【文献】
“Club21(Thailand)”,〔online〕,2015年 9月17日,URL,https://www.facebook.com/club21thailand/videos/bao-bao-issey-miyake-distortion/10153596953059655/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の代表的な実施形態に係るシート状成形体、及びこのシート状成形体の利用形態の一例としてのバッグについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、シート状成形体の利用形態はバッグに限られない。
なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0014】
[シート状成形体の概要及び利用形態]
まず、本発明の代表的な実施形態に係るシート状成形体1の概要及び利用形態の一例を説明する。
シート状成形体1は、
図1に示すように、シート状ないし板状に一体成形された樹脂成形品であり、連結することでバッグ等の構造体を構成することができる。シート状成形体1全体の柔軟性ないし可撓性は、作製しようとする物品に応じて設定されればよく、これは樹脂材料の配合を調整することで行われる。例えば、シート状成形体1でバッグを構成する場合(
図5A参照)、シート状成形体1は比較的柔軟であることが好ましく、シート状成形体1で壁材を構成する場合、シート状成形体1は比較的硬くてもよい。
【0015】
シート状成形体1は、
図1に示すように三角形状の板状片2を複数含んでおり、隣り合う板状片2同士を一体的に接続する接続部4に沿って屈曲するように構成されている(例えば
図2参照)。ここで板状片2は、追って
図6〜
図10との関係で述べる板状片21〜32の総称として使用され、接続部4もまた、
図6〜
図10に示す接続部41〜52の総称として使用されている。
【0016】
例えば、
図1に示す板状片2に着目すると、接続部4は、板状片2の外周(つまり辺)を取り囲むように配置されている。それゆえ、シート状成形体1は、接続部4を含む軸線X1〜X3の周りに屈曲することができる。例えば
図2では、シート状成形体1は、軸線X1の周りに矢印Rで示す側(内側)に屈曲することができる。また、シート状成形体1は、矢印Rとは反対側(外側)に屈曲することもできる。
【0017】
シート状成形体1は、連結部としての連結片6及び受け部8を介して、他のシート状成形体と連結することができる。ここで、連結片6及び受け部8はそれぞれ、
図6〜
図10との関係で述べる連結片61〜64及び受け部81〜84の総称として用いられる。
【0018】
例えば
図3及び
図4に示すように、互いに対称(例えば線対称、回転対称)な形状を有するシート状成形体1,11は、受け部8及び連結片16を介して連結可能である。もっとも、同じ形状を有する複数のシート状成形体1(又は複数のシート状成形体11)を連結することも可能であるし、1個の長いシート状成形体の両端同士を連結して環状体を形成することもできる。なお、ここでは、シート状成形体1,11を係合させるために係合具91,92が用いられているが、シート状成形体1,11の係合手段はこれに限られない。
【0019】
このように複数のシート状成形体1(又は複数のシート状成形体11)を連結することで、例えば
図5Aのようにバッグ100を構成することもできるし、壁材等の様々な構造体を構成することもできる。このようにして構成された構造体では、自由に形を変えることができる。また、破損した部分だけ交換することができるので、修理が容易であり、メンテナンス性が高い。
【0020】
また、例えば
図5Aのようにバッグ100を構成するために、
図5Bに示すように、バッグの縁となる一端側に連結片6及び受け部8がないパーツ101、持ち手102Aを含むパーツ102、開口部を閉じるための磁石103Aを含むパーツ103等の、各種附属パーツが用意されている。これらのパーツ101〜103は、バッグ100の縁に取り付けられ、バッグ100の端部を直線状に揃えることができる。
【0021】
更に、
図5E及び
図5Fのように独立した持ち手106,107のために、
図5Cのように持ち手の装着機構104A(例えば孔)を有するパーツ104が用意されている。また、
図5Dのようにスペーサとして使用するための小さなパーツ105がある。このような様々なパーツにより、シート状成形体1,11の利用可能性を広げることができる。なお、持ち手106,107は、両端部の面の向きと中央部の面の向きとはほぼ直交するように、両端部から中央に向かって捩じれているとよい。これにより、持ち手106,107を無理なくバッグに適用することができる。
【0022】
[シート状成形体の構成]
次いで、シート状成形体の構成を詳細に説明する。本実施形態では、互いに対称な形状を有する2種類のシート状成形体1,11があるが、ここではシート状成形体1を代表的に説明することとする。
【0023】
シート状成形体1は、
図8のように全体としてシート状ないし板状であり、例えば
図6に示すように、板状片21〜32、接続部41〜52、並びに、連結部としての連結片61〜64及び受け部81〜84を有する。ここでは、板状片21〜32及び受け部81〜84で略正方形状をなし、また、3個の板状片と1個の受け部(例えば板状片21〜23と受け部81)でも略正方形状をなすように、各構成要素が配置されている。ただし、板状片2、接続部4、連結部(連結片6及び受け部8)はこのような構成及び配置に限られない。
【0024】
板状片21〜32は、三角形状を呈する樹脂部材であり、隣り合う片同士が接続部41〜52を介して接続されている。板状片21〜32は、ほぼ同一の形状(例えば略直角二等辺三角形)を有しているので、ここでは
図9に示す板状片28を例に挙げて説明することにする。板状片28は、
図10に示すように、シート状成形体1の一方の表面(外面)側に隆起している。なお、板状片の隆起の仕方については、例えば、
図10のように断面が台形状でもよいし、断面が半円形状乃至は孤状でもよい。いずれにしても、これにより、板状片28の剛性が高まる。
【0025】
また、
図10のように板状片21〜32の表面(内面側)には凹部が形成され、かかる凹部は係止具92の表面形状(膨らみ)に対応している。したがって、複数のシート状成形体1が、その内面同士が対向した状態で重なる場合に、係止具92が板状片21〜32の凹部に入り込むことになる。これにより、例えば
図5Aのバッグのように特定の接続部に沿って折り畳まれる構造体において、当該構造体の厚みを薄くすることができる。
【0026】
次いで、接続部41〜52は、
図6及び
図7に示すように、隣り合う板状片21〜32の間に介在して、隣り合う板状片21〜32同士を一体的に接続する樹脂部材である。あるいは、接続部41〜52は、個々の板状片21〜32を取り囲む部材であるとも言える。例えば、板状片22は、接続部45,48,50に囲まれている。なお、板状片21〜32が略直角二等辺三角形である場合、接続部41〜52は、ほぼ真っ直ぐに延びて帯状をなす。
【0027】
接続部41〜52の厚みは、
図10に示すように、板状片21〜32の厚みよりも薄く形成されている。したがって、接続部41〜52の剛性は、板状片21〜32の剛性よりも小さい。そのため、シート状成形体1の全体を曲げようとすると、シート状成形体1は、例えば
図2に示すように、主として接続部41〜52において屈曲することになる。つまり、接続部41〜52は、隣り合う板状片21〜32の表面(外面又は内面)同士が近づく方向に屈曲することが可能である。なお、板状片21〜32自体が変形しても構わないが、上述した剛性の大小関係から、接続部41〜52の方が板状片21〜32よりも大きく屈曲することになる。
【0028】
接続部41〜52の総称としての接続部4は、屈曲を容易にするために、外表面に溝部4A〜4Cを有する。ここに、溝部4A〜4Cは、接続部41〜52の溝部41A,B,C〜52A,B,Cの総称として用いられている。例えば、接続部47は、
図9に示すように、接続部47が延びる方向(長手方向)に沿って延びる溝部47A〜47Cを有している。なお、溝部4A〜4Cの深さ及び幅は、接続部4の屈曲の容易性や接続部4の強度等に応じて適宜設定される。なお、接続部4は、板状片2の高さ(表面及び裏面の間の幅)、更にはその肉厚よりも薄くて平坦であり、溝部4A〜4Cは接続部4よりも薄くてよい。また、接続部4は、例えば
図10に示すように、板状片2の表裏面から凹んだ位置に配置されている。
【0029】
また、溝部4A〜4Cは、接続部4の内表面に形成されてもよい。この場合、複数のシート状成形体1を連結することで形成される構造体の裏側又は内面側に溝部が配置されることになり、よりシンプルな外観を得ることができる。
【0030】
溝部は、接続部4毎に少なくとも1本あればよく、好ましくは接続部4毎に3本以上であるとよい。本実施形態では、接続部41〜52毎に3本の溝部41A,B,C〜52A,B,Cが設けられている。例えば接続部45に着目すると、
図9に示すように、板状片29,31との境界に沿って溝部45A,45Cが配置され、これら溝部の間に溝部45Bが配置されている。
【0031】
このように溝部が3本以上設けられる場合、隣り合う溝部同士の距離(例えば、溝部45A,45B間の距離と溝部45B,45C間の距離)は、例えば
図9に示すようにほぼ等しいことが好ましい。溝部が等間隔に配置されることで、接続部4の屈曲がスムーズに行われる。
【0032】
次いで、連結部の一例としての連結片6及び受け部8は、複数のシート状成形体1(又は複数のシート状成形体11)を連結するために設けられる部材であり、
図6に示すように連結片61〜64及び受け部81〜84を含む。なお、本実施形態では、連結のために係止具91,92が補助的に使用される。
【0033】
具体的に説明すると、連結片6は、いずれかの板状片2から接続部4を介して外側に延びる部材である。本実施形態では、連結片61〜64は、略三角形状であり、板状片21,25,28,32(接続部41,43,44,46)から外側に延びている。ただし、連結片61〜64は、このような形状及び配置に限られない。
【0034】
連結片6は、複数のシート状成形体1(又はシート状成形体11)の連結のしやすさの観点から、シート状成形体1の中心に対して対称に配置されていることが好ましい。本実施形態では、連結片61〜64が、90度ずつ回転した位置に設けられている。
【0035】
連結片6には、受け部8と係合するための孔6A〜6Cが設けられている(
図3参照)。例えば
図9において連結片63に着目すると、連結片63は、孔63A〜63Cを有している。このような孔6A〜6Cと受け部8の孔8A〜8Cとに係止具91の爪部91A〜91Cが挿通されることで、連結されるシート状成形体1(又はシート状成形体11)の間の相対的な移動(ズレ)が規制される。
【0036】
受け部8は、他のシート状成形体1(又はシート状成形体11)の連結片6(又は連結片16)と着脱自在に係合する部材である。本実施形態では、受け部81〜84は、連結片61〜64に対応して、略三角形状を呈している。また、受け部81〜84はそれぞれ、連結片61〜64のいずれとも係合することが可能である。
【0037】
受け部8は、連結片6に対応するように、シート状成形体1の中心に対して対称に配置されていることが好ましい。本実施形態では、受け部81〜84が、90度ずつ回転した位置に設けられている。また、受け部8は、連結片6を重ね合わせ易いように、シート状成形体1の外周縁に臨む位置に配置されることが好ましい。
【0038】
受け部8には、連結片6と係合するための孔8A〜8Cが設けられている(
図3参照)。孔8A〜8Cは、連結片6の孔6A〜6Cに対応するように設けられており、受け部8と連結片6とが重ね合わされたとき、孔8A〜8C、孔6A〜6C同士も重なり、これにより係止具91の爪部91A〜91Cの挿通が可能になる。
【0039】
本実施形態では、連結片6と受け部8とを係合するために係止具91,92が用いられる。係止具91,92は、
図11及び
図12に示すように、略三角形状の板部材である。係止具91には、係止具92に向かって突出する爪部91A〜91Cが設けられ、また、係止具92には、爪部91A〜91Cに対応する孔92A〜92Cが形成されている。したがって、係止具91,92は、
図13に示すように、係止具91の爪部91A〜91Cが係止具92の孔92A〜92Cに挿通されて孔92A〜92Cの縁に引っ掛かることで、係止具91と係合する。また、孔92A〜92C及び爪部91A〜91Cを三角形状の板状部材2の角(又は頂点)の近くに配置することで、シート状成形体1,11を連結したときに係止具91,92の角の捲れを防止することができる。
【0040】
したがって、シート状成形体1,11は、
図3及び
図4に示すように、係止具91,92を介して連結片16と受け部8が係合することで、確実に連結される。このようにしてシート状成形体1,11を次々と連結することで、例えば
図5Aに示すバッグ100や壁飾りのような、任意の形状の構造体を形成することができる。また、シート状成形体1は、環状の構造体を形成するように連結することができる。更に、シート状成形体1は、例えばバッグの底面やコーナー部(角部)等の立体的構造部分を形成するように連結することもできる。
【0041】
あるいは、連結片6と受け部8とを着脱自在に係合するために、係止具95が用いられてもよい。
図14に示すように、係止具95は、連結片6及び受け部8に対応する形状(例えば三角形状)の一対の片95A,95Bと、これら片の間に介在する環状の磁石95Cと、を含んでいる。係止具95は、連結片6及び受け部8のそれぞれに取り付けられる。例えば、係止具95が連結片6に取り付けられる場合には、連結片6及び磁石95Cは一対の片95A,95Bで挟み込まれ、ネジやヨーク(鉄製)95Dなどの固定具で固定される。なお、ヨーク95Dを用いると磁力が集中して吸着力が増す。
【0042】
係止具95が対応する連結片6及び受け部8に取り付けられると、連結片6に組み込まれた磁石95Cと受け部8に組み込まれた磁石95Cとが引き合い、連結片6及び受け部8が係合することになる。連結片6と受け部8とを磁石95Cの吸引力に抗して遠ざけると、連結片6と受け部8とは分離する。このような係止具95を用いると、例えばバッグの開口部を覆う蓋をバッグ本体に着脱自在に取り付けることができる。また、バッグの開口部の側部に一対の係止具95を取付けることで、使用場面に応じて、その開口部の側部を閉じたり開けたりすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、
図6に示すように、シート状成形体1の外周に、かつ連結片6と受け部8の間に、一対の膨出部55,56及び一対の傾斜状部57,58が設けられている。シート状成形体1同士を所定の方向に連結すると、膨出部55,56同士が重なり、それによってシート状成形体1同士の間に隙間が生じなくなる。また、シート状成形体1同士を他の方向に連結すると、傾斜状部57,58同士が隣同士に位置し、シート状成形体1同士の間に隙間ができ難くい。膨出部55,56は、板状片2の肉厚よりも薄く平坦状であり、また板状片2の高さよりも低い。
【0044】
シート状成形体1の4本以上の接続部の交点に(例えば
図6では接続部42,45,48,51が交差する部位)、膨出部を形成する。この膨出部を形成することで、縦方向及び横方向だけでなく、外側に膨らむ方向に柔軟に変形することができる。また、膨出部の肉厚より薄い溝部を複数本形成することで、更に柔軟に変形することができる。例えば、バックにした際の底面と側壁を連結した隅部(3方向に変形する角部)に膨出部が位置することで、柔軟に変形することができる。なお、接続部の交点に膨出部が無いと、シート状成形体1が元の平坦な形状に戻ろうとしてテンションが掛った状態になり、係止具に余分な負荷が掛かって、使用時に外れる原因になる。
【0045】
以上、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0046】
例えば、本実施形態では、連結片6と受け部8とを係止するために係止具91,92を用いるが、連結片6及び受け部8自体が係止具91,92の係止機能を備えていてもよい。融着によって係止乃至は結合されている箇所があってもよい。
【0047】
また、本発明のシート状成形体は、種々の樹脂材料で構成することができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等の種々の樹脂材料を挙げることができる。しかも、シート状成形体は、1種類の樹脂材料で形成されている必要はなく、例えば、板状片を硬質樹脂で、接続部を硬質樹脂より柔らかい軟質材で成形されてもよい。その逆でもよい。また、シート状成形体は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂にエラストマーを混ぜることで柔らかくしてもよい。係止具は、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のシート状成形体より硬い樹脂で成形されているので、確実に係合することができる
【0048】
また、これらの樹脂材料には軟化剤や難燃剤等の種々の添加剤を必要に応じて添加することができる。更に、本発明のシート状成形体は、コア層及びスキン層を有する積層構造であってもよい。
【0049】
上記実施形態では、三角形状の板状片について説明したが、板状片は、三角形状に限られず、例えば四角形状等の多角形状や円形状でもよい。このような形状の板状片は、板状片と接続部との間に隙間を形成することで可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、シート状成形体が大よそ四角形状であり、板状片が三角形状であるが、これに限られない。例えば、シート状成形体が大よそ四角形状であり、板状片が四角形状でもよい。この場合、連結片と受け部は、板状片と同等の形状にすればよい。これにより、接続部が直線状に構成されることになるから、シート状成形体の屈曲が容易となる。