特許第6771873号(P6771873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771873
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】樹脂成形品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20201012BHJP
   B29C 33/42 20060101ALN20201012BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   B29C45/16
   !B29C33/42
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-182780(P2015-182780)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-56617(P2017-56617A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月25日
【審判番号】不服2019-13493(P2019-13493/J1)
【審判請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂樹
【合議体】
【審判長】 大島 祥吾
【審判官】 大畑 通隆
【審判官】 加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−8707(JP,A)
【文献】 特開2013−158975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00-45/84
B29C33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂で形成された第1層と、第2の樹脂で該第1層の表側に重ねて一体的に形成された第2層とを有する積層部を備えた樹脂成形品であって、
裏面が前記第1層で構成される前記積層部の裏側に開放する凹状にそれぞれ形成され、該積層部の外縁に対応して並ぶ複数の収縮規制部を備え、
前記複数の収縮規制部は、前記積層部の中央より外縁側に偏倚した部位に該積層部の外縁全周に沿わせて並べられ、隣り合う収縮規制部を結んだラインが該積層部の外縁に相似するように配置され
前記複数の収縮規制部は、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁から10mm〜30mmの範囲に配置されている
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記収縮規制部は、前記第1層の裏面から前記第2層に達するように形成された請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記収縮規制部における前記積層部の裏側に開放する開口は、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁に沿って長辺が延びる長方形状に形成されている請求項1または2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
第1の樹脂で形成された第1層と、第2の樹脂で該第1層の表側に重ねて一体的に形成された第2層とを有する積層部を備えた樹脂成形品の製造方法であって、
共通型部および一次型部の間に画成された第1キャビティに第1の樹脂を注入し、該第1キャビティにおいて、共通型部に設けられた複数の突条により前記積層部の裏側に開放する凹状でかつ該積層部の外縁に沿って並ぶ複数の収縮規制部を形成した第1層を成形し、
前記突条を前記収縮規制部に嵌め合わせて前記共通型部に前記第1層を残したまま一次型部を二次型部に入れ替えて、二次型部および前記第1層の間に第2キャビティを画成し、または一次型部を前記共通型部から離間させて、一次型部および第1層の間に第2キャビティを画成し、該第2キャビティに第2の樹脂を注入して、該第2キャビティで第1層の表側に前記第2層を成形し、
前記第1層を成形する際に、前記複数の収縮規制部を、前記積層部の中央より外縁側に偏倚した部位に該積層部の外縁全周に沿わせて並べると共に、隣り合う収縮規制部を結んだラインが該積層部の外縁に相似するように形成し、
前記複数の収縮規制部を、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁から10mm〜30mmの範囲に配置する
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1層の表側に突出する前記突条により、該第1層から前記第2層に達する前記収縮規制部を形成するようにした請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記収縮規制部における前記積層部の裏側に開放する開口を、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁に沿って長辺が延びる長方形状に形成する請求項4または5記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1層および第2層を少なくとも有する積層部が設けられた樹脂成形品およびこの樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両用パネルのように、硬質の基材層(第1層)と、この基材層を全体的に覆う軟質の表皮層(第2層)とからなる複層構造の部材がある。このような車両用パネルは、二色成形によって基材層と表皮層とを一体的に形成することが提案されている。二色成形による車両用パネルの製造方法を説明すると、第1の金型と第2の金型とにより画成される第1のキャビティに第1の樹脂を注入して、例えば1色目として基材層を成形する。第2の金型を取り外し、基材層を残した第1の金型に対して第3の金型を型閉めし、基材層と第3の金型との間に画成される第2のキャビティに第2の樹脂を注入して、2色目の表皮層を基材層上に形成する。二色成形によれば、異なる樹脂からなる複層構造の車両用パネルを、1つの型装置で製造することができると共に、基材層と表皮層とを組み合わせて接着する手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−26036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した二色成形で得られる車両用パネルは、1色目の基材層が成形収縮した後に、基材層上で2色目の表皮層を射出成形するので、基材層に表皮層の収縮が応力として残り、その結果、得られた車両用パネルが反るなどの変形が生じてしまう。
【0005】
すなわち本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、変形を抑えた樹脂成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の樹脂成形品は、
第1の樹脂で形成された第1層と、第2の樹脂で該第1層の表側に重ねて一体的に形成された第2層とを有する積層部を備えた樹脂成形品であって、
裏面が前記第1層で構成される前記積層部の裏側に開放する凹状にそれぞれ形成され、該積層部の外縁に対応して並ぶ複数の収縮規制部を備え、
前記複数の収縮規制部は、前記積層部の中央より外縁側に偏倚した部位に該積層部の外縁全周に沿わせて並べられ、隣り合う収縮規制部を結んだラインが該積層部の外縁に相似するように配置され
前記複数の収縮規制部は、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁から10mm〜30mmの範囲に配置されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、積層部の外縁に対応して収縮規制部を形成することで、第1層の型内での収縮を抑えて積層部の変形を防止することができる。また、収縮規制部を積層部の外縁側に偏倚した部位に形成することで、積層部の外縁側から中央側へ向けて生じる第1層の収縮をより一段と抑えることができる。更に、積層部の外縁全周に対応して収縮規制部を形成することで、積層部の全体に亘って第1層の収縮を抑えることができる。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記収縮規制部は、前記第1層の裏面から前記第2層に達するように形成されたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、第1層から第2層に達するように収縮規制部を形成することで、第1層の収縮をより一段と抑えることができる。
【0009】
請求項に係る発明では、前記収縮規制部における前記積層部の裏側に開放する開口は、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁に沿って長辺が延びる長方形状に形成されていることを要旨とする。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項に係る発明の樹脂成形品の製造方法は、
第1の樹脂で形成された第1層と、第2の樹脂で該第1層の表側に重ねて一体的に形成された第2層とを有する積層部を備えた樹脂成形品の製造方法であって、
共通型部および一次型部の間に画成された第1キャビティに第1の樹脂を注入し、該第1キャビティにおいて、共通型部に設けられた複数の突条により前記積層部の裏側に開放する凹状でかつ該積層部の外縁に沿って並ぶ複数の収縮規制部を形成した第1層を成形し、
前記突条を前記収縮規制部に嵌め合わせて前記共通型部に前記第1層を残したまま一次型部を二次型部に入れ替えて、二次型部および前記第1層の間に第2キャビティを画成し、または一次型部を前記共通型部から離間させて、一次型部および第1層の間に第2キャビティを画成し、該第2キャビティに第2の樹脂を注入して、該第2キャビティで第1層の表側に前記第2層を成形し、
前記第1層を成形する際に、前記複数の収縮規制部を、前記積層部の中央より外縁側に偏倚した部位に該積層部の外縁全周に沿わせて並べると共に、隣り合う収縮規制部を結んだラインが該積層部の外縁に相似するように形成し、
前記複数の収縮規制部を、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁から10mm〜30mmの範囲に配置することを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、第1層を成形した際に、収縮規制部を形成して該収縮規制部に嵌まった突条によって共通型部に保持された第1層の型内での収縮を抑えることができ、第1層と第2層との収縮差に起因する積層部の変形を防止することができる。また、積層部の外縁側から中央側へ向けて生じる第1層の収縮を、積層部の中央より外縁側に偏倚した部位に形成した複数の収縮規制部に嵌まる突条により、好適に抑えることができる。更に、積層部の外縁全周に対応して形成した収縮規制部に嵌まる突条により、第1層の全体に亘って収縮を抑えることができる。
【0011】
請求項に係る発明では、前記第1層の表側に突出する前記突条により、該第1層から前記第2層に達する前記収縮規制部を形成するようにしたことを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、第1層を成形した際に、収縮規制部に嵌まった突条が第1層の厚み方向全体に延在することになるから、第1層の収縮をより一段と抑えることができる。
【0013】
請求項に係る発明では、前記収縮規制部における前記積層部の裏側に開放する開口を、該収縮規制部が沿う前記積層部の外縁に沿って長辺が延びる長方形状に形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る樹脂成形品によれば、積層部の変形を抑えることができる。本発明に係る樹脂成形品の製造方法によれば、変形が抑えられた積層部を有する樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係るグローブボックスが設けられたインストルメントパネルを示す概略斜視図である。
図2】実施例のグローブボックスを示す概略斜視図である。
図3】実施例のリッドのアウター部材を概略的に示す背面図である。
図4】実施例のアウター部材の要部を概略的に示す背面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6】実施例のアウター部材の製造工程を概略的に示す説明図である。
図7】(a)は変更例のアウター部材を概略的に示す正面図であり、(b)は(a)のB部拡大図である。
図8】変更例のアウター部材の要部を破断して示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る樹脂成形品およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、樹脂成形品として車両内装部材の一つである図1および図2に示すようなグローブボックス20におけるリッド24のアウター部材26を挙げて説明する。ここで、アウター部材(樹脂成形品)26において、意匠面となる面が向く側を表側といい、他の部材(実施例ではインナー部材28)への取り付け面が向く側を裏側と指称する。例えば、グローブボックス20であれば、意匠面が向く乗員室側が表側となり、グローブボックス20が取り付けられる車体側が裏側となる。
【実施例】
【0017】
図1および図2に示すように、実施例に係るグローブボックス20は、インストルメントパネル10の内側に配設され、乗員室側に開口した箱状のボックス本体22と、このボックス本体22の下部にヒンジを介して接続され、ボックス本体22の開口を開閉するリッド24とから構成されている。グローブボックス20は、ボックス本体22の開口を閉じた閉じ姿勢でリッド24がインストルメントパネルの意匠面の一部をなすように構成され、ロック装置(図示せず)により閉じ姿勢でリッド24が保持される。また、グローブボックス20は、操作ボタン30を操作してロック装置によるロックを解除することで、リッド24の下部のヒンジを支点として乗員室側へ傾けてボックス本体22の開口を開放できる。リッド24は、乗員室に臨む表面を構成するアウター部材(樹脂成形品)26と、このアウター部材26の裏側に取り付けられ、ボックス本体22の内部に臨む裏面を構成するインナー部材28とから構成されている。
【0018】
図5に示すように、アウター部材26は、該アウター部材26の裏面を構成する第1層(基材層)34と、この第1層34の表側に重ねて形成された第2層(表皮層)36とを有する複層構造の積層部32で本体部分が構成されている。積層部32は、一方の上縁角部に操作ボタン30が収まる切り欠きが形成された略矩形状の板状体であり(図3参照)、アウター部材26の意匠面をなす第2層36の表面が革等の表皮材を模して形成されている。また、積層部32は、第1の樹脂で形成された第1層34と、第2の樹脂で形成された第2層36とが板厚方向に重なり、第2の樹脂から硬化した第2層36自身の接合力により第1層34と第2層36とを一体化してある。
【0019】
前記第1層34および第2層36をなす樹脂としては、種々のものを採用し得る。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマー(TPE)など、第1層34と第2層36とで同じ素材にしたり、異なる素材を組み合わせたりすることができる。なお、実施例では、第1層34がポリプロピレンで形成され、第2層36がオレフィン系エラストマーで形成されている。
【0020】
図4および図5に示すように、積層部32は、該積層部32の裏側に開放する凹状にそれぞれ形成され、該積層部32の外縁32aに対応するように断続的に並ぶ複数の収縮規制部38を備えている。収縮規制部38は、積層部32の表側に開口せずに第1層34の裏面に開口する有底の凹みであり、実施例では第1層34の裏面から第2層36に達するように形成されている。実施例では、板厚4mm(第1層2.5mm,第2層1.5mm)の積層部32に、0.5mm〜0.8mmの厚みで第2層36が残る深さで収縮規制部38が形成されている。収縮規制部38は、積層部32の裏側(収縮規制部38の開口側)から表側(収縮規制部38の底側)へ向かうにつれて開口幅が狭くなるように形成され、収縮規制部38を画成する壁が積層部32の板厚方向に対して3°〜10°の範囲(実施例では10°)で傾いている。収縮規制部38の開口形状は、四角形などの多角形、丸形や楕円形およびその他の形状を採用することができ、実施例では、収縮規制部38の開口形状が積層部32の対応する外縁32aに沿って長辺が延在する長方形状で形成されている(図4参照)。収縮規制部38は、第1層34の裏面にあく開口を、長辺5mm〜10mmの範囲(実施例では10mm)、短辺2mm〜4mmの範囲(実施例では4mm)で設定することが好ましい。
【0021】
図3に示すように、実施例の積層部32には、上下左右の外縁32a全周に沿って複数の収縮規制部38が並べて設けられ、隣り合う収縮規制部38を結んだラインが積層部32の外縁32aに相似している。ここで、「複数の収縮規制部38が積層部32の外縁32aに対応して並ぶ」とは、隣り合う収縮規制部38を結んだラインが最も近接した積層部32の外縁32aと厳密な意味で一致する場合だけでなく、収縮規制部38が最も近接した積層部32の外縁32aに対して付かず離れない関係で並ぶ場合も含む。また、複数の収縮規制部38は、積層部32の中央よりも外縁側に偏倚した部位に並ぶように配置され、積層部32の対応する外縁32aから10mm〜30mmの範囲内に収縮規制部38を配置するのが好ましい。収縮規制部38を30mmより積層部32の対応する外縁32aから遠い位置に配置すると、収縮規制部38より外縁32a側において収縮規制部38による積層部32の変形防止効果が低下する。なお、収縮規制部38の積層部32の外縁32aに対する配置条件は、複数の収縮規制部38の並び方向に直交する方向において該収縮規制部38の中央を通るラインを基準としている。また、隣り合う収縮規制部38の間隔は、2mm〜4mmの範囲(実施例では4mm)に設定することが好ましく、収縮規制部38における積層部32の外縁32aに沿う方向の幅よりも小さく設定することが、積層部32の変形防止の観点から望ましい。
【0022】
次に、実施例に係るアウター部材(樹脂成形品)26の製造方法について説明する。実施例では、第1層34および第2層36を有するアウター部材26を二色成形によって製造している。実施例で用いられる型装置は、第1位置と第2位置との間で移動可能に設けられた共通型部40と、第1位置にある共通型部40に相対するように配置され、該共通型部40に対して進退移動する一次型部42と、第2位置にある共通型部40に相対するように配置され、該共通型部40に対して進退移動する二次型部44とを備えている(図6参照)。共通型部40と一次型部42とを型閉めすることで、共通型部40と一次型部42との間に第1層34に合わせた第1キャビティ46が画成される(図6(a)参照)。この際、共通型部40の成形面で第1層34の裏側を規定する一方、一次型部42の成形面で第1層34の表側を規定する。ここで、共通型部40の成形面には、前述した収縮規制部38を成形する突条48が設けられ、一次型部42の成形面には、突条48の先端部に合わせて型閉じ時に該先端部を受け入れ可能な凹部42aが設けられている。第1キャビティ46に第1の樹脂を注入し(図6(b))、第1の樹脂を第1キャビティ46内で硬化させることで、突条48により収縮規制部38の一部(開口側)が形成された第1層34が成形される。なお、実施例では、射出成形法によって第1層34が成形される。
【0023】
前記共通型部40において収縮規制部38の一部を成形した突条48を該収縮規制部38に嵌め合わせた状態で、共通型部40に第1層34が残るように一次型部42を開く(図6(c)参照)。共通型部40を第1位置から第2位置に移動して、一次型部42から二次型部44に対向するように入れ替える。共通型部40と二次型部44とを型閉めすることで、共通型部40に保持された第1層34と二次型部44との間に前記第2層36に合わせた第2キャビティ50が画成される(図6(d)参照)。この際、第1層34に貫通形成された収縮規制部38を介して第1層34の表側に突出する突条48が第2キャビティ50に臨んでいる。第2キャビティ50に第2の樹脂を注入し(図6(e))、第2の樹脂を第2キャビティ50内で硬化させることで、第1層34から連通する収縮規制部38が形成された第2層36が、第1層34と一体的に成形される(図6(f))。なお、実施例では、射出成形法によって第2層36が成形される。
【0024】
〔実施例の作用〕
次に、実施例の作用について説明する。実施例のアウター部材26によれば、積層部32の裏側に開放する凹状に形成されて積層部32の外縁32aに対応して並ぶ複数の収縮規制部38の存在により、収縮規制部38の内外で第1層34を区切って、第1の樹脂から成形される第1層34の収縮を抑えることができる。すなわち、第1層34の表側に重ねて第2の樹脂から成形される第2層36と、第1層34との収縮差を小さくして、積層部32の反りなどの変形を防止することができる。また、積層部32に第1層34の裏面から第2層36に達するように収縮規制部38を形成することで、第1層34の板厚方向全体に亘って収縮規制部38が存在することになり、第1層34の収縮をより一段と抑えることができる。更に、収縮規制部38を積層部32の外縁32a側に偏倚した部位に形成することで、積層部32の外縁32a側から中央側へ向けて生じる第1層34の収縮を、外縁32aに沿って並ぶ複数の収縮規制部38によってより適切に抑えることができる。更にまた、積層部32の外縁32a全周に対応して収縮規制部38が並ぶように形成することで、積層部32の全体に亘って均一に第1層34の収縮を抑えることができる。このように、アウター部材26は、第1層34と第2層36からなる複層構造の積層部32が、精度よく、品質に優れている。
【0025】
実施例の製造方法によれば、第1キャビティ46において第1層34を成形した際に、収縮規制部38を形成して該収縮規制部38に嵌まった突条48によって、共通型部40に保持された第1層34の収縮をせき止めて、第1の樹脂から成形される第1層34の収縮を抑えることができる。従って、第1層34の表側に重ねて第2の樹脂から成形される第2層36と、第1層34との収縮差を小さくして、積層部32の反りなどの変形を防止することができる。また、突条48を収縮規制部38に嵌め合わせて共通型部40で第1層34に保持して該第1層の収縮を抑えた状態で、第1層34と二次型部44との間に画成した第2キャビティ50において、第2の樹脂から第2層36を第1層34に重ねて一体成形している。そして、アウター部材26を型装置から取り出した際に、突条48から外れた第1層34および第2層36が同時期に収縮することになるから、第1層34および第2層間の収縮差を抑えて、得られた積層部32の変形を防止することができる。
【0026】
前記共通型部40の突条によって積層部32に第1層34の裏面から第2層36に達するように収縮規制部38を成形することで、収縮規制部38に嵌まる突条48によって第1層34を板厚方向全体に亘ってせき止めて、第1層34の収縮をより一段と抑えることができる。更に、収縮規制部38を積層部32の外縁32a側に偏倚した部位に形成することで、積層部32の外縁32a側から中央側へ向けて生じる第1層34の収縮を、外縁32aに沿って並ぶ複数の収縮規制部38を規定する突条48によってより適切にせき止めることができる。更にまた、積層部32の外縁32a全周に対応して収縮規制部38が並ぶように形成することで、積層部32の全体に亘って均一に第1層34の収縮を抑えることができる。このように、実施例の製造方法で得られるアウター部材26は、第1層34と第2層36からなる複層構造の積層部32が、精度よく、品質に優れている。
【0027】
(実験)
以下の条件で設定した実験例および比較例について、積層部の変形量を確認した。実験例および比較例は、積層部を縦150mm×横150mmの角板形状に形成し、ポリプロピレンからなる第1層の厚み(T1)を2.5mmに設定すると共に、オレフィン系エラストマーからなる第2層の厚み(T2)を1.5mmに設定した。実験例には、第2層の残厚(T3)が0.8mmになるように第1層の裏面から第2層に達する深さで収縮規制部を形成し、各収縮規制部を積層部の対応する外縁に沿う長辺(K1:収縮規制部の並び方向の幅)が4mmで、短辺(K2:収縮規制部の並び方向と直交する方向の幅)が2.5mmで開口するように形成してある。なお、隣り合う収縮規制部の間隔(L)は、4mmに設定してある。また、各収縮規制部は、開口側から底に向かうにつれて狭くなるように積層部の板厚方向に対して10°の角度でテーパ(α)が設定されている。実験例には、積層部の外縁全周に対応して複数の収縮規制部が並ぶように形成され、対応する外縁からの離間間隔(W)は、表1に示す通りである。これに対して、比較例は、収縮規制部が設けられていない。実験例および比較例は、前記実施例で説明したような二色成形法によって成形し、得られた実験例および比較例について、積層部の中央と外縁との間で板厚方向にどれだけ変形しているかを確認した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、収縮規制部を設けた実験例は、収縮規制部を設けていない比較例と比べて積層部の変形が小さくなることが確認できた。
【0030】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のようにも変更可能である。
(1)樹脂成形品としては、グローブボックスに限らず、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスその他の車両内装部材に、本発明を適用可能である。また、車両内装部材に限らず、スポイラなどの車両外装部材にも本発明を適用可能である。なお、車両用以外の樹脂成形品にも適用可能である。
(2)樹脂成形品は、実施例のように全体が積層部で構成されるものに限らず、一部が複層構造の積層部で構成されるものであってもよい。
(3)積層部は、2層構造に限らず、3層以上の複層構造であってもよい。
(4)収縮規制部は、積層部の外縁に対応して1列に並べて形成する構成に限らず、2列以上の収縮規制部を積層部の外縁に対応して形成してもよい。この場合、収縮規制部の並び方向と直交する方向において、隣り合う列の収縮規制部同士が一致するように配置しても、一部が互いに重なるように配置しても、互いに重ならないように千鳥状に配置してもよい。
(5)収縮規制部は、大きさが全て同じであっても、適宜の区間などで大きさを揃えても、大きさが全て異なっていても、何れであってもよい。
(6)実施例では、共通型部に対して、一次型部と二次型部とを入れ替える二色成形方法を挙げたが、共通型部に対して一次型部を離間させることで、共通型部に保持された第1層と一次型部との間に第2キャビティを画成し、この第2キャビティに第2の樹脂を充填する二色成形方法であっても適用可能である。
【0031】
樹脂成形品としては、図7および図8に示すように、疑似的なステッチ模様52を形成したものであってもよい。積層部32は、該積層部32の表側(意匠面側)に突出する複数の糸目部54が形成された第1層34と、糸目部54の突出端部を露出させた状態で第1層34を覆うように形成された第2層36とで構成され、表側に臨む糸目部54によってステッチ模様52が表現される。この場合に、収縮規制部38は、第1層34において糸目部54に合わせて設けてもよく(図8参照)、糸目部54から外れた位置に設けてもよい。ステッチ模様52を形成した積層部32は、以下のように製造することができる。共通型部40および一次型部42の間に画成された第1キャビティ46に第1の樹脂を注入し、該第1キャビティ46において、表側に並べて突出形成された複数の糸目部54および積層部32の外縁32aに対応して並ぶ収縮規制部38が形成された第1層34を成形する。収縮規制部38を成形した突条48を該収縮規制部38に嵌め合わせて共通型部40に第1層34を残したまま一次型部42を二次型部44に入れ替えて、二次型部44および共通型部40の間に画成された第2キャビティ50に第2の樹脂を注入し、該第2キャビティ50で第1層34の表側に第2層36を成形すればよい。
【符号の説明】
【0032】
32 積層部,32a 外縁,34 第1層,36 第2層,38 収縮規制部,
40 共通型部,42 一次型部,44 二次型部,46 第1キャビティ,48 突条,
50 第2キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8