制御基板9および永久磁石同期電動機制御装置10を搭載した電気箱11より電力を供給されて回転する永久磁石同期電動機4によって駆動される圧縮機本体3によって所定の圧力まで圧縮される。その後、油分離器5や調圧逆止弁6、アフタークーラ7、ドライヤ(図示しない)を通過したのち圧縮機の外部へ接続され、各用途に使用される。一方、循環油は圧縮機本体3で空気と共に圧縮され、油分離器5で圧縮空気と分離されたのちにオイルクーラ8で冷却され、オイルフィルタ(図示しない)等を通過したのちに圧縮機本体内部に収納された雌雄ロータ、軸受等に供給される経路を循環する。アフタークーラ7およびオイルクーラ8は冷却ファン12を搭載した冷却ファン用電動機13を駆動することにより冷却される。その冷却ファン用電動機13を駆動することによる得られる冷却風を利用して、永久磁石同期電動機4も冷却される。永久磁石同期電動機4には減磁による機能停止を防止するために、温度検出装置14が電動機表面に取り付けられ、異常温度検出時に圧縮機制御基板9で強制停止するよう制御している。
【0009】
圧縮機制御基板9は、永久磁石同期電動機制御装置10を含めたスクリュー圧縮機の動作を制御する。永久磁石同期電動機制御装置10は圧縮機制御基板9からの指示を受け、永久磁石同期電動機4の回転速度や起動や停止を制御する。
【0010】
図2は一般的なスクリュー圧縮機における制御フローチャート図である。
図2では、温度検出装置14が検出する温度をT1、永久磁石同期電動機4に用いられる永久磁石の減磁温度をT3、減磁温度T3よりも低い閾値温度をT2と規定している。
【0011】
S101:スクリュー圧縮機の起動、再起動が指示された場合、圧縮機制御基板9は温度検出装置14が示す検出温度T1と予め記憶された閾値温度T2とを比較する。検出温度T1が閾値温度T2よりも低い場合(NO)の場合はS102に進み、検出温度T1が閾値温度T2よりも高い場合(YES)はS106に進む。
【0012】
S102:圧縮機制御基板9は、永久磁石同期電動機4および冷却ファン用電動機13を起動する。
【0013】
S103:圧縮機制御基板9は、検出温度T1が閾値温度T2より高くなった場合(YES)にS106に進み、検出温度T1が閾値温度T2より低い場合(NO)にS104に進む。
【0014】
S104:圧縮機制御基板9は、スクリュー圧縮機の停止が指示された場合(YES)はS105に進む。停止を指示されない場合(NO)はS103に戻るため、圧縮機制御基板9はスクリュー圧縮機の停止が指示されるまでの間、検出温度T1を監視することになる。
【0015】
S105:圧縮機制御基板9は、永久磁石同期電動機4および冷却ファン用電動機13を停止する。
【0016】
S106:永久磁石同期電動機4の永久磁石が減磁する可能性があるため、圧縮機制御基板9は永久磁石同期電動機4および冷却ファン用電動機13を停止する(以下、電動機温度異常停止と呼ぶ)。
【0017】
S107:圧縮機制御基板9は電動機温度異常停止したことを、ディスプレイやランプ(図示しない)によってユーザに通知する。
【0018】
すなわち、予期しない運転状態において永久磁石同期電動機4が必要冷却風量を得られなくなった場合、徐々に永久磁石同期電動機4の温度が上昇し、温度検出装置14から得られる検出温度T1が、永久磁石の減磁温度T3よりも低い閾値温度T2以上(T1≧T2)になった段階で、圧縮機の運転を停止する(以下、電動機温度異常停止とする)。
【0019】
ここで、電動機温度異常停止した場合は冷却ファン用電動機13も停止してしまい、永久磁石同期電動機4が冷却されないため、検出温度T1はオーバーシュートして閾値温度T2よりも高くなり、永久磁石が減磁する恐れがある(T1>T2)。さらに、永久磁石同期電動機4は自然放熱でしか冷却されないため、検出温度T1が閾値温度T2よりも低くなる(T1<T2)までの間、圧縮機を再起動できない、という問題があった。
【実施例1】
【0020】
図3は本発明の第1実施例のスクリュー圧縮機の制御フローチャート図を示す。本実施例のスクリュー圧縮機は、温度検出装置14より得られる検出温度T1が閾値温度T2で圧縮機が停止した後の再始動時に、T1>T2の場合、冷却ファン用電動機13を先行で駆動させ、永久磁石同期電動機4の温度を閾値温度T2よりも低減した後に再始動する制御を備える構造とする。本実施例のスクリュー圧縮機はの動作は、
図2で説明したフローのうち、S101でYESの場合にS108からS110が追加されたものとなっている。S101からS107までの動作は
図2で説明したものと同様に動作する。
【0021】
S108:S101でYESの場合、圧縮機制御基板9は冷却ファン用電動機13を起動する。
【0022】
S109:圧縮機制御基板9は、温度検出装置14の検出温度T1を監視し、冷却ファン用電動機13が作動することによりT1<T2となった場合にS110に進む。
【0023】
S110:圧縮機制御基板9は、永久磁石同期電動機4を起動し、S103に進む。
【0024】
すなわち、永久磁石同期電動機4に使用される永久磁石は、構成磁石の違いにより減磁温度T3が異なるため、圧縮機の電気箱11に搭載された圧縮機制御基板9に、あらかじめ決定された閾値温度T2(例えば、100度、T2<T3)が入力されている。圧縮機の運転中において、永久磁石同期電動機4の表面に取り付けられた温度検出装置14から測定される検出温度T1(例えば、80度)と閾値温度T2を比較し、T1<T2の条件で連続運転を行う。予期しない運転状態(例えば、熱交換器の目詰まりや使用環境温度が高い状態)で圧縮機を運転し続けた場合、永久磁石同期電動機4を冷却するのに必要な冷却風量が不足し、徐々に検出温度T1が上昇する。T1≧電動機4の停止指令を出し、圧縮機のモニターに異常停止の表示(例えば、電動機温度異常停止)を行い、運転を停止する。
【0025】
次に運転指令を受けた圧縮機制御基板9は、検出温度T1があらかじめ入力された閾値温度T2と比較し、T1<T2の場合は通常起動を行うが、T1<T2の場合は、永久磁石同期電動機4は起動せず、圧縮機の冷却ファン用電動機13のみを先行運転し、永久磁石同期電動機4を冷却する。強制冷却された永久磁石同期電動機4は、自然放熱する場合に比べて検出温度T1が早く低減し、T1<T2になった後に、圧縮機制御基板9から永久磁石同期電動機制御装置10へ永久磁石同期電動機4の運転指令を出し、再び運転状態に入る。
【0026】
このように再起動時に、永久磁石同期電動機4の温度により通常起動か冷却ファン用電動機13を先行運転起動かを切り替える制御を行うことにより、永久磁石同期電動機4の信頼性を確保しつつ、電動機温度異常停止からの再起動では起動不可時間を短縮する圧縮機を提供することができる。
【0027】
上記実施例では、被圧縮流体を空気としているが、他のガスであっても構わない。上記実施例では、圧縮機本体へ注入する液体を油としているが、水やその他液体であっても構わない。また圧縮機本体へ注入する液体を必要としない非注入式の圧縮機でも構わない。さらに圧縮方式をスクリュー式としているがその他の圧縮方式でも構わない。
【0028】
上記実施例では、圧縮機内の冷却ファン用電動機13により冷却される、他冷却式の永久磁石同期電動機4としているが、自冷却式の永久磁石同期電動機や誘導電動機であっても構わない。
上記実施例では、温度検出装置13を永久磁石同期電動機4の表面に取り付けられた温度検出装置としているが、軸受温度やコイル温度を測定する温度検出装置であっても構わない。
【実施例2】
【0029】
図4は本発明の第2実施例のスクリュー圧縮機の制御フローチャート図である。なお第1の実施例と共通する部分については説明を省略する。本実施例のスクリュー圧縮機の動作は、
図2で説明したフローのうち、S106の処理がS111からS114の処理に置き換えたものとなっている。S101からS105およびS107の動作は
図2で説明したものと同様に動作する。
【0030】
S111:S103で検出温度T1が閾値温度T2より高くなった場合(YES)に、永久磁石同期電動機4の永久磁石の減磁を防止するため、圧縮機制御基板9は永久磁石同期電動機4を停止する。この段階では冷却ファン用電動機13は停止しない。
【0031】
S112:圧縮機制御基板9は温度異常により永久磁石同期電動機4を停止し、永久磁石同期電動機4を冷却中であることを、ディスプレイやランプ(図示しない)によってユーザに通知する。
【0032】
S113:冷却ファン用電動機13が動作している状態で圧縮機制御基板9は、温度検出装置14の検出温度T1を監視し、冷却ファン用電動機13が作動することによりT1<T2となった場合にS114に進む。
【0033】
S114:圧縮機制御基板9は冷却ファン用電動機13を停止する。
【0034】
すなわち、第2の実施例では温度検出装置14より得られる検出温度T1が閾値温度T2以上になった場合(T1>T2)、圧縮機制御基板9から永久磁石同期電動機制御装置10へ永久磁石同期電動機4の停止指令を出し、圧縮機のモニターに異常の表示(例えば、電動機冷却中)を行うが、冷却ファン用電動機13は運転をし続け、永久磁石同期電動機4を強制冷却する。強制冷却をし続けT1<T2となった後に、冷却ファン用電動機13の運転を停止する。
【0035】
このように停止条件が発生した時に、永久磁石同期電動機4をのみ停止し、冷却ファン用電動機13を運転し続ける制御を行い、永久磁石同期電動機4を強制冷却することにより、永久磁石同期電動機4の信頼性を確保しつつ、電動機温度異常停止からの再起動では起動不可時間を短縮する圧縮機を提供することができる。
【0036】
ただし本実施例では永久磁石同期電動機4の停止中に冷却ファン用電動機13のみ連続運転するため、アフタークーラ7やオイルクーラ8内に留まった圧縮空気や潤滑油を過冷却してしまうため、ドレンの発生が懸念される。
【0037】
また、本実施例について、
図4では、S112でユーザに永久磁石同期電動機4が冷却中であることを通知しているが、これに加えてS113の後で電動機温度異常停止したことをディスプレイやランプでユーザに通知してもよい。