【実施例】
【0081】
以下に薬理試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
[薬理試験1]
リポ酸コリンエステル(EV06)による水晶体の弾性に対する作用を確認した。InvestOphthalmol Vis Sci、57、2851−2863、2016に記載の方法を参考に、評価試験を行った。 EV06は、下記式(2):
【化4】
で表される化合物である。
【0083】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v) ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0084】
2)EV06試料の調製
EV06に基剤を加えてソニケートし、5%(w/v)の懸濁液を調製した。調製した5%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して1.5%(w/v)溶液を調製した。さらに、調製した1.5%(w/v)溶液を基剤で希釈して0.5%(w/v)溶液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0085】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日3回(9:00、13:00、17:00を目安)、15〜17日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて右眼に点眼した。
2)最終点眼後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群は6例、各EV06試料群は12例の平均である。
【0086】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0087】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各EV06試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0088】
(結果)
結果を表1に示す。
【表1】
【0089】
表1から明らかなように、EV06試料群は、0.5%、1.5%、5%のいずれにおいても、基剤群と比べて水晶体直径を増加させ、EV06が弾性向上作用を示すことを確認した。
【0090】
[薬理試験2]
ウルソデオキシコール酸ナトリウムによる水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0091】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0092】
2)ウルソデオキシコール酸ナトリウム試料の調製
ウルソデオキシコール酸ナトリウムに基剤を加えてソニケートし、1.5%(w/v)の懸濁液を調製した。調製した1.5%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して0.5%(w/v)懸濁液を調製した。さらに、調製した0.5%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して0.15%(w/v)懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0093】
3)EV06試料の調製
EV06に基剤を加えてソニケートし、1.5%(w/v)溶液を調製した(1日分を用事調製した)。
【0094】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日3回(9:00、13:00、17:00を目安)、12〜15日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて右眼に点眼した。
2)最終点眼後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群は5例、各ウルソデオキシコール酸ナトリウム試料群及びEV06試料群は10例の平均である。
【0095】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0096】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0097】
(結果)
結果を表2に示す。
【表2】
【0098】
表2から明らかなように、ウルソデオキシコール酸ナトリウム試料群は、0.15%、0.5%、1.5%のいずれにおいても強力な水晶体弾性改善作用を示し、1.5%では同濃度のEV06よりも強力な水晶体弾性向上作用を示した。
【0099】
[薬理試験3]
ウルソデオキシコール酸(フリー体)による水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0100】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0101】
2)ウルソデオキシコール酸試料の調製
ウルソデオキシコール酸に基剤を加えてソニケートし、1.5%(w/v)の懸濁液を調製した。調製した1.5%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して0.5%(w/v)懸濁液を調製した。さらに、調製した0.5%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して0.15%(w/v)懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0102】
3)EV06試料の調製
EV06に基剤を加えてソニケートし、1.5%(w/v)溶液を調製した(1日分を用事調製した)。
【0103】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日3回(9:00、13:00、17:00を目安)、12〜15日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて右眼に点眼した。
2)最終点眼後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群は5例、各ウルソデオキシコール酸試料群及びEV06試料群は10例の平均である。
【0104】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0105】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0106】
(結果)
結果を表3に示す。
【表3】
【0107】
表3から明らかなように、ウルソデオキシコール酸試料群は、0.15%、0.5%、1.5%のいずれにおいても強力な水晶体弾性改善作用を示し、1.5%では同濃度のEV06よりも強力な水晶体弾性向上作用を示した。
【0108】
[薬理試験4]
ウルソデオキシコール酸の1日1回、2週間点眼による水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0109】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0110】
2)ウルソデオキシコール酸試料の調製
ウルソデオキシコール酸に基剤を加えてソニケートし、3.0%(w/v)の懸濁液を調製した。調製した3.0%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して1.0%(w/v)懸濁液を調製した。さらに、調製した1.0%(w/v)懸濁液を基剤で希釈して0.3%(w/v)懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0111】
3)EV06試料の調製
EV06に基剤を加えてソニケートし、1.5%(w/v)溶液を調製した(1日分を用事調製した)。
【0112】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日1回(QD)、2回(BID)あるいは3回(TID)(1回は9:00を目安、2回は9:00、17:00を目安、3回は9:00、13:00、17:00を目安)、14日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて右眼に点眼した。
2)最終点眼後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群は5例、各ウルソデオキシコール酸試料群及びEV06試料群は10例の平均である。
【0113】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0114】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0115】
(結果)
結果を表4に示す。
【表4】
【0116】
表4から明らかなように、ウルソデオキシコール酸試料群は、1日1回点眼でも1%、3%のいずれにおいても強力な水晶体弾性改善作用を示し、1.5% EV06の1回点眼は効果を示さなかったため、EV06よりも明らかに強力な水晶体弾性向上作用を示した。
【0117】
[薬理試験5]
1% ウルソデオキシコール酸の1日1回、1日、3日、7日、10日または14日間点眼したときの水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0118】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0119】
2)1% ウルソデオキシコール酸試料の調製
ウルソデオキシコール酸に基剤を加えてソニケートし、1.0%(w/v)の懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0120】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日1回(13:30を目安)、1日、3日、7日、10日または14日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて両眼に点眼した。
2)最終点眼24時間後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、無処置群及び各ウルソデオキシコール酸試料群は9又は10例の平均である。
【0121】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0122】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−無処置群の水晶体直径の変化量の平均値
【0123】
(結果)
結果を表5に示す。
【表5】
【0124】
表5から明らかなように、1% ウルソデオキシコール酸試料群は、1日1回点眼において点眼日数の増加により水晶体弾性改善作用を示し、3日間点眼から明らかな水晶体弾性改善作用を示し、早期に作用を発揮する可能性が示唆された。
【0125】
[薬理試験6]
ウルソデオキシコール酸メチルエステルの1日1回、7日間点眼による水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0126】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0127】
2)ウルソデオキシコール酸メチルエステル試料の調製
ウルソデオキシコール酸メチルエステルに基剤を加えてソニケートし、0.3%(w/v)懸濁液、1.0%(w/v)懸濁液及び3.0%(w/v)懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0128】
(試験方法)
1)7ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日1回(13:30を目安)、7日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて両眼に点眼した。
2)最終点眼24時間後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群及び各ウルソデオキシコール酸メチルエステル試料群は9又は10例の平均である。
【0129】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0130】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0131】
(結果)
結果を表6に示す。
【表6】
【0132】
表6から明らかなように、ウルソデオキシコール酸メチルエステル試料群は、1日1回点眼でも1%、3%のいずれにおいても強力な水晶体弾性改善作用を示し、ウルソデオキシコール酸メチルエステルにおいても1.5% EV06よりも強力な水晶体弾性向上作用を示す可能性が示唆された。
[薬理試験7]
タウロウルソデオキシコール酸の1日1回、7日間点眼による水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0133】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0134】
2)タウロウルソデオキシコール酸試料の調製
タウロウルソデオキシコール酸に基剤を加えて溶解し、1.0%(w/v)溶液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0135】
(試験方法)
1)7ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日1回(13:30を目安)、7日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて両眼に点眼した。
2)最終点眼24時間後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群及びタウロウルソデオキシコール酸試料群は10例の平均である。
【0136】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0137】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0138】
(結果)
結果を表7に示す。
【表7】
【0139】
表7から明らかなように、1% タウロウルソデオキシコール酸試料群においても、1日1回点眼で強力な水晶体弾性改善作用を示し、表4に示すとおり1.5% EV06の1日1回点眼は14日でも効果を示さなかったため、EV06よりも明らかに強力な水晶体弾性向上作用を示す可能性が示唆された。
【0140】
[薬理試験8]
グリコウルソデオキシコール酸の1日1回、7日間点眼による水晶体の弾性に対する作用を検討した。
【0141】
(被験試料の調製)
1)基剤の調製
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH
2PO
4H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤を調製した。
【0142】
2)グリコウルソデオキシコール酸試料の調製
グリコウルソデオキシコール酸に基剤を加えてソニケートし、1.0%(w/v)懸濁液を調製した。それぞれ1日分を用事調製した。
【0143】
(試験方法)
1)8ヵ月齢のC57BL/6Jマウスに各被験試料を1日1回(13:30を目安)、7日間、2.5 μL/eyeずつピペットマンを用いて両眼に点眼した。
2)最終点眼24時間後に、マウスに二酸化炭素を吸引させ安楽殺し、眼球を摘出して、Hank‘s balanced salt solution(HBSS)でリンスした。
3)視神経近くの強膜をカミソリで切り、水晶体を切開部から摘出し、摘出した水晶体はHBSSに浸した。
4)水晶体をスライドガラスの上にのせ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(キーエンス)を用いて水晶体の画像を取り込んだ(画像a)。
5)次に、水晶体の上に1枚のカバーガラス(Corning
(登録商標) 22x22mm Square)を載せ、重さにより水晶体の厚さが変動した画像を同様に取り込んだ(画像b)。
6)画像bの水晶体直径から画像aの水晶体直径を引き、水晶体直径の変化量を下記計算式1より算出した。ついで、基剤群と比較した各試料群の水晶体弾性向上量を下記計算式2より算出した。なお、平均値は、基剤群及びグリコウルソデオキシコール酸試料群は9−10例の平均である。
【0144】
(計算式1)
水晶体直径の変化量=各被験試料の画像bの水晶体直径−各被験試料の画像aの水晶体直径
【0145】
(計算式2)
各試料群の水晶体弾性向上量=各被験試料群の水晶体直径の変化量の平均値−基剤群の水晶体直径の変化量の平均値
【0146】
(結果)
結果を表8に示す。
【表8】
【0147】
表8から明らかなように、1% グリコウルソデオキシコール酸試料群においても、1日1回点眼で強力な水晶体弾性改善作用を示し、表4に示すとおり1.5% EV06の1日1回点眼は14日でも効果を示さなかったため、EV06よりも明らかに強力な水晶体弾性向上作用を示す可能性が示唆された。
【0148】
[眼刺激性試験]
(試料調製)
0.1%(w/v) ピルビン酸エチル、0.269%(w/v) リン酸二水素ナトリウム・一水和物(NaH
2PO
4・H
2O)、0.433%(w/v) リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、0.2%(w/v) ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5%(w/v) NaClを含有する基剤(水溶液)を調製した。
【0149】
(試験方法)
ウルソデオキシコール酸点眼液の点眼群
上記薬理試験と同様の方法により調製した1%(w/v)、3%(w/v)および10%(w/v)ウルソデオキシコール酸点眼液(懸濁液)、並びに、基剤をピペットで日本白色種ウサギの左眼に6時間間隔で2回、2週間反復点眼(50μL/眼/回)し、最終点眼後1時間の前眼部刺激症状観察(McDonald−Shadduck法)および水晶体の観察を実施した。なお、対側眼は無処置とした。
前眼部刺激症状観察は、以下の基準によりスコア化した。
+1:軽度、+2:中等度、+3:重度
【0150】
(試験結果)
試験結果を表9に示す。2週間の反復点眼後、ウルソデオキシコール酸点眼液点眼眼では前眼部刺激症状観察および水晶体観察において、なんら異常所見は認められなかった。眼局所の病理組織学的検査においても異常所見は認められなかった。
【表9】
【0151】
(考察)
ウルソデオキシコール酸点眼液の安全性は、高いことが示された。