特許第6771757号(P6771757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771757機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771757
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/08 20060101AFI20201012BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20201012BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20201012BHJP
   D06M 11/49 20060101ALI20201012BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   D06M23/08
   D04H3/16
   D04H3/011
   D06M11/49
   D06M101:32
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-90454(P2016-90454)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-197880(P2017-197880A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−266812(JP,A)
【文献】 特開2013−076182(JP,A)
【文献】 特開平08−144172(JP,A)
【文献】 特開2009−084716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00−16/00
19/00−23/18
D04H1/00−18/04
D01F1/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、表面が平滑なポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布を、機能剤が微粒子として分散してなる溶液に浸漬した後、圧搾及び乾燥することを特徴とする機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
溶液中にバインダーが含まれていない請求項1記載の機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法。
【請求項3】
機能剤が、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、防虫剤及び防カビ剤よりなる群から選ばれた一種又は二種以上である請求項1記載の機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法。
【請求項4】
微粒子が無機系微粒子よりなる請求項1記載の機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法。
【請求項5】
ポリエステル長繊維の繊度が10デシテックス以上である請求項1記載の機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性や抗菌性等の各種機能性が付与されてなる機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種繊維製品に消臭性や抗菌性を付与することが行われている。たとえば、特許文献1には、繊維製品表面に不燃性パウダーを付着させて不燃性繊維製品を得る方法が記載されている(請求項1)。そして、繊維製品に用いる繊維としてポリエステル繊維を使用すること(段落0037)、繊維は異形断面繊維であってもよいこと(段落0032〜0036)、繊維製品として不織布を使用すること(段落0015)、不燃性パウダーを付着させるには、バインダーを用いて付着させること(段落0029)が記載されている。
【0003】
不燃性パウダーの場合は、バインダーを用いて付着させても問題は少ないかもしれないが、消臭剤や抗菌剤等の機能剤の場合、その表面がバインダー皮膜で覆われて、消臭機能や抗菌機能等を減殺してしまうという問題があった。バインダーを用いずに、繊維表面に消臭剤等の機能剤を付着させると、簡単に機能剤が脱落してしまい、機能性を十分に発揮し得ないことになる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−214063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、実質的にバインダーを用いずに、機能剤を繊維表面に強固に付着させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特殊な断面を持つポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布を用いることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、表面が平滑なポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布を、機能剤が微粒子として分散してなる溶液に浸漬した後、圧搾及び乾燥することを特徴とする機能性ポリエステル長繊維不織布の製造方法に関するものである。
【0007】
本発明で用いる不織布の構成繊維であるポリエステル長繊維の横断面形状について説明する。この横断面形状は、図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。四個の凹部2は、凸部3間に深く窪んだ形状となっており、ここに機能剤が入り込んで沈積せしめられると、簡単には脱落しない。なお、かかる横断面形状を持つポリエステル長繊維は、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。
【0008】
ポリエステル長繊維の繊度は任意であるが、10デシテックス以上であるのが好ましい。繊度が低くなると、凹部2が小さくなって、機能剤が入り込みにくくなる。ポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間を低融点ポリエステルによって融着させた不織布が得られるからである。
【0009】
不織布の目付は任意であるが、一般に50g/m2以上であるのが好ましい。目付が低すぎると、機能剤の沈積量が少なくなり、機能性が低下する傾向が生じる。不織布は、機能剤が微粒子として分散してなる溶液に浸漬せしめられる。機能剤として、従来公知の消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、防虫剤、防カビ剤、難燃剤、不燃剤又は抗ウイルス剤等が用いられる。たとえば、消臭剤としては南姜エフニカ株式会社製の「エフニカ」、抗菌剤としては株式会社シナネンゼオミック製の「ゼオミック」、防ダニ剤としては石塚ガラス株式会社製の「セグロセラ」や大日本除虫菊株式会社製の「コックスリン」、防虫剤としては大和化学工業株式会社製の「アニンセン」が用いられる。
【0010】
機能剤である微粒子、溶媒に分散させて溶液を得る。微粒子の粒径は数μmから数十μm程度のものがよい。粒径が大きいと、ポリエステル長繊維の四個の凹部2に入り込みにくくなる。機能剤である微粒子は無機系微粒子であってもよいし、無機系化合物又は有機系化合物を担体微粒子に担持させたものであってもよい。溶媒としては、一般に水を用いるのが最適である。溶媒として有機溶媒を用いることもできるが、作業環境が悪化するので、できるだけ回避するのがよい。溶液中における機能剤の含有量は任意であるが、1〜10重量%程度が好ましい。機能剤の含有量が多くなりすぎると、溶液の粘度が高くなり、ポリエステル長繊維の四個の凹部2に溶液が入り込みにくくなる。また、機能剤の含有量が少ないと、四個の凹部2に入り込む機能剤の量が少なくなる。
【0011】
不織布を溶液に浸漬した後、不織布を圧搾して、過剰の溶液を絞って除去する。圧搾方法としては、不織布を一対の加圧ロール間に通して行うのが、一般的である。圧搾後に乾燥して、溶液中の溶媒を除去する。溶媒が水の場合には、100℃以上に加熱された乾燥機中に通すことにより行う。これにより、機能剤のみが不織布中に残ることになる。機能剤はポリエステル長繊維表面に沈積するのであるが、凸部3表面よりも凹部2に沈積しやすく、多くの機能剤がポリエステル長繊維の四個の凹部2に沈積することになる。
【0012】
得られた機能性ポリエステル長繊維不織布は、従来公知の用途に用いられる。たとえば、抗菌性の拭き布、消臭性、防ダニ性或いは抗菌性のフィルター材、消臭性、防ダニ性或いは抗菌性の壁紙、消臭性、抗菌性、防ダニ性、防虫性、防カビ性或いは難燃性のカーペット基布又は抗ウイルス性のマスク素材等に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る方法は、特殊な横断面形状のポリエステル長繊維で構成された不織布を、機能剤を含有する溶液を浸漬し、機能剤の多くをポリエステル長繊維の四個の凹部2に沈積させるものである。そして、この四個の凹部2は、凸部3間に深く窪んだ形状となっているため、機能剤はバインダーによる接着がなくても、簡単に脱落しないものである。したがって、本発明に係る方法により、長寿命の機能性ポリエステル長繊維不織布が得られるという効果を奏する。
【実施例】
【0014】
実施例1
[不織布の準備]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)92mol%及びイソフタール酸(IPA)8mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、低融点ポリエステル(相対粘度〔ηrel〕1.44、融点230℃)を得た。この低融点ポリエステルに、結晶核剤として4.0質量%の酸化チタンを添加して、低融点ポリエステル樹脂を準備した。一方、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、高融点ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、図3に示したノズル孔を用い、V字部に低融点ポリエステル樹脂を供給し、+字部に高融点ポリエステル樹脂を供給して、紡糸温度285℃、単孔吐出量8.33g/分で溶融紡糸した。なお、低融点ポリエステル樹脂の供給量と高融点ポリエステル樹脂の供給量の重量比は、1:2であった。
【0015】
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、複合型ポリエステル長繊維の繊度が17デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出された複合型ポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が213℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mm2で、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧を490N/cmの条件として、複合型ポリエステル長繊維相互間を低融点ポリエステル樹脂で熱融着して、目付70g/m2で厚み(荷重1.96kPa)450μmの不織布を得た。
【0016】
[機能性ポリエステル長繊維不織布の製造]
消臭剤として市販されている南姜エフニカ株式会社製の「エフニカK600(主成分は二価鉄化合物)」を水に投入し、二価鉄化合物の含有量が約5重量%である溶液を得た。この溶液中に、準備した不織布を1分間浸漬した後、一対のゴムロール間を通して不織布を圧搾し、過剰の溶液を除去した。この後、150℃の熱風を送り込んだ熱風乾燥機中に不織布を置き、5分間乾燥して機能性ポリエステル長繊維不織布を得た。この機能性ポリエステル長繊維不織布の目付は約82g/m2であった。したがって、この機能性ポリエステル長繊維不織布は、不織布に消臭剤が約12g/m2付与されてなるものである。
【0017】
得られた機能性ポリエステル長繊維不織布の表面を電子顕微鏡で観察した結果を、図4に示した。図4から、ポリエステル長繊維の凹部2に消臭剤が沈積していることが分かる。
【0018】
実施例2
二価鉄化合物の含有量を約1重量%とする他は、実施例1と同一の方法で機能性ポリエステル長繊維不織布を得た。この機能性ポリエステル長繊維不織布の目付は約72g/m2であった。したがって、この機能性ポリエステル長繊維不織布は、不織布に消臭剤が約2g/m2付与されてなるものである。
【0019】
得られた機能性ポリエステル長繊維不織布の消臭性能を、SEKマーク繊維製品認証基準(一般社団法人繊維評価技術協議会)で定める検知管法で初期濃度100ppmのアンモニアガスを用いて評価した。その結果、2時間後のアンモニアガス濃度は9.0ppmで、6時間後のアンモニアガス濃度は1.9ppmで、24時間後のアンモニアガス濃度は0.8ppmであった。したがって、この機能性ポリエステル長繊維不織布は、優れた消臭性能を持つものであった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図2】ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
図3】実施例で使用したポリエステル長繊維を溶融紡糸するためのノズル孔を示した図である。
図4】実施例1で得られた機能性ポリエステル長繊維不織布表面の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0021】
1 ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略+字部
6 略Y4形状中の略V字部
図1
図2
図3
図4