特許第6771819号(P6771819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6771819-回路遮断器 図000002
  • 特許6771819-回路遮断器 図000003
  • 特許6771819-回路遮断器 図000004
  • 特許6771819-回路遮断器 図000005
  • 特許6771819-回路遮断器 図000006
  • 特許6771819-回路遮断器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771819
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/36 20060101AFI20201012BHJP
   H01H 73/18 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01H9/36
   H01H73/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-164522(P2016-164522)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-32542(P2018-32542A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】安村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖也
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−161646(JP,A)
【文献】 特開2004−355829(JP,A)
【文献】 特開昭54−153279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30− 9/52
H01H 69/00−69/01
H01H 71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点部と、この接点部を開閉する開閉機構部と、クロスバーとを備えた回路遮断器であって、
前記開閉機構部を支持するフレームに、開閉機構部と接点部とを遮る遮蔽部を一体に形成するとともに、接点開放時にクロスバーの上端をフレームの下方の開口部から開閉機構部内に進入させ、遮蔽部とクロスバーとによって、アーク発生時の飛散物から開閉機構部を保護することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記フレームに連接された折曲片であることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記フレームは、左右側面とそれらを連結する連結面で構成される板材であり、前記遮蔽部を連結面に形成したことを特徴とする請求項2記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記接点部は前記開閉機構部の略下方に配置されており、前記遮蔽部を、前記フレームの連結面の下端を開閉機構部側へ折り曲げることで形成したことを特徴とする請求項3記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉機構部によって接点部を開閉する回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器では、電流遮断時に固定接点と可動接点との間にアークが発生することが避けられない。短絡遮断電流が増加して高温のアークが発生すると、可動接触子や固定接点、消弧装置の一部などが溶融し、飛散物となって周囲に飛散する。この飛散物が開閉機構部に付着すると、開閉機構部の動作に支障が生ずるおそれがある。このため、消弧装置を接点部の近傍に設置してアークを速やかに消弧させる工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、可動接触子の移動経路の両側を挟む形状のアークバリアを備えた消弧装置が記載されている。この消弧装置は、開閉機構部のフレームの上部に当接する飛散防止突起部がアークバリアに形成されており、通常の消弧機能のほか、飛散物が開閉機構部に侵入する機能を備えている。しかしこの構造では開閉機構部と接点部との間に連通する空間が形成されているため、飛散物が開閉機構部に付着することを十分に防止できないおそれがあった。
【0004】
このため、開閉機構部と接点部との間の空間を遮断する遮へい部材を別体で設けるが、その分だけ部品点数が増加するため、部品の製造コストが増加し、また組立作業性が低下するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、部品点数を増加させることなく、開閉機構部への飛散物の付着を防止することができる回路遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、接点部と、この接点部を開閉する開閉機構部と、クロスバーとを備えた回路遮断器であって、前記開閉機構部を支持するフレームに、開閉機構部と接点部とを遮る遮蔽部を一体に形成するとともに、接点開放時にクロスバーの上端をフレームの下方の開口部から開閉機構部内に進入させ、遮蔽部とクロスバーとによって、アーク発生時の飛散物から開閉機構部を保護することを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記遮蔽部は、前記フレームに連接された折曲片とすることができる。また、前記フレームは、左右側面とそれらを連結する連結面で構成される板材であり、前記遮蔽部を連結面に形成することができる。さらに、前記接点部は前記開閉機構部の略下方に配置されており、前記遮蔽部を、前記フレームの連結面の下端を開閉機構部側へ折り曲げることで形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の回路遮断器は、飛散物が開閉機構部に付着することを防止する遮蔽部を、開閉機構部を支持するフレームに一体に形成したものであるから、部品点数を増加させることなく、開閉機構部への飛散物の付着を防止することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の回路遮断器を示す外観斜視図である。
図2】実施形態の回路遮断器を示す中央縦断面図である。
図3】開閉機構部の縦断面図である。
図4】開閉機構部の外観斜視図である。
図5】開閉機構部の下方斜視図である。
図6】ハンドルがオフ状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0012】
図1は実施形態の3相の回路遮断器を示す外観斜視図、図2はその中央縦断面図である。これらの図において、1は回路遮断器のケースであり、2はケース1の一端に形成された電源側端子、3はケース1の他端に形成された負荷側端子である。電源側端子2の下方には固定接触子4が設けられており、固定接触子4の先端には固定接点5が形成されている。接点部は、固定接点5と可動接点7とによって構成される。
【0013】
6は先端に可動接点7を備えた可動接触子である。この実施形態では、可動接触子6は昇降可能な構造であり、その下側に配置されたスプリング8によって、常に上向きに弾発されている。しかし図2に示されるオン状態においては、開閉機構部20のリンク21によって可動接触子6は下向きに押圧され、可動接点7が固定接点5に圧接されている。なお、可動接触子6の端部はより線9によってバイメタル10に接続され、さらに負荷側端子3に接続されているが、この点は従来構造と同様であるうえ、本発明の要部ではないので、説明を省略する。
【0014】
開閉機構部20は図3図5に示すように、ハンドル23、前記したリンク21等がフレーム22に支持されることで構成され、フレーム22には引き外し機構24も組み込まれている。フレーム22は、左右側面とそれらを連結する連結面で構成されている。具体的には、フレーム22は金属板を水平断面がコの字状となるように折り曲げて形成されたものであり、図5に示されるように、手前側の側面22Aと、奥側の側面22Bと、これらを連結する連結面22Cとを備えている。側面22Aと側面22Bは平行であり、その上端付近にハンドル23が軸25によって軸支されている。
【0015】
ハンドル23の下部には軸26が設けられており、ハンドル23を操作すると、軸26はフレーム22に形成された円弧溝27に沿って移動する。この軸26には前記したリンク21の上端が取り付けられている。このような構造であるため、ハンドル23が図2図3に示されるオン位置にあるとき、リンク21は押し下げられた位置を取り、リンク21の下端のリンクピン28が絶縁性樹脂からなるクロスバー29を介して可動接触子6を押し下げ、可動接点7を固定接点5に圧接する。
【0016】
しかしハンドル23がオフ位置に操作されたり、引き外し機構24によってトリップ位置に動いた際には、軸26は上昇するためリンク21は上方に移動し、スプリング8によって可動接触子6は押し上げられて可動接点7が固定接点5から離れ、回路が遮断されるようになっている。
【0017】
なお、引き外し機構24はフレーム22の下部に下端が軸支されたトリガプレート30を備えており、過電流によりバイメタル10が湾曲するとトリガプレート30が動き、ハンドル23をトリップさせるようになっている。しかしこの引き外し機構24も公知であるうえ、本発明の要部ではないので説明を省略する。
【0018】
このように開閉機構部20はフレーム22の内部に多数の部品を取り付けた構造であり、図2に示されるように回路遮断器のケース1の内部に固定される。なお図2に示される31は消弧装置であり、固定接触子4と接点部との間の空間に設置されアークを消弧させるものである。
【0019】
この開閉機構部20のフレーム22はリンク21の動きを阻害しないように下方が開放された構造となっているため、電流遮断時に固定接点7と可動接点5との間で発生する高温のアークによって生ずる飛散物が、開閉機構部20の内部に進入する可能性がある。そこで本発明では、図2図3図5に示されるように、開閉機構部20の内部に飛散物が開閉機構部に付着することを防止する遮蔽部40を、フレーム22と一体に形成した。
【0020】
この実施形態の遮蔽部40は、開閉機構部20のフレーム22に連接された折曲片である。図2に示されるように、固定接点5と可動接点7とによって構成される接点部は開閉機構部20の略下方に配置されており、遮蔽部40はフレーム22の下側、すなわち接点側に形成されている。また折曲方向はフレーム22の下方の開口部を覆うようにフレーム22の内側方向である。ただし開閉機構部20の内部機構の動きを阻害しないように、遮蔽部40の長さはリンク21やスライダ29と干渉しないように設定されている。このような構造によって、電流遮断時に接点部で発生し、開閉機構部20の下方から侵入する飛散物を、遮蔽部40で遮蔽することができる。
【0021】
なお図6に示すように、ハンドル23がオフ位置にあるときクロスバー29の上端は、遮蔽部40の前方に設けられた開口部に収まる。このようにクロスバー29の上端が開閉機構部20の内部に進入する構造とすることによって、回路遮断器のサイズを小さくすることができる。また、クロスバー29の上端を開閉機構部20内に進入させることで、クロスバー29によって接点開放時のアークによって発生する飛散物から開閉機構部20を保護することができる。
【0022】
このような構造とすれば、電流遮断時に接点部で発生する高温のアークが、固定接触子4、固定接点5、可動接点7、消弧装置31などを溶融させて生じる飛散物が開閉機構部20の方向に飛散しても遮蔽部40により遮蔽され、開閉機構部20の内部への飛散が防止される。このため飛散物がフレーム22の内部に付着することが抑制され、開閉機構部20の動きに支障が生ずることがない。しかもこの遮蔽部40はフレーム22と一体に形成されているため、部品点数の増加をまねくこともない。
【0023】
上記した実施形態では、接点部の上方に開閉機構部20が配置されているため、開閉機構部20のフレーム22の下側に遮蔽部40を形成した。しかし回路遮断器の種類に応じて接点部と開閉機構部との位置関係はさまざまであるので、遮蔽部40の位置も変更することができる。
【0024】
また上記した実施形態では、開閉機構部20のフレーム22のうち、連結面22Cを折り曲げて遮蔽部40を形成したが、手前側の側面22Aや奥側の側面22Bの何れか、あるいはそれらの双方を内側に折り曲げて形成してもよい。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、部品点数を増加させることなく、開閉機構部20への飛散物の付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケース
2 電源側端子
3 負荷側端子
4 固定接触子
5 固定接点
6 可動接触子
7 可動接点
8 スプリング
9 より線
10 バイメタル
20 開閉機構部
21 リンク
22 フレーム
23 ハンドル
24 引き外し機構
25 軸
26 軸
27 円弧溝
28 リンクピン
29 クロスバー
30 トリガプレート
31 消弧装置
40 遮蔽部
図1
図2
図3
図4
図5
図6