特許第6771648号(P6771648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771648
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】組み付けが簡単なクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/70 20060101AFI20201012BHJP
   F16D 13/60 20060101ALI20201012BHJP
   F16D 13/71 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F16D13/70 A
   F16D13/60 Z
   F16D13/60 A
   F16D13/71 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-505422(P2019-505422)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公表番号】特表2019-523379(P2019-523379A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】DE2017100638
(87)【国際公開番号】WO2018024290
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】102016219998.6
(32)【優先日】2016年10月13日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102016214442.1
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリーデリケ グルーマー
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−005532(JP,A)
【文献】 特開2000−179570(JP,A)
【文献】 実開平04−129929(JP,U)
【文献】 特開昭47−035445(JP,A)
【文献】 米国特許第04556133(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00048563(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパワートレーン(10)用のクラッチ(1)であって、
プレッシャプレート構成群(2)を備え、該プレッシャプレート構成群(2)は、さらにクラッチカバー(3)と、移動可能に前記クラッチカバー(3)に収容された圧着プレート(4)と、前記クラッチカバー(3)と前記圧着プレート(4)との間に支持された皿ばね(5)と、加圧要素(6)とを有し、前記加圧要素(6)は、前記皿ばね(5)を操作すべく、前記皿ばね(5)の、半径方向内側に位置する縁部領域(7)に当接している、クラッチ(1)において、
前記加圧要素(6)には、複数の第1の貫通穴(8)が設けられており、前記クラッチカバー(3)には、複数の第2の貫通穴(9)が設けられており、前記第1の貫通穴(8)は、前記クラッチ(1)の軸方向で各々1つの前記第2の貫通穴(9)に対して一列に並ぶように方向付けられており、
クラッチディスク(13)をさらに備え、該クラッチディスク(13)のボス領域(14)は、複数の第3の貫通穴(15)を有することを特徴とするクラッチ(1)。
【請求項2】
前記加圧要素(6)は、半径方向で前記皿ばね(5)から離れる方向に延在するディスク領域(11)を有し、前記ディスク領域(11)内に前記第1の貫通穴(8)が設けられていることを特徴とする、請求項1記載のクラッチ(1)。
【請求項3】
前記クラッチカバー(3)は、前記皿ばね(5)から半径方向内方に張り出すフランジ領域(12)を有し、前記フランジ領域(12)内に前記第2の貫通穴(9)が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載のクラッチ(1)。
【請求項4】
前記第3の貫通穴(15)は、各々1つの前記第1の貫通穴(8)および1つの前記第2の貫通穴(9)と一列に並ぶことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項5】
前記クラッチカバー(3)内に設けられた前記第2の貫通穴(9)の直径は、前記加圧要素(6)内に設けられた前記第1の貫通穴(8)の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項6】
リング形のカウンタプレッシャプレート(16)を備え、該カウンタプレッシャプレート(16)の内径は、前記クラッチカバー(3)、前記加圧要素(6)および/または前記ボス領域(14)の前記貫通穴(8,9,15)が配置されている仮想円の外径よりも大きいことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項7】
前記加圧要素(6)は、補助ばね(17)により支持されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項8】
前記加圧要素(6)は、前記皿ばね(5)と前記補助ばね(17)との間に配置されていることを特徴とする、請求項記載のクラッチ(1)。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ(1)と、
前記クラッチ(1)をクラッチが繋がれた位置と、クラッチが切られた位置との間で調節する操作システムと、を備え、
前記操作システムは、操作要素を有し、前記操作要素は、前記クラッチ(1)を部分的に貫き、前記加圧要素(6)に相対移動不能に連結されている、クラッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、例えば原動機により駆動される二輪/モータサイクル、乗用車等のパワートレーン用のクラッチであって、プレッシャプレート構成群を備え、プレッシャプレート構成群は、さらにクラッチカバーと、移動可能にクラッチカバーに収容された圧着プレートと、クラッチカバーと圧着プレートとの間に支持された皿ばねと、加圧要素とを有し、加圧要素は、皿ばねを操作すべく、皿ばねの、半径方向内側に位置する縁部領域に当接している、クラッチに関する。本発明は、クラッチと、クラッチをクラッチが繋がれた位置と、クラッチが切られた位置との間で調節する操作システムと、を備えるクラッチシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクラッチおよびクラッチシステムは、従来技術において既に十分に公知である。独国特許出願公開第102014201734号明細書は、例えば、ハウジングと、軸受装置を介してハウジングに傾倒可能に結合される作動装置とを備える、摩擦クラッチ用のクラッチ作動装置を開示している。作動装置は、圧着プレートの軸方向運動を引き起こすために、軸受装置に結合されている。ハウジングと作動装置との間には、補償ユニットが配置されており、両者と力を伝達するように接触している。加えて、補償ユニットは、作動装置の傾倒時、圧縮荷重を受けるように配置されている。
【0003】
しかし、公知のクラッチ、例えば単板乾式クラッチは、パワートレーン内に組み付けるには比較的手間を要する。大抵の場合、クラッチの個々の構成要素は、最終組み立てメーカにおいて別々にかつ相前後してパワートレーン内に、すなわちクランク軸側あるいは伝動機構側に組み付けられねばならない。加えて、公知のクラッチにおいて往々にして云えることは、摩擦フェーシングの摩耗が増大すると、クラッチを操作するのに比較的大きなハンドレバー力がいることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術において公知のこれらの欠点を解消し、特に、一方では、特に簡単にパワートレーン内に組み付け可能であり、他方では、運転中に引き起こされるハンドレバー力もできる限り小さいクラッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このことは、本発明により、加圧要素には複数の第1の貫通穴が設けられており、クラッチカバーには複数の第2の貫通穴が設けられており、第1の貫通穴は、クラッチの軸方向で各々1つの第2の貫通穴に対して一列に並ぶように/一直線に方向付けられていることによって解決される。
【0006】
これにより、プレッシャプレート構成群を全体としてパワートレーン内に組み付けることができる。これは、組み立てステップを大幅に減らす。同時に、プレッシャプレート構成群は既に製造元で精緻に前組み立てされているので、個々のクラッチ構成要素は、既に精緻に予調整されており、その結果、これは、ハンドレバー力の大幅な減少にもプラスに作用する。
【0007】
別の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されており、以下で詳しく説明する。
【0008】
加圧要素が、(クラッチの/クラッチの回転軸線の)半径方向で好ましくは内方に皿ばねから離れる方向に延在するディスク領域を有し、ディスク領域内に(好ましくはクラッチの周方向で分配配置される)第1の貫通穴が設けられていると、加圧要素、ひいてはクラッチが特に簡単な構造に保たれる。
【0009】
これに関して、クラッチカバーが、皿ばねから半径方向内方に張り出すフランジ領域を有し、フランジ領域内に(好ましくはクラッチの周方向で分配配置される)第2の貫通穴が設けられていても、有利である。これにより、クラッチの構造がさらに簡単化される。
【0010】
クラッチディスクが存在し、クラッチディスクのボス領域が複数の(好ましくはクラッチの周方向で分配配置される)第3の貫通穴を有していると、クラッチ全体を1回のステップでパワートレーン内に組み付けることができる。
【0011】
第3の貫通穴が、各々1つの第1の貫通穴および/または1つの第2の貫通穴と一列に並んでいると、クラッチカバー内に装入すべき各取り付け手段、例えばねじが、工具を用いて外部から簡単に組み立てられる。
【0012】
クラッチカバー内に設けられた第2の貫通穴の直径が、加圧要素内に設けられた第1の貫通穴(および/またはボス領域内に設けられた第3の貫通穴)の直径よりも小さいと、さらに有利である。これにより、クラッチカバー内に設けられた貫通穴が、取り付け手段の案内のために最適化される。
【0013】
さらに、クラッチがリング形のカウンタプレッシャプレートを備え、カウンタプレッシャプレートの内径が、クラッチカバー、加圧要素および/またはボス領域の貫通穴が配置されている(回転軸線回りの周方向で延びる)仮想円の外径よりも大きいと、組み立て用の工具のアクセスがさらに容易になる。
【0014】
加圧要素が、補助ばね、好ましくはサーボばねにより支持されていると、ハンドレバー力/レリーズ力がさらに減少する。その際、サーボばねの使用によりハンドレバーの力上昇が寿命にわたってほとんど起きないことは、特に有利である。
【0015】
加えて、加圧要素が、皿ばねと補助ばねとの間に配置されているかつ/または皿ばねをセンタリングする単数または複数のセンタリングピンにおいてセンタリングされていると、有利である。これにより、クラッチの特にコンパクトな構造が実現される。
【0016】
クラッチカバーが鋳造素材、好ましくは鋳鉄または鋳鋼から製造されていると、クラッチカバーは、特に好適にはずみ質量体として構成される。
【0017】
これに関して、カウンタプレッシャプレートが鋳造素材、好ましくは鋳鉄または鋳鋼から製造されており、かつ/またははずみ車として構成されていても、有利である。特に物質面でのカウンタプレッシャプレートのこの構成により、より高い剛性と、より高い質量のはずみ質量体とが実現される。
【0018】
加えて、クラッチディスクのボス領域は、好ましくは、鍛造ボス、特に好ましくは、一体の鍛造ボスとして形成されている。
【0019】
これらの手段により、クラッチの構造は、さらに頑強に構成される。
【0020】
クラッチが乾式の/乾式作動する摩擦クラッチとして構成されていると、特に有利である。これにより、クラッチは特に効率的に作用する。
【0021】
クラッチが付加的にまたは代替的に単板クラッチとして形成されていると、さらに有利である。これに代えて、クラッチの操作が皿ばねを介して実施される限り、クラッチを多板クラッチとして形成することも可能である。サーボクラッチとして形成することも、クラッチの機能形式を特に効率的なものとする。
【0022】
さらに本発明は、前述の複数の実施の形態のうちの少なくとも1つの実施の形態によるクラッチと、クラッチをクラッチが繋がれた位置と、クラッチが切られた位置との間で調節する操作システムと、を備え、操作システムは、他方、操作要素を有し、操作要素は、クラッチを部分的に貫き、加圧要素に相対移動不能に連結されている、クラッチシステムに関する。操作要素は、例えばプッシュロッドまたはプルエレメントとして形成されている。これにより、クラッチシステムも特に効率的に構成される。
【0023】
換言すれば、したがって好ましくは、本発明により、サーボクラッチとして形成された、クラッチディスクを備える乾式のモータサイクルクラッチが構成される。モータサイクルメーカにおけるクラッチの組み付けを簡単化すべく、好ましくは鋳造からなるクラッチカバーを有するプレッシャプレート構成群と、クラッチディスクと、はずみ車として形成されるカウンタプレッシャプレートとを備える組み立て終えたクラッチ全体を、エンジンのクランク軸に取り付けることができる。クラッチディスクのボスと、皿ばねに作用する加圧薄板(加圧要素)と、クラッチカバーとは、周方向で分配配置される貫通穴を有しており、貫通穴に取り付け手段、特に結合ボルトが、組み立て時に差し通され、その結果、クラッチカバーは、クラッチをその際に予め分解する必要なく、クランク軸に螺設される。クラッチがユニットとしてモータサイクルメーカによって組み付けられるべきでなく、まずはプレッシャプレート構成群が組み付けられ、その後で初めてクラッチディスクとカウンタプレッシャプレートとが組み付けられることが望ましい場合のために、別の一構成では、少なくとも加圧薄板およびクラッチカバーが貫通穴を有している。これは、例えばコスト節減により、2つの部分からなる構成としてのディスクボス(ボス領域)が使用されるときに、必要である。
【0024】
さらに、クラッチカバー内に設けられた貫通穴の直径は、好ましくは、加圧薄板内および場合によってはクラッチディスクのボス(ボス領域)内に設けられた貫通穴の直径よりも小さい。カウンタプレッシャプレートは、リング形に形成されており、リングの内径は、圧着プレート内に設けられた貫通穴が配置されている円の外径よりも大きい。加圧薄板は、好ましくは、皿ばねと、特にサーボばねとして形成され、皿ばねセンタリングピン(センタリングピン)に支持されている補助ばねとの間で、所定の位置に保持されている。クラッチディスクのボスは、好ましくは、一体の鍛造ボスとして形成されており、鍛造ボスを貫いて貫通穴が延びている。クラッチの操作は、好ましくは、伝動機構側からプッシュロッドによって実施される。プッシュロッドは、伝動機構入力軸を貫いて延び、クラッチをレリーズすべく、加圧薄板に作用する。しかし、代替的には、クラッチが直接的にはそのクラッチカバーを介して内燃機関のクランク軸にフランジ固定されないのであれば、内燃機関側からの引っ張りによる操作も可能である。
【0025】
本発明について、以下で図面を参照しながら詳しく説明する。図面には、様々な実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るクラッチの第1の実施例を長手方向で切断した斜視図であって、クラッチをそのクラッチカバー側から見た図である。
図2図1に示したクラッチを含むパワートレーンを長手方向で切断し、部分的に示した斜視図であって、クラッチのクラッチディスクが既に伝動機構入力軸に相対回動不能に外嵌されており、クラッチのクラッチカバーが既に内燃機関の出力軸に当接されている図である。
図3図1で使用されているようなプレッシャプレート構成体を長手方向で切断した斜視図であって、プレッシャプレート構成群の様々な構成部材が良好に看取可能となった図である。
図4図1に示したクラッチ全体の正面図である。
図5図1に示したクラッチにおいて使用されるクラッチディスクの斜視図である。
図6図5に示したクラッチディスクをその長手方向で切断した斜視図である。
図7図1に示したクラッチにおいて使用される補助ばね/サーボばねの斜視図である。
図8図1に示したクラッチを長手方向で切断し、部分的に分解して示した斜視図である。
図9】特にクラッチディスクがボス領域において2つの部分から構成されている点で第1の実施例とは相違する別の第2の実施例による本発明に係るクラッチを部分的に分解して示した斜視図である。
図10図9で使用されているようなクラッチディスクを長手方向で切断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は、概略的性質のものにすぎず、本発明の理解の一助としてのみ用いられる。同じ要素には、同じ符号を付した。
【0028】
図1ないし8を参照しながら、第1の実施例による本発明に係るクラッチ1について説明する。図9および10に示した第2の実施例は、原理的に第1の実施例に即して構成され、かつ機能するものであるので、以下では、第2の実施例については、第1の実施例との相違点のみ説明する。
【0029】
第1の実施例のクラッチ1に話を戻し、第1の実施例のクラッチ1の構造は、図1に良好に看取可能である。さらに図2に示すように、このクラッチ1は、一般に連結解除可能なトルク伝達装置として、すなわち、内燃機関のクランク軸の形態の出力軸18を伝動機構の伝動機構軸19に対して選択的に接続あるいは切断するために用いられる。内燃機関および伝動機構のさらなる構成要素は、ここでは見やすくするために図示していない。クラッチ1は、この場合、摩擦クラッチとしてかつ単板クラッチとして構成されている。
【0030】
クラッチ1は、典型的にはクラッチカバー3を備え、クラッチカバー3は、運転中/クラッチ1が組み付けられた状態で相対回動不能に出力軸18に結合されている。加えて、クラッチカバー3には相対回動不能にカウンタプレッシャプレート16/プレッシャプレートが結合されている。他方、クラッチ1のクラッチディスク13は、相対回動不能に伝動機構軸19に結合されている。さらに圧着プレート4が存在し、圧着プレート4は、軸方向で移動可能かつ相対回動不能にクラッチカバー3に収容されている。クラッチディスク13は、クラッチディスク13の(クラッチの回転軸線25に関して)半径方向外側の摩擦フェーシング20でもって、クラッチ1が繋がれた位置では、相対回動不能に圧着プレート4によってカウンタプレッシャプレート16に押し付けられるように、カウンタプレッシャプレート16と圧着プレート4との間に配置されている。クラッチが切られた位置では、圧着プレート4は、トルクが出力軸18からクラッチディスク13に伝達されないように、クラッチディスク13に対して/摩擦フェーシングおよびカウンタプレッシャプレート16に対して相対的に無圧に配置されている。
【0031】
圧着プレート4を、典型的には軸方向で、クラッチが繋がれた位置と、クラッチが切られた位置との間で移動させるべく、皿ばね5が設けられている。皿ばね5は、ここでは見やすくするためにそれ以上は図示しない操作システム、例えばセントラルレリーズ装置により、その旋回位置へと、クラッチが繋がれたあるいは切られた位置を達成すべく旋回される。皿ばね5は、ここではディスクとして形成されている加圧要素6に相対移動不能に連結されている。皿ばね5自体は、周方向で分配配置された複数のセンタリングピン21によって定められた旋回点を中心として旋回可能にクラッチカバー3に取着されている。皿ばね5の旋回運動は、クラッチカバー3内と、圧着プレート4とに設けられたカムを介して実施される。センタリングピン21は、皿ばね5の半径方向のリテーニング手段としても用いられる。加圧要素6は、皿ばね5の、半径方向内側に位置する縁部領域7に当接している。特に皿ばね5のこの縁部領域7には、複数の皿ばねフィンガ部が設けられている。縁部領域7は、センタリングピン21の半径方向内側に存在する領域である。
【0032】
加圧要素6は、本実施例では、薄板ディスクとして/金属薄板から形成されており、それゆえ単に加圧薄板とも称する。加圧要素6は、ディスク領域11により、クラッチディスク13内に設けられた中央の貫通開口22の一部に半径方向内方に重なるところまで、半径方向内方に延在している。したがって、加圧要素6は、クラッチディスク13よりも小さい最小直径を有している。
【0033】
図3に詳細に看取可能であるように、皿ばね5を付加的に支持すべく、補助ばね17が設けられている。補助ばね17は、サーボばねとして構成されている。補助ばね17は、センタリングピン21および加圧要素6に支持されている。補助ばね17は、これにより間接的に皿ばね5を軸方向でクラッチカバー3に対して相対的に付勢している。補助ばね17は、図7にも単体で看取可能である。センタリングピン21のところに周方向で分配配置される複数の載置点のために、サーボばね17は、対応するように成形されたアーム/半径方向外方に突出するノーズ/突出部26を有している。これによりサーボばね17は、加圧要素6に予負荷下で当接するので、加圧要素6の操作を介してサーボばね17の操作が実施される。
【0034】
さらに図4ないし6に示すように、第1の実施例によるクラッチディスク13は、一体のボスを有しており、ボスは、これにより一体のボス領域14を形成している。ボス領域14は、鍛造部品として形成されている。ボス領域14は、典型的には、貫通開口22を外方に画定するセレーション歯列23を半径方向の内面に有しており、半径方向の内面は、既に図2に示したように、運転中、相対回動不能に伝動機構軸19に結合されている。セレーション歯列23の軸方向の一端には、その後、ボス領域14が半径方向外方に延在し、結合フランジ24を形成している。半径方向外側には、摩擦フェーシング20が、結合フランジ24に相対回動不能に取着されている。
【0035】
図8に示すように、クラッチ1は、実質的に3つの下位構成体から構成されている。このために、クラッチ1内で、カウンタプレッシャプレート16と、クラッチディスク13と、プレッシャプレート構成群2とが、それぞれ、下位構成体として実現されている。1つの下位構成体としてのプレッシャプレート構成群2は、前組み立てされるユニットであり、複数の構成要素、特にクラッチカバー3と、クラッチカバー3に取着されるセンタリングピン21と、圧着プレート4と、皿ばね5と、補助ばね17と、加圧要素6とからなっている。
【0036】
クラッチカバー3は、鋳造素材、好ましくは鋳鉄素材または鋳鋼素材から製造されている。クラッチカバー3は、半径方向内側に存在する領域にフランジ領域12を形成しており、フランジ領域12は、出力軸18の端面に取り付けるために用意されている。特にこのフランジ領域12は、複数の貫通穴9を有している。貫通穴9は、以下では、第2の貫通穴9と称する。第2の貫通穴9は、周方向で分配配置されている。同じく周方向で分配配置される複数の第1の貫通穴8は、加圧要素6内、すなわちディスク領域11内に設けられている。フランジ領域12と加圧要素6とは、第1の貫通穴8が各々1つの第2の貫通穴9と(クラッチ1/回転軸線25の軸方向で)一列に並ぶように、軸方向で相並んで配置され、かつ半径方向で互いに相対的に方向付けられている。加えて、第2の貫通穴9は、直径に関して第1の貫通穴8よりも小さく形成されている。
【0037】
さらに図8に看取可能であるように、クラッチディスク13も、やはり複数の第3の貫通穴15を有している。これらの第3の貫通穴15は、ボス領域14内に設けられている。第3の貫通穴15も、既に述べたそれぞれの貫通穴8および9が加圧要素6あるいはクラッチカバー3を軸方向で貫通しているのと同様に、ボス領域14を軸方向で貫通している。第3の貫通穴15は、周方向に沿ってやはり分配配置されている。第3の貫通穴15は、やはり、同じくそれぞれ第1の貫通穴8の1つおよび第2の貫通穴9の1つと一列に並ぶように、第1および第2の貫通穴8および9に合わせて調整されている。これにより、クラッチ1を出力軸18に取り付ける際に、第2の貫通穴9に挿入されたねじ/植込みボルトの形態の取り付け手段まで、クラッチディスク13および加圧要素6を通り抜けるための、工具用のアクセスが提供される。加えて、第3の貫通穴15の直径は、他方、第2の貫通穴9の直径よりも大きい。あるいは、第3の貫通穴15は、第2の貫通穴9と同じ大きさに構成されていてもよい。
【0038】
カウンタプレッシャプレート16の内径が、クラッチカバー3、加圧要素6およびボス領域14の貫通穴8,9および15が配置されている仮想円の外径よりも大きく構成されていることも看取可能である。
【0039】
プレッシャプレート/カウンタプレッシャプレート16は、好ましくは、(比較的低コストの)金属薄板からかつ/またははずみ車として形成されている。特に好ましくは、カウンタプレッシャプレート16は、高い質量および剛性を実現すべく、鋳造素材/鋳造金属素材から製造されている。
【0040】
しかし、ボス領域14は、図9および10に示した第2の実施例に看取可能であるように、2つの部分から構成されていてもよい。加えて、ボス領域において原理的には第3の貫通穴15を省略してもよい。好ましくは、この場合、ボス領域14の、セレーション歯列23を形成するスリーブ部分が鍛造部品として形成されている一方、結合フランジ24は薄板部品として形成されている。ボス領域14の2つの部分からなる構成は、クラッチ1をさらに低コスト化する。
【0041】
換言すれば、本発明により、クラッチ1は、特に簡単に組み立て可能なユニットとして実現される。現在の大量生産クラッチは、しばしば複数の部材に分けて顧客に納品される。これは、クラッチ1を結合する(カバー3をクランク軸8にねじ止めする)ことと、ねじ/取り付け手段を個々の部材に通すことができるほどのスペースがないこととに起因している。この問題は、穴8,15により、すべての部材(レリーズプレート(加圧要素6)および場合によってはクラッチディスク13)が、工具を含めたクランク軸ねじのためにスペースを有することによって解決される。これらの部材の形状を介して、すべての穴8,9,15が互いに一列に並び、これによりクラッチ1が問題なく1つのセットとしてクランク軸8に組み付けられることが保証される。別の利点は、クラッチ特性線/クラッチ不釣り合いをこれにより社内で測定することができ、これを顧客先でも再現可能であることにある。さらに、組み立て時に高まるミスの可能性が大幅に減少する。クラッチディスク13は、一体の鍛造ボス14を有していてもよいし、2つの部分から構成されていてもよい。サーボばね17は、その載置点を皿ばねピン(センタリングピン21)およびレリーズディスク(加圧要素6)上に有している。各載置点のために、サーボばね17は、対応するように成形されたアームを有している。皿ばねピン21上での載置は、同時にサーボばね17をセンタリングするために用いられる。クラッチ1の操作は、好ましくは、プッシュロッドを介して行われ、プッシュロッドは、伝動機構側から伝動機構軸19に差し通される。レリーズプレート6を介して皿ばね5は操作される。摩耗には、サーボばね17が作用して、力を減少させるように作用する。サーボばね17の操作は、他の公知の使用の場合のように皿ばね5を介して直接的には実施されない。むしろ、サーボばね17は、レリーズプレート6に(予め付勢されて)当接しており、レリーズプレート6の操作を介してサーボばね17の操作が実施される。
【0042】
加えて、クラッチ1はクラッチシステムの構成要素であり、クラッチシステムは、付加的に操作システムを備えているが、操作システムは、ここでは見やすくするために図示していない。操作システムは、クラッチが繋がれた位置と、クラッチが切られた位置との間でクラッチ1を調節する、操作要素を有している。操作要素は、クラッチ1を部分的に貫き、加圧要素6に相対移動不能に連結されている。
【符号の説明】
【0043】
1 クラッチ
2 プレッシャプレート構成群
3 クラッチカバー
4 圧着プレート
5 皿ばね
6 加圧要素
7 縁部領域
8 第1の貫通穴
9 第2の貫通穴
10 パワートレーン
11 ディスク領域
12 フランジ領域
13 クラッチディスク
14 ボス領域
15 第3の貫通穴
16 カウンタプレッシャプレート
17 補助ばね
18 出力軸
19 伝動機構軸
20 摩擦フェーシング
21 センタリングピン
22 貫通開口
23 セレーション歯列
24 結合フランジ
25 回転軸線
26 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10