特許第6771641号(P6771641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771641
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ロータ軸およびロータ軸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20201012BHJP
   F01D 5/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F01D25/00 X
   F01D25/00 L
   F01D25/00 F
   F01D5/02
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-501579(P2019-501579)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公表番号】特表2019-527315(P2019-527315A)
(43)【公表日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】EP2017067097
(87)【国際公開番号】WO2018011081
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】16179383.1
(32)【優先日】2016年7月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ブルスク
(72)【発明者】
【氏名】トルステン−ウルフ・ケルン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ルイトル
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−211288(JP,A)
【文献】 特開昭61−235543(JP,A)
【文献】 米国特許第06049979(US,A)
【文献】 特表2009−520603(JP,A)
【文献】 特開平07−214308(JP,A)
【文献】 特開昭62−034671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/02;25/00
B23K 9/00;31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンのタービンロータのためのロータ軸(1)であって、
第一の材料から成る軸ベース部材(2)と、第二の材料から成るとともに前記軸ベース部材(2)に取り付けられた少なくとも一つのリング(15,16,23,24)と、を有し、
前記第二の材料は、前記第一の材料と同一の強度もしくは前記第一の材料より高い強度および/または前記第一の材料より高い耐食性を有し、
前記リング(15,16,23,24)には少なくとも一つの翼溝(18)が形成されており、前記リング(15,16,23,24)は、ナローギャップ溶接部を用いて前記軸ベース部材(2)と材料的に一体式に結合され、
前記リング(15,16,23,24)は、0.10重量%−0.30重量%のC、1.0重量%−6.0重量%のCr、3.0重量%−6.0重量%のNiの組成を有し、
前記リング(15,16,23,24)は、前記ナローギャップ溶接部である少なくとも一つの溶接継ぎ目(17)を介して前記軸ベース部材(2)と結合されており、前記溶接継ぎ目(17)は、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある2つの外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに前記2つの外側部分の間にある中央部分と、を有し、前記第一の溶接材料は前記第二の溶接材料より高い耐食性を有するロータ軸(1)。
【請求項2】
前記リング(15,16,23,24)は、圧延品または鍛造品である請求項1に記載のロータ軸(1)。
【請求項3】
前記ロータ軸(1)が、少なくとも二つのリング(15,16,23,24)であって、前記軸ベース部材(2)の軸端部(9,10)に向かってオフセットされて設けられるとともに、前記軸ベース部材(2)に取り付けられている、少なくとも二つのリング(15,16,23,24)を有し、前記軸端部(9,10)に対してより近くに設けられているとともにリング(23,24)を担持する、前記軸ベース部材(2)の取り付け部分(5,8)の外径(11,13)は、前記軸端部(9,10)からさらに遠くに設けられているとともに他のリング(15,16)を担持する、前記軸ベース部材(2)の取り付け部分(6,7)の外径(12,14)よりも小さい、請求項1または2に記載のロータ軸(1)。
【請求項4】
タービンのタービンロータのロータ軸(1)を製造するための方法であって、
第一の材料から軸ベース部材(2)を製造するステップと、
第二の材料から少なくとも一つのリング(15,16,23,24)を製造するステップであって、前記第二の材料は、前記第一の材料と同一の強度もしくは前記第一の材料より高い強度および/または前記第一の材料より高い耐食性を有する、ステップと、
前記リング(15,16,23,24)を前記軸ベース部材(2)に取り付けるステップと、
ナローギャップ溶接を用いて前記リング(15,16,23,24)を前記軸ベース部材(2)に材料的に一体式に結合するステップと、
前記リング(15,16,23,24)に少なくとも一つの翼溝(18)を形成するステップと、を有し、
前記リング(15,16,23,24)は、溶接の前に、550℃と630℃の間の温度で熱処理を受け、
前記リング(15,16,23,24)の溶接後、580℃と650℃の間の温度で熱処理が実施され
前記リング(15,16,23,24)は、前記ナローギャップ溶接を用いて作り出された少なくとも一つの溶接継ぎ目(17)を介して前記軸ベース部材(2)と材料的に一体式に結合され、前記溶接継ぎ目(17)は、当該溶接継ぎ目(17)が、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある2つの外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに前記2つの外側部分の間にある中央部分と、を有するように製造され、前記第一の溶接材料は前記第二の溶接材料より高い耐食性を有する方法。
【請求項5】
前記溶接継ぎ目(17)の溶接継ぎ目基底部は、少なくとも部分的に、前記リング(15,16,23,24)と前記軸ベース部材(2)との間の間隙の外側に形成される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナローギャップ溶接は、電子ビーム溶接またはIG溶接またはMAG溶接を用いて実施される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ナローギャップ溶接は、前記リング(15,16,23,24)に対して最も近くに設けられている前記軸ベース部材(2)の軸端部(9,10)に対向する側から実施される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リング(15,16,23,24)は、前記ナローギャップ溶接の前に、少なくとも一つのセンタリング手段を介して、前記軸ベース部材(2)に対して同軸的に位置調整される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記リング(15,16,23,24)は、前記ナローギャップ溶接の終了後、後熱処理を受ける、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リング(15,16,23,24)は、圧延または鍛造によって製造される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リング(15,16,23,24)は、前記リング(15,16,23,24)の目標幅よりも大きい幅を有して製造され、前記リング(15,16,23,24)の前記幅は、前記ナローギャップ溶接の終了後、および前記リング(15,16,23,24)の検査後に、材料除去によって前記目標幅まで減らされる、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも二つのリング(15,16,23,24)は、前記軸ベース部材(2)の軸端部(9,10)に向かってオフセットされて前記軸ベース部材(2)に取り付けられ、前記軸ベース部材(2)は、前記軸端部(9,10)に対してより近くに設けられているとともにリング(23,24)を担持する、前記軸ベース部材(2)の取り付け部分(5,8)の外径(11,13)が、前記軸端部(9,10)からさらに遠くに設けられているとともに他のリング(15,16)を担持する、前記軸ベース部材(2)の取り付け部分(6,7)の外径(12,14)よりも小さいように製造される、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン、特に蒸気タービンのタービンロータのためのロータ軸に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、また、タービン、特に蒸気タービンのタービンロータのロータ軸を製造するための方法に関する。
【0003】
蒸気タービンは、回転可能に支承されたタービンロータを含み、タービンロータはロータ軸を有し、ロータ軸には、複数の動翼列が軸方向において互いに離間して設けられている。動翼はそれぞれ動翼基底部を含み、動翼基底部は、それぞれの動翼をロータ軸に固定するために、ロータ軸においてそれぞれの動翼列に関連付けられた翼溝に挿入されている。このために、動翼基底部は、通常、断面において樅ノ木形状に形成された基底部部分を有し、翼溝は断面において基底部部分を補完するように形成されている。
【0004】
蒸気タービン、特に低圧蒸気タービンのタービンロータは蒸気タービンの作動中に様々な応力を受ける。例えば軸方向において外側にある翼列の翼溝内では、非常に大きい引張応力が生じる。加えて蒸気タービンを貫流する湿った蒸気ゆえに応力腐食が生じ、応力腐食は、タービンロータの高負荷領域において、応力腐食割れを促進しかねない。
【0005】
加えて、モノブロックの形態での、もしくはロータ軸を形成するために互いに結合可能な軸モジュールの形態での一体式ロータ軸を、それぞれ必要な寸法で相応の技術的材料特性を有して製造できることが保証されている点が重要である。したがって完成したロータ軸もしくは軸モジュールのための材料選択は、主に、ロータ軸の最も大きい負荷のかかる領域の要求に従って行われる。このような領域は、できる限り高品質であるがコストもかさむ材料を用いて製造されると想定される。ロータ軸もしくは軸モジュールにおける負荷がより小さい領域に、このように高品質の材料を用いる必要はない。したがって完成したロータ軸のため、もしくは軸モジュールのための材料選択は、通常、比較的高価な材料と、それぞれの要求に適合させられた比較的廉価な材料と、の妥協になる場合が多い。
【0006】
ロータ軸は、従来、モノブロックとして単体から、あるいは互いに溶接されたディスク状もしくはシリンダ状の軸モジュールから製造されている。低圧ロータ領域のための典型的な材料は、(2.8−3.5)NiCrMoV鋼であるが、1CrMoV鋼あるいは2CrMoWV鋼もある。このような鋼は、複合型中低圧ロータ軸に対して用いられるが、ロータ軸直径に応じて実現可能な特性において制限を受ける。
【0007】
靭性レベルが最も優れていて、最高の強度を提供するのは、3.5NiCrMoV鋼である。しかしながらそれぞれのモノブロックもしくは軸モジュールの質量および直径が大きいためにこれらの材料も、例えば、鍛造、および焼き入れ・焼き戻しのための熱処理といった製造技術上応用される製造方法ゆえに、当該材料の実現可能な強度と、モノブロックもしくは軸モジュールの断面にわたる均一性と、において限界がある。3.5NiCrMoVロータ軸材料のさらなる展開レベルは、「スーパークリーン」変化形態であるが、これは、純粋性が要求されかつ製造複雑性が増大するために、はるかに高価なものになる(およそ10%から20%)。制限となる要因はまた、この材料のための供給者ベースが限定されている点である。
【0008】
長期にわたり作動の負荷を受けた低圧ロータ軸、もしくは軸方向において外側にある翼列段の翼溝内に亀裂を有するロータ軸を再加工する際、腐食の負荷を受けたロータ軸を補強もしくは形態修正することは、静的強度、振動強度(低サイクル疲労(Low Cycle Fatigue))、周期的流動曲線、および無欠陥性の点で、3.5NiCrMoV材料の本来設計された特性をもってしては、従来不可能であった。翼溝の全ての段を肉盛溶接するという非常に高価なやり方でも、鍛造材料の通常の特性は得られず、溶接欠陥の危険性は確実である。こうなると、臨界的な亀裂深度に達するまで作動を続けるか、ロータ軸鍛造材を完全に交換するかのいずれかしかない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、タービンのタービンロータのためのロータ軸であって、当該ロータ軸の特性がコスト効率のよいやり方で、それぞれの要求に個々に適合されている、ロータ軸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は独立請求項により達成される。有利な構成は、以下の詳細な説明と従属請求項と図面とに記載されており、これらはそれぞれ単独で、または少なくとも二つの構成を互いに様々に組み合わせて、本発明の発展的な態様、特にまた好適または有利な態様を表すことができる。
【0011】
本発明に係る、タービン、特に蒸気タービンのタービンロータのためのロータ軸は、第一の材料から成る軸ベース部材と、第二の材料から成るとともに軸ベース部材に取り付けられた少なくとも一つのリングと、を含み、第二の材料は、第一の材料と同一の強度もしくは第一の材料より高い強度および/または第一の材料より高い耐食性を有し、リングには少なくとも一つの翼溝が形成されており、リングは、ナローギャップ溶接を用いて軸ベース部材と材料的に一体式に結合されている。
【0012】
本発明によれば、ロータ軸の特性は、部分的に、特に低圧領域内、例えば軸方向において外側の翼溝の領域内で、それぞれの要求と、生じている負荷と、に適合させることができ、その適合は、少なくとも一つのリングが軸ベース部材に取り付けられ、当該リングの材料特性は軸ベース部材の材料特性と異なり、特により高い機械的負荷および/または腐食性負荷に関して最適化されていることによって行われる。特にリングの材料特性は、実質的に軸ベース部材の材料特性から独立して、機械的特性および/または腐食特性に関して最適化することができる。高強度で、かつ/またはより耐食性が高く、それにより通常はより高価な第二の材料の使用がリングに限定されているために、軸ベース部材は最適化されるとともに場合により、よりコスト効率のよい第一の材料から製造することができ、それは従来のモノブロック製造に比べてコスト低減につながりやすい。本発明に応じて、より腐食に耐え、もしくは耐食性がより大きい、かつ/または強度がより大きい第二の材料を用いることは、特に低圧流出部にあって湿度の割合が高い、タービンの翼溝領域において有利である。
【0013】
本発明によれば、リングは、それぞれの応用事例に適合された材料特性を備える低温の低圧終端翼溝を形成するために用いることができる。リングは、そのためにナローギャップ溶接を用いて、軸ベース部材の周囲に材料係合式に固定されている。リングは、ロータ軸の材料を、リングにおいて形成された翼溝の領域内で、例えば高い静的強度、最適なLCF挙動、および/または高いレベルの耐食性といったそれぞれの要求に適合させることを可能性にする。
【0014】
リングの体積もしくは断面がより小さいことにより、リングは従来の鍛造法または圧延法を用いて、より均一に、より高いレベルの強度を有して、例えば組織の粒子がより細かく、純粋度がより優れており、LCF特性がより良好であるといった状態で製造することができ、これは、従来のモノブロックまたは軸モジュールでは、これらのために用いられる製造方法および物理的境界条件ゆえに不可能である。
【0015】
本発明によりリングの領域内で、ロータ軸における材料特性の径方向の勾配を生じさせることができる。勾配は、例えば、ロータ軸の表面から、ロータ軸の長手方向中心軸線へと生じさせることができる。中低圧ロータ軸または高中低圧ロータ軸を、モノブロックとして(1−2)CrMoVから構築し、0番目の翼列の爪材料をリングとして取り付けてもよい。
【0016】
本発明に応じて少なくとも一つのリングを軸ベース部材に取り付けることはまた、応用事例に応じてそれぞれの最終段の大きさに対して厚さおよび/または幅の異なるリングが、寸法を統一されたロータ軸ベース部材に取り付けられることにより、ロータ軸を標準化する可能性を提供する。
【0017】
軸ベース部材は新規製造の過程で製造されてよい。軸ベース部材は、代替的に、既存の、特に中古のロータ軸の加工動作により、特に旋盤加工により形成されてよく、損傷を受けた翼溝が形成されている修理すべき部分は除去される。すでに用いられていて、亀裂が生じているロータ軸を修理する場合、当該ロータ軸は、ロータ軸の加工を介して製造された軸ベース部材にリングを取り付けることにより、形態修正することができる。軸ベース部材は、モノブロックとして、または互いに溶接された軸モジュールから製造されていてよい。リングは、肉盛溶接に比べて、少なくとも元のロータ軸と同等の特性を有する。したがって従来のロータ軸の腐食性の損傷を受けた翼溝、あるいは亀裂の生じた翼溝の修理を、コスト効率よく行うことができる。
【0018】
本発明に係るロータ軸は、相応に軸ベース部材に取り付けられた二つ以上のリングを有してよく、当該リングにそれぞれ少なくとも一つの翼溝が形成されている。
【0019】
リングは、好ましくは、ナローギャップ溶接を用いて作り出された少なくとも一つの溶接継ぎ目を介して軸ベース部材と結合されており、溶接継ぎ目は、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに外側部分同士の間にある中央部分と、を有し、第一の溶接材料は第二の溶接材料より高い耐食性を有する。これによりまず、第一の溶接材料から成る溶接継ぎ目基底部を製造することができ、当該溶接継ぎ目基底部は溶接継ぎ目の一方の外側部分を形成する。続いて溶接継ぎ目の中央部分を第二の溶接材料を用いて製造することができる。最終的に第一の溶接材料から成る被覆層を製造することができ、当該被覆層は溶接継ぎ目の他方の外側部分を形成する。第二の溶接材料は第一の溶接材料より高い強度を有してよい。これによりロータ軸の当該構成において、要求に見合った溶接継ぎ目特性の軸方向勾配を生じさせることが可能である。溶接継ぎ目は、径方向においてロータ軸のある深さ、もしくは相応の深さ領域であって、より小さい負荷を受ける、深さ領域まで延在する。溶接継ぎ目は径方向位置から非破壊式に、例えば超音波を用いて検査されるが、それは、音波ビームの好適な向きが、溶接継ぎ目における表示(例えば端部接合の欠陥)を可能とするために提供されるからである。
【0020】
リングは、好ましくは、0.10重量%−0.30重量%のC、1.0重量%−6.0重量%のCr、3.0重量%−6.0重量%のNiから構成されている。
【0021】
リングは、好ましくは、圧延または鍛造によって製造されている。リングは、特にリング圧延によって製造されていてよい。
【0022】
ロータ軸は、好ましくは、少なくとも二つのリングであって、軸ベース部材の軸端部に向かってオフセットされて設けられるとともに、軸ベース部材に取り付けられた、少なくとも二つのリングを含み、軸端部に対してより近くに設けられているとともにリングを担持する、軸ベース部材の取り付け部分の外径は、軸端部からさらに遠くに設けられているとともに他のリングを担持する、軸ベース部材の取り付け部分の外径よりも小さい。これに対応して、軸端部に対してより近くに設けられている取り付け部分に取り付けられたリングの内径は、軸端部からさらに遠くに設けられている取り付け部分に取り付けられたリングの内径よりも小さい。これにより、より大きい内径を有するリングが、軸端部からより大きい距離を有して軸ベース部材に嵌められ得ることが確実になる。
【0023】
タービン、特に蒸気タービンのタービンロータのロータ軸を製造するための本発明に係る方法は、
第一の材料から軸ベース部材を製造するステップと、
第二の材料から少なくとも一つのリングを製造するステップであって、第二の材料は、第一の材料と同一の強度もしくは第一の材料より高い強度および/または第一の材料より高い耐食性を有する、ステップと、
リングを軸ベース部材に取り付けるステップと、
ナローギャップ溶接を用いてリングを軸ベース部材に材料的に一体式に結合するステップと、
リングに少なくとも一つの翼溝を形成するステップと、を含んでいる。
【0024】
ロータ軸に関連して上記において挙げた有利点は、前記方法と相応に結びついている。特に上記の構成のうちの一つによるロータ軸、または上記の構成の少なくとも二つを互いに任意に組み合わせたものによるロータ軸は、前記方法を用いて製造することができる。ナローギャップ溶接は、軸ベース部材を垂直に向けてPA溶接位置で、または軸ベース部材を水平に向けてPC溶接位置で実施することができる。ナローギャップ溶接の間、リングはローラ―コンベアを用いて支持することができる。
【0025】
リングは、好ましくは、溶接の前に、550℃と630℃の間の温度で熱処理を受ける。リングの溶接後、ロータ軸は、好ましくは、580℃と650℃の間の温度で熱処理を受ける。
【0026】
リングは、好ましくは、ナローギャップ溶接を用いて作り出された少なくとも一つの溶接継ぎ目を介して軸ベース部材と材料的に一体式に結合されており、溶接継ぎ目は、当該溶接継ぎ目が、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに外側部分同士の間にある中央部分と、を有するように製造され、第一の溶接材料は第二の溶接材料より高い耐食性を有する。当該構成は、ロータ軸の対応する構成に関連して上記において挙げた有利点を相応に伴う。
【0027】
溶接継ぎ目の溶接継ぎ目基底部は、好ましくは、少なくとも部分的に、リングと軸ベース部材との間の間隙の外側に形成される。これにより溶接継ぎ目基底部は、部分的または完全に、ロータ軸の完成形状の外側に設けられている。軸方向における溶接継ぎ目端部、および結果的に少なくとも部分的に溶接継ぎ目基底部を後から除去することにより、溶接継ぎ目に沿って均一な機械的特性が生じる。
【0028】
ナローギャップ溶接は、好ましくは、電子ビーム溶接を用いて実施される。電子ビーム溶接は、好ましくは、還元された真空の下で実施される。ナローギャップ溶接は、代替的に、WIG溶接またはMAG溶接を用いて実施することができる。
【0029】
ナローギャップ溶接は、好ましくは、リングに対して最も近くに設けられている軸ベース部材の軸端部に対向する側から実施される。リングは、特に、リングに対してより近くに設けられている軸ベース部材の結合部側から、一気に軸ベース部材と溶接することができる。
【0030】
リングは、好ましくは、ナローギャップ溶接の前に、少なくとも一つのセンタリング手段を介して、軸ベース部材に対して同軸的に位置調整される。特に、基底部領域には好適なセンタリングが提供されていてよい。場合により、一時的な焼き嵌め接合を用いることができる。
【0031】
好ましくは少なくともリングは、ナローギャップ溶接の終了後、後熱処理を受ける。この局所的な後熱処理により、目標を定めてリングの機械的特性を調整することが可能である。このときリングの熱処理状態は、リングが後熱処理であって、その際に溶接結合部の熱処理も行うことができる、後熱処理の後に、必要とされる機械的特性を有しているように選択される。
【0032】
リングは、好ましくは、圧延または鍛造によって製造される。
【0033】
リングは、好ましくは、リングの目標幅よりも大きい幅を有して製造され、リングの幅はナローギャップ溶接の終了後、およびリングの検査後に、材料除去によって目標幅まで減らされる。したがって、まず製造されるリングの幅は、当該領域内で目指されるロータ軸の完成形状よりも大きい。熱処理後のリングの検査に続いて、ロータ軸の完成形状と異なるリングの材料領域は、リングを目標幅まで減少させるために除去することができる。
【0034】
少なくとも二つのリングは、好ましくは、軸ベース部材の軸端部に向かってオフセットされて軸ベース部材に取り付けられ、軸ベース部材は、軸端部に対してより近くに設けられているとともにリングを担持する、軸ベース部材の取り付け部分の外径が、軸端部からさらに遠くに設けられているとともに他のリングを担持する、軸ベース部材の取り付け部分の外径よりも小さいように製造される。当該構成は、ロータ軸の対応する構成に関連して上記において挙げた有利点を相応に伴う。
【0035】
以下において添付の図面を参照し、好適な実施の形態に基づいて例を挙げながら本発明を説明するが、以下に示される特徴はそれぞれ単独でも、互いに様々に組み合わせても、本発明の発展的な態様または有利な態様を表すことができる。図面に示すのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】最初の製造状態における本発明に係るロータ軸の実施の形態の概略的な長手方向断面を示す図である。
図2図1に示すロータ軸のさらなる製造状態における概略的な長手方向断面を示す図である。
図3図1に示すロータ軸のさらなる製造状態における概略的な長手方向断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、タービンのタービンロータのための、最初の製造状態における本発明に係るロータ軸1の実施の形態の概略的な長手方向断面を示している。
【0038】
ロータ軸1は、第一の材料から成る軸ベース部材2を含む。軸ベース部材2には、複数の周方向翼溝3が形成されており、当該翼溝は軸方向において互いに離間している。中央の翼溝3には、短い動翼4が設けられている。
【0039】
軸ベース部材2には4個の取り付け部分5から8が形成されており、取り付け部分5および6は、左に示される軸ベース部材2の軸端部9に対してより近くに設けられており、取り付け部分7および8は、右に示される軸ベース部材2の軸端部10に対してより近くに設けられている。軸端部9に対してより近くに設けられている取り付け部分5の外径11は、軸端部9からさらに遠くに設けられている取り付け部分6の外径12よりも小さい。軸端部10に対してより近くに設けられている取り付け部分8の外径13は、軸端部10からさらに遠くに設けられている取り付け部分7の外径14よりも小さい。外径11および13もしくは12および14は、同一であるか、または異なっていてよい。取り付け部分5から8は、軸ベース部材2の新規製造の間に、あるいは従来のロータ軸の加工により、それぞれの取り付け部分5,6,7もしくは8に対して径方向外側に存在する、図に示されていない材料部分であって、損傷を受けた翼溝が形成されている材料部分が切除されて取り除かれ、それにより従来のロータ軸が修理されることによって、形成することができる。軸ベース部材2には、図2および図3に示すとともに以下において説明するように、4個のリングが設けられる。
【0040】
図2は、図1に示すロータ軸1の別の製造状態における概略的な長手方向断面を示す。当該製造状態が、図1に示す製造状態と異なるのは、軸ベース部材2に第二の材料から成る二つのリング15および16が取り付けられている点であり、第二の材料は第一の材料と同一のもしくはより高い強度および/または第一の材料より高い耐食性を有している。それぞれのリング15もしくは16は、圧延または鍛造により製造されている。
【0041】
リング15は、すでにナローギャップ溶接を用いて、材料的に一体式に軸ベース部材2と結合されている。特にリング15は、ナローギャップ溶接を用いて生じさせられた溶接継ぎ目17を介して軸ベース部材2と結合されている。溶接継ぎ目17は、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある、(図に示されていない)外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに外側部分同士の間にある図に示されていない中央部分と、を有し、第一の溶接材料は第二の溶接材料より高い耐食性を有する。ナローギャップ溶接は、電子ビーム溶接またはWIG溶接またはMAG溶接を用いて実施することができる。リング15には図に示されていない動翼列を設置するための少なくとも一つの翼溝18が形成されている。
【0042】
リング16は、まだ、ナローギャップ溶接を用いて、材料的に一体式に軸ベース部材2もしくは取り付け部分7と結合されていない。これは特に細部拡大図19から読み取れる。細部拡大図19は、リング16がナローギャップ溶接の前にセンタリング手段を用いて、軸ベース部材2に対して同軸的に位置調整されることを示している。センタリング手段は、リング16に設けられているとともに、取り付け部分7の方向を向いたショルダ21を含み、当該ショルダは、径方向において取り付け部分7に形成されるとともにリング16の方向に向いた突起22に接触している。ショルダ21および突起22は、リング16もしくは取り付け部分7における軸端部10から離れる方向に面する端部に設けられている。ナローギャップ溶接は、矢印20に従って、リング16に対して最も近くに設けられている軸ベース部材2の軸端部10に対向する側から実施される。
【0043】
リング15および16は、個々のナローギャップ溶接の終了後に後熱処理を受けることができる。個々のリング15もしくは16は、リング15もしくは16の目標幅よりも大きい幅を有して製造することができ、リング15もしくは16の幅はナローギャップ溶接の終了後、およびリング15もしくは16の検査後に、材料除去によって目標幅まで減らされる。
【0044】
図3は、図1に示すロータ軸1の別の製造状態における概略的な長手方向断面を示している。当該製造状態が、図2に示す製造状態と異なるのは、軸ベース部材2に第二の材料から成るさらなる二つのリング23および24が取り付けられている点であり、第二の材料は、第一の材料と同一のもしくはより高い強度および/または第一の材料より高い耐食性を有している。加えてリング16にも翼溝18が形成されている。それぞれのリング23もしくは24は、圧延または鍛造により製造されている。
【0045】
リング23および24は、ナローギャップ溶接を用いて、材料的に一体式に軸ベース部材2と結合されている。特にそれぞれのリング23もしくは24は、ナローギャップ溶接を用いて生じさせられた溶接継ぎ目17を介して軸ベース部材2と結合されている。それぞれの溶接継ぎ目17は、第一の溶接材料から成るとともに軸方向において外側にある、(図に示されていない)外側部分と、第二の溶接材料から成るとともに外側部分同士の間にある(図に示されていない)中央部分と、を有してよく、第一の溶接材料は第二の溶接材料より高い耐食性を有する。ナローギャップ溶接は、電子ビーム溶接またはWIG溶接またはMAG溶接を用いて実施することができる。ナローギャップ溶接は、矢印20に従って、それぞれリング23もしくは24に対して最も近くに設けられている軸ベース部材2の軸端部9もしくは10に対向する側から実施される。リング23および24にはそれぞれ、図に示されていない動翼を設置するための翼溝18が形成されている。
【0046】
リング23および24は、それぞれのナローギャップ溶接の終了後に後熱処理を受けることができる。個々のリング23もしくは24は、リング23もしくは24の目標幅よりも大きい幅を有して製造することができ、リング23もしくは24の幅は、ナローギャップ溶接の終了後、およびリング23もしくは24の検査後に、材料除去によって目標幅まで減らされる。
【0047】
したがってロータ軸1は、二つのリング15および23であって、軸ベース部材2の軸端部9に向かってオフセットされて設けられるとともに、軸ベース部材2に取り付けられた、二つのリング15および23と、二つのリング16および24であって、軸ベース部材2の軸端部10に向かってオフセットされて設けられるとともに、軸ベース部材2に取り付けられた、二つのリング16および24と、を含む。
【0048】
リング15,16,23,24は、Niの含有量がより大きい、0.10重量%−0.30重量%のC、1.0重量%−6.0重量%のCr、3.0重量%−6.0重量%のNiの組成を有する鋼リングとして形成されている。
【0049】
リング15,16,23,24および接続部の強度は、二段階のプロセスにおいて調整することができ、第一段階の温度はT1にあり、第二段階の温度はT2にあり、式T1<T2が成立する。
【0050】
第二段階において、熱処理(PWHT)が実施され、PWHTは溶着されたリングにおけるLCF特性の調整の不可欠な構成要素である。第一段階においてリングの品質熱処理が行われる。第二段階において、リングが取り付けられたベース部材のPWHT熱処理が溶接後に行われる。第一段階における温度は、T1=550℃から630℃であり、第二段階の温度は、T2=580℃から650℃である。
【0051】
一連の熱処理は、
a)軸ベース材料に対してリングにおける強度が高低調整可能であり、したがってより良好なLCF特性が得られることと、
b)冶金術上のノッチも、応力腐食割れSCCの生じやすさも回避するために、軸ベース材料およびリングにおいて、熱影響ゾーンが十分に焼き戻しされていることと、
を生じさせる。
【0052】
好適な実施の形態を介して、本発明を細部にわたって詳細に図示および説明してきたが、本発明は開示された実施の形態に限定されるものではなく、当業者は本発明の保護範囲を逸脱しない限り、上記の実施の形態から他の変化形態を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ロータ軸
2 軸ベース部材
3 翼溝
4 動翼
5,6 取り付け部分
7,8 取り付け部分
9,10 軸端部
11,12,13,14 取り付け部分の外径
15,16 リング
17 溶接継ぎ目
18 翼溝
19 細部拡大図
20 矢印
21 ショルダ
22 突起
23,24 リング
図1
図2
図3