(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微生物は、少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列の組換え核酸分子によって改変され、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列は少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性を向上させる遺伝子改変を含む、請求項1に記載の方法。
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの過剰発現から選ばれる、請求項7に記載の方法。
前記微生物は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変され、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列はSEQ ID NO:26である、請求項8に記載の方法。
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの過剰発現から選ばれる、請求項7に記載の方法。
微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変され、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコ−ドする核酸配列はSEQ ID NO:56である、請求項10に記載の方法。
前記微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン−2−エピメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン−2−エピメラーゼの酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン−2−エピメラーゼの過剰発現から選ばれる、請求項7に記載の方法。
前記微生物は、少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン−2−エピメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変され、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン−2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列は、SEQ ID NO:58である、請求項12に記載の方法。
少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されており、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:64である、請求項15に記載の微生物。
請求項17に記載のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸分子であって、前記核酸分子はSEQ ID NO:64で表される核酸配列を有する核酸分子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は遺伝子改変法によって微生物を改変させ、その溶存酸素を利用する能力を向上させ、微生物により、高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させ、それによって工業規模で生産するための製造コストを削減する。
【0016】
具体的には、本発明は微生物において、ビトレオシラヘモグロビン(vitreoscilla hemoglobin、Vhb)を発現させることにより、微生物の溶存酸素を利用する能力を向上させ、蛋白質と代謝産物の合成を促し、微生物の成長を促進し、発酵力価とレベルを向上させ、それによって当該微生物に有限酸素条件下でより高い効率と収率をもってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記内容に基づいてさらに次の内容の1つまたは複数に関する:
1.微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(N−acetylmannosamine kinase、NanK)の働きを向上させることにより、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン(N−acetyl−D−mannosamine、ManNAc)からN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸(N−acetyl−D−mannosamine−6−phosphate、ManNAc−6−P)へのリン酸化を促進し、それによって当該微生物により高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【0018】
2.微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(N−acetylmannosamine−6− phosphate epimerase、NanE)の働きを向上させることにより、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸(N−acetyl−D−mannosamine−6−phosphate、ManNAc−6−P)からN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(N−acetyl−D−Glucosamine−6−phosphate、GlcNAc−6−P)、への変換を促進し、細胞外に排出されてN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)になり、それによって当該微生物により高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【0019】
3.微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(D−Glucosamine−6−phosphate deaminase、NagB)の働きを向上させ、好ましくは、それと同時にグルコサミン6−リン酸シンターゼ(Glucosamine−6−phosphate synthase、GlmS、L−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼとも呼ばれ、L−glutamine:D−fructose−6−phosphate aminotransferase)の働きを低下させることにより、微生物の中のグルコ−ス−6−リン酸(Glucose−6−phosphate、Glc−6−P)からD−グルコサミン6−リン酸(D−Glucosamine−6−phosphate、GlcN−6−P)へのアミノ化を促進する。D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)による触媒反応が可逆的であり、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)による触媒反応が不可逆的であるが、深刻な産物阻害問題があり、NagBによる触媒反応がGlc−6−PからGlcN−6−Pへの生成の方向に進行する場合、その働きはGlmSと同じであり、GlmSを代替することができ、且つ産物阻害問題がない。NagBの働きを向上させ、NagBによる触媒反応がGlc−6−PからGlcN−6−Pへの生成の方向に進行することを促し、好ましくはそれと同時にGlmSの働きを低下させることにより、GlcN−6−Pを増加させるという目的を達成し、それによって当該微生物により高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【0020】
4.微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(Glucosamine−6−phosphate synthase、GlmS、 L−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼとも呼ばれ、L−glutamine:D−fructose−6−phosphate aminotransferase)の働きを向上させ、それと同時にD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(D−Glucosamine−6−phosphate deaminase、NagB)の働きを低下させることにより、微生物の中のグルコ−ス−6−リン酸(Glucose−6−phosphate、Glc−6−P)からD−グルコサミン6−リン酸(D−Glucosamine−6−phosphate、GlcN−6−P)へのアミノ化を促進する。D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)による触媒反応が可逆的であり、NagBによる触媒反応がGlcN−6−PからGlc−6−Pへの生成の方向に進行する場合、その働きはGlmSと逆であり、GlmSの働きを相殺する。NagBの働きを低下させ、NagBによる触媒反応がGlcN−6−PからGlc−6−Pへの生成の方向に進行することを阻害し、それと同時にGlmSを過剰表現させ、GlmSの触媒作用によってGlc−6−PからGlcN−6−Pへのアミノ化を促し、それによって当該微生物により高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【0021】
5.微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(UDP−N−acetyl−D− Glucosamine−2−epimerase、WecB)の働きを向上させることにより、微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン(UDP−N−acetyl−D−Glucosamine、UDP−GlcNAc)からN−アセチル−D−マンノサミン(N−acetyl−D−mannosamine、ManNAc)への変換を促進し、それによって、当該微生物により、高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。
【0022】
6.微生物の中のタ−ゲット産物が、再度細胞内に取り込まれ、または、有益な中間体が分解されることにかかわる酵素や蛋白質の働きを低下させ、微生物の中の糖変換率とN−アセチル−D−グルコサミン収率を向上させ、それによって当該微生物により高い効率と収率でN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造させる。次の内容の一つまたは複数を含むがこれらに限られない:
(1)微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(Mannose transporter EIIM、P/III
Man、ManXYZ)の働きを低下させ、N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)などのヘキソ−スが細胞内への輸送分解を阻害する。
(2)微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(N−acetylneuraminate lyase、NanA)の働きを低下させ、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン(N−acetyl−D−mannosamine、ManNAc)の分解を阻害する。
(3)微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(N−acetylGlucosamine−6− phosphate deacetylase、NagA)の働きを低下させ、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(N−acetyl−D−Glucosamine−6−phosphate、GlcNAc−6−P)からD−グルコサミン6−リン酸(D−Glucosamine−6−phosphate、GlcN−6−P)への変換を阻害する。
(4)微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(N−acetylGlucosamine specific enzyme II
Nag、NagE)の働きを低下させ、N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)が微生物細胞への輸送・分解を阻害する。
(5)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(phosphoGlucosamine mutase、GlmM)の働きを向上させ、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸(D−Glucosamine−6−phosphate、GlcN−6−P)からD−グルコサミン1−リン酸(D−Glucosamine−1−phosphate、GlcN−1−P)への変換を促進する。
(6)微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(bifunctional N−acetyl Glucosamine−1−phosphate uridyltransferase/Glucosamine−1−phosphate acetyl transferase、GlmU)の働きを向上させることにより、微生物の中のD−グルコサミン1−リン酸(D−Glucosamine−1−phosphate、GlcN−1−P)からN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸(N−acetyl−D−Glucosamine−1−phosphate、GlcNAc−1−P)への変換、さらなるUDP−N−アセチル−D−グルコサミン(UDP−N−acetyl−D−Glucosamine、UDP−GlcNAc)への変換を促進する。
【0023】
本発明の一実施形態は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、前記方法は以下を含む:
A)発酵培地において微生物を培養し、前記微生物は少なくとも一種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変を含む;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、さらにC)N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を脱アセチル化して得られるD−グルコサミン塩を含む。
【0024】
本発明によれば、微生物は少なくとも一種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
本発明は、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を対象として、エラ−プロ−ンPCRによるランダム突然変異誘発導入法により、ランダム塩基置換を導入し、DNA改変を行い、当該タンパク質の理想的突然変異体をスクリーニングする。エラ−プロ−ンPCRによるランダム突然変異誘発導入法はランダム塩基置換を導入することによって理想的突然変異体をスクリーニングするが、DNA組換えはランダム突然変異誘発より良性突然変異の確率を有意に向上させることができ、それによってより有用な突然変異体を得ることができる。ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性を向上させるために、エラ−プロ−ンPCR とDNA組換えを組み合わせ、それに対して改変を行い、且つ突然変異遺伝子を酸素調節型プロモーターの下に置いて発現・スクリーニングを行い、それによって酸素制限条件下で活性が野生型より高い突然変異蛋白質を得る。
【0025】
一つの実施形態によれば、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列は少なくとも一種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性を向上させる遺伝子改変を含む。好ましくは、前記遺伝子改変はアミノ酸配列SEQ ID NO:61に対応する以下の位置での置換の1種または複数種を含む:45位のメチオニンからロイシンへの置換、86位のシステインからグリシンへの置換および95位のチロシンからセリンへの置換。さらに好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:64である。前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)のアミノ酸配列はSEQ ID NO:65である。
【0026】
もう一つの実施形態によれば、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)はSEQ ID NO:61のアミノ酸配列の少なくとも30%同じ、好ましくは少なくとも50%同じ、より好ましくは少なくとも70%同じ、より好ましくは少なくとも80%同じ、さらにより好ましくは90%同じ、最も好ましくは約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)は活性を有する。
もう一つの実施形態によれば、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)はSEQ ID NO:61のアミノ酸配列を有する。
【0027】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードするコードする遺伝子のコピ−数は、1より大きいかまたはそれに等しい。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは trpプロモーターと lacプロモーターが連結されるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0028】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記微生物は、さらに次の遺伝子改変中の一種または複数種を含む:
(1)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変、好ましくは少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含み、それと同時に少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0030】
前記第(1)において、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させる遺伝子改変はa)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の過剰発現から選ばれる。
【0031】
本分野の技術者であれば、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることは、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、NanK遺伝子突然変異体をスクリーニングすることは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異体を得ることによって実現されること、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることは、またその遺伝子のコピ−数を増加させ、発現レベルが天然プロモーターより高いプロモーターに置換するなどによってN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)を過剰発現させることによって実現されること、特定の実施形態において、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されることがわかる。
【0032】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
【0033】
一つの実施形態によれば、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする核酸配列は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。好ましくは、前記遺伝子改変はアミノ酸配列SEQ ID NO:17の次の位置で置換される1種または複数種を含む:36位のリシンからアルギニンへの置換、103位のイソロイシンからメチオニンへの置換および223位のアルギニンからセリンへの置換。さらに好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:26である;前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)のアミノ酸配列はSEQ ID NO:27である。
【0034】
もう一つの実施形態によれば、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)は、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは約50%同じ、より好ましくは70%同じ、より好ましくは約80%同じ、さらに好ましくは約90%同じ、最も好ましくは約95%同じであるアミノ酸配列を有し、そのうち、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)は酵素活性を有する。
もう一つの実施形態によれば、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)は、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を有する。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
【0035】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターと lacプロモーターが連結されるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0036】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0037】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくはN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
【0038】
前記第(2)の実施形態によれば、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させる遺伝子改変はa)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の過剰発現から選ばれる。
【0039】
本分野の技術者であれば、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることは、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、NanE遺伝子突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、発現レベルが天然プロモーターより高いプロモーターに置換するなどの方式によってN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)を過剰発現させることによって実現されること、特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されることがわかる。
【0040】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
一つの実施形態によれば、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする核酸配列は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。好ましくは、前記遺伝子改変はアミノ酸配列SEQ ID NO:29に対応する次の位置での置換の1種または2種を含む:133位のシステインからアルギニンへの置換および187位のチロシンからヒスチジンへの置換。より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:56である;前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードするアミノ酸配列はSEQ ID NO:57である。
【0041】
もう一つの実施形態によれば、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じアミノ酸配列を有し、そのうち、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)は酵素活性を有する。
もう一つの実施形態によれば、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を有する。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
【0042】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターとlacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0043】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0044】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
【0045】
前記第(3)の実施形態によれば、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させる遺伝子改変はa)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の過剰発現から選ばれる。
【0046】
本分野の技術者であれば、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることは、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の酵素活性を向上させるD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)コードする遺伝子突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、NagBの遺伝子突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターなどに置換するなどの方式によってD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)を過剰発現させることによって実現されること、特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されることがわかる。
【0047】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
一つの実施形態によれば、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする核酸配列は少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
【0048】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターとlacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0049】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0050】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種の、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
【0051】
本発明によれば、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させる遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の酵素活性の低下;及び/又はb)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の発現低下から選ばれ、次を含むがこれらに限らない:微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、あるいは一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、あるいは一部または全部の不活性化。好ましくは、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する。
【0052】
特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
前記第(4)の実施形態によれば、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の過剰発現から選ばれる。
【0053】
本分野の技術者であれば、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることは、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の酵素活性を向上させるグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、GlmS遺伝子の突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターに置換するなどの方式によってグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)を過剰発現させることによって実現されること、特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されることがわかる。
【0054】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
一つの実施形態によれば、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする核酸配列は少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターとlacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0055】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0056】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
本発明において、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させる遺伝子改変は、a)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の酵素活性の低下;及び/又はb)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の発現低下から選ばれ、次を含むがこれらに限らない:微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化。好ましくは、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する。
特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0057】
前記第(5)の実施形態によれば、微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の過剰発現から選ばれる。
【0058】
本分野の技術者であれば、微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の酵素活性を向上させるUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、WecB遺伝子突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターに置換するなどの方式によってUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)を過剰発現させることによって実現されることがわかる。特定の実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む、少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0059】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
【0060】
一つの実施形態によれば、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列は、少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:50に対応する次の位置での置換:34位のシステインからセリンへの置換、145位のヒスチジンからアスパラギン酸への置換、226位のシステインからフェニルアラニンへの置換および245位のバリンからグリシンへの置換の1種または複数種を含む;より好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:58である;前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59である。
【0061】
もう一つの実施形態によれば、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)は、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じであるアミノ酸配列を有し、そのうち、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)は酵素活性を有する。
もう一つの実施形態によれば、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)は、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を有する。
【0062】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターと lacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0063】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0064】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記微生物はさらに次の遺伝子改変の中の1種または複数種を含む:
(1)少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む;
(5)少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(6)包含少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0066】
前記第(1)の実施形態によれば、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、あるいは一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化を含むが、これらに限られない。好ましくは、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する。特定の実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む、少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0067】
前記第(2)の実施形態によれば、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変:微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化を含むが、これらに限らない。好ましくは、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する。特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0068】
前記第(3)の実施形態によれば、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化を含むが、これらに限らない。
【0069】
好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する。特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0070】
前記第(4)の実施形態によれば、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化次を含むが、これらに限られない。
【0071】
好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する。特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
【0072】
前記第(5)の実施形態によれば、微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性の向上;及び/又は、b)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の過剰発現から選ばれる。
【0073】
本分野の技術者であれば、微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることは、ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性を向上させるホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、GlmM遺伝子突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターに置換するなどの方式によってホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)を過剰発現させることによって実現されること、特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって形質転換されることがわかる。
【0074】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される。
一つの実施形態によれば、ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
【0075】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターと lacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0076】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0077】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを、trcプロモーターに置換する。
【0078】
前記第(6)の実施形態によれば、微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性の向上;及び/又は、b)微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の過剰発現から選ばれる。
【0079】
本分野の技術者であれば、微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることは、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性を向上させる二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングすることによって実現されること、GlmU遺伝子突然変異体のスクリーニングは、エラ−プロ−ンPCR技術によって高頻度突然変異遺伝子を得ることによって実現されること、また、微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることは、その遺伝子のコピ−数を増加させ、天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターに置換するなどなどの方式によって二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)を過剰発現させることによって実現されることがわかる。特定の実施形態によれば、微生物は少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されることがわかる。
【0080】
一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される。
一つの実施形態によれば、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む。
【0081】
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子のコピ−数を増加させる。
もう一つの実施形態によれば、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターを含み、内在性天然プロモーターより高い発現レベルのプロモーター、エンハンサー、融合配列などを有する。好ましくは、組換え核酸分子は天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含み、例えば、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;より好ましくは、組換え核酸分子はtrcプロモーターを含む。trcプロモーターは、trpプロモーターとlacプロモーターが連結されてなるプロモーターであり、trpより高い転写効率とlacIリプレッサーによって調節される強力なプロモーター特性を有する。
【0082】
本発明によれば、組換え核酸分子によって微生物の形質転換を行うことは、遊離型(即ち組換え核酸分子をプラスミドにロ−ドする)と、結合型(即ち組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む)から選択される。好ましくは、組換え核酸分子を微生物のゲノムに組み込む。
【0083】
もう一つの好ましい実施形態によれば、微生物は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子に、内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをより高い発現レベルを有するプロモーターに置換し、例えばHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターなど;よりましくは、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターをtrcプロモーターに置換する。
【0084】
本発明はさらに次の好ましい実施形態に関する:1.本発明の一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0085】
2.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0086】
3.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。 好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0087】
4.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0088】
5.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0089】
6.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0090】
7.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0091】
8.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0092】
9.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0093】
10. 本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0094】
11.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;及び
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0095】
12.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0096】
13.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0097】
14.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0098】
15.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0099】
16.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0100】
17.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)および/またはD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0101】
18.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0102】
19.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0103】
20.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0104】
21.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;及び
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
【0105】
22.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
好ましくは、前記微生物さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0106】
23.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法に関し、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;及び
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集する。
前記好ましい実施形態によれば、さらにC)N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)から脱アセチル化してD−グルコサミン塩を得ることを含む。
【0107】
前記好ましい実施形態によれば、前記微生物はさらに次を含む:少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
【0108】
前記いずれかの実施形態によれば、前記任意の組換え核酸分子の発現は誘導されることができ、ラクト−スによって誘導されることを含むがこれに限らず、例えば、培養液にラクト−ス等を加えることによって発現がラクト−スに誘導される。
【0109】
本分野の技術者であれば、本発明によれば、本分野公知の様々な従来の発酵培地を使うことができること、一つの実施形態によれば、発酵培地は炭素源を含むこと、もう一つの実施形態によれば、発酵培地は窒素源を含むこと、もう一つの実施形態によれば、発酵培地は炭素源と窒素源を含むこと、もう一つの実施形態によれば、発酵培地は炭素源、窒素源および無機塩を含むことがわかる。
【0110】
本分野の技術者であれば、本分野の公知の様々な炭素源は、いずれも本発明に用いられることができ、炭素源は有機炭素源及び/又は無機炭素源を含み、好ましくは、炭素源はグルコ−ス、フルクト−ス、ショ糖、ガラクト−ス、デキストリン、グリセリン、デンプン、シロップおよび糖蜜の中の1種または複数種から選ばれること、好ましくは、炭素源の濃度は約0.1%−約5%に維持されることがわかる。本分野の技術者であれば、本分野の公知の様々な窒素源はいずれも本発明に用いられることができ、窒素源は有機窒素源及び/又は無機窒素源を含み、好ましくは、窒素源はアンモニア水、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、魚粉、大豆粉、麦芽、コ−ンシロップおよび綿実粉の中の1種または複数種から選ばれることがわかる。
【0111】
好ましくは、本発明は材料補充発酵法を採用する。本発明の一つの実施形態によれば、糖分補充液はグルコ−スとリボ−スを含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、リボ−スの濃度は0.5%−15%(w/v)であり、さらに好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、リボ−スの濃度は5%−7%(w/v)である。本発明のもう一つの実施形態によれば、糖分補充液はグルコ−スとグルコン酸塩を含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は0.5%−15%(w/v)であり、より好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は2%−3%(w/v)である。本発明のもう一つの実施形態によれば、糖分補充液はグルコ−ス、リボ−スおよびグルコン酸塩を含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、リボ−スの濃度は0.5%−15%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は0.5%−15%(w/v)であり、より好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、リボ−スの濃度は5%−7%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は2%−3%(w/v)である。好ましくは、グルコン酸塩はグルコン酸ナトリウムである。
【0112】
一つの好ましい実施形態によれば、約20℃−約45℃下で前記培養工程を行い、より好ましくは、約33℃−約37℃下で前記培養工程を行う。
一つの好ましい実施形態によれば、約pH4.5−約pH8.5下で前記培養工程を行う。より好ましくは、約pH6.7−約pH7.2下で前記培養工程を行う。
【0113】
本分野の技術者であれば、本発明によれば、本分野の公知の様々な従来の方法を使って、N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を収集することができ、好ましくは、発酵培地の中の細胞外産物からN−アセチル−D−グルコサミンを収集することができ、より好ましくは、当該収集工程は次の工程から選ばれる:(a)微生物が除去される発酵液からN−アセチル−D−グルコサミンを沈殿させる;(b)微生物が除去される発酵液からN−アセチル−D−グルコサミンを結晶化させることがわかる。
【0114】
本発明によれば、収集工程はさらに発酵液を脱色させる工程を含む。脱色工程は、発酵液を沈殿・結晶化させる前に、発酵液を1回または複数回沈殿・結晶化させる後に行われることを含むがこれらに限らず、脱色は、活性炭処理及び/又はクロマトグラフィ−脱色を含む。前記クロマトグラフィ−脱色は、前記発酵液とイオン交換樹脂に接触させる工程を含み、イオン交換樹脂は陰イオン交換樹脂及び/又は陽イオン交換樹脂を含むが、これらに限らず、例えば、発酵液と陰イオンおよび陽イオン交換樹脂の混合床に接触させるてもよい。
【0115】
本発明によれば、N−アセチル−D−グルコサミンを脱アセチル化させてD−グルコサミン塩を得ることができ、前記塩は塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、リン酸塩および硫酸水素塩などを含むが、これらに限らない。例えば、酸性および加熱条件下で脱アセチル化してN−アセチル−D−グルコサミンを分解してD−グルコサミン塩を得ることができ、好ましくは、30%−37%の塩酸溶液において、60℃−90℃下で脱アセチル化してN−アセチル−D−グルコサミンを分解してD−グルコサミン塩酸塩を得る;また、UDP−3−O−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化酵素の作用下でN−アセチル−D−グルコサミンを分解してD−グルコサミンを得て、さらに塩になる。
本発明のもう一つの実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変を含む。上文はこの遺伝子改変について詳しく説明する。
【0116】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記微生物は、さらに次の遺伝子改変中の一種または複数種を含む:
(1)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含み、好ましくは少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含み、それと同時に少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。上文はこの遺伝子改変について詳しく説明する。
【0117】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記微生物は、さらに次の遺伝子改変中の一種または複数種を含む:
(1)少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(6)少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変。上文はこの遺伝子改変について詳しく説明する。
【0118】
本発明さらに次の好ましい実施形態に関する:
1.本発明の一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は、少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む。
【0119】
2.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は、少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む。
【0120】
3.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0121】
4.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
5.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0122】
6.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0123】
7.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0124】
8.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
【0125】
9.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0126】
10.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0127】
11.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
【0128】
12.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0129】
13.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0130】
14.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0131】
15.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0132】
16.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
【0133】
17.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0134】
18.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0135】
19.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0136】
20.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0137】
21.本発明のもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0138】
22.本発明の一つの好ましい実施形態によれば、本発明は、微生物に関し、
前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを向上させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
好ましくは、前記微生物は、さらに少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む。
【0139】
23.本発明の一つの好ましい実施形態によれば、本発明は微生物に関し、前記微生物は次を含む:少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の働きを向上させることができる遺伝子改変;少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0140】
前記好ましい実施形態によれば、前記微生物はさらに以下を含む:少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;および少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変。
【0141】
本発明のもう一つの実施形態によれば、本発明は、より高い活性を有するビトレオシラヘモグロビンに関し、それはSEQ ID NO:65で表されるアミノ酸配列を有する。本発明はさらに前記ビトレオシラヘモグロビンをコードする核酸分子に関し、前記核酸分子はSEQ ID NO:64で表される核酸配列を有する。本発明はさらに前記核酸分子を含むベクタ−に関する。本発明はさらに前記ベクタ−を含む微生物に関する。本発明はさらにゲノムの中に前記核酸分子が含まれる微生物に関する。
【0142】
本発明によれば、微生物は任意の微生物(例えば細菌、原生生物、藻類、真菌、または他の微生物)であっても良い。好ましい実施形態によれば、微生物は細菌、酵母または真菌を含むがこれらに限らない。好ましくは、前記微生物は細菌または酵母から選ばれる。
【0143】
より好ましくは、細菌はエシェリヒア属(Escherichia)、バシラス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、シュ−ドモナス属(Pseudomonas)またはストレプトミセス属(Streptomyces)の属に属する細菌から選ばれるがこれらに限らない。さらに好ましくは、細菌は大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)、シュ−ドモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)またはストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の種に属する細菌から選ばれるがこれらに限らない。さらに好ましくは、酵母はサッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)、クルベルミセス属(Kluveromyces)およびファフィア属(Phaffia)の酵母から選ばれるがこれらに限らない;より好ましくは、酵母はサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyce scerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharo mycespombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ハンゼヌラポリモルファ(Hansenulapolymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・カナデンシス(Pichia canadensis)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)またはファフィア・ロドチ−マ(Phaffia rohodozyma)から選ばれるが、これらに限らない。
【0144】
好ましくは、前記微生物は真菌である;さらに好ましくは、真菌はアスペルギルス属(Aspergillus)、アブシディア属(Absidia)、リゾプス属(Rhizopus)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、ニュ−ロスポラ属(Neurospora)またはトリコデルマ属(Trichoderma)に属する真菌から選ばれるがこれらに、限らない;より好ましくは、真菌はアスペルギルス・ニガ−(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アブシディア・コエルレア(Absidia coerulea)、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、クリソスポリウム・ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)、ニュ−ロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ニュ−ロスポラ・インタ−メディア(Neurosporaintermedia)またはトリコデルマ・リ−セイ(Trichoderma reesei)から選ばれるがこれらに限らない。特に好ましくはK−12、BおよびWをはじめとする大腸菌株、最も好ましくはK−12である。大腸菌は、好ましい微生物として本発明の様々な実施形態の実施例に用いられるが、本発明の方法を理解するには、N−アセチル−D−グルコサミンが産生され且つ遺伝子改変によってN−アセチル−D−グルコサミンの収率を向上させることができる任意のその他の微生物を用いることができる。本発明に用いられる微生物は生産生物体とも呼ばれる。
【0145】
本発明における用語N−アセチル−D−グルコサミンは、2−アセチルアミノ−2−デオキシ−D−グルコ−スとも呼ばれる。用語N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸およびN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸は、それぞれ、GlcNAc、GlcNAc−6−PおよびGlcNAc−1−Pとも略記される。N−アセチル−D−グルコサミンはNAGと略記される。N−アセチル−D−グルコサミンおよびその誘導体と同様、用語D−グルコサミン、D−グルコサミン6−リン酸およびD−グルコサミン1−リン酸は、それぞれ、GlcN、GlcN−6−P及びGlcN−1−Pとも略記される。同様に、用語N−アセチル−D−マンノサミン、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸、グルコ−ス、グルコ−ス−6−リン酸、フルクト−ス−6−リン酸は、それぞれ、ManNAc、ManNAc−6−P、Glc、Glc−6−P、Fru−6−Pと略記される。
【0146】
微生物の中の酵素の働きを向上させるという用語は、当該酵素の活性を向上させ、及び/又は当該酵素を過剰発現させ、それによって微生物の中の当該酵素によって触媒される基質の生成物の量を増加させることを意味する。
微生物中の酵素の働きを低下させるという用語は、当該酵素の活性を低下させ、及び/又は、当該酵素の発現を低下させ、それによって微生物の中の当該酵素によって触媒される基質の生成物の量を減少させることを意味する。
【0147】
酵素活性を向上させるという用語は、酵素の、一定の化学反応に触媒として作用する能力を向上させることを意味する。それは、酵素が、生成物によって阻害される、および、酵素の基質に対する親和性が不変の条件下で、酵素自身の化学反応に触媒として作用する能力を向上させるということ、及び/又は、酵素活性が生成物の阻害作用によって低下することによって、及び/又は、酵素の基質に対する親和性の向上によって、酵素の一定の化学反応にを触媒として作用する能力を向上させることをカバ−するということである。酵素活性が生成物の阻害作用によって低下するという用語は、反応の触媒となる酵素の活性が、その最終産物の特異的阻害作用によって低下することを意味する。酵素の基質に対する親和性の向上という用語は、触媒される基質に対する親和性が向上することを意味する。
【0148】
図1は大腸菌を例に挙げて本発明により開示されるN−アセチル−D−グルコサミンを大規模生産するためのアミノ糖の代謝経路における遺伝子改変の概要について説明する。
【0149】
図1において、太い矢印は本発明に係る遺伝的改変によって代謝フラックスを産生及び/又は増加させることを示す。
図1によって複数のN−アセチル−D−グルコサミンを合成するための異なる方法を開示し、Vhbに対する改変を含むほか、NanK、NanE、NagB、GlmS、WecBまたはその組み合わせに対する改変を含み、さらにManXYZ、NanA、NagA、NagE、GlmM、GlmUまたはその組み合わせに対する改変を含む。本分野の技術者であれば、その他の微生物は類似の糖代謝経路を有し、且つこのような経路において遺伝子とタンパク質は類似の構造と機能を有することがわかる。そのため、本発明に関しては、大腸菌に適するほか、同様にその他の微生物に適し且つその他の微生物は明らかに本発明に含まれる。
【0150】
本分野公知の同じ生物活性を有する酵素は、異なる名前を持つことがあり、これは当該酵素の微生物由来に決められる。以下、本文中で言及される多くの酵素のオプションの名前、および、ある生物体由来のこのような酵素をコードする具体的遺伝子の名前について説明する。これらの酵素の名前は、互換使用されること、または適切な場合、所定の配列または生物体に用いることができるが、本発明の意図は、任意の生物体由来の特定の機能を有する酵素をカバ−することである。
【0151】
例えば、本文において一般的に「N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ」と呼ばれる酵素は、N−アセチル−D−マンノサミンを、N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pにリン酸化することに触媒作用する。大腸菌由来のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは一般的にNanKと呼ばれる。様々な生物由来のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文において大腸菌由来のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼもSEQ ID NO:16で表される核酸配列コ−ディング、SEQ ID NO:17で表されるアミノ酸配列を有することが記載される。
【0152】
本文において「N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ」と呼ばれる酵素は、N−アセチル−D−マンノサミン−6−PからN−アセチル−D−グルコサミン6−Pへの変換に触媒作用する。大腸菌由来のN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼは一般的にNanEと呼ばれる。様々な生物体由来のN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文に記載の大腸菌由来のN−アセチル−D−マンノサミン−6−PエピメラーゼはSEQ ID NO:28で表される核酸配列コ−ディング、SEQ ID NO:29で表されるアミノ酸配列を有する。
【0153】
本文において一般的に「UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ」と呼ばれる酵素は、UDP−N−アセチル−D−グルコサミンからN−アセチル−D−マンノサミンへの変換に触媒作用する。大腸菌由来のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼは、一般的にWecBと呼ばれる。様々な生物体由来のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文に記載の大腸菌由来のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼは、SEQ ID NO:49で表される核酸配列コ−ディング、SEQ ID NO:50で表されるアミノ酸配列を有する。
【0154】
本文において、一般的に「D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ」と呼ばれる酵素は、D−グルコサミン6−リン酸と水からグルコ−ス−6−リン酸アンモニウムへの可逆的反応に触媒作用する。当該酵素は、D−グルコサミン6−リン酸イソメラーゼ、GlcN6Pデアミナ−ゼ、リン酸D−グルコサミンエピメラーゼ、リン酸D−グルコサミンエピメラーゼ、D−グルコサミンリン酸デアミナ−ゼおよび2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコ−ス−6−リン酸アセトンアルコ−ルイソメラーゼ(脱アミノ化)とも呼ばれる。様々な生物体由来のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼはこの分野では公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。大腸菌およびその他の細菌において、当該酵素は一般的にNagBと呼ばれる。
【0155】
本文において、一般的に「D−グルコサミン6−リン酸シンターゼ」と呼ばれる酵素は、グルコ−ス−6−リン酸およびグルタミンからD−グルコサミン6−リン酸およびグルタミン酸への変換に触媒作用する。当該酵素は、D−グルコサミンフルクト−ス−6−リン酸アミノトランスファラーゼ(異性化)、リン酸ヘキソ−スアミノトランスファラーゼ、D−フルクト−ス−6−リン酸アミドトランスファラーゼ、D−グルコサミン6−リン酸イソメラーゼ(グルタミン形成)、L−グルタミン−フルクト−ス−6−リン酸アミドトランスファラーゼおよびGlcN6Pシンターゼとも呼ばれる。様々な生物体由来のD−グルコサミン6−リン酸シンターゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。大腸菌およびその他の細菌由来のD−グルコサミン6−リン酸シンターゼは一般的にGlmSと呼ばれる。
【0156】
本文において、一般的に「N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ」と呼ばれる酵素は、N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸からD−グルコサミン6−リン酸と酢酸エステルへの加水分解に触媒作用する。様々な生物体由来のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文に記載の大腸菌由来のものがNagAと呼ばれる。
【0157】
本文において、一般的に「N−アセチルノイラミン酸リア−ゼ」と呼ばれる酵素は、N−アセチル−D−マンノサミンからN−アセチルノイラミン酸への分解に、触媒として作用する。様々な生物体由来のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文に記載の大腸菌由来のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼはNanAと呼ばれる。
【0158】
本文において、一般的に「ホスホグルコサミンムタ−ゼ」と呼ばれる酵素は、D−グルコサミン6−リン酸からD−グルコサミン1−リン酸への変換に、触媒として作用する。様々な生物体由来のリン酸D−グルコサミンムタ−ゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。当該酵素が大腸菌およびその他細菌におけるホスホグルコサミンムタ−ゼは一般的にGlmMと呼ばれる。
【0159】
本文において、一般的に「D−グルコサミン1−リン酸N−アセチルトランスファラーゼと呼ばれる酵素は、D−グルコサミン1−リン酸とアセチル補酵素AからN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸への変換に触媒作用し、且つCoAを放出する。それはさらに、二機能性酵素として、N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼの機能を備え、UDP−N−アセチル−D−グルコサミンピロホスホリラ−ゼ、UDP−N−アセチル−D−グルコサミンジホスファタ−ゼとも呼ばれ、さらにN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸を、UDP−N−アセチル−D−グルコサミンに変換する。様々な生物体由来のD−グルコサミン1−リン酸N−アセチルトランスファラーゼとN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼがこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。当該酵素は大腸菌およびその他細菌においてGlmUと呼ばれる。
【0160】
「Trcプロモーター」は、巧みな設計によって原核生物発現に用いることができ、例えば大腸菌発現系がある。Trcプロモーターはこの分野で公知化され、且つ本発明の遺伝的改変戦略に用いることができる。例えば、本文に記載のTrc promoterはSEQ ID NO:32で表されるヌクレオチド配列を有する。
【0161】
特許文献6(国際公開2004/003175号)に開示される発明のように、D−グルコサミンは、一般的に大腸菌の成長に用いるpH範囲において極めて不安定である。D−グルコサミン及び/又はその分解産物は、菌株に対して毒性作用を示す。細胞摂取前に濃度20g/LのD−グルコサミンを、培地(pH7.0)において3.5時間プレインキュベ−トしても毒性が認められる。毒性は、少なくとも一部が、出発pHが7.0の培地中のD−グルコサミンの分解産物によるものである。GlcNはより低いpH条件下でより安定し、D−グルコサミンはpH4.7以下では分解しない。しかし、大腸菌は6−7未満のpH条件下では成長が遅い。そのため、比較的低いpH条件下で、発酵槽でD−グルコサミンの生産を行うことは困難である。
【発明の効果】
【0162】
本発明によれば、微生物内でビトレオシラヘモグロビン(vitreoscilla hemoglobin、Vhb)を発現させることにより、微生物の溶存酸素を使用する能力を向上させ、タンパク質および代謝産物の合成を促進し、微生物の成長を促進し、発酵力価およびレベルを向上させ、さらに、細胞内においてD−グルコサミン6−P(GlcN−6−P)は、GlmMとGlmUの触媒作用によってUDP−N−アセチル−D−グルコサミン(UDP−GlcNAc)を生成し、UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の触媒下でN−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)になり、NanKとNanEを過剰発現させることにより、さらにN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)に変換し、ホスファタ−ゼの作用下で脱リン酸化され、細胞外に排出されてN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)になる。本発明の方法により、D−グルコサミンの生成を回避し、それによって、D−グルコサミン及び/又はその分解産物が菌株に対する毒性作用を回避する。
【0163】
従って、本発明の有益な効果は以下のとおりである:本発明により微生物内においてビトレオシラヘモグロビン(vitreoscilla hemoglobin、Vhb)を発現させることにより、微生物の溶存酸素を使用する能力を向上させ、タンパク質および代謝産物の合成を促進し、微生物の成長を促進し、発酵力価およびレベルを向上させ、それによって、微生物発酵法によって完全に天然なN−アセチル−D−グルコサミンを直接生産することができる;当該新しい生産方法は重金属汚染リスクがなく、抗生物質や薬剤残留リスクがなく、生産が原材料供給の影響を受けず、安定して生産でき、且つ収率が高く、コストが低くなる;生産されるN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルコサミン製品は非動物由来であり、エビ殻のキチンを使用せず、グルコ−スなどの炭素源を使って発酵させ、菜食製品に属し、且つ水産物アレルゲンがない。
【0164】
本文において引用または記載される各公開文献と参考文献のあらゆる内容を本文に引用して参考にする。
【発明を実施するための形態】
【0166】
以下、具体的な実施例と合わせて本発明についてさらに詳しく説明する。
以下の実施例は、本発明を単に例示して説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
特に断りのない限り、実施例で使用される原料および試薬はいずれも市販品である。
【0167】
以下は、本発明に係る及び/又は記載される様々な遺伝子改変微生物のリスクである。
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1A-3】
【表1A-4】
【0168】
(実施例1)
この実施例はN−アセチル−D−グルコサミンが取り込まれおよび有益な中間産物が分解されることにかかわる代謝経路を遮断する大腸菌の突然変異株を構築することを記載する。
【0169】
前記生産菌株の親株はAT−001(Escherichia coli ATCC 27325)であり、大腸菌K−12の派生株に属し、アメリカンタイプカルチャ−コレクション(American Type Culture Collection)からのものである。
【0170】
菌株がN−アセチル−D−グルコサミンに対する取り込みおよび中間代謝産物に対する分解を阻害し、代謝過程における消費を減少させ、タ−ゲット産物(N−アセチル−D−グルコサミン)の蓄積を増加させる。
このような突然変異型宿主菌株を構築するには、その染色体のゲノムのManXYZ、NanA、NagAおよびNagE遺伝子配列を全体的または部分的に削除し、その機能を無効にし、それによってN−アセチル−D−グルコサミンを蓄積させる。
【0171】
このような染色体における遺伝子配列削除は、Red組換え技術によって実現される。Red組換えはλファ−ジRedオペロンおよびRacファ−ジRecE/RecTRecTシステムによって媒介されるDNA相同組換え技術である。当該技術によって容易く、速く大きさが任意のDNA分子に対して挿入、削除、突然変異などの様々な改変を行うことができる。Red組換え技術は簡単に言えば、先ず菌体に組換え酵素遺伝子を発現させるpKD46プラスミドを導入し、そして調製された標的線状DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングし、最後に、組換え菌株の中の耐性遺伝子を削除する。
以下、具体的な操作過程について説明する:
【0172】
1,ManXYZ 遺伝子配列を削除する
マンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(mannose transporter EIIM、P/III
Man、ManXYZ)はN−アセチル−D−グルコサミンの第二トランスポーターとすることができ、N−アセチル−D−グルコサミンなどのヘキソ−スを細胞内に輸送することができ、それによって細胞外に排出され且つ蓄積するタ−ゲット産物を細胞内に輸送して分解する。ManXYZ遺伝子配列を削除することによって、細胞外のN−アセチル−D−グルコサミンが細胞内に輸送・分解されることを阻害することができる。
【0173】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
1)PCRによってfKanrf断片を増幅させる
fKanrf断片、即ちFRT−Kanr−FRT断片とは、カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)の両端にFLP組換え酵素特異的識別子をロ−ドするFRT部位の塩基配列である。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0174】
2)PCRによってRed組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: ManXYZ配列SEQ ID NO.4によって、設計してManXYZ配列のホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(ManXYZKO−F)SEQ ID NO.5、リバ−スプライマ−(ManXYZKO−R)SEQ ID NO.6を削除する。
テンプレ−ト:増幅されたfKanrf PCR断片。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0175】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−001の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0176】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
pKD46ベクタ−はRed組換え酵素遺伝子を発現させるプラスミドであり、Exo、BetおよびGamの3個の遺伝子断片を発現させ、3個の遺伝子をアラビノ−スプロモーター下に置き、L−アラビノ−スにより誘導されて過剰に発現することができる。Red組換えによって染色体上のタ−ゲット遺伝子を改変する目的を達成するために、pKD46プラスミドを大腸菌に導入する必要がある。
【0177】
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli ATCC 27325菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。さらに培養液を10mlの遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。そのうち、0.1MCaCl
2の調製は次のとおりである:無水CaCl
2で1MのCaCl
2を調製し、蒸気圧15 lbf/in2の高圧で20min滅菌し、1.5mlに分注して−20℃で保存し、使用する前に融解してから1:10の割合で希釈して、0.1MのCaCl
2に調製される。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μlpKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0178】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する:pKD46 Escherichia coli ATCC 27325を含む菌株AT−001をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、OD
600が約0.4に達するまで、0.2%のL−アラビノ−スを加え、30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は、菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させる量であることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。
電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング:1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号:AT−002−01(AT−001、△ManXYZ::fKanrf)。
【0179】
(3)耐性遺伝子を削除する
今後の研究のために、得られる菌株(陽性クロ−ン)の中の耐性遺伝子を削除することができる。耐性遺伝子の削除はpCP20プラスミドによって実現される。pCP20 はアンピシリンおよびクロラムフェニコ−ルの耐性遺伝子を持つプラスミドであり、熱誘導後FLP組換え酵素を発現させることができ、当該酵素はFRT部位を特異的に識別することができ、組換えによってFRT部位間の配列を削除し、FRT部位を一つだけ残すことができる。
【0180】
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−002−02(AT−001、△ManXYZ)。
【0181】
2,NanA遺伝子配列を削除する
N−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(N−acetylneuraminate lyase、NanA)は微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)をN−アセチル−D−ノイラミン酸(Neu5Ac)に分解することができる。NanKETAオペロンの中のNanA遺伝子配列を削除することにより、N−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)からN−アセチル−D−ノイラミン酸(Neu5Ac)への分解を阻害することができる。
【0182】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NanE−NanK前半のNanA配列 SEQ ID NO.7により、NanA配列が削除されるホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(NanAKO−F)はSEQ ID NO.8であり、リバ−スプライマ−(NanAKO−R)はSEQ ID NO.9である。
テンプレ−ト:増幅されたfKanrf PCR断片。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0183】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−002−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0184】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−002−02(AT−001、△ManXYZ)菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μlpKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0185】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する: pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−002−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで、30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換: 2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−003−01(AT−002−02、△NanA::fKanrf)。
【0186】
(3)耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−003−02(AT−002−02、△NanA)。
【0187】
3,NagA遺伝子配列を削除する
N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(N−acetylGlucosamine−6−phosphate deacetylase、NagA)は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)をD−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)に変換することができる。nagオペロン(NagE−NagBACD)の中のNagA遺伝子配列を削除することにより、N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)からD−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)への変換を阻害することができる。
【0188】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NCBI からNC_000913、Escherichia coli str. K−12 N−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼの遺伝子NagA配列SEQ ID NO.10を見つけ、NagA配列が削除されるホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(NagAKO−F)はSEQ ID NO.11であり、リバ−スプライマ−(NagAKO−R)はSEQ ID NO.12である。
テンプレ−ト:増幅されたfKanrf PCR断片。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+fKanf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0189】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−003−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0190】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−003−02(AT−002−02、△NanA)菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0191】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する:pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−003−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換: 2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。
電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−004−01(AT−003−02、△NagA::fKanrf)。
【0192】
(3)耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−004−02(AT−003−02、△NagA)。
【0193】
4,NagE遺伝子配列を削除する
N−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(N−acetyl−Glucosamine−specific enzyme II
Nag、NagE)の遺伝子配列NagEを削除することにより、細胞外のGlcNAcが細胞内に輸送されて分解することを阻害することができる。
【0194】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NCBI からNC_000913、Escherichia coli str. K−12 NagBプロモーターとNagE遺伝子配列SEQ ID NO.13を見つけ、NagE遺伝子配列が削除されるホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F1)SEQ ID NO.14、リバ−スプライマ−(NagEKO−R1)SEQ ID NO.15を設計する。
テンプレ−ト:増幅されたfKanrf PCR断片。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+fKanrf +ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0195】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0196】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02(AT−003−02、△NagA)菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0197】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する: pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、待OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換: 2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−005−01(AT−004−02、△NagE::fKanrf)。
【0198】
(3) 耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−005−02(AT−004−02,△NagE)。
【0199】
(実施例2.a)
この実施例はN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の遺伝子NanKのクロ−ン化および大腸菌におけるNanK/ptrc99Aプラスミドの形質転換、並びにptrc− NanK遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みについて説明する。
【0200】
1,NanK遺伝子のクロ−ン化、大腸菌におけるNanK/ptrc99Aプラスミドの形質転換およびそれがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
Escherichia coli NanK(N−acetylmannosamine kinase、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ)の遺伝子NanKを増幅させ、Trcプロモーター制御下で菌株の形質転換を行い、それを過剰に発現させることにより、ManNAc(N−acetyl−D−mannosamine、N−アセチル−D−マンノサミンまたはN−アセチル−D−マンノサミン)からManNAc−6−P(N−acetyl−D−mannosamine−6−P、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸)へのリン酸化を増強させることができる。
【0201】
1)大腸菌NanK遺伝子のクロ−ン化
NCBI からU00096を見つけ、Escherichia coli NanK遺伝子のヌクレオチド配列SEQ ID NO.16、そのアミノ酸配列SEQ ID NO.17が得られる。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(NanK−F)はSEQ ID NO.18であり、リバ−スプライマ−(NanK−R)はSEQ ID NO.19である。
テンプレ−ト:Escherichia coli AT−001。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物サイズ:0.9kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とpUC57−Tベクタ−を連結して配列決定・同定を行い、NanK/pUC57が得られる。
【0202】
2)NanK遺伝子のTrcプロモーター制御下でのプラスミドの構築と形質転換
i)プラスミドの構築:プラスミドNanK/pUC57を増幅させ、それぞれ酵素Nco IとHindIIIを使ってプラスミドNanK/pUC57とベクタ−ptrc99Aを切断し、アガロ−スゲル電気泳動によって分離させ、精製してNanK断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、NanK/ptrc99Aプラスミドが得られる。
ii)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるAT−005−02菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
iii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降後の菌体を250μl取り、5μl NanK/ptrc99Aプラスミドに加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養し。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。組換え菌 NanK/ptrc99A(AT−005−02)が得られる。
【0203】
3)NanK/ptrc99Aプラスミドの形質転換が?N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
組換え菌 NanK/ptrc99A(AT−005−02)と対照菌株に対して、フラスコ振盪発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。LB液体培地の成分は以下のとおりである:
【0204】
5g/l 酵母パウダ−、10g/l ペプトン、10g/l NaCl。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0205】
i)N−アセチル−D−グルコサミン含量のHPLC法測定
緩衝液:将3.5gリン酸水素二カリウムを1Lフラスコに入れ、水を加えて十分に溶解させ、0.25 mlアンモニア水を加え、そして水で希釈し、リン酸でpHを7.5に調整し、水で定容する。
移動相:アセトニトリル:緩衝液(75:25)。
希釈剤:アセトニトリルと水(50:50)。
標準溶液:1.0mg/ml USP N−アセチル−D−グルコサミン標準品(RS)を希釈剤に溶解する。
試料溶液:1.0mg/ml N−アセチル−D−グルコサミン試料を希釈剤に溶解する。
液相条件: 型番:LC 検出器:UV 195 nm
カラム:4.6−mm×15−cm; 3−μm packing L8
流速:1.5ml/min
カラム温度:35℃
注入量:10μl
ii)M9培養液の調製
先ず5×M9培地を調製する:約800mlの二重蒸留水(ddH
2O)に64g Na
2HPO
47H
2O、15g KH
2PO
4、2.5g NaCl、5.0g NH
4Clを加え、溶解した後、水を加えて1000mlとする。121℃で30分間滅菌する。そしてそれぞれ1M MgSO
4、1M CaCl
2、20% グルコ−スを調製し、且つ別々に滅菌する。そして表1に従ってM9培養液を調製し、そのうち、1000×微量元素溶液は表2に従って調製される。
【0207】
[1000×微量元素溶液の成分]
【表2】
【0208】
iii)NanK/ptrc99Aプラスミドの形質転換がフラスコ発酵N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
フラスコ発酵の収率を表3に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率が非常に低く、検出されず、NanK遺伝子がTrcプロモーター制御下で過剰発現する組換え菌NanK/ptrc99A(AT−005−02)の収率が著しく向上することが示唆される。
【0209】
[組換え菌NanK/ptrc99A(AT−005−02)のフラスコ発酵の収率]
【表3】
【0210】
2,ptrc−NanK 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−NanK 遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−NanK 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのNanK断片ptrc−NanK、および両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−を削除し、且つptrc−NanKとfKanrfで連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0211】
具体的な操作手順は次のとおりである:
(1)PCRによりptrc−NanK断片を増幅させる
テンプレ−ト:NanK/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
産物サイズ:1.05kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0212】
(2)PCR増幅fKanrf断片
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0213】
(3)ptrc−NanKに結合するfKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
【0214】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanK PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−NanK−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0215】
(5) Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0216】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0217】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する:pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。電気的形質転換パラメ−タ::2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−006−01(AT−004−02、△NagE::ptrc−NanK−fKanrf)。
【0218】
(6) 耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−006−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanK)。
【0219】
3,ptrc−NanK遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
染色体のNagE遺伝子部位においてptrc−NanK遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−006−02と対照菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0220】
フラスコ発酵収率を表4に示す。結果により、対照菌株AT−001、AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、一方ではptrc−NanK遺伝子カセットが組込まれる組換え菌の収率が著しく向上し、且つ組み込まれていない組換え菌NanK/ptrc99A(AT−005−02)の収率よりも著しく向上する。
【0221】
[ptrc−NanK遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表4】
【0222】
(実施例2.b)
本実施例は突然変異するN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の遺伝子のスクリーニングについて説明し、前記遺伝子は酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする。
さらに生産菌株の中のN−アセチル−D−グルコサミン合成量を向上させるため、酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングする。当該目的を達成するため、エラ−プロ−ンPCR技術によってクロ−ン化した遺伝子を増幅させ、増幅に用いるDNA ポリメラ−ゼにより、ミスマッチが高頻度に生じる条件下で前記遺伝子を増幅させ、それによってPCR産物から突然変異が高頻度で得られる。
具体的な操作手順は次のとおりである:
【0223】
1,エラ−プロ−ンPCRによって大腸菌N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの遺伝子NanKを増幅させる
Taq DNAポリメラ−ゼが3’ −5’校正機能を持たない性質を利用し、高マグネシウムイオン濃度(8mmol/L)およびdNTP濃度の異なる濃度 (そのうち、dATPとdGTPの濃度は1.5mmol/Lである;dTTPとdCTPの濃度は3.0mmol/Lである)下で、ランダム突然変異の頻度を制御し、タ−ゲット遺伝子にランダム突然変異を導入し、突然変異ライブラリ−を構築する;テンプレ−ト濃度のA260値は1000ng/mlであり、酵素の濃度は5U/μlであり、プライマ−の濃度は100μMである。
エラ−プロ−ンPCR反応系(50μl):10×PCR反応緩衝液5μl、dNTP(2.5mM)5μl、MgCl
2(25mM)5μl、フォワ−ドプライマ−(NanK−F、SEQ ID NO.18)1μl、リバ−スプライマ−(NanK−R、SEQ ID NO.19)1μl、DNAテンプレ−ト(NanK/pUC57)0.1μl、Taq DNAポリメラ−ゼ0.5μl、ddH
2O 32.4μl。
PCR 手順:96℃で4min予備変性を行う;94℃で1min変性を行い、56℃で1minアニ−リングを行い、75℃で2min伸長を行い、45サイクル;最後に75℃で15min伸長を行い、ゲル回収法によりPCR産物(産物サイズ:0.9kb)を回収する;5μl産物を取って1%アガロ−スゲル電気泳動を行い、−20℃で保存して必要に備える。
【0224】
2,N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの遺伝子突然変異体ライブラリ−を構築する
前記PCR産物は制限エンドヌクレア−ゼNco IとHind IIIの二重消化によって消化された後、Nco IとHind IIIエンドヌクレア−ゼで消化されたptrc99Aプラスミドとライゲ−ション反応を行い、そしてライゲ−ション産物の混合物によって大腸菌 AT−005−02の形質転換を行い、大量のクロ−ン化した形質転換体が得られ、形質転換菌体の突然変異ライブラリ−を構築する。
【0225】
3,高酵素活性の突然変異体をスクリーニングする
形質転換菌体突然変異ライブラリ−から、300個の突然変異するクロ−ンを無作為に選び、野生型NanK/ptrc99A(AT−005−02)を対照菌株とし、それぞれ50μg/mlペニシリン(Amp)を含む5ml LB培地に接種し、37℃、150rpmで18h培養した後、10000rpmで5min遠心分離し、菌体を収集する。上清を捨てた後、4℃で1ml PBS(pH値7.5、10Mmol/L)溶液に再懸濁させ、氷浴条件下で300Vの電圧を選び、6s 間隔で超音波を3s出して10Min超音波破砕を行い、遠心分離して上清を取って酵素粗抽出液とし、酵素活性測定を行う。
【0226】
N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の活性を測定する:N−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)がリン酸化される程度に基づき、即ちN−アセチル−D−マンノサミンの減少を測定マ−クとする。酵素活性単位の定義は次のとおりである:酵素促進反応条件下で、1分間当たり1μmol N−アセチル−D−マンノサミンに相当する還元糖を減少させるために必要な酵素量を、1酵素活力単位(IU)とする。具体的な操作は次のとおりである:5ml反応系を酵素活力測定系とし、そのうち500mmol/L N−アセチル−D−マンノサミン、5mmol/L グルコ−ス、100mmol/L Tris−HCl (pH8.0)および 100μl粗酵素液を含む。酵素活性反応は37℃の水浴下で行われ、4h温度を維持し、そして酵素分解液を70℃で10Min反応終了させる。3000rpmで10min遠心分離し、上清液を取る。HPLCによってN−アセチル−D−マンノサミン含量を測定する。
【0227】
結果により、最も高い突然変異株の酵素活性は77.5 IU/mlであり、対照菌株の酵素活性は16.3 IU/mlであることが示される。エラ−プロ−ンPCRによってNanKを改変し、酵素活性が5倍向上する突然変異株が得られる。当該酵素の活性が最も高い突然変異株を選び、プラスミドを抽出して配列を決める。結果により、当該N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ突然変異体の遺伝子配列はSEQ ID NO.26であり、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO.27で表わされることが分かる。野生型N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの遺伝子配列に比較し、全部で4つの塩基点突然変異が生じる:107A/G、309T/G、669G/C、783A/G;アミノ酸の3つのミスセンス突然変異が生じ、その突然変異点はそれぞれ次のとおりである: Q36R(36位のリジンからアルギニンへの変換)、I103M(103位のリジンからメチオニンへの変換)、R223s(223位のアルギニンからセリンへの変換)。当該突然変異遺伝子はNanKMと命名される。
【0228】
4,ptrc−NanKM遺伝子カセットの大腸菌染色体のNagE遺伝子部位への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−NanKM 遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−NanKM 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのNanKM断片ptrc−NanKM、および両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−を削除し、且つptrc−NanKMとfKanrfで連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0229】
具体的な操作手順は次のとおりである:(1)PCRによってptrc−NanKM断片を増幅させる
テンプレ−ト:NanKM/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:1.05kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0230】
(2)PCRによってfKanrf断片を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0231】
(3) ptrc−NanKMに結合するfKanrf を増幅させる プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0232】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanK PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−NanKM−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0233】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0234】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。さらに培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0235】
2) 調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する:pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。
電気的形質転換パラメ−タ::2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−007−01(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanKM−fKanrf)。
【0236】
(6) 耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−007−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanKM)。
【0237】
5,ptrc−NanKM遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
染色体のNagE遺伝子部位においてptrc−NanKM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−007−02と対照菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0238】
フラスコ発酵収率を表5に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、突然変異したptrc−NanKM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−007−02の収率が著しく向上し、且つ突然変異しない対照菌株AT−006−02の収率よりも著しく向上する。
【0239】
[ptrc−NanKM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表5】
【0240】
前記結果により: N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの過剰発現によりN−アセチル−D−グルコサミン収率を著しく向上させることができるだけでなく、エラ−プロ−ンPCR技術によって突然変異体をスクリーニングすることもN−アセチル−D−グルコサミン収率を大きく向上させることができ、これは得られる当該酵素の突然変異体が酵素の活性を向上させることによるものであることが分かる。
【0241】
(実施例2.c)
本実施例はptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、特にビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbおよびその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0242】
ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbを増幅させ、且つptrc99Aを挿入し、それによってVhbをTrcプロモーターの制御下で菌株の形質転換を行い、またはビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbの突然変異体をスクリーニングしてptrc99Aを挿入し、菌株の形質転換を行い、それによって微生物の溶存酸素を利用する能力を向上させ、N−アセチルグルコサミン発酵生産収率を向上させる。
【0243】
1,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb
(1)Vhb遺伝子を増幅させ、且つptrc99Aを挿入する
ビトレオシラヘモグロビン遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.60であり、アミノ酸配列はSEQ ID NO.61である。Escherichia coliがコドン塩基を優先することにより、ビトレオシラヘモグロビン遺伝子の最適化・合成を行い、pUC57 ベクタ−をロ−ドする。得られたベクタ−はpVS/pUC57と命名される。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Vhb−F)はSEQ ID NO.62であり、リバ−スプライマ−(Vhb−R)はSEQ ID NO.63である。
テンプレ−ト: pVS/pUC57。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:441bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とベクタ−ptrc99A をそれぞれNco IとHind IIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製してVhb断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、Vhb/ptrc99Aプラスミドが得られる。
【0244】
(2)Vhb/ptrc99Aによってptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株の形質転換を行う。
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−007−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)将養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養する。
v)モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−052(AT−007−02,Vhb/ptrc99A)。
【0245】
2,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbの突然変異体
さらに生産菌株の中のN−アセチル−D−グルコサミン合成量を向上させるため、活性向上を有するビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングする。当該目的を達成するため、エラ−プロ−ンPCR技術でクロ−ン化した遺伝子を増幅させ、増幅に用いるDNA ポリメラ−ゼにより、ミスマッチが高頻度に生じる条件下で前記遺伝子を増幅させ、それによってPCR産物から突然変異が高頻度で得られる。
【0246】
具体的な操作手順は次のとおりである:
(1)エラ−プロ−ンPCRによって大腸菌ビトレオシラヘモグロビン遺伝子Vhbを増幅させる
Taq DNAポリメラ−ゼが3' −5'校正機能を持たない性質を利用し、高マグネシウムイオン濃度(8mmol/L)およびdNTP濃度の異なる濃度(そのうち、dATPとdGTPの濃度は1.5mmol/Lである;dTTPとdCTPの濃度は3.0mmol/Lである)下で、ランダム突然変異の頻度を制御し、タ−ゲット遺伝子にランダム突然変異を導入し、突然変異ライブラリ−を構築する;テンプレ−ト濃度のA260値は1000ng/mlであり、酵素の濃度は5U/μlであり、プライマ−の濃度は100μMである。
エラ−プロ−ンPCR反応系(50μl):10×PCR反応緩衝液5μl、dNTP(2.5mM)5μl、MgCl
2 (25mM)5μl、フォワ−ドプライマ−(Vhb−F、SEQ ID NO.62)1μl、リバ−スプライマ−(Vhb−R、SEQ ID NO.63)1μl、DNAテンプレ−ト(NanK/pUC57)0.1μl、Taq DNAポリメラ−ゼ0.5μl、ddH
2O 32.4μl。
PCR 手順:
96℃で4min予備変性を行う。
94℃で1min変性を行い、56℃で1minアニ−リングを行い、75℃で2min伸長を行い、45サイクル;最後に75℃で15min伸長を行い、ゲル回収法によりPCR産物(産物サイズ:0.9kb)を回収する。
5μl産物を取って1%アガロ−スゲル電気泳動を行い、−20℃で保存して必要に備える。
【0247】
(2)ビトレオシラヘモグロビンの遺伝子突然変異体ライブラリ−を構築する
前記PCR産物は制限エンドヌクレア−ゼNco IとHind IIIの二重消化によって消化された後、Nco IとHind IIIエンドヌクレア−ゼで消化されたptrc99Aプラスミドとライゲ−ション反応を行い、そしてライゲ−ション産物の混合物によって大腸菌 AT−005−02の形質転換を行い、大量のクロ−ン化した形質転換体が得られ、形質転換菌体の突然変異ライブラリ−を構築する。
【0248】
(3)高活性突然変異体をスクリーニングする
形質転換菌体突然変異ライブラリ−から、突然変異するクロ−ンを420株無作為に選び、野生型Vhb/ptrc99A(AT−005−02)を対照菌株とし、それぞれ50μg/mlペニシリン(Amp)を含む5ml LB培地に接種し、37℃、150rpmで18h培養した後、10000rpmで、5min遠心分離し、菌体を収集する。上清を捨てた後、4℃で1ml PBS(pH値7.5、10Mmol/L)溶液に再懸濁させ、氷浴条件下で300Vの電圧を選び、6s間隔で超音波を3s出して10Min超音波破砕を行い、遠心分離して上清を取って酵素粗抽出液とし、活性測定を行う。
ビトレオシラヘモグロビン活性測定:CO−差吸収スペクトル法によってビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性測定を行う。CO とビトレオシラヘモグロビンが結合した後約420nmの光波に強い吸収ピ−クが生じ、典型的なVhbタンパク質の特性曲線が形成され、故にこの吸収ピ−クの強さの測定結果によって、発現したVhhb タンパク質の活性を知ることができる。
【0249】
測定方法:前記異なるタイプの組換え大腸菌が酸素制限振盪フラスコ培養と低酸素条件下で(溶存酸素≦20%)数回に分けて材料供給を行って発酵培養試験を行い、それぞれ6ml培養液を取って遠心分離し、菌体を収集し、沈殿を生理食塩水緩衝液(100mmol/L Tris−HCl、50mmol/L NaCl、pH7.5)で1回洗浄し、そして3ml 緩衝液に懸濁させ、超音波による破砕を行い、4℃、10000rpmで15min遠心分離し、上清を取り、上清を3ml 緩衝液で1倍に希釈し、且つ亜ジチオン酸ナトリウム(Na2S2O4)を加えて最終濃度を2.5mg/mlにし、そしてCOガスを導入し、3min 後紫外可視分光光度計により、400〜500 nmの波長範囲でスキャンし、紫外線スペクトルの最大吸収ピ−ク(Abs)の値によりビトレオシラヘモグロビン活性の高さを決める。
スクリーニングにより、活性が最も高い突然変異菌株が得られる。
【0250】
当該菌株を選び、プラスミドを抽出して配列を決める。結果により、当該ビトレオシラヘモグロビン突然変異体の遺伝子配列はSEQ ID NO.64であり、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO.65で表わされることが分かる。野生型N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ遺伝子配列に比較し、全部で3つの塩基点突然変異が生じる:133A/C、256T/G、284A/C;アミノ酸の3つのミスセンス突然変異が生じ、その突然変異点はそれぞれ次のとおりである:M45L(45位のメチオニンからロイシンへの変換)、C86G(86位のシステインからグリシンへの変換)、Y95S(95位のチロシンからセリンへの変換)。当該突然変異遺伝子はVhbMと命名される。
【0251】
(4)VhbM/ptrc99Aによってptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株の形質転換を行う。
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−007−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)将養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養する。
v)モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−053(AT−007−02,VhbM/ptrc99A)。
【0252】
2,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbおよびその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
ptrc−NanKMカセットが組込まれる菌株、ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子およびその突然変異菌株 AT−052、AT−053に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlのM9培養液を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1ml発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
組換え菌のフラスコ発酵収率を表6に示す。結果により、Vhbの発現は、Vhb/ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ptrc99Aプラスミドの形質転換により収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0253】
[組換え菌でVhbとVhbMを発現させるフラスコ発酵の収率]
【表6】
【0254】
(実施例3.a)
本実施例はN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ(NanE)の遺伝子NanEのクロ−ン化および大腸菌でのNanE/ptrc99Aプラスミドの形質転換、並びにptrc− NanE遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みについて説明する。
【0255】
1,NanE遺伝子のクロ−ン化、大腸菌でのNanE/ptrc99Aプラスミドの形質転換およびそれがN−アセチル−D−グルコサミンの収率に対する影響
Escherichia coli NanE(N−acetylmannosamine−6−pHospHate epimerase、N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ)の遺伝子NanEを増幅させ、Trcプロモーター制御下で菌株の形質転換を行い、それを過剰発現させることにより、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸(ManNAc−6−P)からN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)への変換を促進することができる。
【0256】
1)大腸菌NanEの遺伝子のクロ−ン化
NCBI からU00096を見つけ、Escherichia coli NanEの遺伝子のヌクレオチド配列SEQ ID NO.28、そのアミノ酸配列SEQ ID NO.29が得られる。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(NanE−F)はSEQ ID NO.30であり、リバ−スプライマ−(NanE−R)はSEQ ID NO.31である。
テンプレ−ト: AT−001(Escherichia coli ATCC 27325)ゲノム。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:690bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とpUC57−Tベクタ−を連結して配列決定・同定を行い、NanE/ pUC57が得られる。
【0257】
2)NanE遺伝子をTrcプロモーター制御下に置いてプラスミドの構築および形質転換を行う
i)プラスミドの構築:プラスミドNanE/ pUC57を増幅させ、それぞれ酵Nco IとHindIIIを使ってプラスミドNanE/pUC57とベクタ−ptrc99Aを切断し、アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製してNanE断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、NanE/ptrc99Aプラスミドが得られる。
ii)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるAT−005−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
iii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl NanE/ptrc99Aプラスミドに加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。組換え菌 NanE/ptrc99A(AT−005−02)が得られる。
【0258】
3)NanE/ptrc99Aプラスミドの形質転換がN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
将組換え菌 NanE/ptrc99A(AT−005−02)と対照菌株に対して、フラスコ振盪発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。LB液体培地の成分は以下のとおりである:5g/l 酵母パウダ−、10g/l ペプトン、10g/l NaCl。そして取種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃下、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離し。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0259】
フラスコ発酵収率を表7に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、一方ではNanE遺伝子がTrcプロモーター制御下で過剰発現した組換え菌NanE/ptrc99A(AT−005−02)の収率は著しく向上することが示唆される。
【0260】
[組換え菌NanE/ptrc99A(AT−005−02)のフラスコ発酵の収率]
【表7】
【0261】
2,ptrc−NanE 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−NanE 遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−NanE 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのNanE断片ptrc−NanEおよび両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−を削除し、且つptrc−NanEとfKanrfで連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0262】
具体的な操作手順は次のとおりである:
(1)PCRにより ptrc−NanE断片を増幅させる
テンプレ−ト:NanE/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:0.86kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0263】
(2)PCRによりfKanrf断片を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0264】
(3)ptrc−NanEに結合するfKanrf を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0265】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanE PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−NanE−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0266】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0267】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0268】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する: pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、待OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。
電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号:AT−030−01(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanE−fKanrf)。
【0269】
6)耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−030−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanE)。
【0270】
3,ptrc−NanE遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
染色体NagE遺伝子部位においてptrc−NanE遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−030−02と対照菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0271】
フラスコ発酵の収率を表8に示す。結果により、対照菌株AT−001、AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、一方ではptrc−NanE遺伝子カセットが組込まれる組換え菌の収率が著しく向上し、且つ組み込まれていない組換え菌NanE/ptrc99A(AT−005−02)収率よりも著しく向上することが示唆される。
【0272】
[ptrc−NanE遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表8】
【0273】
(実施例3.b)
本実施例は突然変異したN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ(NanE)の遺伝子のスクリーニングについて説明し、前記遺伝子は酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼをコードする。
【0274】
さらに生産菌株の中のN−アセチル−D−グルコサミン合成量を向上させるため、酵素活性を向上させるN−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼをコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングする。当該目的を達成するため、エラ−プロ−ンPCR技術によってクロ−ン化した遺伝子を増幅させ、増幅に用いるDNA ポリメラ−ゼにより、ミスマッチが高頻度に生じる条件下で前記遺伝子を増幅させ、それによってPCR産物から突然変異が高頻度で得られる。
具体的な操作手順は次のとおりである:
【0275】
1,エラ−プロ−ンPCRにより大腸菌N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ遺伝子NanEを増幅させる
Taq DNAポリメラ−ゼが3' −5'校正機能を持たない性質を利用し、高マグネシウムイオン濃度(8mmol/L)およびdNTP濃度の異なる濃度 (そのうち、dATPとdGTPの濃度は1.5mmol/Lである;dTTPとdCTPの濃度は3.0mmol/Lである)下で、ランダム突然変異の頻度を制御し、タ−ゲット遺伝子にランダム突然変異を導入し、突然変異ライブラリ−を構築する;テンプレ−ト濃度のA260値は1000ng/mlであり、酵素の濃度は5U/μlであり、プライマ−の濃度は100μMである。
エラ−プロ−ンPCR反応系(50μl):10×PCR反応緩衝液5μl、dNTP(2.5mM)5μl、MgCl
2(2.5mM) 5μl、フォワ−ドプライマ−(NanE−F、SEQ ID NO.30)1μl、リバ−スプライマ−(NanE−R、SEQ ID NO.31)1μl、DNAテンプレ−ト(NanE/pUC57)0.1μl、Taq DNAポリメラ−ゼ0.5μl、ddH
2O 32.4μl。
PCR 手順:96℃で4min予備変性を行う;94℃で1min変性を行い、56℃で1minアニ−リングを行い、75℃で2min伸長を行い、45サイクル;最後に75℃で15min伸長を行い、ゲル回収法によりPCR産物(産物サイズ:0.7kb);を回収する; 5μl産物を取って1%アガロ−スゲル電気泳動を行い、−20℃で保存して必要に備える。
【0276】
2,N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ遺伝子の突然変異体ライブラリ−を構築する
前記PCR産物は制限エンドヌクレア−ゼNco IとHind IIIの二重消化によって消化された後、Nco IとHind IIIエンドヌクレア−ゼで消化されたptrc99Aプラスミドとライゲ−ション反応を行い、そしてライゲ−ション産物の混合物によって大腸菌 AT−005−02の形質転換を行い、大量のクロ−ン化した形質転換体が得られ、形質転換菌体の突然変異ライブラリ−を構築する。
【0277】
3,高酵素活性突然変異体をスクリーニングする
形質転換菌体の突然変異ライブラリ−から、突然変異するクロ−ンを350株無作為に選び、野生型NanE/ptrc99A(AT−005−02)を対照菌株として、それぞれ50μg/mlペニシリン(Amp)を含む5ml LB培地に接種し、37℃、150rpmで18h培養した後、10000rpmで、5min遠心分離して菌体を収集する。上清を捨てた後、在4℃下で1ml PBS(pH値7.5、10Mmol/L)溶液に再懸濁させ、氷浴条件下で300Vの電圧を選び、6s 間隔で超音波を3s出して10Min超音波破砕を行い、遠心分離し上清を取って酵素粗抽出液とし、活性測定を行う。
【0278】
N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼの活性測定:N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸(ManNAc−6−P)からN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)への変換の程度に基づき、即ちN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸の減少を測定マ−クとする。酵素活単位の定義は次のとおりである:酵素促進反応条件下で、1分間当たり1μmol N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸を減少させるために必要な酵素量を、1酵素活力単位(IU)とする。
【0279】
具体的な操作は次のとおりである:先ず、基質とする同位体標識のManNAc−6−Pを調製する。合計体積225 ulの反応液を配合し、ManNAcキナーゼ(NanK)の粗酵素液(タンパク質1−5mgを含む)、20mMATP二ナトリウム塩、 60mMTris−HCl、 pH8.1、20mM MgCl
2 及び5mM ManNAc、50nCi [
14C]ManNAcを含む。37℃で30 minインキュベ−トする。エタノ−ル350ul を加えて反応を終了させる。産物を水で溶出させ、凍結乾燥する。次に、合計体積26.5 ulの反応液を調製して酵素活力測定系とし、そのうち1mM同位体標識したManNAc−6−P、37mMTris−HCl、pH 8.0及び19 mM MgCl
2を含む。37℃で、30 minインキュベ−トした後、反応液を3min加熱し、そして0.1体積のアルカリ性のリン酸酵素緩衝液を加えてpHと20単位のアルカリ性リン酸酵素を調整する。37℃で、1時間インキュベ−トした後、試料を取って乾燥したクロマトグラフィ−紙上に置き、1%四ホウ酸ナトリウムで予備浸漬する。使用される溶媒系は酢酸エチル:イソプロピルアルコ−ル:ピリジン:水 (50:22:14:14)である。放射能を有する化合物を紙クロマトグラフィ−により分離する。液体シンチレ−ションカウンタ−により放射能を測定し、ManNAc−6−PからGlcNAc−6−Pへの変換の程度により、N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼの活性単位を計算する。
【0280】
結果により、最も高い突然変異菌株の酵素活性は72 IU/mlであり、対照菌株の酵素活性は9.5 IU/mlであることが示唆される。エラ−プロ−ンPCRによってNanEを改変し、酵素活性が大幅に向上する突然変異株が得られる。当該酵素の活性が最も高い突然変異株を選び、プラスミドを抽出して配列を決める。結果により、当該N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ突然変異体遺伝子の配列はSEQ ID NO.56で、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO.57で表わされることが分かる。野生型N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼ遺伝子の配列に比較し、全部で3つの塩基点突然変異が生じる::198C/T、397T/C、559T/C;アミノ酸の2つのミスセンス突然変異が生じ、その突然変異点はそれぞれ次のとおりである:C133R(133位のシステインからアルギニンへの変換)、Y187H(187位のチロシンからヒスチジンへの変換)。当該突然変異遺伝子はNanEMと命名される。
【0281】
4,ptrc−NanEM遺伝子カセットの大腸菌染色体NagE遺伝子部位への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−NanEM 遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−NanEM 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのNanEM断片ptrc−NanEM、および両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−削除し、且つptrc−NanEMとfKanrf連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
具体的な操作手順は次のとおりである:
【0282】
(1)PCRによってptrc−NanEM断片を増幅させる
テンプレ−ト:NanEM/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:0.86kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0283】
(2)PCRによってfKanrf断片を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0284】
(3)ptrc−NanEMに結合するfKanrf を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0285】
4)Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanK PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−NanEM−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0286】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0287】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0288】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する: pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、待OD
600が約0.2に達した後、0.2%のL−アラビノ−スを加え、OD
600が約0.4に達するまで30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。電気的形質転換パラメ−タ::2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−031−01(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanEM−fKanrf)。
【0289】
(6)耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−031−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−NanEM)。
【0290】
5,ptrc−NanEM遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
染色体のNagE遺伝子部位においてptrc−NanEM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−031−02と対照菌株に対して、フラスコ振盪発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0291】
フラスコ発酵の収率を表9に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率が非常に低く、検出されず、一方では突然変異のptrc−NanEM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−031−02収率が著しく向上し、且つ突然変異しない対照菌株AT−030−02の収率よりも著しく向上することが示唆される。
【0292】
[ptrc−NanEM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表9】
【0293】
前記結果により: N−アセチル−D−マンノサミン−6−Pエピメラーゼの過剰発現によりN−アセチル−D−グルコサミン収率を著しく向上させることができるだけでなく、エラ−プロ−ンPCR技術で突然変異体をスクリーニングすることもN−アセチル−D−グルコサミンの収率を大いに向上させることができ、これは得られる当該酵素の突然変異体が酵素の活性を向上させることによるものであることが示唆される。
【0294】
(実施例3.c)
本実施例はptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株、特にビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0295】
ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbを増幅させ、且つptrc99Aを挿入し、それによってVhbをTrcプロモーターの制御下で菌株の形質転換を行い、またはビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbの突然変異体をスクリーニングしてptrc99Aを挿入し、菌株の形質転換を行い、それによって微生物の溶存酸素を利用する能力を向上させ、N−アセチルグルコサミン発酵生産収率を向上させる。
【0296】
1,ptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb
(1)Vhb遺伝子を増幅させ、且つptrc99Aを挿入する
ビトレオシラヘモグロビン遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.60であり、アミノ酸配列はSEQ ID NO.61である。Escherichia coliがコドン塩基を優先することにより、ビトレオシラヘモグロビン遺伝子の最適化・合成を行い、pUC57 ベクタ−をロ−ドする。得られたベクタ−はVhb/pUC57と命名される。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Vhb−F)はSEQ ID NO.62であり、リバ−スプライマ−(Vhb−R)はSEQ ID NO.63である。
テンプレ−ト: Vhb/pUC57。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:441bp。
PCR産物を1%アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とベクタ−ptrc99A をそれぞれNco IとHind IIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製してVhb断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、Vhb/ptrc99Aプラスミドが得られる。
【0297】
(2)Vhb/ptrc99Aを使ってptrc−NanEMカセット組込まれる大腸菌株の形質転換を行う
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−031−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養し。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−054(AT−031−02、Vhb/ptrc99A)。
【0298】
2,ptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbの突然変異体
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−031−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
【0299】
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養し。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−055(AT−031−02,VhbM/ptrc99A)。
【0300】
3,ptrc−NanEMカセット組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
ptrc−NanEMカセットが組込まれる菌株、ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子およびその突然変異菌株 AT−052、AT−053に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlのM9培養液を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1ml発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
組換え菌のフラスコ発酵の収率を表10に示す。結果により、Vhbの発現により、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換が収率の向上に対する影響がより大きいことが示唆される。
【0301】
[組換え菌によってVhbとVhbMを発現させるフラスコ発酵の収率]
【表10】
【0302】
(実施例4.a)
本実施例はUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の遺伝子WecBのクロ−ン化及び大腸菌におけるWecB/ptrc99Aプラスミドの形質転換、並びにptrc−WecB遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みについて説明する。
【0303】
1,WecB遺伝子のクロ−ン化、大腸菌におけるWecB/ptrc99Aプラスミドの形質転換及びそれがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
大腸菌UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ(UDP−N−acetyl−D−Glucosamine −2−epimerase、WecB)の遺伝子WecBを、Trcプロモーター制御下に置いて菌株の形質転換を行い、それを過剰発現させることにより、UDP−GlcNAc(UDP−N−acetyl Glucosamine、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン)からManNAc(N−acetyl−D−mannosamine、N−アセチル−D−マンノサミンまたはN−アセチル−D−マンノサミン)への変換を促進することができる。
【0304】
1)大腸菌WecB遺伝子のクロ−ン化
NCBI から大腸菌WecB 遺伝子のヌクレオチド配列SEQ ID NO.49、そのアミノ酸配列SEQ ID NO.50を見つける。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(TrcWecB−F)はSEQ ID NO.51であり、リバ−スプライマ−(TrcWecB−R)はSEQ ID NO.52である。
テンプレ−ト: AT−001 (Escherichia coli ATCC 27325)ゲノム。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:1.13kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とpUC57−Tベクタ−を連結して配列決定・同定を行い、WecB/ pUC57が得られる。
【0305】
2)WecB遺伝子をTrcプロモーター制御下に置いてプラスミドの構築および形質転換を行う
i)プラスミドの構築:プラスミドWecB/ pUC57を増幅させ、それぞれNco IとHindIIIを使ってプラスミドWecB/ pUC57とベクタ−ptrc99Aを切断し、アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製してWecB断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、WecB/ptrc99Aプラスミドが得られる。
ii)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるAT−005−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpm、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
iii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl WecB/ptrc99Aプラスミドに入れ、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。組換え菌 WecB/ptrc99A(AT−005−02)が得られる。
【0306】
3)WecB/ptrc99Aプラスミドの形質転換がN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
組換え菌 WecB/ptrc99A(AT−005−02)と対照菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。LB液体培地の成分は以下のとおりである:
5g/l 酵母パウダ−、10g/lペプトン、10g/l NaCl。
そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃下、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了した後、発酵液1mlを取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0307】
フラスコ発酵の収率を表11に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、一方ではWecB遺伝子がTrcプロモーター制御下で過剰に発現する組換え菌WecB/ptrc99A(AT−005−02)の収率が著しく向上することが示唆される。
【0308】
[組換え菌WecB/ptrc99A(AT−005−02)のフラスコ発酵の収率]
【表11】
【0309】
2,ptrc−WecB 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−WecB 遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−WecB 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのWecB断片ptrc−WecB、および両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−を削除し、且つptrc−WecBとfKanrfで連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
具体的な操作手順は次のとおりである:
【0310】
(1)PCRによりptrc−WecB断片を増幅させる
テンプレ−ト:WecB/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0311】
(2)PCRによりfKanrf断片を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0312】
(3)ptrc−WecBに結合するfKanrf を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0313】
(4) Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanK PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−WecB−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0314】
(5) Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。そして培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlで懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0315】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する: pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、OD
600が約0.4に達するまで、0.2%のL−アラビノ−スを加え、30℃で35分間誘導する。。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換: 2mm電気ショック形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。電気的形質転換パラメ−タ:2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング: 1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号:AT−042−01(AT−004−02,△NagE::ptrc−WecB−fKanrf)。
【0316】
(6) 耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−042−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−WecB)。
【0317】
3,ptrc−WecB遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
染色体のNagE遺伝子部位においてptrc−WecB遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−042−02と対照菌株対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0318】
フラスコ発酵の収率状況を表12に示す。結果により、対照菌株AT−001、AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、一方ではptrc−WecB遺伝子カセットが組込まれる組換え菌収率が著しく向上し、且つ組み込まれていない組換え菌WecB/ptrc99A(AT−005−02)収率よりも著しく向上することが示唆される。
【0319】
[ptrc−WecB遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表12】
【0320】
(実施例4.b)
本実施例は突然変異するUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の遺伝子をスクリーニングすることについて説明し、前記遺伝子は酵素活性が向上するUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼをコードする。
さらに生産菌株の中のN−アセチル−D−グルコサミン合成量を向上させるため、酵素活性を向上させるUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子の突然変異体をスクリーニングする。当該目的を達成するため、エラ−プロ−ンPCR技術によってクロ−ン化した遺伝子を増幅させ、増幅に用いるDNA ポリメラ−ゼにより、ミスマッチが高頻度に生じる条件下で前記遺伝子を増幅させ、それによってPCR産物から突然変異が高頻度で得られる。
【0321】
具体的な操作手順は次のとおりである。
1,エラ−プロ−ンPCRにより大腸菌のUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼの遺伝子WecBを増幅させる
Taq DNAポリメラ−ゼが3' −5'校正機能を持たない性質を利用し、高マグネシウムイオン濃度(8mmol/L)およびdNTP濃度の異なる濃度 (そのうち、dATPとdGTPの濃度は1.5mmol/Lである;dTTPとdCTPの濃度は3.0mmol/Lである)下で、ランダム突然変異の頻度を制御し、タ−ゲット遺伝子にランダム突然変異を導入し、突然変異ライブラリ−を構築する;テンプレ−ト濃度のA260値は1000ng/mlであり、酵素の濃度は5U/μlであり、プライマ−の濃度は100μMである。
エラ−プロ−ンPCR反応系(50μl):10×PCR反応緩衝液5μl、dNTP(2.5mM)5μl、MgCl
2 (25mM)5μl、フォワ−ドプライマ−(TrcWecB−F、SEQ ID NO.51)1μl、リバ−スプライマ−(TrcWecB−R、SEQ ID NO.52)1μl、DNAテンプレ−ト(WecB/pUC57)0.1μl、Taq DNAポリメラ−ゼ0.5μl、ddH
2O 32.4μl。
PCR 手順:96℃で4min予備変性を行う;
94℃で1min変性、56℃で1minアニ−リング、75℃で2min伸長を、45サイクル繰り返す;
最後に75℃で15min伸長を行い、ゲル回収法によりPCR産物(産物サイズ:1.13kb)を回収する;
5μl産物を取って1%アガロ−スゲル電気泳動を行い、−20℃で保存して必要に備える。
【0322】
2,UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼの遺伝子の突然変異体ライブラリ−を構築する
前記PCR産物は制限エンドヌクレア−ゼNco IとHind IIIの二重消化によって消化された後、Nco IとHind IIIエンドヌクレア−ゼで消化されたptrc99Aプラスミドとライゲ−ション反応を行い、そしてライゲ−ション産物の混合物によって大腸菌 AT−005−02の形質転換を行い、大量のクロ−ン化した形質転換体が得られ、形質転換菌体の突然変異ライブラリ−を構築する。
【0323】
3,高い酵素活性を有する突然変異体をスクリーニングする
形質転換菌体の突然変異ライブラリ−から、突然変異するクロ−ンを640株無作為に選び、野生型WecB/ptrc99A(AT−005−02)を対照菌株とし、それぞれ50μg/mlペニシリン(Amp)を含む5ml LB培地に接種し、37℃、150rpmで18h培養した後、10000rpmで、5min遠心分離して菌体を収集する。上清を捨てた後、4℃で1ml PBS(pH値7.5、10Mmol/L)溶液に再懸濁させ、氷浴条件下で300Vの電圧を選び、6s 間隔で超音波を3s出して10Min超音波破砕を行い、遠心分離し上清を取って酵素粗抽出液とし、活性測定を行う。
【0324】
UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼの活性測定: UDP−N−アセチル−D−グルコサミンかれN−アセチル−D−マンノサミンへの変換の程度に基づき、即ちUDP−N−アセチル−D−グルコサミンの減少を測定マ−クとする。酵素活単位の定義は次のとおりである:酵素促進反応条件下で、1分間当たり1μmol のUDP−N−アセチル−D−グルコサミンを減少させるために必要な酵素量を、1酵素活力単位(IU)とする。具体的な操作は次のとおりである:20ml反応系を酵素活力測定系とし、そのうち45mmol/L リン酸緩衝液(pH7.5)、10 mM MGCL2、 100 nCi UDPGlcNAc及び5mg 粗酵素液を含む。酵素活反応は37℃水浴中で30 minインキュベ−トを行う。エタノ−ルを加えて反応を終了させる。放射能を有する化合物を紙クロマトグラフィ−により分離する。液体シンチレ−ションカウンタ−により放射能を測定する。使用される溶媒系はノルマルプロパノ−ル:1M酢酸ナトリウム、pH 5.0:水(7:1:2)である。UDPGlcNAcからManNAcへの変換の程度により、UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼの活性単位を計算する。
【0325】
結果により、最も高い突然変異菌株の酵素活性は653 IU/mlであり、対照菌株の酵素活性は21.0 IU/mlであることが示唆される。エラ−プロ−ンPCRによってWecBを改変し、酵素活性が大いに向上する突然変異株が得られる。該酵素の活性が最も高い突然変異菌株を選び、プラスミドを抽出して配列を決める。結果により、当該UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ突然変異体の遺伝子配列はSEQ ID NO.58で、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO.59で表わされることが分かる。野生型UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ遺伝子の配列に比較し、全部で5つの塩基点突然変異が生じる:101G/C、433C/G、677G/T、734T/G、1038T/C;アミノ酸の4つのミスセンス突然変異が生じ、その突然変異点はそれぞれ次のとおりである:C34S(34位のシステインからセリンへの変換)、H145D(145位のヒスチジンからアスパラギン酸への変換)、C226F(226位のシステインからフェニルアラニンへの変換)、V245G(245位のバリンからグリシンへの変換)。当該突然変異遺伝子はWecBMと命名される。
【0326】
4,ptrc−WecBM遺伝子カセットの大腸菌染色体のNagE遺伝子部位への組込み
NagE遺伝子部位をptrc−WecBM遺伝子カセットの染色体での組込み部位とする。ptrc−WecBM 遺伝子カセットの大腸菌染色体への組込みを実現するために、先ず、Trcプロモーター付きのWecBM断片ptrc−WecBM、および両端にFLP組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子断片:FRT−Kanr−FRT (fKanrf)を増幅させ、且つ連結する。そして、もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのプライマ−を削除し、且つptrc−WecBMとfKanrfで連結される断片をテンプレ−トとし、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
具体的な操作手順は次のとおりである:
【0327】
(1)PCRによりptrc−WecBM断片を増幅させる
テンプレ−ト:WecBM/ptrc99A。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Trcff−F)はSEQ ID NO.20であり、リバ−スプライマ−(Trcff−R)はSEQ ID NO.21である。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0328】
(2)PCRによりfKanrf断片を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0329】
(3)ptrc−WecBMに結合するfKanrf を増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanf−F)はSEQ ID NO.22であり、リバ−スプライマ−(fKanf−R)はSEQ ID NO.231である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0330】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長のPCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:もう一度設計してNagE遺伝子配列ホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagEKO−F2)SEQ ID NO.24、リバ−スプライマ−(NagEKO−R2)SEQ ID NO.25を削除する。
テンプレ−ト:ptrc−NanK PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片、1:1で混合する。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ ptrc−WecBM−fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0331】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−004−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
【0332】
1)pKD46プラスミドの形質転換を行う
i)コンピテントセルを作製する:先ず、−20℃で保存されるEscherichia coli AT−004−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。さらに培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。最後に4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
ii)プラスミドの形質転換を行う:自然沈降された菌体250μlを取り、5μl pKD46プラスミドを加え、−4℃、30min。そして、42℃で1.5min水浴し、SOC培地0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。0.2mlの菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。30℃で一晩(12−16時間)培養する。モノクロ−ナルを採取し、5ml LB液体培地に加えて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。陽性菌株を保存して必要に備える。
【0333】
2)調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする
i)電気的形質転換コンピテントセルを作製する:pKD46 Escherichia coliを含む菌株AT−004−02をアンピシリン(Amp)LB培地を含む試験管に接種し、250rpmで一晩振盪し、翌日1%の量でAmpを含むLB培地に接種し、30℃で培養し、OD
600が約0.2に達した後、OD
600が約0.4に達するまで、0.2%のL−アラビノ−スを加え、30℃で35分間誘導する。氷浴で冷却する。超純水で1回洗浄し、10%グリセリンで2回洗浄し、最後に10%グリセリンで再懸濁させ、グリセリンの用量は菌体を500−1000倍の最終濃度に濃縮させることが好ましい。
ii)電気ショック形質転換:2mm形質転換用カップを70%エタノ−ルから取り出し、滅菌超純水で2回洗浄し、紫外線ランプで30分間照射する。4℃で30分間予備冷却する。90μlの最終的に再懸濁された細胞を取り、予備冷却用遠心管に移し、5μl(100ng以上)のステップ(1)で得られる完全長PCR断片(線形DNA)を加え、ガンでやさしく吸って均一つに混合させ、30分間氷浴する。
電気的形質転換パラメ−タ::2500V、200Ω、25μF。
iii)陽性クロ−ンの蘇生およびスクリーニング:1mlのLB液体培地を加え、37℃、100rpm、1時間。そして200μlを1つのカナマイシン(Kan)平板に塗布し、全部で5つの平板である。均一に塗布し、乾燥させる。
30℃で24時間培養する。カナマイシン耐性下で成長するクロ−ンを採取し、PCR同定を行い、陽性クロ−ンをスクリーニングする。
得られる菌株の番号: AT−043−01(AT−004−02,△NagE::ptrc−WecBM−fKanrf)。
【0334】
(6)耐性遺伝子を削除する
pCP20を前記カナマイシン耐性クロ−ンに導入し、30℃で8h培養し、そして42℃で一晩放置し、熱誘導によりFLP 組換え酵素を発現させ、プラスミドを徐々に失わせる。シクロスポリン接種液を、抗生物質を含まない培地に詰め、成長したモノクロ−ナルを選んでカナマイシン耐性平板に滴下し、成長しないものはカナマイシン耐性遺伝子がFLP組換え酵素に削除されるクロ−ンである。同定用プライマ−を使ってPCRを行ってカナマイシン耐性が消失したクロ−ンに対して同定を行う。
得られる菌株の番号: AT−043−02(AT−004−02,△NagE::ptrc−WecBM)。
【0335】
5,ptrc−WecBM遺伝子カセットの組込みがN−アセチル−D−グルコサミンの収率に対する影響
染色体のNagE遺伝子部位においてptrc−WecBM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−043−02と対照菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0336】
フラスコ発酵の収率状況を表13に示す。結果により、対照菌株AT−005−02の収率は非常に低く、検出されず、突然変異したptrc−WecBM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌AT−043−02の収率が著しく向上し、且つ突然変異しない対照菌株AT−042−02の収率よりも著しく向上することが示唆される。
【0337】
[ptrc−WecBM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表13】
【0338】
前記結果により、UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼの過剰発現によりN−アセチル−D−グルコサミン収率を著しく向上させることができるだけでなく、エラ−プロ−ンPCR技術によって突然変異体をスクリーニングすることもN−アセチル−D−グルコサミンの収率を大いに向上させることができ、これは得られる当該エピメラーゼの突然変異体が酵素の活性を向上させることによるものであることが分かる。
【0339】
(実施例4.c)
本実施例はptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株、特にビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0340】
ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbを増幅させ、且つptrc99Aを挿入し、それによってVhbをTrcプロモーターの制御下で菌株の形質転換を行い、またはビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbの突然変異体をスクリーニングしてptrc99Aを挿入し、菌株の形質転換を行い、それによって微生物の溶存酸素を利用する能力を向上させ、N−アセチルグルコサミン発酵生産収率を向上させる。
【0341】
1,ptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb
(1)Vhb遺伝子を増幅させ、且つptrc99Aを挿入する
ビトレオシラヘモグロビン遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.60であり、アミノ酸配列はSEQ ID NO.61である。Escherichia coliがコドン塩基を優先することにより、ビトレオシラヘモグロビン遺伝子の最適化・合成を行い、pUC57 ベクタ−をロ−ドする。得られたベクタ−はVhb/pUC57と命名される。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Vhb−F)はSEQ ID NO.62であり、リバ−スプライマ−(Vhb−R)はSEQ ID NO.63である。
テンプレ−ト: Vhb/pUC57。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:441bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
得られたPCR増幅断片とベクタ−ptrc99A を、それぞれNco IとHind IIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製してVhb断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、Vhb/ptrc99Aプラスミドが得られる。
【0342】
(2)Vhb/ptrc99Aを使ってptrc−WecBMカセット組込まれる大腸菌株の形質転換を行う
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−043−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養する。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−056(AT−043−02,Vhb/ptrc99A)。
【0343】
2,ptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbの突然変異体
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−043−02菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養する。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−057(AT−043−02,VhbM/ptrc99A)。
【0344】
3,ptrc−WecBMカセット組込まれる大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
ptrc−WecBMカセットが組込まれる菌株、ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子およびその突然変異菌株 AT−056、AT−057に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlのM9培養液を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目に、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1ml発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0345】
組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表14に示す。結果により、Vhbの発現により、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換が収率の向上に対する影響がより大きいことが示唆される。
【0346】
[ptrc−WecBM遺伝子カセットが組込まれる組換え菌がVhbとVhbMを発現させるフラスコ発酵の収率]
【表14】
【0347】
(実施例5.a)
本実施例はNagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、さらにGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターを削除することが、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する
【0348】
1,NagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換する
nagレギュレ−タ(NagE−NagBACD)の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(D−Glucosamine−6−pHospHate deaminase、NagB)の遺伝子のプロモーターを削除し、Trcプロモーターに置換する。D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(D−Glucosamine−6−pHospHate deaminase、NagB)による触媒反応は可逆的であり、NagBを過剰発現させ、NagBの順方向触媒反応を加速し、D−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)を増加させるという目的を達成する。
先ず、Trcプロモーター断片とfKanrf断片を増幅させ、且つ連結する。そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0349】
(1)Trc プロモーター配列を増幅させる
開示情報から、Trcプロモーター配列:SEQ ID NO.32を見つける。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(KanTrcRed−F)はSEQ ID NO.33であり、リバ−スプライマ−(KanTrcRed−R)はSEQ ID NO.34である。
テンプレ−ト:ptrc99A
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:166bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0350】
(2)両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子:fKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0351】
(3)Trcプロモーターに結合するfKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanfRed−F1)はSEQ ID NO.35であり、リバ−スプライマ−(fKanfRed−R1)はSEQ ID NO.36である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0352】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NCBI からNC_000913、Escherichia coli str. K−12 NagBプロモーターの配列とNagE遺伝子の配列SEQ ID NO.13を見つけ、設計してNagBプロモーターホモロジ−ア−ムのフォワ−ドプライマ−(NagBKO−F1)SEQ ID NO.40、リバ−スプライマ−(NagBKO−R1)SEQ ID NO.41を削除する。
テンプレ−ト:Trc プロモーターPCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片を1:1で混合する。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ fKanrf+ Trcプロモーター+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0353】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−005−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号:AT−048(AT−005−02、△NagB promotor::Trc promoter)。
【0354】
2,GlmS遺伝子の内在性天然プロモーターを削除する
グルコサミン6−リン酸シンターゼ(Glucosamine−6−pHospHate synthase、GlmS)の遺伝子のプロモーター配列を削除する。グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)はL−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼ(L−glutamine:D−fructose−6−pHospHate aminotransferase)とも呼ばれ、グルコ−ス−6−リン酸(Glc−6−P)からD−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)へのアミノ化に触媒として作用することができるが、深刻な産物抑制問題があり、そのプロモーターの配列を削除し、当該酵素に発現を失わせることにより、GlcN−6−Pの産物抑制を解除することができる。
【0355】
先ず、fKanrf断片を増幅させ、そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計し、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる
(1)両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子:fKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;第3ステップ:
72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0356】
(2)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NCBI からNC_000913、Escherichia coli str. K−12 L−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼ(GlmS)遺伝子のプロモーター配列SEQ ID NO.42を見つけ、GlmS遺伝子プロモーター配列が削除されるホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(ProGlmSKO−F)SEQ ID NO.43、リバ−スプライマ−(ProGlmSKO−R)SEQ ID NO.44を設計する。
テンプレ−ト:fKanrf PCR断片。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ fKanf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0357】
(3)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−048の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号:AT−049(AT−048,△GlmS promotor)。
【0358】
3,NagBプロモーターを発現レベルがより高いプロモーターに置換し且つさらにGlmSプロモーターがN−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響を削除する
NagBプロモーターを発現レベルがより高いプロモーターに置換する菌株、及びさらにGlmSプロモーターを削除する組換え菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0359】
フラスコ発酵の収率状況を表15に示す。結果により、NagBプロモーターをTrcプロモーターに置換する組換え菌によりN−アセチル−D−グルコサミン収率を著しく向上させ、さらにGlmSプロモーター削除した場合、N−アセチル−D−グルコサミン収率をさらに大いに向上させることが示唆される。
【0360】
[NagBプロモーターを置換しおよびさらにGlmSプロモーターを削除する組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表15】
【0361】
(実施例5.b)
本実施例はGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、さらにNagB遺伝子の内在性天然プロモーター削除することが、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する
【0362】
1,GlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換する
L−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼ(L−glutamine:D−fructose−6−pHospHate aminotransferase)の遺伝子のプロモーター配列をTrcプロモーター配列に置換する。L−グルタミン−6−リン酸アミノトランスファラーゼはグルコサミン6−リン酸シンターゼ(Glucosamine−6−pHospHate synthase、GlmS)とも呼ばれ、そのプロモーター配列をTrcプロモーター配列に置換することにより、GlmSを過剰発現させ、GlmSの触媒機能を向上させることができ、ぞれによってD−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)を増加させるという目的を達成する。
先ず、Trcプロモーター配列断片とfKanrf断片を増幅させ、且つ連結する。そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0363】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を増幅させる
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: GlmS遺伝子のプロモーター配列SEQ ID NO.42により、設計してTrcプロモーターのホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(ProGlmSptrc−F)SEQ ID NO.45、リバ−スプライマ−(ProGlmSptrc−R)SEQ ID NO.46に置換する。
テンプレ−ト:Trc プロモーター PCR断片と二次増幅されたfKanrf PCR断片を1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ fKanrf+ Trcプロモーター+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0364】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−005−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号:AT−050(AT−005−02,△GlmS promotor::Trc promoter)。
【0365】
2,NagB遺伝子の内在性天然プロモーターを削除する
nagレギュレ−タ(NagE−NagBACD)の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(D−Glucosamine−6−pHospHate deaminase、NagB)の遺伝子のプロモーター配列を削除し、NagBに機能を失わせることにより、NagBの逆方向触媒機能を削除し、GlcN−6−PからGlc−6−Pへの生成を低下させることができる。
先ず、fKanrf断片を増幅させ、そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計し、Red組換え標的線形DNA完全長断片を調製する。
【0366】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NagBプロモーターとNagE遺伝子配列SEQ ID NO.13により、設計してNagBプロモーター配列のホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(NagBKO−F2)SEQ ID NO.47、リバ−スプライマ−(NagBKO−R2)SEQ ID NO.48を削除する。
テンプレ−ト:fKanrf PCR断片
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+fKanrf+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0367】
(2)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−050の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号:AT−051(AT−050,△NagB promotor)。
【0368】
3,GlmSプロモーターを発現レベルがより高いプロモーターに置換し且つさらにNagBプロモーターがN−アセチルグルコサミン収率に対する影響を削除する
GlmSプロモーターを発現レベルがより高いプロモーターに置換する菌株、およびNagBプロモーターを削除する組換え菌株に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpm、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlの発酵培養液(M9培養液)を含む250mlフラスコに接種する。初期OD600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。据発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1mlの発酵液を取り、遠心分離する。HPLC法によってN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0369】
フラスコ発酵の収率状況を表16に示す。結果により、GlmSプロモーターをTrcプロモーターに置換する組換え菌のN−アセチル−D−グルコサミンの収率向上の効果が顕著でなく、収率が検出されない。しかし、NagBプロモーターを同時に削除することによりN−アセチル−D−グルコサミンの収率が対照菌株に比べ著しく向上することが示唆される。
【0370】
[GlmSプロモーターを置換しおよびさらにNagBプロモーターを削除する組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表16】
【0371】
(実施例5.c)
本実施例はGlmS遺伝子とNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除する大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbを増幅させ、且つptrc99Aを挿入し、それによってVhbをTrcプロモーターの制御下で菌株の形質転換を行い、またはビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の遺伝子Vhbの突然変異体をスクリーニングしてptrc99Aを挿入し、菌株の形質転換を行い、それによって微生物の溶存酸素を利用する能力を向上させ、N−アセチルグルコサミン発酵生産収率を向上させる。
【0372】
1,NagBプロモーターを発現レベルがより高いプロモーターに置換し且つさらにGlmSプロモーターを削除する大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体
(1)Vhb遺伝子を増幅させ、且つptrc99Aを挿入する
ビトレオシラヘモグロビン遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.60であり、アミノ酸配列はSEQ ID NO.61である。Escherichia coliがコドン塩基を優先することにより、ビトレオシラヘモグロビン遺伝子の最適化・合成を行い、pUC57 ベクタ−をロ−ドする。得られたベクタ−はVhb/pUC57と命名される。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(Vhb−F)はSEQ ID NO.62であり、リバ−スプライマ−(Vhb−R)はSEQ ID NO.63である。
テンプレ−ト: Vhb/pUC57。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す;
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物サイズ:441bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
得られるPCR増幅断片とベクタ−ptrc99AをそれぞれNco IとHind IIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製してVhb断片とptrc99A断片を回収し、T4 DNAで酵素を連結し、16℃で一晩放置し、且つ同定を行い、Vhb/ptrc99Aプラスミドが得られる。
【0373】
(2)Vhb/ptrc99A、VhbM/ptrc99AでNagBプロモーターを改変して発現レベルがより高いプロモーターに置換し且つさらにGlmSプロモーターを削除する大腸菌株
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−049菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地 0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養し。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−058(AT−049,Vhb/ptrc99A)、AT−059(AT−049,VhbM/ptrc99A)。
【0374】
2,GlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、さらにNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを削除する大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhbの突然変異体
1)コンピテントセルを作製する
i)−20℃で保存されるAT−051菌液を、1:50−100で10Ml LB液体培地に接種し、37℃、225rpmで、2−3時間振盪培養する。
ii)培養液を10Ml遠心管に入れ、4000g×5min、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに5min懸濁させる。
iii)4000g×5min遠心分離し、上清を捨て、氷浴用0.1M CaCl
2 5mlに懸濁させる。−4℃で12時間放置し、自然沈降させる。
2)プラスミドの形質転換を行う
i)自然沈降後の菌体250μlを取り、5μl Vhb/ptrc99Aプラスミドを加え、−4℃、30min。
ii)42℃で1.5min水浴し、SOC培地0.7mlを加え、30℃で2時間振盪する。
iii)0.2ml菌液を取り、ペニシリン平板に塗布する。
iv)30℃で一晩(12−16時間)培養する。
v)モノクロ−ナルを選び、5ml LB液体培地に入れて培養し、プラスミドを抽出して同定を行う。
vi)陽性クロ−ンを保存して必要に備える。
得られる菌株の番号:AT−060(AT−051,Vhb/ptrc99A)、AT−061(AT−051,VhbM/ptrc99A)。
【0375】
3,GlmS遺伝子とNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除する大腸菌株、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響
GlmS遺伝子とNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除する菌株、ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株AT−058、AT−059、AT−060、AT−061に対して、フラスコ発酵試験を行う。新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を取り、3mlのLB液体培地付き試験管(13×150mm)に接種し、30℃、225rpmで、約8時間培養する。そして種培養液を取り、3%を50mlのM9培養液を含む250mlフラスコに接種する。初期OD
600 は約0.5であり、37℃、225rpmで培養し、発酵サイクルは72時間である。24時間目、48時間目、10M NaOHを使って発酵液のpHを7.0に調整する。発酵液の糖分消費状況により、65%グルコ−ス溶液を数回に分けて加えてグルコ−ス濃度を20g/lに維持する。発酵が終了し、1ml発酵液を取り、遠心分離し。HPLC法によりN−アセチル−D−グルコサミン含量を測定する。
【0376】
組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表17に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0377】
[VhbとVhbMを発現させる組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表17】
【0378】
(実施例6)
本実施例はptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、且つNanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、さらにビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0379】
1,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株のNanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換する
先ず、Trcプロモーター配列断片とfKanrf断片を増幅させ、且つ連結する。そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0380】
(1)Trc プロモーター配列を増幅させる
開示情報から、Trcプロモーター配列:SEQ ID NO.32を見つける。
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(KanTrcRed−F)はSEQ ID NO.33であり、リバ−スプライマ−(KanTrcRed−R)はSEQ ID NO.34である。
テンプレ−ト:ptrc99A
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
産物サイズ:166bp。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0381】
(2)両端にFLP 組換え酵素識別部位(FRT 部位)を有するカナマイシン耐性遺伝子:fKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(mfKanf−F)はSEQ ID NO.1であり、リバ−スプライマ−(mfKanf−R)はSEQ ID NO.2である。
テンプレ−ト:pPic9K。
PCR反応条件:第1ステップ:94℃で1min変性を行う;第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40s、30回繰り返す;第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
fKanrfサイズ:1.28kb。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3である。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0382】
(3)Trcプロモーターに結合するfKanrfを増幅させる
プライマ−を設計する:フォワ−ドプライマ−(fKanfRed−F1)はSEQ ID NO.35であり、リバ−スプライマ−(fKanfRed−R1)はSEQ ID NO.36である。
テンプレ−ト:fKanrf。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
二次増幅されるfKanrfのサイズ:1.3kb。
PCR 産物を1%アガロ−スゲル電気泳動によって分離し、精製して断片を回収する。
【0383】
(4)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する: NanE遺伝子のプロモーター配列SEQ ID NO.37により、設計してTrcプロモーターのホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(ProNanEptrc−F)SEQ ID NO.38、リバ−スプライマ−(ProNanEptrc−R)SEQ ID NO.39に置換する。
テンプレ−ト:Trc プロモーター PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片を、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ fKanrf+ Trcプロモーター+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0384】
(5)Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−007−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号: AT−009(AT−007−02、△NanE promotor::Trc promoter)。
【0385】
2,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、且つNanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体
先ず、組換え大腸菌株AT−009のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−009に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−062(AT−009、Vhb/ptrc99A)、AT−063(AT−009、VhbM/ptrc99A)。
【0386】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−062、AT−063に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表18に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0387】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表18】
【0388】
(実施例7)
本実施例はptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、且つグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の遺伝子GlmS及び/又はD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の遺伝子NagBの内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0389】
ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株のNagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−010(AT−007−02、△NagB promotor::Trc promoter)が得られ、さらにGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−011(AT−010、△GlmS promotor)が得られる;ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株のGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換してAT−012(AT−007−02、△GlmS promotor::Trc promoter)が得られ、さらにNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−013(AT−012、△NagB promotor)が得られる。
組換え大腸菌株AT−011、AT−013のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−011、AT−013に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養して、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−064(AT−011,Vhb/ptrc99A)、AT−065(AT−011,VhbM/ptrc99A)、AT−066(AT−013,Vhb/ptrc99A)、AT−067(AT−013,VhbM/ptrc99A)。
【0390】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−064、AT−065、AT−066、AT−067に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表19に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0391】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表19】
【0392】
(実施例8)
本実施例はptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、且つWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0393】
1,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株のWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換する
先ず、Trcプロモーター配列断片とfKanrf断片を増幅させ、且つ連結する。そして、ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計し、Red組換え標的線形DNA完全長断片を増幅させる。
【0394】
(1)Red組換え標的線形DNA完全長PCR断片を調製する
ホモロジ−ア−ムプライマ−を設計する:NCBI からNC_000913を見つけ、Escherichia coli UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)遺伝子のプロモーターのヌクレオチド配列SEQ ID NO.53が得られ、設計してTrcプロモーターのホモロジ−ア−ムフォワ−ドプライマ−(ProWecBptrc−F)SEQ ID NO.54、リバ−スプライマ−(Pro WecBptrc−R)SEQ ID NO.55に置換する。
テンプレ−ト:Trc プロモーター PCR断片と二次増幅されるfKanrf PCR断片を、1:1で混合する。
PCR反応条件:
第1ステップ:94℃で1min変性を行う。
第2ステップ:94℃30s、55℃30s、72℃40sを30回繰り返す。
第3ステップ:72℃で10Min伸長を行う。
増幅産物:ホモロジ−ア−ム+ fKanrf+ Trcプロモーター+ホモロジ−ア−ム。
PCR産物をアガロ−スゲル電気泳動により分離し、精製・回収して100ng/μlの線状DNAの完全長PCR断片を得てRed組換えタ−ゲティングに用いる。
【0395】
(2) Red組換え操作
先ず、pKD46ベクタ−を大腸菌AT−007−02の菌株に導入する。そして、調製された標的線形DNA断片を電気的に形質転換し、陽性クロ−ンをスクリーニングする。最後に耐性遺伝子を削除する。
得られる菌株の番号:AT−019(AT−007−02,△WecB promotor::Trc promoter)。
【0396】
2,ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株、且つWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体
先ず、組換え大腸菌株AT−019のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−019に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−068(AT−019,Vhb/ptrc99A)、AT−069(AT−019,VhbM/ptrc99A)。
【0397】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−068、AT−069に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表20に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、 収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0398】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表20】
【0399】
(実施例9)
本実施例はptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株、且つグルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の遺伝子GlmS及び/又はD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の遺伝子NagBの内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0400】
ptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株のNagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−032(AT−031−02、△NagB promotor::Trc promoter)が得られ、さらにGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−033(AT−032、△GlmS promotor)が得られる;
ptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株GlmSの遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換してAT−034(AT−031−02、△GlmS promotor::Trc promoter)が得られ、さらにNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−035(AT−034、△NagB promotor)が得られる。
【0401】
組換え大腸菌株AT−033、AT−035のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−033、AT−035に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−070(AT−033,Vhb/ptrc99A)、AT−071(AT−033,VhbM/ptrc99A)、AT−072(AT−035,Vhb/ptrc99A)、AT−073(AT−035,VhbM/ptrc99A)。
【0402】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−070、AT−071、AT−072、AT−073に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表21に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により、収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0403】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表21】
【0404】
(実施例10)
本実施例はptrc−NanEMカセットが組込まれる大腸菌株、且つWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0405】
ptrc−NanKMカセットが組込まれる大腸菌株のWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−037(AT−031−02、△WecB promotor::Trc promoter)が得られる。
組換え大腸菌株AT−037のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−037に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−074(AT−037,Vhb/ptrc99A)、AT−075(AT−037,VhbM/ptrc99A)。
【0406】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−074、AT−075に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表22に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により、収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0407】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表22】
【0408】
(実施例11)
本実施例はptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株、グルコサミン6−リン酸シンターゼ(GlmS)の遺伝子GlmS及び/又はD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼ(NagB)の遺伝子NagBの内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0409】
ptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株のNagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−044(AT−043−02、△NagB promotor::Trc promoter)が得られ、さらにGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−045(AT−044、△GlmS promotor)が得られる; ptrc−WecBMカセットが組込まれる大腸菌株のGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換してAT−046(AT−043−02、△GlmS promotor::Trc promoter)が得られ、さらにNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを削除してAT−047(AT−046、△NagB promotor)が得られる。
【0410】
組換え大腸菌株AT−045、AT−047のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−045、AT−047に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−076(AT−045,Vhb/ptrc99A)、AT−077(AT−045,VhbM/ptrc99A)、AT−078(AT−047,Vhb/ptrc99A)、AT−079(AT−047,VhbM/ptrc99A)。
【0411】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−076、AT−077、AT−078、AT−079に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表23に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により、収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0412】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表23】
【0413】
(実施例12)
本実施例はptrc−NanKMカセットが組込まれ、NanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換する大腸菌株、GlmS遺伝子とNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを置換及び/又は削除し、WecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、そしてビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させる遺伝子Vhb及びその突然変異体が、N−アセチル−D−グルコサミン収率に対する影響について説明する。
【0414】
ptrc−NanKMカセットが組込まれ、且つNagB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し及びGlmS遺伝子の内在性天然プロモーター同時に削除する大腸菌株において、NanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−015(AT−011、△NanE promotor::Trc promoter)が得られ、さらにWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−027(AT−015、△WecB promotor::Trc promoter)が得られる;ptrc−NanKMカセットが組込まれ、且つGlmS遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し及びNagB遺伝子の内在性天然プロモーターを同時に削除する大腸菌株において、NanE遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−017(AT−013、△NanE promotor::Trc promoter)が得られ、さらにWecB遺伝子の内在性天然プロモーターをTrcプロモーターに置換し、AT−029(AT−017、△WecB promotor::Trc promoter)が得られる。
【0415】
組換え大腸菌株AT−027、AT−029のコンピテントセルを作製し、そして、Vhb/ptrc99AとVhbM/ptrc99AプラスミドをCaCl
2形質転換法によってAT−027、AT−029に導入し、モノクロ−ナルを採取して培養し、プラスミドを抽出して陽性クロ−ンの同定を行う。
得られる菌株の番号:AT−080(AT−027、Vhb/ptrc99A)、AT−081(AT−027、VhbM/ptrc99A)、AT−082(AT−029、Vhb/ptrc99A)、AT−083(AT−029、VhbM/ptrc99A)。
【0416】
ビトレオシラヘモグロビンを発現させる遺伝子及びその突然変異菌株 AT−080、AT−081、AT−082、AT−083に対して、フラスコ発酵試験を行う。組換え菌のフラスコ発酵の収率状況を表24に示す。結果により、Vhbを発現させることにより、Vhb/ ptrc99Aの形質転換であれ、VhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換であれ、収率を著しく向上させることができ、且つVhbM/ ptrc99Aプラスミドの形質転換により、収率をより著しく向上させることが示唆される。
【0417】
[組換え菌のフラスコ発酵の収率]
【表24】
【0418】
(実施例13)
本実施例は10L発酵槽でN−アセチル−D−グルコサミンを製造するための発酵試験について説明する
組換えエンジニアリング菌株AT−083を生産菌株とし、10L発酵槽でN−アセチル−D−グルコサミンを製造するための発酵試験を行う。
【0419】
1,種培養
(1)一次種培養:新鮮培養されるLB平板培地上のモノクロ−ナル菌株を選び、8mlのLB液体培地に接種し、37℃、225rpmで8時間培養する。
(2)二次種培養:6mlの一次種培養液を取り、200mlのM9培養液を含む1000mlフラスコに接種し、37℃、225rpmで16時間培養する。OD
600値が6.0−10になるまで、大抵対数増殖期にある。
(3)発酵培地を表25に従って調製し、そのうち、微量元素溶液を表26に従って調製し、マルチビタミン溶液を表27に従って調製する。
【0420】
[発酵培地]
【表25】
注:
i)微量元素溶液を滅菌後別々に加え、ビタミン溶液を濾過後加える;
ii)グルコ−ス:濃度65%(w/v)、別々に滅菌し、接種前に加える。グルコ−ス添加量: 6.0g/l;
iii)前記ものを混合した後、10M NH
4OHを使ってpHを7.0に調整する;
iv)発酵培地はグルコ−スを加える前に基礎培地であり、基礎培地の初期液量(培地の初期体積が発酵槽の総容量に占める割合):50%。
【0423】
2,接種
二次種液を40ml/Lで発酵槽に接種する。
接種量:2.55%(体積として),初期OD
600は0.3−0.5。
【0424】
3,工程パラメ−タ
10L自己制御型発酵槽を使って高密度発酵を行い、付属ソフトウェアを使ってデ−タ収集を行い、コンピュ−タオンライン制御を実現する。制御パラメ−タは次のとおりである:エア流量0.5−1 vvm.;溶存酸素≧20%、それによって回転速度を向上させ換気を調整する;温度37℃;pH値7.0、自動流動プラス飽和アンモニア水によって一定に保つ。基礎培地におけるグルコ−スが消費され、即ち溶存酸素が回復するとき糖分を補充する。糖分補充速度は残糖濃度0.45g/l以下を基準とする。糖分補充液はグルコ−ス濃度65%(w/v)であり、且つ2.5%グルコン酸ナトリウムまたは6%リボ−スを加える。60−72 h後発酵終了する。総液体量は75−80%である。
【0425】
4,実例(10L発酵槽)
(1)菌株の番号:AT−083。ロット番号:1019。
(2)種液濃度:OD
600は2.8である。
(3)基材:4L。
(4)接種量200ml。
(5)糖分補充速度:残糖濃度0.45g/l以下となるように制御する。
(6)糖分補充液:グルコ−ス濃度65%(w/v)であり、且つ2.5%グルコン酸ナトリウムを加える。
(7)追跡指数: OD
600、残糖含量(発酵液中の残存グルコ−ス)を測定する。
(8)産物: N−アセチル−D−グルコサミン。力価:72時間156g/l。
【0426】
(実施例14)
本実施例はN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルコサミン塩酸塩を分離・精製する後処理工程について説明する。
【0427】
1,N−アセチル−D−グルコサミンの精製
(1)不活性化:発酵液80℃、30min。
(2)固液分離:4000−8000rpmで遠心分離し、残渣と蛋白質を捨て、発酵液を取る。また、セラミック膜でろ過しても良い。
(3)脱色:製品:水:活性炭=1:(1.5−3):(0.01−0.1)、0.5−5h撹拌する。
(4)脱塩:電気透析によって脱塩する。高濃度槽に発酵液を加える時の初期塩濃度:0.01−0.05mol/L。低濃度槽中の発酵液の流速:40−80L/h、高濃度槽中の発酵液の流速:40−80L/h、シングルフィルム接地電圧0.5−1.4V。また陰・陽イオン交換樹脂により脱塩しても良い。
(5)濃縮:脱塩後の発酵液を真空条件(0.095MPa)下で50−80℃まで加熱し、8−15h濃縮し、過飽和となり、約4−6倍である。
(6)結晶化:濃縮後の発酵液を先ず25℃の水で25−35℃まで温度低下させ、そして0℃の水で1−3h温度低下させ、0−10℃になる。無水エタノ−ル(用量が製品重量の5−20倍)を加え、700−1500rpmで15min−1h撹拌する。
(7)洗浄:無水エタノ−ル(製品と等量)を加え、10−100rpmで、0.5−2h撹拌する。
(8)乾燥:50−100℃、3−10h。純度:99.96%。総収率:91.5%。
【0428】
2,D−グルコサミン塩酸塩の精製
(1)不活性化:発酵液80℃、30min。
(2)固液分離:4000−8000rpmで遠心分離し、残渣と蛋白質を捨て、発酵液を取る。また、セラミック膜でろ過しても良い。
(3)脱色:製品:水:活性炭=1:(1.5−3):(0.01−0.1)、0.5−5h撹拌する。
(4)脱塩:電気透析によって脱塩する。高濃度槽に発酵液を加える時の初期塩濃度:0.01−0.05mol/L。低濃度槽中の発酵液の流速:40−80L/h、高濃度槽中の発酵液の流速:40−80L/h、シングルフィルム接地電圧0.5−1.4V。また陰・陽イオン交換樹脂により脱塩しても良い。
(5)濃縮:脱塩後の発酵液を真空条件(0.095MPa)下で50−80℃まで加熱し、8−15h濃縮し、過飽和となり、約4−6倍である。
(6)加水分解:濃縮後の発酵液をエナメルまたはガラス容器に入れ、濃塩酸(37%)を加えて最終濃度を12−16%にし、均一に撹拌し、70℃で90min温度を維持する。塩酸をリサイクルすることができる。
(7)結晶化:まず25℃の水で温度を25−35℃まで下げ、そして0℃の水で1−3h温度低下させ、4℃になる。
(8)洗浄:無水エタノ−ル(製品と等量)を加え、10−100rpmで0.5−2h撹拌する。700−1500rpmで、15−60min遠心分離し、グルコサミン塩酸塩が得られ、転換率は89.5%である。
(9)溶解:洗浄後の製品を水に溶解し、水の用量は最初の発酵液の体積である。
(10)脱色:活性炭(用量は1%)を加える。30分間混合する。700−1500rpmで、15−60min遠心分離する。あるいは濾過し、無色の濾液が得られる。
(11)再結晶化:50℃と55cmHg真空下で濾液を真空蒸発させて過飽和となる。無水エタノ−ル(用量が製品重量の5−20倍)を加え、700−1500rpmで15min−1h撹拌する。
(12)洗浄:無水エタノ−ル(製品と等量)を加え、10−100rpmで、0.5−2h撹拌する。700−1500rpmで、15−60min遠心分離する。
(13)乾燥:50−100℃、3−10h。純度:99.92%。総収率:84.6%。
【0429】
上文において一般的な説明および実施の形態と合わせて本発明について詳しく説明するが、本発明についてある本発明に基づいて改変または改良を行うことができ、これらは当業界の技術者にとって明らかである。従って、本発明の精神から逸脱することなくなされたそのような改変又は改良は、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
【0430】
(付記)
(付記1)
微生物発酵によってN−アセチル−D−グルコサミン及び/又はD−グルコサミン塩を製造する方法であって、当該方法は次を含む:
A)発酵培地において微生物培養を行い、前記微生物は少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変を含む;及び
B)培養工程A)から産生されるN−アセチル−D−グルコサミンを収集する;
好ましくは、さらにC)N−アセチル−D−グルコサミンから脱アセチル化して得られるD−グルコサミン塩を含む;
より好ましくは、前記塩は塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、リン酸塩及び硫酸水素塩から選ばれる。
【0431】
(付記2)
前記微生物は、少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列の組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列は少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性を向上させる遺伝子改変を含む;より好ましくは、前記遺伝子改変
はアミノ酸配列SEQ ID NO:61に対応する以下の位置での置換の1種または複数種を含む:45位のメチオニンからロイシンへの置換、86位のシステインからグリシンへの置換および95位のチロシンからセリンへの置換;さらに好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:64である;
好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)はSEQ ID NO:61のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)は活性を有する;より好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)はSEQ ID NO:61のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする遺伝子のコピ−数は、1より大きいかまたはそれに等しい;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記1に記載の方法。
【0432】
(付記3)
前記微生物はさらに次の遺伝子改変中の一種または複数種を含む、付記1または2に記載の方法:
(1)少なくとも1種の、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の、微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させることができる遺伝子改変、好ましくは同時に少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させることができる遺伝子改変、それと同時に少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0433】
(付記4)
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記3に記載の方法。
【0434】
(付記5)
前記微生物は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される、付記4に記載の方法;
好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;より好ましくは、前記遺伝子改変はアミノ酸配列SEQ ID NO:17に対応する次の位置での置換:36位のリジンからアルギニンへの置換、103位のリジンからメチオニンへの置換および223位のアルギニンからセリンへの置換の1種または複数種を含む;
さらに好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列はSEQ ID NO:26である;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは酵素活性を有する;より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼはSEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを有する;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである。
【0435】
(付記6)
前記微生物は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記4に記載の方法。
【0436】
(付記7)
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記3に記載の方法。
【0437】
(付記8)
微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:29に対応する次の位置での置換の1種または2種を含む:133のシステインからアルギニンへの置換および187位のチロシンからヒスチジンへの置換。より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼ(NanE)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:56である;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼはSEQ ID NO:29のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼは酵素活性を有する;より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼはSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記7に記載の方法。
【0438】
(付記9)
微生物は少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;好ましくは、N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターはより高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;より好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記7に記載の方法。
【0439】
(付記10)
微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、微生物は少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記3に記載の方法。
【0440】
(付記11)
微生物は、少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、エンコードD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、組換え核酸分子中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記10に記載の方法。
【0441】
(付記12)
前記微生物は、少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;好ましくは、D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターはより高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;
より好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記10に記載の方法。
【0442】
(付記13)
前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させる遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性の低下、及び/又はb)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの発現低下から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種組換え核酸分子によって改変される;
より好ましくは、前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する、付記3に記載の方法。
【0443】
(付記14)
前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性の向上、及び/又はb)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、微生物は少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記3に記載の方法。
【0444】
(付記15)
前記微生物は、少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、組換え核酸分子中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記14に記載の方法。
【0445】
(付記16)
前記微生物は、少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む。好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターはより高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;より好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはHCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記14に記載の方法。
【0446】
(付記17)
.微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は、a)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性の低下、及び/又はb)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの発現低下から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される;
より好ましくは、前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は,前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;さらに好ましくは、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する、付記3に記載の方法。
【0447】
(付記18)
前記微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記3に記載の方法。
【0448】
(付記19)
前記微生物は、少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:50に対応する次の位置での置換:34位のシステインからセリンへの置換、145位のヒスチジンからアスパラギン酸への置換、226位のシステインからフェニルアラニンへの置換および245位のバリンからグリシンへの置換の1種または複数種を含む;
さらに好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列は、SEQ ID NO:58である;
好ましくは、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼはSEQ ID NO:50のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)は酵素活性を有する;より好ましくは、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼはSEQ ID NO:50のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記18に記載の方法。
【0449】
(付記20)
前記微生物は、少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記18に記載の方法。
【0450】
(付記21)
前記微生物は、さらに次の遺伝子改変の1種または複数種を含む、付記1−20のいずれか1つに記載の方法;
(1)少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を;
(4)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(6)包含少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0451】
(付記22)
前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、前記微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変は、前記微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変が微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記21に記載の方法。
【0452】
(付記23)
前記微生物は少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記21に記載の方法。
【0453】
(付記24)
前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は、エンコード微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記21に記載の方法。
【0454】
(付記25)
前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、エンコード微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記21に記載の方法。
【0455】
(付記26)
前記微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性の向上;及び/又はb)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の過剰発現から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記21に記載の方法。
【0456】
(付記27)
前記微生物は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、前記ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記26に記載の方法。
【0457】
(付記28)
前記微生物は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記26に記載の方法。
【0458】
(付記29)
前記微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)前記微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性の向上、及び/又は、b)前記微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の過剰発現から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は、少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む、少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変される、付記21に記載の方法。
【0459】
(付記30)
前記微生物は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変される;
好ましくは、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記29に記載の方法。
【0460】
(付記31)
前記微生物は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換される;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記29に記載の方法。
【0461】
(付記32)
組換え核酸分子がプラスミドにロ−ドされまたは組換え核酸分子が微生物のゲノムに組込まれる、付記1−31のいずれか1つに記載の方法。
【0462】
(付記33)
前記組換え核酸分子の発現は誘導されることができる;好ましくは、前記組換え核酸分子の発現は乳糖によって誘導される、付記1−32のいずれか1つに記載の方法。
【0463】
(付記34)
前記培養工程A)は、約20℃−約45℃で行われる;好ましくは、約33℃−約37℃で行われる;
好ましくは、前記培養工程A)は、約pH4.5−約pH8.5で行われる;好ましくは約pH6.7−約pH7.2で行われる;
好ましくは、前記培養工程A)は、材料補充発酵法を採用する;
より好ましくは、糖分補充液は、グルコ−スとリボ−スを含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、リボ−スの濃度は0.5%−15%(w/v)、より好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、リボ−スの濃度は5%−7%(w/v)である;
より好ましくは、糖分補充液はグルコ−スとグルコン酸塩を含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は0.5%−15%(w/v)、より好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は2%−3%(w/v)である;
より好ましくは、糖分補充液はグルコ−ス、リボ−スおよびグルコン酸塩を含み、好ましくは、グルコ−スの濃度は10%−85%(w/v)、リボ−スの濃度は0.5%−15%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は0.5%−15%(w/v)、より好ましくは、グルコ−スの濃度は55%−75%(w/v)、リボ−スの濃度は5%−7%(w/v)、グルコン酸塩の濃度は2%−3%(w/v)である;
さらに好ましくは、グルコン酸塩はグルコン酸ナトリウムである、付記1−33のいずれか1つに記載の方法。
【0464】
(付記35)
前記收集ステップB)は、(a)微生物が除去される発酵液からN−アセチル−D−グルコサミンを沈殿させる、及び/又は、(b)微生物が除去される発酵液からN−アセチル−D−グルコサミンを結晶化させることを含む;
好ましくは、前記收集ステップB)は、さらに発酵液を脱色するステップを含む;
より好ましくは、前記脱色ステップは、発酵液を沈殿・結晶化させる前に、発酵液を1回または複数回沈殿・結晶化させる後に行われる;
さらに好ましくは、前記脱色ステップは活性炭処理及び/又はクロマトグラフィ−脱色を含む、付記1−34のいずれか1つに記載の方法。
【0465】
(付記36)
前記ステップC)は、酸性と加熱条件下または酵素触媒下で行われる;
好ましくは、30%−37%の塩酸溶液から、60℃−90℃で脱アセチル化してN−アセチル−D−グルコサミンを加水分解してD−グルコサミン塩酸塩が得られる;
好ましくは、UDP−3−O−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化酵素作用下でN−アセチル−D−グルコサミンを加水分解してD−グルコサミンが得られ、さらに塩になる、付記1−35のいずれか1つに記載の方法。
【0466】
(付記37)
少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)を発現させることができる遺伝子改変を含む微生物。
【0467】
(付記38)
少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている、付記37に記載の微生物;
好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列は、少なくとも1種のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)の活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:61に対応する以下の位置での置換:45位のメチオニンからロイシンへの置換、86位のシステインからグリシンへの置換および95位のチロシンからセリンへの置換の1種または複数種を含む;
さらに好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:64である;
好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)は、SEQ ID NO:61のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)は活性を有する;
より好ましくは、前記ビトレオシラヘモグロビン(Vhb)はSEQ ID NO:61のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)コードする遺伝子のコピ−数は1より大きいかまたはそれに等しい;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである微生物。
【0468】
(付記39)
さらに、次の遺伝子改変の1種または複数種を含む、付記37または38に記載の微生物;
(1)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼ(NanK)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させることができる遺伝子改変をみ、好ましくは同時に少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含み、それと同時に少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0469】
(付記40)
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの過剰発現から選ばれる、;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記39に記載の微生物。
【0470】
(付記41)
少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:17に対応する次の位置での置換:36位のリジンからアルギニンへの置換、103位のリジンからメチオニンへの置換および223位のアルギニンからセリンへの置換の1種または複数種を含む;
さらに好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする核酸配列はSEQ ID NO:26である;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは酵素活性を有する;
より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼは、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを有する;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記40に記載の微生物。
【0471】
(付記42)
少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミンキナーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記40に記載の微生物。
【0472】
(付記43)
前記微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記39に記載の微生物。
【0473】
(付記44)
少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列は、少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記遺伝子改変は、アミノ酸配列SEQ ID NO:29に対応する次の位置での置換:133位のシステインからアルギニンへの置換および187位のチロシンからヒスチジンへの置換の1種または2種を含む;
より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:56である;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼは、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼは酵素活性を有する;
より好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼは、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記43に記載の微生物。
【0474】
(付記45)
少なくとも1種のN−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記N−アセチル−D−マンノサミン−6−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記43に記載の微生物。
【0475】
(付記46)
前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、微生物は少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記39に記載の微生物。
【0476】
(付記47)
少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、前記エンコードD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする核酸配列は、少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記46に記載の微生物。
【0477】
(付記48)
微生物は少なくとも1種のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;好ましくは、前記D−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記46に記載の微生物。
【0478】
(付記49)
前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させることが遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性の低下、及び/又は、b)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの発現低下から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種組換え核酸分子によって改変されている;
より好ましくは、前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させる遺伝子改変は、前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又は、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する、付記39に記載の微生物。
【0479】
(付記50)
前記微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のグルコサミン6−リン酸シンターゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記39に記載の微生物。
【0480】
(付記51)
少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、組換え核酸分子中のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記50に記載の微生物。
【0481】
(付記52)
少なくとも1種のグルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;好ましくは、グルコサミン6−リン酸シンターゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記50に記載の微生物。
【0482】
(付記53)
前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は、a)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの酵素活性の低下、及び/又は、b)微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの発現低下から選ばれる;
好ましくは、微生物は少なくとも1種の微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させることができる遺伝子改変を含む、少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている;
より好ましくは、前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は、前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼの働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のD−グルコサミン6−リン酸デアミナ−ゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターを完全に欠失させ、即ち削除する、付記39に記載の微生物。
【0483】
(付記54)
前記微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの過剰発現から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記39に記載の微生物。
【0484】
(付記55)
少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする核酸配列は少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼの酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記遺伝子改変はアミノ酸配列SEQ ID NO:50に対応する次の位置での置換:34位のシステインからセリンへの置換、145位のヒスチジンからアスパラギン酸への置換、226位のシステインからフェニルアラニンへの置換および245位のバリンからグリシンへの置換の1種または複数種を含む;
さらに好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)をコードする核酸配列はSEQ ID NO:58である;
好ましくは、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼはSEQ ID NO:50のアミノ酸配列の少なくとも約30%同じ、好ましくは少なくとも約50%同じ、より好ましくは少なくとも約70%同じ、より好ましくは少なくとも約80%同じ、さらに好ましくは少なくとも約90%同じ、最も好ましくは少なくとも約95%同じのアミノ酸配列を有し、そのうち前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼ(WecB)は酵素活性を有する;
より好ましくは、前記UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼはSEQ ID NO:50のアミノ酸配列を有する;
より好ましくは、組換え核酸分子中のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、前記組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記54に記載の微生物。
【0485】
(付記56)
少なくとも1種のUDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、UDP−N−アセチル−D−グルコサミン2−エピメラーゼをコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記54に記載の微生物。
【0486】
(付記57)
さらに次の遺伝子改変の1種または複数種を含む、付記37−56のいずれか1つに記載の微生物:
(1)少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(2)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(3)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(4)少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変;
(5)少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変;
(6)包含少なくとも1種の微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変。
【0487】
(付記58)
少なくとも1種の微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)の働きを低下させる遺伝子改変が微生物の中のマンノーストランスポーターEIIM、P/III
man(ManXYZ)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記57に記載の微生物。
【0488】
(付記59)
少なくとも1種の微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、前記微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、前記微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、前記微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)の働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のN−アセチルノイラミン酸リア−ゼ(NanA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記57に記載の微生物。
【0489】
(付記60)
少なくとも1種の微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または一部または全部の不活性化、及び/又はエンコード微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)の働きを低下させる遺伝子改変は微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸デアセチラ−ゼ(NagA)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記57に記載の微生物。
【0490】
(付記61)
少なくとも1種の前記微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている:
好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子の一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化、及び/又は、エンコード微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターの一部または全部の欠失、または、一部または全部の不活性化から選ばれる;
さらに好ましくは、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)の働きを低下させる遺伝子改変は、微生物の中のN−アセチル−D−グルコサミン特異的酵素II
Nag(NagE)をコードする内因性遺伝子を完全に欠失させ、即ち削除する、付記57に記載の微生物。
【0491】
(付記62)
前記微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性の向上及び/又は、b)微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の過剰発現から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の微生物の中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記57に記載の微生物。
【0492】
(付記63)
少なくとも1種ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている;
好ましくは、前記ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする核酸配列は、少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子のコピ−数が増加されている;
より好ましくは、組換え核酸分子は内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記62に記載の微生物。
【0493】
(付記64)
少なくとも1種のホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記ホスホグルコサミンムタ−ゼ(GlmM)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;最も好ましくは、より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記62に記載の微生物。
【0494】
(付記65)
前記微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させる遺伝子改変は、a)微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性の向上、及び/又は、b)微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の過剰発現から選ばれる;
好ましくは、少なくとも1種の、前記微生物の中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の働きを向上させることができる遺伝子改変を含む、少なくとも1種の組換え核酸分子によって改変されている、付記57に記載の微生物。
【0495】
(付記66)
少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子によって改変されている。
好ましくは、前記二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする核酸配列は、少なくとも1種の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)の酵素活性を向上させる遺伝子改変を含む;
より好ましくは、前記組換え核酸分子中の二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子のコピ−数が増加されている。
より好ましくは、前記組換え核酸分子は、内在性天然プロモーターまたは内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターを含む;
好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
より好ましくは、前記内在性天然プロモーターより高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記65に記載の微生物。
【0496】
(付記67)
少なくとも1種の、二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターに対する遺伝子改変を含む;
好ましくは、前記二機能性酵素N−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸ウリジルトランスファラーゼ(GlmU)をコードする遺伝子の内在性天然プロモーターは、より高い発現レベルを有するプロモーターに置換されている;
より好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターは、HCEプロモーター、gapプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーターから選ばれる;
最も好ましくは、前記より高い発現レベルを有するプロモーターはtrcプロモーターである、付記65に記載の微生物。
【0497】
(付記68)
組換え核酸分子はプラスミドにロ−ドされている、または、組換え核酸分子は微生物のゲノムに組込まれている、付記37−67のいずれか1つに記載の微生物。
【0498】
(付記69)
前記組換え核酸分子の発現は誘導されることができる;好ましくは、前記組換え核酸分子の発現は乳糖によって誘導される、付記37−68のいずれか1つに記載の微生物。
【0499】
(付記70)
前記微生物は細菌、酵母または真菌である、付記1−36のいずれか1つに記載の方法、または、付記37−69のいずれか1つに記載の微生物;
好ましくは、前記微生物は細菌または酵母から選ばれる;
より好ましくは、前記細菌は、エシェリヒア属(Escherichia)、バシラス属 (Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、シュ−ドモナス属(Pseudomonas)またはストレプトミセス属(Streptomyces)の属に属する細菌から選ばれる;
より好ましくは、前記細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)、シュ−ドモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)またはストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の種に属する細菌から選ばれる;
さらに好ましくは、細菌は大腸菌である;
さらに好ましくは、前記大腸菌は、K−12、BおよびWの菌株から選ばれる;
最も好ましくは大腸菌はK−12菌株である;
より好ましくは、酵母はサッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)、クルベルミセス属(Kluveromyces)およびファフィア属(PHaffia)の酵母から選ばれる;
さらに好ましくは、前記酵母は、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyce scerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharo mycespombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ハンゼヌラポリモルファ(HansenulapolymorpHa)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・カナデンシス((Pichia canadensis)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)またはファフィア・ロドチ−マ(PHaffia rohodozyma)から選ばれる;
好ましくは、前記微生物は真菌であり;
より好ましくは、真菌はアスペルギルス属(Aspergillus)、アブシディア属(Absidia)、リゾプス属(Rhizopus)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、ニュ−ロスポラ属(Neurospora)またはトリコデルマ属(Trichoderma)の属に属する真菌から選ばれる;
さらに好ましくは、真菌はアスペルギルス・ニガ−(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アブシディア・コエルレア(Absidia coerulea)、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、クリソスポリウム・ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)、ニュ−ロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ニュ−ロスポラ・インタ−メディア(Neurosporaintermedia)またはトリコデルマ・リ−セイ(Trichoderma reesei) から選ばれる。
【0500】
(付記71)
前記蛋白質はSEQ ID NO:65で表されるアミノ酸配列を有する、より高い活性を有するビトレオシラヘモグロビン(Vhb)。
【0501】
(付記72)
付記71に記載のビトレオシラヘモグロビン(Vhb)をコードする核酸分子であって、前記核酸分子はSEQ ID NO:64で表される核酸配列を有する核酸分子。
【0502】
(付記73)
付記72に記載の核酸分子を含むベクタ−。
【0503】
(付記74)
付記73に記載のベクタ−を含む微生物。
【0504】
(付記75)
ゲノムが付記72に記載の核酸分子を含む微生物。