(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771672
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ブレード、インペラ及びファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
F04D29/38 D
F04D29/38 A
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-533011(P2019-533011)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公表番号】特表2020-502421(P2020-502421A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】CN2017103960
(87)【国際公開番号】WO2018126745
(87)【国際公開日】20180712
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】201710009207.9
(32)【優先日】2017年1月6日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089359
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンスィズ,インコーポレーテッド オブ ジュハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,フォン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ジアンホワン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジョンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ビンホワ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ハオ
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−056772(JP,A)
【文献】
特開2007−040197(JP,A)
【文献】
特開2013−113130(JP,A)
【文献】
特開2002−257088(JP,A)
【文献】
特開2007−040201(JP,A)
【文献】
特開2002−106490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードであって、前記ブレードの後縁に少なくとも1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記少なくとも1セグメントの内向き凹状弧の少なくとも1つの端点が前記ブレードの径方向外縁と径方向内縁との間に位置し、前記ブレードには、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する少なくとも1本のリッジ構造が設けられ、
前記ブレードにおいて前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁への方向に複数のリッジ構造が間隔を置いて設けられ、前記リッジ構造の最大高さは、前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁への方向に徐々に小さくなることを特徴とするブレード。
【請求項2】
前記リッジ構造は、一端が前記内向き凹状弧の端点と交わり、他端が前記ブレードの前縁と交わることを特徴とする請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
各セグメントの前記内向き凹状弧の2つの端点ごとに対応して1本の前記リッジ構造が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
前記ブレードの後縁に1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する前記少なくとも1本のリッジ構造は、前記ブレードの径方向内縁に近接して設けられる第1リッジ構造と、前記ブレードの径方向外縁に近接して設けられる第2リッジ構造とを含み、前記第1リッジ構造の一端が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向内縁に近い端点と交わり、前記第2リッジ構造が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向外縁に近い端点と交わることを特徴とする請求項1に記載のブレード。
【請求項5】
前記第1リッジ構造の最大高さをW1とし、前記第2リッジ構造の最大高さをW2とし、径方向において、前記ブレードの径方向内縁と径方向外縁との距離をLとし、
W1=k1*Lであり、係数k1の範囲は0.025〜0.035であり、及び/又は、
W2=k2*Lであり、係数k2の範囲は0.021〜0.031であることを特徴とする請求項4に記載のブレード。
【請求項6】
前記リッジ構造は周方向において円弧形状をなす請求項1に記載のブレード。
【請求項7】
前記ブレードの後縁に1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する前記少なくとも1本のリッジ構造は、前記ブレードの径方向内縁に近接して設けられる第1リッジ構造と、前記ブレードの径方向外縁に近接して設けられる第2リッジ構造とを含み、前記第1リッジ構造の一端が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向内縁に近い端点と交わり、前記第2リッジ構造が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向外縁に近い端点と交わり、前記第1リッジ構造の周方向における円弧半径をR2とし、前記第2リッジ構造の周方向における円弧半径をR3とし、前記ブレードの径方向内縁の半径をR1とし、
R2=k3*R1であり、係数k3の範囲は1.3〜1.4であり、及び/又は、
R3=k4*R1であり、係数k4の範囲は1.95〜2.05であることを特徴とする請求項6に記載のブレード。
【請求項8】
前記リッジ構造の円心と前記ブレードの径方向内縁の円心とが重なることを特徴とする請求項6に記載のブレード。
【請求項9】
前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁へと順に均一に分布された5つのエレメンタリーステージにおいて、
カスケードソリディティは、順に0.84〜0.86、0.77〜0.79、0.54〜0.56、0.57〜0.59、0.51〜0.53であり、及び/又は、
取付角度は、順に30.5〜32.5、24.5〜26.5、19.5〜21.5、15.5〜17.5、13.0〜15.0であり、及び/又は、
前方屈曲角度は、順に0°、1°〜3°、7°〜9°、9°〜11°、17°〜19°であることを特徴とする請求項4に記載のブレード。
【請求項10】
前記リッジ構造は尖角構造を有し、前記尖角構造は、前記ブレードの吸引力面及び圧力面とそれぞれ平滑な曲面を介して接続されることを特徴とする請求項1に記載のブレード。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれかに記載のブレードを含むことを特徴とするインペラ。
【請求項12】
周方向に沿って配列される複数の前記ブレードを含み、隣り合うブレード間に夾角を有し、前記夾角のうち少なくとも1つの夾角の度数が他の夾角の度数とは異なることを特徴とする請求項11に記載のインペラ。
【請求項13】
前記インペラは、7つの前記ブレードを含み、周方向において隣り合う前記ブレード同士間の夾角は、順に49.5°〜50.5°、51.0°〜52.0°、45.5〜46.5°、58.6〜59.6°、47.5〜48.5°、46.8〜47.3°、57.5°〜58.5°であることを特徴とする請求項12に記載のインペラ。
【請求項14】
ハブと外輪とを含み、前記ブレードの径方向内縁が前記ハブと接続され、前記ブレードの径方向外縁が前記外輪と接続され、前記外輪の径方向外側に凹溝が設けられていることを特徴とする請求項11乃至13のうちのいずれかに記載のインペラ。
【請求項15】
前記外輪の径方向外側には環状をなす複数の前記凹溝が設けられ、複数の前記凹溝が前記外輪の軸方向に間隔を置いて分布し設けられることを特徴とする請求項14に記載のインペラ。
【請求項16】
請求項11乃至15のうちのいずれかに記載のインペラを含むことを特徴とするファン。
【請求項17】
請求項14又は15に記載のインペラと、前記インペラの外輪の径方向外側に設けられる導流リングとを含むことを特徴とするファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンの分野に関し、より具体的には、ブレード、インペラ及びファンに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンの回転数が高い場合に、特に回転数が3200Rpm程度である場合に、気流がブレードの表面を流れる時に境界層の分離が著しく発生し、ブレードの後縁における気流の乱れが激しい状況が生じてしまうため、ブレードの広帯域騒音が高くなり、ファンの性能を損害し、使い勝手が劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに鑑みて、本発明は、ファンの性能を向上させるとともに、ブレードの広帯域騒音を低減することができるブレード、インペラ及びファンを提供することがその目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、第1態様において、ブレードを提供する。
【0005】
ブレードであって、前記ブレードの後縁に少なくとも1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記少なくとも1セグメントの内向き凹状弧の少なくとも1つの端点が前記ブレードの径方向外縁と径方向内縁との間に位置し、前記ブレードには、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する少なくとも1本のリッジ構造が設けられている。
【0006】
前記リッジ構造は、一端が前記内向き凹状弧の端点と交わり、他端が前記ブレードの前縁と交わることが好ましい。
【0007】
各セグメントの前記内向き凹状弧の2つの端点ごとに対応して1本の前記リッジ構造が設けられていることが好ましい。
【0008】
前記ブレードにおいて前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁への方向に複数のリッジ構造が間隔を置いて設けられ、前記リッジ構造の最大高さは、前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁への方向に徐々に小さくなることが好ましい。
【0009】
前記ブレードの後縁に1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する前記少なくとも1本のリッジ構造は、前記ブレードの径方向内縁に近接して設けられる第1リッジ構造と、前記ブレードの径方向外縁に近接して設けられる第2リッジ構造とを含み、前記第1リッジ構造の一端が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向内縁に近い端点と交わり、前記第2リッジ構造が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向外縁に近い端点と交わることが好ましい。
【0010】
前記第1リッジ構造の最大高さをW1とし、前記第2リッジ構造の最大高さをW2とし、径方向において、前記ブレードの径方向内縁と径方向外縁との距離をLとし、
W1=k1*Lであり、係数k1の範囲は0.025〜0.035であり、及び/又は、
W2=k2*Lであり、係数k2の範囲は0.021〜0.031であることが好ましい。
【0011】
前記リッジ構造は円弧形状をなすことが好ましい。
【0012】
前記ブレードの後縁に1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記ブレードの圧力面から前記ブレードの吸引力面への方向に突出する前記少なくとも1本のリッジ構造は、前記ブレードの径方向内縁に近接して設けられる第1リッジ構造と、前記ブレードの径方向外縁に近接して設けられる第2リッジ構造とを含み、前記第1リッジ構造の一端が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向内縁に近い端点と交わり、前記第2リッジ構造が前記内向き凹状弧における前記ブレードの径方向外縁に近い端点と交わり、前記第1リッジ構造の周方向における円弧半径をR2とし、前記第2リッジ構造の周方向における円弧半径をR3とし、前記ブレードの径方向内縁の半径をR1とし、
R2=k3*R1であり、係数k3の範囲は1.3〜1.4であり、及び/又は、
R3=k4*R1であり、係数k4の範囲は1.95〜2.05であることが好ましい。
【0013】
前記リッジ構造の円心と前記ブレードの径方向内縁の円心とが重なることが好ましい。
【0014】
前記ブレードの後縁に1セグメントの内向き凹状弧が設けられ、前記ブレードの径方向内縁から径方向外縁へと順に均一に分布された5つのエレメンタリーステージ(elementary stage)において、
カスケードソリディティ(cascade solidity)は、順に0.84〜0.86、0.77〜0.79、0.54〜0.56、0.57〜0.59、0.51〜0.53であり、及び/又は、
取付角度は、順に30.5〜32.5、24.5〜26.5、19.5〜21.5、15.5〜17.5、13.0〜15.0であり、及び/又は、
前方屈曲角度(front bending angle)は、順に0°、1°〜3°、7°〜9°、9°〜11°、17°〜19°であることが好ましい。
【0015】
前記リッジ構造は尖角構造を有し、前記尖角構造は、前記ブレードの吸引力面及び圧力面とそれぞれ平滑な曲面を介して接続されることが好ましい。
【0016】
第2態様において、本発明はインペラを提供する。
【0017】
インペラであって、上述したブレードを含む。
【0018】
前記インペラは、周方向に沿って配列される複数の前記ブレードを含み、隣り合うブレード間に夾角を有し、前記夾角のうち少なくとも1つの夾角の度数が他の夾角の度数とは異なることが好ましい。
【0019】
前記インペラは、7つの前記ブレードを含み、周方向において隣り合う前記ブレード同士間の夾角は、順に49.5°〜50.5°、51.0°〜52.0°、45.5〜46.5°、58.6〜59.6°、47.5〜48.5°、46.8〜47.3°、57.5°〜58.5°であることが好ましい。
【0020】
前記インペラは、ハブと外輪とを含み、前記ブレードの径方向内縁が前記ハブと接続され、前記ブレードの径方向外縁が前記外輪と接続され、前記外輪の径方向外側に凹溝が設けられていることが好ましい。
【0021】
前記外輪の径方向外側には環状をなす複数の前記凹溝が設けられ、複数の前記凹溝が前記外輪の軸方向に間隔を置いて分布し設けられることが好ましい。
【0022】
第3態様において、本発明はファンを提供する。
【0023】
ファンであって、上述したインペラを含む。
【0024】
第4態様において、本発明はファンを提供する。
【0025】
ファンであって、上述したインペラと、前記インペラの外輪の径方向外側に設けられる導流リングとを含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明に提供されるブレードは、バイオニック原理に基づいてその後縁に少なくとも1セグメントの内向き凹状弧が設けられるとともに、ブレードにリッジ構造が設けられ、ブレードの形状を変更することで、ブレードはバットウィングのような形状を呈するようになるので、ブレードの後縁における気流の流れる様子を改良し、さらに騒音を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明することで、本発明の上述した及び他の目的、特徴並びに利点をより明確にする。図面において、
【
図1】本発明の具体的な実施形態に提供されるブレードの構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の具体的な実施形態に提供されるブレードの5つのエレメンタリーステージを示す模式図である。
【
図3】本発明の具体的な実施形態に提供されるインペラを部分的に切断した斜視図である。
【
図4】
図4におけるA部分を示す部分拡大図である。
【
図5】本発明の具体的な実施形態に提供されるインペラの平面図である。
【
図6】本発明の具体的な実施形態に提供されるインペラの正面図である。
【
図7】従来のインペラの外輪と導流リングとの係合箇所の構造を示す模式図である。
【
図8】本発明の具体的な実施形態に提供されるインペラの部分断面図である。
【
図9】本発明の具体的な実施形態に提供される別のインペラの部分断面図である。
【
図10】本発明の具体的な実施形態に提供されるもう1つのインペラの部分断面図である。
【
図11】本発明の具体的な実施形態に提供される更なるインペラの部分断面図である。
【
図12】本発明の具体的な実施形態に提供されるブレードの圧力面の静圧分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。後での本発明の細部に関する説明において、一部の特定の細部を詳しく説明している。当業者にとって、これらの細部に対する説明なしでも本発明を完全に理解することができる。本発明の実質と混同されないように、公知される方法、プロセス、フロー、素子について詳しく説明していない。
また、ここに提供される図面はいずれも説明のためであり、図面の縮尺は必ずしも実際のものと同じであるとは限らない、と当業者が理解されるべきである。
【0029】
そうでないとする明確な指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲全体における「備える」、「含む」のような用語は、含むことを意味すると解釈されるべきであり、排他的になるように、又は全てを網羅するように含むことを意味すると解釈されるべきではない。つまり、「・・・を含むが、これに限定されない」ことを意味する。
【0030】
本発明の説明において、「第1」、「第2」などの用語はあくまでも説明のためであり、相対的な重要性を指示するか暗示していない。また、本発明の説明において、そうでないとする明確な指示がない限り、「複数」とは2つ又は2つ以上を意味する。
【0031】
本発明は、ブレードを提供し、
図1〜
図4に示すように、本願におけるブレード1は、前縁11、後縁12、径方向内縁13および径方向外縁14を含むシート状構造として形成され、ブレード1の後縁12には、少なくとも1セグメントの内向き凹状弧15が設けられ、かつこの内向き凹状弧15の少なくとも1つの端点がブレード1の径方向外縁13と径方向内縁14との間に位置し、即ち、内向き凹状弧15の少なくとも1つの端点がブレード1の径方向外縁13の径方向内側及び径方向内縁14の径方向外側に位置し、好ましくは、内向き凹状弧15の2つの端点がいずれもブレード1の径方向外縁13と径方向内縁14との間に位置する。バイオニック原理に基づいて、ブレード1の形状を変更することで、ブレードはバットウィングのような形状を呈するようになるので、ブレードの後縁における気流の流れる様子を改善し、さらに騒音を低減する。
【0032】
内向き凹状弧15の数は限らず、ブレード1の具体的な仕様などの要素に基づいて決定されることができる。内向き凹状弧15の具体的な弧度は限らず、円弧状であってもよいし、曲率が絶えず変化する弧状であってもよい。内向き凹状弧15の曲率は、ブレード1の径方向内縁13から径方向外縁14への方向に徐々に増加することが好ましく、より優れた気流の流れる様子を得ることができる。
【0033】
さらに好ましくは、ブレード1は、吸引力面17と圧力面18とを有し、ブレード1には、ブレード1の圧力面18からブレード1の吸引力面17への方向に突出する少なくとも1本のリッジ構造が設けられ、即ち、ブレード1の圧力面18に凹部が形成され、これにより、圧力面18及び吸引力面17はいずれも圧力面18から吸引力面17への方向に沿って突出する。このように、リッジ構造と後縁12における内向き凹状弧15とが相まって気流の流れる様子をさらに改善し、ブレード1の広帯域騒音を低減する。リッジ構造の形状は具体的に限定されず、1つの好適な実施例において、リッジ構造は尖角構造となり、尖角構造は、ブレード1の吸引力面17及び圧力面18と平滑な曲面を介して接続されることが好ましい。このように、気流に死角が生じるのを回避することができ、これを用いたファンの性能をさらに向上させる。
【0034】
ブレードにおけるリッジ構造の排列方式は具体的に限定されず、その一端がブレード1の前縁11と交わり、他端がブレードの後縁12と交わることが好ましく、ブレードの後縁12における内向き凹状弧15とよりよく協働することができるように、リッジ構造は一端が内向き凹状弧15の端点と交わり、他端がブレードの前縁11と交わることがさらに好ましい。このように、リッジ構造と内向き凹状弧15とでバットウィングにより近い構造を形成することができるため、より優れた気流の流れる様子を得る。
【0035】
以下、後縁12に1セグメントの内向き凹状弧15が設けられることを例として、内向き凹状弧15とリッジ構造の具体的な協働構造について具体的に説明する。内向き凹状弧15がブレード1の径方向の中部に設けられ(具体的な位置の規定は、後述するリッジ構造の規定によって得られる)、内向き凹状弧15は、ブレードの径方向内縁13に近い第1端点と、ブレードの径方向外縁14に近い第2端点という2つの端点を有し、ブレード1には、ブレードの径方向内縁13に近接して設けられる第1リッジ構造161と、ブレードの径方向外縁14に近接して設けられる第2リッジ構造162という2本のリッジ構造が設けられ、第1リッジ構造161の一端が第1端点と交わり、他端がブレードの前縁11と交わり、第2リッジ構造162の一端が第2端点と交わり、他端がブレードの前縁11と交わる。このように、バットウィングに極近い形状を形成するため、ブレードの後縁12における気流を改善し、ブレードで発生した騒音を低減する。
【0036】
リッジ構造は、周方向において円弧形状をなすことが好ましく、軸方向に垂直な平面内において、ブレード1の径方向内縁13、径方向外縁14及び第1リッジ構造161、第2リッジ構造162が位置する円は同心円であることがさらに好ましい。
【0037】
気流の流れる様子をさらに最適化するために、ブレード1の各部の構造パラメータを最適化することができ、好適な実施例において、リッジ構造の最大高さは、ブレードの径方向内縁から径方向外縁への方向に徐々に小さくなる。リッジ構造の最大高さとは、リッジ構造の尖角構造の先端位置におけるブレード1の中心線の点と、ブレード1の径方向内縁13から径方向外縁14までの重心連結線ABとの間の垂直距離である。
図4に示される実施例において、第1リッジ構造161の最大高さをW1とし、第2リッジ構造162の最大高さをW2とし、W2<W1である。
【0038】
さらに好ましくは、
図4に示すように、径方向において、ブレード1の径方向内縁13と径方向外縁14との距離はLであり、ここでいう径方向は、軸方向に垂直な平面内の投影方向ではなく、ブレード1が取り付けられた後、軸線方向に対して一定の夾角を有するため、ここでの径方向とは、中心にて径方向の線を引いて、この径方向の線は径方向内縁13及び径方向外縁14のそれぞれと交差点を有することができ、この2つの交差点間の距離は距離Lであることをいう。W1とLは、W1=k1*Lの関係を満たすことが好ましく、係数k1の範囲は0.025〜0.035である。また、W2とLは、W2=k2*Lの関係を満たすことが好ましく、係数k2の範囲は0.021〜0.031である。
【0039】
好適な実施例において、
図5に示すように、第1リッジ構造161の周方向における円弧半径をR2とし、第2リッジ構造162の周方向における円弧半径をR3とし、ブレード1の径方向内縁13の半径をR1とし、R1とR2は、R2=k3*R1の関係を満たすことが好ましく、係数k3の範囲は1.3〜1.4である。R1とR3は、R3=k4*R1の関係を満たすことが好ましく、係数k4の範囲は1.95〜2.05である。
【0040】
好適な実施例において、
図2に示すように、ブレード1の径方向内縁13から径方向外縁14へと順に均一に分布された5つのエレメンタリーステージ(径方向内縁から径方向外縁へと順にS1、S2、S3、S4、S5)において、カスケードソリディティは、順に0.84〜0.86、0.77〜0.79、0.54〜0.56、0.57〜0.59、0.51〜0.53であり、取付角度(径方向内縁から径方向外縁へと順にβ1、β2、β3、β4、β5)は、順に30.5〜32.5、24.5〜26.5、19.5〜21.5、15.5〜17.5、13.0〜15.0であり、前方屈曲角度(径方向内縁から径方向外縁へと順にσ1、σ2、σ3、σ4、σ5)は、順に0°、1°〜3°、7°〜9°、9°〜11°、17°〜19°である。ただし、エレメンタリーステージは、半径Rの円周面が軸方向に沿ってブレード1と交わる際の両者の交差部分であり、異なる半径Rの円周面がブレード1と交わって異なるエレメンタリーステージを形成することができ、ブレードは、無限個数のエレメンタリーステージからなる。取付角度は、ブレード翼弦と回転方向との夾角であり、前方屈曲角度は、異なるエレメンタリーステージの中心とブレードの回転中心との間の連結線の夾角であり、デフォルトに、1番目のエレメンタリーステージの前方屈曲角は0°である。
【0041】
さらに、本願はインペラを提供し、上述のようなブレードを用いる。1つの具体的な実施例において、
図3〜
図6に示すように、インペラは、ハブ2を含み、複数のブレード1の径方向内縁13がハブ2の外周面に固定され、周方向に沿って分布する。ハブ2の軸線に垂直な平面内において、複数のブレード1における対応するリッジ構造はそれぞれ同一の円にあることが好ましい。例えば、
図5に示すように、複数のブレード1の第1リッジ構造161はいずれも同一の円にあり、複数のブレード1の第2リッジ構造162も同一の円にある。
【0042】
従来のインペラのブレードは一般的には、周方向において均一に配置され、ブレードを流れる気流とブレードは周期的な羽ばたき現象が発生するので、ダイポール騒音源が発生し、つまり、ブレード通過騒音が発生する。この種の騒音は狭帯域騒音であり、基本周波数騒音の値が最も高く、かつ基本周波数は回転数及びブレード数の増加に伴って増加し、その音は非常に不快であり、耳障りに聞こえる。この問題に対して、本願において、隣り合うブレード1同士間の夾角のうち少なくとも1つの夾角の度数は、他の夾角の度数とは異なり、このような等間隔でない配置方式によって、ある程度、騒音のピーク値、特に基本周波数に対応するピーク値を控えることができる。
【0043】
本願において、「夾角」とは、ブレードの前縁の径方向外端と中心線との間の夾角を意味する。1つの具体的な実施例において、
図5に示すように、インペラは、7つのブレード1を含み、周方向において、隣り合うブレード1同士間の夾角は、順にθ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6、θ7であり、θ1の範囲は49.5°〜50.5°であり、θ2の範囲は51.0°〜52.0°であり、θ3の範囲は45.5〜46.5°であり、θ4の範囲は58.6〜59.6°であり、θ5の範囲は47.5〜48.5°であり、θ6の範囲は46.8〜47.3°であり、θ7の範囲は57.5°〜58.5°である。
【0044】
更なる実施例において、インペラは、外輪3をさらに含み、ブレード1の径方向内縁13がハブ2と接続され、径方向外縁14が外輪3と接続されている。インペラがファンに取り付けられた場合、インペラが導流リング内に設けられ、即ち、導流リングは、外輪3の径方向外側に位置するように、インペラの外周に被せられる。
【0045】
従来技術において、
図7に示すように、外輪3’が導流リング4’と動的又は静的に干渉するのを防止するために、外輪3’と導流リング4’との間に安全隙間が設けられ、ファンの運転中、気流は必然的にこの隙間を流れるので、漏れが発生し、ファンの効率低下を招く。この現象を改善するために、本願において、
図8に示すように、外輪3の径方向外側に凹溝31が設けられることで、外輪3の断面積は繰り返して変化するので、外輪3と導流リングとの間に形成される流路の抵抗力を増やし、このように、安全隙間を保証するとともに、漏れを低減することができ、さらにファンの効率を向上させる。
【0046】
凹溝31のサイズは、大きすぎても小さすぎてもいけず、大きすぎると外輪3の構造強度を損害し、小さすぎると抵抗力を増やす機能を果たすことができない。1つの好適な実施例において、凹溝31の深さはM1≦0.5M2であり、M2は外輪の厚さである。凹溝31の幅(即ち、軸方向におけるサイズ)M3の取りうる値の範囲は、M1<M3<2M1である。
【0047】
凹溝31の具体的な形状は限らず、環状をなすことが好ましく、複数の環状の凹溝31が外輪3の軸方向に沿って間隔を置いて分布し配置されることで、抵抗力を増やす機能をよりよく果たす。凹溝31の断面形状も限らず、
図8に示す弧状であってもよいし、多角形であってもよく、例えば、
図9〜11に示す矩形、半五角形、半六角形等であり、断面が多角形である凹溝は、気流への抵抗力をさらに増やし、ファンの漏れを低減することができる。
【0048】
さらに、本願はファンを提供し、上述したインペラを用い、ファンの騒音を効果的に低減することができるとともに、より確実に稼働し、漏れが少なく、効率が高い。
【0049】
1つの具体的な実施例において、このファンのブレードの具体的なパラメータは、R2=1.33R1、R3=1.99R1、W1=0.299L、W2=0.026Lであり、S1、S2、S3、S4、S5のカスケードソリディティは、それぞれ0.85、0.78、0.55、0.58、0.52であり、取付角度は、それぞれ31.5°、25.5°、20.5°、16.5°、14.0°であり、前方屈曲角度は、それぞれ0°、2°、8°、10°、18°である。θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6、θ7の角度は、順に50°、51.5°、46°、59.1°、48°、47.3°、58°である。インペラの外輪の凹溝の深さはM1=0.5M2であり、M2は外輪の厚さであり、凹溝の幅はM3=M1であり、凹溝の断面形状は
図8に示すような弧状である。シミュレーション実験により、このファンのブレードの圧力面の静圧分布は
図12に示すようなものであり、この図から、一連のサイズの最適化によって、気流の流れる様子をさらに改善し、ブレードの広帯域騒音を低減することが分かる。具体的な実験テストを経て、従来のファンとの対比結果を下の表に示す。
【0051】
上の表から分かるように、本願のファンの効率が高いとともに、騒音が低く、従来のファンに比べ効率が2.18%向上し、騒音が2.5dB低下し、従来のファンよりも優れた性能を有する。
【0052】
本願に提供されるファンは、送風が必要とされる様々な装置に広く適用されることができ、例えば、エアコン、特に、バスのエアコンに適する。
【0053】
衝突しない限り、上述した各好ましい態様を自由に組み合わせたり、重畳したりすることができる、と当業者が容易に理解されることができる。
【0054】
上述した実施形態は例示的なものに過ぎず、これを制限するものではなく、本発明の基本原理から逸脱しない場合に、当業者は、上述した細部に対する様々な明確な又は同等な修正や置き換えが可能であり、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…ブレード、11…前縁、12…後縁、13…径方向内縁、14…径方向外縁、15…内向き凹状弧、161…第1リッジ構造、162…第2リッジ構造、17…吸引力面、18…圧力面、2…ハブ、3…外輪、31…凹溝、3’…外輪、4’…導流リング。