(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、高速で駆動させることができるとともに、被加工物をワークテーブルの決められた位置に正確に載置することができるワーク搬送装置およびそのワーク搬送装置を備える工作機械を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るワーク搬送装置の特徴は、被加工物が載置されるワークテーブルと、前記ワークテーブルを支持するベッドと、前記被加工物を加工する加工工具を回転駆動可能に保持する主軸を有する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを支持するコラムと、前記加工ヘッドの上下方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に対して直交する一つの方向をX軸方向とし、前記Z軸方向および前記X軸方向の両方に対して直交する方向をY軸方向としたとき、前記加工ヘッドを前記X軸方向へ往復移動させるX軸方向移動機構とを備える工作機械に用いられる、ワーク搬送装置であって、前記ベッドおよび前記コラムの少なくとも一方に固定される基部と、前記基部に前記X軸方向へ往復移動可能に設けられた可動部と、前記可動部に設けられ、前記被加工物を離脱可能に保持するワーク保持部と、前記可動部と前記加工ヘッドとを切り離し可能に連結する連結部とを備えることにある。
【0007】
工作機械のベッドは、ワークテーブルを支持するために高強度で構成されており、工作機械のコラムは、加工ヘッドを支持するために高強度で構成されている。上記の構成によれば、基部が、高強度で構成されたベッドおよびコラムの少なくとも一方に固定されるので、基部を安定して固定することができる。したがって、基部に設けられた可動部の動作を安定させることができ、可動部を高速で駆動させることができる。また、基部および可動部の撓みや振動を抑制でき、被加工物をワークテーブルの決められた位置に正確に載置することができる。
【0008】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記基部は、前記ベッドおよび前記コラムの両方に固定されることにある。
【0009】
この構成によれば、基部がベッドおよびコラムの両方に固定されるので、これらのうちの一方にだけ固定される場合と比べて、基部をより安定して固定することができ、可動部の動作をより安定させることができる。
【0010】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記基部は、前記可動部を前記X軸方向へ往復移動可能に支持する支持部と、前記X軸方向に間隔を隔てて前記Z軸方向に延びて設けられた2つの支柱とを有しており、2つの前記支柱のそれぞれの下端部が前記ベッドに接続されており、2つの前記支柱のそれぞれの前記下端部よりも上方の部分が前記支持部に接続されていることにある。
【0011】
この構成によれば、X軸方向に間隔を隔ててZ軸方向に延びて設けられた2つの支柱で、支持部および可動部を安定して支持することができる。また、2つの支柱の間に確保された空間を通して、ワークテーブル等の保守点検を容易に行うことができる。
【0012】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記基部は、前記X軸方向に間隔を隔てて前記Y軸方向に延びて設けられた2つの固定アームを有しており、2つの前記固定アームのそれぞれの一方端部が前記支柱または前記支持部に接続されており、他方端部が前記コラムに接続されていることにある。
【0013】
この構成によれば、X軸方向に間隔を隔ててY軸方向に延びて設けられた2つの固定アームで、支持部および可動部をより安定して支持することができる。また、2つの固定アームの間に確保された空間を通して、加工ヘッドの保守点検を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記可動部は、前記連結部を介して前記加工ヘッドに連結される第1可動部と、前記ワーク保持部が設けられた第2可動部と、前記基部に前記X軸方向へ延びて設けられた第1ラックと、前記第2可動部に前記X軸方向へ延びて設けられた第2ラックと、前記第1可動部に設けられて前記第1ラックに噛み合わされた第1ピニオンと、前記第1可動部に設けられて前記第2ラックに噛み合わされ、前記第1ピニオンの回転に伴って回転される第2ピニオンとを有しており、前記第2ラックおよび前記第2ピニオンは、前記第1可動部が前記X軸方向へ移動されるときに、前記第2ラックが回転する前記第2ピニオンで押されて前記第1可動部と同じ方向へ移動されるように構成されていることにある。
【0015】
この構成によれば、加工ヘッドのX軸方向へ動く力が連結部を介して第1可動部に伝達されたときに、第1可動部および第2可動部が加工ヘッドと同じ方向へ移動される。このとき、第2ラックおよび第2可動部は回転する第2ピニオンで押されて第1可動部と同じ方向へさらに移動されるため、第2ラックおよび第2可動部の移動距離を第1可動部の移動距離よりも長くすることができる。
【0016】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記連結部は、前記加工ヘッドおよび前記可動部の一方に設けられた連結片と、前記加工ヘッドおよび前記可動部の他方に設けられ、前記連結片を前記X軸方向の両側から囲むように受け入れる受容部と、前記連結片および前記受容部の一方を前記Y軸方向に移動させて、前記連結片が前記受容部に受け入れられた連結状態と、前記連結片が前記受容部から引き出された連結解除状態とを切り換える連結操作部とを有することにある。
【0017】
この構成によれば、連結片および受容部の一方を連結操作部でY軸方向へ移動させるだけで、連結状態と連結解除状態とを簡単に切り換えることができる。
【0018】
本発明に係るワーク搬送装置の他の特徴は、前記連結部は、前記第1可動部に設けられた棒状の連結片と、前記加工ヘッドに設けられ、前記連結片の一方端部を前記X軸方向の両側から囲むように受け入れる第1受容部と、前記基部に設けられ、前記連結片の他方端部を前記X軸方向の両側から囲むように受け入れる第2受容部と、前記連結片を前記Y軸方向に移動させて、前記連結片の一方端部が前記第1受容部に受け入れられた連結状態と、前記連結片の一方端部が前記第1受容部から引き出され、かつ、前記連結片の他方端部が前記第2受容部に受け入れられた連結解除状態とを切り換える連結操作部とを有することにある。
【0019】
この構成によれば、連結片を連結操作部でY軸方向へ移動させるだけで、連結状態と連結解除状態とを簡単に切り換えることができる。また、連結解除状態では、連結片の他方端部が基部に設けられた第2受容部に受け入れられるので、被加工物を加工する際には、基部に対する第1可動部および第2可動部のX軸方向への移動を抑制できる。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械の特徴は、上記のいずれかのワーク搬送装置を備えることにある。
【0021】
この構成によれば、上記の各ワーク搬送装置の効果をそのまま得ることができる。
【0022】
本発明に係る工作機械の他の特徴は、前記加工ヘッドが移動可能な領域を加工ヘッド移動領域とし、前記ワーク保持部が移動可能な領域をワーク保持部移動領域としたとき、前記加工ヘッド移動領域の下方に位置する第1位置と前記ワーク保持部移動領域の下方に位置する第2位置との間で前記ワークテーブルをY軸方向へ往復移動させるY軸方向移動機構を備えることにある。
【0023】
この構成によれば、ワークテーブルを第1位置と第2位置との間で往復移動させることができるので、ワーク搬送装置で搬送されてきた被加工物を第2位置でワークテーブルに載置することができる。また、加工後の被加工物を第2位置においてワークテーブルからワーク搬送装置で搬出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るワーク搬送装置および工作機械の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械10の構成を示す斜視図である。
図2は、工作機械10の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
図3は、工作機械10からワーク搬送装置30を取り外した状態を示す斜視図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。
【0026】
(工作機械10の構成)
図1に示す工作機械10は、加工工具12をコンピュータ制御(NC制御)によって移動させながら被加工物Wに切削加工を施す機械装置であり、工作機械10の全体の基礎となるベッド14を備えている。ベッド14は、高い強度を確保できるように、鉄等の金属からなる鋳物材や鋼板材を組み合わせて台状に形成されている。
【0027】
また、
図1に示すように、工作機械10は、加工ヘッド16、コラム18、Z軸方向移動機構20、X軸方向移動機構22、ツールマガジン24、ワークテーブル26、Y軸方向移動機構28、ワーク搬送装置30および制御装置32を備えている。これらの各構成要素は、ベッド14によって支持されている。
【0028】
加工ヘッド16は、加工工具12を回転駆動可能に保持する主軸34と、主軸34を回転駆動させるための主軸駆動モータ36と、主軸34および主軸駆動モータ36を覆う金属板製の加工ヘッドカバー16aとを有している。加工工具12は、被加工物Wを切削加工するための刃物であり、具体的にはドリルやエンドミル等の切削工具である。なお、加工工具12は、被加工物Wに対して機械加工を行うことができればよく、レーザ光を出射して被加工物Wを切断、溶接、溶射、肉盛りまたは各種表面処理を行なうレーザ光出射ノズルなどで構成されていてもよい。
【0029】
コラム18は、加工ヘッド16を支持する柱状の部材であり、高い強度を確保できるように、鉄等の金属からなる鋳物材や鋼板材を組み合わせて形成されている。本実施形態のコラム18の骨格部分は、ベッド14の上面から起立した門型形状(図示省略)に形成されている。
【0030】
図1中の矢印で示すように、加工ヘッド16の上下方向(工作機械10の上下方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に対して直交する一つの方向(工作機械10の左右方向)をX軸方向とし、Z軸方向およびX軸方向の両方に対して直交する方向(工作機械10の前後方向)をY軸方向としたとき、コラム18は、加工ヘッド16をZ軸方向およびX軸方向のそれぞれへ往復移動可能な状態で支持するように構成されている。
【0031】
Z軸方向移動機構20は、加工ヘッド16における主軸34および主軸駆動モータ36をコラム18に対してZ軸方向へ往復移動させる機構であり、駆動力を発生させるZ軸駆動モータ38(
図2)と、ネジ送り機構(図示省略)と、リニアガイド(図示省略)とを備えている。すなわち、加工ヘッドカバー16aは、Z軸方向には不変である。X軸方向移動機構22は、加工ヘッド16をコラム18に対してX軸方向へ往復移動させる機構であり、駆動力を発生させるX軸駆動モータ40(
図2)と、ネジ送り機構(図示省略)と、リニアガイド(図示省略)とを備えている。Z軸方向移動機構20およびX軸方向移動機構22のそれぞれは、コラム18と加工ヘッド16との間に配置されている。
【0032】
ツールマガジン24は、被加工物Wに対する加工の種類に応じて準備された複数種類の加工工具12を保持するとともに、主軸34に対して加工工具12を提供する機械装置である。ツールマガジン24は、ワークテーブル26の後方におけるコラム18の内部に配置されている。
【0033】
ワークテーブル26は、被加工物Wが載置される板状の部材であり、鉄等の金属からなる鋳物材で構成されている。ワークテーブル26には、被加工物Wを固定するためのチャック装置(図示省略)が設けられている。ワークテーブル26は、ベッド14の上面に設けられたY軸方向移動機構28に取り付けられている。つまり、ワークテーブル26は、Y軸方向移動機構28を介してベッド14の上面で支持されている。
【0034】
Y軸方向移動機構28は、ワークテーブル26をベッド14に対してY軸方向へ往復移動させる機構であり、駆動力を発生させるY軸駆動モータ42(
図2)と、ネジ送り機構(図示省略)と、リニアガイド(図示省略)とを備えている。
【0035】
図3に示すように、加工ヘッド16が移動可能な領域を加工ヘッド移動領域S1とし、後述するワーク搬送装置30(
図4)のワーク保持部48a,48bが移動可能な領域をワーク保持部移動領域S2としたとき、Y軸方向移動機構28は、加工ヘッド移動領域S1の下方に位置する第1位置P1とワーク保持部移動領域S2の下方に位置する第2位置P2との間でワークテーブル26をY軸方向へ往復移動させるように構成されている。
【0036】
図4は、
図1に示す工作機械10のワーク搬送装置30を示す斜視図である。
図5は、工作機械10(連結状態)の要部の構成を示す断面図である。
図6は、ワーク搬送装置30の要部の構成を示す分解斜視図である。
【0037】
図4に示すように、ワーク搬送装置30は、基部44、可動部46、2つのワーク保持部48a,48bおよび連結部50を有している。上記の第2位置P2からX軸方向の一方側に離間した位置を第3位置P3とし、上記の第2位置P2からX軸方向の他方側に離間した位置を第4位置P4としたとき、ワーク搬送装置30は、第2位置P2と第3位置P3との間で被加工物Wを搬送し、かつ、第2位置P2と第4位置P4との間で被加工物Wを搬送することができるように構成されている。つまり、被加工物Wを搬送する搬送経路において、上記の第2位置P2は、ワーク保持部48a,48bとワークテーブル26との間で被加工物Wの受け渡しを行うための「中継点」となっており、第3位置P3は「始点(または終点)」となっており、第4位置P4は「終点(または始点)」となっている。また、第1位置P1は被加工物Wに対して切削加工を行う「加工点」となっている。
【0038】
図1に示すように、基部44は、ベッド14およびコラム18の両方に固定される部材である。
図4に示すように、基部44は、可動部46をX軸方向へ往復移動可能に支持する支持部52と、X軸方向に間隔を隔ててZ軸方向に延びて設けられた2つの支柱54a,54bと、X軸方向に間隔を隔ててY軸方向に延びて設けられた2つの固定アーム56a,56bとを有している。
【0039】
支持部52は、鉄等の金属からなる棒材および板材によって、アングル状またはイケール状に形成されている。支持部52の下部を構成する棒材52aには、後述する可動部46の第1ピニオン74に噛み合う第1ラック70がX軸方向に延びて設けられており、支持部52の上部を構成する棒材52bには、後述する連結部50の第2受容部88が設けられている。
【0040】
2つの支柱54a,54bのそれぞれは、鉄等の金属によって四角形の断面を有する棒状に形成されている。一方の支柱54aの下端部は、ベッド14(
図1)にボルト60を用いて接続されており、一方の支柱54aの下端部よりも上方の部分は、支持部52のX軸方向における一方端部に溶接により接続されている。他方の支柱54bの下端部は、ベッド14(
図1)にボルト60を用いて接続されており、他方の支柱54bの下端部よりも上方の部分は、支持部52のX軸方向における他方端部に溶接により接続されている。
【0041】
2つの固定アーム56a,56bのそれぞれは、鉄等の金属によって四角形の断面を有する棒状に形成されている。一方の固定アーム56aの一方端部(前端部)は、一方の支柱54aにボルト62を用いて接続されており、一方の固定アーム56aの他方端部(後端部)は、コラム18(
図1)にボルト64を用いて接続されている。他方の固定アーム56bの一方端部(前端部)は、他方の支柱54bにボルト62を用いて接続されており、他方の固定アーム56bの他方端部(後端部)は、コラム18(
図1)にボルト64を用いて接続されている。
【0042】
図4に示す可動部46は、基部44に対してX軸方向へ往復移動可能に設けられた部分である。
図5および
図6に示すように、可動部46は、第1可動部66と、第2可動部68と、第1ラック70と、第2ラック72と、第1ピニオン74と、第2ピニオン76とを有している。
【0043】
図6に示すように、第1可動部66は、鉄等の金属からなる板状の部材であり、第1可動部66のX軸方向における中央部には、Y軸方向に延びる回転軸78aを支持する軸受部78が設けられている。第1可動部66の軸受部78より上方の部分には、連結部50が設けられている。また、第1可動部66のY軸方向における前側および後側には、第1ピニオン74および第2ピニオン76のそれぞれが配置されており、
図5に示すように、第1ピニオン74が回転軸78aの一方端部(前端部)に取り付けられており、第2ピニオン76が回転軸78aの他方端部(後端部)に取り付けられている。したがって、第1ピニオン74が回転されると、その回転力が回転軸78aを介して第2ピニオン76に伝達されて第2ピニオン76が第1ピニオン74と同じ方向に回転される。
【0044】
図6に示すように、第2可動部68は、鉄等の金属からなる板状の部材であり、第2可動部68のZ軸方向における中央部には、第2ピニオン76と噛み合う第2ラック72がX軸方向に延びて設けられている。第2可動部68のX軸方向における両端部には、2つのワーク保持部48a,48bのそれぞれが設けられている。また、第2可動部68の第2ラック72より上方の部分には、連結部50をX軸方向へ相対的に移動可能に挿通させる第1開口部80がX軸方向に延びて形成されている。さらに、第2可動部68の第2ラック72より下方の部分には、第2ピニオン76をX軸方向へ相対的に移動可能に受け入れる第2開口部82がX軸方向に延びて形成されている。
【0045】
図7は、ワーク搬送装置30の作動を示す分解斜視図である。
図6に示すように、本実施形態の可動部46は、第1ピニオン74に対して第1ラック70が下方から噛み合うように構成されており、第2ピニオン76に対して第2ラック72が上方から噛み合うように構成されている。また、第1ピニオン74および第2ピニオン76は、同じ方向に回転されるように同じ回転軸78aに取り付けられている。これにより、第2ラック72および第2ピニオン76は、第1可動部66がX軸方向へ移動されるときに、第2ラック72が第2ピニオンで押されて第1可動部66と同じ方向へ移動されるように構成されている。
【0046】
図7に示すように、加工ヘッド16(
図1)のX軸方向へ動く力が連結部50を介して第1可動部66に伝達されると、第1可動部66および第2可動部68が加工ヘッド16(
図1)と同じ方向へ移動される。このとき、第1ピニオン74が第1ラック70から摩擦力を受けて回転されて、第2ピニオン76が第1ピニオン74と同じ方向に回転される。これにより、第2ラック72および第2可動部68は、回転する第2ピニオン76で押されて第1可動部66と同じ方向へさらに移動される。したがって、第2ラック72および第2可動部68の移動距離L2は、第1可動部66の移動距離L1よりも長くなる。本実施形態においては、第2ラック72および第2可動部68の移動距離L2は、第1可動部66の移動距離L1の2倍に設定されている。なお、第2ピニオン76で押される第2ラック72および第2可動部68の移動距離は、第1ピニオン74の直径と第2ピニオン76の直径との比率を変えることによって調整可能である。
【0047】
図4に示すように、本実施形態では、ワーク搬送装置30のX軸方向における一方側に搬送経路の「始点(または終点)」となる第3位置P3が定められており、ワーク搬送装置30のX軸方向における他方側に搬送経路の「終点(または始点)」となる第4位置P4が定められている。また、第3位置P3と第4位置P4との中間に「中継点」となる第2位置P2が定められている。そのため、
図7に示す第2可動部68の移動距離L2は、一方のワーク保持部48aを第2位置P2と第3位置P3との間で往復移動させ、かつ、他方のワーク保持部48bを第2位置P2と第4位置P4との間で往復移動させることができるように定められている。
【0048】
図8は、連結部50の作動を示す断面図である。
図5に示すように、連結部50は、可動部46と加工ヘッド16とを切り離し可能に連結する機械装置であり、棒状の連結片84と、連結片84の一方端部84aをX軸方向の両側から囲むように受け入れる第1受容部86と、連結片84の他方端部84bをX軸方向の両側から囲むように受け入れる第2受容部88とを有している。第1受容部86は、Y軸方向に延びる中心軸を有する筒状(または穴状)に形成されており、加工ヘッド16における加工ヘッドカバー16aに設けられている。第2受容部88は、Y軸方向に延びる中心軸を有する筒状(または穴状)に形成されており、ワーク搬送装置30の基部44に設けられている。なお、第1受容部86は、連結片84の一方端部84aをX軸方向の両側から囲む形状であればよく、第2受容部88は、連結片84の他方端部84bをX軸方向の両側から囲む形状であればよいため、これらには、Z軸方向に向けて開いた開口(図示省略)が設けられていてもよい。
【0049】
また、連結部50は、連結片84をY軸方向に移動させて、連結片84の一方端部84aが第1受容部86に受け入れられた「連結状態」(
図5に示す状態)と、連結片84の一方端部84aが第1受容部86から引き出され、かつ、連結片84の他方端部84bが第2受容部88に受け入れられた「連結解除状態」(
図8に示す状態)とを切り換えるための連結操作部90を有している。
【0050】
本実施形態の連結操作部90は、第1可動部66に設けられた直動式のエアシリンダであり、エアシリンダに組み込まれた連結片84を空気圧で往復移動させるように構成されている。連結操作部90は、その内部に構成された空気流路を切り換える切り換え弁(図示省略)を有している。後述する制御装置32(
図2)は、ワーク搬送装置30で被加工物Wを搬送するときに「連結状態」(
図5)となるように切り換え弁(図示省略)の作動を制御し、加工工具12で被加工物Wを切削加工するときに「連結解除状態」(
図8)となるように切り換え弁(図示省略)の作動を制御する。
【0051】
図6に示すように、2つのワーク保持部48a,48bのそれぞれは、被加工物W(
図1)を離脱可能に保持する機械装置であり、被加工物W(
図1)を把持する把持部92と、把持部92をZ軸方向へ移動させるアクチュエータ94とを有している。本実施形態では、把持部92として電動チャックが用いられており、アクチュエータ94として直動式の電動アクチュエータが用いられている。
【0052】
図2に示すように、制御装置32は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータによって構成されており、制御装置32には、主軸駆動モータ36、Z軸駆動モータ38、X軸駆動モータ40、Y軸駆動モータ42、ツールマガジン24、2つのワーク保持部48a,48b、連結操作部90(切り換え弁)および操作パネル96が電気的に接続されている。
【0053】
制御装置32は、工作機械10の全体の作動を総合的に制御するとともに、被加工物Wに対して切削加工等を行うように上記の各機器を制御する。上記のROMには、加工プログラム等が格納されている。上記の操作パネル96には、作業者が各種の加工条件等を入力するための操作ボタンが設けられている。
【0054】
(工作機械10の作動)
図1に示す工作機械10は、工場等の床面に設置して用いられる。被加工物W(
図1)を段階的に加工する加工ラインでは、複数の工程のそれぞれを分担する複数の工作機械10が加工ラインに沿って設置される。被加工物Wを一工程で加工する場合には、工作機械10が単独で設置される。
【0055】
図2に示す操作パネル96の操作ボタンを操作して加工プログラムを実行すると、制御装置32は、まず、ワークテーブル26(
図1)を第2位置P2(
図3)まで移動させるようにY軸駆動モータ42の作動を制御する。また、制御装置32は、連結部50が「連結状態」(
図5)となるように連結操作部90の作動を制御する。これにより、連結片84が第1受容部86内に挿し込まれてワーク搬送装置30が加工ヘッド16に連結される。
【0056】
次に、制御装置32は、X軸駆動モータ40を作動させて加工ヘッド16をX軸方向における第3位置P3(
図4)側に変位させることでワーク保持部48aを第3位置P3(
図4)上に位置させる。これにより、ワーク保持部48bは、第2位置P2(
図4)上に位置することになる。次に、制御装置32は、ワーク保持部48a,48bの各作動を制御して把持部92を下降させて第3位置P3上および第2位置P2上の各被加工物Wを把持した後、把持部92を上昇させる。
【0057】
次に、制御装置32は、X軸駆動モータ40を作動させて加工ヘッド16をX軸方向における第4位置P4(
図4)側に変位させることでワーク保持部48aを第2位置P2上に位置させる。これにより、ワーク保持部48bは、第4位置P4上に位置することになる。次に、制御装置32は、ワーク保持部48a,48bの各作動を制御して把持部92を下降させてそれぞれ保持している被加工物Wを第2位置P2上および第4位置P4上にそれぞれ配置して把持を解除した後、把持部92を上昇させる。
【0058】
次に、制御装置32は、X軸駆動モータ40を作動させて加工ヘッド16をX軸方向における第3位置P3側に変位させることで可動部46をX軸方向における可動範囲の中央位置である原点位置に復帰させる。そして、制御装置32は、連結部50が「非連結状態」(
図8)となるように連結操作部90の作動を制御する。これにより、連結片84が第1受容部86内から離脱してワーク搬送装置30が加工ヘッド16に対して非連結状態となる。また、制御装置32は、被加工物Wが載置されたワークテーブル26を第2位置P2(
図4)から第1位置P1(
図4)まで移動させるようにY軸駆動モータ42の作動を制御する。
【0059】
次に、制御装置32は、被加工物Wに対して加工工具12で切削加工を行うように、主軸駆動モータ36、Z軸駆動モータ38、X軸駆動モータ40およびY軸駆動モータ42の作動を制御する。加工の種類が変わる場面では、制御装置32は、主軸34で保持された加工工具12を交換するようにツールマガジン24の作動を制御する。
【0060】
切削加工が終了すると、制御装置32は、被加工物Wが載置されたワークテーブル26を第1位置P1(
図4)から第2位置P2(
図4)まで移動させるようにY軸駆動モータ42の作動を制御する。また、連結部50が「連結状態」(
図5)となるように連結操作部90の作動を制御するとともに、第2位置P2(
図4)のワークテーブル26に載置された被加工物Wを第4位置P4(
図4)に搬送するようにX軸駆動モータ40およびワーク保持部48bの作動を制御する。
【0061】
(ワーク搬送装置30の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図1に示すワーク搬送装置30の基部44が、高強度で構成されたベッド14およびコラム18の両方に固定されるので、基部44を安定して固定することができる。したがって、基部44に設けられた可動部46の動作を安定させることができ、可動部46を高速で駆動させることができる。また、基部44および可動部46の撓みや振動を抑制でき、被加工物Wをワークテーブル26の決められた位置に正確に載置することができる。
【0062】
図1に示すように、基部44は、2つの支柱54a,54bを有しており、2つの支柱54a,54bのそれぞれの下端部がベッド14に接続されているので、支持部52および可動部46を安定して支持することができる。また、2つの支柱54a,54bの間に確保された空間を通して、ワークテーブル26等の保守点検を容易に行うことができる。
【0063】
図1に示すように、基部44は、2つの固定アーム56a,56bを有しており、2つの固定アーム56a,56bのそれぞれの一方端部が支柱54a,54bに接続されており、他方端部がコラム18に接続されているので、支持部52および可動部46を安定して支持することができる。また、2つの固定アーム56a,56bの間に確保された空間を通して、加工ヘッド16の保守点検を容易に行うことができる。
【0064】
図7に示すように、ワーク搬送装置30では、加工ヘッド16(
図1)のX軸方向へ動く力が連結部50を介して第1可動部66に伝達されたときに、第1可動部66および第2可動部68が加工ヘッド16と同じ方向へ移動される。このとき、第2ラック72および第2可動部68は回転する第2ピニオン76で押されて第1可動部66と同じ方向へさらに移動されるため、第2ラック72および第2可動部68の移動距離L2を第1可動部66の移動距離L1よりも長くすることができる。
【0065】
図5および
図8に示すように、連結部50では、連結片84が第1受容部86に受け入れられた「連結状態」と、連結片84が第1受容部86から引き出された「連結解除状態」とを切り換えるようにしているので、連結片84を連結操作部90でY軸方向へ移動させるだけで、「連結状態」と「連結解除状態」とを簡単に切り換えることができる。
【0066】
図8に示すように、連結部50の「連結解除状態」では、連結片84の他方端部84bが基部44に設けられた第2受容部88に受け入れられるので、被加工物Wを切削加工する際には、基部44に対する第1可動部66および第2可動部68のX軸方向への移動を抑制できる。
【0067】
図3に示すように、Y軸方向移動機構28でワークテーブル26を第1位置P1と第2位置P2との間で往復移動させることができるので、ワーク搬送装置30で搬送されてきた被加工物Wを第2位置P2でワークテーブル26に載置することができる。また、加工後の被加工物Wを第2位置P2においてワークテーブル26からワーク搬送装置30で搬出することができる。
【0068】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、ワーク搬送装置30の基部44が、ベッド14およびコラム18の両方に固定されているが、基部44は、ベッド14およびコラム18のいずれか一方にだけ固定されてもよい。この場合でも、ベッド14およびコラム18は高い強度で構成されているので、基部44を安定して固定することができる。
【0069】
基部44をベッド14だけに固定する場合には、2つの固定アーム56a,56bは省略されてもよい。基部44をコラム18だけに固定する場合には、2つの支柱54a,54bは工場等の床面に単に置かれてもよいし、工場等の床面にボルト等で固定されてもよい。
【0070】
ベッド14および支持部52に対する支柱54a,54bの接続方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、ボルト、溶接およびリベットなどによる接続方法が適宜選択して用いられてもよい。
【0071】
支柱54a,54bおよびコラム18に対する固定アーム56a,56bの接続方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、ボルト、溶接およびリベットなどによる接続方法が適宜選択して用いられてもよい。また、固定アーム56a,56bの一方端部(前端部)は、支持部52に接続されてもよい。
【0072】
上記実施形態では、ワーク搬送装置30の第2ピニオン76が第1ピニオン74と同じ方向に回転されるように構成されているが、他の歯車を介すること等によって、第2ピニオン76が第1ピニオン74と逆の方向に回転されるように構成されてもよい。この場合でも、第1ラック70または第2ラック72の向きを変えることによって、第2ピニオン76で第2ラック72および第2可動部68を第1可動部66の移動方向と同じ方向へ押すことができる。
【0073】
上記実施形態では、連結部50が第2受容部88を有しているが、可動部46の動きを抑制するための機構を連結部50とは別に設ける場合には、第2受容部88は省略されてもよい。この場合には、連結片84および連結操作部90が加工ヘッド16に設けられるとともに、第1受容部86が第1可動部66に設けられてもよい。また、この場合、連結部50は、連結操作部90で第1受容部86を前記Y軸方向に移動させるように構成されてもよい。また、可動部46の動きを抑制する必要がない場合においても第2受容部88を省略することができる。
【0074】
上記実施形態では、連結部50の連結操作部90としてエアシリンダが用いられているが、これに代えて、電動シリンダ、油圧シリンダおよび電磁石などが用いられてもよい。
【0075】
上記実施形態では、可動部46が第1可動部66および第2可動部68を有しているが、第2可動部68は省略されてもよい。例えば、
図4に示す第2位置P2から第3位置P3および第4位置P4のそれぞれまでの距離が第1可動部66の移動距離L1(
図7)とほぼ同じか、それよりも短くされた場合には、第1可動部66にワーク保持部48a,48bを設けることによって、第2可動部68を省略できる。この場合、連結部50の連結片84は、第2可動部68が省略された可動部46(上記実施形態の第1可動部66)に連結操作部90と共に設けられることになる。なお、第2受容部88を省略する場合には、連結片84および連結操作部90が加工ヘッド16に設けられるとともに、第1受容部86が上記の可動部46に設けられてもよい。
【0076】
上記実施形態では、第2可動部68に2つのワーク保持部48a,48bが設けられているが、ワーク保持部の数は特に限定されるものではなく、1つだけ設けられてもよい。ワーク保持部の数が1つの場合には、
図4に示す第3位置P3および第4位置P4のいずれか一方が「始点」となり、かつ、「終点」となる。
【0077】
上記実施形態では、ワーク保持部48a,48bの把持部92として電動チャックが用いられているが、これに代えて、空気圧や油圧で駆動されるチャックが用いられてもよい。また、ワーク保持部48a,48bのアクチュエータとして電動アクチュエータが用いられているが、これに代えて、空気圧や油圧で駆動されるアクチュエータが用いられてもよい。
【0078】
上記実施形態では、加工ヘッド16は、主軸34および主軸駆動モータ36がコラム18に対してZ軸方向へ往復移動するように構成するとともに加工ヘッドカバー16aはZ軸方向に不変に構成した。しかし、加工ヘッド16は、加工ヘッドカバー16を含めてコラム18に対してZ軸方向へ往復移動するように構成することもできる。
【0079】
上記実施形態においては、工作機械10は、ツールマガジン24を備えて構成した。しかし、工作機械10は、加工工具12を自動交換する必要がない場合にはツールマガジン24を省略して構成することができる。
【0080】
上記実施形態においては、工作機械10は、金属製の被加工物Wを切削加工するように構成した。しかし、工作機械10は、金属製以外の被加工物W、例えば、木材、セラミック材または樹脂材からなる被加工物Wに対して機械加工を行うものであってもよい。また、工作機械10は、切削加工以外の機械加工、例えば、研削加工、放電加工、溶接加工、溶射加工、肉盛り加工または表面処理加工を行うものであってもよい。
【解決手段】工作機械10は、被加工物Wが載置されるワークテーブル26と、ワークテーブル26を支持するベッド14と、加工ヘッド16と、加工ヘッド16を支持するコラム18と、加工ヘッド16をコラム18に対してX軸方向へ往復移動させるX軸方向移動機構22と、ワーク搬送装置30とを備えている。ワーク搬送装置30は、連結部50と、連結部50を介して加工ヘッド16に切り離し可能に連結される可動部46と、可動部46を支持する基部44と、可動部46に設けられたワーク保持部とを有しており、基部44は、ベッド14およびコラム18の少なくとも一方に固定されている。連結部50が連結状態のとき、可動部46は加工ヘッド16の移動に伴ってX軸方向へ移動される。