(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注射針の先端部が有する位置情報を少なくとも2方向から検出し、前記位置情報に基づいて、前記注入孔の位置に前記注射針の先端部位置を補正するための制御機構を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の全自動遺伝子検査装置。
前記検査チップは、前記注入孔と前記反応場とを繋ぐ複数の流路を有しており、前記反応場において前記核酸の増幅反応を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の全自動遺伝子検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、遺伝子試験システムDの概要を示した斜視図である。
図1に示されるように、遺伝子試験システムDは、マスターユニット2及びテストユニット1を備えている。マスターユニット2とテストユニット1とは、電気的に接続され、マスターユニット2とテストユニット1とは、相互間において入力データ及び検査結果の送受信を行う。なお、
図1に示された遺伝子試験システムDは、マスターユニット2とテストユニット1とが分離されたタイプであるが、これに限定されない。例えば、制御部を備えるマスターユニット2をテストユニット1に取り込み一体型の遺伝子試験システムDとしてもよい。
【0028】
マスターユニット2は、遺伝子試験システムDを制御する。マスターユニット2は、遺伝子試験システムDの電源のオン・オフ、ログイン及びログアウト、検体のデータ、遺伝子検査の検査項目を入力し、測定された検査結果等を画面に表示する。遺伝子試験システムDのユーザーは、例えば、マスターユニット2の画面をタッチして、遺伝子検査を開始する。マスターユニット2から指示されるコマンドに従って、テストユニット1の内部において遺伝子検査を実行する。
【0029】
図2は、遺伝子試験システムDが備えているテストユニット1の引き出し部分の内部構造を示した斜視図である。上記テストユニット1の前面には、レバーが取り付けられている。テストユニット1は、レバーが横向き(倒れている状態)となった位置において、テストユニット1の下部に設けられている引き出しがロックされる。
【0030】
また、テストユニット1は、レバーが縦向きとなった位置において、テストユニット1の下部に設けられている引き出しのロックが解除される。遺伝子試験システムDのユーザーは、上記引き出しのロックを解除することによって、テストユニット1の内部を引き出すことができる。遺伝子試験システムDのユーザーは、テストユニット1のレバーを横向きの位置から縦向きの位置に引き上げる。縦向きに位置したレバーを遺伝子検査装置Dのユーザーの手前方向に引くことによって、テストユニット1の引き出し部分を取り出して、検体をセットし、遺伝子検査を実行することができる。ここで、遺伝子試験システムDの技術的特徴は、テストユニットとしての全自動遺伝子検査装置1にある。以下、本発明の全自動遺伝子検査装置1について説明する。
【0031】
図3は、全自動遺伝子検査装置1の構成を示したモデル図である。
図3に示されるように全自動遺伝子検査装置1は、検体から核酸を抽出精製する第1ユニットと、核酸を増幅するための複数の反応場を有する検査チップに前記核酸を含む溶液を注入する第2ユニットと、前記反応場において増幅された核酸を光学検出するための第3ユニットとを備えている。
【0032】
本発明の全自動遺伝子検査装置1において、第1ユニットは、検体に含まれる核酸を抽出精製するための前処理部10に相当する。第2ユニットは、第1ユニットにより抽出精製された核酸を含む溶液を検査チップに注入するための注入部20に相当する。第3ユニットは、第2ユニットにより核酸増幅された光学検出する増幅検出部30に相当する。全自動遺伝子検査装置1は、第1ユニット、第2ユニット及び第3ユニットが相互に作用して、全自動遺伝子検査を実行することができる。
【0033】
(第1ユニットの構成)
第1ユニットは、検体から核酸を抽出精製するユニットであり、核酸を抽出精製するために用いる複数の試薬を備えたカートリッジ110、反応セル120、試薬を移動させるピペッティング機構130、反応セル120を前処理するための前処理機構140を備えている。
図4(A)は、第1ユニットが備えているカートリッジ110の構成を示した斜視図である。
図4(B)は、カートリッジ110の上面図である。
図4(C)は、カートリッジ110の断面図である。
図4(D)は、第1ユニットが備えている反応セル120の構成を示した斜視図である。
【0034】
図4(A)に示されるように、カートリッジ110は、板状の矩形形状を有するカートリッジ基体111を基本構造とする。カートリッジ基体111に設けられている複数のカートリッジ基体孔112には、シール付き試薬セル113aが嵌め込まれている。シール付き試薬セル113aは、核酸を抽出精製するために必要な試薬を個別に収納するためのセルである。
【0035】
シール付き試薬セル113aは、円筒形状を有している。シール付き試薬セル113aは、当該セルの上方縁部に設けられた円環形状のフランジ114aを有している。フランジ114aの外径は、カートリッジ基体111に設けられている複数のカートリッジ基体孔112の外径よりも大きい。このため、シール付き試薬セル113aは、フランジ114aによって、カートリッジ基体111に固定される。シール付き試薬セル113aの試薬を保持する部分は、カートリッジ基体111の裏面に位置する。
【0036】
図4(A)に示されたカートリッジ110は、シール付き試薬セル113a〜113iまでの10個のシール付き試薬セルを備えている。シール付き試薬セル113の個数は、カートリッジ基体111の形状、大きさに応じて、適宜設定することができる。シール付き試薬セル113の個数は、特に限定されない。シール付き試薬セル113の配置も特に制限されるものではなく、試薬の種類、試薬の濃度等に応じて、適宜設定することができる。シール付き試薬セル113の配置に規則性を持たせて配置することは、遺伝子検査を行う操作性の観点から好ましい。なお、
図4(A)に示されたカートリッジ110は、シール付き試薬セル113b〜113iに応じて、それぞれフランジ114b〜フランジ114iを有している。
【0037】
シール付き試薬セル113の開口部には、試薬を収納するためのシール115が貼り付けられている。シール115によって、シール付き試薬セル113の開口部が塞がれていることによって、シール付き試薬セル113の内部は密閉されている。すなわち、シール115は、シール付き試薬セル113の蓋として機能する。シール115によって、シール付き試薬セル113の内部に保持されている試薬は、外気と接触することがない。このため、シール付き試薬セル113に保持されている試薬が遺伝子検査をする各工程において、当該試薬に不純物が混入することから回避することができ、また、当該試薬が酸素、水、二酸化炭素等と反応することから回避することができる。なお、
図4(A)に示されたシール115は、2つのシール付き試薬セル113、ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119がそれぞれ収納されているカートリッジ基体111の表面を被覆している。さらに、
図4(A)に示されたシール115は、カートリッジ基体111を識別するために用いられている2次元バーコードを被覆している。すなわち、シール115は、2次元バーコードを隠す役割を有している。
【0038】
シール115は、カートリッジ基体111の表面及びフランジ114と密着する。シール115として採用することができる材料は、カートリッジ基体111及びフランジ114を構成する材料と密着することができることが必要である。また、シール115として採用することができる材料は、遺伝子検査を実行する際の温度、圧力、湿度に適合することができ、適度の機械的強度を備えていることが必要である。
【0039】
また、シール115は、カートリッジ基体111との十分な密着性を必要とする。その理由は、シール115とカートリッジ基体111との接着力が十分でない場合には、後述するピアッシングチップ117の先端部がシール115に接触した時に、シール付き試薬セル113の内部にシール115全体が引き込まれてしまうからである。
【0040】
具体的にシール115としては、シリコーンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム等の合成ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、四フッ化エチレン樹脂等のプラスチックからなる薄膜、アルミニウム薄膜等の金属薄膜を例示することができる。シール115は、単層の薄膜から構成されていてもよいし、同一又は異なる材料からなる単層を複数重ね合わせて構成された多層の薄膜であってもよい。例えば、アルミニウム層とポリエチレンテレフタレート(PET)層からなる多層の薄膜であってもよい。
【0041】
シール115は、ピアッシングチップ117の先端部が貫通することによって孔を形成することができる厚みを有する。シール115の厚みとしては、シール付き試薬セル113の密封性を保持することができ、ピアッシングチップ117の先端部によって、孔を開けることができる厚みであれば、特に制限されない。
【0042】
また、シール115は、透明、半透明、不透明であってもよい。シール115が透明又は半透明である場合には、シール付き試薬セル113の開口部にシール115が貼り付けられた後であっても、シール付き試薬セル113の開口部を外部より認識することができる。シール付き試薬セル113の開口部に貼り付けられたシール115には、記号、番号、色彩等のマーキングをしてもよい。また、カートリッジ110には、カートリッジ基体111を識別するための2次元バーコード35が付加されていてもよい。この場合には、シール115を不透明としてもよい。
【0043】
図4(A)に示されるように、カートリッジ基体111に設けられている一つのチップ孔116には、第1セル1161が嵌め込まれている。第1セル1161には、シール付き試薬セル113が有するシール115に孔を開けるためのピアッシングチップ117が収納されている。ピアッシングチップ117の先端部は、円錐形状を有し、尖った形状をしている。このため、ピアッシングチップ117の先端部をシール115の表面と接触させ、圧力をかけることによって、シール115にピペットチップ119が挿通できる孔が形成される。
なお、
図4(A)に示されるとおり、ピアッシングチップ117を収納するためのケース1191が図示されている。すなわち、第1セル1161は、カートリッジ基体111に設置されたピアッシングチップ117を収納するためのケース1191を有していてもよい。
【0044】
また、
図4(A)に示されるように、カートリッジ基体111に設けられている他の一つのチップ孔116には、第2セル1162が嵌め込まれている。第2セル1162には、核酸を含む溶液を保持し、後述する検査チップ220に当該核酸を含む溶液を注入するためのインジェクションチップ118が収納されている。
なお、
図4(A)に示されるとおり、インジェクションチップ118を収納するためのケース1191が図示されている。すなわち、第2セル1162は、カートリッジ基体111に設置されたインジェクションチップ118を収納するためのケース1191を有していてもよい。
【0045】
さらに、
図4(A)に示されるように、カートリッジ基体111に設けられている別の他の一つのチップ孔116には、第3セル1163が嵌め込まれている。第3セル1163には、シール付き試薬セル113の内部に保持されている試薬を吸引し、反応セル120に当該試薬を移動させるためのピペットチップ119が収納されている。
図4(A)に示されるように、ピペットチップ119を収納するためのケース1191が図示されている。すなわち、第3セル1163は、ピペットチップ119を収納するためのケース1191を有していてもよい。カートリッジ基体111に設けられたチップ孔116の個数は、特に制限されるものではなく、必要に応じて、適宜設定することができる。
【0046】
図4(B)カートリッジ110の上面図である。
図4(B)に示されるように、シール115は、2つのシール付き試薬セル113、ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119がそれぞれ収納されているカートリッジ基体111の表面を被覆している。また、シール115は、カートリッジ基体111を識別するための2次元バーコードを被覆している。
図4(B)に示されたシール115は、カートリッジ基体111の一部分を被覆しているが、これに限定されない。シール115は、カートリッジ基体111の全面を被覆していてもよい。また、シール115として、2種類以上のシートをシール115として採用してもよい。2種類以上のシートをシール付き試薬セル113、ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119のそれぞれ収納されているカートリッジ基体111のそれぞれの表面に貼り付けてもよい。
【0047】
図4(C)は、カートリッジ110の断面図である。
図4(C)に示されるように、カートリッジ110は、左側から順にピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119を備えている。ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119の配置は、操作上不都合がない限り、特に限定されるものでない。
図4(C)に示されたカートリッジ110は、ピアッシングチップ117を収納するためのケース1191、インジェクションチップ118を収納するためのケース1191、ピペットチップ119を収納するためのケース1191を備えている。
図4(C)に示されるように、シート115は、ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119がカートリッジ基体111から脱落することを防止するために設けられている。
なお、インジェクションチップ118の先端には、試薬を注入するための注射針1181が設けられている。注射針1181は、上記ケース1191の内部に収納されている。このため、注射針1181が外気と接することがない。
【0048】
図4(D)に示された反応セル120は、遺伝子検査の対象となる検体が導入されるセルである。反応セル120には、カートリッジ110が備えているシール付き試薬セル113に保持されている試薬が導入される。反応セル120内において、検体は試薬と反応する。そして、反応セル120内において、検体に含まれる核酸が抽出精製される。
【0049】
第1ユニットは、カートリッジ110と反応セル120との間において、シール付き試薬セル113に保持されている試薬を移動させるピペッティング機構130と、反応セル120を前処理するための前処理機構140を備えている。
【0050】
図5は、ピペッティング機構130、反応セル120及び前処理機構140を備えた第1ユニットの構成を示したモデル図である。
図5(A)は、カートリッジ110が備えているシール付き試薬セル113に保持されている試薬をピペッティング機構130(ピペットチップ119)によって吸引し、反応セル120に導入し、前処理機構140にセットするまでの概要を示す。
【0051】
図5(A)に示されるように、ピペッティング機構130は、ピペットチップ119とピペットヘッド131と駆動部132から構成されている。ピペットヘッド131の下方先端部には、ピペットチップ119が連結されている。ピペットヘッド131は、下方先端部に凸部を有している。当該凸部には、ピペットチップ119等の各種チップを連結することができる。ピペットヘッド131の下方先端部にピペットチップ119を嵌合することによって、ピペットヘッド131は、ピペッティング機構130として機能する。すなわち、ピペットヘッド131は、下方先端部に各種チップを取り付けることによって、必要な機能を備えることができる。
【0052】
ピペットヘッド131は、駆動部132と連結している。駆動部132は、カートリッジ110の平面を含むXY平面を自由に移動することができる。また、駆動部132は、カートリッジ110の上下方向を含んだZ軸方向を自由に移動することができる。さらに、駆動部132は、反応セル120の開口部を含むXY平面を移動することができる。駆動部132は、反応セル120の開口部の上下方向を含んだZ軸方向を移動することができる。すなわち、駆動部132は、XYZ軸の3次元駆動することができる。
【0053】
駆動部132は、制御部133によって制御されている。制御部133は、遺伝子検査に必要な操作をすることができる位置に駆動部132を移動させることができる部材であれば、特に制限されるものではない。制御部133としては、XYZロボット、3次元ロボット等を例示することができる。
【0054】
図5(A)に示されるように、第1ユニットは、反応セル120に導入された検体に含まれる核酸を前処理するための前処理機構140を備えている。前処理機構140は、反応セル120に導入された核酸を抽出精製するために必要な操作を行うための各処理部を有している。
図5(A)に示されるように、前処理機構140は、加熱冷却処理部141、撹拌処理部142、磁界印加処理部143を有している。前処理機構140は、加熱冷却処理部141、撹拌処理部142、磁界印加処理部143から選ばれる少なくとも一つの処理部を有する。前処理機構140が有する処理部は、遺伝子検査に必要な処理に応じて処理部を適宜設定することができる。
【0055】
加熱冷却処理部141は、反応セル120を加熱又は冷却するために必要なヒーター1411をその内部に備えている。撹拌処理部142は、支持部材142によって支持されている。また、磁界印加処理部143は、反応セル120に磁界を印加するために必要な磁石1431等をその内部に備えている。
【0056】
図5(B)は、各処理部の拡大図である。
図5(B)に示されるように、核酸と試薬が保持された反応セル120は、撹拌処理部142に挿入される。撹拌処理部142は支持部材144と連結している。支持部材144の連結部1441が回転することによって、撹拌処理部142は回転し、反応セル120も回転する。なお、連結部1441には、回転に必要なトルクを発生させるための駆動モーター等が採用されている。
【0057】
撹拌処理部142は、回転方向、回転速度、回転形態等を必要に応じて、適宜設定することができる。また、撹拌処理部142が行う回転を偏心回転に設定することもできる。例えば、撹拌処理部142が偏心回転をすることによって、従来において実施されているピッペティング撹拌に比べて、約10分の1の時間にて撹拌効果を得ることができる。さらに、撹拌処理部142が偏心回転をすることによって、遺伝子検査に要するトータルプロセスの短縮に寄与することができる。
【0058】
(第1ユニットを用いた前処理)
次に、第1ユニットを用いた前処理について説明する。第1ユニットを用いた前処理とは、検体から核酸を抽出精製することを意味する。
図6は、複数の試薬を備えたカートリッジ110と、ピアッシングチップ117との関係を示したモデル図である。
【0059】
ピペットヘッド131は、駆動部132が移動することによって、カートリッジ110内の所定の位置において停止する。ピペットヘッド131は、カートリッジ110に設けられているピアッシングチップ117が収納されているチップ孔116の上方に位置決めを行う。ピペットヘッド131は、ピアッシングチップ117が収納されているチップ孔116の上方に対応するXY平面の位置を確定し、停止する。
【0060】
ピペットヘッド131は、Z軸方向下向きに降下する。ピペットヘッド131がZ軸方向下向きに降下することによって、ピペットヘッド131の先端部がピアッシングチップ117と嵌合する。さらに、ピペットヘッド131の先端部がピアッシングチップ117と嵌合した状態でZ軸方向下向きに圧力を加えると、ピペットヘッド131の先端部がピアッシングチップ117と連結する。このように、ピペットヘッド131は、ピアッシングチップ117をピックアップすることができる。ここで、ピアッシングチップ117が連結されたピペットヘッド131を第1機構134と定義する。
【0061】
第1機構134は、Z軸方向上向きに移動する。引き続いて、第1機構134は、カートリッジ110に設けられている試薬が保持されているシール付き試薬セル113の上方に位置決めを行う。第1機構134は、シール付き試薬セル113の上方に対応するXY平面の位置を確定し、停止する。
【0062】
第1機構134は、Z軸方向下向きに降下する。第1機構134がZ軸方向下向きに降下することによって、第1機構134のピアッシングチップ117の先端部がシール付き試薬セル113のシール115に接触する。第1機構134は、さらに、Z軸方向下向きに降下する。その結果、シール115には、所定の圧力がかかり、第1機構134は、シール115に所定の孔径を有する孔を開ける。第1機構134によってシール115に開けられた孔は、ピペットチップ119が挿通することができるために十分な大きさを有する。後述するように、シール115に開けられた孔を用いて、ピペットチップ119による試薬の吸引を行う。
【0063】
第1機構134は、シール115に孔を開けた後、ピペットヘッド131に取り付けられているピアッシングチップ117をピアッシングチップ117が収納されていたチップ孔116に返却する。シール115に複数の孔を開ける必要がある場合には、第1機構134を移動させる操作を繰り返して行う。次に、ピペットヘッド131の先端部は、ピペットチップ119を取り付ける準備をする。
【0064】
図7は、複数の試薬を備えたカートリッジ110と、試薬を移動させるピペットチップ119との関係を示したモデル図である。ピペットヘッド131は、ピペットチップ119が収納されているチップ孔116の上方に対応するXY平面の位置を確定し、停止する。ピペットヘッド131がZ軸方向下向きに降下することによって、ピペットヘッド131の先端部がピペットチップ119と連結する。ピペットヘッド131は、ピペットチップ119をピックアップすることができる。ここで、ピペットチップ119が連結されたピペットヘッド131を第2機構135と定義する。
【0065】
第2機構135は、Z軸方向上向きに上昇する。第2機構135は、シール付き試薬セル113のシール115に設けられた孔の上方に対応するXY平面の位置を確定し、停止する。第2機構135は、Z軸方向下向きに降下する。第2機構135は、Z軸方向下向きに降下することによって、上記孔を通過し、ピペットチップ119の先端部がシール付き試薬セル113に保持されている試薬に接触する。そして、第2機構135のピペットチップ119は、シール付き試薬セル113に保持されている試薬を吸引する。試薬を吸引したピペットチップ119は、反応セル120に移動し、吸引した試薬を反応セル120に吐出する。反応セル120の内部において、核酸を含む検体と試薬が反応する。
【0066】
また、第2機構135のピペットチップ119は、核酸を含む溶液と試薬が反応した溶液を吸引し、別のシール付き試薬セル113に吐出することもできる。第2機構135のピペットチップ119は、シール付き試薬セル113に保持されている試薬を吸引するプロセス、反応セル120への試薬の吐出をするプロセス繰り返すことができる。さらに、第2機構135のピペットチップ119は、反応セル120に保持された核酸を含む検体と試薬が反応した溶液を吸引するプロセス、別のシール付き試薬セル113への当該溶液を吐出プロセスを繰り返すことができる。なお、制御部133は、第2機構135の移動を制御する。
【0067】
図8は、第1ユニットを用いて前処理されることによって得られた核酸を含む溶液をインジェクションチップ118に注入するまでの第2機構135の動作を示したモデル図である。
【0068】
図8に示されるように、第2機構135は、反応セル120とシール付き試薬セル113との間を移動し、シール付き試薬セル113に保持されている試薬を吸引又は吐出することによって、検体から核酸を抽出精製するために必要な操作を実行する。最終的に反応セル120は、その内部において、抽出精製のプロセスが完了した後、核酸を含む溶液を保持する。反応セル120の内部において保持されている核酸を含む溶液は、第2機構135によって吸引された後、カートリッジ110に設けられているインジェクションチップ118に吐出される。このように、本発明の全自動遺伝子検査装置1においては、第1ユニットにより、検体から核酸を抽出精製することができ、核酸を抽出精製するために必要な各操作が全自動にて実行される。
【0069】
図9は、第1ユニットを用いた核酸を抽出精製する各工程を示したフローチャート(プロトコル)である。最初に、反応セル120の内部において、核酸を含む検体にピペットチップ119を用いて吸引したLysis Buffer等の細胞溶解バッファーを加えて、溶解させる。当該反応セル120を前処理機構140の加熱冷却処理部141に挿入して加熱する。加熱した反応セル120を前処理機構140の撹拌処理部142に挿入して偏心撹拌を行い、検体に含まれる核酸を抽出する(ステップ1)。
【0070】
ステップ1を経由した反応セル120の内部に、シール付き試薬セル113に保持されている磁気ビーズ溶液、Binding Buffer等のバッファーを滴下する。当該反応セル120を前処理機構140の加熱冷却処理部141に挿入して加熱する。加熱した反応セル120を前処理機構140の撹拌処理部142に挿入して偏心撹拌し、抽出された核酸を上記磁気ビーズに吸着させる(ステップ2)。なお、第1ユニットは、上記ステップ1及びステップ2を別個の工程とすることなく、ステップ1及びステップ2の各工程において行われる操作を1回の工程によって行うこともできる。すなわち、第1ユニットの構造をステップ1及びステップ2を1回の工程によって完結することができる構造としてもよい。
【0071】
ステップ2を経由した反応セル120を前処理機構の磁気印加処理部143に挿入して磁気を印加し、反応セル120中に存在する磁気ビーズを分離させる。上記反応セル120中に存在するLysis Buffer等の細胞溶解バッファーをピペットチップ119により除去する(ステップ3)。
【0072】
ステップ3を経由した反応セル120にシール付き試薬セル113に保持されている洗浄液を、ピペットチップ119を用いて、滴下する。洗浄液を含んだ反応セル120を前処理機構の加熱冷却処理部141に挿入して加熱する。加熱した反応セル120を前処理機構140の撹拌処理部142に挿入して偏心撹拌し、上記磁気ビーズを洗浄する(ステップ4)。
【0073】
ステップ4を経由した反応セル120を前処理機構140の磁気印加処理部143に挿入して磁気を印加し、反応セル120中に存在する磁気ビーズを分離させる。上記反応セル120の内部に存在する洗浄液を、ピペットチップ119を用いて除去する。洗浄液が除去された反応セル120の内部にElution Buffer等のバッファーを滴下する。バッファーを含んだ反応セル120を前処理機構140の加熱冷却処理部141に挿入して加熱する。加熱した反応セル120を前処理機構140の撹拌処理部142に挿入して偏心撹拌し、核酸を溶出させる(ステップ5)。
【0074】
ステップ5を経由した反応セル120を前処理機構140の磁気印加処理部143に挿入して磁気を印加し、反応セル120中に存在する磁気ビーズを分離させる。磁気ビーズを分離させることによって、溶出された溶液を抽出精製溶液とする(ステップ6)。このように、全自動遺伝子検査装置1が備えている第1ユニットは、
図9に示されたプロトコルによって、検体から核酸を抽出精製することができる。
【0075】
核酸を含む検体から抽出精製された核酸を含む溶液は、ピペットチップ119により吸引される。そして、当該核酸を含む溶液は、カートリッジ110に収納されているインジェクションチップ118に吐出される。その後、ピペットチップ119は、カートリッジ110内に設けられているチップ孔116を挿通し、ピペットチップケース1191内に収納される。
【0076】
(第2ユニットの構成)
第2ユニットは、第1ユニットを用いて得られた核酸を増幅するための反応場を有する検査チップに核酸を含む溶液を注入するユニットである。第2ユニットは、インジェクション機構210と、核酸を増幅するための反応場を有する検査チップ220を備えている。
図10は、第2ユニットの構成を示した概要図である。
図10に示されるように、第2ユニットが備えているインジェクション機構210は、ピペットヘッド131とピアッシングチップ117とインジェクションチップ118の3つの部材から構成されている。
【0077】
ピペットヘッド131の先端部は、凸部を有しており、ピアッシングチップ117の凹部と連結している。ピアッシングチップ117の下方先端部は、円錐形状を有しており、インジェクションチップ118の開口部と嵌合することができる。インジェクションチップ118の下方先端部には注射針1181が接続されている。インジェクションチップ118は、第1ユニットによって、抽出精製された核酸を含む溶液を保持する部分であるシリンジ1182と当該シリンジ1182に接続されている注射針1181とを有している。
【0078】
さらに、第2ユニットは、第1ユニットを用いることによって抽出精製された核酸を増幅するための複数の反応場を有する検査チップ220を備えている。検査チップ220は、その内部221に複数の反応場222を有している。検査チップ220は、その内部221に一つの反応場222と他の反応場222とを繋ぐ役割を有するマイクロ流路223を有している。マイクロ流路223は、複数の反応場222を繋ぐために複数の流路から構成されている。
【0079】
検査チップ220は、注入孔224を有している。注入孔224は、注射針1181が挿入されるためのバルブとして機能する。注射針1181を通じて、インジェクションチップ118に保持されている核酸を含む溶液が注入孔224を通じて、検査チップ220の全体に注入される。
【0080】
注入孔224を構成する部材としては、検査チップ220の内部221を減圧状態に保持することができる自己封止性を有する部材であれば、特に制限されるものではない。具体的に注入孔224として採用することができる材料としては、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂等を例示することができる。
【0081】
検査チップ220は、密閉系となっており、その内部221の圧力は、大気圧よりも低く設定された減圧となっている。検査チップ220の内部221は、自己封止性を持つ部材で構成される注入孔224によって、密閉系を維持することができる。検査チップ220を構成する反応場222及びマイクロ流路223は、減圧された状態を保持している。
【0082】
検査チップ220の反応場222には、あらかじめ核酸増幅及び核酸検出をするために必要な試薬が乾燥され、固定化されている。核酸を増幅するために必要な試薬及び核酸を検出するために必要な試薬とは、プライマー、プローブ、基質、酵素等の試薬を例示することができるがこれに限定されない。必要な試薬は、反応場222において行われる核酸増幅反応及び核酸検出反応により、適宜採択される。
【0083】
検査チップ220の反応場222において適用される核酸増幅反応は、特に限定されるものではない。上記核酸増幅反応は、以下の反応を利用したものであってもよい。具体的には、核酸増幅反応としては、標的領域に2種類のプライマーを設定し、温度を変化させながら、標的遺伝子を100万〜1,000万倍に増幅させるPCR(Polymerase Chain Reaction)法を例示することができる。さらに、DNAポリメラーゼの鎖置換活性を利用した等温増幅法である、LAMP(Loop-mediated isothermal Amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法を例示することができる。また、T7RNAポリメラーゼを利用し、RNAを最終増幅産物とする増幅法として、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)法、TRC(Transcription-Reverse transcription Concerted)法を例示することができる。
【0084】
(第2ユニットを用いた核酸を含む溶液の検査チップへの注入)
次に、第2ユニットを用いた核酸を含む溶液の検査チップ220への注入について説明する。核酸を含む溶液の検査チップ220への注入とは、インジェクションチップ118の内部に保持されている核酸を含む溶液を注入孔224に注入することを意味する。
【0085】
図10に示されるように、ピペットヘッド131は、カートリッジ110に収納されているピアッシングチップ117を再びピックアップする。ここで、ピアッシングチップ117が連結されたピペットヘッド131を第3機構211と定義する。第3機構211の下方先端部となっているピアッシングチップ117の先端部は、インジェクションチップ118と連結する。ピペットヘッド131とピアッシングチップ117とインジェクションチップ118の3つの部材からインジェクション機構210が形成される。ここで、インジェクションチップ118のシリンジ1182内部には、第1ユニットを用いた前処理の最終段階において得られた核酸を含む溶液が保持されている。
【0086】
核酸を含む溶液が保持されているインジェクション機構210は、検査チップ220の注入孔224の上方に対応するXY平面の位置を確定し、停止する。インジェクション機構210がZ軸方向下向きに降下することによって、インジェクションチップ118の先端部に設けられている注射針1181は、注入孔224に突き刺さる。このとき、インジェクションチップ118のシリンジ1182内部と検査チップ220の内部221に存在している反応場222及びマイクロ流路223とが注射針1181を介して繋がる。
【0087】
図11は、インジェクションチップ118とピアッシングチップ117が連結している状態を示したモデル図である。
図11(A)は、インジェクションチップ118とピアッシングチップ117が連結している状態の上面図である。
図11(B)は、インジェクションチップ118とピアッシングチップ117が連結している状態の断面図である。なお、
図11には、ピアシングチップ117及びインジェクションチップ118を貫通するエアーパス1171、1172の位置が異なる2つの形態が示されている。
【0088】
図11に示されるように、インジェクションチップ118は、大気と繋がる空気の通路であるエアーパス1171、1172を通じて開放系となっており、インジェクションチップ118のシリンジ1182に保持されている核酸を含む溶液には、大気圧がかかる。一方、前述したように、検査チップ220の内部221の圧力は、大気圧に対して、減圧となっている。このため、インジェクションチップ118のシリンジ1182内部と検査チップ220の内部221とが注射針1181を介して繋がることによって、インジェクションチップ118のシリンジ1182内に保持されている核酸を含む溶液は、大気圧によって押し出される。
【0089】
本発明の全自動遺伝子検査装置1が備えている第2ユニットを構成するインジェクション機構210は、エアーパス1171、1172を設けた簡易な構造を採用することによって、大気圧と検査チップ220の内部221の圧力との差圧を利用し、核酸を含む溶液を検査チップ220の内部221にきわめて容易かつ安全に注入することができる。なお、上記インジェクション機構210は、エアーパス1171、1172を設けることによって、核酸を含む溶液に圧力をかけた形態を採用しているが、核酸を含む溶液に圧力をかけることができる形態はこれに限定されない。例えば、第3機構211を構成するピペットヘッド131によって、核酸を含む溶液に圧力をかけてもよい。
【0090】
第2ユニットが備えているインジェクション機構210は、ピアッシングチップ117が連結されたピペットヘッド131である第3機構211の先端部にインジェクションチップ118を備えている。インジェクション機構210において、ピペットヘッド131とインジェクションチップ118との間にピアシングチップ117が介入して存在していることは、第1ユニットによって得られた抽出精製された核酸を含む溶液によるピペットヘッド131の汚染防止に効果がある。
【0091】
このように、第2ユニットにおいて、インジェクション機構210は、検査チップ220に核酸を含む溶液を注入した後、インジェクションチップ118、ピアッシングチップ117をカートリッジ110に設けられたそれぞれのチップ孔116に返却する。
【0092】
検査チップ220は、インジェクション機構210が検査チップ220に核酸を含む溶液を注入した後、当該検査チップ220を振動させる第4機構を備えていてもよい。当該第4機構による振動は、回転、停止、横振りであってもよい。この第4機構により、検査チップ220は、振動する。検査チップ220の振動により、反応場222に固定化されている、プライマー、プローブ、基質、酵素等の試薬と注入された核酸を含む溶液が十分に混合し、核酸増幅反応の反応性を向上させることができる。第4機構による振動は、検査チップ220を振動することができれば、特に制限されるものではなく、モーター等を採用することによって行うことができる。また、第4機構は、検査チップ220を振動させることができる位置である検査チップ220の周辺に取り付けられる。
【0093】
また、本発明の全自動遺伝子検査装置1は、注射針1181の先端部が有する位置情報を少なくとも2方向から検出し、前記位置情報に基づいて、前記注入孔224の位置に前記注射針1181の先端部位置を補正するための制御機構225を備えていてもよい。
【0094】
図12は、注射針1181と検査チップ220との関係を示したモデル図である。
図12に示されるように、検査チップ220のX軸上、及びY軸上には、それぞれカメラ2251、カメラ2252が設置されている。制御機構225は、カメラ2251、及びカメラ2252から構成される。カメラ2251、及びカメラ2252によって、注射針1181が有するXY平面上の位置情報1を取得することができる。また、制御機構225は、検査チップ220に設けられている注入孔224が有するXY平面上の位置情報2をあらかじめ保有している。制御機構225は、取得された位置情報1と保有している位置情報2とを比較することによって、注射針1181が実際に位置しているXY平面上の座標と、制御機構225があらかじめ保有しているXY平面上の座標とのズレを認識することができる。
【0095】
制御機構225は、XY平面上の座標の間のズレを認識し、注射針1181が実際に位置しているXY平面上の座標と、制御機構があらかじめ保有しているXY平面上の座標が正確に一致するように、注射針1181の位置を制御する。
【0096】
具体的には、2方向からカメラを用いて注射針1181の位置を撮影する。注射針1181の座標を画像処理により特定し、フィードバック制御をすることによって、±0.1mm以下の精度にて、注射針1181の針先位置を制御することができる。
【0097】
例えば、外径が0.5mm程度の注射針1181には、若干の曲がりや、インジェクションチップの容器部分(例えば、ポリプロピレン樹脂の射出成型品)への取り付け誤差が発生することにより、注射針の先端位置が±0.3mm程度ばらつく。注入孔224の直径が1.0mmである場合、検査チップ220等の検査チップの位置決め誤差と注射針1181の位置のばらつきにより、注入孔224に注射針1181の針先が挿入できない場合もある。
【0098】
このため、±0.1mm以下の精度にて、注射針1181の針先位置を制御できることは、検査チップ220等の検査チップの位置決め精度が±0.2mm程度であれば、正確、かつ十分に注射針1181を注入孔224に挿入することができる。なお、注射針1181の位置検出は、カメラによる画像処理に限定するものではなく、赤外線等を用いた光学的な位置情報の検出であってもよい。
【0099】
(第3ユニットの構成)
第3ユニットは、第2ユニットが備えている検査チップ220が有する複数の反応場222において増幅された核酸を光学検出するためのユニットである。
図13(A)は、第3ユニットの構成を示した正面図である。
図13(B)は、第3ユニットの構成を示した左側面図である。
図13に示されるように、第3ユニットは、上部に配置された励起光学部310と、検査チップ220を備えた中心部320と、下部に配置された検出光学部330から構成されている。
【0100】
励起光学部310は、基体311を外枠とし、外側から順に一直線上に配置された励起光源と集光レンズ312、コリメートレンズ313からなる。一直線状に配置された励起光源と集光レンズ312、コリメートレンズ313は、一つの励起光学系を形成する。
図13(A)に示された第3ユニットは、集光レンズ312a、312b、312c、コリメートレンズ313a、313b、313cからそれぞれ構成される3つの光学系をライン状に有している。さらに、コリメートレンズ313a、313b、313cの下方には、光学フィルター314が取り付けられている。
【0101】
第3ユニットは、検査チップ220を固定する中心部320を有している。中心部320は、検査チップ220と、プレート状の検査チップ220を両面から挟持するための2つのヒーター321から構成されている。なお、ヒーター321は、光路確保のために、アパーチャーを有していてもよいし、酸化インジウムスズ(ITO)等の酸化金属薄膜をガラス基板上に成膜した透明ヒーターを使用してもよい。
図13(A)に示されたように、検査チップ220は、縦3×横3のマトリクス状に配置された、合計9個の反応場222を有している。それぞれの反応場は、励起光学部310に形成される1つの光学系に対応して、一直線状に配置される。
【0102】
検出光学部330は、基体331を外枠とし、検査チップ220側から順に一直線上に配置された集光レンズ332、光学フィルター333、検出器334からなる。一直線状に配置された集光レンズ332、光学フィルター333、検出器334は、一つの検出光学系を形成する。
図13(A)に示された第3ユニットは、集光レンズ332a、332b、332c、検出器334a、334b、334cからそれぞれ形成される3つの検出光学系をライン状に有している。
【0103】
(第3ユニットによる核酸の光学検出)
第3ユニットによる核酸の光学検出について、説明する。励起光学部310において励起光源から発生した光は、集光レンズ312を通過した後、さらにコリメートレンズ313を通過する。コリメートレンズ313を通過した光は、光学フィルター314によって、フィルタリングされる。フィルタリングされた励起光は、上側のヒーター321に設けられている孔を通過し、検査チップ220の反応場222を通過する。検査チップ220の反応場222を通過した励起光は、集光レンズ332を通過し、光学フィルター333によってフィルタリングされる。光学フィルター333によってフィルタリングされた励起光は、検出器334によって、検出される。
【0104】
図13(B)に示されるように、第3ユニットによる光学検出は、複数の光学系をライン状に形成し、ラインスキャンを行う。励起光学部310及び検出光学部330を同期させてラインスキャンさせることによって、検査チップ220が有するすべての反応場222を順次光学検出することができる。なお、
図13に示された第3ユニットは、励起光学部310と検出光学部330に、それぞれ増幅産物を検出するための蛍光色素に対応した光学フィルターを備えている。また、第3ユニットの光学検出は、蛍光色素を用いる検出であったがこれに限定されない。例えば、第3ユニットの光学検出は、核酸増幅反応による不溶性の副産物を濁度として検出してもよい。
【0105】
このように、実施形態1の全自動遺伝子検査装置1は、検体から核酸を抽出精製する第1ユニットと、核酸を増幅するための複数の反応場を有する検査チップに前記核酸を含む溶液を注入する第2ユニットと、反応場において増幅された核酸を光学検出するための第3ユニットとが相互に作用し、ロバストな構造を採用していることから、遺伝子検査を全自動に実行することができる。
【0106】
また、全自動遺伝子検査装置1が備えている第1ユニット、第2ユニット、第3ユニットはそれぞれコンパクトな構造を有しているおり、遺伝子検査装置全体として小型化を図ることができる。このため、全自動遺伝子検査装置1は、患者と近接した位置において、遺伝子検査を行うことができる。
【0107】
<実施形態2>
図14は、実施形態2の全自動遺伝子検査装置1の概要を示したモデル図である。
図14(A)は、全自動遺伝子検査装置1の概要を示した上面図である。
図14(B)は、全自動遺伝子検査装置1の概要を示した正面図である。実施形態2の全自動遺伝子検査装置1の基本的構造は、実施形態1の全自動遺伝子検査装置とほぼ同一である。
【0108】
図14(A)において、実施形態2の全自動遺伝子検査装置1は、略円形の板形状を有するカートリッジ基体411を備えている。シール付き試薬セル413がカートリッジ基体411の円周縁部に沿って、等間隔にて円を描くように設置されている。さらに、シール付き試薬セル413によって形成される円の内部には、ピアッシングチップ117、インジェクションチップ118、ピペットチップ119を収納するためのセル、反応セル120が等間隔にて設置されている。
【0109】
さらに、
図14(A)に示されるように、前処理機構140を構成している加熱冷却処理部141、偏心撹拌処理部142、磁界印加処理部143を支持する支持部材444は、略円形の板形状を有している。当該支持部材444は、回転することができるので、前処理機構140が有している各処理部も必要に応じて、位置を変えることができる。
【0110】
実施形態2の全自動遺伝子検査装置1は、ピペッティング機構130をθ方向に移動させることができる駆動部432と、カートリッジ410をピペッティング機構130が移動する軌道上において回転させることができる図示しない回転機構とを備えている。
図14(A)に示されるようにピペッティング機構をθ方向に移動させることができるθZ駆動部432は、ピペッティング機構をXYZ空間において位置決めした後、さらにθ方向に駆動することができる。
【0111】
上記回転機構は、カートリッジ410を回転させることができるので、シール付き試薬セル413の中で、前処理に必要となる複数の試薬が保持されている試薬セル413をピペッティング機構130に接近させることができる。カートリッジ410を回転させてから、次に前処理に必要となる複数の試薬をピペッティング機構130に接近させることによって、ピアッシングチップ117のピックアップ、ピペットチップ119による試薬の吸引を迅速かつ正確に行うことができる。θZ駆動部432は、ピペッティング機構130をθ方向に移動させることによって、カートリッジ基体411上及び支持部材444上において、検体から核酸を抽出精製する操作を実行する。
【0112】
図14(B)に示されるように、第1ユニットによる前処理が完了した後、核酸を含む溶液は、インジェクションチップ118に注入される。核酸を含む溶液を保持したインジェクションチップ118は、注射針1181を検査チップ220の注入孔224に突き刺すことにより、核酸を含む溶液を反応場222に注入する。反応場222で増幅された核酸は、第3ユニットが備えている光学検出部330において、検出される。
【0113】
<実施形態3>
実施形態3の全自動遺伝子検査装置1の基本的構造は、実施形態1の全自動遺伝子検査装置1とほぼ同一である。実施形態3の全自動遺伝子検査装置は1、検査チップ220の反応場222において適用される核酸増幅反応として、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を採用している。
【0114】
全自動遺伝子検査装置1にLAMP法を採用することによって、核酸増幅反応を構成するすべての反応を等温にて実行させることができ、核酸増幅反応における増幅効率をきわめて高くさせることができ、特定の遺伝子に対して極めて高い特異性を持たせることができる。
【0115】
さらに、全自動遺伝子検査装置1にLAMP法を採用することによって、核酸増幅反応に要する時間をおよそ1時間とすることができる。さらに、全自動遺伝子検査装置1にループプライマー等を追加する迅速法を適用したLAMP法を採用することによって、核酸増幅反応に要する時間をおよそ15〜30分とすることができる。また、全自動遺伝子検査装置1にLAMP法を採用すると、核酸増幅反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムが大量に生成する。ピロリン酸マグネシウムは、白色の不溶性物質であり、当該白色の不溶性物質を指標として、核酸増幅反応の有無が肉眼による目視のみで検出することができる。そして、上記不溶性物質の生成によりもたらされる溶液の濁りの度合い(濁度)を光学検出することができる第3ユニットを用いて容易に測定することによって、遺伝子検出を行うことができる。
【0116】
ここで、PCR法は、現在、最も普及し、利用されている核酸増幅反応である。しかしながら、核酸増幅反応を進行させるためには、反応温度を段階的に調整しなければならない。また、PCR法を用いた場合には、核酸増幅反応において生成した産物の確認をするために、ゲル電気泳動を用いなければならない。また、核酸増幅反応において生成した産物の確認をするために、別途プローブを用いた検出反応を行わなければならない。この点、実施形態3の全自動遺伝子検査装置1は、LAMP法を採用しているので、温度調整がきわめて容易であり、操作がきわめて容易となる。
【0117】
医療分野において重要になる遺伝子検査装置として、検体を入手してから30分以内で遺伝子検査の結果を得ることができる遺伝子検査装置が必要とされている。環境分野においても、環境汚染菌の検出には、検体を取得した直後に遺伝子検査の結果を得ることができる遺伝子検査装置が必要とされている。このような観点から、LAMP法を採用した実施形態3の全自動遺伝子検査装置は、操作性、正確性、機能性及び迅速性備え、きわめて大きい技術的意義を有する。
【0118】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は、全て本発明の適用範囲である。