特許第6771723号(P6771723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771723
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】スガマデクスナトリウムの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20201012BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20201012BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C08B37/16
   A61K31/357
   A61P21/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-530530(P2019-530530)
(86)(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公表番号】特表2019-526625(P2019-526625A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】CN2017095642
(87)【国際公開番号】WO2018036353
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】201610716744.2
(32)【優先日】2016年8月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520314755
【氏名又は名称】合肥蘇格美客薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 炳永
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105348412(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/125501(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1402737(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104844732(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/16
A61K 31/357
A61P 21/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スガマデクスナトリウムの粗製物に保護剤を加え、不活性ガスの保護下で、再結晶によりスガマデクスナトリウムの精製品を得るスガマデクスナトリウムの精製方法であって、前記保護剤は、メルカプトエタノール、チオグリコレート、チオグリコレートエステル、メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピオネートエステル、グルタチオン、システイン、シスタミン、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール、三置換有機リン化合物、または前記三置換有機リン化合物の塩から選ばれ、前記三置換有機リン化合物は、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリエチルホスフィン(TEP)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トリス(2-フラニル)ホスフィン(TFP)から選ばれる1つであり、前記三置換有機リン化合物の塩は塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩から選ばれる1つであることを特徴とするスガマデクスナトリウムの精製方法。
【請求項2】
加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製物との質量比は、0.001%以上であることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製物との質量比は、0.1%〜20%であることを特徴とする請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
再結晶溶媒は、水とスガマデクスナトリウムの貧溶媒の組合せから選ばれ、前記スガマデクスナトリウムの貧溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの1つ又は複数の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スガマデクスナトリウムの精製方法に関し、医薬生産の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
スガマデクスナトリウムの化学名は、6A,6B,6C,6D,6E,7F,6G,6H-オクタ-S-(2-カルボキシエチル)-6A,6B,6C,6D,6E,7F,6G,6H-オクタチオ-γ-シクロデキストリン,オクタナトリウム塩であり、構造式は、以下のとおりである。
【0003】
スガマデクスナトリウムは、オランダのOrganon社が研究開発した新規の筋弛緩薬拮抗剤であり、臨床上、ロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物の神経筋遮断作用を拮抗させるのに対して良好な効果を有するとともに、極めて良好な安全性を有する。2008年7月、欧州連合がその発売を許可してから、既に日本、韓国、アメリカなどの国で発売され、中国では生産、発売を申請している。
【0004】
スガマデクスナトリウムは、構造が修飾されたγ-シクロデキストリンであり、その構造は複雑であり、調製の反応過程において、大量の複雑な副生物及び分解不純物が生成しやすい。また、スガマデクスナトリウムの分子構造にチオエーテル結合があるので、当該化合物は、酸素に対して不安定になり、精製過程において酸化されてスルホキシド、スルホン、ジスルフィドなどの一連の不純物を形成しやすい。不純物はスガマデクスナトリウム分子の側鎖構造で生成することが多い。不純物は、スガマデクスナトリウムと構造が近似し、極性の差が小さいとともに分子量の差が小さいので、通常の手段により除去することは困難であり、この特性により、スガマデクスナトリウムの精製が非常に困難となる。
【0005】
現在、中国内外では、スガマデクスナトリウムの調製プロセスに関する報告が少なく、精製過程は、膜透析又はカラムクロマトグラフィーに依存して精製を行っているが、高純度の製品を得るのが難しく、大規模な工業生産の進行に不利である。
【0006】
J. Med. Chem. 2002, 45, 1806-1816PPは、N,N-ジメチルホルムアミド系において、トリフェニルホスフィンの触媒下で、臭素とγ-シクロデキストリンを反応させて6-デオキシ-6-ペルブロモ-γ-シクロデキストリンを得、当該生成物と3-メルカプトプロピオン酸メチルを無水炭酸セシウムの触媒下で反応させて生成物であるスガマデクスメチルを得、さらに水酸化ナトリウムにより加水分解してスガマデクスナトリウムを得、収率が60%であることを提示している。この方法により得られたものは、スガマデクスナトリウムの粗製物であり、純度が低く、更なる精製に関する報告がない。
【0007】
Chem. Asian J. 2011, 6, 2390-2399では、まず、γ-シクロデキストリンをヨウ素置換して6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンの粗製物を得、当該粗製物を無水酢酸と反応させてエステルとし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、さらにナトリウムメトキシドで加水分解し、純度の高い6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンの精製品を得た。最終的に、3-メルカプトプロピオン酸でエーテルとし、目標生成物を得た。当該反応では、中間物の純度が高く、不純物が少なく、製品の後処理である精製が簡単である。しかし、カラムクロマトグラフィープロセスによりヨードシクロデキストリンを調製することは、反応工程が増加し、長い時間がかかってしまう。また、当該方法により得られたヨードシクロデキストリンを原料としてスガマデクスナトリウムを調製する場合に、合格製品を直接得ることができず、依然としてスガマデクスナトリウム製品の精製が困難であるという問題に直面する。
【0008】
W00140316PPでは、ヨウ素をハロゲン化試薬として用い、トリフェニルホスフィンの触媒下でγ-シクロデキストリンと反応させて6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンを生成させる。さらに、当該中間物を3-メルカプトプロピオン酸と反応させてチオエーテルとし、膜透析により精製して目標生成物を得た。当該方法は、ルートが簡単で信頼でき、反応活性が高いが、製品の精製には、膜透析しか採用しないので、高純度のスガマデクスナトリウムを得ることは困難である。
【0009】
CN105348412には、スガマデクスナトリウムの粗製物の精製方法が開示されている。この精製方法は、スガマデクスナトリウムの粗製物を、酸性条件下で加水分解して遊離酸の固体を得、その遊離酸の固体を水でスラリー化し、洗浄して精製する。さらに、遊離酸を有機アミンと反応させてスガマデクスアンモニウム塩を調製し、得られたアンモニウム塩を再結晶して精製する。さらに、酸性条件下で遊離させて遊離酸を得、その遊離酸の固体を水でスラリー化し、洗浄して精製し、得られた遊離酸を水酸化ナトリウムと反応させてスガマデクスナトリウムの精製品を調製する。当該方法は、カラムクロマトグラフィー、透析などの方法を使用していないが、工程が煩雑であり、遊離酸と塩の間での複数回の転換が必要で、操作が不便である。また、スガマデクス自身の構造の不安定性により、その酸性条件下での遊離過程において、自身の構造が解離されるリスクがあり、酸性の破壊不純物を形成し、製品精製の困難度が増加する。当該方法も、不活性ガス雰囲気の保護を考慮しておらず、スガマデクスナトリウムの酸化不純物の増加を抑制する条件を見出していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術にある欠点を克服し、製品の不純物が少なく、安定性が良好なスガマデクスナトリウムの再結晶による精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、スガマデクスナトリウムの粗製物に保護剤を加え、不活性ガスの保護下で再結晶によりスガマデクスナトリウムの精製品を得るスガマデクスナトリウムの精製方法であって、前記保護剤は、メルカプトエタノール、チオグリコレート、チオグリコレートエステル、メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピオネートエステル、グルタチオン、システイン、シスタミン、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール、三置換有機リン化合物、三置換有機リン化合物の塩から選ばれる1つ又は2つ以上の任意の割合での混合物であるスガマデクスナトリウムの精製方法、という技術方案により実施される。
【0012】
前記スガマデクスナトリウムの精製方法において、加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製物との質量比は、0.001%以上であることが好ましく、0.1%〜20%がさらに好ましい。
【0013】
前記スガマデクスナトリウムの精製方法において、再結晶溶媒は、水とスガマデクスナトリウムの貧溶媒の組合せから選ばれ、前記スガマデクスナトリウムの貧溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの1つ又は複数の混合物であることが好ましい。
【0014】
前記スガマデクスナトリウムの精製方法において、前記三置換有機リン化合物は、リン原子を中心原子とし、同じ又は異なる3つの置換基が側鎖としてリン原子に結合してなる一定の保護能力を有する有機リン化合物であり、好ましくは、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリエチルホスフィン(TEP)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トリス(2-フラニル)ホスフィン(TFP)から選ばれる1つ、又は前記化合物の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩から選ばれる1つである。
【0015】
前記スガマデクスナトリウムの精製方法において、再結晶の具体的な過程は、スガマデクスナトリウムの粗製物を水に溶解し、保護剤を加え、不活性ガスの保護下で昇温して還流させ、そしてスガマデクスナトリウムの貧溶媒を加えてから、撹拌して-20〜30℃まで降温させる。
【0016】
前記スガマデクスナトリウムの精製方法において、前記不活性ガスは、窒素、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素から選ばれる1つであることが好ましい。
有益な効果は、以下のとおりである。
【0017】
1、本発明によれば、再結晶によるスガマデクスナトリウムの精製過程において、保護剤の作用により、スガマデクスナトリウムの粗製物中のジスルフィドなどの構造の重合不純物を除去するとともにスルホキシド、スルホン類の不純物の生成を抑制し、スガマデクスナトリウムの製品純度を向上させる。
【0018】
2、本発明の方法によりスガマデクスナトリウムの粗製物を精製すれば、不純物を効果的に除去でき、製品純度が99.0%以上となり、単一の不純物は0.1%以下であり、製品の品質は、注射剤原料に対する品質要求を満たすことができ、同様に、欧州連合品質研究技術指導原則ICHにおける関連技術要求に達しており、スガマデクスナトリウム注射剤の生産に品質の合格である原料を提供する。
【0019】
3、本発明の精製方法は、プロセス過程が簡単であり、コストが低く、プロセスが操作しやすく、良好な経済性を有し、工業生産により適している。当該原料で製造された製剤は、不純物が少なく、治療効果が良好であり、不良反応が少なくて患者に最大の利益を与える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】スガマデクスナトリウムの粗製物のHPLCチャートである。
図2】本発明の方法により調製されたスガマデクスナトリウムの精製品のHPLCチャートである。
図3】脱酸素、不活性ガス置換の保護下で再結晶により調製されたスガマデクスナトリウムの精製品のHPLCチャートである。
図4】市販のスガマデクスナトリウムの注射液のHPLCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の方法の好ましい実施形態をより詳しく説明する。正しく理解すべきなのは、本発明の実施例における方法は、本発明をさらに説明するためのものに過ぎず、発明を制限するものではないので、本発明の方法を前提とする本発明に対する簡単な改善はいずれも本発明で保護を請求する範囲に属することである。
本発明では、特別な断りがない限り、使用される試薬、計器、設備は、いずれも市販の商品である。
【0022】
HPLC法による純度の測定方法は、以下のとおりである。被験物を25mlメスフラスコに入れ、少量の水を加え、振とうして溶解させ、さらに溶媒を加えて目盛りまで希釈し、均一に振とうして試料溶液とする。また、当該溶液を1ml精密に量り取って100mlメスフラスコに入れ、溶媒を加えて目盛りまで希釈し、均一に振とうして対照溶液とする。含有量測定の項におけるクロマトグラム条件(オクタデシル基結合シリカゲルを充填剤とし、リン酸緩衝液を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとし、直線勾配溶出を行い、測定波長は200nmである)に従って、対照溶液20μlを液体クロマトグラフに注入し、主成分のクロマトグラフピークのピーク高さがフルスケールの10〜25%になるように測定器の感度を調節し、さらに試料溶液及び対照溶液を各20μl精密に量り取って、それぞれ液体クロマトグラフに注入し、主成分のピーク保持時間の3倍までクロマトグラムを記録する。6-オクタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩と6-ヘプタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩のピーク面積のパーセントの和が、被験サンプルの純度である。
【0023】
スガマデクスナトリウムの粗製物は、特許US6670340に開示されている方法を参照して生産する。
【0024】
先発メーカーの公開文献の説明によれば、スガマデクスナトリウム製品の薬用活性成分は、主に6-オクタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩、及び6-ヘプタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩である。したがって、後述の実施例に記載の純度は、製品における6-オクタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩と6-ヘプタ-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩の量の和が製品の質量に占めるパーセントである。
【0025】
参照実施例:スガマデクスナトリウムの粗製物の調製
反応フラスコに3-メルカプトプロピオン酸(12.2mL、140mol)を投入し、N,N-ジメチルホルムアミド450mLを加え、室温下、窒素の保護下で三回に分けて水素化ナトリウム(12.3g、308mol、60%)を加え、その後室温下で30分撹拌し、γ-ヨードシクロデキストリン(31.2g、14mmol、N,N-ジメチルホルムアミド450mLに溶解する)を滴下し、滴下が完了後、70℃まで昇温し、12h反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、水100mLを加えて撹拌し、溶媒が400mLになるまで減圧蒸留し、エタノール2Lを加えてろ過し、固体を回収し、真空乾燥して淡黄色固体45gを得た。純度は91.92%であった。スガマデクスナトリウムの粗製物の測定結果を図1に示す。
【0026】
実施例1:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらグルタチオン3gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品33gを得た。純度は99.56%であった(図2を参照)。
【0027】
実施例2:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらシステイン3gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品35gを得た。純度は99.3%であった。
【0028】
実施例3:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらメルカプトエタノール3gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品28gを得た。純度は99.2%であった。
【0029】
実施例4:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらジチオエリトリトール3gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品32gを得た。純度は99.3%であった。
【0030】
実施例5:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらトリフェニルホスフィン5gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品31gを得た。純度は99.1%であった。
【0031】
実施例6:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩5gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品34gを得た。純度は99.5%であった。
【0032】
実施例7:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらグルタチオン1mgを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品36gを得た。純度は99.4%であった。
【0033】
実施例8:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらグルタチオン0.1gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品35gを得た。純度は99.5%であった。
【0034】
実施例9:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、撹拌しながらグルタチオン20gを加え、窒素の保護下で昇温して還流させ、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品27gを得た。純度は99.6%であった。
【0035】
比較例1
スガマデクスナトリウムの粗製物100gを、水3Lで透明になるまで溶解し、厳格に制御された無酸素の不活性ガスで複数回置換した保護の条件下で、昇温して還流させ、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温したところ、白色固体の析出があり、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品32gを得た。その純度測定結果は97.84%であった(図3を参照)。
【0036】
スガマデクスナトリウムの分子構造におけるチオエーテル結合の易酸化性が高いので、不活性ガスの保護方法又は他の脱酸素方法のみでは、酸化不純物の増加を回避することができない。比較例1と実施例1〜9の比較から分かるように、本発明に記載の保護剤を添加しない前提下で、厳格に制御された無酸素の不活性ガスで複数回置換した保護の条件下でも、従来の再結晶方法では、酸化不純物の増加を効果的に制御するとともにジスルフィドなどのような不純物を除去して製品純度を向上させることができず、精製による生成物の純度が悪かった。
【0037】
全体的には、従来の再結晶方法によりスガマデクスナトリウム製品におけるスルホキシド類、スルホン類、ジスルフィド類の不純物を単一の不純物が0.1%以下になるように制御することは達成し難く、得られた製品の品質は、注射剤原料に対する品質要求を満たし難く、欧州連合品質研究技術指導原則ICHにおける関連技術要求も満たし難く、かつ精製収率も非常に低く、コストが高くて工業化が困難である。
【0038】
比較例2
市販の先発のスガマデクスナトリウム注射液の純度測定結果は97.77%であった(図4参照)。
【0039】
比較例2と実施例1〜9の比較から分かるように、本発明で得られたスガマデクスナトリウムの精製品は、市販の製品よりも純度が高かった。
【0040】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則内であれば、いかなる修正、等価な代替、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4