【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成27年3月5日 刊行物名 日本農芸化学会 2015年度 大会講演要旨集 発行者 公益社団法人日本農芸化学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、発芽玄米の抽出物を加水分解処理して得られる加水分解処理物を有効成分として含む血管内皮細胞賦活剤、並びに血管内皮細胞賦活剤を含む皮膚外用組成物及び経口用組成物である。
【0008】
本発明において、発芽玄米とは、イネ科(Poaceae)イネ属(Oryza)の植物から得られるものであって、常法により発芽処理を施したものという。
【0009】
抽出物の調製は、まず、発芽玄米を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、抽出溶媒と接触させて抽出を行う方法(例えば、浸漬法、向流抽出法等の方法)により調製することができる。また、超臨界抽出法を用いてもよい。
【0010】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン、トルエン、クロロホルム等の炭化水素系溶媒等が挙げられ、それらは単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0011】
本発明においては、水、低級アルコール類又は多価アルコール類等の親水性溶媒が好適である。この親水性溶媒を用いる場合の好ましい例としては、例えば、水、低級アルコール類(特にエタノール)、又は多価アルコール(特に、1,3−ブチレングリコール)の単独使用、或いは、水と低級アルコール類(特にエタノール)との混合溶媒、又は水と多価アルコール類(特に1,3−ブチレングリコール,グリセリン)との混合溶媒の使用等が挙げられるが、なかでも水単独、又は水と1,3−ブチレングリコールの混合溶媒が特に好ましい。
【0012】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:10〜20:1、水とエタノールとの混合溶媒であれば、1:10〜25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:10〜20:1の範囲とすることが好ましい。
【0013】
また、発芽玄米と抽出溶媒との重量比は好ましくは1:1〜1:50の範囲であり、より好ましくは、1:3〜1:35の範囲である。
【0014】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば、水もしくは1,3−ブチレングリコール、又は水と1,3−ブチレングリコールとの混液を溶媒とする浸漬法の場合であれば、抽出温度は一般に0〜90℃、好ましくは5℃から35℃の範囲である。抽出時間は、1時間〜7日間、好ましくは、6〜48時間の範囲である。
【0015】
上述の抽出処理と並行して、又は抽出処理後、加水分解処理を施す。加水処理の方法としては、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等が挙げられるが、それらの中でも酵素処理が最も好ましい。使用する酵素としては、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、繊維素分解酵素及び脂肪分解酵素から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
蛋白分解酵素は、動物由来酵素、植物由来酵素、及び微生物由来の酵素のいずれでも良い。例えば、アクチナーゼ、ペプシン、トリプシン、パパイン、キモパパイン、グリシルグリシンペプチターゼ、カルボキシペプチターゼ、アミノペプチターゼ及びブロメライン等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、澱粉分解酵素としては、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼ等が挙げられる。また、繊維素分解酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。また、脂肪分解酵素としてはリパーゼ等が挙げられる。使用する酵素としては、いずれかの酵素群から選ばれた1種又は2種以上を用いても、それらの酵素群からそれぞれ選ばれた1種又は2種以上の酵素を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
酵素の添加量は、各植物の使用部位の固形分に対して、合計で0.01〜50重量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲である。
【0018】
上述のように調製した加水分解物は、一般にはpHを3〜8に調製した上で、これをそのままの状態で使用しても良く、又減圧濃縮等により所望の濃度として使用しても良い。また、スプレードライ法等の常法により乾燥物としても良い。
【0019】
上述のように調製した加水分解物は、化粧品等の皮膚外用剤、各種の美容用又は健康増進用飲食品の配合剤として適用することができる。
【0020】
本発明に係る加水分解物を含む化粧品(医薬部外品も含む)としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、洗浄剤、ボディシャンプー、シャンプー、石けん等が挙げられ、さらには浴剤等も挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、美容用又は健康増進用飲食品としては、美容飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、ニアウォーター、ビタミン飲料、ミネラル飲料、アルコール飲料等の飲料;各種スープ類(粉末スープも含む)、乳製品、ゼリー、キャンディ、錠菓、ガム等の食品;錠剤、液状、顆粒状又はゼリー状の健康食品・飲料等に配合することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
例えば、化粧品(医薬部外品も含む)における本発明の加水分解物の配合量は、加水分解物の固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、又清浄用化粧料の場合は、一般に0.002〜10.0重量%、好ましくは0.02〜7.0重量%の範囲である。また、美容用又は健康増進用飲食品における本発明の加水分解物の配合量は、加水分解物の固形分として、0.1〜30重量%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明に係る加水分解物を化粧品(医薬部外品も含む)の配合剤として使用する場合には、必須成分の加水分解物のほかに、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、増粘剤、乳化剤又は乳化助剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料、その他の生理活性成分等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明に係る加水分解物の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分と組み合わせて配合することも何ら差し支えない。
【0023】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0025】
乳化剤又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)等を配合することもできる。
【0026】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0027】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0028】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、大根発酵液等がある。
【0029】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、小豆等)のパウダー等がある。
【0030】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0031】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体(例えば、ビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等)等がある。
【0032】
美白剤としては、t−シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4−メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α−ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)が挙げられ、これらを単独で配合しても、複数を組み合わせて配合しても良い。
【0033】
次に、製造例、試験例及び処方例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0034】
製造例1.発芽玄米の加水分解物の調製
発芽玄米80gに精製水320gを加え、室温で24時間攪拌し、抽出処理を行った。得られた抽出物溶液に対してろ過処理を行った。このろ液に、プロテアーゼ0.6gを加え、50℃で4時間酵素分解処理を行った。その後80℃で1時間加熱して酵素を失活させ、室温まで冷却した。こうして得られた酵素処理液を精製ろ過し、淡黄色の発芽玄米加水分解物溶液185gを得た(固形分濃度:4.8%)。
【0035】
試験例1.血管内皮細胞賦活効果の評価試験
正常ヒト微小血管内皮細胞HMVECを、FGFを含まないHuMedia-MvG培地(クラボウ社)を入れた96穴マイクロプレートに3×10
3個/穴播種し、37℃,5.0%CO
2の条件下に1日間プレ培養した後、本発明の製造例1に係る加水分解物を試料溶液として培地に添加した。ここで、試料溶液はそれぞれ培地中の加水分解物が溶液として1.0%、2.0%の終濃度となるように添加した。試料溶液を培地に添加後、プレ培養と同条件でさらに3日間培養した。次に、培地を除去し、0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンをイソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長570−630nmでMTT値を測定した。試料溶液に代えてPBS(-)を添加した試料無添加の場合(Control)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値に対する各試料添加時のMTT値の相対値を求め、血管内皮細胞MTT活性率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として25mMのグルコースを添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0036】
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]
【0037】
表1に示すように、本発明に係る加水分解物は、濃度依存的に格段にすぐれた血管内皮細胞賦活効果を示し、化粧料、美容用又は健康増進用飲食品の配合剤として有用であることが明らかである。
【0038】
処方例1.乳液
(成分) (質量%)
1.ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) 3.0
2.グリセリン 3.0
3.精製水 0.2
4.オクタン酸セチル 12.0
5.ジプロピレングリコール 4.0
6.1,3−ブチレングリコール 4.0
7.ベタイン 3.0
8.キサンタンガム 0.1
9.製造例1の加水分解物 0.2
10.ローカストビーンガム 0.1
11.カルボキシビニルポリマー 0.1
12.水酸化カリウム 0.03
13.精製水 残余
【0039】
処方例2.クリーム
(成分) (質量%)
1.マカデミアナッツ油 5.0
2.トリオクタノイン 5.0
3.ホホバ油 3.0
4.製造例1の加水分解物 2.0
5.ベヘニルアルコール 1.0
6.モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 1.5
7.モノステアリン酸グリセリル 1.0
8.グリセリン 4.0
9.ジプロピレングリコール 4.0
10.1,3−ブチレングリコール 4.0
11.キサンタンガム 0.2
12.フェノキシエタノール 0.2
13.精製水 残余