特許第6771908号(P6771908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771908
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】混練撹拌装置用撹拌翼構造
(51)【国際特許分類】
   B01F 7/04 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B01F7/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-49420(P2016-49420)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-164659(P2017-164659A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年11月10日
【審判番号】不服2019-3651(P2019-3651/J1)
【審判請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃史
(72)【発明者】
【氏名】大濱 徳也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
【合議体】
【審判長】 菊地 則義
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−151033(JP,A)
【文献】 特開平8−196886(JP,A)
【文献】 特表2015−503444(JP,A)
【文献】 実開昭63−110539(JP,U)
【文献】 米国特許第2631016(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F
B29B7/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシング(1)内にその筒軸方向の回転軸(5)を設け、前記回転軸(5)にその軸方向に順々に板状撹拌翼(10、20、30)をその板状の平面が前記回転軸(5)の直交方向になるように取り付けた撹拌翼構造であって、前記撹拌翼の前記平面である前記軸方向表面にその攪拌翼の板厚み方向の他面に至らない切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面(12、22、32)が形成され、かつ前記撹拌翼は、回転軸(5)に直交する厚み方向の中心を通る線に対して左右回転対称になっており、さらに、前記撹拌翼は、前記軸方向において三角形状をしてその三角形の中心を回転軸(5)が通っているとともに、前記三角形の頂点の側面にその側面から回転軸(5)の軸方向に突出する掻上部材(13)を有して、前記傾斜面(12、22、32)及び掻上部材(13)は、前記撹拌翼の前記平面をなす両側面にそれぞれ3個設けられて前記回転軸(5)の周りに120度の間隔回転位置となっていることを特徴とする混練撹拌装置用撹拌翼構造。
【請求項2】
筒状ケーシング(1)内にその筒軸方向の回転軸(5)を設け、前記回転軸(5)にその軸方向に順々に板状撹拌翼(50)をその板状の平面が前記回転軸(5)の直交方向になるように取り付けた撹拌翼構造であって、前記各撹拌翼(50)は前記軸方向において三角形状をして、その三角形の頂点の側面に、その側面から回転軸(5)の軸方向に突出する掻上部材(13)を有し、その三角形の中心を回転軸(5)が通り、前記掻上部材(13)の前記軸方向表面に切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面(52)が形成されていることを特徴とする混練撹拌装置用撹拌翼構造。
【請求項3】
上記撹拌翼(50)の上記平面である軸方向表面にその攪拌翼の板厚み方向の他面に至らない切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面(12、22、32)が形成されていることを特徴とする請求項に混練撹拌装置用撹拌翼構造。
【請求項4】
上記撹拌翼(50)の三角形状の各辺部分が切り欠かれて、その切欠き部の切り欠き端面によって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面(42)が形成されていることを特徴とする請求項に記載の混練撹拌装置用撹拌翼構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体、液体、高粘度流体等の混練撹拌を行う混練撹拌装置における撹拌翼構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混練撹拌装置は、例えば、並行に配設された2本の回転軸と、その各回転軸の軸方向に取り付けられた撹拌翼(パドル)と、前記回転軸及び撹拌翼を収納するケーシングとを有する構造が一般的である。
この混練撹拌装置において、上記回転軸の回転に伴って撹拌翼の外周一部が上記ケーシングの内周面に近接してケーシング内周面をセルフクリーニングするものがある(特許文献1第1図〜第11図等参照)。
【0003】
このセルフクリーニング型混練撹拌装置には、被処理物として重合度の低い重縮合系樹脂が供給され、その樹脂を撹拌して重合度を高めるものがあり、被処理物の供給とその排出を連続的に行う連続式と、一定量の被処理物を混練撹拌装置内に供給して混練撹拌するバッチ式がある。前者は、コンパクトで、高い生産性を得ることができるが、十分な滞留時間を得にくく、所要の重合度を得ることができない問題がある。後者は、十分な重合度を得ることができるが、前者に対し生産性が劣り、その一回の供給量によって処理量が決定されるため、生産性を高めるには、大型化(大容量化)する必要がある。その大型化は広い設置スペースが必要な上に、その装置も高価なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−151033号公報
【0005】
以上から、連続式のセルフクリーニング型混練撹拌装置が多く製造されているが、この混練撹拌装置は、通常、本願に係る図1を参照して説明すると、同径の2つの円が交差する断面形状を有する筒状ケーシング1の内部の処理室2に、両端にスクリュウ羽根3a、3bが、その両スクリュウ羽根3a、3bの間に軸方向に沿って多数の撹拌翼(パドル)10が設けられた2本の回転軸5が互いに平行に配された構成である。また、前記ケーシング1は、一端側上部に供給口6が、他端側下部に排出口7がそれぞれ設けられ、その供給口6と排出口7を除く外周面に加熱・冷却用のジャケット8が設けられている。
【0006】
上記両回転軸5は、それぞれの両端部をケーシング1から突出させており、モータによって両回転軸5、5が回転すると、ケーシング1の供給口6から処理室2に供給された重縮合系樹脂(被処理物)cは、スクリュウ羽根3aによって撹拌翼10に送り込まれるとともに、スクリュウ羽根3bによって撹拌翼10に送り戻され、その撹拌翼10によって混練撹拌されながらケーシング1の他端側へ徐々に移行して重合度の高くなった樹脂c’となって排出口7から排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような混練撹拌装置において、ケーシング1内に、被処理物cを適切な時間、滞留撹拌させるかが問題となる。このとき、いたずらに滞留させていては、生産性が低下するとともに重合度に問題が生じる場合があり、送り用スクリュウ羽根3aのみでは被処理物cを適切に送ることは困難である。
このため、従来から種々の技術が考えられており、例えば、撹拌翼10をスパイラル状に傾斜させて回転軸5に取り付けたり、撹拌翼10の外周端側面を傾斜させたりしたものがある(特許文献1第4〜図9参照)。
しかし、撹拌翼10をスパイラル状に傾斜させた構造は、排出口7への送り作用しか行わず、滞留時間の調整が困難な問題がある。また、撹拌翼10の外周端側面を傾斜させた構造は、外周端傾斜面は狭く撹拌翼10の厚み方向のため、十分な広さを確保出来ず、適切な送り速度や送り量を設定できない問題がある。
【0008】
この発明は、以上の実状の下、撹拌翼の形状を工夫することによって上記適切な送り速度や送り量を設定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、この発明は、撹拌翼を切り欠くことによって被処理物送り方向に傾斜する斜面を形成することとしたのである。
その切欠き個所を適宜に選択すれば、適切な送り量を確保できて適切な撹拌を行うことができる。
【0010】
この発明の一構成としては、筒状ケーシング内にその筒軸方向の回転軸を設け、前記回転軸にその軸方向に順々に板状撹拌翼を回転軸の直交方向に取り付けた撹拌翼構造であって、前記撹拌翼の前記軸方向表面に切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面が形成されている構成を採用することができる。
【0011】
この発明の他の構成としては、筒状ケーシング内にその筒軸方向の回転軸を設け、前記回転軸にその軸方向に順々に板状撹拌翼を回転軸の直交方向に取り付けた撹拌翼構造であって、前記各撹拌翼は三角形状をして、その三角形状の各辺部分が切り欠かれて、その切欠き部の切り欠き端面によって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面が形成されている構成を採用することができる。
【0012】
この発明のさらに他の構成としては、筒状ケーシング内にその筒軸方向の回転軸を設け、前記回転軸にその軸方向に順々に板状撹拌翼を回転軸の直交方向に取り付けた撹拌翼構造であって、前記各撹拌翼は三角形状をして、その三角形の頂点の側面に、その側面から回転軸の軸方向に突出する掻上部材を有し、その掻上部材の前記軸方向表面に切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面が形成されている構成を採用することができる。
【0013】
上記各構成は相互に採用することができる。例えば、上記さらに他の構成において 上記撹拌翼の上記軸方向表面に切欠きによって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面が形成されていたり、前記撹拌翼の三角形状の各辺部分が切り欠かれて、その切欠き部の切り欠き端面によって被処理物送り方向に傾斜する傾斜面が形成されていたりする構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように構成したので、被処理物の送り用傾斜面の設計自由度が高いため、適切な送り速度(滞留時間)の混練撹拌装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係わる混練撹拌装置の第1実施形態を示し、(a)は横断平面図、(b)は縦断正面図、(c)は切断側面図
図2】同実施形態のケーシングを除去した斜視図
図3】同実施形態の撹拌翼を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図
図4】この発明に係わる混練撹拌装置の第2実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図
図5】この発明に係わる混練撹拌装置の第3実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図
図6】この発明に係わる混練撹拌装置の第4実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図
図7】この発明に係わる混練撹拌装置の第5実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る混練撹拌装置(ニーダ)の第1の実施形態を図1図3に示し、この実施形態の混練撹拌装置は、被処理物として重合度の低い重縮合系樹脂cが供給され、供給された樹脂(被処理物)cを撹拌して重合度を高める重合装置として用いられるものであり、同径の2つの円が交差する断面形状を有する筒状ケーシング1の内部の処理室2に、両端にスクリュウ羽根3a、3bが、その両スクリュウ羽根3a、3bの間に軸方向に沿って多数の撹拌翼(パドル)10が設けられた、ケーシング1の筒軸方向の2本の回転軸5が互いに平行に配されている。各撹拌翼10は板状をして回転軸5に直交している。
上記ケーシング1は、一端側上部に供給口6が、他端側下部に排出口7がそれぞれ設けられ、その供給口6と排出口7を除く外周面に加熱・冷却用のジャケット8が設けられている。
【0017】
上記両回転軸5は、それぞれの両端部をケーシング1から突出させて、その一方の突出端部に図示省略したモータが連結されており、そのモータによって両回転軸5、5は同一方向に同一回転速度で回転する。また、各スクリュウ羽根3a、3bはその中心の取付孔(図示省略)から回転軸5に挿し通してキー止めして回転軸5に直交して取り付けられており、その供給口6側のスクリュウ羽根3aは送り羽根であり、排出口7側のスクリュウ羽根3bは戻し羽根である。
このため、回転軸5が回転駆動することにより、ケーシング1の供給口6から処理室2に供給された重縮合系樹脂(被処理物)cは、スクリュウ羽根3aによって撹拌翼10に送り込まれるとともに、スクリュウ羽根3bによって撹拌翼10に送り戻され、その撹拌翼10によって混練撹拌されながらケーシング1の他端側へ徐々に移行して重合度の高くなった樹脂c’となって排出口7から排出される。
【0018】
上記各撹拌翼10は、各回転軸5、5のそれぞれの軸方向に交互位置で順々に固定されており、各回転軸5の軸方向に沿って同一位相となっている。この位相を、例えば、60度等と異ならせることができる。これらの撹拌翼10は、例えばSUS316等からなり、図3に示すように、ルーローの三角形状板片(図4参照)11の各3辺を適宜に欠如したほぼ正三角形状を呈しており、その中心に回転軸5への取付孔4が形成されている。そのルーローの径は、適宜に設定すれば良いが、例えば、118mmとする。
その欠如した各辺の両側面は、切り込みによって軸心の周方向及び径方向の傾斜面12となっている。すなわち、その傾斜面12は、図3(c)において、a矢印方向に徐々に深くなっているとともに、b矢印方向において、徐々に深くなっており、その傾きは被処理物cを送り出す作用を発揮する。
この撹拌翼10の各頂点には両側に突出する撹拌突起(掻上部材)13が形成されており、この突起(部材)13によって被処理物cの撹拌が促進される。
【0019】
この構成の撹拌翼10を有する図1に示す混練撹拌装置において、その撹拌翼10が図3(c)の矢印方向に回転すると、上記傾斜面12(図3(b)において、下側)によって、回転軸5の軸方向及び径方向(送り出し方向)の力が被処理物cに付与されて撹拌される。また、撹拌突起13によっても撹拌される。
このため、傾斜面12のa、b方向の傾斜角度や撹拌突起13の大きさ・側方への突出量等を適宜に設定することによって、被処理物cの送り量を適宜に設定して供給口6から排出口7に適切な滞留時間でもって適切な撹拌がなされ、適切な重合がなされた被処理物c’が移動する。
なお、図3(b)において、板片11の両側(上下側)に切り込みによってそれぞれ傾斜面12、12を形成しているが、このような構成とすることによって、この撹拌翼10は、図3に示すように左右(両側)対称となり、すなわち、回転軸5に直交する厚み方向の中心を通る線に対して左右回転対称となり、この撹拌翼10をその左右側面を考慮せずに回転軸5に取付け得る。
【0020】
上記実施形態において、ルーローの三角形状板片11の各3辺を欠如していない態様が図4に示す撹拌翼20であり(送り傾斜面22)、さらに、撹拌突起13の形状を異ならせた撹拌翼30(送り傾斜面32)を図5に示す。
図6図7には、ルーローの三角形状板片11の各3辺一部を欠如しているが、傾斜面をその欠如部の側面に形成したり(図6)、撹拌突起13に形成したりした撹拌翼40、50を示す(送り傾斜面42、52)。
このように、傾斜面12、22、32、42、52の形成位置は適宜に設定することができるため、撹拌度合いを考慮してそれらの傾斜面12、22、32、42、52の形成位置や傾斜角度、及び撹拌突起13の形状も撹拌度合い等を考慮して適宜に設定する。すなわち、例えば、図6図7の実施形態においても、図3図5で示す、板片11の側面の傾斜面12、22、32を形成することもできる。図3図6に示す各実施形態においては、各突起(掻上部材)13及び各傾斜面12、22、32、42はそれぞれ3個設けられて回転軸5の周りに120度の間隔回転位置となっている。
したがって、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0021】
1 ケーシング
2 処理室
3a、3b スクリュウ羽根
5 回転軸
6 供給口
7 排出口
10、20、30、40、50 撹拌翼
12、22、32、42、52 傾斜面
13 撹拌突起
c、c’ 被処理物(樹脂)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7