【実施例】
【0017】
図1および
図2に示すように、実施例に係るグローブボックス20は、インストルメントパネル10の内側に配設され、乗員室側に開口した箱状のボックス本体22と、このボックス本体22の下部にヒンジを介して接続され、ボックス本体22の開口を開閉するリッド24とから構成されている。グローブボックス20は、ボックス本体22の開口を閉じた閉じ姿勢でリッド24がインストルメントパネルの意匠面の一部をなすように構成され、ロック装置(図示せず)により閉じ姿勢でリッド24が保持される。また、グローブボックス20は、操作ボタン30を操作してロック装置によるロックを解除することで、リッド24の下部のヒンジを支点として乗員室側へ傾けてボックス本体22の開口を開放できる。リッド24は、乗員室に臨む表面を構成するアウター部材(樹脂成形品)26と、このアウター部材26の裏側に取り付けられ、ボックス本体22の内部に臨む裏面を構成するインナー部材28とから構成されている。
【0018】
図5に示すように、アウター部材26は、該アウター部材26の裏面を構成する第1層(基材層)34と、この第1層34の表側に重ねて形成された第2層(表皮層)36とを有する複層構造の積層部32で本体部分が構成されている。積層部32は、一方の上縁角部に操作ボタン30が収まる切り欠きが形成された略矩形状の板状体であり(
図3参照)、アウター部材26の意匠面をなす第2層36の表面が革等の表皮材を模して形成されている。また、積層部32は、第1の樹脂で形成された第1層34と、第2の樹脂で形成された第2層36とが板厚方向に重なり、第2の樹脂から硬化した第2層36自身の接合力により第1層34と第2層36とを一体化してある。
【0019】
前記第1層34および第2層36をなす樹脂としては、種々のものを採用し得る。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマー(TPE)など、第1層34と第2層36とで同じ素材にしたり、異なる素材を組み合わせたりすることができる。なお、実施例では、第1層34がポリプロピレンで形成され、第2層36がオレフィン系エラストマーで形成されている。
【0020】
図4および
図5に示すように、積層部32は、該積層部32の裏側に開放する凹状にそれぞれ形成され、該積層部32の外縁32aに対応するように断続的に並ぶ複数の収縮規制部38を備えている。収縮規制部38は、積層部32の表側に開口せずに第1層34の裏面に開口する有底の凹みであり、実施例では第1層34の裏面から第2層36に達するように形成されている。実施例では、板厚4mm(第1層2.5mm,第2層1.5mm)の積層部32に、0.5mm〜0.8mmの厚みで第2層36が残る深さで収縮規制部38が形成されている。収縮規制部38は、積層部32の裏側(収縮規制部38の開口側)から表側(収縮規制部38の底側)へ向かうにつれて開口幅が狭くなるように形成され、収縮規制部38を画成する壁が積層部32の板厚方向に対して3°〜10°の範囲(実施例では10°)で傾いている。収縮規制部38の開口形状は、四角形などの多角形、丸形や楕円形およびその他の形状を採用することができ、実施例では、収縮規制部38の開口形状が積層部32の対応する外縁32aに沿って長辺が延在する長方形状で形成されている(
図4参照)。収縮規制部38は、第1層34の裏面にあく開口を、長辺5mm〜10mmの範囲(実施例では10mm)、短辺2mm〜4mmの範囲(実施例では4mm)で設定することが好ましい。
【0021】
図3に示すように、実施例の積層部32には、上下左右の外縁32a全周に沿って複数の収縮規制部38が並べて設けられ、隣り合う収縮規制部38を結んだラインが積層部32の外縁32aに相似している。ここで、「複数の収縮規制部38が積層部32の外縁32aに対応して並ぶ」とは、隣り合う収縮規制部38を結んだラインが最も近接した積層部32の外縁32aと厳密な意味で一致する場合だけでなく、収縮規制部38が最も近接した積層部32の外縁32aに対して付かず離れない関係で並ぶ場合も含む。また、複数の収縮規制部38は、積層部32の中央よりも外縁側に偏倚した部位に並ぶように配置され、積層部32の対応する外縁32aから10mm〜30mmの範囲内に収縮規制部38を配置するのが好ましい。収縮規制部38を30mmより積層部32の対応する外縁32aから遠い位置に配置すると、収縮規制部38より外縁32a側において収縮規制部38による積層部32の変形防止効果が低下する。なお、収縮規制部38の積層部32の外縁32aに対する配置条件は、複数の収縮規制部38の並び方向に直交する方向において該収縮規制部38の中央を通るラインを基準としている。また、隣り合う収縮規制部38の間隔は、2mm〜4mmの範囲(実施例では4mm)に設定することが好ましく、収縮規制部38における積層部32の外縁32aに沿う方向の幅よりも小さく設定することが、積層部32の変形防止の観点から望ましい。
【0022】
次に、実施例に係るアウター部材(樹脂成形品)26の製造方法について説明する。実施例では、第1層34および第2層36を有するアウター部材26を二色成形によって製造している。実施例で用いられる型装置は、第1位置と第2位置との間で移動可能に設けられた共通型部40と、第1位置にある共通型部40に相対するように配置され、該共通型部40に対して進退移動する一次型部42と、第2位置にある共通型部40に相対するように配置され、該共通型部40に対して進退移動する二次型部44とを備えている(
図6参照)。共通型部40と一次型部42とを型閉めすることで、共通型部40と一次型部42との間に第1層34に合わせた第1キャビティ46が画成される(
図6(a)参照)。この際、共通型部40の成形面で第1層34の裏側を規定する一方、一次型部42の成形面で第1層34の表側を規定する。ここで、共通型部40の成形面には、前述した収縮規制部38を成形する突条48が設けられ、一次型部42の成形面には、突条48の先端部に合わせて型閉じ時に該先端部を受け入れ可能な凹部42aが設けられている。第1キャビティ46に第1の樹脂を注入し(
図6(b))、第1の樹脂を第1キャビティ46内で硬化させることで、突条48により収縮規制部38の一部(開口側)が形成された第1層34が成形される。なお、実施例では、射出成形法によって第1層34が成形される。
【0023】
前記共通型部40において収縮規制部38の一部を成形した突条48を該収縮規制部38に嵌め合わせた状態で、共通型部40に第1層34が残るように一次型部42を開く(
図6(c)参照)。共通型部40を第1位置から第2位置に移動して、一次型部42から二次型部44に対向するように入れ替える。共通型部40と二次型部44とを型閉めすることで、共通型部40に保持された第1層34と二次型部44との間に前記第2層36に合わせた第2キャビティ50が画成される(
図6(d)参照)。この際、第1層34に貫通形成された収縮規制部38を介して第1層34の表側に突出する突条48が第2キャビティ50に臨んでいる。第2キャビティ50に第2の樹脂を注入し(
図6(e))、第2の樹脂を第2キャビティ50内で硬化させることで、第1層34から連通する収縮規制部38が形成された第2層36が、第1層34と一体的に成形される(
図6(f))。なお、実施例では、射出成形法によって第2層36が成形される。
【0024】
〔実施例の作用〕
次に、実施例の作用について説明する。実施例のアウター部材26によれば、積層部32の裏側に開放する凹状に形成されて積層部32の外縁32aに対応して並ぶ複数の収縮規制部38の存在により、収縮規制部38の内外で第1層34を区切って、第1の樹脂から成形される第1層34の収縮を抑えることができる。すなわち、第1層34の表側に重ねて第2の樹脂から成形される第2層36と、第1層34との収縮差を小さくして、積層部32の反りなどの変形を防止することができる。また、積層部32に第1層34の裏面から第2層36に達するように収縮規制部38を形成することで、第1層34の板厚方向全体に亘って収縮規制部38が存在することになり、第1層34の収縮をより一段と抑えることができる。更に、収縮規制部38を積層部32の外縁32a側に偏倚した部位に形成することで、積層部32の外縁32a側から中央側へ向けて生じる第1層34の収縮を、外縁32aに沿って並ぶ複数の収縮規制部38によってより適切に抑えることができる。更にまた、積層部32の外縁32a全周に対応して収縮規制部38が並ぶように形成することで、積層部32の全体に亘って均一に第1層34の収縮を抑えることができる。このように、アウター部材26は、第1層34と第2層36からなる複層構造の積層部32が、精度よく、品質に優れている。
【0025】
実施例の製造方法によれば、第1キャビティ46において第1層34を成形した際に、収縮規制部38を形成して該収縮規制部38に嵌まった突条48によって、共通型部40に保持された第1層34の収縮をせき止めて、第1の樹脂から成形される第1層34の収縮を抑えることができる。従って、第1層34の表側に重ねて第2の樹脂から成形される第2層36と、第1層34との収縮差を小さくして、積層部32の反りなどの変形を防止することができる。また、突条48を収縮規制部38に嵌め合わせて共通型部40で第1層34に保持して該第1層の収縮を抑えた状態で、第1層34と二次型部44との間に画成した第2キャビティ50において、第2の樹脂から第2層36を第1層34に重ねて一体成形している。そして、アウター部材26を型装置から取り出した際に、突条48から外れた第1層34および第2層36が同時期に収縮することになるから、第1層34および第2層間の収縮差を抑えて、得られた積層部32の変形を防止することができる。
【0026】
前記共通型部40の突条によって積層部32に第1層34の裏面から第2層36に達するように収縮規制部38を成形することで、収縮規制部38に嵌まる突条48によって第1層34を板厚方向全体に亘ってせき止めて、第1層34の収縮をより一段と抑えることができる。更に、収縮規制部38を積層部32の外縁32a側に偏倚した部位に形成することで、積層部32の外縁32a側から中央側へ向けて生じる第1層34の収縮を、外縁32aに沿って並ぶ複数の収縮規制部38を規定する突条48によってより適切にせき止めることができる。更にまた、積層部32の外縁32a全周に対応して収縮規制部38が並ぶように形成することで、積層部32の全体に亘って均一に第1層34の収縮を抑えることができる。このように、実施例の製造方法で得られるアウター部材26は、第1層34と第2層36からなる複層構造の積層部32が、精度よく、品質に優れている。
【0027】
(実験)
以下の条件で設定した実験例および比較例について、積層部の変形量を確認した。実験例および比較例は、積層部を縦150mm×横150mmの角板形状に形成し、ポリプロピレンからなる第1層の厚み(T1)を2.5mmに設定すると共に、オレフィン系エラストマーからなる第2層の厚み(T2)を1.5mmに設定した。実験例には、第2層の残厚(T3)が0.8mmになるように第1層の裏面から第2層に達する深さで収縮規制部を形成し、各収縮規制部を積層部の対応する外縁に沿う長辺(K1:収縮規制部の並び方向の幅)が4mmで、短辺(K2:収縮規制部の並び方向と直交する方向の幅)が2.5mmで開口するように形成してある。なお、隣り合う収縮規制部の間隔(L)は、4mmに設定してある。また、各収縮規制部は、開口側から底に向かうにつれて狭くなるように積層部の板厚方向に対して10°の角度でテーパ(α)が設定されている。実験例には、積層部の外縁全周に対応して複数の収縮規制部が並ぶように形成され、対応する外縁からの離間間隔(W)は、表1に示す通りである。これに対して、比較例は、収縮規制部が設けられていない。実験例および比較例は、前記実施例で説明したような二色成形法によって成形し、得られた実験例および比較例について、積層部の中央と外縁との間で板厚方向にどれだけ変形しているかを確認した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、収縮規制部を設けた実験例は、収縮規制部を設けていない比較例と比べて積層部の変形が小さくなることが確認できた。
【0030】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のようにも変更可能である。
(1)樹脂成形品としては、グローブボックスに限らず、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスその他の車両内装部材に、本発明を適用可能である。また、車両内装部材に限らず、スポイラなどの車両外装部材にも本発明を適用可能である。なお、車両用以外の樹脂成形品にも適用可能である。
(2)樹脂成形品は、実施例のように全体が積層部で構成されるものに限らず、一部が複層構造の積層部で構成されるものであってもよい。
(3)積層部は、2層構造に限らず、3層以上の複層構造であってもよい。
(4)収縮規制部は、積層部の外縁に対応して1列に並べて形成する構成に限らず、2列以上の収縮規制部を積層部の外縁に対応して形成してもよい。この場合、収縮規制部の並び方向と直交する方向において、隣り合う列の収縮規制部同士が一致するように配置しても、一部が互いに重なるように配置しても、互いに重ならないように千鳥状に配置してもよい。
(5)収縮規制部は、大きさが全て同じであっても、適宜の区間などで大きさを揃えても、大きさが全て異なっていても、何れであってもよい。
(6)実施例では、共通型部に対して、一次型部と二次型部とを入れ替える二色成形方法を挙げたが、共通型部に対して一次型部を離間させることで、共通型部に保持された第1層と一次型部との間に第2キャビティを画成し、この第2キャビティに第2の樹脂を充填する二色成形方法であっても適用可能である。
【0031】
樹脂成形品としては、
図7および
図8に示すように、疑似的なステッチ模様52を形成したものであってもよい。積層部32は、該積層部32の表側(意匠面側)に突出する複数の糸目部54が形成された第1層34と、糸目部54の突出端部を露出させた状態で第1層34を覆うように形成された第2層36とで構成され、表側に臨む糸目部54によってステッチ模様52が表現される。この場合に、収縮規制部38は、第1層34において糸目部54に合わせて設けてもよく(
図8参照)、糸目部54から外れた位置に設けてもよい。ステッチ模様52を形成した積層部32は、以下のように製造することができる。共通型部40および一次型部42の間に画成された第1キャビティ46に第1の樹脂を注入し、該第1キャビティ46において、表側に並べて突出形成された複数の糸目部54および積層部32の外縁32aに対応して並ぶ収縮規制部38が形成された第1層34を成形する。収縮規制部38を成形した突条48を該収縮規制部38に嵌め合わせて共通型部40に第1層34を残したまま一次型部42を二次型部44に入れ替えて、二次型部44および共通型部40の間に画成された第2キャビティ50に第2の樹脂を注入し、該第2キャビティ50で第1層34の表側に第2層36を成形すればよい。