特許第6771776号(P6771776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771776
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】脱ガス用回転体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20201012BHJP
   C22B 9/05 20060101ALI20201012BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B22D1/00 B
   B22D1/00 K
   C22B9/05
   C04B35/577
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-50331(P2018-50331)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-162637(P2019-162637A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】土本 和紀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健文
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−205234(JP,A)
【文献】 特開平09−024462(JP,A)
【文献】 特開2007−204843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00,41/00−41/62,
C22B 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス通路を備えたシャフトと、当該シャフトの先端に配置された溶融金属撹拌用のロータを有し、
前記シャフトの基端を回転脱ガス装置の駆動モータに連結して、回動自在に溶融金属を撹拌する脱ガス用回転体の製造方法であって、
黒鉛質、セラミックス質、及びガラス質を所定の構成比率で混合した粉粒体状の耐火物を、
前記回転体用の成形型に充填し、圧縮加圧し、焼成して、
前記シャフトと前記ローターとが一体不可分となるように前記回転体を形成するようにしたことを特徴とする脱ガス用回転体の製造方法
【請求項2】
20%〜40%の前記黒鉛質、40%〜60%の前記セラミックス質、及び5%〜20%のガラス質を所定の混合比率で混合して前記耐火物を形成することを特徴とする請求項1に記載の脱ガス用回転体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転脱ガス装置の駆動モータに接続されて、回動自在に溶融金属の溶湯を撹拌する脱ガス用回転体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム等の軽金属、又は軽金属合金の溶融金属は、非金属物又は水素ガス等の不純物が混入する場合がある。当該不純物を除去するための処理方法のひとつとして、回転脱ガス処理法が知られており、当該回転脱ガス処理法を行う装置が回転脱ガス装置である。
回転脱ガス装置は、回動自在な撹拌用の回転体をモータで駆動すると共に回転体を通じて溶融金属内にアルゴンガス又は窒素ガス等の不活性ガスを送り込む機構を備えた装置である。回転体は、ガス通路を備えたシャフトと、ガス拡散用の溝又は通路が形成されたロータからなる。
回転脱ガス処理法は、ロータを溶融金属内に沈め、不活性ガスをガス通路を通じて溶融金属内へ送り込み、ロータによって不活性ガスを拡散し、微細気泡化することによって、当該微細気泡化した不活性ガスに、溶融金属内の不純物を取り込ませたり、或いは不純物を付着させたりして、溶融金属表面に不活性ガスと共に浮上してきた不純物を処理することによって溶融軽金属内の不純物を除去する方法である。
【0003】
特公平7−122106号公報に開示されている溶融軽金属の精製処理方法において使用されている処理装置は、カーボン製の回転軸の先端にはガスを微細化して放出する気泡発生器を有している。当該気泡発生器は、ガス拡散器と回転羽根を有している。ガス拡散器は、取付部の外周表面に螺刻されたネジによって回転軸へ取り付けられている。
また、特開2006−95540号公報に開示されている溶融金属撹拌用回転体は、気体供給路を内部に有するセラミックス製のシャフトの下端部に、セラミックス製の撹拌ディスクを焼嵌めにより嵌合固定している。また、気体供給路を内部に有するセラミックス製のシャフトの下端部と、セラミックス製の撹拌ディスクとの嵌合面間に接着剤を介在させて嵌合固定している。
さらに、特開2011−173137号公報に開示されている溶融金属撹拌用回転体は、筒状のシャフトの一端に溶湯金属を攪拌するローターが、他端に回転駆動機構に接続する連結具が取り付けられており、シャフトおよびローターの表面に、シャフトまたはローターに用いられるセラミックスの使用時の熱膨張よりも大きい高さの凹凸部を設け、該凹凸部を組み合わせる形で焼成時のセラミックスの収縮によりシャフトとローターとを嵌合して接合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−122106号公報
【特許文献2】特開2006−95540号公報
【特許文献3】特開2011−173137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献に開示されている回転体、たとえば、図4に示すような回転体100は、シャフト101と溶融金属の撹拌用ロータ102が別体に形成されている。シャフト101と別個に形成されたロータ102は、図4に示したようにシャフト101の先端に切られた雄ネジ103aと、ロータ102に形成された雌ネジ103bによって螺合されている他、たとえば、上記文献に記載されているような嵌め合わせによってシャフト101へ組み付けられている。
このようにロータ102とシャフト101とが、別個に形成されている場合、振動或いは高温環境下でシャフト101の雄ネジ103aとロータ102の雌ネジ103bの接合部分が劣化損耗して、ロータ102がガタつき溶融金属を効率よく撹拌することができなくなるおそれがあり、またこの状態を放置して継続使用した場合には、ロータ102が破損したり、破損したロータ102がシャフト101から脱落するおそれがある。
【0006】
このような、シャフトからロータが脱落するという問題の容易な解決方法は、たとえば円筒形状に形成された耐火物ブロックから、ロータとシャフトを一体化した回転体を削り出すことである。しかしながら、回転体を削り出す方法の場合、シャフトの直径よりもロータの直径が大径となるので、耐火物ブロックは少なくともロータの直径にあわせた大径の円筒形状となる。そのため、当該耐火物ブロックからシャフトを削り出すとき、削りカスが大量に発生する。また、耐火物ブロックがセラミックス質を大量に含む場合、当該耐火物ブロックは非常に硬い塊となる。そのため、回転体を削り出す切削作業に大変な手間がかかるうえに、高精度の回転体を形成することは非常に困難である。したがって、耐火物ブロックから回転体を削り出す手法は、製造コストが高くなるので経済的ではない。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、製造工程を簡略化して製造コストを抑えて、シャフトからのロータ脱落を防止すると共に耐久性を向上させた脱ガス用回転体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の脱ガス用回転体の製造方法は、ガス通路を備えたシャフトと、当該シャフトの先端に配置された溶融金属撹拌用のロータを有し、
前記シャフトの基端を回転脱ガス装置の駆動モータに連結して、回動自在に溶融金属を撹拌する脱ガス用回転体の製造方法であって、
黒鉛質、セラミックス質、及びガラス質を所定の構成比率で混合した粉粒体状の耐火物を、
前記回転体用の成形型に充填し、圧縮加圧し、焼成して、
前記シャフトと前記ローターとが一体不可分となるように前記回転体を形成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の脱ガス用回転体の製造方法は、請求項1に記載の発明において、20%〜40%の前記黒鉛質、40%〜60%の前記セラミックス質、及び5%〜20%のガラス質を所定の混合比率で混合して前記耐火物を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱ガス用回転体の製造方法によれば、シャフトとロータが一体不可分となるよう一体成形した。これによって、長時間にわたって継続使用した場合であっても、シャフトとロータの接合部位の損耗、或いはガタ付きを防止することができるので、回転体の耐久性を向上させて、シャフトからロータが脱落することを防止することができる。
さらに、脱ガス用回転体の製造方法によれば、粉粒体状の耐火物原材料を成形型に充填し、圧縮加圧し、焼成して回転体を形成するようにした。これによって、ローターの径に合せた円柱形の耐火物ブロックから削り出すよりも原材料の使用量を抑え、切削作業も微調整程度の短時間で済ませることができる。そのため、回転体の製造工程を簡略化することでき、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施例に係る脱ガス用回転体を備えた回転脱ガス装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】第1実施例に係る脱ガス用回転体の構成の概略を示す説明図である。
図3】第1実施例に係る脱ガス用回転体の構成の概略を示す断面図である。
図4】従来の脱ガス用回転体の構成の一例を示す断面図である。
【実施例1】
【0012】
本実施例に係る脱ガス用回転体を、添付した図面にしたがって説明する。図1は、本実施例に係る回転脱ガス装置の構成の概略を示す説明図である。図2は、本実施例に係る脱ガス用回転体の構成の概略を示す説明図である。
【0013】
回転脱ガス装置10は、図1に示すように、溶融金属を貯留可能な撹拌槽50を有している。本実施例における溶融金属は、たとえば、アルミニウム、又はアルミニウム合金のような軽金属を高温環境下で溶融したものである。
【0014】
回転脱ガス装置10は、回転体11と駆動部12とからなる。
駆動部12は、駆動モータ13と、当該駆動モータ13が設置されるベース14とからなる。
ベース14は、ベースフレーム15と、当該ベースフレーム15が所定の高さに位置するように支持する支持脚16とからなる。当該支持脚16は、撹拌槽50の蓋51に立設されている。蓋51は、回転体11が挿通可能な孔部51aが中央部に形成されている。
ベースフレーム15は、軸受17を有している。当該軸受17は、駆動シャフト18を回動自在に軸支している。
駆動シャフト18は、ガス供給路19を備えた中空状に形成され、ベースフレーム15に垂設されている。
駆動シャフト18の基端部18a近傍は、ベルト20を介して駆動可能に駆動モータ13と連結されている。
当該駆動モータ13は。ベースフレーム15上に設けた制御装置21によって制御可能に形成されている。制御装置21は、駆動モータ13の回転速度、回転方向、駆動時間等の駆動パラメータを制御可能に形成されており、好ましくは、当該パラメータを表示可能なモニタを設けても良い。
また、駆動シャフト18の基端部18aは、不活性ガスを供給可能なガス供給口22が形成されている。当該ガス供給口22は、ロータリーシール23で密封され、外部から不活性ガスを供給可能にガス管24と連通されている。ここで不活性ガスとは、高温環境下で溶融金属と化学的な反応を起こしにくいガスであって、たとえば、アルゴンガス、窒素ガス等のガスを任意に選択可能に形成されている。
一方、駆動シャフト18の先端部18bにはフランジ状の連結具26,26が連接されている。当該連結具26,26を介して、駆動シャフト18と一体回転するように回転体11が取り付けられてる。
【0015】
回転体11は、図1及び図2に示すように、シャフト30と、当該シャフト30の先端に設けたロータ31からなる。
シャフト30は、駆動シャフト18のガス供給路19と連通可能なガス通路32が、シャフト30の基端から先端までシャフト30の軸に沿って形成されている。シャフト30の基端は駆動シャフト18に連結具26,26を介して連結可能に形成されている。これによって、シャフト30を駆動シャフト18に連結したとき、ガス通路32とガス供給路19は連通され、シャフト30の先端まで不活性ガスを送ることができる。
ロータ31は、図1及び図3に示すように、シャフト30と一体不可分に形成されており、ガス供給路32に連通するガス拡散路33を有している。ガス拡散路33はガス供給路32を中心にロータ31周縁に向かって放射状に広がるように形成されている。これによって、ガス供給路33を通った不活性ガスは、ガス拡散路33先端から放射状に放出される。これによって、ロータ31の周縁から溶融金属内に不活性ガスを万遍なく送り込むことができ、さらに回転体11を回転させたとき、当該回転体11は、ガス拡散路33から溶融金属内へ渦を巻くように不活性ガスを放出することができる。そして、ロータ31が溶融金属内を撹拌することによって、溶融金属内へ万遍なく放出された不活性ガスを微細気泡化することができる。
【0016】
ここで、回転体11は、次に示すように形成される。
回転体11は、少なくとも黒鉛質とセラミック質を含んだ粉粒体状の耐火物からなる。
耐火物は、黒鉛質及びセラミックス質、並びにガラス質を含んでいる。これら成分を所定の構成比率に調整することによって、素材強度を上げて、耐熱衝撃性、耐酸化性に優れた回転体11が形成されている。
【0017】
黒鉛質は、20%〜40%の構成比率で含まれている。これによって、熱衝撃による損傷を抑えることができる。なお、20%よりも少ない場合、回転体11は、耐熱衝撃性が弱くなり、高温の溶融金属によって破損するおそれが生じる。一方、40%よりも多くなると回転体11は、耐酸化性が低くなり、溶融金属の撹拌中に酸化を原因とする劣化損耗から破損するおそれが生じる。
【0018】
セラミックス質は、40%〜60%の構成比率で含まれている。なお、セラミックス質に含まれるセラミックス成分は、回転体11の強度或いは耐熱性をより一層高めるために任意に選択、混合可能である。当該セラミックス成分は、炭化ケイ素(SiC)を主とすることが好ましいが、その他にも、たとえば、アルミナ、ジルコニアのようなセラミックス成分が含まれていても良い。セラミックス質が40%よりも少ない場合、回転体11は、強度が弱くなり、使用中に破損するおそれが生じる。一方、60%よりも多い場合、回転体11の強度を強くすることができるが、耐熱衝撃性が弱くなり、高温の溶融金属によって破損するおそれが生じる。
【0019】
ガラス質は、5%〜20%の構成比率で含まれている。これによって、黒鉛質の酸化を抑えることができる。なお、5%よりも少ない場合、十分に酸化を抑えることができないので、回転体11の耐酸化性が低くなり、使用中に酸化を原因とする劣化損耗から破損するおそれが生じる。一方、20%よりも多い場合、回転体11の酸化は抑えられるが、強度が低くなるおそれがある。
【0020】
上記のように、所定の構成比率で混合された粉粒体状の耐火物は、シャフト30とロータ31を一体不可分に成形可能な回転体用成形型に充填される。成形型は、冷間静水圧プレス法(CIP、Cold Isostatic Pressing)によって、圧縮成形される。
冷間静水圧プレス(CIP)法は、粉粒体状の耐火物が充填されたゴム製成形型を脱気密封して、当該成形型を液体で満たされた圧力容器に入れて液体を加圧して成形型を圧縮成形する方法である。これによって、成形型内に充填された耐火物は、シャフト30とロータ31が一体不可分となるように形成された回転体11へ成形される。さらに、成形された回転体を焼成することによって、回転体11は完成する。なお、焼成前又は焼成後にシャフト30又はロータ31の余剰部分を削って高精度な回転体11にする加工を施すようにしても良い。
また、本実施例において、回転体11は冷間静水圧プレス(CIP)法による圧縮成型によって形成するとしたが、当該回転体11を成形する方法はこれに限定されるものでは無く、粉粒体状の耐火物を圧縮成型した後、焼成して回転体11を形成可能な方法であれば良く、特に、成形型に均一な圧力を印加して高密度な成形体を得ることができる成形方法が好ましい。
冷間静水圧プレス(CIP)法によって回転体11を形成することによって、耐火物ブロックから切り出したり、或いは削り出す場合と異なり、原材料となる耐火物の廃棄量を抑えることができ、必要十分な量で製造することができるので、製造コストを抑えることができる。
また、上記したように回転体11には硬質化させるセラミックス成分が含まれている。冷間静水圧プレス(CIP)法によれば、圧縮成型で大まかな形の回転体11を形成することができるので、当該回転体11の精度を出す加工も、たとえば、回転体11のバリを削り取ったり、寸法の狂いを微調整する等といった必要最小限の加工で良い。これによって、回転体11の加工を容易に行い、加工時間を短くして、製造工程を簡略化することができる。
【0021】
上記のように構成された回転体11は、図1に示すように、駆動シャフト18と回転体11のシャフト30が、連結具26,26によって接続される。これによって、駆動シャフト18に形成されたガス供給路19と、シャフト内のガス通路32は連通される。ガス供給路19の他端に配されたガス供給口22には、ガス管24を介して不活性ガスで満たされたガスボンベ等を備えたガス供給装置(図示略)が接続される。また、シャフト30と一体不可分に形成されたロータ31は、ガス通路32に連通したガス拡散路33を有している。
【0022】
図1に示すように、ロータ31が撹拌槽50内の所定の深さに位置するように、回転体11は、撹拌槽50に設置される。
撹拌槽50に、所定量の溶融金属を流し込んだ後、駆動モータ13を作動させるとベルト20を介して駆動シャフト18が回動し、回転体11が回動される。
当該回転体11は、ロータ31が溶融金属を撹拌するように回動する。当該回転体11を回転させながら、不活性ガスをガス供給口22に注入すると、当該不活性ガスは、ガス供給路19、ガス通路32、ガス拡散路33を通じて、ロータ31の周縁から放射状に放出される。ロータ31の回転によって放出された不活性ガスは、溶融金属内に拡散され、さらにロータ31の撹拌によって微細気泡化する。この微細気泡化した不活性ガスは、溶融金属中に含まれている水素や非金属酸化物等の不純物を取り込み又は当該不純物に付着して溶融金属の表面に浮上するので、これを処理することによって、溶融金属内の不純物を除去することができる。
【0023】
本実施例に係る脱ガス用回転体11によれば、シャフト30とロータ31を一体不可分に形成するようにした。これによって、溶融金属中のロータ31を正逆両方向に回動させた場合であっても、たとえば従来のシャフト101にロータ102を螺合しているタイプの回転体100のように、逆方向に回動させたときにロータ31が緩むおそれもなく、また正逆方向の急反転を伴う回動を繰り返し行った場合であっても、ロータ31の回動に伴う振動によってシャフト30からロータ31が脱落したり、嵌合部が緩むこともないので、ロータ31が設けられているシャフト30先端の損耗を防ぎ、耐久性を上げることができる。
【0024】
また、シャフト30とロータ31を一体不可分に形成した本実施例に係る回転体11と、従来のシャフト101とロータ102が別体である回転体100と比較すると、まず、本実施例に係る回転体11は、シャフト30先端のロータ31嵌合部が無いため、当該ロータ31嵌合部に溶融金属が浸透することが無い。そのため、ロータ31が設けられているシャフト30先端の損耗を防ぎ、ロータ31のガタツキも無く、回転体11が破損することを防止することができる。
次に、従来の回転体100であればロータ102嵌合部を保護するため、耐火物で後から補強することが行われている。一方、本実施例に係る回転体11によれば、そのような補強のみを目的とした耐火物は不要である。
さらに、従来の回転体100であれば、シャフト101とロータ102の焼成変形によって、シャフト101にロータ102が組み付けられなくなる嵌め合わせの問題が生じるおそれがあるが、本実施例に係る回転体11によれば、そのような嵌め合わせの問題は起こりえない。そのため、回転体11の不良品発生率を抑えることができる。
そして、本実施例に係る脱ガス用回転体11によれば、回転体11の損耗を防ぐことができ、当該損耗に伴って回転体11を構成する耐火物の塵芥が不純物として溶融金属に混入することを防止することができるので、混入物が非常に少ない、より一層高純度な金属を得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
10…回転脱ガス装置、
11…回転体、12…駆動部、
13…駆動モータ、14…ベース、
15…ベースフレーム、16…支持脚、17…軸受、18…駆動シャフト、18a…駆動シャフトの基端、18a…駆動シャフトの先端、19…ガス供給路、20…ベルト、21…制御装置、22…ガス供給口、23…ロータリーシール、24…ガス管、
30…シャフト、31…ロータ、32…ガス通路、33…ガス拡散路、
50…撹拌槽、51…蓋、51a…孔部。
図1
図2
図3
図4