(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771830
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】複数台のネットワーク端末から同時接続が可能な射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/03 20060101AFI20201012BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20201012BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20201012BHJP
【FI】
B29C45/03
B22D17/32 Z
G16Y10/25
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-15134(P2018-15134)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-130797(P2019-130797A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2019年2月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】小末 将吾
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−116757(JP,A)
【文献】
特開2005−084969(JP,A)
【文献】
特開2013−237192(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/179730(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/084916(WO,A1)
【文献】
特開2007−041926(JP,A)
【文献】
米国特許第06311101(US,B1)
【文献】
国際公開第2017/204110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のネットワーク端末の同時接続が許容され、それぞれの前記ネットワーク端末において表示される操作画面は、射出成形機に付属のモニタに表示される操作画面と同等であると共に独立して操作できるようになっている前記射出成形機であって、
前記射出成形機は複数のユーザが管理されるユーザ管理情報を備え、該ユーザ管理情報にはそれぞれのユーザについて、ユーザ認証に必要な認証データと、前記射出成形機の操作や設定値データの変更ができる管理者権限の有無と、ユーザ固有の情報であるユーザ情報とが格納され、
前記ネットワーク端末はユーザの操作により前記射出成形機に接続要求されて、前記認証データに基づくユーザ認証を経て前記射出成形機に接続されるようになっており、
複数台の前記ネットワーク端末が前記射出成形機に接続されるとき、前記管理者権限を有するユーザとして最初にユーザ認証された前記ネットワーク端末が実行権限を獲得して前記操作画面が実行権限モードで動作して前記射出成形機の操作と設定値データの変更の操作が許可され、他の前記ネットワーク端末は認証されたユーザの前記管理者権限の有無に拘わらず前記操作画面が表示専用モードで動作するようになっており、
前記射出成形機に付属のモニタには、接続中の前記ネットワーク端末のそれぞれに対応して前記ネットワーク端末の台数と同数のユーザ情報ウィンドウが生成されてユーザ情報が表示され、前記実行権限を獲得した前記ネットワーク端末に対応する前記ユーザ情報ウィンドウは他の前記ユーザ情報ウィンドウと表示色が異なっていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、前記ユーザ情報はユーザの顔写真を含んでいることを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の射出成形機において、前記射出成形機に付属のモニタにおいて前記管理者権限を有するユーザが操作してユーザ認証を受けると、前記モニタは前記実行権限を獲得し、このとき前記実行権限を獲得していた前記ネットワーク端末は前記実行権限を喪失して前記操作画面が表示専用モードで動作するようになっていることを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記実行権限を獲得している前記ネットワーク端末または前記モニタは、所定の期間について操作されていないことが検出されたら、前記実行権限を喪失して前記操作画面が表示専用モードで動作するようになっていることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のネットワーク端末からの同時接続が可能な射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように、射出成形機は金型を型締めする型締装置、射出材料を溶融すると共に型締めされた金型内に射出材料を射出する射出装置、これらの装置を制御するコントローラ等から構成されている。型締装置は、固定盤、可動盤、型締機構等から構成され、型締機構を所定の方向に駆動すると固定盤と可動盤のそれぞれに設けられている金型が型閉じ、型締めされ、逆方向に駆動すると型開きするようになっている。また射出装置は、加熱シリンダ、この加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ等から構成され、加熱シリンダの後方に設けられているホッパから射出材料を供給し、スクリュを回転方向に駆動すると、加熱シリンダに設けられているヒータからの熱と、スクリュの回転のせん断力による熱とによって射出材料が溶融し、スクリュが後退してスクリュの先端に射出材料を計量することができる。そしてスクリュを軸方向に駆動すると射出材料を射出することができる。
【0003】
射出成形の各工程においては、これらの装置を適切に制御する必要があり、色々なデータをコントローラに設定したりデータを監視する必要がある。コントローラにはモニタが設けられ、このモニタ上に各種の画面が表示され、データを設定したり監視できるようになっている。このように従来の多くの射出成形機においてはデータを設定したり監視する等の、いわゆる射出成形機の操作は射出成形機に付属しているモニタによって実施するようになっている。しかしながら、近年ネットワーク端末を介して接続される射出成形機であって、ネットワーク端末から遠隔操作が可能な射出成形機も提案されてきている。このような射出成形機は、例えば特許文献1、2において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−46675号公報
【特許文献2】特開2013−237192号公報
【0005】
特許文献1に記載の射出成形機は遠隔制御装置、つまりネットワーク端末が接続されるようになっているが、このネットワーク端末は、複数台の射出成形機に対して切換えて接続できるようになっている。つまりネットワーク端末は、複数台の射出成形機の中から選択して、所望の1台の射出成形機に接続することができるようになっている。ネットワーク端末が所定の射出成形機に接続されたら、ネットワーク端末に射出成形機の画面が表示される。以後、ネットワーク端末から射出装置を操作することができることになる。
【0006】
特許文献2にも、ネットワーク端末が接続可能な射出成形機が記載されている。文献によると射出成形機には第1表示装置すなわちモニタが設けられ、このモニタに表示されている画面が、コンピュータ側の第2表示装置すなわちネットワーク端末にも同時に表示できるようになっている。射出成形機から提供される画面は、モニタ側とネットワーク端末側とで同時に表示されるので二人の操作者が同時に操作してしまうと操作のバッティングが生じる危険がある。そこでこの射出成形機は、モニタ側の画面において許容されている操作と、ネットワーク端末の画面において許容されている操作が相違しており、それによって操作のバッティングが防止されている。例えば射出成形機において、連続生産を停止しているような場合には各種成形条件の変更が可能なモードになるが、この成形条件の変更が可能なモードにおいては次のようになる。すなわちモニタ側においては、画面切換えや表示スケールの変更だけの表示変更操作と、成形条件のデータを変更する成形条件変更操作の2種類の操作が実施できる。このとき、ネットワーク端末側においてはどちらの操作も許容されない。正確には、成形条件の変更が可能なモードにおいて、ネットワーク端末側の画面においても、表示変更操作や成形条件変更操作を実施することはできるが、これらの操作は射出成形機側でブロックされて無効にされている。つまり表示変更操作も成形条件変更操作もできない。これによってモニタ側の画面において操作している操作者は、ネットワーク端末側の画面において操作使用としている他の操作者による妨害を受けずに、必要な成形条件の変更が行える。一方、射出成形機において連続生産中等のように各種成形条件の変更が禁止されているモードにおいては、モニタ側においてもネットワーク端末側においても画面の表示変更操作は許容され、成形条件変更操作は禁止される。従って、ネットワーク端末側の画面において表示変更操作の一種である画面切換えを実施すると他の画面に切換えられることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の射出成形機、あるいは特許文献2に記載の射出成形機もネットワーク端末からの操作が可能であり、ネットワーク端末から射出成形機を遠隔で監視することができ優れてはいる。しかしながら解決すべき問題も見受けられる。具体的には、1台の射出成形機に対して複数台のネットワーク端末から同時に接続するケースが考慮されていない点をあげることができる。射出成形機にネットワーク端末を接続して遠隔操作をする目的の一つとして、射出成形機の運転状況を確認するために現在のデータを閲覧することがある。複数の操作者が同時にデータを閲覧したい場合には、複数台のネットワーク端末が同時に1台の射出成形機に対して接続され、そしてそれぞれのネットワーク端末上で独立して画面操作が実施できなければならないが、特許文献1、2においては、そのような点が考慮されていない。射出成形機を操作したり成形条件の変更等のデータを変更する点についても問題が見受けられる。射出成形機の操作やデータの変更は、射出成形機から離間したネットワーク端末から実施したい場合もあるが、特許文献2に記載の射出成形機ではネットワーク端末からの射出成形機の操作やデータの変更は認められない。特許文献1に記載の射出成形機においてはネットワーク端末からのデータの変更は認められているので、射出成形機から離間した位置からのデータ変更はできる。しかしながら、特許文献1に記載の射出成形機は、複数の操作者が同時に操作するときの操作のバッティングについて格別に考慮がない。つまり、射出成形機のモニタ側の画面で操作している操作者がいるときにネットワーク端末側の画面からデータの変更ができるので、データが変更されてしまうとモニタ側の操作者は混乱してしまうし、モニタ側の操作者も同時にデータを変更していると、互いに関連している複数のデータ間において整合性がとれなくなる虞もある。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した射出成形機を提供することを目的とし、具体的には、ネットワーク接続により遠隔操作が可能な射出成形機であって、複数台のネットワーク端末が同時に接続でき、それぞれのネットワーク端末において独立して画面を操作して必要な情報を得ることができ、さらにはネットワーク端末から射出成形機を操作したり成形条件等のデータを変更することができ、このとき操作のバッティングが発生しないよう安全が確保されている、射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、複数台のネットワーク端末の同時接続が許容され、それぞれのネットワーク端末において表示される操作画面は射出成形機に付属のモニタに表示される操作画面と同等であると共に独立して操作できるようになっている射出成形機を対象とする。この射出成形機には、ユーザ認証に必要な認証データと、射出成形機を操作したり設定値データを変更できる管理者権限の有無と、
ユーザ固有の情報であるユーザ情報とが、それぞれのユーザ毎に格納されたユーザ管理情報を設ける。ユーザがネットワーク端末を操作すると認証データに基づくユーザ認証を経て射出成形機に接続される。複数台のネットワーク端末が射出成形機に接続されるとき、最初に認証された管理者権限を有するユーザに対応するネットワーク端末のみが実行権限を獲得する。操作画面は、実行権限を獲得したネットワーク端末において射出成形機の操作や設定値データの変更の操作が許可され、他のネットワーク端末においては設定値データは表示されるだけとする。
そして射出成形機に付属のモニタには、接続中のネットワーク端末のそれぞれに対応して同数のユーザ情報ウィンドウが生成されてユーザ情報が表示され、実行権限のあるネットワーク端末に対応するユーザ情報ウィンドウは他の前記ユーザ情報ウィンドウと異なった表示色にするようにする。
【0010】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、複数台のネットワーク端末の同時接続が許容され、それぞれの前記ネットワーク端末において表示される操作画面は、射出成形機に付属のモニタに表示される操作画面と同等であると共に独立して操作できるようになっている前記射出成形機であって、前記射出成形機は複数のユーザが管理されるユーザ管理情報を備え、該ユーザ管理情報にはそれぞれのユーザについて、ユーザ認証に必要な認証データと、前記射出成形機の操作や設定値データの変更ができる管理者権限の有無と、ユーザ固有の情報であるユーザ情報とが格納され、前記ネットワーク端末はユーザの操作により前記射出成形機に接続要求されて、前記認証データに基づくユーザ認証を経て前記射出成形機に接続されるようになっており、複数台の前記ネットワーク端末が前記射出成形機に接続されるとき、
前記管理者権限を有するユーザとして最初にユーザ認証された前記ネットワーク端末が実行権限を獲得して前記操作画面
が実行権限モードで動作して前記射出成形機の操作と設定値データの変更の操作が許可され、他の前記ネットワーク端末
は認証されたユーザの前記管理者権限の有無に拘わらず前記操作画面
が表示専用モードで動作するようになっており、前記射出成形機に付属のモニタには、接続中の前記ネットワーク端末のそれぞれに対応して前記ネットワーク端末の台数と同数のユーザ情報ウィンドウが生成されてユーザ情報が表示され、前記実行権限を獲得した前記ネットワーク端末に対応する前記ユーザ情報ウィンドウは他の前記ユーザ情報ウィンドウと表示色が異なっていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機において、前記ユーザ情報はユーザの顔写真を含んでいることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の射出成形機において、前記射出成形機に付属のモニタにおいて前記管理者権限を有するユーザが操作してユーザ認証を受けると、前記モニタは前記実行権限を獲得し、このとき前記実行権限を獲得していた前記ネットワーク端末は前記実行権限を喪失
して前記操作画面が表示専用モードで動作するようになっていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記実行権限を獲得している前記ネットワーク端末または前記モニタは、所定の期間について操作されていないことが検出されたら、前記実行権限を喪失
して前記操作画面が表示専用モードで動作するようになっていることを特徴とする射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、複数台のネットワーク端末の同時接続が許容され、それぞれのネットワーク端末において表示される操作画面は、射出成形機に付属のモニタに表示される操作画面と同等であると共に独立して操作できるようになっている射出成形機を対象としている。つまり、複数のネットワーク端末からネットワーク接続することができ、ネットワーク端末からの遠隔操作が可能な射出成形機を対象としている。またそれぞれのネットワーク端末では独立して操作画面を操作できるので自由にデータの閲覧が可能になっている。そして本発明によると、射出成形機は複数のユーザが管理されるユーザ管理情報を備え、該ユーザ管理情報にはそれぞれのユーザについて、ユーザ認証に必要な認証データと、射出成形機の操作や設定値データの変更ができる管理者権限の有無と、ユーザ固有の情報であるユーザ情報とが格納されている。またネットワーク端末はユーザの操作により射出成形機に接続要求されて、認証データに基づくユーザ認証を経て射出成形機に接続されるようになっている。本発明は、複数台のネットワーク端末が射出成形機に接続されるとき、
管理者権限を有するユーザとして最初にユーザ認証されたネットワーク端末が実行権限を獲得して操作画面
が実行権限モードで動作して射出成形機の操作と設定値データの変更の操作が許可され、他のネットワーク端末
は認証されたユーザの管理者権限の有無に拘わらず操作画面
が表示専用モードで動作するよう構成される。従って、成形条件等の設定値データは特定の1台のネットワーク端末からのみ実施が許可されているので、操作のバッティングは発生しないし、互いに関連がある設定データが複数ある場合でも、設定データ間の整合性が維持される。また実行権限を有さないネットワーク端末でも、操作画面は独立して操作できるので、必要な設定値データの閲覧は自由にできる。これによって使い勝手がよい射出成形機が提供されることになる。そして本発明によると、射出成形機に付属のモニタには、接続中のネットワーク端末のそれぞれに対応してネットワーク端末の台数と同数のユーザ情報ウィンドウが生成されてユーザ情報が表示され、実行権限を獲得したネットワーク端末に対応するユーザ情報ウィンドウは他のユーザ情報ウィンドウと表示色が異なっている。従って、射出成形機の付属のモニタを見ると接続しているユーザを確認できる。またユーザ情報ウィンドウの表示色を見れば、どのネットワーク端末が実行権限を獲得しているのかも分かるようになっている。
【0012】
他の発明によると、ユーザ情報はユーザの顔写真を含んでいるので、ネットワーク端末を操作しているユーザを容易に判断できる。また他の発明によると、射出成形機に付属のモニタにおいて管理者権限を有するユーザが操作してユーザ認証を受けると、モニタは実行権限を獲得し、このとき実行権限を獲得していたネットワーク端末は実行権限を喪失するようになっている。この発明によるとモニタでは優先的あるいは強制的に実行権限を獲得できるので、射出成形機において緊急の操作が必要になった場合に速やかに実行権限を獲得して操作することが可能になる。さらに他の発明によると、実行権限を獲得しているネットワーク端末またはモニタは、所定の期間について操作されていないことが検出されたら、実行権限を喪失するように構成されている。実行権限を獲得したネットワーク端末が長期間操作せずに放置されていると、他のネットワーク端末を操作しているユーザは実行権限を得られずに射出成形機を操作することができないという問題があるが、この発明によると操作されない期間が一定期間を超えると実行権限が喪失するようになっているので、このような問題を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機と、この射出成形機に接続される複数台のネットワーク端末とを模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る射出成形機と、ネットワーク端末における処理を示す機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るネットワーク端末に表示されるユーザ認証のための画面を示す図で、その(ア)は射出成形機接続要求画面を、その(イ)はユーザ認証画面をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜3によって本発明の実施の形態に係る射出成形機1を説明する。本実施の形態においても射出成形機1は従来の射出成形機と同様に、射出装置、型締装置等から構成され、これら装置を制御するコントローラ6と、射出成形機1を操作したり各種データを表示するための操作画面が表示されるモニタ3とが設けられている。本実施の形態に係る射出成形機1は、有線または無線のネットワークインターフェースを備えている。このネットワークインターフェースにより、射出成形機1にはネットワーク端末4a、4b、4c、…から接続されるようになっている。本実施の形態に係る射出成形機1は、複数台のネットワーク端末4a、4b、4c、…が同時に接続可能になっている点、およびこれらのネットワーク端末4a、4b、4c、…には、射出成形機1に付属のモニタ3に表示される操作画面と同等の画面が表示される点、そしてそれぞれのネットワーク端末4a、4b、4c、…において操作画面を独立して操作できる点に特徴がある。
図1には、ネットワークの構成は示されていないが、ネットワーク端末4a、4b、4c、…は、射出成形機1が接続されているのと同じネットワークセグメントから接続することもできるし、ルータ等を介した他のネットワークセグメントから接続することもできる。つまりネットワーク端末4a、4b、4c、…は、射出成形機1が設置されている工場内のLANから接続することもできるし、他の工場や事務所から接続することも可能になっている。なお、ネットワーク端末4a、4b、4c、…として、ノートパソコン、タブレット型端末等を利用することができる。
【0015】
本実施の形態に係る射出成形機1のコントローラ6には、射出成形機1に接続可能なユーザを管理するためのファイル、プログラムが設けられている。すなわちコントローラ6には、
図2に示されているように、複数のユーザに関する管理情報を格納したファイルであるユーザ管理情報8と、このユーザ管理情報8に基づいてユーザ認証をするプログラムであるユーザ管理9とが設けられている。本実施の形態において、ユーザ管理情報8にはユーザ毎に次の情報が格納されている。
・ユーザID
ユーザを特定するユニークな番号である。
・パスワード
ユーザ認証に必要なパスワードである。
・顔写真
ユーザの顔写真である。
・電話番号
ユーザの電話番号である。
・メールアドレス
ユーザのメールアドレスである。
・管理者権限の有無
射出成形機1の操作や設定値データの変更に関する権限の有無である。
なお、ユーザIDとパスワードはユーザ認証に必要な認証データであり、顔写真、電話番号、メールアドレスは、ユーザに固有なユーザ情報である。このようなユーザ管理情報8に基づいてユーザ認証するユーザ管理9は、後で説明するように、射出成形機1に付属のモニタ3にユーザ情報ウィンドウを生成し、認証されたユーザに関する情報を表示するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る射出成形機1においても従来の射出成形機と同様に成形条件等の各種設定値データを格納する設定値データファイル11が設けられている。また、射出成形機1を制御し、そして射出成形機1の各センサからデータを収集する処理、すなわちデータ収集・制御12も設けられ、データ収集・制御12は、設定データファイル11から必要な設定値データを読み取って、射出成形機1を制御している。
【0017】
本実施の形態に係る射出成形機1においても、設定値データファイル11に格納されている設定値データを表示・変更したり、射出成形機1の各センサから収集されるデータを表示したり、射出成形機1を操作するための複数の画面が用意されている。いわゆる操作画面である。本実施の形態に係る操作画面は、操作画面アプリケーション14と、ウィンドウを管理するプログラムであるウィンドウ生成・管理15とが協働することによってモニタ3、ネットワーク端末4a、4b、4c、…に表示されるようになっている。操作画面アプリケーション14は、操作画面の種類毎に用意されており、本実施の形態においてはコントローラ6内に設けられ、コントローラ6内で動作するようになっている。一方、ウィンドウ生成・管理15は、表示デバイス毎に、つまりモニタ3を制御するコントローラ5、そしてネットワーク端末4a、4b、4c、…のそれぞれに設けられ、表示デバイス内において動作するようになっている。例えば、ネットワーク端末4a、4b、4c、…においては、ネットワーク端末4a、4b、4c、…内に設けられているウィンドウ生成・管理15が、射出成形機1のコントローラ6内の操作画面アプリケーション14を呼び出して起動し、ネットワーク端末4a、4b、4c、…に操作画面が表示されることになる。また射出成形機1に付属のモニタ3に表示される操作画面は、コントローラ6内のウィンドウ生成・管理15が操作画面アプリケーション14を呼び出して起動し、それによって表示されることになる。本実施の形態においては、このように操作画面アプリケーション14はコントローラ6内に設けられているので、ネットワーク端末4a、4b、4c、…に表示される操作画面も射出成形機1に付属のモニタ3に表示される操作画面と同じ画面が表示されることになる。
【0018】
本実施の形態において、操作画面は2種類のモードから選択されて、動作する点に特徴がある。具体的には、操作画面アプリケーション14が、実行権限モードと表示専用モードの2種類のモードに対応しており、選択されたモードに応じて動作が変化するようになっている。表示専用モードで操作画面アプリケーション14が動作するとき、操作画面は表示専用になる。すなわち操作画面には射出成形機1の各センサから収集されるデータや設定値データは表示されるが、射出成形機1の操作や設定値データの変更はできない。一方、実行権限モードで操作画面アプリケーション14が動作するとき、操作画面は操作上の制約が無くなる。すなわち操作画面において射出成形機1を操作したり、設定値データを変更することができるようになる。
【0019】
本実施の形態に係るネットワーク端末4a、4b、4c、…を射出成形機1に接続し操作画面を表示する方法を説明する。ネットワーク端末4a、4b、4c、…において所定の操作をする。そうするとネットワーク端末4a、4b、4c、…内のウィンドウ生成・管理15により、
図3の(ア)に示されているような射出成形機接続要求画面20が表示される。射出成形機接続要求画面20はウィンドウ生成・管理15が備えている特別な画面であり、この時点でネットワーク端末4a、4b、4c、…は射出成形機1とネットワーク接続されていない。射出成形機接続要求画面20において、ホスト名入力欄21に接続したい射出成形機1のホスト名あるいはIPアドレスを入力する。そして接続ボタン23をクリックする。そうするとネットワーク端末4a、4b、4c、…において射出成形機接続要求画面20が閉じられ、次いでウィンドウ生成・管理15は、指定されたホスト名の射出成形機1にネットワーク接続し、ユーザ認証画面を表示するための所定の操作画面アプリケーション14を起動する。ネットワーク端末4a、4b、4c、…には、
図3の(イ)に示されているようなユーザ認証画面25が表示される。ユーザ認証画面は特別な画面であり、ユーザ認証が完了していない状態で表示できる。ユーザ認証画面25において、ユーザのユーザIDをユーザID入力欄26に、パスワードをパスワード入力欄27にそれぞれ入力し、認証要求ボタン29をクリックする。そうするとユーザ認証画面25に対応している操作画面アプリケーション14は、ユーザ管理9にユーザ認証の処理をゆだねる。
【0020】
ユーザ管理9は、まずユーザ管理情報8を参照して、入力されたユーザIDに対応するユーザが存在するかどうかチェックし、存在する場合には入力されたパスワードが正しいかどうかチェックする。パスワードが正しい場合には正当なユーザであるとしてユーザ認証する。次いで、ユーザ管理情報8により管理者権限の有無を調べる。ユーザが、もし管理者権限を有する場合、当該ユーザが操作しているネットワーク端末4a、4b、4c、…に実行権限を付与する。ただし、射出成形機1において現在他のネットワーク端末4a、4b、4c、…に対して実行権限が付与済みである場合には、実行権限は付与しない。またユーザが管理者権限を有さない場合には、ネットワーク端末4a、4b、4c、…には実行権限は付与しない。ユーザ認証を終了する。以後、ユーザ認証が完了したネットワーク端末4a、4b、4c、…には、
図1に示されているように各種の操作画面が表示されるが、これらの操作画面は、実行権限が付与されたネットワーク端末4a、4b、4c、…においては実行権限モードで表示され、実行権限がないネットワーク端末4a、4b、4c、…においては表示専用モードで表示されることになる。
【0021】
本実施の形態に係る射出成形機1では、付属のモニタ3に、
図1に示されているようなユーザ情報ウィンドウ31が表示され、これによって現在接続されているネットワーク端末4a、4b、4c、…のユーザが分かるようになっている。ユーザ情報ウィンドウ31は、ユーザ認証が完了したときにユーザ管理9が生成するウィンドウであり、ユーザ管理情報8に登録されているユーザ情報、例えば顔写真が表示される。ユーザ情報ウィンドウ31、31、…は、接続中のネットワーク端末4a、4b、4c、…の台数と同数だけ表示され、ネットワークが切断されたら対応するユーザ情報ウィンドウ31、31、…も閉じられるようになっている。本実施の形態においては、実行権限が付与されたネットワーク端末4a、4b、4c、…に対応するユーザ情報ウィンドウ31、31、…についてはウィンドウの色が他のウィンドウと相違している。つまりウィンドウの色の違いによってどのユーザが実行権限モードで操作画面を操作しているのかが判断できるようになっている。
【0022】
本実施の形態に係る射出成形機1は、付属のモニタ3からもユーザ認証を受けて操作画面を表示できるが、付属のモニタ3はネットワーク端末4a、4b、4c、…からの接続要求時とは動作が異なっている。すなわち付属のモニタ3からユーザ認証を受けようとする場合には、
図3の(ア)に示されている射出成形機接続要求画面は表示されず、すぐに
図3の(イ)に示されているユーザ認証画面25が表示され、ユーザ認証を受けるようになっている。また、付属のモニタ3は、実行権限の獲得に関しても優先権が付与されている点でネットワーク端末4a、4b、4c、…と相違している。すなわち付属のモニタ3において管理者権限を有するユーザがユーザ認証を受けると、その時点で他のネットワーク端末4a、4b、4c、…に実行権限が付与されていても、モニタ3に優先的に実行権限が付与され、実行権限が付与されていたネットワーク端末4a、4b、4c、…は実行権限を喪失するようになっている。このように付属のモニタ3において実行権限の獲得に関して優先権が与えられているのは、射出成形機1において異常発生等の緊急事態が発生したときに、射出成形機1近傍にいるユーザが速やかに射出成形機1を操作する必要があるからである。
【0023】
射出成形機1に付属のモニタ3、あるいはネットワーク端末4a、4b、4c、…に実行権限が付与された状態で操作画面を操作せずに放置した場合、他のユーザは射出成形機1を操作できない状態になる。このような状態が長期にわたって継続することを防ぐため、本実施の形態に係る射出成形機1は、実行権限が付与されたネットワーク端末4a、4b、4c、…あるいはモニタ3において、所定の期間操作されていないことが検出されたら、実行権限が失効するようになっている。つまり実行権限が剥奪されて、表示専用モードで操作画面が表示されることになる。
【0024】
本実施の形態に係る射出成形機1は色々な変形が可能である。例えば、操作画面アプリケーション14は、射出成形機1のコントローラ6内にのみ設けられているように説明したが、ネットワーク端末4a、4b、4c、…内にもコントローラ6に設けられている操作画面アプリケーション14と同様の操作画面アプリケーション14が設けられていてもよい。この場合、操作画面アプリケーション14は表示デバイス側で動作させることができるので、ネットワーク上を流れる通信量は小さくすることができる。実行権限の付与についても色々な変形が可能である。例えば、実行権限が付与されていないネットワーク端末4a、4b、4c、…において操作中のユーザが実行権限が必要になったときに、現在実行権限が付与されているネットワーク端末4a、4b、4c、…に対して実行権限を譲ってもらうメッセージを送付することが考えられる。メッセージを受信したネットワーク端末4a、4b、4c、…を操作しているユーザは、必要に応じて実行権限の譲渡をする。実行権限の付与については他の変形も考えられる。既に他のネットワーク端末4a、4b、4c、…に対して実行権限が付与されている場合には、管理者権限を有するユーザが所定のネットワーク端末4a、4b、4c、…からユーザ認証を受けてもそのネットワーク端末4a、4b、4c、…に対して実行権限が付与されないのは既に説明した通りである。この場合において、その後実行権限を有する他のネットワーク端末4a、4b、4c、…が射出成形機1から切断されたときに、自動的に前記所定のネットワーク端末4a、4b、4c、…が実行権限を獲得するようにしてもよい。本実施の形態に係る射出成形機1は、ユーザ情報ウィンドウ31についても変形が可能である。ユーザ情報ウィンドウ31には、顔写真が表示されるように説明したが、ユーザIDが表示されるようにしてもよい。あるいは電話番号、メールアドレス等を表示するようにしてもよい。また、ユーザ認証はユーザIDとパスワードによって実施されるように説明したが、他の方法によってユーザ認証することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 射出成形機
3 モニタ
4a、4b、4c ネットワーク端末
6 コントローラ
8 ユーザ管理情報
9 ユーザ管理
14 操作画面アプリケーション
15 ウィンドウ生成・管理
20 射出成形機接続要求画面
25 ユーザ認証画面
31 ユーザ情報ウィンドウ