(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(式中、各基は、互いに独立に、それぞれ同一であっても異なっていてもよい、次に示す意味を有する:
C
nは、n個の炭素原子から構成され、1種又は2種以上の原子が内部に閉じ込められていてもよいフラーレンであり、
Ad
1は、好適にはこのフラーレンの[6,6]付加基(adduct)又は[5,6]付加基である、式1〜8:
【0013】
(oは、1以上の整数又は1を超える非整数であり、
Rは、ハロゲン;CN;1〜50個のC原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル基(1個もしくは2個以上のCH
2基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR
0−、−C(=O)−NR
0−、
−NR
0−C(=O)−、−SiR
0R
00−、−CF
2−、−CR
0=CR
00−、−CR
0=N−、−N=N−もしくは−C≡C−に、O原子及び/もしくはS原子が互いに直接結合しないように置き換わっていてもよく、ならびに/又は1個もしくは2個以上のH原子がF、Cl、Br、IもしくはCNに置き換わっていてもよい);飽和もしくは不飽和の非芳香族炭素環式もしくは複素環式基;又はアリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基もしくはヘテロアリールオキシ基であり(上述の基はそれぞれ5〜20個の環原子を有し、単環又は多環であり、縮合環を含んでいてもよく、1種又は2種以上の同一であるか又は異なるL基で置換されていてもよい)、
pは、0又は1以上の整数であり、
Lは、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR
0R
00、−C(=O)X
0、−C(=O)R
0、−NH
2、−NR
0R
00、−SH、−SR
0、−SO
3H、−SO
2R
0、−OH、−NO
2、−CF
3、−SF
5、置換されていてもよいシリル、又は置換されていてもよく、かつ1種もしくは2種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビル(これは、好適には、1〜20個のC原子を有し、フッ素化されていてもよい、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル又はアルコキシカルボニルオキシである)であり、
R
0、R
00は、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
X
0は、ハロゲン、好適にはF、Cl又はBrであり、
*−−−*は、フラーレンに繋がる結合であり、
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4は、1種又は2種以上のL基でさらに置換されていてもよく、任意の結合配置を有することができる、C、Si、Ge、Sn、N、P、B、Al、Ga、S、O又はSeであり、
Ar
1、Ar
2は、二重結合、飽和もしくは不飽和の非芳香族炭素環式基もしくは複素環式基、又はアリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基もしくはヘテロアリールオキシ基であり、上述の基はそれぞれ5〜20個の環原子を有し、単環又は多環であり、縮合環を含んでいてもよく、1種又は2種以上の同一であるか又は異なるL基で置換されていてもよい)から選択される第1付加基であり、
Ad
2は、フラーレンC
nに任意の結合様式で懸垂(append)している第2付加基又は第2付加基の組合せであり、
mは、0、1以上の整数又は0を超える非整数である)で表される2種以上の化合物(その異性体を含む)を含む混合物(以後、「フラーレン混合物」と称する)に関し、
但しこの混合物は、
a)その付加基Ad
1のうちの少なくとも1種の性質が異なる、式Iで表される少なくとも2種の化合物、及び/又は
b)その付加基Ad
1上の置換基Rのうちの少なくとも1種の性質が異なる、式Iで表される少なくとも2種の化合物、及び/又は
c)その付加基Ad
1上の置換基Rの数pが異なる、式Iで表される少なくとも2種の化合物
を含む。
【0014】
さらに本発明は、上述及び後述の式Iで表される2種以上の化合物を含み、炭素原子数nが異なる式Iで表されるフラーレンから選択されるか又は式Iとは異なるフラーレンから選択される1種又は2種以上のフラーレン又はフラーレン誘導体をさらに含む、フラーレン混合物に関する。
【0015】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物の電子受容体又はn型半導体としての使用に関する。
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物の、半導体材料、有機電子デバイス又は有機電子デバイスの構成要素における、電子受容体又はn型成分としての使用に関す
る。
【0016】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物を含む組成物に関する。
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物を好適には電子受容体又はn型成分として含み、好適には電子供与性又はp型特性を示す1種又は2種以上の半導体化合物をさらに含む、組成物に関する。
【0017】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物を含み、1種又は2種以上の好適には共役系有機ポリマーから選択されるp型有機半導体化合物をさらに含む、組成物に関する。
【0018】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物を含み、半導体性、電荷輸送性、正孔輸送性、電子輸送性、正孔ブロック性、電子ブロック性、導電性、光導電性、光活性又は発光性の1つ又は2つ以上を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物をさらに含む、組成物に関する。
【0019】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物又はそれを含む組成物の、半導体材料、電荷輸送材料、導電材料、光導電材料、光活性材料もしくは発光材料としての使用;又は有機電子(OE)デバイスにおける使用;又はこの種のOEデバイスの構成要素における使用;又はこの種のOEデバイスもしくはこの種の構成要素を含む集合体における使用に関する。
【0020】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物を含む、半導体材料、電荷輸送材料、導電材料、光導電材料、光活性材料もしくは発光材料、又はそれを含む上述及び後述の組成物に関する。
【0021】
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物又はそれを含む上述及び後述の組成物もしくは材料を含み、好適には有機溶媒から、非常に好適には非塩素系有機溶媒から、最適には非ハロゲン系有機溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒をさらに含む、配合物に関する。
【0022】
さらに本発明は、上述及び後述の配合物を用いて作製されたOEデバイス、又はその構成要素、又はそれを含む集合体に関する。
さらに本発明は、上述及び後述のフラーレン混合物又はそれを含む上述及び後述の組成物もしくは材料を含む、OEデバイス、又はその構成要素、又はそれを含む集合体に関する。
【0023】
本発明のOEデバイスは、好適には、光デバイス、電気光学素子、電子デバイス、光活性デバイス(photoactive device)、エレクトロルミネッセンス素子又はフォトルミネッセンス素子である。
【0024】
本発明のOEデバイスとしては、これらに限定されるものではないが、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光電変換素子(OPV)、有機受光素子(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、レーザーダイオード、ショットキーバリアダイオード、光導電体、受光素子及び熱電素子が挙げられる。
【0025】
好適なOEデバイスは、OFET、OTFT、OPV、OPD及びOLED、特にバルクヘテロジャンクション型(BHJ)OPV又は逆型BHJ OPVである。
本発明によるフラーレン混合物、組成物又はポリマーブレンドのDSSC又はペロブス
カイト型太陽電池における色素としての使用、及び本発明による化合物、組成物又はポリマーブレンドを含むDSSC又はペロブスカイト型太陽電池がさらに好適である。
【0026】
上述のOEデバイスの構成要素としては、これらに限定されるものではないが、電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止膜、高分子電解質膜(PEM)、導電性基板及び導電パターンが挙げられる。
【0027】
この種のOEデバイス又は構成要素を含む集合体としては、これらに限定されるものではないが、集積回路(IC)、電波方式認識(RFID)タグ、又はこれらを含む偽造防止マーク(security marking)もしくはセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ又はそのバックライト、電子写真装置、電子写真記録装置、有機メモリ素子、センサー素子、バイオセンサー及びバイオチップが挙げられる。
【0028】
加えて、本発明の化合物及び組成物は、電池の電極材料として、ならびにDNA配列を検出及び識別するための構成要素又はデバイスに使用することができる。
さらに本発明は、式Iから選択される1種又は2種以上の化合物と、共役系有機ポリマーから選択される1種又は2種以上のp型有機半導体化合物とを含む組成物を含むか又はこの組成物から形成されるバルクヘテロジャンクションに関する。さらに本発明は、この種のバルクヘテロジャンクションを含むバルクヘテロジャンクション(BHJ)型OPVデバイス又は逆型BHJ OPVデバイスに関する。
用語及び定義
本明細書において用いられる、2種以上の化合物の「その付加基の(又はその付加基の置換基の)性質が異なる」という表現は、各化合物が、他の化合物の付加基(又は置換基)と異なる構造を有する、例えば、C原子の数が異なる少なくとも1個の付加基(又は置換基)を有することを意味すると理解されるであろう。
【0029】
本明細書において「式I」又は「式I及びその下位式」を参照する場合は全て、後に示す式Iのあらゆる具体的な下位式を包含すると理解されたい。
本明細書において用いられる「フラーレン」という語は、表面に6員環及び5員環を含み、通常は12個の5員環とその残りの6員環とで籠状の縮合環を形成している偶数個の炭素原子から構成される化合物であって、場合により1種又は2種以上の原子が内部に閉じ込められている化合物を意味するものと理解されるであろう。フラーレンの表面はBやN等のヘテロ原子も含むことができる。
【0030】
本明細書において用いられる「内包フラーレン」という語は、1種又は2種以上の原子が内部に閉じ込められたフラーレンを意味するものと理解されるであろう。
本明細書において用いられる「メタロフラーレン」という語は、内部に閉じ込められている原子が金属原子から選択される内包フラーレンを意味するものと理解されるであろう。
【0031】
本明細書において用いられる「炭素系フラーレン(carbon based fullerene)」という語は、内部に原子が閉じ込められておらず、表面に炭素原子のみを含むフラーレンを意味するものと理解されるであろう。
【0032】
本明細書において用いられる「ポリマー(高分子、重合体)」という語は、その構造が、基本的に、分子量が相対的に低い分子から事実上又は概念上誘導された単位の複数の繰り返しを含む、分子量が相対的に高い分子を意味するものと理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。「オリゴマー」という語は、その構造が、基本的に、分子量が相対的に低い分子から事実上又は概念上誘導された単位を複数(少数)含む、分子量
が相対的に中程度の分子を意味するものと理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。本明細書において用いられる本発明の好適な意味においては、ポリマー(高分子、重合体)は、1個を超える、すなわち少なくとも2個の繰り返し単位、好適には5個以上の繰り返し単位を有する化合物を意味するものと理解され、オリゴマーは、1個を超え、かつ10個未満、好適には5個未満の繰り返し単位を有する化合物を意味するものと理解されるであろう。
【0033】
さらに、本明細書において用いられる「ポリマー(高分子、重合体)」という語は、1種又は2種以上の異なる種類の繰り返し単位(分子の最小構成単位)からなる骨格(「主鎖」とも称される)を包含する分子を意味するものと理解されるであろう。この語は、一般に知られている「オリゴマー」、「コポリマー(共重合体)」、「ホモポリマー(単独重合体)」等の語を包含する。さらに、ポリマーという語は、ポリマー自体に加えて、開始剤、触媒及びこの種のポリマーの合成に付随する他の構成成分の残留物も含むものと理解され、この種の残留物は共有結合によって組み込まれている訳ではないと理解される。さらに、この種の残留物及び他の構成成分は、通常は重合後の精製プロセスの最中に除去されるが、典型的には、ポリマーに混ざっているか又は互いに混ざり合っているため、容器間又は溶媒間又は分散媒間を移動する際に大部分がポリマーと一緒に残存する。
【0034】
本明細書において用いられる、ポリマー又は繰り返し単位を示す式におけるアスタリスク(
*)は、ポリマー骨格内の隣接する単位又は末端基に繋がる化学結合を意味するものと理解されるであろう。環、例えば、ベンゼン環やチオフェン環等におけるアスタリスク(
*)は、隣接する環と縮合しているC原子を意味するものと理解されるであろう。
【0035】
本明細書において用いられる「繰り返し単位(repeat unit、repeating unit)」及び「モノマー単位」という語は互換的に使用され、その繰り返しにより、規則性高分子、規則性オリゴマー分子、規則性のあるブロック又は規則性のある分子鎖を構築する最小構成単位である、構成繰り返し単位(CRU)を意味するものと理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。さらに、本明細書において使用される「単位」という語は、それ自体が繰り返し単位となることもできるし、あるいは他の単位と一緒になって構成繰り返し単位を形成することもできる構造単位を意味するものと理解されるであろう。
【0036】
本明細書において用いられる「末端基」という語は、ポリマー骨格の末端の基を意味するものと理解されるであろう。「骨格の末端位において」という表現は、2価の単位又は繰り返し単位の一端がこのような末端基に結合しており、他端が他の繰り返し単位に結合していることを意味するものと理解されるであろう。この種の末端基としては、末端封止基や、ポリマー骨格を形成するモノマーに結合している、重合反応に参加しなかった反応性基(例えば、下に定義するR
23又はR
24の意味を有する基等)が挙げられる。
【0037】
本明細書において用いられる「末端封止基」という語は、ポリマー骨格の末端基に結合しているか又はこの末端基と置き換わっている基を意味するものと理解されるであろう。末端封止基は、末端封止プロセスによってポリマーに導入することができる。末端封止は、例えば、ポリマー骨格の末端基を、例えば、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリール、アルキルスタンナン又はアリールスタンナン、ボロン酸アルキル又はボロン酸アリール等の一官能性化合物(「末端封止剤」)と反応させることにより実施することができる。末端封止剤は、例えば、重合反応後に添加することができる。別法として、末端封止剤を、重合反応の前又は途中で反応混合物にその場で添加することができる。末端封止剤のその場での添加は、重合反応を停止させ、生成するポリマーの分子量を制御するために用
いることもできる。典型的な末端封止基は、例えば、H、フェニル及び低級アルキルである。
【0038】
本明細書において用いられる「低分子」という語は、典型的には、ポリマーを形成するために反応させることができる反応性基を含まず、単量体形態で使用することが指定されている、単量体化合物を意味するものと理解されるであろう。この語とは異なり、「モノマー」という語は、特に断りのない限り、ポリマーを形成するために反応させることができる1個又は2個以上の反応性官能基を有する単量体化合物を意味するものと理解されるであろう。
【0039】
本明細書において用いられる、「供与体」又は「供与性」及び「受容体」又は「受容性」という語は、それぞれ電子供与体又は電子受容体を意味するものと理解されるであろう。「電子供与体」とは、他の化合物又は同一化合物中の他の原子団に電子を供与する化学種(chemical entity)を意味するものと理解されるであろう。「電子受容体」とは、他の化合物又は同一化合物中の他の原子団から移動してきた電子を受容する化学種を意味するものと理解されるであろう。国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)、化学用語集(Compendium of Chemical Technology)、ゴールドブック(Gold Book)、第2.3.2版(2012年8月19日)、477及び480頁も参照されたい。
【0040】
本明細書において用いられる「n型」又は「n型半導体」という語は、伝導電子密度が移動正孔密度よりも高い不純物半導体を意味するものと理解され、「p型」又は「p型半導体」という語は、移動正孔密度が伝導電子密度よりも高い不純物半導体を意味するものと理解されるであろう(J.セウリス(J.Thewlis)著、コンサイス・ディクショナリー・オブ・フィシックス(Concise Dictionary of Physics)、パーガモン・プレス(Pergamon Press)、オックスフォード(Oxford)、1973年も参照されたい)。
【0041】
本明細書において用いられる「脱離基」という語は、特定の反応に参加する分子の、残留部分又は主要部分と見なされる部分の原子から分離する原子又は基(電荷を有していても有していなくてもよい)を意味するものと理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1994年、第66巻、p.1134も参照されたい)。
【0042】
本明細書において用いられる「共役」という語は、主としてsp
2混成(又は場合によりsp混成も)しているC原子を含む化合物(例えば、ポリマー)を意味するものと理解されるであろう。これらのC原子はヘテロ原子に置き換えられていてもよい。最も単純な場合においては、これは、例えば、C−C単結合及び二重(又は三重)結合が交互に現れる化合物であるが、例えば、1,4−フェニレン等の芳香族単位を有する化合物も包含される。これに関連する「主として」という語は、その化合物が、共役を妨げる可能性のある自然に(自発的に)発生する欠陥又は設計に含まれている欠陥を有していても、やはり共役化合物と見なされることを意味するものと理解されるであろう。
【0043】
本明細書において用いられる分子量は、特に断りのない限り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン(TCM、クロロホルム)、クロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等の溶出溶媒中で、標準ポリスチレンに対し決定される、数平均分子量M
n又は重量平均分子量M
wとして与えられる。特に断りのない限り、1,2,4−トリクロロベンゼンが溶媒として使用される。重合度n(繰り返し単位の総数とも称される)は、n=M
n/M
u(式中、M
nは数平均分子量であ
り、M
uは1個の繰り返し単位の分子量である)として与えられる重合の度合いの数平均を意味するものと理解されるであろう。J.M.G.コウィー(J.M.G.Cowie)著、高分子:近代材料の化学及び物理(Polymers:Chemistry & Physics of Modern Materials)、ブラッキー(Blackie)、グラスゴー(Glasgow)、1991年を参照されたい。
【0044】
本明細書において用いられる「カルビル基」という語は、炭素以外の原子を全く含まない(例えば−C≡C−等)か又はB、N、O、S、P、Si、Se、As、Te、Ge等の少なくとも1個の炭素以外の原子が組み合わさっていてもよい(例えばカルボニル等)、少なくとも1個の炭素原子を含む、任意の1価又は多価の有機基部分を意味するものと理解されるであろう。
【0045】
本明細書において用いられる「ヒドロカルビル基」という語は、さらに1個又は2個以上のH原子を追加で含み、1個又は2個以上のヘテロ原子(例えば、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te、Ge等)を含んでいてもよいカルビル基を意味するものと理解されるであろう。
【0046】
本明細書において用いられる「ヘテロ原子」という語は、有機化合物中のH原子及びC原子以外の原子を意味するものと理解され、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeを意味するものと理解されるであろう。
【0047】
3個以上のC原子を含むカルビル基又はヒドロカルビル基は、直鎖、分岐及び/又は環状(スピロ環及び/又は縮合環を含んでいてもよい)であってもよい。
好適なカルビル基及びヒドロカルビル基としては、それぞれ置換されていてもよく、1〜40個、好適には1〜25個、非常に好適には1〜18個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ及びアルコキシカルボニルオキシ;さらには、置換されていてもよく、6〜40個、好適には6〜25個のC原子を有する、アリール又はアリールオキシ;さらには、それぞれ置換されていてもよく、6〜40個、好適には7〜40個のC原子を有する、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ及びアリールオキシカルボニルオキシが挙げられ、無論これらの基も全て、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te及びGeから選択される1種又は2種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0048】
さらに好適なカルビル基及びヒドロカルビル基としては、例えば:C
1〜C
40アルキル基、C
1〜C
40フルオロアルキル基、C
1〜C
40アルコキシ又はオキサアルキル基、C
2〜C
40アルケニル基、C
2〜C
40アルキニル基、C
3〜C
40アリル基、C
4〜C
40アルキルジエニル基、C
4〜C
40ポリエニル基、C
2〜C
40ケトン基、C
2〜C
40エステル基、C
6〜C
18アリール基、C
6〜C
40アルキルアリール基、C
6〜C
40アリールアルキル基、C
4〜C
40シクロアルキル基、C
4〜C
40シクロアルケニル基等が挙げられる。上述の基の中でも、それぞれ、C
1〜C
20アルキル基、C
1〜C
20フルオロアルキル基、C
2〜C
20アルケニル基、C
2〜C
20アルキニル基、C
3〜C
20アリル基、C
4〜C
20アルキルジエニル基、C
2〜C
20ケトン基、C
2〜C
20エステル基、C
6〜C
12アリール基及びC
4〜C
20ポリエニル基が好適である。
【0049】
炭素原子を有する基及びヘテロ原子を有する基の組合せ、例えば、シリル基、好適にはトリアルキルシリル基で置換された、アルキニル基、好適にはエチニルも包含される。
カルビル基又はヒドロカルビル基は非環式基であっても環式基であってもよい。カルビル基又はヒドロカルビル基が非環式基である場合、この基は直鎖であっても分岐鎖であっ
てもよい。カルビル基又はヒドロカルビル基が環式基である場合、この基は非芳香族炭素環式基であっても非芳香族複素環式基であってもよいし、あるいはアリール基であってもヘテロアリール基であってもよい。
【0050】
上述及び後述の非芳香族炭素環式基は飽和又は不飽和であり、好適には4〜30個の環炭素原子を有する。上述及び後述の非芳香族複素環式基は、好適には4〜30個の環炭素原子を有し、この環炭素原子の1個又は2個以上は、好適にはN、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子又は−S(O)−基もしくは−S(O)
2−基に置き換えられていてもよい。非芳香族炭素環式基及び非芳香族複素環式基は単環又は多環であり、縮合環も含んでいてもよく、好適には1、2、3又は4個の縮合環又は非縮合環を含み、1種又は2種以上のL基で置換されていてもよく、
Lは、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR
0R
00、−C(=O)X
0、−C(=O)R
0、−NH
2、−NR
0R
00、−SH、−SR
0、−SO
3H、−SO
2R
0、−OH、−NO
2、−CF
3、−SF
5、置換されていてもよいシリル、又は置換されていてもよく、かつ1種もしくは2種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビル(これは好適には、1〜20個のC原子を有し、フッ素化されていてもよい、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ又はアルコキシカルボニルオキシである)から選択され、X
0はハロゲン、好適にはF、Cl又はBrであり、R
0、R
00は上述及び後述の意味を有し、好適にはH又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
【0051】
好適な置換基Lは、ハロゲン(最適にはF);又は1〜12個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、チオアルキル、フルオロアルキル及びフルオロアルコキシ;又は2〜12個のC原子を有するアルケニル又はアルキニルから選択される。
【0052】
好適な非芳香族炭素環式基又は複素環式基は、テトラヒドロフラン、インダン、ピラン、ピロリジン、ピペリジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジヒドロフラン−2−オン、テトラヒドロピラン−2−オン及びオキセパン−2−オンである。
【0053】
上述及び後述のアリール基は、好適には4〜30個の環炭素原子を有し、単環又は多環であり、縮合環も含んでいてもよく、好適には1、2、3又は4個の縮合環又は非縮合環を含み、上に定義した1種又は2種以上のL基で置換されていてもよい。
【0054】
上述及び後述のヘテロアリール基は、好適には4〜30個の環炭素原子を有し、環炭素原子の1個又は2個以上が、好適にはN、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子に置き換えられている単環又は多環であり、縮合環も含んでいてもよく、好適には1、2、3又は4個の縮合環又は非縮合環を含み、上に定義した1種又は2種以上のL基で置換されていてもよい。
【0055】
本明細書において用いられる「アリーレン」は、2価のアリール基を意味するものと理解され、「ヘテロアリーレン」は、2価のヘテロアリール基を意味するものと理解され、上述及び後述のアリール及びヘテロアリールの全ての好適な意味を包含する。
【0056】
好適なアリール基及びヘテロアリール基は、さらに1個又は2個以上のCH基が、N、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、フルオレン及びオキサゾール(これらは全て、無置換であっても上に定義したLで一置換又は多置換されていてもよい)に置き換わっていてもよいフェニルである。非常に好適な環は、ピロール(好適にはN−ピロール)、フラン、ピリジン(好適には2−又は3−ピリジ
ン)、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン(好適には2−チオフェン)、セレノフェン(好適には2−セレノフェン)、チエノ[3,2−b]チオフェン、チエノ[2,3−b]チオフェン、フロ[3,2−b]フラン、フロ[2,3−b]フラン、セレノ[3,2−b]セレノフェン、セレノ[2,3−b]セレノフェン、チエノ[3,2−b]セレノフェン、チエノ[3,2−b]フラン、インドール、イソインドール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン、ベンゾ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン、キノール(quinole)、2−メチルキノール(2−methylquinole)、イソキノール(isoquinole)、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアジアゾール、4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン、7H−3,4−ジチア−7−シラシクロペンタ[a]ペンタレンから選択され、これらは全て、無置換であっても上に定義したLで一置換又は多置換されていてもよい。さらなるアリール基及びヘテロアリール基は、例えば、後に示す群から選択されるものである。
【0057】
アルキル基又はアルコキシ基(すなわち、末端CH
2基が−O−に置き換わっているもの)は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。これは好適には直鎖であり、2、3、4、5、6、7、8、12又は16個の炭素原子を有し、したがって、好適には、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ドデコキシ又はヘキサデコキシ、さらには、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、トリデコキシ又はテトラデコキシである。
【0058】
アルケニル基(すなわち、1個又は2個以上のCH
2基が−CH=CH−に置き換わっているもの)は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。これは好適には直鎖であり、2〜10個のC原子を有し、したがって、好適には、ビニル、プロプ−1−又はプロプ−2−エニル、ブト−1−、2−又はブト−3−エニル、ペント−1−、2−、3−又はペント−4−エニル、ヘキシ−1−、2−、3−、4−又はヘキシ−5−エニル、ヘプト−1−、2−、3−、4−、5−又はヘプト−6−エニル、オクト−1−、2−、3−、4−、5−、6−又はオクト−7−エニル、ノン−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−又はノン−8−エニル、デク−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−又はデク−9−エニルである。
【0059】
特に好適なアルケニル基は、C
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニル、C
5〜C
7−4−アルケニル、C
6〜C
7−5−アルケニル及びC
7−6−アルケニル、特に、C
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニル及びC
5〜C
7−4−アルケニルである。特に好適なアルケニル基としては、例えば、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル等が挙げられる。5個までのC原子を有する基が一般に好適である。
【0060】
オキサアルキル基(すなわち、1個のCH
2基が−O−に置き換わっているもの)は、好適には、例えば、直鎖2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)もしくは3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−もしくは4−オキサペンチル、2−、3−、4−もしくは5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−
もしくは6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−オキサノニル又は2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−オキサデシルである。
【0061】
1個のCH
2基が−O−に置き換わっており、かつ1個のCH
2基が−C(O)−に置き換わっているアルキル基においては、これらの基は好適には隣接している。したがって、これらの基は一緒になって、カルボニルオキシ基−C(O)−O−又はオキシカルボニル基−O−C(O)−を形成する。好適には、この基は直鎖であり、2〜6個のC原子を有する。したがって、これは、好適には、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0062】
2個以上のCH
2基が−O−及び/又は−C(O)O−に置き換わっているアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。これは好適には直鎖であり、3〜12個のC原子を有する。したがって、これは、好適には、ビス−カルボキシメチル、2,2−ビス−カルボキシエチル、3,3−ビス−カルボキシプロピル、4,4−ビス−カルボキシブチル、5,5−ビス−カルボキシペンチル、6,6−ビス−カルボキシヘキシル、7,7−ビス−カルボキシヘプチル、8,8−ビス−カルボキシオクチル、9,9−ビス−カルボキシノニル、10,10−ビス−カルボキシデシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0063】
チオアルキル基、すなわち1個のCH
2基が−S−に置き換わっているものは、好適には、直鎖チオメチル(−SCH
3)、1−チオエチル(−SCH
2CH
3)、1−チオプロピル(=−SCH
2CH
2CH
3)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)又は1−(チオドデシル)であり、好適には、sp
2混成したビニル炭素原子に隣接するCH
2基が置き換わっている。
【0064】
フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキルC
iF
2i+1(式中、iは、1〜15の整数である)、特に、CF
3、C
2F
5、C
3F
7、C
4F
9、C
5F
11、C
6F
13、C
7F
15又はC
8F
17であり、非常に好適にはC
6F
13であるか;又は好適には1〜15個のC原子を有する一部フッ素化されたアルキル、特に、1,1−ジフルオロアルキルであり、これらは全て直鎖又は分岐鎖である。
【0065】
好適には、「フルオロアルキル」とは、一部フッ素化された(すなわち全フッ素化され
ていない)アルキル基を意味する。
アルキル、アルコキシ、アルケニル、オキサアルキル、チオアルキル、カルボニル及びカルボニルオキシ基は、アキラルな基であってもキラルな基であってもよい。特に好適なキラルな基は、例えば、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、2−ブチルオクトキシ(butyloctoxyo)、2−ヘキシルデコキシ、2−オクチルドデコキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチル−バレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。非常に好適には、2−エチルヘキシル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル及び1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシである。
【0066】
好適なアキラルな分岐基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3−メチルブチル)、tert−ブチル、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシ及び3−メチルブトキシである。
【0067】
好適な実施形態において、このアルキル基は、互いに独立に、1個もしくは2個以上のH原子がFに置き換わっていてもよい、1〜30個のC原子を有する、1級、2級もしくは3級アルキルもしくはアルコキシから選択されるか;又はアルキル化もしくはアルコキシ化されていてもよい、4〜30個の環原子を有する、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシから選択される。この種の非常に好適な基は、次に示す式:
【0069】
(式中、「ALK」は、フッ素化されていてもよい、好適には直鎖の、1〜20個、好適には1〜12個のC原子を有する(第3級基の場合は、非常に好適には1〜9個のC原子を有する)アルキル又はアルコキシを表し、破線は、これらの基が連結している環に繋がる結合を表す)からなる群から選択される。これらの基の中でも特に好適な基は、ALK下位置換基(subgroup)が全て同一である基である。
【0070】
本明細書において用いられる「ハロゲン」又は「hal」は、F、Cl、Br又はI、好適には、F、Cl又はBrを意味する。
本明細書において用いられる、−CO−、−C(=O)−及び−C(O)−は、カルボニル基、すなわち:
【0072】
の構造を有する基を意味するものと理解されるであろう。
本明細書において用いられるC=CR
1R
2は、イリデン基、すなわち:
【0074】
の構造を有する基を意味するものと理解されるであろう。
上述及び後述のY
1及びY
2は、互いに独立に、H、F、Cl又はCNである。
上述及び後述のR
0及びR
00は、互いに独立に、Hであるか又は1〜40個のC原子を有する置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり、好適にはHであるか又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
詳細な説明
式Iで表される2種以上の化合物を含むフラーレン混合物は、OPV/OPD用途に使用するための先に開示されているフラーレン誘導体及び混合物と比較して、次に示す1つ又は2つ以上の特性が改善されている:
i)(R)
p位(それぞれ任意の数の可溶化基を有することができる)を置換することにより、例えば、アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Adv.Energy Mater.)、2014年、第4巻、1300693及びエーシーエス・ナノ(ACS Nano)、2014年、第8巻(2)、pp.1297〜1308に記載されているように、フラーレンの2+2ディールス・アルダー(Diels Alder)二量化/低重合反応を介してバルクヘテロジャンクションの光安定性を高めることが可能になる。
ii)(R)
p位(それぞれ任意の数の可溶化基を有することができる)を置換することにより、フラーレンの結晶化挙動及び/又は相分離挙動を介して初期のBHJが平衡熱力
学的に安定化し、それによってバルクヘテロジャンクションの光照射に対する安定性を高めることが可能になる。
iii)(R)
p位(それぞれ任意の数の可溶化基を有することができる)を置換することにより、フラーレンの結晶化挙動及び/又は相分離挙動を介して初期のBHJが平衡熱力学的に安定化し、それによってバルクヘテロジャンクションの熱的安定性を高めることが可能になる。
iV)(R)
p位の電子受容単位及び/又は電子供与単位ならびにAr
1及びAr
2によってフラーレンのバンドギャップが小さくなり、したがって、光吸収率が向上する可能性がある。
v)(R)
n位の電子受容単位及び/又は電子供与単位を丁寧に選択して電子のエネルギー(HOMO/LUMO準位)をさらに微調整することにより、開放電圧(V
oc)が高くなる。
vi)(R)
p位の電子受容単位及び/又は電子供与単位ならびにAr
1及び/又はAr
2を丁寧に選択して電子のエネルギー(HOMO/LUMO準位)をさらに微調整することにより、活性層におけるフラーレン及びp型材料(すなわち、ポリマー、オリゴマー、規定の分子単位)の間の電子移動過程におけるエネルギー損失が低減される。
vii)(R)
p位(それぞれ1個を超える可溶化基を有することができる)を置換することにより可溶化基の数が増加することに起因して、フラーレンの非ハロゲン系溶媒における溶解性を向上させることが可能になる。
【0075】
式I及びその下位式で表されるフラーレンC
nは、任意の数(n個)の炭素原子から構成することができる。好適には、式I及びその下位式で表される化合物において、フラーレンC
nの炭素原子数nは、60、70、76、78、82、84、90、94又は96個、非常に好適には60又は70個から構成される。
【0076】
上に示した条件a)〜c)に加えて、本発明による混合物はまた、フラーレンを形成する炭素原子数nが異なる2種以上の式Iの化合物を含むこともできる。
したがって、本発明のさらなる好適な実施形態において、フラーレン混合物は、C60フラーレンと、好適にはC70、C76、C78、C82、C84、C90、C94又はC96から選択され、非常に好適にはC70である、より高級なフラーレンとを含む。このC60フラーレン及びより高級なフラーレンは:
・その付加基であるAd
1の性質、
・その付加基Ad
1上の置換基Rの性質、
・その付加基Ad
1上の置換基Rの数p
のうちの少なくとも1つが異なっている。
【0077】
式I及びその下位式におけるフラーレンC
nは、好適には炭素系フラーレン、内包フラーレン又はこれらの混合物から選択され、非常に好適には炭素系フラーレンから選択される。
【0078】
好適な炭素系フラーレンとしては、これらに限定されるものではないが、(C
60−1h)[5,6]フラーレン、(C
70−D5h)[5,6]フラーレン、(C
76−D2*)[5,6]フラーレン、(C
84−D2*)[5,6]フラーレン、(C
84−D2d)[5,6]フラーレン又は上述の炭素系フラーレンの2種以上の混合物が挙げられる。
【0079】
内包フラーレンは好適にはメタロフラーレンである。好適なメタロフラーレンとしては、これらに限定されるものではないが、La@C
60、La@C
82、Y@C
82、Sc
3N@C
80、Y
3N@C
80、Sc
3C
2@C
80又は上述のメタロフラーレンの2種以上の混合物が挙げられる。
【0080】
付加基Ad
1は、好適には、フラーレンC
nに[6,6]結合及び/又は[5,6]結合、好適には[6,6]結合により懸垂している。
C
nがより対称性の低いフラーレン、例えばC70である場合、式Iで表される化合物はまた、例えば、C・シルゲン(C.Thilgen)及びF・ディードリッヒ(F.Diederich)著、トピックス・イン・カレント・ケミストリー(Top.Curr.Chem.)、1999年、第199巻、pp.135〜171に開示されているような、付加基Ad
1がフラーレンの異なる結合に懸垂している位置異性体の混合物を含むこともできる。
【0081】
式Iで表されるフラーレン化合物はまた、例えば、アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Adv.Energy Mater.)、2014年、第4巻、1300693及びエーシーエス・ナノ(ACS Nano)、2014年、第8巻(2)、pp.1297〜1308に記載されているように、フラーレンを2+2ディールス・アルダー(Diels Alder)二量化/低重合反応に付すこともできる。
【0082】
式I及びその下位式で表される化合物において、oは、好適には1、2、3又は4を表し、非常に好適には1又は2を表す。他の好適な実施形態において、oは1を超える非整数(1.5等)である。
【0083】
式I及びその下位式で表される化合物において、pは好適には0、1、2、3又は4を表し、非常に好適には1又は2である。
特に好適には、付加基Ad
1は式1及び式2から選択され、非常に好適には式1で表される。
【0086】
(式中、R及びpは、式Iの意味又は上述及び後述の好適な意味の1つを有し、pは、好適には0、1、2、3又は4であり、rは、0、1又は2であり、sは、0又は1である
)から選択される。
【0087】
式3−1、式4−1及び式8−1において、好適には指数pの少なくとも1つは0ではなく、好適には1又は2である。式2−1において、好適には指数sの少なくとも1つは1である。式5−1において、好適にはp及びrの少なくとも1つは0ではなく、好適には1又は2である。式6−1及び式7−1において、好適にはp及びsの少なくとも1つは0ではなく、好適にはsは1であり、及び/又はpは1もしくは2である。
【0088】
式I及びその下位式で表される化合物において、付加基Ad
1上の置換基Rは、好適には次に示す基:
【0091】
(式中、各基は、互いに独立に、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、次に示す意味を有し、
aは、0又は1〜9の整数、好適には0又は1〜6の整数であり、
bは、0又は1〜9の整数、好適には0又は1〜6の整数であり、
cは、0又は1〜9の整数、好適には0又は1〜6の整数であり、
R
11〜R
19は、Hを表すか;ハロゲンを表すか;CNを表すか;1〜50個のC原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル基(1個もしくは2個以上のCH
2基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR
0−、−C(=O)−NR
0−、−NR
0−C(=O)−、−SiR
0R
00−、−CF
2−、−CR
0=CR
0−、−CR
0=N−、−N=N−もしくは−C≡C−に、O原子及び/もしくはS原子が互いに直接結合しないように置き換わっていてもよく、ならびに/又は1個もしくは2個以上のH原子がF、Cl、Br、IもしくはCNに置き換わっていてもよい)を表すか;飽和もしくは不飽和の非芳香族炭素環式もしくは複素環式基を表すか;又はアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールオキシカルボニル基もしくはヘテロアリールカルボニルオキシ基を表し(上述の環式基はそれぞれ5〜20個の環原子を有し、単環又は多環であり、縮合環を含んでいてもよく、1種又は2種以上の同一であるか又は異なるL基(式1と同義)で置換されていてもよい)、
R
0、R
00は、式Iと同義である)から選択される。
【0092】
好適な置換基R
11〜19は、互いに独立に、1〜30個、好適には4〜20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシ(1個又は2個以上のCH
2基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−NR
0−、−SiR
0R
00−、−CF
2−に置き換わっていてもよい);さらには、5〜15個の環原子を有し、1種又は2種以上の上及び下に定義するL基で置換されていてもよい、アリール、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル及びヘテロアリールカルボニルオキシから選択される。
【0093】
上述及び後述のR
0及びR
00は、好適には、互いに独立に、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
式3及び式5〜8で表される付加基において、Ar
1及びAr
2は、好適には、互いに独立に、5〜20個、好適には5〜15個の環原子を有し、単環又は多環であり、好適には1種又は2種以上、好適には2種以上の同一であるか又は異なる置換基R、R
11又はLで置換されているアリール基又はヘテロアリール基を表し、R、R
11又はLは、好適にはハロゲン(非常に好適にはF);1〜30個、好適には4〜20個、非常に好適には5〜15個のC原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル(1個又は2個以上のCH
2基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−S(O)
2−、−NR
0−、−SiR
0R
00−、−CF
2−に置き換わっていてもよく、R
0及びR
00は上述及び後述の意味の1つを有する)から選択される。
【0094】
非常に好適には、Ar
1及びAr
2は、次に示す群:
【0096】
から選択され、これらは1種又は2種以上の上及び下に定義するR
11基又はL基で置換されていてもよい。
最適には、Ar
1及びAr
2は、1種又は2種以上の上に定義したR基、R
11基又はL基で置換されていてもよい、ベンゼン、チオフェン又はナフタレンを表す。
【0097】
式Iの第1付加基Ad
1に加えて、フラーレンC
nは、任意の数(m個)のAd
1とは異なる第2付加基Ad
2を有することができる。第2付加基Ad
2は、フラーレンに任意の結合様式で結合しているあらゆる可能な付加基又は付加基の組合せとすることができる。
【0098】
付加基Ad
2は、好適には、フラーレンC
nに、[6,6]結合及び/又は[5,6]結合、好適には少なくとも1個の[6,6]結合上に懸垂している。
式I及びその下位式で表される化合物において、フラーレンC
nに懸垂している第2付加基Ad
2の数mは、0、1を超える整数又は0を超える非整数(0.5や1.5等)であり、好適には0、1又は2である。
【0099】
好適な実施形態において、フラーレンC
nに懸垂している第2付加基Ad
2の数mは0である。
他の好適な実施形態において、フラーレンC
nに懸垂している第2付加基Ad
2の数mは0を超え、好適には1又は2である。
【0100】
式I及びその下位式における第2付加基Ad
2は、好適には次に示す式:
【0103】
(式中、
R
S1、R
S2、R
S3、R
S4及びR
S5は、互いに独立に、H、ハロゲンもしくはCNを表すか、又は上述及び後述のR
11もしくはLの意味の1つを有し、Ar
S1及びAr
S2は、互いに独立に、式4におけるAr
1の意味の1つを有するか又はその上述及び後述の好適な意味の1つを有する)から選択される。
【0104】
式I及びその下位式で表される化合物における付加基Ad
1及びAd
2はいずれも、最終生成物において、又は合成の最中に、最終生成物の好適な特性を促進するために、任意の組合せで互いに結合することができる。
【0105】
好適な式Iで表されるフラーレンは、メタノフラーレン誘導体、フラーレンのプラトー(Prato)誘導体、フラーレンのビンゲル(Bingel)誘導体、フラーレンのジアゾリン誘導体及びフラーレンのディールス・アルダー(Diels Alder)誘導
体から選択され、これらはいずれも公知であり、先行技術において、例えば米国特許出願公開第2013/0306944A1号明細書及び当該明細書に引用されている文献に開示されている。本発明による好適な混合物は、上述のフラーレン誘導体から選択される2種以上のフラーレンを含み、これらは:
・その付加基の性質
・その付加基の置換基の性質
・その付加基の置換基の数
の少なくとも1つが異なっている。
【0106】
非常に好適な式I及びその下位式で表される化合物は、次に示す好適な実施形態(その任意の組合せを含む):
・mが0である、
・oが1又は2である、
・mが0であり、oは1又は2である、
・pが0、1、2、3又は4である、
・nが60又は70である、
・nが60である、
・Ad
1が式1から選択される、
・Ar
1及びAr
2が、1種又は2種以上のR
11基又はL基で置換されていてもよいベンゼン、チオフェン又はナフタレンを表す、
・Rが、フッ素化、アルキル化もしくはアルコキシ化されていてもよいベンゼン、チオフェンもしくはナフタレンから、又はアルキル、フッ素化アルキル、アルコキシ、チオアルキル、−COO−アルキル、アルキル−COO−アルキル、−CO−アルキル(「アルキル」は、それぞれ、1〜20個、好適には1〜12個のC原子を有する)から選択されるから選択される。
【0107】
好適な式Iで表される化合物は、次に示す式:
【0110】
(式中、C
n、m、Ad
2、R、o及びsは、式I及び式1−1〜8−1に関し与えられた意味を有するか、又は上述及び後述の好適な意味を有し、mは、好適には0であり、oは、好適には1又は2であり、非常に好適には1であり、式I3〜I8において、付加基のベンゼン環は、1種又は2種以上のさらなるR基で置換されていてもよい)から選択される。
【0111】
非常に好適には、式I1〜I8で表される化合物は、C
nがC60又はC70である。
式I1で表される化合物が非常に好適である。
式I1で表され、mが0であり、oが1又は2であり、置換基Rのうちの1個が1種又は2種以上のR
11基で置換されていてもよベンゼン、チオフェン又はナフタレンであり、他の置換基Rが好適には式C−33及び式C−34から選択されるエステル基である化合物がさらに好適である。
【0112】
式I1で表され、mが0であり、oが1又は2であり、置換基Rのうちの1個がベンゼン、チオフェン又はナフタレンであり、他の置換基Rが式C−34で表されるエステル基であり、aが1、2、3、4、5又は6、非常に好適には3であり、R
11が1〜15個のC原子を有するアルキル、好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである化合物がさらに好適である。
【0113】
好適な式I1〜I8で表される化合物の例を以下に列挙する:
【0120】
(式中、R
11は上述及び後述の意味の1つを有し、好適には、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、Meはメチル基であり、フラーレンはC60である)。
さらなる好適な化合物は、上に示した式I1a〜I8aで表され、但し、C60フラーレンがC70フラーレンに置き換わっている化合物である。
【0121】
式Iで表される2種以上の化合物、好適にはその置換基Rの性質が異なる式I1〜18から選択される化合物を含む混合物が非常に好適である。
さらに好適な混合物は:
・式I1aで表される化合物と、式I1b、I1c、I1d、I1e、I1f、I1g、
I1h及びI1iから選択される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I2a、I2b、I2c、I2d及びI2eから選択される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I3aで表される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I4aで表される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I6a、I6b及びI6cから選択される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I7a、I7b、I7c及びI7dから選択される化合物とを含むか、又は
・式I1aで表される化合物と、式I8aで表される化合物とを含むか、又は
・式I6a、I6b及びI6cから選択される化合物と、式I7a、I7b、I7c及びI7dから選択される化合物とを含む。
【0122】
さらに好適な混合物は:
・式I1で表される第1化合物(式中、mは0であり、oは1又は2であり、1個の置換基Rがベンゼンであり、他の置換基Rが式C−34で表されるエステル基であり、aは3であり、R
11はメチル(PCBM)である)と、
・式I1で表される第2化合物(式中、mは0であり、oは1又は2であり、1個の置換基Rがベンゼンであり、他の置換基Rが式C−34で表されるエステル基であり、aは3であり、R
11は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル(PCBC
2〜6)であり、好適にはR
11はヘキシル(PCBC
6)である)と
を含む。
【0123】
式Iで表される化合物は、特に大量生産に適した方法による合成が容易であり、有利な特性を示し、例えば構造秩序が高く、皮膜形成性に優れ、電子物性に優れ、特に電荷キャリア移動度が高く、加工性に優れ、特に有機溶媒への溶解性が高く、光安定性及び熱安定性が高い。
【0124】
式Iで表される化合物は、当業者に知られており文献に記載されている方法又は類似の方法に従い合成することができる。例えば、式Iで表される様々なフラーレンを得るための合成経路が過去の文献:ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー(J.Mater.Chem.)、1997年、第7巻(7)、pp.1097〜1109;ケミカル・ソサエティー・レビューズ(Chem.Soc.Rev.)、1999年、第28巻、pp.263〜277;ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2013年、第113巻、pp.5262〜5321;ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、2011年、第133巻、pp.2402〜2405;及びケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2006年、第106巻(12)、pp.5049〜5135に概説されている。
【0125】
式I及びその下位式で表される化合物は、例えば、半導体性、電荷輸送性、正孔輸送性、電子輸送性、正孔ブロック性、電子ブロック性、導電性、光導電性及び発光性の1つ又は2つ以上を有する他のモノマー化合物又はポリマーと一緒に、混合物として使用することができる。
【0126】
したがって、本発明の他の態様は、式Iで表される1種又は2種以上の化合物と、さらに、好適には、半導体性、電荷輸送性、正孔輸送性、電子輸送性、正孔ブロック性、電子ブロック性、導電性、光導電性及び発光性の1つ又は2つ以上を有する1種又は2種以上のさらなる化合物とを含む混合物を含む組成物(以後、「フラーレン組成物」と称する)に関する。
【0127】
このフラーレン組成物に含まれるさらなる化合物は、例えば、本発明のフラーレン誘導体以外のフラーレン誘導体から、又は有機共役系ポリマーから選択することができる。
式Iで表される2種以上の化合物を含む本発明のフラーレン混合物は、特に供与成分及び受容成分の両方を含む半導体材料における電子受容体として又はn型半導体として;ならびにBHJ型OPV素子及びOPD素子に使用するのに適したp型半導体及びn型半導体の混合物の調製に、特に適している。
【0128】
特にOPV及びOPD用途に用いるためには、式Iで表される2種以上化合物を含むフラーレン混合物は、好適には、OPV/OPD素子の活性層(「活性層」又は「光活性層」とも称する)を形成するための、ポリマー、オリゴマー又は規定の分子単位等のさらなるp型半導体とブレンドされる。
【0129】
したがって、本発明の好適な実施形態は、式Iで表される2種以上のフラーレンを含み、好適には電子供与性を有するか又はp型の半導体ポリマーから選択される1種又は2種以上の共役系有機ポリマーをさらに含む、フラーレン組成物に関する。
【0130】
このようなフラーレン組成物は、OPV素子又はOPD素子の光活性層に使用するのに特に適している。好適には、本発明のフラーレン及びポリマーは、本発明のフラーレン組成物がバルクヘテロジャンクション(BHJ)を形成するように選択される。
【0131】
さらに、OPV/OPD素子は、通常、典型的には活性層の一方の面上に位置する透明基板又は半透明基板上に設けられた第1透明電極又は第1半透明電極と、活性層の対向する面上に位置する第2金属電極又は第2半透明電極とから構成される。活性層及び電極の間に、正孔ブロック層、正孔輸送層、電子ブロック層及び/又は電子輸送層として作用する、典型的には金属酸化物(例えば、ZnO
x、TiO
x、ZTO、MoO
x、NiO
x)、塩(例えば、LiF、NaF)、共役系高分子電解質(例えば、PEDOT:PSS又はPFN)、共役系ポリマー(例えば、PTAA)又は有機化合物(例えば、NPB、Alq
3、TPD)を含むさらなる中間層を挿入することができる。
【0132】
本発明によるフラーレン組成物に使用するのに好適な共役系有機ポリマー(以後、単に「ポリマー」と称する)は、先行技術、例えば、国際公開第2010/008672号パンフレット、国際公開第2010/049323号パンフレット、国際公開第2011/131280号パンフレット、国際公開第2011/052709号パンフレット、国際公開第2011/052710号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0017956号明細書、国際公開第2012/030942号パンフレット又は米国特許第8334456B2号明細書に記載されているポリマーから選択することができる。
【0133】
好適なポリマーは、ポリ(3−置換チオフェン)及びポリ(3−置換セレノフェン)、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)又はポリ(3−アルキルセレノフェン)、好適にはポリ(3−ヘキシルチオフェン)又はポリ(3−ヘキシルセレノフェン)からなる群から選択される。
【0134】
さらに好適なポリマーは、式PIIa及びPIIb:
−[(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]− PIIa
−[(Ar
1)
a−(Ac)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]− PIIb
(式中、
Acは、5〜30個の環原子を有し、1種又は2種以上のR
S基で置換されていてもよく、好適には電子受容性を有するアリーレン又はヘテロアリーレンであり、
Dは、5〜30個の環原子を有し、1種又は2種以上のR
S基で置換されていてもよく、好適には電子供与性を有する、Aとは異なるアリーレン又はヘテロアリーレンであり、
Ar
1、Ar
2、Ar
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、互いに独立に、好適には5〜30個の環原子を有し、好適には1種又は2種以上のR
P基で置換されていてもよい、A及びDとは異なるアリーレン又はヘテロアリーレンであり、
R
Pは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、F、Br、Cl、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(O)NR
0R
00、−C(O)X
0、−C(O)R
0、−C(O)OR
0、−NH
2、−NR
0R
00、−SH、−SR
0、−SO
3H、−SO
2R
0、−OH、−NO
2、−CF
3、−SF
5、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく、1種又は2種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜40個のC原子を有するカルビル又はヒドロカルビルであり、
R
0及びR
00は、互いに独立に、Hであるか又は置換されていてもよいC
1〜40カルビルもしくはヒドロカルビルであり、好適にはH又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
X
0は、ハロゲン、好適には、F、Cl又はBrであり、
a、b、cは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、0、1又は2であり、
dは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、0又は1〜10の整数である)から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位を含む。
【0135】
好適には、本発明のポリマーは、bが少なくとも1である式PIIaで表される少なくとも1種の繰り返し単位を含む。さらに好適には、本発明のポリマーは、bが少なくとも1である式PIIaで表される少なくとも1種の繰り返し単位と、bが少なくとも1である式PIIbで表される少なくとも1種の繰り返し単位とを含む。
【0136】
さらなる好適なポリマーは、式PIIa及び/又は式PIIbの単位に加えて、置換されていてもよい単環又は多環式アリーレン基又はヘテロアリーレン基から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位を含む。
【0137】
これらのさらなる繰り返し単位は、好適には、式PIII:
−[(Ar
1)
a−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]− PIII
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、a、c及びdは式PIIaと同義である)から選択される。
R
Pは、好適には、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Hを表すか;又は1〜30個のC原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル(1個又は2個以上のCH
2基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−NR
0−、−SiR
0R
00−、−CF
2−、−CHR
0=CR
00−、−CY
1=CY
2−又は−C≡C−に、O原子及び/又はS原子が互いに直接結合しないように置き換わっていてもよく、1個又は2個以上のH原子がF、Cl、Br、I又はCNに置き換わっていてもよい)を表すか;又は4〜20個の環原子を有し、好適にはハロゲンで、もしくは1種もしくは2種以上の上述のアルキル基もしくは環状アルキル基で置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシを表す(R
0及びR
00及びY
1及びY
2は上述及び後述の意味の1つを有し、R
0及びR
00は、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、Y
1及びY
2は、好適にはF、Cl又はBrを表す)。
【0138】
さらに好適には、本発明のポリマーは、式PIV:
【0140】
(式中、
A、B、Cは互いに独立に、式PIIa、PIIb又はPIIIで表される別々の単位を表し、
xは、>0かつ≦1であり、
yは、≧0かつ<1であり、
zは、≧0かつ<1であり、
x+y+zは、1であり、
n1は、1を超える整数である)から選択される。
【0141】
好適には、B又はCの少なくとも一方は式PIIaで表される単位を表す。非常に好適には、B及びCの一方は式PIIaで表される単位を表し、B及びCの一方は式PIIbで表される単位を表す。
【0142】
式PIVで表される好適なポリマーは、次式:
*−[(Ar
1−D−Ar
2)
x−(Ar
3)
y]
n1−
* PIVa
*−[(Ar
1−D−Ar
2)
x−(Ar
3−Ar
3)
y]
n1−
* PIVb
*−[(Ar
1−D−Ar
2)
x−(Ar
3−Ar
3−Ar
3)
y]
n1−
* PIVc
*−[(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]
n1−
* PIVd
*−([(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]
x−[(Ar
1)
a−(Ac)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]
y)
n1−
* PIVe
*−[(D−Ar
1−D)
x−(Ar
2−Ar
3)
y]
n1−
* PIVf
*−[(D−Ar
1−D)
x−(Ar
2−Ar
3−Ar
2)
y]
n1−
* PIVg
*−[(D)
b−(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c]
n1−
* PIVh
*−([(D)
b−(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c]
x−[(Ac)
b−(Ar
1)
a−(Ac)
b−(Ar
2)
d]
y)
n1−
* IVi
*−([(D−Ar
1)
x−(D−Ar
2)
y−(D−Ar
3)
z]
n1−
* PIVk
(式中、D、Ar
1、Ar
2、Ar
3、a、b、c及びdは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、式PIIaに関し与えられた意味の1つを有し、Acは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、式PIIbに関し与えられた意味の1つを有し、x、y、z及びn1は、式PIVと同義である)から選択される。これらのポリマーは交互共重合体又はランダム共重合体であってもよく、式PIVd及び式PIVeにおいては、繰り返し単位[(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]の少なくとも1種及び繰り返し単位[(Ar
1)
a−(Ac)
b−(Ar
2)
c−(Ar
3)
d]の少なくとも1種においてbは少なくとも1であり、式PIVh及びPIViにおいては、繰り返し単位[(D)
b−(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
d]の少なくとも1種及び繰り返し単位[(D)
b−(Ar
1)
a−(D)
b−(Ar
2)
d]の少なくとも1種においてbは少なくとも1である。
【0143】
式PIV及びその下位式PIVa〜PIVkで表されるポリマーにおいて、bは、好適
には、全ての繰り返し単位において1である。
式PIV及びその下位式PIVa〜IVkで表されるポリマーにおいて、xは好適には0.1〜0.9であり、非常に好適には0.3〜0.7である。
【0144】
本発明の好適な実施形態においては、y及びzの一方は0であり、他方は0を超える。本発明の他の好適な実施形態においては、y及びzは両方共0である。本発明のさらなる他の好適な実施形態においては、y及びzは両方共0を超える。式PIV及びその下位式PIVa〜IVkで表されるポリマーにおいては、y又はzは0を超え、好適には0.1〜0.9、非常に好適には0.3〜0.7である。
【0145】
本発明によるポリマーにおいて、繰り返し単位の総数n1は、好適には2〜10,000である。繰り返し単位の総数n1は、好適には≧5、非常に好適には≧10、最適には≧50であり、かつ好適には≦500、非常に好適には≦1,000、最適には≦2,000であり、上述のn1の下限値及び上限値の任意の組合せが包含される。
【0146】
本発明のポリマーは、単独重合体、及び統計共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等の共重合体に加えてこれらの組合せとすることができる。
特に好適なポリマーは、次に示す群:
・A群:単位D又は(Ar
1−D)又は(Ar
1−D−Ar
2)又は(Ar
1−D−Ar
3)又は(D−Ar
2−Ar
3)又は(Ar
1−D−Ar
2−Ar
3)又は(D−Ar
1−D)の単独重合体、すなわち全ての繰り返し単位が同一である単独重合体からなる群、・B群:同一の単位(Ar
1−D−Ar
2)又は(D−Ar
1−D)と、同一の単位(Ar
3)とから形成されるランダム共重合体又は交互共重合体からなる群、
・C群:同一の単位(Ar
1−D−Ar
2)又は(D−Ar
1−D)と、同一の単位(Ar
1)とから形成されるランダム共重合体又は交互共重合体からなる群、
・D群:同一の単位(Ar
1−D−Ar
2)又は(D−Ar
1−D)と、同一の単位(Ar
1−Ac−Ar
2)又は(Ac−Ar
1−Ac)とから形成されるランダム共重合体又は交互共重合体からなる群
から選択され、
式中、これらの基D、Ac、Ar
1、Ar
2及びAr
3は全て上及び下の定義と同義であり、A、B及びC群において、Ar
1、Ar
2及びAr
3は単結合ではなく、D群において、Ar
1及びAr
2のうちの1つは単結合を表していてもよい。
【0147】
好適な式PIV及びPIVa〜PIVkで表されるポリマーは、式PV:
R
21−鎖−R
22 PV
(式中、「鎖」は、式PIV又はPIVa〜PIVkから選択される高分子鎖を表し、R
21及びR
22は、互いに独立に、上に定義したR
Sの意味の1つを有するか、又は互いに独立に、H、F、Br、Cl、I、−CH
2Cl、−CHO、−CR’=CR’’
2、−SiR’R’’R’’’、−SiR’X’X’’、−SiR’R’’X’、−SnR’R’’R’’’、−BR’R’’、−B(OR’)(OR’’)、−B(OH)
2、−O−SO
2−R’、−C≡CH、−C≡C−SiR’
3、−ZnX’もしくは末端封止基を表し、X’及びX’’はハロゲンを表し、R’、R’’及びR’’’は、互いに独立に、式Iに関し与えられたR
0の意味の1つを有し、R’、R’’及びR’’’のうちの2つが、これらが結合しているそれぞれのヘテロ原子と一緒になって、2〜20個のC原子を有するシクロシリル、環状スタンニル(cyclostannyl)、環状ボラン(cycloborane)又は環状ボロネート(cycloboronate)基を形成していてもよい)から選択される。
【0148】
好適な末端封止基R
21及びR
22は、H、C
1〜20アルキル又は置換されていてもよいC
6〜12アリールもしくはC
2〜10ヘテロアリールであり、非常に好適にはH又
はフェニルである。
【0149】
式PIV、PIVa〜PIVk又はPVで表されるポリマーにおいて、x、y及びzは、それぞれA、B及びC単位のモル分率を表し、nは、重合度すなわちA、B及びC単位の総数を表す。これらの式には、A、B及びCのブロック共重合体、ランダム又は統計共重合体ならびに交互共重合体に加えて、Aの単独重合体(x>0かつy=z=0の場合)が含まれる。
【0150】
式PIIa、PIIb、PIII、PIV、PIVa〜PIVk及びPVで表される本発明の繰り返し単位及びポリマーにおいて、好適には、D、Ar
1、Ar
2及びAr
3は、次式:
【0165】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、互いに独立に、Hを表すか又は上及び下に定義するR
Pの意味の1つを有する)からなる群から選択される。
【0166】
式PIIa、PIIb、PIII、PIV、PlVa〜PlVk及びPVで表される本発明の繰り返し単位及びポリマーにおいて、好適には、Ac、Ar
1、Ar
2及びAr
3は、次式:
【0174】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、互いに独立に、Hを表すか又は上及び下に定義するR
Pの意味の1つを有する)からなる群から選択される。
本発明のポリマーは、例えば、次式:
R
23−(Ar
1)
a−D−(Ar
2)
c−R
24 PVIa
R
23−D−(Ar
1)
a−D−R
24 PVIb
R
23−(Ar
1)
a−Ac−(Ar
2)
c−R
24 PVIc
R
23−Ac−(Ar
1)
a−Ac−R
24 PVId
R
23−(Ar
1)
a−(Ar
2)
c−R
24 PVIe
(式中、Ac、D、Ar
1、Ar
2、a及びbは、式PIIa及びPIIbの意味を有するか、又は上述及び後述の好適な意味の1つを有し、R
23及びR
24は、好適には、互いに独立に、H、Cl、Br、I、O−トシラート、O−トリフラート、O−メシラート、O−ノナフラート、−SiMe
2F、−SiMeF
2、−O−SO
2Z
1、−B(OZ
2)
2、−CZ
3=C(Z
3)
2、−C≡CH、−C≡CSi(Z
1)
3、−ZnX
0及び−Sn(Z
4)
3(X
0は、ハロゲン、好適にはCl、Br又はIであり、Z
1〜4は、それぞれ置換されていてもよいアルキル及びアリールからなる群から選択され、2個のZ
2基がB及びO原子と一緒になって2〜20個のC原子を有する環状ボロネート基を形成していてもよい))から選択されるモノマーから調製することができる。
【0175】
好適なモノマーは、例えば、次に示す下位式:
R
23−Ar
1−D−Ar
2−R
24 PVIa1
R
23−D−R
24 PVIa2
R
23−Ar
1−D−R
24 PVIa3
R
23−D−Ar
2−R
24 PVIa4
R
23−D−Ar
2−D−R
24 PVIb1
R
23−Ar
1−Ac−Ar
2−R
24 PVIc1
R
23−Ac−R
24 PVIc2
R
23−Ar
1−Ac−R
24 PVIc3
R
23−Ac−Ar
2−R
24 PVIc4
R
23−Ac−Ar
1−Ac−R
24 PVId1
R
23−Ar
1−R
24 PVIe1
R
23−Ar
1−Ar
2−R
24 PVIe2
(式中、Ac、D、Ar
1、Ar
2、a、c、R
23及びR
24は、式PVIa〜PVIdと同義である)から選択される。
【0176】
本発明によるポリマーは、当業者に知られており文献に記載されている方法又は類似の方法に従い合成することができる。他の調製方法を実施例から採用することもできる。例えば、本発明のポリマーは、好適には、山本カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、C−H活性化カップリング、ヘックカップリング、ブッフバルトカップリング等のアリール−アリールカップリング反応により調製することができる。鈴木カップリング、スティルカップリング及び山本カップリングが特に好適である。重合により本発明のポリマーの繰り返し単位を形成する本発明のモノマーは、当業者に公知の方法に従い調製することができる。
【0177】
例えば、本発明のポリマーは、式PVIa〜PVId及びその下位式(R
23及びR
24は、Cl、Br、I、−B(OZ
2)
2及び−Sn(Z
4)
3から選択される)から選択される1種又は2種以上のモノマーをアリール−アリールカップリング反応においてカップリングさせることにより調製することができる。
【0178】
上述及び後述のプロセスに用いられる好適なアリール−アリールカップリング及び重合方法は、山本カップリング、熊田カップリング、根岸カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ヘックカップリング、C−H活性化カップリング、ウルマンカップリング又はブッフバルトカップリングである。鈴木カップリング、根岸カップリング、スティルカップリング及び山本カップリングが特に好適である。鈴木
カップリングは、例えば、国際公開第00/53656A号パンフレットに記載されている。根岸カップリングは、例えば、ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティー,ケミカル・コミュニケーションズ(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.)、1977年、pp.683〜684に記載されている。山本カップリングは、例えば、T.ヤマモト(T.Yamamoto)ら著、プログレス・イン・ポリマー・サイエンス(Prog.Polym.Sci.)、1993年、第17巻、pp.53〜1205又は国際公開第2004/022626A1号パンフレットに記載されている。スティルカップリングは、例えば、Z.バオ(Z.Bao)ら著、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、pp.12426〜12435に記載されている。例えば、山本カップリングを用いる場合は、好適には、2個の反応性ハライド基を有するモノマーが使用される。鈴木カップリングを用いる場合は、2個の反応性ボロン酸もしくはボロン酸エステル基又は2個の反応性ハライド基を有する、式PVIa〜PVId及びその下位式で表されるモノマーを使用することが好適である。スティルカップリングを用いる場合は、2個の反応性スタンナン基又は2個の反応性ハライド基を有するモノマーを使用することが好適である。根岸カップリングを用いる場合は、2個の反応性有機亜鉛基又は2個の反応性ハライド基を有するモノマーを使用することが好適である。
【0179】
特に鈴木、根岸又はスティルカップリングに好適な触媒は、Pd(0)錯体又はPd(II)塩から選択される。好適なPd(0)錯体は、少なくとも1個のホスフィン配位子(Pd(Ph
3P)
4等)を有するものである。他の好適なホスフィン配位子は、トリス(オルト−トリル)ホスフィン、すなわちPd(o−Tol
3P)
4である。好適なPd(II)塩としては酢酸パラジウムすなわちPd(OAc)
2が挙げられる。あるいは、Pd(0)錯体は、Pd(0)ジベンジリデンアセトン錯体(例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0))又はPd(II)塩(例えば、酢酸パラジウム)を、ホスフィン配位子(例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(オルト−トリル)ホスフィン又はトリ(tert−ブチル)ホスフィン)と混合することにより調製することができる。鈴木重合は、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム)又は有機塩基(炭酸テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等)の存在下に行われる。山本重合には、Ni(0)錯体、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエニル)ニッケル(0)が使用される。
【0180】
鈴木及びスティル重合は、単独重合体だけでなく、統計、交互及びブロックランダム共重合体の調製にも用いることができる。統計共重合体又はブロック共重合体は、例えば、反応性基のうちの1つがハロゲンであり、他の反応性基が、ボロン酸、ボロン酸誘導体基又は及びアルキルスタンナンである、上述の式PVI又はその下位式で表されるモノマーから調製することができる。統計、交互又はブロック共重合体の合成は、例えば、国際公開第03/048225A2号パンフレット又は国際公開第2005/014688A2号パンフレットに詳述されている。
【0181】
本発明による配合物(溶媒を含む)中の本発明のフラーレン誘導体の濃度又はフラーレン組成物の濃度は、好適には0.1〜10重量%、より好適には0.5〜5重量%である。本発明によるフラーレン誘導体及びポリマーを含む組成物(すなわち溶媒を除く)中の本発明のフラーレン誘導体の濃度は、好適には10〜90重量%、非常に好適には33%〜80重量%である。
【0182】
本発明の他の態様は、本発明の1種又は2種以上のフラーレン誘導体又は上述のフラーレン組成物を含み、1種又は2種以上の好適には有機溶媒から選択される溶媒をさらに含む配合物に関する。
【0183】
この種の配合物は、OPV素子やOPD素子等のOEデバイスの半導体層を調製するための担体として好ましく使用され、本発明のフラーレン誘導体又はフラーレン組成物は、例えば光活性層に使用される。
【0184】
場合により、本発明の配合物は、レオロジー特性を調整するための、例えば、国際公開第2005/055248A1号パンフレットに記載されている1種又は2種以上のバインダーをさらに含む。
【0185】
本発明の配合物は、好適には溶液を形成する。
さらに本発明は、本発明のフラーレン誘導体もしくはフラーレン組成物、又は上述及び後述のそれを含む半導体層を含む電子デバイスを提供する。
【0186】
特に好適なデバイスは、OFET、TFT、IC、論理回路、コンデンサ、RFIDタグ、OLED、OLET、OPED、OPV、OPD、太陽電池、レーザーダイオード、光導電体、受光素子、電子写真装置、電子写真記録装置、有機メモリ素子、センサー素子、電荷注入層、ショットキーバリアダイオード、平坦化層、帯電防止膜、導電性基板及び導電パターンである。
【0187】
特に好適な電子デバイスは、OFET、OLED、OPV及びOPDデバイス、特に、バルクヘテロジャンクション(BHJ)型OPV素子及びOPD素子である。OFETにおいては、例えば、ドレイン及びソース間の活性半導体チャネルは本発明の層を含むことができる。他の例として、OLEDデバイスの電荷(正孔又は電子)注入層又は輸送層は本発明の層を含むことができる。
【0188】
OPV素子又はOPD素子に使用する場合、好適には、p型(電子供与性)半導体及びn型(電子受容性)半導体を含むフラーレン組成物が使用される。p型半導体は、例えば、式PIIa、PIIbもしくはPIIIで表される繰り返し単位を有する共役系ポリマー;又は上述の式PIV、PVもしくはこれらの下位式で表されるポリマー;低分子;2種以上のポリマーの混合物;又は1種もしくは2種以上のポリマーと1種もしくは2種以上の低分子との混合物である。n型半導体は、本発明のフラーレン誘導体、2種以上のフラーレンの混合物(その少なくとも一方が本発明のフラーレン誘導体である)である。
【0189】
本発明のデバイスは、好適には、活性層の一方の面上に位置する、透明又は半透明基板上の第1透明電極又は第1半透明電極と、活性層の対向する面上に位置する第2金属電極又は第2半透明電極とをさらに含む。
【0190】
好適には、本発明による活性層は、デバイスの特性を向上するためにさらなる有機化合物及び無機化合物とさらにブレンドされる。その例として、例えばアドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)、2013年、第25巻(17)、pp.2385〜2396及びアドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Adv.Ener.Mater.)、10.1002/aenm.201400206に記載されている、近接場効果(すなわちプラズモン効果)により光捕捉率を高めることを目的としたAuやAgのナノ粒子又はAuやAgのナノプリズム等の金属粒子;例えばアドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)、2013年、第25巻(48)、pp.7038〜7044に記載されている、光導電性を高めることを目的とした2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等の分子ドーパント;又は例えば国際公開第2012095796A1号パンフレット及び国際公開第2013021971A1号パンフレットに記載されている、UV吸収剤及び/又は抗ラジカル剤及び/又は酸化防止剤からなる安定剤、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリ
アゾール、シュウ酸アニリド、ヒドロキシフェニルトリアジン、メロシアニン、ヒンダードフェノール、N−アリールチオモルホリン、N−アリールチオモルホリン−1−オキシド、N−アリールチオモルホリン−1,1−ジオキシド、N−アリールチアゾリジン、N−アリールチアゾリジン−1−オキシド、N−アリールチアゾリジン−1,1−ジオキシド、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0191】
本発明のデバイスは、好適には、UV光を可視光に変換する光変換層(例えば、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー(J.Mater.Chem.)、2011年、第21巻、p.12331に記載されているもの等)又はNIR光を可視光に、もしくはIR光をNIR光に変換する光変換層(例えば、ジャーナル・オブ・アプライド・フィシックス(J.Appl.Phys.)、2013年、第113巻、p.124509に記載されているもの等)をさらに含むことができる。
【0192】
さらに好適には、OPV素子又はOPD素子は、活性層と第1又は第2電極との間に、金属酸化物、例えば、ZTO、MoO
x、NiO
x等;ドープされた共役系ポリマー、例えば、PEDOT:PSS、ポリピロール−ポリスチレンスルホン酸(PPy:PSS)等;共役系ポリマー、例えば、ポリトリアリールアミン(PTAA)等;有機化合物、例えば、置換トリアリールアミン誘導体(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)(1,1’−ビフェニル)−4,4’ジアミン(NPB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等)等;グラフェン系材料、例えば、酸化グラフェン及びグラフェン量子ドット等;等の材料を含む、正孔輸送層及び/又は電子ブロック層として作用する1つ又は2つ以上のさらなるバッファ層を含むか、あるいは、金属酸化物、例えば、ZnO
x、TiO
x、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等;塩、例えば、LiF、NaF、CsF等;共役系高分子電解質、例えば、ポリ[3−(6−トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ(9,9−ビス(2−エチルヘキシル)−フルオレン]−b−ポリ[3−(6−トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ[(9,9−ビス(3’−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)−2,7−フルオレン)−alt−2,7−(9,9−ジオクチルフルオレン)]等;ポリマー、例えば、ポリ(エチレンイミン)等;又は架橋窒素含有化合物誘導体もしくは有機化合物、例えば、トリス(8−キノリノラト)−アルミニウム(III)(Alq
3)、フェナントロリン誘導体等;又はC
60系もしくはC
70系フラーレン、例えば、アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Adv.Ener.Mater.)、2012年、第2巻、pp.82〜86に記載されているもの等;等の材料を含む、正孔ブロック層及び/又は電子輸送層として作用する1つ又は2つ以上のさらなるバッファ層を含む。
【0193】
本発明によるフラーレン混合物及びポリマーを含むフラーレン組成物において、ポリマー:フラーレン混合物の重量比は、好適には5:1〜1:5、より好適には1:0.5〜1:3、最適には1:1〜1:2である。高分子バインダーも5〜95重量%含有させることができる。バインダーとしては、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。
【0194】
BHJ型OPV素子等のOEデバイスに薄層を作製するために、本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物又は配合物を任意の好適な方法で堆積させることができる。真空蒸着法を用いるよりも、デバイスに液体を塗布する方が好適である。溶液堆積法が特に好適である。本発明の配合物によって多くの液体塗布技法を用いることが可能になる。好適な堆積技法としては、これらに限定されるものではないが、浸漬塗布、スピン塗布、インクジェット印刷、ノズル印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレード塗布、ローラー印刷、リバースロール塗布、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレー塗布、カーテン塗布、ブラシ塗布、スロット
ダイ塗布又はパッド印刷が挙げられる。OPV素子及びモジュールの作製には、フレキシブル基板に適合する大面積印刷(area printing)法、例えば、スロットダイ塗布やスプレー塗布等が好適である。
【0195】
本発明によるフラーレン混合物(n型成分として)及び本発明によるポリマー(p型成分として)を含む組成物を含む好適な溶液又は配合物を調製する場合、p型成分及びn型成分の両方を確実に完全に溶解させるのに適した溶媒を、選択された印刷法に応じて導入される境界条件(例えば、レオロジー特性)を考慮して選ぶことが必要である。
【0196】
この目的には一般に有機溶媒が使用される。典型的な溶媒として、芳香族溶媒、ハロゲン系溶媒又は塩素系溶媒(塩素化芳香族溶媒を含む)を用いることができる。好適な溶媒は、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル及びこれらの混合物である。その例として、これらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,8−ジヨードオクタン、1−クロロナフタレン、1,8−オクタン−ジチオール、アニソール、2−メチルアニソール、フェネトール、4−メチルアニソール、3−メチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、3,5−ジメチルアニソール、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、2−フルオロアニソール、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、キシレンo−、m−及びp−異性体混合物、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,2−ジメチルナフタレン、テトラリン、デカリン、インダン、1−メチル−4−(1−メチルエテニル)−シクロヘキセン(d−リモネン)、6,6−ジメチル−2−メチレンビシクロ[3.1.1]ヘプタン(β−ピネン)、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾトリフルオリド、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2,3−ジメチルピラジン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、3−フルオロベンゾニトリル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、3−フルオロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、トリフルオロメトキシベンゼン、4−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロピラジン、トルエン、2−フルオロトルエン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロトルエン、4−イソプロピルビフェニル、フェニルエーテル、ピリジン、4−フルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、1−クロロ−2,4−ジフルオロベンゼン、2−フルオロピリジン、3−クロロフルオロベンゼン、1−クロロ−2,5−ジフルオロベンゼン、4−クロロフルオロベンゼン、2−クロロフルオロベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ニトロベンゼン、ベンズアルデヒド、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、モルホリン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及び/又はこれらの混合物が挙げられる。
【0197】
特に好適な溶媒は、非塩素系脂肪族もしくは芳香族炭化水素又はこれらの混合物から選択される。
さらなる好適な溶媒は、ハロゲン化された(但し塩素化されていない)(例えば、フッ素化、臭素化又はヨウ素化された)脂肪族又は芳香族炭化水素、例えば、1,8−ジヨードオクタン等の含有量が5%未満である、非塩素系脂肪族もしくは芳香族炭化水素又はこれらの混合物から選択される。
【0198】
この種の好適な溶媒は、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラ−メチルベンゼン、ペンチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、デカリン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルホルムアミド、2,3−ジメチルピラジン、2−メチルアニソール、フェネトール、4−メチルアニソール、3−メチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、3,5−ジメチルアニソール、N,N−ジメチルアニリン、安息香酸エチル、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、N−メチルピロリジノン、ジオキサン、4−イソプロピルビフェニル、フェニルエーテル、ピリジン、1,8−オクタンジチオール、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン又はo−、m−及びp−異性体の混合物から選択される。
【0199】
本発明のOPV素子は、例えば文献公知の任意の種類のOPV素子とすることができる(例えば、ワルドウフ(Waldauf)ら著、アプライド・フィシックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)、2006年、第89巻、p.233517参照)。
【0200】
本発明による第1の好適なOPV素子は、次に示す層(最下層から最上層に向かって順に):
・任意選択的な基板、
・アノード又は導電性格子状パターン膜(conducting grid)の役割を果たす、好適には金属酸化物(例えばITO等)を含む、仕事関数の高い電極、
・任意選択的な導電性ポリマー層又は正孔輸送層、好適には、有機ポリマー又はポリマーブレンド、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)、置換トリアリールアミン誘導体(例えば、TBD(N,N’−ダイフェニル(dyphenyl)−N−N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン)又はNBD(N,N’−ダイフェニル(dyphenyl)−N−N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン))を含むもの、
・p型有機半導体及びn型有機半導体を含む、例えば、p型/n型二重層として、又は別々のp型層及びn型層として、又はブレンド又はp型及びn型半導体(BHJを形成する)として存在することができる、「光活性層」とも称される層、
・電子輸送性を有する、例えば、LiF、TiO
x、ZnO
x、PFN、ポリ(エチレンイミン)又は架橋窒素含有化合物誘導体又はフェナントロリン誘導体を含む任意選択的な層、
・カソードの役割を果たす、好適には金属(例えばアルミニウム等)を含む、仕事関数の低い電極
を含むOPV素子であり、
電極の少なくとも1つ、好適にはアノードは、可視光に対し少なくとも部分的に透明であり、
n型半導体は本発明によるフラーレン混合物である。
【0201】
本発明による第2の好適なOPV素子は、次に示す層(最下層から最上層に向かって順に):
・任意選択的な基板、
・カソード又は導電性格子状パターン膜の役割を果たす、例えばITOを含む、仕事関数の高い金属電極又は金属酸化物電極、
・正孔ブロック性を有する、好適には金属酸化物(TiO
x又はZnO
x等)を含むか又は有機化合物(ポリ(エチレンイミン)等のポリマー、架橋窒素含有化合物誘導体、フェナントロリン誘導体等)を含む層、
・電極間に配置された、例えば、p型/n型二重層として、又は別々のp型層及びn型層
として、又はブレンド又はp型半導体及びn型半導体(BHJを形成する)として存在することができる、p型有機半導体及びn型有機半導体を含む光活性層、
・好適には有機ポリマー又はポリマーブレンド、例えば、PEDOT:PSS又は置換トリアリールアミン誘導体(例えば、TBD又はNBD)を含む、任意選択的な導電性ポリマー層又は正孔輸送層、
・アノードの役割を果たす、仕事関数の高い金属(例えば銀等)を含む電極
を含む逆型OPV素子であり、
電極の少なくとも1つ、好適にはカソードは、可視光に対し少なくとも部分的に透明であり、
n型半導体は本発明のフラーレン混合物である。
【0202】
本発明のOPV素子において、p型及びn型半導体材料は、好適には、上述のポリマー/フラーレン系等の材料から選択される。
この活性層を基板上に堆積させると、ナノレベルで相分離しているBHJが形成される。ナノレベルの相分離に関する議論については、デンラー(Dennler)ら著、IEEE予稿集(Proceedings of the IEEE)、2005年、第93巻(8)、p.1429又はホップ(Hoppe)ら著、アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Adv.Func.Mater)、2004年、第14巻(10)、p.1005を参照されたい。次いで任意選択的なアニールステップを行うことが、ブレンドの構造、したがってOPV素子の性能を最適化するために必要な場合がある。
【0203】
OPV(BHJ)素子の性能を最適化するための他の方法が、相分離を適切な方向へと促す様々な沸点を有する添加剤を含むことができる、OPV(BHJ)素子作製用配合物を調製するものである。1,8−オクタンジチオール、1,8−ジヨードオクタン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドその他の添加剤が高効率の太陽電池を得るために使用されてきた。その例が、J.ピート(J.Peet)ら著、ネイチャー・マテリアルズ(Nat.Mater.)、2007年、第6巻、p.497又はフレシェ(Frechet)ら著、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、2010年、第132巻、pp.7595〜7597に開示されている。
【0204】
非限定的な実施例においてさらに例示するように、電力変換効率(PCE)が、例えば、少なくとも2.5%又は少なくとも3.0%又は少なくとも4.0%又は少なくとも5.0%である光電変換素子を作製することができる。PCEに特定の上限はないが、例えば、20%未満又は15%未満又は10%未満のPCEを得ることができる。
【0205】
本発明の他の好適な実施形態は、本発明によるフラーレン混合物又はフラーレン組成物の、DSSC又はペロブスカイト型太陽電池における色素、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層及び/又は電子ブロック層としての使用、ならびに本発明による混合物又は組成物を含むDSSC又はペロブスカイト型太陽電池に関する。
【0206】
DSSC及びペロブスカイト型太陽電池は文献、例えば、ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2010年、第110巻、pp.6595〜6663、アンゲヴァンテ・キミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)、2014年、第53巻、pp.2〜15又は国際公開第2013171520A1号パンフレットに記載されている方法に従い製造することができる。
【0207】
本発明のフラーレン混合物及びフラーレン組成物は他の用途における色素もしくは顔料として、例えば、インク色素、レーザー色素、蛍光マーカー、溶媒色素、食用色素、造影剤として、又は塗料、インク、プラスチック、布帛、化粧品、食品その他の材料の着色に
おける染料もしくは顔料として使用することもできる。
【0208】
本発明のフラーレン混合物、フラーレン組成物及び半導体層は、他のOEデバイス又はデバイスの構成要素において、例えば、OFETデバイスの半導体チャネルにおいて、又はOLEDもしくはOPV素子のバッファ層、電子輸送層(ETL)もしくは正孔ブロック層(HBL)において、n型半導体として使用するのにも適している。
【0209】
したがって本発明は、ゲート電極、絶縁(又はゲート絶縁)層、ソース電極、ドレイン電極ならびにソース電極及びドレイン電極を接続する有機半導体チャネルを備えるOFETも提供し、この有機半導体チャネルは、本発明によるフラーレン混合物、本発明によるフラーレン組成物又は本発明による有機半導体層をn型半導体として含む。OFETの他の特徴は当業者に知られている。
【0210】
OSC材料がゲート誘電体とドレイン電極及びソース電極との間の薄膜として配置されているOFETは一般に知られており、例えば、米国特許第5,892,244号明細書、米国特許第5,998,804号明細書、米国特許第6,723,394号明細書及び背景項に引用されている参考文献に記載されている。本発明による化合物の溶解性、したがって大面積に対応できる加工性を利用することによって、生産が低コストで行える等の利点が得られるので、これらのFETは、集積回路、TFTディスプレイ、セキュリティ用途等の用途に用いることが好適である。
【0211】
OFET素子のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、絶縁層及び半導体層は、ソース電極及びドレイン電極が絶縁層によりゲート電極から分離されており、ゲート電極及び半導体層がどちらも絶縁層と接しており、かつソース電極及びドレイン電極がどちらも半導体層と接しているのであれば、任意の順序で配置することができる。
【0212】
本発明によるOFETデバイスは、好適には:
・ソース電極、
・ドレイン電極、
・ゲート電極、
・半導体層、
・1つ又は2つ以上のゲート絶縁層、
・任意選択的な基板
を含み、この半導体層は、好適には、本発明によるフラーレン混合物又はフラーレン組成物を含む。
【0213】
本発明のOFET素子はトップゲート型素子又はボトムゲート型素子であってもよい。OFET素子の好適な構造及び製造方法は当業者に知られており、文献、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696A1号明細書に記載されている。
【0214】
ゲート絶縁層は、好適には、含フッ素ポリマー、例えば、市販のサイトップ(Cytop)809(登録商標)又はサイトップ(Cytop)107M(登録商標)(旭硝子から)等を含む。好適には、ゲート絶縁層は、例えば、スピン塗布、ドクターブレード塗布、ワイヤーバー塗布、スプレーもしくは浸漬塗布又は他の公知の方法により、絶縁材料と、1個又は2個以上のフッ素原子を有する1種又は2種以上の溶媒(含フッ素溶媒)、好適にはパーフルオロ溶媒とを含む配合物から堆積される。好適なパーフルオロ溶媒は、例えば、FC75(登録商標)(アクロス(Acros)より入手可能、カタログ番号2380)である。他の好適な含フッ素ポリマー及び含フッ素溶媒は先行技術において知られており、例えば、パーフルオロポリマーであるテフロン(Teflon)AF(登録商標)1600又は2400(デュポン(DuPont)から)又はフルオロペル(Fluo
ropel)(登録商標)(サイトニックス(Cytonix)から)又はパーフルオロ溶媒FC43(登録商標)(アクロス(Acros)、No.12377)がある。特に好適には、有機誘電体材料は、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696A1号明細書又は米国特許第7,095,044号明細書に開示されているように、誘電率(又は比誘電率)が低く、1.0〜5.0、非常に好適には1.8〜4.0(「低k材料」)である。
【0215】
セキュリティ用途においては、本発明による半導体材料を含むOFET及び他の素子(トランジスタやダイオード等)を、真贋判定用のRFIDタグ又は偽造防止マークや、重要文書、例えば、紙幣、クレジットカード又はIDカード、国民ID証(national ID document)、免許証又は貨幣(monetry)価値のある任意の製造物(切手、切符、株券、小切手等)等の偽造防止に使用することができる。
【0216】
別法として、本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物及び半導体層は、OLEDに、例えば、OLEDのバッファ層、ETL又はHBLに使用することができる。このOLEDデバイスは、例えば、フラットパネルディスプレイデバイスにおけるアクティブ型ディスプレイ層として、又はフラットパネルディスプレイ、例えば液晶ディスプレイのバックライト等として使用することができる。一般的なOLEDは、多層構造を用いることにより実現される。発光層は、一般に、1つ又は2つ以上の電子輸送層及び/又は正孔輸送層に挟持されている。電圧を印加すると、電荷担体としての電子及び正孔が発光層に向けて移動し、発光層でこれらが再結合することにより励起状態となり、したがって発光層に含まれる発光原子団(lumophor)単位が発光する。
【0217】
本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物又は半導体層は、ETL、HBL又はバッファ層の1種又は2種以上に、特にこれらの水溶性誘導体(例えば、極性側基又はイオン性側基を有するもの)又はイオンドープ形態で使用することができる。OLEDに使用するための本発明の半導体材料を含むこの種の層の加工は当業者に一般に知られている。例えば、ミュラー(Mueller)ら著、シンセティック・メタルズ(Synth.Metals)、2000年、第111〜112巻、pp.31〜34、アルカラ(Alcala)、ジャーナル・オブ・アプライド・フィシックス(J.Appl.Phys.)、2000年、第88巻、pp.7124〜7128、オマリーら(O’Malley et al,)、アドバンスド・エナジー・マテリアル(Adv.Energy Mater.)2012年、第2巻、pp.82〜86及び当該文献に引用されている文献を参照されたい。
【0218】
他の使用によれば、本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物及び材料、特にフォトルミネッセンス特性を示すものは、欧州特許出願公開第0889350A1号明細書又はC.ウェダー(C.Weder)ら著、サイエンス(Science)、1998年、第279巻、pp.835〜837に記載されているように、光源の材料として、例えばディスプレイデバイスに用いることができる。
【0219】
本発明のさらなる態様は、本発明によるフラーレン混合物の酸化形態及び還元形態の両方に関する。電子を失うか又は得るかのいずれかにより高度に非局在化したイオン形態が生成し、これは非常に高い導電性を示す。これは、一般的なドーパントに曝露することにより行われる。好適なドーパント及びドーピングの方法は、例えば、欧州特許出願公開第0528662号明細書、米国特許第5,198,153号明細書又は国際公開第96/21659号パンフレットから当業者に知られている。
【0220】
ドーピングプロセスとは、通常、半導体材料を酸化還元反応において酸化剤又は還元剤で処理することにより、この材料中に非局在化したイオン中心を形成することを示唆して
おり、対応する対イオンは適用されたドーパントから誘導されたものである。好適なドーピング方法は、例えば、大気圧又は減圧下にドーパントの蒸気に曝露すること、ドーパントを含む溶液中で電気化学的にドーピングすること、ドーパントを半導体材料と接触させることにより熱的に拡散させること、及び半導体材料中にドーパントをイオン注入することを含む。
【0221】
電子をキャリアとして用いる場合、好適なドーパントは、例えば、ハロゲン(例えば、I
2、Cl
2、Br
2、ICl、ICl
3、IBr及びIF)、ルイス酸(例えば、PF
5、AsF
5、SbF
5、BF
3、BCl
3、SbCl
5、BBr
3及びSO
3)、プロトン酸、有機酸、又はアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO
3、H
2SO
4、HClO
4、FSO
3H及びClSO
3H)、遷移金属化合物(例えば、FeCl
3、FeOCl、Fe(ClO
4)
3、Fe(4−CH
3C
6H
4SO
3)
3、TiCl
4、ZrCl
4、HfCl
4、NbF
5、NbCl
5、TaCl
5、MoF
5、MoCl
5、WF
5、WCl
6、UF
6及びLnCl
3(ここでLnはランタノイドである)、陰イオン(例えば、Cl
−、Br
−、I
−、I
3−、HSO
4−、SO
42−、NO
3−、ClO
4−、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、SbF
6−、FeCl
4−、Fe(CN)
63−及び様々なスルホン酸の陰イオン(アリール−SO
3−)等)である。正孔をキャリアとして用いる場合、ドーパントの例は、陽イオン(例えば、H
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+及びCs
+)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb及びCs)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr及びBa)、O
2、XeOF
4、(NO
2+)(SbFe
6−)、(NO
2+)(SbCl
6−)、(NO
2+)(BF
4−)、AgClO
4、H
2IrCl
6、La(NO
3)
3・6H
2O、FSO
2OOSO
2F、Eu、アセチルコリン、R
4N
+(Rはアルキル基)、R
4P
+(Rはアルキル基)、R
6As
+(Rはアルキル基)、及びR
3S
+(Rはアルキル基)である。
【0222】
本発明のフラーレン混合物の導電形態は、これらに限定されるものではないが、OLED用途における電荷注入層及びITO平坦化層、フラットパネルディスプレイ及びタッチスクリーン用薄膜、帯電防止膜、印刷された導電性基板、エレクトロニクス用途(プリント基板やコンデンサ等)におけるパターン又は配線(tracts)を含む用途において、有機「金属」として使用することができる。
【0223】
他の使用によれば、本発明によるフラーレン混合物及びフラーレン組成物は、例えば、米国特許出願公開第2003/002913号明細書に記載されているように、LCD又はOLEDデバイスのアライメント層中に又はアライメント層として、単独で又は他の材料と一緒に使用することができる。本発明による電荷輸送化合物を使用することにより、アライメント層の導電性を増大させることができる。LCDに使用した場合は、このように導電性が増大することによって、切り替え表示可能なLCDセルの残留dcによる悪影響を低減し、残像を抑制することができる。あるいは、例えば、強誘電性LCDにおいては、強誘電性LCの自発分極電荷の方向が反転することにより生じる残留電荷を低減することができる。アライメント層上に設けられる、発光材料を含むOLED素子に使用した場合は、導電性が増大することによって、発光材料の電界発光特性を向上させることができる。本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物及び材料はまた、米国特許出願公開第2003/0021913A1号明細書に記載されているように、光異性化化合物及び/又は発色団と組み合わせて、光配向層中に、又は光配向層として使用することもできる。
【0224】
本発明によるフラーレン混合物、フラーレン組成物及び材料の他の使用によれば、特にこれらの水溶性誘導体(例えば、極性側基又はイオン性側基を有するもの)又はイオンドープ形態を、化学的センサーとして、又はDNA配列を検出及び識別するための材料として使用することができる。この種の使用は、例えば、L.チェン(L.Chen)、D.
W.マクブランチ(D.W.McBranch)、H.ワン(H.Wang)、R.ヘルゲソン(R.Helgeson)、F.ウドゥル(F.Wudl)、D.G.ホイッテン(D.G.Whitten)、ナショナル・アカデミー・サイエンシーズ・U.S.A.予稿集(Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、1999年、第96巻、p.12287;D.ワン(D.Wang)、X.ゴン(X.Gong)、P.S.ヒーガー(P.S.Heeger)、F.リニスランド(F.Rininsland)、G.C.ベーゼン(G.C.Bazan)、A.J.ヒーガー(A.J.Heeger)、ナショナル・アカデミー・サイエンシーズ・U.S.A.(Natl.Acad.Sci.U.S.A.)予稿集、2002年、第99巻、p.49;N.ディセサーレ(N.DiCesare)、M.R.ピノット(M.R.Pinot)、K.S.シャンツェ(K.S.Schanze)、J.R.ラコウィクツ(J.R.Lakowicz)、ラングミュアー(Langmuir)、2002年、第18巻、p.7785;D.T.マッケード(D.T.McQuade)、A.E.プレン(A.E.Pullen)、T.M.スウェーガー(T.M.Swager)、ケミカル・リビューズ(Chem.Rev.)、2000年、第100巻、p.2537に記載されている。
【0225】
特に明記しない限り、本明細書において用いられる用語の複数形は単数形も含むものと解釈され、その逆も同様である。
本明細書の記載内容及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise、contain)という語及びその変化形(例えば、「含む(comprising、comprises)」は、「含む(include)が、これらに限定されるものではない」ことを意味し、他の構成要素を排除することを意図していない(排除しない)。
【0226】
本発明の範囲を逸脱することなく上述の本発明の実施形態を変形できることが理解されるであろう。本明細書に開示した各特徴は、特段の指定がない限り、同一の目的、均等の目的又は類似の目的を果たす代替的な特徴と置き換えることができる。したがって、特段の指定がない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の均等な特徴又は類似の特徴の一例に過ぎない。
【0227】
本明細書に開示した全ての特徴は、これらの特徴及び/又はステップの少なくとも一部が互いに矛盾する組合せでない限り、任意の組合せで組み合わせることができる。特に、本発明の好適な特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組合せで用いることができる。同様に、必須でない組合せとして記載されている特徴は、別々に(組み合わせずに)用いることができる。
【0228】
上述及び後述の百分率は、特段の指定がない限り重量パーセントであり、温度は℃で与える。比誘電率ε(「誘電率」)の値は、20℃、1000Hzで測定した値を指す。
ここで以下に示す実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明するが、これらは例示のみであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0229】
実施例1
フラーレン混合物を用いるためのバルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子
ラムテック・コーポレーション(LUMTEC Corporation)より購入した予めパターンが形成されているITO付きガラス基板(13Ω/sq.)上に有機光電変換(OPV)素子を作製する。基板を慣用の溶媒(アセトン、イソプロパノール、脱イオン水)を用いて超音波浴で清浄化する。市販のPVE−002(Merck)の層をドクターブレードを用いて80℃で塗布することにより均一な塗膜を得た。次いでPVE−002の薄膜を100℃の空気中で10分間アニール処理した後、窒素雰囲気中に移した。活性材料の溶液(すなわちポリマー+フラーレン)を、溶液中の溶質の濃度が30mg
・cm
−3となるように、1−メチルナフタレン(1MN)又は2,4−ジメチルアニソール(DMA)に完全に溶解させることにより調製する。窒素雰囲気中で薄膜をブレード塗布することにより活性層の厚みが50〜800nm(表面粗さ計で測定)となるようにする。次いで短時間乾燥させることにより溶媒(残留している場合)を確実に除去する。
【0230】
通常、ブレード塗布した膜は90℃のホットプレート上で2分間乾燥させる。次いでこの素子を空気中に移動する。活性層の上面に導電性ポリマーであるポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(エチレンジオキシチオフェン)[PEDOT:PSS(クレヴォス(Clevios)HTL Solar SCA 246−10(ヘレウス(Heraeus))]0.9mLを延ばし、1100rpmで130秒間スピン塗布を行うことにより均一に塗布した。次いでAg(100nm)カソードをシャドウマスクを通して熱蒸着させることによりセルを画定する。素子作製の最終段階として、素子をそれぞれUV硬化型エポキシ接着剤を用いてカバーガラスで封止した。
【0231】
この太陽電池にニューポート・ソーラー・シミュレーター(Newport Solar Simulator)で100mW・cm
−2の白色光を照射しながらケースレー(Keithley)2400 SMUを用いて電流電圧特性を測定する。ソーラー・シミュレーターにはAM1.5Gフィルタを取り付ける。Siフォトダイオードを用いて照度を較正する。素子の作製及び特性評価は全て乾燥窒素雰囲気中で行う。
【0232】
電力変換効率を次式から求める:
【0233】
【数1】
【0234】
(式中、FFは:
【0235】
【数2】
【0236】
である)。
次に示す構造を有するポリマー1及びフラーレンのブレンドを全固形分濃度の有機溶液から塗布する。このOPV素子の特性を表1に示す。ポリマー1及びその調製は国際公開第2011/131280A1号パンフレットに開示されている。
【0237】
【化15】
【0238】
表1に、電子供与成分としてのポリマー及び電子受容成分としてのフラーレン混合物を含む光活性材料の溶液のそれぞれの配合物の特徴を示す。先行技術による溶液C1、C2及びC3はそれぞれ、フラーレンPCBM−C60、PCBM−C60と対応するビス付加体であるBisPCBM−C60との混合物、又はPCBM−C60とPCBM−C70との混合物を含む。本発明による溶液1、2及び3は、そのエステル置換基の性質が異なる(メチルエステル対ヘキシルエステル)フラーレンPCBM−C60及びPCBC
6−C60の混合物を異なる濃度で含む。全ての場合においてポリマーはポリマー1である。溶媒は全ての場合において1−メチルナフタレンである。
【0239】
【表1】
【0240】
素子の初期特性
表2に、表1に示す活性材料(フラーレン混合物/ポリマー)の溶液から形成されたBHJを含む光活性層を備える各OPV素子の特性を示す。
【0241】
【表2】
【0242】
表2から、異なる置換基Rを有する2種のフラーレンPCBM−C60及びPCBC
6−C60の混合物を含む本発明による溶液1、2又は3から調製されたBHJを含むOPV素子は、非塩素系溶媒から堆積させた場合、より高いPCEを示し、AM1.5G擬似太陽光を9日間照射した後でさえもより高いPCEを維持していることがわかる。
【0243】
これらと比較すると、先行技術において開示又は示唆されているPCBM−C60を単独で含む溶液C1、PCBM−C60及びBisPCBM−C60(8%)を含む溶液C2ならびにPCBM−C60及びPCBM−C70(19%)を含む溶液C3から調製したBHJを含むOPV素子は、PCEの値が低かった。特に、溶液C3(PCBM−C60及びPCBM−C70(19%))から調製されたBHJを含むOPV素子は、本発明による活性材料の溶液よりも初期PCEが大幅に低かった。
実施例2
ポリマー1及び他の本発明によるフラーレン混合物から実施例1に記載したBHJ型OPV素子を作製した。比較目的で単一のフラーレンから参照用BHJ素子を作製した。
【0244】
表3に、電子供与成分としてのポリマー1及び電子受容成分としてのフラーレン又はフラーレン混合物を含む各光活性材料溶液を配合した配合物の特徴を示す。溶液C4及びC5は、式I1d又は式I6bのフラーレンをそれぞれ単独で含む、性能比較用の参照用素子である。本発明による溶液4、5、6及び7は、フラーレンPCBM−C60、PCBC
6−C60、式I1d、式I6a及び式I6b(R
11=C
7H
15)の混合物を含み、そのエステル置換基の性質(メチルエステル対ヘキシルエステル)、そのフェニル置換基の性質(フェニル対テトラメトキシフェニル)、そのアルキル置換基の性質(R
11=H対R
11=C
7H
15)及びその付加基の性質(式I1対式I6)が異なっている。溶媒は1−メチルナフタレン(1MN)又は2,4−ジメチルアニソール(DMA)である。
【0245】
【表3】
【0246】
素子の初期特性
表4に表1の活性材料(フラーレン混合物/ポリマー)溶液から形成されたBHJを含む光活性層を備える各OPV素子の特性を示す。
【0247】
【表4】
【0248】
表4から、異なる置換基を有する2種のフラーレンPCBM−C60、PCBC
6−C60、I1d、I6a又はI6b(R
11=C
7H
15)の混合物を含む本発明による溶液4、5、6又は7から調製されたBHJを含むOPV素子は、非塩素系溶媒から堆積させた場合、より高いPCEを示し、AM1.5G擬似太陽光を100時間を超えて照射した後でもより高いPCEを維持していることが分かる。
【0249】
これらと比較すると、先行技術に開示又は示唆されているフラーレンI1dのみを含む溶液D4、フラーレンI6b(R
11=C
7H
15)のみを含む溶液D5から調製された
BHJを含むOPV素子は、より低いPCE値を示す。