特許第6771772号(P6771772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771772圧力式流量制御装置及びその異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771772
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】圧力式流量制御装置及びその異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20201012BHJP
   G01F 1/50 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G05D7/06 A
   G01F1/50
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-541419(P2017-541419)
(86)(22)【出願日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2016004210
(87)【国際公開番号】WO2017051520
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-187523(P2015-187523)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−199256(JP,A)
【文献】 特開2014−063348(JP,A)
【文献】 特開2005−274265(JP,A)
【文献】 特開2014−32635(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084422(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00−7/06
G01F 1/00−1/30;
1/34−1/54;
3/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバに接続された複数の流路のそれぞれに設けられる圧力式流量制御装置であって、
ガスが流れる流路に介在された絞り部と、
前記絞り部の上流側のガス圧力を検出するための上流側圧力センサと、
前記絞り部の下流側のガス圧力を検出するための下流側圧力センサと、
前記上流側圧力センサの上流側流路に設けられた流量制御弁と、
前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの其々の検出値に基づいて前記流量制御弁を制御することによりガスの流量を設定流量となるように制御する演算制御回路と、を備え、
前記複数の流路に含まれる第1の流路においてプロセスが終了しており、かつ、他の第2の流路においてプロセスチャンバへのガス供給プロセスが行われており、前記第2の流路においてガスを流す一方で前記第1の流路において前記流量制御弁と前記下流側圧力センサの下流側流路に設けられた開閉弁とが閉じられてガスが流れていない状態において、
前記第1の流路に設けられた圧力式流量制御装置の前記演算制御回路が、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差を演算するとともに、演算した前記差に基づく圧力センサ異常判定用信号を出力する、圧力式流量制御装置。
【請求項2】
前記上流側圧力センサと前記下流側圧力センサとが同一の定格圧力を有し、
前記演算制御回路は、前記定格圧力に対する、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差の割合を、前記圧力センサ異常判定用信号として出力する、請求項1に記載の圧力式流量制御装置。
【請求項3】
前記演算制御回路は、前記圧力センサ異常判定用信号を流量出力値として出力する、請求項に記載の圧力式流量制御装置。
【請求項4】
前記圧力センサ異常判定用信号を用いて前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの異常を判定する異常判定手段を更に有する、請求項1に記載の圧力式流量制御装置。
【請求項5】
プロセスチャンバに接続された複数の流路のそれぞれに設けられた圧力式流量制御装置の異常検知方法であって、
前記圧力式流量制御装置は、
ガスが流れる流路に介在された絞り部と、
前記絞り部の上流側のガス圧力を検出するための上流側圧力センサと、
前記絞り部の下流側のガス圧力を検出するための下流側圧力センサと、
前記上流側圧力センサの上流側流路に設けられた流量制御弁と、
前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの其々の検出値に基づいて前記流量制御弁を制御することによりガスの流量を設定流量となるように制御する、演算制御回路と、を備え、
前記異常検知方法は、
前記複数の流路に含まれる第1の流路においてプロセスが終了しており、かつ、他の第2の流路においてプロセスチャンバへのガス供給プロセスが行われており、前記第2の流路においてガスを流す一方で、前記第1の流路において設定流量がゼロに設定され前記流量制御弁と前記下流側圧力センサの下流側流路に設けられた開閉弁とが閉じられてガスが流れていない状態において、
前記第1の流路において、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサにより前記流路内の圧力を検出するステップと、
前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差を演算するステップと、
演算により求められた前記差に基づく圧力センサ異常判定用信号を出力するステップと、を含む、前記圧力式流量制御装置の異常検知方法。
【請求項6】
前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの同一の定格圧力に対する、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差の割合を、前記圧力センサ異常判定用信号として出力するステップを更に含む、請求項に記載の圧力式流量制御装置の異常検知方法。
【請求項7】
前記圧力センサ異常判定用信号を流量出力値として出力することを特徴とする請求項に記載の圧力式流量制御装置の異常検知方法。
【請求項8】
前記圧力センサ異常判定用信号を予め定められたしきい値と比較することにより、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの一方又は双方に異常があると判定するステップを更に含む、請求項に記載の圧力式流量制御装置の異常検知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備や化学プラント等に使用される圧力式流量制御装置及びその異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、制御されるべき流体Gが通過する流路2と、流路2に介在されたオリフィス等の絞り部3と、絞り部3の上流側の流体圧力を検出する上流側圧力センサ4と、絞り部3の下流側の流体圧力を検出する下流側圧力センサ5と、上流側圧力センサ4の上流側の流路2に設けられた流量制御弁6と、流量制御弁6を制御する演算制御部7と、を備える圧力式流量制御装置10が知られている(特許文献1等)。
【0003】
この種の圧力式流量制御装置は、上流側圧力センサ4により検出された上流側圧力の検出値(P)と、下流側圧力センサ5により検出された下流側圧力の検出値(P)と、絞り部3を通過する流量Qとの間に、所定の関係が成立することを利用して、上流側圧力の検出値(P)又は、上流側圧力の検出値(P)及び下流側圧力の検出値(P)に基づいて、演算制御部7が流量制御弁6を制御することにより流量を所定流量となるように制御する。例えば、P≧約2×Pを満たす臨界膨張条件下では流量Q=K(K一定)の関係があり、非臨界膨張条件下では流量Qc=KP(P−P(Kは流体の種類と流体温度に依存する比例係数、指数m、nは実際の流量をこの流量式でフィットすることにより導出された値)の関係が成立し、これらの流量計算式により流量を演算することができる。
【0004】
半導体製造設備等では、図4に示すように、圧力式流量制御装置10の下流に開閉弁8を設けた複数の流路がプロセスチャンバ9に接続され、プロセスチャンバ9に供給する流体を開閉弁8で切り替えながら供給するプロセスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−138425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の圧力式流量制御装置においては、圧力センサの故障や圧力センサの検出値の誤差により、制御流量のずれが生じることがあり、適時、圧力センサの異常の有無を確認する必要があった。従来では、制御流量指令値をゼロにして、圧力センサが設けられている流路内を真空引きし、圧力センサの検出値がゼロを示しているか確認していた。圧力センサの検出値がゼロを示していれば、圧力センサは正常であり、流量に誤差を生じていないと判断することができる。
【0007】
しかしながら、このような圧力センサの異常の検知には、真空引きの工程を経る必要があるため、通常の流体供給プロセス中に実施することができず、メンテナンスモードにおいて実施するしかなかった。
【0008】
そこで、本発明は、圧力センサが設けられた流路を真空引きしなくても、圧力センサの異常を確認できる圧力式流量制御装置及び該圧力式流量制御装置の異常検知方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧力式流量制御装置の実施形態は、流路に介在された絞り部と、前記絞り部の上流側の流体圧力を検出するための上流側圧力センサと、前記絞り部の下流側の流体圧力を検出するための下流側圧力センサと、前記上流側圧力センサの上流側流路に設けられた流量制御弁と、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの其々の検出値に基づいて前記流量制御弁を制御することにより流量を設定流量となるように制御する演算制御回路と、を備え、前記演算制御回路は、前記流路内を流体が流れていない状態において、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差を演算するとともに、演算した前記差に基づく圧力センサ異常判定用信号を出力する。
【0010】
ある実施形態において、前記演算制御回路は、前記下流側圧力センサの下流側流路に設けられる開閉弁の閉時に前記流量制御弁が閉じられた状態で前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差を演算するとともに、演算した前記差に基づく圧力センサ異常判定用信号を出力する。
【0011】
ある実施形態において、前記上流側圧力センサと前記下流側圧力センサとが同一の定格圧力を有し、前記演算制御回路は、前記定格圧力に対する、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差の割合を、前記圧力センサ異常判定用信号として出力する。
【0012】
ある実施形態において、前記演算制御回路は、前記圧力センサ異常判定用信号を流量出力値として出力する。
【0013】
ある実施形態において、前記圧力センサ異常判定用信号を用いて前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの異常を判定する異常判定手段を更に有する。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る圧力式流量制御装置の異常検知方法の実施形態は、前記圧力式流量制御装置が、流路に介在された絞り部と、前記絞り部の上流側の流体圧力を検出するための上流側圧力センサと、前記絞り部の下流側の流体圧力を検出するための下流側圧力センサと、前記上流側圧力センサの上流側流路に設けられた流量制御弁と、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの其々の検出値に基づいて前記流量制御弁を制御することにより流量を設定流量となるように制御する、演算制御回路と、を備え、前記異常検知方法は、前記流路内を流体が流れていない状態において、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサにより前記流路内の圧力を検出するステップと、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差を演算するステップと、演算により求められた前記差に基づく圧力センサ異常判定用信号を出力するステップと、を含む。
【0015】
本発明に係る圧力式流量制御装置の異常検知方法の実施形態において、前記流路内を流体が流れていない前記状態は、前記下流側圧力センサの下流側流路に設けられる開閉弁が閉じられ、且つ、設定流量がゼロに設定されて前記流量制御弁が閉じられている状態を含むことができる。
【0016】
本発明に係る圧力式流量制御装置の異常検知方法の実施形態において、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの同一の定格圧力に対する、前記上流側圧力センサの検出値と前記下流側圧力センサの検出値との差の割合を、前記圧力センサ異常判定用信号として出力するステップを更に含むことができる。
【0017】
本発明に係る圧力式流量制御装置の異常検知方法の実施形態において、前記圧力センサ異常判定用信号を流量出力値として出力することができる。
【0018】
本発明に係る圧力式流量制御装置の異常検知方法の実施形態において、前記圧力センサ異常判定用信号を予め定められたしきい値と比較することにより、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの一方又は双方に異常があると判定するステップを更に含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流路内を流体が流れていない状態では、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサは、正常に作動していれば、同じ検出値を出力するはずであるから、上流側圧力センサの検出値と下流側圧力センサの検出値との差はゼロとなるはずである。一方、上流側圧力センサと下流側圧力センサの其々の検出値に差がある場合は、何れか一方又は双方が誤差を生じているか故障している可能性がある。上流側圧力センサと下流側圧力センサの其々の検出値に差の度合いによって、前記圧力式流量制御装置の制御流量に異常ありと判定することができる。
【0020】
本発明の一態様において、プロセス終了後に絞り部下流側の開閉弁が閉じられ、設定流量をゼロにして絞り部上流側の流量制御弁が閉じられた時、流量制御弁と開閉弁との間の流路内にはガスが流れていない状態で残存しているため、その残存ガスの圧力を上流側圧力センサと下流側圧力センサとが同時に検出する。上流側圧力センサ及び下流側圧力センサは、閉じられた流路内のガス圧力を測定しているため、正常に作動していれば、同じ検出値を出力するはずであるから、上流側圧力センサの検出値と下流側圧力センサの検出値との差はゼロとなるはずである。一方、上流側圧力センサと下流側圧力センサとの検出値に差がある場合は、何れか一方又は双方が誤差を生じているか故障している可能性が考えられる。従って、流路を真空状態にせずとも、上流側圧力センサの検出値と下流側圧力センサの検出値との差を求め、その差の度合いを判別することにより、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサの何れかに故障或いは検出誤差があるか無いかをチェックすることができ、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサの異常、即ち制御流量の異常を検知することができる。この圧力センサの異常検知については、真空引き工程を経る必要が無いため、流体供給プロセス中の下流側開閉弁閉止時に行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明の一態様において、圧力センサの定格圧力に対する、上流側圧力センサの検出値と下流側圧力センサの検出値との差の割合を、前記圧力センサ異常判定用信号として出力することにより、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサに誤差が生じていた場合に、誤差の割合を知ることができ、また、誤差の割合を予め設定したしきい値と比較することで異常か否かを判定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の圧力式流量制御装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の圧力式流量制御装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
図3図3は、従来の圧力式流量制御装置を示す概略構成図である。
図4図4は、従来の圧力式流量制御装置のプロセスチャンバへの接続例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る圧力式流量制御装置の幾つかの実施形態について、以下に図1及び図2を参照して説明する。なお、従来技術を含め同一又は類似の構成部分については同符号を付している。
【0024】
図1は、圧力式流量制御装置の一実施形態を示す概略構成図である。圧力式流量制御装置1は、流路2に介在された絞り部3と、絞り部3の上流側の流体圧力を検出するための上流側圧力センサ4と、絞り部3の下流側の流体圧力を検出するための下流側圧力センサ5と、上流側圧力センサ4の上流側流路に設けられた流量制御弁6と、上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5の其々の検出値に基づいて流量制御弁6を制御することにより流量を制御する演算制御回路13と、を備えている。なお、図示していないが、流路2内の流体温度を検出する温度センサが、例えば上流側圧力センサ4と絞り部3の間に、配設され得る。
【0025】
流路2は金属製ブロック等に穿孔されて形成され得る。絞り部3は、流路2に介在された薄板のオリフィスプレートにより形成されている。上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5は、例えば、シリコン単結晶のセンサチップとダイヤフラムを内蔵する圧力センサが用いられ得る。上流側圧力センサ4と下流側圧力センサ5とは、好ましくは同一の定格圧力、同一の仕様のものが用いられる。流量制御弁6は、圧電素子駆動式の金属製ダイヤフラム弁が用いられる。
【0026】
下流側圧力センサ5の下流側流路に、開閉弁8が設けられている。図1に示す例では開閉弁8が圧力式流量制御装置1の外部に接続されているが、他の変更態様においては、図2に示すように開閉弁8が圧力式流量制御装置1に内蔵され得る。開閉弁8は、例えば、エア駆動弁が用いられ、駆動エアの供給が電磁弁等によりON/OFF制御されて、開閉制御され得る。
【0027】
外部制御装置14において設定流量が設定され、設定された設定流量の信号が、外部制御装置14から演算制御回路13に送られる。演算制御回路13は、上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5の其々の検出値に基づいて、臨界膨張条件又は非臨界膨張条件における流量計算式により流量を演算し、絞り部3を通過する流体の流量が設定流量になるように流量制御弁6を制御する。演算制御回路13は、演算した流量を流量出力値(Qout)として外部制御装置14に出力することができ、外部制御装置14が受け取った流量出力値(Qout)を表示器14aに表示させることにより、演算により得られた流量をモニターすることができる。
【0028】
圧力式流量制御装置1は、半導体製造ラインのガス供給ライン等の流路に組み込まれる。半導体製造ラインでは、複数の流路がプロセスチャンバ9に接続され(図4参照)、前記複数の流路の其々に圧力式流量制御装置1が設けられ、各流路に設けた開閉弁8を切り換えることにより、種類の異なるプロセスガスが流量制御されてプロセスチャンバ9に順次供給される。プロセスチャンバ9にプロセスガスが供給されている間、真空ポンプ11によりプロセスチャンバ9内が真空引きされる。あるプロセスが終了した後、ガス供給を停止するため、外部制御装置14からの指令により、開閉弁8が閉じられると、それに合わせて、流量制御弁6の制御流量をゼロにする信号が外部制御装置14から演算制御回路13に送られ、いわゆる流量ゼロモードとなる。前記流量ゼロモードで、演算制御回路13は、設定流量ゼロの信号を受けて流量制御弁6が閉じられる。その結果、流量制御弁6と開閉弁8との間の流路2にガスが残存することとなる。なお、開閉弁8は、プロセスチャンバ9へのガス供給を完全に止めるため、流量制御弁6よりもリークが少なく弁閉鎖力の強い弁が用いられ得る。
【0029】
前記流量ゼロモードで、演算制御回路13は、上流側圧力センサ4の検出値(P)と下流側圧力センサ5の検出値(P)との差(P−P)を演算する。
【0030】
上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5は、両端を閉じられた流路2内の同じガス圧力を測定している。従って、上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5は、正常に作動していれば、同じ検出値を出力するはずであるから、上流側圧力センサの検出値と下流側圧力センサの検出値との差(P−P)はゼロとなるはずである。
【0031】
一方、上流側圧力センサ4の検出値(P)と下流側圧力センサ5の検出値(P)の差(P−P)がゼロでない場合は、その差の度合いによっては、上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5の何れか一方又は双方が、誤差を生じているか故障していると考えられる。
【0032】
従って、上流側圧力センサ4の検出値と下流側圧力センサ5の検出値との差を演算し、その差の度合いを判定することにより、流路2を真空状態にしなくても、上流側圧力センサ4と下流側圧力センサ5の何れかに故障或いは誤差があるか無いかをチェックすることができる。
【0033】
特に図4に示されるようにプロセスチャンバ9につながる流路が複数あって、前記流量ゼロモードで開閉弁8を閉じている流路と、開閉弁8を開いて所定流量でガスを流している流路とがある場合にあっては、ガスを流している流路はそのままガスを流しながら、前記流量ゼロモードの圧力式流量制御装置1の上流側圧力センサ4と下流側圧力センサ5に異常が無いかを検知することができる。
【0034】
演算制御回路13は、検出値の差(P−P)を圧力センサ異常判定用信号として外部制御装置14に出力し、外部制御装置14は、前記圧力センサ異常判定用信号である検出値の差(P−P)を予め設定されたしきい値と比較することにより、異常の有無を判定する異常判定手段を備えることができる。例えば、外部制御装置14は、前記圧力センサ異常判定用信号である検出値の差(P−P)の絶対値が前記しきい値を超える場合に、異常有りと判定する。前記異常判定手段による判定結果を、例えば表示器14aに表示することにより、圧力センサの交換時期を知らせることもできる。
【0035】
また、他の実施形態において、演算制御回路13は、上流側圧力センサ4及び下流側圧力センサ5の定格圧力(Pmax)に対する、上流側圧力センサ4の検出値(P)と下流側圧力センサの検出値(P)との差(P−P)の割合[((P−P)/Pmax)×100](%)を、圧力センサ異常判定用信号として出力し、例えば、表示器14a等に表示させることができる。
【0036】
この場合、演算制御回路13は、[((P−P)/Pmax)×100](%)の圧力センサ異常判定用信号を流量出力値(Qout)として外部制御装置14に出力することができる。外部制御装置14は、流量設定ゼロからの流量出力値(Qout)のドリフトを、設定流量ゼロからのゼロ点ドリフトとして判別することができるので、このゼロ点ドリフトのドリフト幅が予め設定された前記しきい値を超える場合に圧力センサに異常があると判定する異常判定手段を備えることができる。また、ドリフトを調整することにより、ゼロ点調整することもできる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、流量制御弁は、圧電素子駆動型に代えて、ソレノイド駆動型とすることもできる。
【0038】
また、上記実施形態では、前記流量ゼロモードで流量制御弁6が閉じている状態での異常検知について説明したが、流量制御弁が閉じていない状態であっても、例えば、圧力式流量制御装置1の上流部に接続される開閉弁(図示せず。)が閉じられる等、圧力式流量制御装置1内の流路2に流体が流れていない状態であれば、上記実施形態と同様に、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサの以上の有無を検知することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 圧力式流量制御装置
2 流路
3 絞り部
4 上流側圧力センサ
5 下流側圧力センサ
6 流量制御弁
8 開閉弁
13 演算制御回路
図1
図2
図3
図4