【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、加入者系光アクセスシステムとして、受動光ネットワーク(PON:Passive Optcial Network)が主流となっている。PONでは、1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)が、光ファイバ及びスターカプラを介して接続されていて、1つのOLTを複数のONUが共有する。PONでは、OLTからONUへ向けた下り通信とONUからOLTに向けた上り通信とが相互に干渉し合わないように、下り通信に使われる光信号波長と上り通信に使われる光信号波長とを違えている。
【0003】
従って、下り通信と上り通信のそれぞれに使われる互いに波長の異なる光信号を分波し、かつ合波するために合分波素子が必要である。一般に、OLTやONUは、波長の異なる光信号を送受信する機能を実現させるために、合分波素子としての光波長フィルタ、フォトダイオード(PD:Photodiode)、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)を空間結合して構成される。
【0004】
空間結合させるためには、光波長フィルタ、PD、LD間で光軸を合わせるためのアライメント作業が必要となる。これに対し、この光軸合わせのための作業を不要とするため、導波路を利用して構成される光波長フィルタが開発されている。また、この光波長フィルタを形成するに当たり、小型化と量産性に優れることから、シリコン系素材を導波路材料として用いるシリコン(Si)導波路が注目されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
Si導波路では、実質的に光の伝送路となる光導波路コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ等を材料としたクラッドで、光導波路コアの周囲を覆う。このような構成により、光導波路コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、光導波路コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、光デバイス全体の小型化に有利である。
【0006】
また、Si導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
【0007】
ところで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を利用したPONでは、ONUごとに異なる受信波長が割り当てられる。OLTは、各ONUへの下り光信号を、送り先の受信波長に対応した送信波長でそれぞれ生成し、これらを多重して送信する。各ONUは、複数の波長で多重された下り光信号から、自身に割り当てられた受信波長の光信号を選択的に受信する。ONUでは、各々の受信波長の下り光信号を選択的に受信するために、光波長フィルタが使用される。そして、光波長フィルタを、上述したSi導波路によって構成する技術が実現されている。
【0008】
Si導波路を用いる光波長フィルタとしては、例えば、マッハツェンダー干渉器を用いたものやアレイ導波路グレーティングを用いたものがある。また、Si導波路を用いる光波長フィルタとして、リング共振器(例えば特許文献6〜8参照)や、グレーティング型(例えば特許文献9参照)又は方向性結合器型(例えば特許文献10参照)の光波長フィルタがある。これらの光波長フィルタは、出力波長を可変にでき、素子構造が簡単であるため使いやすいという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0023】
(第1光波長フィルタ)
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る光波長フィルタ(以下、第1光波長フィルタ)を説明する。
図1は、第1光波長フィルタを説明するための模式図である。
図1(A)は、第1光波長フィルタを示す概略平面図である。また、
図1(B)は、
図1(A)に示す第1光波長フィルタをI−I線で切り取った概略的端面図である。ここで、
図1(A)では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
【0024】
なお、以下の説明では、各構成要素について、光伝播方向に沿った方向を長さ方向とする。また、支持基板の厚さに沿った方向を厚さ方向とする。また、長さ方向及び厚さ方向に直交する方向を幅方向とする。
【0025】
第1光波長フィルタは、支持基板10、クラッド20、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40を備えて構成されている。
【0026】
支持基板10は、例えば単結晶Siを材料とした平板状体で構成されている。
【0027】
クラッド20は、支持基板10上に、支持基板10の上面10aを被覆して形成されている。クラッド20は、例えば酸化シリコン(SiO
2)を材料として形成されている。
【0028】
第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40は、支持基板10の上面10aに平行に、クラッド20中に埋設されている。
【0029】
第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40は、SiO
2のクラッド20の屈折率(1.45)よりも高い屈折率(3.5)を有する、例えばシリコン(Si)を材料として形成されている。その結果、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40は、光の伝送路として機能し、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40に入力された光は、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の平面形状に応じた伝播方向に伝播する。
【0030】
第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の厚みは、深さ方向でシングルモード条件を達成できる値である、200〜500nmであることが望ましい。例えば、1550nmの波長帯域で使用する場合は、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の厚みを300nmにすることができる。
【0031】
ここで、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40を伝播する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40は、支持基板10から少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
【0032】
第1光波長フィルタには、偏波変換部90が設けられている。偏波変換部90では、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40が、所定の間隔で並列配列、この例では、互いに平行に、近接して配置されている。
【0033】
偏波変換部90では、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40は、互いに幅が異なっている。ここでは、第1光導波路コア30の幅を、第2光導波路コア40の幅よりも広く設定している。対称モードのTM偏波は、幅の広い導波路、ここでは、第1光導波路コア30に励起される。一方、反対称モードのTE偏波は、幅の狭い導波路、ここでは、第2光導波路コア40に励起される。
【0034】
なお、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の幅の差が大きいほど、励起される導波路への光の集中度合いが大きくなる。
【0035】
偏波変換部90の第2光導波路コア40には、グレーティングが形成されている。偏波変換部90の第2光導波路コア40は、基部42と突出部44a及び44bとを一体的に含んで構成されている。基部42は、一定の幅で、光の伝播方向に沿って延在して形成されていて、突出部44a及び44bは、基部42の両側面42a及び42bに、同じ周期Λで、周期的に複数形成されていて、いわゆるグレーティングを構成する。
【0036】
基部42の一方の側面(この例では、42a)に形成された突出部44aと、他方の側面(この例では、42b)に形成された突出部44bとは、半周期(すなわちΛ/2)ずらして配置されている。すなわち、長手方向のある位置について、一方の側面42aに突出部44aが配置されているとき、他方の側面42bに突出部44bが配置されておらず、一方の側面42aに突出部44aが配置されていないとき、他方の側面42bに突出部44bが配置されている。この結果、グレーティングは、左右で反対称となっている。
また、基部42と、突出部44a及び44bとは、同じ厚さで形成されている。
【0037】
光の伝播方向に隣り合う突出部44a又は44bの間のグレーティング溝の底部には、スラブ導波路46として、基部42と、突出部44a及び44bより小さい厚さのSiが形成されている。この結果、偏波変換部90の第2光導波路コア40とその周囲のクラッド20とで構成される、グレーティングを有する光導波路は、上下で非対称となっている。
【0038】
なお、
図1(A)では、突出部44a又は44bの間以外のところにもスラブ導波路46が形成されている例を示しているが、これに限定されない。スラブ導波路46が、突出部44a又は44bの間にのみ存在する構成にしても良い。あるいは、スラブ導波路46の幅を大きくしても良い。
【0039】
グレーティングの上下非対称の構造が、TE偏波とTM偏波の間の回折に必要である。また、グレーティングを左右反対称に構成することで、基本モードのTE偏波と、基本モードのTM偏波の回折が起きるようにする。この基本モードのTE偏波と、基本モードのTM偏波の組み合わせを選ぶことで、他のモードへの回折が生じるのを抑制できる。
【0040】
ここでは、スラブ導波路46を備えることで、グレーティングを上下非対称にする構成を説明したが、これに限定されない。第2光導波路コア40の側面が、支持基板10の上面10aに対して傾いて形成されている、斜め側壁構造にしてもよい。また、クラッドの、グレーティングが形成されている第2光導波路コア40の上側の部分が空気であってもよい。
【0041】
グレーティングでの位相整合条件は、ブラッグ波長をλ0、グレーティング周期をΛ、TE偏波の反対称モードの等価屈折率をNTE0、TM偏波の対称モードの等価屈折率をNTM0として、以下の式(1)で表すことができる。
【0042】
2π(NTE0+NTM0)/λ0=2π/Λ (1)
上記式(1)を満足する設計にすると、波長λ0で、反対称モードのTE偏波と、対称モードのTM偏波の回折が起きる。
【0043】
第1光導波路コア30の一方の端部である入力端30aに、第1入力導波路52が接続されている。また、第1光導波路コア30の他方の端部である出力端30bに、第1出力導波路62が接続されている。同様に、第2光導波路コア40の一方の端部である入力端40aに、第2入力導波路54が接続されている。また、第2光導波路コア40の他方の端部である出力端40bに、第2出力導波路64が接続されている。第2光導波路コア40の入力端40aは、第1光導波路コア30の出力端30bと同じ側に配置され、第2光導波路コア40の出力端40bは、第1光導波路コア30の入力端30aと同じ側に配置されている。
【0044】
なお、第2入力導波路54及び第2出力導波路64と、第2光導波路コア40との間をスムーズにつなぐため、スラブ導波路46の、第2光導波路コア40の入力端40a側及び出力端40b側の双方に、スラブ導波路46と同じ厚さの幅テーパ導波路76が設けられている。
【0045】
この第1光波長フィルタの第1入力導波路52から、基本モードのTM偏波を入力すると、第1光導波路コア30に主に光が存在する、対称基本モードが励起される。第1光導波路コア30を伝播する光は、グレーティングの作用により、第2光導波路コア40に主に光が存在する、TE偏波の反対称基本モードに回折反射される。第2光導波路コア40を伝播するTE偏波は、第2出力導波路64から出力される。回折反射されない光は、第1光導波路コア30をそのまま伝播し、第1出力導波路62から出力される。
【0046】
図2を参照して、第1光波長フィルタの他の構成例を説明する。
図2は、第1光波長フィルタの他の構成例を示す概略平面図である。
図2では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
【0047】
図1に示す実施形態では、第1光導波路コア30の幅を、第2光導波路コア40の幅よりも大きく設定しているが、
図2に示す実施形態では、偏波変換部190において、第1光導波路コア130の幅を、第2光導波路コア140の幅より小さく設定している。
【0048】
この第1光波長フィルタの他の構成例の第1入力導波路52から、基本モードのTE偏波を入力すると、第1光導波路コア130に主に光が存在する、TE偏波の反対称基本モードが励起される。第1光導波路コア130を伝播する光は、グレーティングの作用により、第2光導波路コア140に主に光が存在する、TM偏波の対称基本モードに回折反射される。第2光導波路コア140を伝播するTM偏波は、第2出力導波路64から出力される。回折反射されない光は、第1光導波路コア130をそのまま伝播し、第1出力導波路62から出力される。
【0049】
図1及び
図2に示す実施形態では、スラブ導波路46を、光の伝播方向に隣り合う突出部の間に設けた例、すなわち、第2光導波路コアの両側に設けて第1光導波路コアの両側には設けない構成を示しているが、
図3に示すように、スラブ導波路を第1光導波路コア及び第2光導波路コアの間にわたって設けてもよい。
図3は、第1光波長フィルタの他の構成例を示す概略平面図である。
【0050】
図3(A)は、偏波変換部290において、第1光導波路コア230の幅を、第2光導波路コア240の幅よりも大きく設定している例を示し、
図3(B)は、偏波変換部390において、第1光導波路コア330の幅を、第2光導波路コア340の幅よりも小さく設定している例を示している。
図3に示す実施形態では、第1光導波路コア230及び330並びに第2光導波路コア240及び340の両側、及び、第1光導波路コア230及び330並びに第2光導波路コア240及び340の間にわたって、スラブ導波路246が設けられている。
【0051】
図3(A)及び(B)に示す構成例の光波長フィルタは、スラブ導波路の構成を除いて、それぞれ、
図1及び
図2に示す構成例の光波長フィルタと同様の構成なので説明を省略する。また、動作についても同様なので説明を省略する。
【0052】
電極70は、クラッド20を介して、第2光導波路コア(グレーティング)40の一部又は全部を被覆する位置に形成される。グレーティング上に電極70を形成しておくと、電極70に電流を流すことで、ジュール熱を発生して、熱光学効果によって、グレーティングの屈折率を変化させることができる。その結果、グレーティングにおいて位相整合条件を満たす波長を変化させることができる。
【0053】
なお、
図1(B)では、電極70がグレーティング上に設けられる例を示しているが、電極70の配置箇所はこれに限定されない。発熱によりグレーティングの屈折率を変化させる位置であればよく、第2光導波路コア40及びクラッド20により構成される光導波路の構造等に応じて、任意好適な箇所に配置することができる。
【0054】
(製造方法)
この光波長フィルタは、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、
図1に示す構成例の第1光波長フィルタの製造方法の一例を説明する。
【0055】
先ず、支持基板層、SiO
2層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばドライエッチングを2段階で行い、Si層をパターニングすることによって、厚みの大きい基部及び突出部と、厚みの小さいグレーティング溝の部分を形成する。この結果、支持基板10としての支持基板層上にSiO
2層が積層され、さらにSiO
2層上に第1光導波路コア30、第2光導波路コア40及びスラブ導波路46が形成された構造体を得ることができる。
【0056】
次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、SiO
2層上に、SiO
2を、第1光導波路コア30、第2光導波路コア40及びスラブ導波路46を被覆して形成する。その結果、クラッド20によって第1光導波路コア30、第2光導波路コア40及びスラブ導波路46が包含され、光波長フィルタとして用いられる光導波路素子が得られる。
【0057】
なお、ここでは、Si導波路の例を説明したが、化合物半導体を用いても実現可能である。
【0058】
(特性評価)
図4及び
図5を参照して、3次元FDTD(Finite Difference Time Domain)を用いて行った、第1光波長フィルタの特性を評価するシミュレーションを説明する。
【0059】
図4及び
図5では、横軸に波長(nm)を取って示し、縦軸に出力強度(dB)を取って示している。
【0060】
図4(A)は、
図1に示す構成例に対するシミュレーション結果である。
図4(A)では、第1入力導波路52にTM偏波を入力したとき、第1出力導波路62から出力されるTM偏波を曲線Iで示し、第2出力導波路64から出力されるTE偏波を曲線IIで示している。
【0061】
ここで、第1光導波路コア30の幅を500nmとし、第2光導波路コア40の幅を300nmとしている。なお、第2光導波路コア40の幅は、基部42と突出部44a及び44bを含めた構造の、平均的な幅である。また、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の厚みを220nmとし、スラブ導波路46の厚みを150nmとしている。
【0062】
グレーティングの周期Λを414nmとし、グレーティングの掘り込み、すなわち、突出部の幅方向の長さを150nmとしている。さらに、第1光導波路コア30及び第2光導波路コア40の間隔を400nmとしている。このとき、スラブ導波路46と第1光導波路コア30の間隔は325nmである。
【0063】
図4(A)に示すように、
図1に示す構成例では、第2出力導波路64から特定波長のTE偏波を取り出すことができる。
【0064】
図4(B)は、
図2に示す構成例に対するシミュレーション結果である。
図4(B)では、第1入力導波路52にTE偏波を入力したとき、第1出力導波路62から出力されるTE偏波を曲線Iで示し、第2出力導波路64から出力されるTM偏波を曲線IIで示している。
【0065】
ここで、第1光導波路コア130の幅を300nmとし、第2光導波路コア140の幅を500nmとし、グレーティングの周期Λを439nmとしている。その他の条件は、
図4(A)と同じなので説明を省略する。
【0066】
図4(B)に示すように、
図2に示す構成例では、第2出力導波路64から特定波長のTM偏波を取り出すことができる。
図4(A)と
図4(B)を比較すると、
図1に示す構成例に対応する
図4(A)では、
図4(B)に比べて、ピークの高さが高くなり、回折効率が優れている。また、不要なピークの発生が抑えられている。
【0067】
図5(A)は、
図3(A)に示す構成例に対するシミュレーション結果である。
図5(A)では、第1入力導波路52にTM偏波を入力したとき、第1出力導波路62から出力されるTM偏波を曲線Iで示し、第2出力導波路64から出力されるTE偏波を曲線IIで示している。
【0068】
ここで、第1光導波路コア230の幅を500nmとし、第2光導波路コア240の幅を300nmとしている。また、第1光導波路コア230及び第2光導波路コア240の厚みを220nmとし、スラブ導波路246の厚みを150nmとしている。
【0069】
グレーティングの周期Λを373nmとし、グレーティングの掘り込み、すなわち、突出部の幅方向の長さを150nmとしている。また、第1光導波路コア230及び第2光導波路コア240の間隔を500nmとしている。
【0070】
図5(A)に示すように、
図3(A)に示す構成例では、第2出力導波路64からTE偏波が1600nm付近に予定通りに取り出されている。なお、第1出力導波路62からの出力として、所望な特性は得られていない。しかし、第1光波長フィルタのこの構成例は、特定の波長の偏波変換に限定すれば使用可能である。
【0071】
図5(B)は、
図3(B)に示す構成例に対するシミュレーション結果である。
図5(B)では、第1入力導波路52にTE偏波を入力したとき、第1出力導波路62から出力されるTE偏波を曲線Iで示し、第2出力導波路64から出力されるTM偏波を曲線IIで示している。
【0072】
ここで、第1光導波路コア330の幅を300nmとし、第2光導波路コア340の幅を500nmとし、グレーティングの周期Λを375nmとしている。その他の条件は、
図5(A)と同じなので説明を省略する。なお、第1光導波路コア330及び第2光導波路コア340の間隔を500nmとしている。
【0073】
図5(B)に示すように、
図3(B)に示す構成例では、第2出力導波路64からTM偏波が1600nm付近に予定通りに取り出されている。なお、メインの回折ピークの両脇に別の次数への不要な回折ピークがみられるが、ある程度抑えられている。
【0074】
また、
図1及び
図2に示す構成に比べて、
図3(A)及び(B)に示す構成は、スラブ導波路の幅が広く設定されている。このため、ドライエッチングを2段階で行う際の位置合わせに対する自由度が高くなるなど、製造が容易になる。
【0075】
以上説明したように、第1光波長フィルタは、グレーティングでの位相整合条件を満たす、特定の波長の光を、TE偏波及びTM偏波の間で、偏波変換して出力する、偏波変換型の光波長フィルタとして機能する。ここで、スラブ導波路の幅を狭くすると、特に、グレーティングでの、TM偏波からTE偏波又はTE偏波からTM偏波への回折効率を向上させることができる。また、スラブ導波路の幅を広くすると、製造が容易になる。
【0076】
(第2光波長フィルタ)
図6を参照して、この発明の第2実施形態に係る光波長フィルタ(以下、第2光波長フィルタ)を説明する。
図6は、第2光波長フィルタを説明するための模式図である。
図6は、第2光波長フィルタを示す概略平面図である。ここで、
図6では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
【0077】
第2光波長フィルタは、直列に接続された、第1素子91及び第2素子92を備えて構成される。ここで、第1素子91及び第2素子92は互いに同じ構成であり、上述した第1光波長フィルタの偏波変換部が用いられる。
図6では、
図1を参照して説明した第1光波長フィルタの偏波変換部を用いる場合を示している。
【0078】
ここでは、第1素子91及び第2素子92における、第1光導波路コア31及び32の幅を、第2光導波路コア41及び42の幅よりも大きく設定している。
【0079】
第1素子91が備える第1光導波路コア31の出力端31bと、第2素子92が備える第2光導波路コア42の入力端42aとが接続される。また、第1素子91が備える第2光導波路コア41の入力端41aと、第2素子92が備える第1光導波路コア32の出力端32bとが接続されている。
【0080】
第1素子91の第1光導波路コア31と第2素子92の第2光導波路コア42の間、及び、第1素子91の第2光導波路41と第2素子92の第1光導波路コア32の間での光の損失を減らすために、幅テーパ導波路74を用いるのがよい。この場合、第1素子91の第1光導波路コア31の出力端31bに、幅テーパ導波路74を介して、第2素子92の第2光導波路コア42の入力端42aが接続される。また、第1素子91の第2光導波路コア41の入力端41aに、幅テーパ導波路74を介して、第2素子92の第1光導波路コア32の出力端32bが接続される。幅テーパ導波路74の幅の同じ部分において、光が導波路間で移行するのを防止するためには、幅テーパ導波路74間に低屈折率領域78を設けたり、曲線導波路をつないで導波路間隔を広げたりするなどの工夫が必要である。
【0081】
また、第1素子91の第1光導波路コア31の入力端31aに、第1入力導波路52が接続されている。また、第2素子92の第2光導波路コア42の出力端42bに、第1出力導波路62が接続されている。同様に、第2素子92の第1光導波路コア32の入力端32aに、第2入力導波路54が接続されている。また、第1素子91の第2光導波路コア41の出力端41bに、第2出力導波路64が接続されている。
【0082】
第2光波長フィルタでは、第1入力導波路52から、基本モードのTE偏波及びTM偏波を入力すると、第1素子91において、特定の波長のTM偏波が回折されてTE偏波に変換される。この変換されたTE偏波は、第1素子91の第2導波路コア41を伝播し、第2出力導波路64から出力される。第1入力導波路52に入力されたTE偏波は、第1素子91の第1光導波路コア31をそのまま伝播し、第2素子92の第2光導波路コア42に入力される。
【0083】
第2素子92では、特定の波長のTE偏波が回折されてTM偏波に変換される。この変換されたTM偏波は、第2素子92の第1光導波路コア32を伝播し、第1素子91の第2光導波路コア41に送られる。第1素子91に送られたTM偏波は、第1素子91の第2光導波路コア41を伝播し、第2出力導波路64から出力される。
【0084】
この結果、第2出力導波路64からは、特定波長のTE偏波及びTM偏波が出力される。このように、第2光波長フィルタは、偏波無依存型の光波長フィルタとして機能する。