(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の乳房X線撮影装置及び乳房X線撮影方法について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の構成を示す断面図である。
【0013】
図1及び
図2は、受診者の乳房(被検体)Bを撮影する本実施形態に係る乳房X線撮影装置(マンモグラフィ装置)1を示す。乳房X線撮影装置1は、撮影台装置11及び画像処理装置12によって構成される。
【0014】
撮影台装置11は、可動照射部21、可動検出部22、スタンド部23、移動機構24(
図2に図示)、及び操作部25を備える。可動照射部21は、移動機構24を介して回転可能なようにスタンド部23に支持される。
【0015】
可動照射部21は、X線管(X線源)21a及びフェイスガード21bを備える。
【0016】
X線管21aは、後述する高電圧供給装置25dからの高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じて乳房Bを介して、後述する撮影台22bに向かってX線を照射するための真空管である。
【0017】
フェイスガード21bは、撮影時に受診者の頭部をX線被曝から保護するための防護器具である。
【0018】
なお、可動照射部21は、図示しないが、X線管21aによって発生されたX線の線質を調整したり照射野を制限したりするためのX線絞りや線質フィルタ等の調整器具を備える場合もある。
【0019】
可動検出部22は、圧迫板22a、撮影台22b、及びFPD(flat panel detector)22cを備える。
【0020】
圧迫板22aは、撮影台22bとの間で乳房Bを圧迫するために撮影台22bの上方に設けられる。圧迫板22aは、透明な樹脂で形成されており、撮影台22bに対して接離可能に支持されている。そして、圧迫板22aを撮影台22b側に移動させることによって乳房Bを圧迫し、乳房Bの厚さを薄く略均一にすることが可能である。後述する圧迫フットペダル25aが技師等の撮影者によって操作された場合に、圧迫板22aを上下方向に移動させるためのモータからなる駆動機構(図示しない)が駆動することによって、圧迫板22aは電動で上下方向に移動する。なお、撮影者によるノブ(図示しない)の操作に従って、圧迫板22aが手動的に上下方向に移動する構成であってもよい。
【0021】
撮影台22bは、乳房Bを透過したX線を検出するためのX線検出器としてのFPD22cと、散乱線を除去して撮影画像のコントラストを改善するためのグリッド(図示しない)とを内部に備えた台である。FPD22cには、複数の検出素子が二次元に配列されており、各検出素子間には、走査線と信号線とが直交するように配設されている。FPD22cから出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データは、デジタル信号に変換され、画像処理装置12に出力される。
【0022】
スタンド部23は、後述する移動機構24を介して可動照射部21及び可動検出部22を支持する。
【0023】
図2に示すように、移動機構24は、可動照射部21に連結される。移動機構24がスタンド部23に対して回転することで、移動機構24は、スタンド部23に対して可動照射部21を左右方向に回転移動させる。
【0024】
移動機構24は、可動検出部22に連結可能である。移動機構24が可動検出部22に連結された連結状態の場合、移動機構24がスタンド部23に対して回転することで、移動機構24は、スタンド部23に対して可動照射部21及び可動検出部22を一体として左右方向に回転移動させる。一方で、移動機構24が可動検出部22に連結されていない非連結状態の場合、移動機構24がスタンド部23に対して回転することで、移動機構24は、スタンド部23に対して可動照射部21のみを左右方向に回転移動させる。
【0025】
移動機構24と可動検出部22とは、例えば、双方にギアを設け、可動検出部22は、ギアが噛み合った状態で移動機構24と連結され、ギアが噛み合っていない状態で移動機構24から切り離される。
【0026】
このように、可動検出部22が移動機構24と切り離された状態の場合、すなわち、トモシンセシス撮影の場合、スタンド部23に対して可動検出部22を固定したまま、スタンド部23に対する移動機構24の回転に従って可動照射部21のみが回転移動する。一方で、可動検出部22が移動機構24と連結状態の場合、すなわち、CC撮影(頭尾方向の撮影)、MLO撮影(内外斜位方向の撮影)の場合、スタンド部23に対する移動機構24の回転に従って可動照射部21及び可動検出部22が一体として回転移動する。
【0027】
可動検出部22の移動機構24との連結、又は、切り離しを制御することで、乳房X線撮影装置1では、CC撮影、MLO撮影、及びトモシンセシス撮影を含む種々の撮影モードでの撮影が可能である。トモシンセシス撮影とは、圧迫された乳房に対してX線管21aを回転させながら複数の撮影角度でX線撮影を行ない、複数の撮影角度に係る複数のX線透過像(投影像)を収集する撮影方法である。トモシンセシス撮影によれば、乳房Bに向けて複数の撮影方向からX線を照射することによって取得された複数のX線投影画像を用いて3D(立体)断層像を生成することもできる。
【0028】
図3は、トモシンセシス撮影を説明するための図である。
【0029】
図3は、X線管21a、圧迫板22a、撮影台22b、及びFPD22cを示す。X線管21aが回転軸Rの周りに回転することにより、X線管21aは、
図3に示すようにFPD22cの上方において円弧を描くように回転移動する。例えば、正方向の回転の場合には、X線管21aは、角度−X°から正対位置(角度0°)を介して角度+X°まで右周りの向き(
図3の矢印)に回転する。なお、一般的に、トモシンセシス撮影におけるX線管21aの振り角は、9°(X=4.5)〜50°(X=25)程度である。ここで、正対位置とは、CC撮影におけるX線管21aの位置を意味する。
【0030】
図1及び
図2の説明に戻って、操作部25は、圧迫フットペダル25a、Cアーム上下/回転微調整スイッチ25b、撮影条件設定パネル25c、及び高電圧供給装置25dを備える。
【0031】
圧迫フットペダル25aは、圧迫板22aの上下方向への位置を調整するための、操作者が踏むためのペダルである。
【0032】
Cアーム上下/回転微調整スイッチ25bは、可動照射部21及び可動検出部22を上下に移動させたり、可動照射部21のみ、又は、可動照射部21及び可動検出部22を一体として回転させたりするためのスイッチである。
【0033】
撮影条件設定パネル25cは、X線撮影の条件を設定するためのパネルである。
【0034】
高電圧供給装置25dは、可動照射部21のX線管21aに電圧を供給する装置である。
【0035】
撮影台装置11のX線管21aによってX線が発生されると、X線は圧迫板22aと撮影台22bとの間で圧迫された乳房Bに照射される。そして、乳房Bを透過したX線は撮影台22bのFPD22cによって検出されて投影データに変換され、画像処理装置12に出力される。
【0036】
画像処理装置12は、乳房X線撮影装置1全体の動作制御や、撮影台装置11によって取得された投影データに基づいてX線透過画像を生成したり、X線透過画像に関する画像処理等を行なったりする装置である。画像処理装置12は、入力回路33及びディスプレイ34などを含む。
【0037】
図4は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1に備える画像処理装置12の構成を示す図である。
【0038】
図4は、乳房X線撮影装置1に備える画像処理装置12を示す。画像処理装置12は、処理回路31、記憶回路(記憶部)32、入力回路(入力部)33、ディスプレイ(表示部)34、及びIF(通信部)35を備える。
【0039】
処理回路31は、記憶回路32に格納されている各種制御プログラムを読み出して各種演算を行なうと共に、記憶回路32、入力回路33、ディスプレイ34、及びIF35における処理動作を統括的に制御する。
【0040】
処理回路31は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及び、プログラマブル論理デバイスなどの回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などの回路が挙げられる。処理回路31はメモリに記憶された、又は、処理回路31内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで
図5に示す機能を実現する。
【0041】
また、処理回路31は、単一の回路として構成されてもよいし、複数の独立した回路を組み合わせて1の処理回路31として構成されてもよい。処理回路31が複数の回路によって構成される場合、プログラムを記憶するメモリは回路ごとに個別に設けられるものであってもよいし、後述する記憶回路32が各回路の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0042】
記憶回路32は、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。記憶回路32は、USB(universal serial bus)メモリ及びDVD(digital video disk))などの可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路32は、処理回路31において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ34への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路33によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を含めることもできる。
【0043】
入力回路33は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイス(マウス等)やキーボード等の入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路33に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路33はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路31に出力する。なお、乳房X線撮影装置1は、入力デバイスがディスプレイ34と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0044】
ディスプレイ34は、LCD(liquid crystal display)等の表示手段によって構成される。ディスプレイ34は、処理回路31からの指示に応じて、各種操作画面や、処理回路31によって生成されたデータ等の各種表示情報を表示させる。
【0045】
IF(interface)35は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。乳房X線撮影装置1がネットワーク上に設けられる場合、IF35は、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、IF35は、乳房X線撮影装置1によって生成された画像データを画像管理装置や読影端末(図示しない)に送信したりして、外部装置と通信動作を行なう。
【0046】
続いて、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の機能について説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の機能を示すブロック図である。
【0048】
画像処理装置12の処理回路31がプログラムを実行することによって、
図5に示すように、処理回路31は、操作支援機能(操作支援手段)31a、(モード設定手段)31b、撮影条件設定機能(撮影条件設定手段)31c、トモシンセシス撮影機能(トモシンセシス撮影手段)31d、及び撮影シーケンス設定機能(撮影シーケンス設定手段)31eを有する。
【0049】
なお、処理回路31の操作支援機能31a、モード設定機能31b、撮影条件設定機能31c、トモシンセシス撮影機能31d、及び撮影シーケンス設定機能31eがそれぞれプログラムとして構成され、1の回路が操作支援機能31a、モード設定機能31b、撮影条件設定機能31c、トモシンセシス撮影機能31d、及び撮影シーケンス設定機能31eを実行することができる。又は、操作支援機能31a、モード設定機能31b、撮影条件設定機能31c、トモシンセシス撮影機能31d、及び撮影シーケンス設定機能31eは専用の独立した複数の回路にそれぞれ実装されてもよい。
【0050】
操作支援機能31aは、操作者に対する情報の表示部34への表示に、基礎的な操作を入力回路33によって行なうことができるGUI(graphical user interface)等のユーザインターフェースとして機能する。
【0051】
モード設定機能31bは、操作支援機能31aを介して入力回路33から入力された指示に従って、CC撮影、MLO撮影、及びトモシンセシス撮影などの撮影モードを設定する機能である。
【0052】
撮影条件設定機能31cは、モード設定機能31bによって撮影モードがトモシンセシス撮影と設定されると、操作支援機能31aを介して入力回路33(又は
図1に図示する撮影条件設定パネル25c)から入力された指示に従って、トモシンセシス撮影のための撮影条件を設定する機能である。ここで、撮影条件は、関心領域、1撮影当たりの時間(撮影時間)、トモシンセシス撮影時間などを含む。
【0053】
トモシンセシス撮影機能31dは、撮影台装置11の圧迫板22aによる乳房Bの圧迫状態で、撮影条件設定機能31cによって設定された撮影条件に従い、断続する複数回の撮影を行なうようにX線管21a及びFPD22cを制御するとともに、複数回の撮影のうち最初の撮影開始から最終の撮影終了までの間(画像収集時間)でX線管21aの回転移動速度が変化するようにトモシンセシス撮影を実行する機能である。
【0054】
図6は、X線管21aの回転移動速度の変化例を説明するための図である。
【0055】
図6は、角度−X°から正対位置(角度0°)を介して角度+X°まで右周りに回転するX線管21aの回転移動区間Wを示す。
図6は、X線管21aの回転移動に伴う回転移動区間Wのうち、正対位置を中心に含む回転移動区間(第1回転移動区間W1)と、その他の回転移動区間(第2回転移動区間W2)とを示す。第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度が、第2回転移動区間W2における移動速度より低速となるように制御される。
【0056】
第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度は、X線透過画像の必要とされる分解能や、各撮影の撮影時間(照射時間)などに基づいて求めることができる。また、第2回転移動区間W2におけるX線管21aの回転移動速度は、第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度や、X線管21aの回転移動区間Wの距離(角度−X°〜+X°)などに基づいて求めることができる。ここで、X線管21aの回転移動区間Wの距離は、従来技術によるものと同一とすればよい。
【0057】
図5の説明に戻って、トモシンセシス撮影機能31dは、撮影制御機能(撮影制御手段)311、速度制御機能(速度制御手段)312、及び画像生成機能(画像生成手段)313を有する。
【0058】
撮影制御機能311は、断続する複数回の撮影を行なうようにX線管21a及びX線検出器22cを制御する機能である。
【0059】
速度制御機能312は、断続する複数回の撮影のうち最初の撮影開始から最終の撮影終了までの間でX線管21aの回転移動速度が変化するように移動機構24を制御する機能である。
【0060】
画像生成機能313は、トモシンセシス撮影の各撮影によって得られデジタル化されたデータに基づいてX線透過画像を生成する機能である。また、画像生成機能313は、複数の投影角度に相当する複数のX線透過画像に基づいて3D断層像を生成する機能を含むこともできる。
【0061】
このようにして、トモシンセシス撮影機能31dは、撮影台装置11の圧迫板22aによる乳房Bの圧迫状態で、断続する複数回の撮影を行なうようにX線管21a及びFPD22cを制御し、複数回の撮影のうち最初の撮影開始から最終の撮影終了までの間でX線管21aの回転移動速度が変化するように移動機構24を制御してトモシンセシス撮影を実行する。
【0062】
図7は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1が実行するトモシンセシス撮影の撮影シーケンスの第1例を示す図である。
図8は、
図7に示す撮影シーケンスに基づく撮影角度を示す図である。
【0063】
図7の上段は、断続する複数回、例えば11回の撮影F1〜F11のタイミングを示すタイムチャートである。なお、トモシンセシス撮影に係る撮影回数は11回に限定されるものではなく、2回以上の複数回であればよい。
【0064】
図7の下段は、X線管21aの回転移動速度の推移を示すタイムチャートである。
図7の下段に示すように、トモシンセシス撮影の画像収集時間Tにおいて、11回の撮影F1〜F11の各撮影中の区間で一定となるように、かつ、各撮影中以外の区間で変化するようにX線管21aの回転移動速度が設定される。トモシンセシス撮影の画像収集時間Tは、
図6に示す回転移動区間Wにおける回転移動時間に相当する。
【0065】
図7の下段に示すトモシンセシス撮影の画像収集時間Tは、
図6に示す第1回転移動区間W1の回転移動時間に相当する第1回転移動時間T1と、
図6に示す第2回転移動区間W2の回転移動時間に相当する第2回転移動時間T2とを含む。第1回転移動時間T1で、
図7の上段に示す第4撮影F4から第8撮影F8が行なわれる。第2回転移動時間T2で、
図7の上段に示す第1撮影F1から第3撮影F3と第9撮影F9から第11撮影F11とが行なわれる。
【0066】
図7に示す11回の撮影F1〜F11のタイミングと、X線管21aの回転移動速度とによると、
図8に示すように、一部が不等角度間隔の11個の撮影角度にて11回の撮影F1〜F11が行なわれることになる。具体的には、
図8に示すように、
図7に示す第1回転移動時間T1に相当する第1回転移動区間W1(
図6に図示)では、第2回転移動時間T2に相当する第2回転移動区間W2(
図6に図示)よりも密な複数の撮影角度で撮影されることになる。
【0067】
図7に示す撮影シーケンスによれば、トモシンセシス撮影の画像収集時間Tと撮影の時間間隔とを従来技術と同一としながら、第1回転移動区間W1(
図6に図示)内の撮影で得られる分解能が高いX線透過画像の数を増加させることができる。
【0068】
なお、トモシンセシス撮影は、画像収集時間Tと、画像収集時間Tの前段の加速時間(助走時間)と、画像収集時間Tの後段の減速時間とによって構成される。加速時間には、X線管21aを停止状態からトモシンセシス撮影に必要な回転移動速度までX線管21aを加速させることができ、かつ、撮影台装置11(
図1及び
図2に図示)を振動させないように緩やかに加速させることができる十分な時間が与えられる。減速時間についても同様に、X線管21aをトモシンセシス撮影に必要な回転移動速度から停止状態までX線管21aを減速させることができ、かつ、撮影台装置11(
図1及び
図2に図示)を振動させないように緩やかに減速させることができる十分な時間が与えられる。
【0069】
図5の説明に戻って、乳房X線撮影装置1が撮影シーケンス設定機能31eを有する場合もある。乳房X線撮影装置1が撮影シーケンス設定機能31eを有する場合について説明する。
【0070】
撮影シーケンス設定機能31eは、撮影条件設定機能31cによって設定された撮影条件に従って、トモシンセシス撮影のための撮影シーケンスを設定する機能である。撮影シーケンス設定機能31eは、複数回の撮影の間隔が一定の等時間間隔シーケンスS1か、又は、複数の撮影角度の間隔が一定の等角度間隔シーケンスS2を設定する。
【0071】
撮影シーケンス設定機能31eは、等時間間隔シーケンスS1の場合、トモシンセシス撮影の画像収集時間TでX線管21aの回転移動速度が変化する速度推移(
図7の下段に図示)に、従来技術と同様の撮影の等時間間隔(
図7の上段に図示)を組み合わせた撮影シーケンスを設定する。一方で、撮影シーケンス設定機能31eは、等角度間隔シーケンスS2の場合、トモシンセシス撮影の画像収集時間TでX線管21aの回転移動速度が変化する速度推移(後述する
図10の下段に図示)に、従来技術と同様に等角度間隔で撮影されるように設計された撮影の時間間隔(後述する
図10の上段に図示)を設定する。
【0072】
ここで、等時間間隔シーケンスS1の場合、撮影シーケンス設定機能31eは、X線管21aの回転移動速度の変化に因らずに一定の時間間隔(
図7の上段に図示)で撮影を実行する。その結果、複数回の撮影が実行される角度間隔が不等間隔(
図8に図示)となる。
【0073】
一方で、等角度間隔シーケンスS2の場合、撮影シーケンス設定機能31eは、複数回の撮影が実行される角度間隔を等間隔(後述する
図9に図示)とするために、X線管21aの回転移動速度の変化に応じて複数回の撮影タイミングを不等間隔(後述する
図10の上段に図示)とする。
【0074】
等時間間隔シーケンスS1については
図7及び
図8を用いて前述したので、等角度間隔シーケンスS2について次に説明する。
【0075】
図9は、等間隔の撮影角度を示す図である。
図10は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1が実行するトモシンセシス撮影の撮影シーケンスの第2例を示す図である。
【0076】
図9は、等角度間隔シーケンスS2が設定された場合において、断続する複数回、例えば11回の撮影F1〜F11における撮影角度を示す。なお、トモシンセシス撮影に係る撮影回数は11回に限定されるものではなく、2回以上の複数回であればよい。
【0077】
図10の上段は、等角度間隔シーケンスS2が設定された場合において、断続する11回の撮影F1〜F11のタイミングを示すタイムチャートである。
図10の下段は、X線管21aの回転移動速度の推移を示す、
図7の下段と同一のタイムチャートである。すなわち、
図10は、
図7の下段と同一のX線管21aの回転移動速度の推移において、11回の撮影F1〜F11のタイミングが
図7の上段と異なるものである。
【0078】
図9に示すように等間隔の撮影角度にて11回の撮影F1〜F11が行なわれるように、
図10の下段に示すX線管21aの回転移動速度に従って、
図10の上段に示す11回の撮影F1〜F11の時間間隔が調整される。つまり、等角度間隔シーケンスS2において、断続する11回の撮影F1〜F11は一部が不等間隔となる。具体的には、
図10に示す第1回転移動時間T1に相当する第1回転移動区間W1(
図6に図示)では、第2回転移動時間T2に相当する第2回転移動区間W2(
図6に図示)よりも疎な複数の撮影タイミングが設定されることになる。
【0079】
図9に示す、等角度間隔シーケンスS2によれば、トモシンセシス撮影の画像収集時間Tと複数の撮影角度の間隔とを従来技術と同一としながら、第1回転移動区間W1(
図6に図示)内の撮影によって得られるX線透過画像の分解能を向上させることができる。
【0080】
なお、
図7〜
図10に示すX線管21aの回転移動速度の推移において、撮影中のX線管21aの回転移動速度として2段の一定速度区間を設定する場合を説明したがその場合に限定されるものではなく、3段以上の一定速度区間を設定する場合であってもよい。3段の一定速度区間による制御を
図11及び
図12を用いて説明する。
【0081】
図11は、X線管21aの回転移動速度の変化例を説明するための図である。
【0082】
図11は、角度−X°から正対位置(角度0°)を介して角度+X°まで右周りに回転するX線管21aの回転移動区間Wを示す。
図11は、X線管21aの回転移動に伴う回転移動区間Wのうち、正対位置を中心に含む回転移動区間(第1回転移動区間W1)と、その他の回転移動区間(第2回転移動区間W2及び第
3回転移動区間W3)とを示す。第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度が、第2回転移動区間W2及び第3回転移動区間W3における移動速度より低速となるように制御される。
【0083】
また、第2回転移動区間W2及び第3回転移動区間W3は、正対位置を軸として線対称に設けられる。第2回転移動区間W2は、第3回転移動区間W3よりも正対位置に近い。そこで、第2回転移動区間W2におけるX線管21aの回転移動速度が、第3回転移動区間W3における移動速度より低速となるように制御される。
【0084】
第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度は、X線透過画像の必要とされる分解能や、各撮影の撮影時間(照射時間)などに基づいて求めることができる。また、第2回転移動区間W2及び第3回転移動区間W3におけるX線管21aの回転移動速度は、第1回転移動区間W1におけるX線管21aの回転移動速度や、X線管21aの回転移動区間Wの距離(角度−X°〜+X°)などに基づいて求めることができる。ここで、X線管21aの回転移動区間Wの距離は、従来技術によるものと同一とすればよい。
【0085】
図12は、X線管21aの回転移動速度の第3例を示す図である。
【0086】
図12は、X線管21aの回転移動速度の推移を示すタイムチャートである。
図12に示すように、トモシンセシス撮影の画像収集時間Tにおいて、複数回の撮影の各撮影中の区間で一定となるように、かつ、各撮影中以外の区間で変化するようにX線管21aの回転移動速度が設定される。トモシンセシス撮影の画像収集時間Tは、
図11に示す回転移動区間Wにおける回転移動時間に相当する。
【0087】
図12に示すトモシンセシス撮影の画像収集時間Tは、
図11に示す第1回転移動区間W1の回転移動時間に相当する第1回転移動時間T1と、
図11に示す第2回転移動区間W2の回転移動時間に相当する第2回転移動時間T2と、
図11に示す第3回転移動区間W3の回転移動時間に相当する第3回転移動時間T3とを含む。
【0088】
等時間間隔シーケンスS1が設定された場合、
図12に示すX線管21aの回転移動速度の推移は、
図7の上段に示すような等時間間隔の複数回の撮影と組み合わされることができる。その場合、
図8に示すように、第1回転移動区間W1(
図6に図示)内に多くの撮影角度を含む複数回の撮影F1〜F11が行なわれることになる。
【0089】
一方で、等角度間隔シーケンスS2が設定された場合、
図12に示すX線管21aの回転移動速度の推移は、一部が不等時間間隔である複数回の撮影と組み合わされることができる。その場合、
図9に示すように、等間隔の11個の撮影角度にて11回の撮影F1〜F11が行なわれることになる。
【0090】
図5の説明に戻って、モード設定機能31bによって撮影モードがCC撮影やMLO撮影と設定された場合、撮影台装置11の圧迫板22aによる乳房Bの圧迫状態で、撮影台装置11を制御して従来技術に従ってCC撮影やMLO撮影が実行される。
【0091】
続いて、
図1及び
図13を用いて本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の動作を説明する。
【0092】
図13は、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1の動作を示すフローチャートである。
【0093】
乳房X線撮影装置1は、CC撮影、MLO撮影、及びトモシンセシス撮影等の撮影モードからトモシンセシス撮影を設定する(ステップST1)。
【0094】
乳房X線撮影装置1は、ステップST1によって撮影モードがトモシンセシス撮影と設定されると、入力回路33から入力された指示に従って、トモシンセシス撮影の撮影条件を設定する(ステップST2)。ここで、撮影条件は、関心領域、1撮影当たりの時間、トモシンセシス撮影時間などである。
【0095】
乳房X線撮影装置1は、ステップST2によって設定された撮影条件に従って、トモシンセシス撮影のための撮影シーケンスを設定する(ステップST3)。ステップST3では、等時間間隔シーケンスS1(
図7に図示)か、又は、等角度間隔シーケンスS2(
図10に図示)が設定される。
【0096】
乳房X線撮影装置1は、ステップST3によって、等時間間隔シーケンスS1が設定されたか否かを判断する(ステップST4)。
【0097】
ステップST4の判断にてYES、すなわち、等時間間隔シーケンスS1が設定されたと判断される場合、乳房X線撮影装置1は、撮影台装置11の圧迫板22aによる乳房Bの圧迫状態で、撮影台装置11を制御して、ステップST2によって設定された撮影条件と、ステップST3によって設定された等時間間隔シーケンスS1の撮影シーケンスとに従ってトモシンセシス撮影を実行する(ステップST5)。ステップST5では、
図7の上段に示す撮影タイミングで撮影(X線照射)を実行するとともに、
図7の下段に示す回転移動速度の推移にてX線管21aを回転移動させることで、トモシンセシス撮影が実行される。
【0098】
一方で、ステップST4の判断にてNO、すなわち、等角度間隔シーケンスS2が設定されたと判断される場合、乳房X線撮影装置1は、撮影台装置11の圧迫板22aによる乳房Bの圧迫状態で、撮影台装置11を制御して、ステップST2によって設定された撮影条件と、ステップST3によって設定された等角度間隔シーケンスS2の撮影シーケンスとに従ってトモシンセシス撮影を実行する(ステップST6)。ステップST6では、
図10の上段に示す撮影タイミングで撮影(X線照射)を実行するとともに、
図10の下段に示す回転移動速度の推移にてX線管21aを回転移動させることで、トモシンセシス撮影が実行される。
【0099】
乳房X線撮影装置1は、ステップST5,ST6によって実行されたトモシンセシス撮影の各撮影によって得られデジタル化されたデータに基づいてX線透過画像を生成する(ステップST7)。また、乳房X線撮影装置1は、ステップST7によって生成された複数の投影角度に相当する複数のX線透過画像に基づいて3D断層像を生成することもできる(ステップST8)。
【0100】
なお、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1では、X線管21aが回転移動する構造を有するものとして説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、X線管21aが直線移動する構造(特開2011−62276号公報)についても適用できる。
【0101】
本実施形態に係る乳房X線撮影装置1及び乳房X線撮影方法の等時間間隔シーケンスS1(
図7及び
図8に図示)によると、従来技術からトモシンセシス撮影の撮影時間を変えることなく、第1回転移動区間W1(
図6に図示)内の撮影で得られる分解能が高いX線透過画像の数を増加させることができる。その結果、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1によると、乳房圧迫による受診者への痛みの負担を変えることなく、石灰化の視認性を向上させることができる。
【0102】
また、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1及び乳房X線撮影方法の等角度間隔シーケンスS2(
図9及び
図10に図示)によると、従来技術からトモシンセシス撮影の撮影時間を変えることなく、第1回転移動区間W1(
図6に図示)内の撮影で得られるX線透過画像の分解能を向上させることができる。その結果、本実施形態に係る乳房X線撮影装置1によると、乳房圧迫による受診者への痛みの負担を変えることなく、石灰化の視認性を向上させることができる。
【0103】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。