特許第6771777号(P6771777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771777扉錠の空圧による扉錠遠隔操作用サムターン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771777
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】扉錠の空圧による扉錠遠隔操作用サムターン装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 51/02 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   E05B51/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-80704(P2018-80704)
(22)【出願日】2018年4月19日
(65)【公開番号】特開2019-190043(P2019-190043A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130433
【氏名又は名称】株式会社ゴール
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田村 孝榮
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸正
(72)【発明者】
【氏名】村方 洋二郎
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−063529(JP,A)
【文献】 特開平10−299307(JP,A)
【文献】 特開2003−293635(JP,A)
【文献】 特開2007−070928(JP,A)
【文献】 米国特許第04169616(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の開閉状態の変化を感知して扉錠の施解錠を空圧によって遠隔操作可能な扉錠遠隔操作用サムターン装置であって、
前記空圧を発生させる空圧源が空圧スイッチの入力ポート、及び切替バルブの入力ポートに並列に接続され、
前記空圧スイッチの出力が前記切替バルブのパイロットポートに接続され、
前記切替バルブの出力ポートが、空圧シリンダーの入力ポートに接続され、
前記空圧シリンダーが、サムターン摘みに連結されてなるサムターン軸と接続され、
前記扉の開閉状態の変化を感知した前記空圧スイッチからの制御空圧の変化が、前記切替バルブの出力ポートを切り替えると共に、前記切替バルブから出力された駆動空圧が前記空圧シリンダーを駆動させ、
前記サムターン軸は、前記空圧シリンダーの駆動によって軸回転すると共に、当該軸回転された状態から、前記サムターン摘みを手動で回転させることによって、前記空圧シリンダーにかかる応力に抗して反転可能に構成されてなる
ことを特徴とする扉錠遠隔操作用サムターン装置。
【請求項2】
前記空圧スイッチが感圧レバーを備え、
前記空圧スイッチが、前記感圧レバーが前記扉の戸枠との当接によって受ける圧力によって前記扉の開閉状態を感知する
ことを特徴とする請求項1に記載の扉錠遠隔操作用サムターン装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記扉錠遠隔操作用サムターン装置が前記扉の戸板の外面に取り付けられ、
前記サムターン軸が、前記戸板内に設けられてなる錠ケースの軸受に接続され、
前記サムターン軸の軸回転によって、前記軸受を介して前記錠ケースから錠杆が出没する
ことを特徴とする遠隔操作錠。
【請求項4】
一つの部屋に設けられてなる複数の扉と、
前記複数の扉のそれぞれに対応して設置されてなる遠隔操作錠の施錠状態と解錠状態とを空圧によって制御する空圧回路と、を備え、
前記空圧回路は、前記各遠隔操作錠に対応する一組の空圧スイッチ、切替バルブ、空圧シリンダー、及びサムターン摘みを備えたサムターン軸によって構成されてなる制御ユニットを複数備え、
前記空圧を発生させる空圧源が前記複数の空圧スイッチの入力ポート、及び前記複数の切替バルブの入力ポートに並列に接続され、
一の扉に対応する一の制御ユニットに属する空圧スイッチの出力が、他の制御ユニットに属する全ての切替バルブのパイロットポートに接続され、
前記切替バルブの出力ポートは、対応する制御ユニットに属する空圧シリンダーの入力ポートに接続され、
前記空圧シリンダーは、対応する制御ユニットに属するサムターン軸と接続され、
前記サムターン軸は、対応する制御ユニットに属する遠隔操作錠の軸受に戸板の外面から着脱可能に接続され、
前記一の扉の開閉状態の変化を感知した前記一の制御ユニットに属する空圧スイッチからの制御空圧の変化が、他の制御ユニットに属する全ての切替バルブの出力ポートを切り替えると共に、当該切替バルブから出力された駆動空圧が対応する制御ユニットに属する空圧シリンダーを駆動させ、
前記他の制御ユニットに属する全てのサムターン軸は、前記空圧シリンダーの駆動によって軸回転して前記軸受を介して対応する制御ユニットに属する遠隔操作錠を施錠状態とすると共に、前記一の制御ユニットに属する遠隔操作錠の解錠状態を保持し、
前記施錠状態の遠隔操作錠は、前記サムターン摘みを手動で回転させることによって、前記サムターン軸を前記空圧シリンダーにかかる応力に抗して反転させて解錠状態とすることが可能に構成されてなる
ことを特徴とする遠隔操作錠の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉錠を空圧によって遠隔操作することができる扉錠遠隔操作用サムターン装置、及びこれを用いた遠隔操作錠、並びに遠隔操作錠の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインターロックシステムにおいては、各扉の錠として電気錠が一般に用いられ、これらの電気錠を電気的に制御する方式が用いられている。しかしながら、可燃ガスや高濃度酸素などの危険物を取り扱う実験室などにおいては、ソレノイドやモータを駆動源とする電気錠を使用した場合、接点火花の発生やコイル加熱などによって発火や爆発を引き起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−299307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の遠隔操作機能のない扉錠や、遠隔操作可能であっても電気によって遠隔操作を行う扉錠の機構を変更し、発火や爆発を引き起こす恐れのない空気の空圧によって遠隔操作できる扉錠に置き換えることは困難であった。また、さらに非常時には扉を手動操作できる機構も設ける必要があることも重要な課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決する手段として本発明に係る扉錠遠隔操作用サムターン装置は、扉の開閉状態の変化を感知して扉錠の施解錠を空圧によって遠隔操作可能な扉錠遠隔操作用サムターン装置であって、前記空圧を発生させる空圧源が空圧スイッチの入力ポート、及び切替バルブの入力ポートに並列に接続され、前記空圧スイッチの出力が前記切替バルブのパイロットポートに接続され、前記切替バルブの出力ポートが、空圧シリンダーの入力ポートに接続され、前記空圧シリンダーが、サムターン摘みに連結されてなるサムターン軸と接続され、前記扉の開閉状態の変化を感知した前記空圧スイッチからの制御空圧の変化が、前記切替バルブの出力ポートを切り替えると共に、前記切替バルブから出力された駆動空圧が前記空圧シリンダーを駆動させ、前記サムターン軸は、前記空圧シリンダーの駆動によって軸回転すると共に、当該軸回転された状態から、前記サムターン摘みを手動で回転させることによって、前記空圧シリンダーにかかる応力に抗して反転可能に構成されてなることを特徴とする。
【0006】
また、前記空圧スイッチが感圧レバーを備え、前記空圧スイッチが、前記感圧レバーが前記扉の戸枠との当接によって受ける圧力によって前記扉の開閉状態を感知するものであっても好ましい。また、空圧スイッチが扉の開閉状態を感知する手段としては、前記感圧レバーに替えて、光センサー若しくは磁気センサー等のセンサーを用いることもできる。
【0007】
さらに、本発明に係る遠隔操作錠は、前記扉錠遠隔操作用サムターン装置が前記扉の戸板の外面に取り付けられ、前記サムターン軸が、前記戸板内に設けられてなる錠ケースの軸受に接続され、前記サムターン軸の軸回転によって、前記軸受を介して前記錠ケースから錠杆が出没することを特徴とする。
【0008】
さらにまた、前記扉錠遠隔操作用サムターン装置を用いた本発明に係る遠隔操作錠の制御システムは、一つの部屋に設けられてなる複数の扉と、前記複数の扉のそれぞれに対応して設置されてなる遠隔操作錠の施錠状態と解錠状態とを空圧によって制御する空圧回路を備え、前記空圧回路は、前記各遠隔操作錠に対応する一組の空圧スイッチ、切替バルブ、空圧シリンダー、及びサムターン摘みを備えたサムターン軸によって構成されてなる制御ユニットを複数備え、前記空圧を発生させる空圧源が前記複数の空圧スイッチの入力ポート、及び前記複数の切替バルブの入力ポートに並列に接続され、一の扉に対応する一の制御ユニットに属する空圧スイッチの出力が、他の制御ユニットに属する全ての切替バルブのパイロットポートに接続され、前記切替バルブの出力ポートは、対応する制御ユニットに属する空圧シリンダーの入力ポートに接続され、前記空圧シリンダーは、対応する制御ユニットに属するサムターン軸と接続され、前記サムターン軸は、対応する制御ユニットに属する遠隔操作錠の軸受に戸板の外面から着脱可能に接続され、前記一の扉の開閉状態の変化を感知した前記一の制御ユニットに属する空圧スイッチからの制御空圧の変化が、他の制御ユニットに属する全ての切替バルブの出力ポートを切り替えると共に、当該切替バルブから出力された駆動空圧が対応する制御ユニットに属する空圧シリンダーを駆動させ、前記他の制御ユニットに属する全てのサムターン軸は、前記空圧シリンダーの駆動によって軸回転して前記軸受を介して対応する制御ユニットに属する遠隔操作錠を施錠状態とすると共に、前記一の制御ユニットに属する遠隔操作錠の解錠状態を保持し、前記施錠状態の遠隔操作錠は、前記サムターン摘みを手動で回転させることによって、前記サムターン軸を前記空圧シリンダーにかかる応力に抗して反転させて解錠状態とすることが可能に構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の扉錠の戸板外面に設けられているサムターンに替えて、扉錠の構造を変更することなく空圧によって遠隔操作可能な扉錠に変更することができる。
【0010】
また、前記空圧スイッチが感圧レバーを備えることができることによって、引き戸の開閉状態をも簡易に感知して遠隔操作可能な扉錠遠隔操作用サムターン装置を実現することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る遠隔操作錠の制御システムは、空圧によって遠隔操作可能なインターロックを構成することができる。本発明によれば、一の部屋に設けられた複数の扉に取り付けられてなる従来のサムターンに替えて、扉錠の構造を変更することなく空圧によって遠隔操作可能なインターロックを実現することができる。
【0012】
さらにまた、本発明に係る扉錠遠隔操作用サムターン装置及び遠隔操作錠の制御システムによれば、従来のサムターンに替えて本発明を設置した場合にも、サムターン摘みを手動で回せばサムターン軸を回して扉錠を操作できるため、非常時にも扉を開いて確実に脱出できる安全性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】扉錠遠隔操作用サムターン装置1の空圧回路図を示す。
図2】空圧スイッチ5の閉弁状態と開弁状態の概要を示す。(a)は開弁状態を示し、(b)は閉弁状態を示す。
図3】サムターンケース20及び空圧スイッチ5が、引き戸を構成する扉15の戸先側縁端部の外面19に取り付けられた様子を示す横断面図である。
図4】本締錠22の内部構造を示す。
図5】一例として示した箱型のサムターンケース20を正面から見た縦断面図である。
図6】一例として示した箱型のサムターンケース20の左側壁を切除して左側面からみた様子を示す縦断面図である。
図7】扉錠遠隔操作用サムターン装置1を引き戸に適用した場合のサムターンケース20の外観を例示する図である。
図8】一つの部屋Lに設けられてなる複数の扉151、152の配置の概要を、部屋Lの床面を正面とする平面図で表した図である。
図9】制御システム1Aの空圧回路図の例を示す。
図10】扉錠遠隔操作用サムターン装置1を開き戸に取り付けた場合の概略図を示す。
図11】切替バルブ6の機能を、異なる2つの切替バルブによって分担させた場合の空圧回路の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る扉錠遠隔操作用サムターン装置1の空圧回路図を示す。空圧回路2への空圧を発生させる空圧源3が、空圧源回路4を介して空圧スイッチ5の入力ポート5R、及び切替バルブ6の入力ポート6Rに並列に接続されてなる。
【0016】
空圧スイッチ5の出力ポート5Aは、制御空圧回路7を介して切替バルブ6のパイロットポート6PRに接続されてなる。また、切替バルブ6の出力ポート6Aaが、駆動空圧回路801を介して空圧シリンダー9の入力ポート9Rbに接続され、切替バルブ6の出力ポート6Abが、駆動空圧回路802を介して空圧シリンダー9の入力ポート9Raに接続されてなる。
【0017】
空圧シリンダー9はロッド10を突設してなり、駆動空圧を受けて空圧シリンダー9が駆動すると、ロッド10が軸方向に伸長する方向又は短縮する方向のいずれかに復動させることができる。ロッド10は、サムターン軸11と接続されてなる。空圧シリンダー9を駆動させるとロッド10の復動によってサムターン軸11を軸回転させることができる。サムターン軸11の先端部には図1の一点鎖線で示すサムターン摘み12が設けられてなり、サムターン摘み12を手動で回動させると、サムターン軸11を軸回転させることができる。
【0018】
また、本実施の形態において空圧スイッチ5は、図2に示すように、感圧レバー13を備えてなり、感圧レバー13がプランジャー14を押し込むと空圧スイッチ5の弁が閉じて出力ポート5Aから制御空圧回路7へ空圧が遮断される。感圧レバー13は、例えば、図3の横断面図には、空圧スイッチ5がサムターンケース20と共に扉15を構成する戸板16の縁部に取り付けられて、扉15が閉扉状態となっている状態を示す。図4によれば、戸枠17に当接した感圧レバー13が押圧力を受けることによりプランジャー14を押し込む。これにより、空圧スイッチ5は扉15の閉扉状態を感知すると共に、弁を閉弁させることができる。本実施例に係る空圧スイッチ5の閉弁状態と開弁状態の概要を図2(a)(b)に示す。
図3及び図1によれば、空圧スイッチ5の閉弁により、切替バルブ6の出力ポートが6Aaから6Abに切り替わる。これにより、駆動空圧回路801中の駆動空圧は切替バルブ6の排気ポートから排気される。そして、空圧シリンダー9の入力ポート9Raに入力された駆動空圧が空圧シリンダー9を駆動させてサムターン軸11を軸回転させる。鎌状錠杆26が回動しながら鎌部32を錠ケース23へ後退させると共に、戸枠17の受34からはずれ、本締錠22を解錠状態とする。なお、サムターンケース20とは戸板16の反対面に設けられたシリンダーSはキーを挿し込んで鎌状錠杆26を開閉操作することができる。
【0019】
従って、扉錠遠隔操作用サムターン装置1は、空圧スイッチ5を、感圧レバー13が扉15を構成する戸板16の戸先面18から突設するように設置すれば引き戸を遠隔操作することができる。また、扉錠遠隔操作用サムターン装置1は、空圧スイッチ5を、感圧レバー13が戸板16における部屋の内外空間に接する面(以下、外面19という。)から突設するように設置すれば開き戸を遠隔操作することができる。
【0020】
本実施の形態において、扉錠遠隔操作用サムターン装置1は、図1の二点鎖線で示すサムターンケース20及び制御盤21によって構成されてなる。サムターンケース20には空圧シリンダー9、サムターン軸11、及びサムターン摘み12、並びに空圧スイッチ5が設けられ、制御盤21には切替バルブ6が設けられてなる。
【0021】
サムターンケース20は、戸板16の外面19に取り付けることで、戸板16の内部に収容されてなる扉錠22を遠隔操作することができる。具体的には、サムターンケース20の内部に設けられてなるサムターン軸11を、戸板16の外面19に設けられた軸孔から挿し入れて、扉錠22の軸受24に連結させると共に、サムターンケースを戸板16の外面19に取り付ける。なお、サムターンケース20は、戸板16の外面19に対して着脱可能に取付けることができる。
【0022】
図4には、扉錠遠隔操作用サムターン装置1によって遠隔操作される扉錠22の具体例として本締錠22を挙げ、本締錠22の内部構造の例を示す。本締錠22は、錠ケース23の内部に軸受24、中継ギア25、及び鎌状錠杆26が互いに連動可能に連結されてなる。サムターン軸11を、軸受24の穴に挿し入れて連結することで、空圧シリンダー9の駆動によって回転したサムターン軸11に合わせて軸受24を回動させることができる。
【0023】
軸受24の周面には軸受ギア27が形成されてなり、中継ギア25と係合されてなる。中継ギア25の歯車面に対する反対側部分には錠ケース23の奥行方向に延出されてなるピン28が形成されてなる。当該ピン28は、鎌状錠杆26の基端部分に形成された長孔29に嵌め込まれてなり、長孔29の内面において摺動することができる。
【0024】
次に扉錠遠隔操作用サムターン装置1の動作について説明する。感圧レバー13が押圧力から解放されている場合、プランジャー14から離間しており、空圧スイッチ5が開弁しているので、制御空圧回路7には空圧がかかっている。そのため、切替バルブ6の入力ポート6Rに入力された空圧は、出力ポート6Aaから駆動空圧回路801に駆動空圧として出力されず、出力ポート6Abから駆動空圧回路802に出力される。当該駆動空圧は、空圧シリンダー9の入力ポート9Raに入力されてロッド10が伸長しない状態に保持される。
【0025】
一方、感圧レバー13が押圧力を受けて空圧スイッチ5を閉弁させることにより、制御空圧回路7への制御空圧が変化して切替バルブ6のパイロットポート6PRに作用し、切替バルブ6の出力ポートを6Abから6Aaに切り替える。そのため、切替バルブ6の入力ポート6Rに入力された駆動空圧は、出力ポート6Aaから駆動空圧回路801に出力されて駆動空圧が空圧シリンダー9の入力ポート9Rbに入力される。
【0026】
切替バルブ6の出力ポートが6Abから6Aaに切り替わったことにより、駆動空圧回路802中の駆動空圧は切替バルブ6の排気ポートから排気される。そして、空圧シリンダー9の入力ポート9Rbに入力された駆動空圧が空圧シリンダー9を駆動させてロッド10を伸長させることにより、サムターン軸11を軸回転させる。
【0027】
当該サムターン軸11の軸回転による本締錠22の動作の例を以下に示す。サムターン軸11が軸回転すると共に軸受24も軸回転する。これにより、軸受ギア27を図4(a)に示す下向きの状態から時計回り方向へ軸回転させることによって中継ギア25が軸30を中心として反時計回りに軸回転する。さらに、中継ギア25の回転動作によってピン28が長孔29において戸尻方向へ移動する。ピン28の戸尻方向への応力によって、鎌状錠杆26が軸31を中心として回動しながら鎌部32を錠杆穴33から突出させると共に、戸枠17の受34に挿し入れて、本締錠22を施錠状態とする。
【0028】
そして、本締錠22が施錠状態において、サムターン摘み12を摘んで手動で回転させることにより、空圧シリンダー9にかかる応力に抗してサムターン軸11を反対方向に軸回転、即ち反転させることができる。これにより、本締錠22を手動で操作して解錠状態とすることができるため、非常時にも扉15を開いて確実に脱出できる安全性を具備させることができる。
【0029】
本発明に係る扉錠遠隔操作用サムターン装置1の具体的な構造の例について、説明する。
【0030】
図5は、箱型のサムターンケース20を正面から見た縦断面図である。サムターンケース20の中央上部に空圧シリンダー9が取り付けられてなる。空圧シリンダー9の垂直下方には、歯車11aが設けられてなる。サムターン軸11は、サムターンケース20の背面から正面方向に向かって歯車11a及びサムターンケース20の正面を貫通してなり、サムターンケース20の正面から突出したサムターン軸11の先端部にはサムターン摘み12が取り付けられてなる。
【0031】
この例においては、空圧シリンダー9の下方から突出してなるロッド10には、L字を上下反転させた駆動板体10aが下方に向かって延出するように取り付けられてなる。駆動板体10aは、ロッド10の復動と共に上下に往復する。駆動板体10aの下方に伸びた部分には一定の間隔を空けて係合穴hが形成されてなり、係合穴hは歯車11aと噛み合わされてなる。これにより、空圧シリンダー9への駆動空圧の入力により復動するロッド10の動きに合わせて歯車11aを時計回り又は反時計回りに回動させると共に、サムターン軸11を軸回転させることができる。
【0032】
空圧シリンダー9の左側には、空圧スイッチ5が設けられてなる。角板35は、サムターンケース20の左辺から出没可能に枢着されてなり、サムターンケース20の左辺に戸枠17が押当てられると感圧レバー13を押し込みながらプランジャー14を押し込んで空圧スイッチの弁の開閉を操作できる。
【0033】
空圧スイッチ5の下端に設けられた入力ポート5Rには空圧源回路4を構成する空気チューブが接続され、一方の出力ポート5Aには制御空圧回路7を構成する空気チューブが接続されて、いずれもサムターンケース20の背面から外部へ引き出されてなる。
【0034】
空圧シリンダー9の右側には、駆動空圧回路8を構成する2本の空気チューブがサムターンケース20の背面から引き込まれ、それぞれの先端は、空圧シリンダー9の入力ポート9Raと9Rbに個別に接続されてなる。駆動空圧回路8を構成する2本の空気チューブは、サムターンケース20の外部において、図示しない制御盤21まで引き回されて、切替バルブ6の出力ポートに接続されて空圧回路2を構成する。
【0035】
図6は、上述の例に係るサムターンケース20の左側壁を切除して左側面からみた様子を示す縦断面図である。
【0036】
サムターンケース20の表面には、サムターン摘み12の周囲に防護ケース36が取り付けられてなる。防護ケース36は、手動によるサムターン軸11の回動を非常時にのみ許可させることができる。なお、防護ケース36は非常時には容易に除去できるようにサムターンケース20に取り付けられてなる。
【0037】
サムターン軸11は、サムターンケース20の背板から後方へ突出して、前記軸受24の穴に挿し入れて連結可能に設けられてなる。軸受24の穴に連結されたサムターン軸11は、空圧シリンダー9の駆動によって回転する歯車11aと共に軸回転し、軸受24を回動させることができる。
【0038】
扉錠遠隔操作用サムターン装置1を引き戸に適用した場合のサムターンケース20の外観の例を図7に示す。本締錠22の従来のサムターンを取り付ける位置にサムターン軸11を合わせて戸板16の外面19にサムターンケース20が取り付けられてなる。サムターンケース20の戸先面18から突出している角板35は、感圧レバー13の外表面を被覆してなるもので、感圧レバー13よりも戸先面18からの突出量を増加させて空圧スイッチ5の感度を向上させることができる。
【0039】
ここで、上記扉錠遠隔操作用サムターン装置1の動作の特性は、インターロックの遠隔操作に適していることから、次に扉錠遠隔操作用サムターン装置1を用いてインターロックを制御する遠隔操作錠の制御システム1Aについて詳しく説明する。
【0040】
図8は、一つの部屋Lに設けられてなる複数の扉151、152の配置の概要を、部屋Lの床面を正面とする平面図で表した図である。図8によれば、四方に壁を有する部屋Lの内の向かい合う二面の壁にそれぞれ扉151、152が配置されてなる。扉151、152は図8中の矢印A方向に開扉することができる引き戸である。扉151の外面191にはサムターンケース201が取り付けられ、扉152の外面192にはサムターンケース202が取り付けられてなる。サムターンケース201の内部には、空圧スイッチ51及び空圧シリンダー91が設置されてなり、サムターンケース202の内部には、空圧スイッチ52及び空圧シリンダー92が設置されてなる。また、扉151、152の内部には制御システム1Aによって遠隔操作される本締錠221、222がそれぞれ収容されてなる。なお、以後の説明において本締錠221、222は、図4で示した本締錠22と同一の構造とする。
【0041】
空圧シリンダー91、92へそれぞれ駆動空圧を入力させる切替バルブ61、62は、制御盤21にまとめて部屋Lの外部に設置してもよい。制御システム1Aの構成部品をできるだけ部屋Lの外部へ設置することで保守管理を容易とすることができるからである。また、電気による発火リスクを避けるため、空圧源3となるポンプも部屋Lから離れた場所に設置することが好ましい。
【0042】
図9には、制御システム1Aの空圧回路図の例を示す。空圧回路2Aへの空圧を発生させる空圧源3が、空圧源回路4Aを介して空圧スイッチ51、52の入力ポート51R、52R、及び切替バルブ61、62の入力ポート61R、62Rに並列に接続されてなる。
【0043】
空圧スイッチ51の出力ポート51Aは、制御空圧回路701を介して切替バルブ62のパイロットポート62PRに接続されてなる。また、切替バルブ62の出力ポート62Aaが、駆動空圧回路805を介して空圧シリンダー92の入力ポート92Rbに接続され、切替バルブ62の出力ポート62Abが、駆動空圧回路806を介して空圧シリンダー92の入力ポート92Raに接続されてなる。
【0044】
空圧シリンダー92はロッド102を突設してなり、駆動空圧を受けて空圧シリンダー92が駆動すると、ロッド102が軸方向に伸長する方向又は短縮する方向のいずれかに復動させることができる。ロッド102は、サムターン軸112と接続されてなる。空圧シリンダー92を駆動させるとロッド102の復動によってサムターン軸112を軸回転させることができる。サムターン軸112の先端部には図9の一点鎖線で示すサムターン摘み122が設けられてなり、サムターン摘み122を手動で回動させると、サムターン軸112を軸回転させることができる。
【0045】
一方、空圧スイッチ52の出力ポート52Aは、制御空圧回路702を介して切替バルブ61のパイロットポート61PRに接続されてなる。また、切替バルブ61の出力ポート61Aaが、駆動空圧回路803を介して空圧シリンダー91の入力ポート91Rbに接続され、切替バルブ61の出力ポート61Abが、駆動空圧回路804を介して空圧シリンダー91の入力ポート91Raに接続されてなる。
【0046】
空圧シリンダー91はロッド101を突設してなり、駆動空圧を受けて空圧シリンダー91が駆動すると、ロッド101が軸方向に伸長する方向又は短縮する方向のいずれかに復動させることができる。ロッド101は、サムターン軸111と接続されてなる。空圧シリンダー91を駆動させるとロッド101の復動によってサムターン軸111を軸回転させることができる。サムターン軸111の先端部には図9の一点鎖線で示すサムターン摘み121が設けられてなり、サムターン摘み121を手動で回動させると、サムターン軸111を軸回転させることができる。
【0047】
ここで、本締錠221に対応する一組の空圧スイッチ51、切替バルブ61、空圧シリンダー91、及びサムターン摘み121を備えたサムターン軸111は制御ユニット501に属し、また、本締錠222に対応する一組の空圧スイッチ52、切替バルブ62、空圧シリンダー92、及びサムターン摘み122を備えたサムターン軸112は制御ユニット502に属する。空圧回路2Aは、制御ユニット501及び制御ユニット502によって構成されてなる。
【0048】
サムターンケース201の内部に設けられてなるサムターン軸111は、戸板161の外面191に設けられた軸孔から挿し入れて、本締錠221の軸受24に連結させる。また、サムターンケース202の内部に設けられてなるサムターン軸112は、戸板162の外面192に設けられた軸孔から挿し入れて、本締錠222の軸受24に連結させる。本締錠221が解錠状態である場合に、空圧シリンダー91が駆動されると、サムターン軸111の軸回転を受けて、本締錠221は図4(b)と同様の施錠状態となる。また、本締錠222が解錠状態である場合に、空圧シリンダー92が駆動されると、サムターン軸112の軸回転を受けて、本締錠222も図4(b)と同様の施錠状態となる。
【0049】
次に制御システム1Aの動作を、図8に示される部屋Lに設けられたインターロック及び図9の空圧回路2Aに基づいて説明する。
【0050】
部屋Lにおいて、扉151及び扉152のいずれも閉扉状態である場合には、本締錠221、222の両方が解錠状態(図4(a)の状態)であり、入室者はいずれの扉からでも部屋Lに入室することができる。
【0051】
このとき、空圧源回路4Aを介して空圧スイッチ51、52の入力ポート51R、52Rには空圧源3からの空圧がかかっている。そして、感圧レバー131、132は、それぞれ戸枠171、172に押当てられて押圧力を受けることによってプランジャー141、142を押し込み、図2(b)に示すように、空圧スイッチ51、52のいずれもが閉弁されてなる。
【0052】
すなわち、扉151及び扉152のいずれも閉扉状態である場合には、制御空圧回路701、702を介してパイロットポート61PR、62PRのいずれにも制御空圧がかかっていない。そして、切替バルブ61、62に入力された空圧源からの駆動空圧は、出力ポート61Ab、62Abから出力され、駆動空圧回路804、806を介して空圧シリンダー91の入力ポート91Ra及び空圧シリンダー92の入力ポート92Raに入力された状態である。なお、このときロッド101及びロッド102はいずれも短縮状態である。
【0053】
ここで、部屋Lに入室した入室者が、一方の扉、例えば扉151を開くと、感圧レバー131への押圧力が解放されて空圧スイッチ51は扉151の開扉状態を感知して開弁する。そして、パイロットポート62PRへの制御空圧がかかることにより、切替バルブ62から駆動空圧が出力される出力ポートが62Abに切り替わる。このとき、駆動空圧回路805にかかっていた駆動空圧は切替バルブ62から解放されると共に、駆動空圧回路806を介して空圧シリンダー92の入力ポート92Rbに駆動空圧が入力される。
【0054】
そうすると、空圧シリンダー92が駆動され、ロッド102が短縮状態から伸長状態へ変化することにより、サムターン軸112の軸回転を受けて、本締錠222が施錠状態となる。一方、扉152は閉扉状態のままであるため、開かれた扉151に設けられた本締錠221の解錠状態は変化がなく保持される。
【0055】
そのため、入室者は開かれた扉151から部屋Lを出ていくことができる。また、扉151が開扉状態である間は、扉152は本締錠222によって施錠されているため、開扉されることはなく、扉151、152の両方が同時に開くことがない。
【0056】
そして、本締錠222が施錠状態において、サムターン摘み122を摘んで手動で回転させることにより、空圧シリンダー92にかかる応力に抗してサムターン軸112を反対方向に軸回転、即ち反転させることができる。これにより、本締錠222を手動で操作して解錠状態とすることができるため、部屋Lへ入室した入室者が、非常時に扉151を開いた状態のままで扉152を開かなければならない場合が生じたときにも扉152を手動で開扉させることができる。
【0057】
以上より、制御システム1Aによって、本締錠221、222を、インターロックとして遠隔制御することができる。
【0058】
なお、部屋Lに扉が3以上設けられてなる場合には、空圧スイッチ51、52・・・の出力ポートは、それぞれの空圧スイッチが属する制御ユニットを含まなに他の全ての制御ユニットに属する切替バルブのパイロットポートと制御回路を介して並列に接続されることで、各扉に設けられた扉錠をインターロックとして制御することができる。
【0059】
また、図10には、扉錠遠隔操作用サムターン装置1を開き戸に取り付けた場合の概略図を示す。図10によれば、空圧スイッチ5は、サムターンケース20とは離間した戸板16の上端部に取り付けられてなる。感圧レバー13が戸板16の外面19から突設するように設置し、扉15を閉扉した際に、戸枠17によって感圧レバー13が正面から押し込まれるように配置すれば、引き戸の場合と同様に開き戸に設けられた扉錠22を遠隔操作することができる。
【0060】
また、図10において、扉錠遠隔操作用サムターン装置1を用いて制御システム1Aと同様の構成を実現させる場合には、図10における空圧スイッチ5の出力ポート5Aを扉15が属する制御ユニット以外の他の全ての制御ユニットに属する切替バルブのパイロットポートと制御回路を介して並列に接続されることで、各扉に設けられた扉錠をインターロックとして制御することができる。
【0061】
さらに、図1において扉錠遠隔操作用サムターン装置1に含まれる切替バルブ6は1つで記載されているが、出力ポート6Aaと6Abの役割を果たす出力ポートを、異なる2つの切替バルブによって分担させてもよい。具体的には図11に示すように、切替バルブ63、64の入力ポート63R、64Rを空圧源回路4で並列に接続する。そして、切替バルブ63の出力ポート63Aを空圧シリンダー9の入力ポート9Raに接続し、切替バルブ64の出力ポート64Aを空圧シリンダー9の入力ポート9Rbに接続すればよい。ただし、空圧スイッチ5の出力ポート5Aから、Y字接手37を介して切替バルブ63のパイロットポート63PRと切替バルブ64のパイロットポート64PRとが並列に接続されるため、切替バルブ63はノーマルオープンタイプであり、切替バルブ64はノーマルクローズタイプとすることに留意する。また、切替バルブのタイプは逆の関係としてもよい。これにより、空圧スイッチからの制御空圧の変化によって、駆動空圧の出力ポートを出力ポート63Aと64Aとの間で切り替えることができるからである。また、この構成であっても制御システム1Aと同様の配置を行うことで、インターロック制御を行うことができる。
【0062】
なお、図1において、切替バルブ6の出力ポート6Aa、6Abから接続される空圧シリンダー9の入力ポートを入れ替えれば、感圧レバー13の動作に対して、サムターン軸11の回転方向を逆にすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 扉錠遠隔操作用サムターン装置
2 空圧回路
3 空圧源
5 空圧スイッチ
6 切替バルブ
7 制御空圧回路
801、802 駆動空圧回路
9 空圧シリンダー
11 サムターン軸
12 サムターン摘み
13 感圧レバー
15 扉
22 扉錠
24 軸受
26 鎌状錠杆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11