特許第6771599号(P6771599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6771599燃料高圧ポンプ用の高圧接続部ならびに燃料高圧ポンプ
<>
  • 特許6771599-燃料高圧ポンプ用の高圧接続部ならびに燃料高圧ポンプ 図000002
  • 特許6771599-燃料高圧ポンプ用の高圧接続部ならびに燃料高圧ポンプ 図000003
  • 特許6771599-燃料高圧ポンプ用の高圧接続部ならびに燃料高圧ポンプ 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771599
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプ用の高圧接続部ならびに燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20201012BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F02M59/46 D
   F02M59/46 F
   F02M59/46 C
   F02M59/46 N
   F02M55/02 330A
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-4427(P2019-4427)
(22)【出願日】2019年1月15日
(65)【公開番号】特開2019-124221(P2019-124221A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】10 2018 200 612.1
(32)【優先日】2018年1月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ツァンクル
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ボーマン
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−075049(JP,A)
【文献】 特開2014−224523(JP,A)
【文献】 特開2014−080964(JP,A)
【文献】 特開2012−136994(JP,A)
【文献】 特開2017−066956(JP,A)
【文献】 特開2017−141725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
F02M 59/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射システムに設けられた燃料高圧ポンプ(14)用の高圧接続部(10)であって、
第1の方向に開く流出弁エレメント(36)を備えた流出弁(26)と、
前記第1の方向とは逆向きの第2の方向に開く圧力制限弁エレメント(56)を備えた圧力制限弁(28)と、
前記流出弁エレメント(36)のために第1のシール座(32)を提供し、前記圧力制限弁エレメント(56)のために第2のシール座(34)を提供する、1つの共通の弁プレート(30)と、
前記流出弁エレメント(36)をその開放運動時にガイドするためのガイドスリーブ(42)と、
を有しており、該ガイドスリーブ(42)は、当該高圧接続部(10)のボディ内に圧入されて取り付けられていて、前記流出弁エレメント(36)の開放運動を制限するための軸方向ストッパ(48)と、前記流出弁エレメント(36)をその開放運動時にガイドするための半径方向ガイド(46)とを有しており、前記ガイドスリーブ(42)は、前記ボディよりも硬い材料から形成されており
前記弁プレート(30)は、前記ボディ内に圧入されて、かしめられて取り付けられており、前記弁プレート(30)は、プレス力およびかしめ力を散逸させるために、前記第2のシール座(34)の領域に、環状の負荷軽減溝(76)を有していることを特徴とする、燃料高圧ポンプ(14)用の高圧接続部(10)。
【請求項2】
前記流出弁(26)は、前記流出弁エレメント(36)を閉鎖位置へ戻すための戻しばね(52)を有しており、前記ガイドスリーブ(42)は、前記戻しばね(52)を保持し、かつガイドするためのばね収容領域(54)を有していることを特徴とする、請求項1記載の高圧接続部(10)。
【請求項3】
前記流出弁エレメント(36)はプレート状の弁エレメントとして形成されていて、平坦なシール面(38)を有しており、前記弁プレート(30)は、平坦で環状の少なくとも2つのシール面(74)を有しており、該シール面(74)は、前記流出弁エレメント(36)の前記平坦なシール面(38)と協働して、前記流出弁(26)を閉じるようになっており、2つの環状の前記シール面(74)の間に、全周にわたって延びる環状通路(72)が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の高圧接続部(10)。
【請求項4】
前記弁プレート(30)が複数の通流開口(68)を有しており、該通流開口(68)は前記弁プレート(30)に均一に環状に分配配置されていて、全周にわたって延びる前記環状通路(72)に開口していることを特徴とする、請求項3記載の高圧接続部(10)。
【請求項5】
前記ボディ内に、前記圧力制限弁エレメント(56)を閉鎖位置に戻すための戻しばね(58)用のばね支持体(62)が圧入されており、該ばね支持体(62)は、前記ボディよりも硬い材料から形成されていて、軸方向で、前記ボディの一方の端領域(18)を超えて突出していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の高圧接続部(10)。
【請求項6】
前記流出弁エレメント(36)と、前記圧力制限弁エレメント(56)と、前記弁プレート(30)に設けられた第1の通過開口(64)と、前記流出弁エレメント(36)に設けられた第2の通過開口(66)とが、同軸的に配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の高圧接続部(10)。
【請求項7】
内燃機関の燃料噴射システムで燃料に高圧を付与するための燃料高圧ポンプ(14)であって、該燃料高圧ポンプ(14)は、ポンプハウジング(12)を有しており、該ポンプハウジング(12)内で燃料に高圧が付与され、さらに前記燃料高圧ポンプ(14)は、ハウジング凹部(16)内に配置されて前記ポンプハウジング(12)に溶接固定された、請求項1からまでのいずれか1項記載の高圧接続部(10)を有しており、軸方向で前記ボディの端領域(18)を超えて突出したばね支持体(62)が、隙間嵌めによって、特に0.03〜0.07mmの遊びをもって、前記ハウジング凹部(16)内に配置されている、燃料高圧ポンプ(14)。
【請求項8】
前記ポンプハウジング(12)の前記ハウジング凹部(16)に段部(22)が形成されており、前記ボディの前記端領域(18)は、旋削加工部(20)を有しており、前記段部(22)と、前記旋削加工部(20)とが、互いに協働して自由空間(24)を形成することを特徴とする、請求項記載の燃料高圧ポンプ(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射システムのための燃料高圧ポンプ用の高圧接続部、ならびにこのような高圧接続部を有する燃料高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射システムに設けられている燃料高圧ポンプは、燃料に高い圧力を付与するために使用される。この場合、圧力は、たとえばガソリン内燃機関の場合には150バール〜500バールの範囲にあり、ディーゼル内燃機関の場合には1500バール〜3000バールの範囲にある。いずれの燃料においても、形成され得る圧力が高くなればなるほど、燃焼室内での燃料の燃焼時に発生するエミッションはますます少なくなる。このことは、特にエミッションの低減がますます強く望まれているという背景に鑑みて、有利である。
【0003】
燃料高圧ポンプ内で高圧を付与された燃料は、通常、燃料高圧ポンプのポンプハウジングに取り付けられた高圧接続部を介して、燃料噴射システムの高圧領域へと案内される。高圧領域には、たとえばいわゆるコモンレールが配置されており、このコモンレールから、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射するためのインジェクタに、燃料が供給される。
【0004】
燃料噴射システムの適正な機能形式を確保することができるようにするために、燃料噴射システムは、一般に、少なくとも2つの弁、すなわち流出弁と圧力制限弁とを有する。流出弁は、燃料高圧ポンプの圧力室内の圧力上昇を制御する高圧弁として機能する。燃料高圧ポンプがピストンポンプとして構成されている場合には、流出弁はポンプピストンの上昇運動時に開くので、燃料を高圧領域へと圧送することができる。ポンプピストンの下降運動時には、流出弁は閉じるので、圧縮された燃料の、高圧領域から圧力室への逆流が阻止される。
【0005】
圧力制限弁は、高圧領域での過度に大きな圧力上昇を阻止する機能を有する。高圧領域における圧力が規定の値を上回ると、圧力制限弁を介して、一定量の燃料体積流が、圧力室へ逃がされるか、または燃料高圧ポンプの上流側に接続された低圧領域へ逃がされる。
【0006】
スペースの理由から、たとえば、両方の弁、すなわち流出弁と圧力制限弁とを、燃料高圧ポンプ用の1つの高圧接続部に配置することが知られている。これに関する例は、米国特許出願公開第2015/0078922号明細書および実願平02−132847号公報に開示されている。
【0007】
しかし、両弁を組み込んだこのような高圧接続部は、耐用年数が比較的短く、作動中にかなり迅速に摩耗するという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、組み込まれた流出弁と圧力制限弁とを備えた、改良された高圧接続部を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の諸特徴の組み合わせを有する高圧接続部によって解決される。
【0010】
このような高圧接続部を有する燃料高圧ポンプが、別の独立形式の請求項の対象である。
【0011】
本発明の有利な態様は、従属形式の請求項の対象である。
【0012】
燃料噴射システムに設けられた燃料高圧ポンプ用の高圧接続部が、第1の方向に開く流出弁エレメントを備えた流出弁と、第1の方向とは逆向きの第2の方向に開く圧力制限弁エレメントを備えた圧力制限弁とを有する。加えて、高圧接続部は1つの共通の弁プレートを有し、この共通の弁プレートは、流出弁エレメントのために第1のシール座を提供し、圧力制限弁エレメントのために第2のシール座を提供する。さらに高圧接続部は、流出弁エレメントをその開放運動時にガイドするためのガイドスリーブを有し、このガイドスリーブは、高圧接続部内に圧入されて取り付けられていて、流出弁エレメントの開放運動を制限するための軸方向ストッパと、流出弁エレメントをその開放運動時にガイドするための半径方向ガイドとを有する。この場合、ガイドスリーブは、高圧接続部よりも硬い材料から形成されている。
【0013】
実際の現場では、高圧接続部を形成するにあたって、高圧接続部を燃料高圧ポンプのポンプハウジングに溶接することによる接合プロセスを好都合に実施できるようにするために、たいてい、容易に溶接可能な軟らかい材料が使用されることが判っている。しかし、流出弁と圧力制限弁とが高圧接続部に配置されていると、特に流出弁と高圧接続部との間に、可動の構成部分の複数のインタフェースが生じ、これらのインタフェースには高い動的負荷が加えられ、これにより、高圧接続部は、既に短い作動時間の後に疲労または摩耗してしまう。これにより、燃料噴射システム全体への粒子混入が生じるおそれがあるとともに、弁行程が変えられ、切換時間が変わることにより、早期のシステム故障を招くおそれもある。
【0014】
したがって、高圧接続部を引き続き軟らかい材料から形成し、これによりポンプハウジングへの良好な溶接可能性を提供すると同時に、高圧接続部の内部には、高圧接続部よりも硬い材料から形成されていて、したがってあまり迅速には摩耗しない、特殊なガイドスリーブを設けることが提案される。このガイドスリーブは、常時運動している流出弁エレメントの開閉運動を半径方向でガイドすると同時に、流出弁エレメントのための軸方向ストッパを提供する。したがって、摩耗が発生し易いインタフェースは、もはやこれまで知られているように高圧接続部自体と流出弁エレメントとの間に位置するのではなく、流出弁エレメントと、特別にこのために高圧接続部よりも硬い材料から形成したガイドスリーブとの間に位置している。したがって、ガイドスリーブは中心的な構成部分を形成しており、熱調質された材料から構成されていて、軟らかい高圧接続部内に締まり嵌めによって嵌め込まれている。これにより、ガイドスリーブは、流出弁エレメントの半径方向のガイドの役割を果たすとともに、弁行程を制限するための軸方向のストッパを提供する。これにより、インタフェースは高強度でかつ頑丈に形成される。
【0015】
流出弁エレメントを第1のシール座に押圧する戻しばねは、原理的には不要にすることができる。なぜならば、流出弁を閉じるためには、燃料噴射システムの高圧領域に形成される圧力で既に十分であるからである。
【0016】
しかし、1つの有利な実施態様においては、流出弁は、流出弁エレメントを閉鎖位置へ戻すための戻しばねを有しており、この場合、ガイドスリーブは、戻しばねを保持し、かつガイドするためのばね収容領域を有する。これにより、摩耗し易い別のインタフェース、すなわち、戻しばねとばね収容部またはばねガイドとの間のインタフェースも、高強度でかつ頑丈に設計される。
【0017】
好適には、流出弁エレメントはプレート状の弁エレメントとして形成されていて、平坦なシール面を有しており、弁プレートは、平坦で環状の少なくとも2つのシール面を有しており、これらのシール面は、流出弁エレメントの平坦なシール面と協働して、流出弁を閉じるようになっており、2つの環状のシール面の間に、全周にわたって延びる環状通路が形成されている。
【0018】
有利には、弁プレートは複数の通流開口を有しており、これらの通流開口は弁プレートに均一に環状に分配配置されていて、全周にわたって延びる環状通路に開口している。
【0019】
したがって、従来技術から公知の配置形式とは異なり、流出弁エレメントはもはやオーバーフロー通路の流れによって取り囲まれるのではなく、全周にわたって延びる環状通路を介して流れによって取り囲まれる。このことは、流体技術上の利点をもたらす。
【0020】
流出弁は、流出弁エレメントと弁プレートとに設けられている極めて平坦なシール面を介して、シールされる。弁プレートには複数の通流開口が設けられており、これらの通流開口は、流出弁エレメントに向かって環状通路に開口している。環状通路は、弁プレートに対する流出弁エレメントの面圧を高め、ひいてはシール機能を向上させる機能を有する。さらに、流れる流体の流速は、環状通路への開口部のところで減じられる。これにより、開放速度が低減され、ひいてはガイドスリーブに設けられた軸方向ストッパに対する流出弁エレメントの衝突衝撃が低減される。環状通路の別の利点は、ハイドロリック的に有効となる有効面がポンプ側からシステム側へ向かってほぼ等大に形成され得ることである。このことにより、開放圧が低減され、ひいては燃料高圧ポンプ内の圧力ピークが低下する。
【0021】
有利には、弁プレートは高圧接続部内に圧入されて、かしめられて取り付けられており、この場合、弁プレートは、プレス力およびかしめ力を導出するために、第2のシール座の領域に、環状の負荷軽減溝を有する。弁プレートが締まり嵌めを介して高圧接続部内に嵌め込まれてかしめられていると、弁プレートは、たとえば下流側に配置されたコモンレール内に存在するシステム圧に対してシールされている。環状の負荷軽減溝は、1つの実施態様においては、圧力制限弁の座が、プレス力およびかしめ力によって変形することを阻止するために設けられている。負荷軽減溝は、外側のかしめ領域から、圧力制限弁エレメント用の第2のシール座へと向かう応力伝達経路を遮断する。作用する力に応じて、負荷軽減溝を不要にすることもできる。
【0022】
有利には、高圧接続部内に、圧力制限弁エレメントを閉鎖位置に戻すための戻しばね用のばね支持体が圧入されており、このばね支持体は、高圧接続部よりも硬い材料から形成されていて、軸方向で、高圧接続部の一方の端領域を超えて突出している。
【0023】
したがって、高圧接続部内には、熱調質された材料から形成されたばね支持体が圧入されており、これにより、圧力制限弁の戻しばねには耐摩耗性のガイドが提供され、かつ圧入過程の際のシージング傾向が阻止される。さらに、ばね支持体の圧入寸法によって、安全弁の開放圧が調節される。
【0024】
好ましくは、流出弁エレメントと、圧力制限弁エレメントと、弁プレートに設けられた第1の通過開口と、流出弁エレメントに設けられた第2の通過開口とが、同軸的に配置されている。
【0025】
有利には、ガイドスリーブは、少なくとも1つの通流孔を有する。流出弁エレメントが開放された状態では、流れの一部は、第2の通過開口を通って流れ、流れの別の成分は、流出弁エレメントの外径の傍らを通って流れる。この別の流れ成分は、次いで、この少なくとも1つの通流孔を通って、高圧領域へ導かれる。
【0026】
内燃機関の燃料噴射システムで燃料に高圧を付与するための燃料高圧ポンプの構成では、この燃料高圧ポンプが、ポンプハウジングを有し、このポンプハウジング内で燃料に高圧が付与され、さらに燃料高圧ポンプが、ハウジング凹部内に配置されてポンプハウジングに溶接固定された、上で説明したような高圧接続部を有する。軸方向で高圧接続部の端領域を超えて突出したばね支持体が、隙間嵌めによって、特に0.03〜0.07mmの遊びをもって、ハウジング凹部内に配置されている。
【0027】
両弁、すなわち流出弁と圧力制限弁とを備えた、組立ての完了した高圧接続部は、好適には、ポンプハウジングに設けられたハウジング凹部内に差し込まれた後に、ポンプハウジングに溶接される。突出したばね支持体は、ポンプハウジングと共に、隙間嵌め部として構成された重なり領域を形成している。
【0028】
好適には、ポンプハウジングのハウジング凹部内に、≦90°の角度で角度付けされた段部が形成されており、高圧接続部の端領域は、旋削加工部を有していて、この場合、段部と旋削加工部とは、互いに協働して自由空間を形成する。有利には、旋削加工部は≦30°の角度を持って設けられており、この場合、ハウジング凹部は同じく≧60°の角度を持って形成されている。旋削加工部は、ポンプハウジングに設けられた段部と共に、さらには高圧接続部を超えて突出したばね支持体と共に、自由空間を形成し、この自由空間には、溶接プロセスの間、溶接スパッタ(飛沫)が溜まって、この自由空間内に捕集される。
【0029】
さらに、高圧接続部における上述の≦30°の角度と、ポンプハウジングに設けられた段部に関する≦90°の角度とは、形成される溶接シームの耐高圧性を高める。
【0030】
高圧接続部に組み込まれた両弁により、ポンプハウジング内に複雑な孔交差部を設ける必要がなくなり、このことは、燃料高圧ポンプ全体の製造コストを低減させる。さらにこれによって、360°にわたる周方向および高さ方向において、カスタマーインタフェースのための最大フレキシビリティが可能となる。構成部分コンポーネントである高圧接続部は、燃料高圧ポンプの外部で調節しかつテストすることができる。全体として、ポンプハウジングの直径を減ずることができ、このことは、材料使用の低減をもたらす。燃料高圧ポンプ内で発生する圧力ピークは、最大80%低下し、このことは高圧を案内する領域および駆動領域における負荷軽減をもたらす。接合過程時の防沫手段は、既にハウジング凹部と高圧接続部との特殊な構成によって組み込まれている。流出弁エレメントをガイドするためのガイドスリーブは、流出弁エレメントと戻しばねとに対する耐摩耗性のインタフェースを提供しており、熱調質されたガイドスリーブの使用によって、溶接可能な軟らかい材料から高圧接続部を製造することができる。その結果、ポンプハウジングへの高圧接続部の溶接のような、好都合な接合方法を実現することができる。防沫手段を形成する、高圧接続部とポンプハウジングとに旋削加工により設けられた自由空間は、それと同時に、溶接シームの耐高圧性をも向上させる。ばね支持体が高圧接続部内に圧入されているので、その結果生じる応力は、溶接シームの耐高圧性を改善する。高圧接続部は回転対称的に形成されているので、接合過程の際のポンプハウジングに対する半径方向の位置調整は必ずしも必要ではない。高圧接続部内へのばね支持体の圧入寸法および圧力制限弁エレメントへの良好なアクセス性のバリエーションによって、圧力制限弁の開放圧を容易に調節することができる。
【0031】
以下に、本発明の有利な態様を、添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】共通の弁プレートに配置された流出弁と圧力制限弁とを備えた、燃料高圧ポンプのポンプハウジングに設けられた高圧接続部の断面図である。
図2図1に示した弁プレートを、流出弁の方向から見た斜視図である。
図3図1に示した弁プレートを、圧力制限弁の方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、高圧接続部10の長手方向断面図を示す。高圧接続部10は、燃料高圧ポンプ14のポンプハウジング12に取り付けられている。このために、高圧接続部10が、ポンプハウジング12に設けられたハウジング凹部16に差し込まれて、このハウジング凹部16内に溶接固定されている。高圧接続部10をポンプハウジング12に取り付けるための簡単な溶接プロセスを可能にするために、高圧接続部10は全体的に、良溶接性の軟らかい材料から形成されている。高圧接続部10は、その一方の端領域18でもってハウジング凹部16に差し込まれており、高圧接続部10のこの端領域18は、α≦30°の角度で角度付けされて形成されている。ハウジング凹部16も、β≧60°の角度で角度付けされて形成されている。さらに高圧接続部10は、端領域18に、旋削加工部20を有する。ハウジング凹部16には、γ=90°の角度で角度付けされた段部22が形成されている。ハウジング凹部16に設けられたこの段部22と、高圧接続部10に設けられた旋削加工部20とは、互いに協働して自由空間24を形成する。この自由空間24には、溶接プロセスの間、溶接粒子が溜まり、この自由空間24内に捕集されたままになるので、溶接粒子が燃料高圧ポンプ14の系内に侵入して、損傷を引き起こすことはあり得ない。
【0034】
高圧接続部10には、流出弁26と圧力制限弁28とが配置されており、両弁のために、1つの共通の弁プレート30により、流出弁26用の第1のシール座32と、圧力制限弁28用の第2のシール座34とが、それぞれ提供されている。流出弁26は流出弁エレメント36を有し、この流出弁エレメント36はプレート状の弁エレメントとして形成されていて、平坦なシール面38を有する。このシール面38を介して、流出弁エレメント36は、弁プレート30と相互作用して、流出弁26を閉じるようになっている。流出弁エレメント36は、平坦なシール面38とは反対の側にガイド突出部40を有する。このガイド突出部40によって、流出弁エレメント36は、開放運動時にガイドスリーブ42内にガイドされる。
【0035】
ガイドスリーブ42は、高圧接続部10よりも硬い、熱調質された材料から形成されており、高圧接続部10内に圧入されている。ガイドスリーブ42の、流出弁エレメント36に向けられた端部は、内方に向けられたガイド突出部44を有する。このガイド突出部44は、流出弁エレメント36に設けられたガイド突出部40を全周にわたって取り囲んでおり、それによって流出弁エレメント36の半径方向ガイド46を提供している。これと同時に、ガイド突出部44は、軸方向ストッパ48を形成しており、こうして流出弁エレメント36の開放運動を制限している。したがって、摩耗を発生させ易い運動が行われるすべてのインタフェースが、熱調質されたガイドスリーブ42と、流出弁エレメント36との間に配置されているので、高圧接続部10の摩耗は生じない。
【0036】
ガイドスリーブ42の、流出弁エレメント36から離反する方向に向けられた端部は、段部50を有する。この段部50には、流出弁エレメント36を閉鎖位置に戻すための戻しばね52が支持されている。したがって、段部50と、ガイドスリーブ42の、流出弁エレメント36に向けられた端領域との間の領域は、戻しばね52を保持し、かつ伸縮時にガイドする、ばね収容領域54を形成している。
【0037】
圧力制限弁28は、球状の圧力制限弁エレメント56を有する。この圧力制限弁エレメント56は、弁プレート30に設けられた第2のシール座34と協働して、圧力制限弁28を閉じるようになっている。圧力制限弁エレメント56は、閉鎖位置に向かって戻しばね58によってプリロードをかけられている。戻しばね58と圧力制限弁エレメント56との間には、ガイド・保持ピン60が配置されている。ガイド・保持ピン60は、圧力制限弁エレメント56の運動をガイドし、かつガイド・保持ピン60には、戻しばね58が支持されている。戻しばね58の、圧力制限弁エレメント56とは反対側に配置された端部では、戻しばね58がばね支持体62に支持されており、このばね支持体62は、高圧接続部10内に圧入されていて、軸方向で高圧接続部10の端領域18を超えて突出している。ばね支持体62は、ハウジング凹部16内に、隙間嵌めによって配置されており、この場合、ハウジング凹部16とばね支持体62との間には、約0.03〜0.07mmの遊びが存在する。ばね支持体62も、高圧接続部10よりも硬い材料から形成されている。
【0038】
流出弁26と圧力制限弁28とは、同軸的に高圧接続部10に配置されているので、半径方向で構成スペースを節約することができる。このために、流出弁エレメント36と、圧力制限弁エレメント56と、弁プレート30に設けられた第1の通過開口64と、流出弁エレメント36に設けられた第2の通過開口66とが、互いに対して同軸的に配置されている。弁プレート30はさらに、複数の通流開口68を有する。これらの通流開口68は、第1の通過開口64を均一に環状に取り囲むように配置されている。
【0039】
作動中に、燃料は、燃料高圧ポンプ14のポンプハウジング12内で高圧を付与され、次いで、ハウジング凹部16を介して圧力制限弁28を通じてガイド・保持ピン60の傍らを通って、弁プレート30に設けられた通流開口68へ流れ込み、戻しばね52のばね力に抗して、流出弁26に作用する。戻しばね52が緊縮され、流出弁エレメント36が第1のシール座32から持ち上げられると、高圧付与された燃料が高圧領域70へ流入することができる。ポンプハウジング12を起点として燃料の圧力が下がると、戻しばね52は再び伸張して、流出弁エレメント36を第1のシール座32に押圧するので、流出弁26は閉じられる。次に、高圧領域70における圧力が、圧力制限弁28の開放圧に相当する、予め規定された値を上回ると、流出弁エレメント36に設けられた第2の通過開口66と弁プレート30に設けられた第1の通過開口64とを介して、圧力が圧力制限弁エレメント56に作用するので、この圧力制限弁エレメント56は、戻しばね58のばね力に抗して、第2のシール座34から持ち上げられる。高圧領域70における過度に高い圧力は、これによりポンプハウジング12内へ逃がされる。
【0040】
弁プレート30が図2に斜視図で示されている。この場合、弁プレート30は、流出弁26の側から見た図として示されている。均一に環状に配置された複数の通流開口68が、全周にわたって延びる環状通路72に開口していることが判る。環状通路72は、2つの環状のシール面74の間に配置されており、この2つの環状のシール面74は、流出弁エレメント36の平坦なシール面38と協働する。通流開口68のこのような配置形式により、流出弁エレメント36は、比較的低い通流速度の流れによって取り囲まれるので、流出弁26の開放速度が低減され、ひいては軸方向ストッパ48に対する衝突衝撃が低減される。
【0041】
弁プレート30は、ガイドスリーブ42と同様に、同じく高圧接続部10内に圧入されて、かしめられて取り付けられている。これにより、弁プレート30が、組付け時に変形する危険が生じる。このことを阻止するために、弁プレート30は、環状通路72とは反対の側に環状の負荷軽減溝76を有し、この負荷軽減溝76は、組付け時のプレス力およびかしめ力を吸収し、かつ導出する。この負荷軽減溝76は、図3の弁プレート30の斜視図に示されている。
【0042】
全体として、高圧接続部10ならびにこの高圧接続部10内に持ち込まれた弁、すなわち流出弁26および圧力制限弁28の上記構造により、組立ての完了した1つのコンポーネントを提供することができる。このコンポーネントは、既に燃料高圧ポンプ14への組付け前に検査することができる。コンポーネント全体を、溶接のような簡単な接合方法によって、ポンプハウジング12に取り付けることができる。なぜならば、高圧接続部10自体は、容易に溶接可能な軟らかい材料から形成されているからである。それにもかかわらず、コンポーネントの摩耗し易さを低く抑えることができる。なぜならば、ガイドスリーブ42およびばね支持体62ならびに弁プレート30が、熱調質された材料から製造されていて、高圧接続部10内に圧入されているからである。こうしてガイドスリーブ42およびばね支持体62ならびに弁プレート30は、通常では摩耗し易いインタフェースが存在する領域を形成している。
図1
図2
図3