特許第6771921号(P6771921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771921
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】植栽システムおよび灌水方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/00 20060101AFI20201012BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20201012BHJP
【FI】
   A01G27/00 504Z
   A01G9/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-68864(P2016-68864)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-176045(P2017-176045A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西部 洋晴
(72)【発明者】
【氏名】河目 裕介
(72)【発明者】
【氏名】天保 美咲
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−29426(JP,A)
【文献】 特表2013−544096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0154985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 27/00
A01G 9/02
A01G 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が植えられる植物生育基盤、この植物生育基盤に灌水を行う灌水装置、および前記植物生育基盤に強制的に通気を行うファンを有する植栽装置と、この植栽装置における前記灌水装置の制御を行う灌水制御装置とを備え、
この灌水制御装置は、
前記ファンにより前記植物生育基盤に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算する通気量認識手段と、
前記通気量認識手段で加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置に一定量の灌水を行わせ、前記加算された点数をリセットする通気量対応灌水量制御手段とを有する、
植栽システム。
【請求項2】
請求項1に記載の植栽システムにおいて、前記通気量対応灌水量制御手段は、定められた期間における前記通気量が零であっても、定められた灌水量の灌水を行わせる停止時灌水制御部を有する植栽システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の植栽システムにおいて、前記通気量対応灌水量制御手段は、この通気量対応灌水量制御手段による基本的な灌水量を、周囲環境センサから得られる所定の環境量によって補正し、または通気量の積算を行う過程で、温度、湿度、照度に応じ、加算する点数を変える周囲環境対応灌水量補正部を有する植栽システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の植栽システムにおいて、前記植栽装置は、前記植物生育基盤に植えられた植物によって緑化を行い、前記植物生育基盤に前記ファンで強制的に通気を行うことにより空気の浄化を行う空気浄化緑化装置である植栽システム。
【請求項5】
植物が植えられる植物生育基盤、この植物生育基盤に灌水を行う灌水装置、および前記植物生育基盤に強制的に通気を行うファンを有する植栽装置において、前記灌水装置による灌水を調整する植栽装置の灌水調整方法であって、
前記ファンにより前記植物生育基盤に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算し、
加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置に一定量の灌水を行わせ、前記加算した点数をリセットする、
ことを特徴とする植栽装置の灌水調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気浄化型壁面緑化システムや工場で野菜を栽培する装置等の植栽装置において灌水の制御機能を持たせた植栽システムおよび灌水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植栽等の灌水制御技術として、灌水タイマーがある。灌水タイマーは、灌水開始時刻と灌水時間等を設定できるタイマーである。これには、毎日同じことを繰り返す24時間タイマーや、1週間/1年単位で繰り返す週間/年間タイマー等がある。
【0003】
その他、土壌水分センサと組み合わせて、土壌が乾燥したときのみ灌水するタイプや、雨センサと組み合わせて、一定期間降雨がないときのみ灌水するタイプとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−173653号公報
【特許文献2】特開2015−100313号公報
【特許文献3】特開2014−057569号公報
【特許文献4】特開2006−345768号公報
【特許文献5】特許第4544491号公報
【特許文献6】特許第4437451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術を空気浄化型壁面緑化システムに搭載する場合、次のような問題点が生じる。空気浄化型壁面緑化システムでは、室内空気の汚れに合わせて土壌層(浄化層)への通気量をこまめに変動させる必要性があり、そのため次の問題点が生じる。
1.通気量が一定でないため、灌水開始時刻、灌水時間を一定にすると、過湿、過乾燥状態となる可能性がある。
2.土壌層に軽量土壌が用いられている場合、土壌水分センサの設置場所によって検出値がぶれることがある。
また、軽量土壌の配合むらによっても土壌水分センサの検出値がぶれることがある。
3.上記の理由により、複数のセンサを設置する必要があり、その分コストがかかる。
4.センサの種類によっては、溶質の量によって検出値が変動するため、長期使用で検出値が変動する可能性がある。
5.土壌水分センサは水分に触れているため、寿命が短く、また寿命により精度が落ちて来ているかどうかが分かり難い。
【0006】
この発明の目的は、過湿、過乾燥を抑制する適切な灌水が行え、かつ土壌水分センサが不要で、センサ類の精度や寿命を考量せずに済む植栽システムおよび灌水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の植栽システムは、植物(3)が植えられる植物生育基盤(4)、この植物生育基盤(4)に灌水を行う灌水装置(5)、および前記植物生育基盤(4)に強制的に通気を行うファン(6)を有する植栽装置(1)と、この植栽装置(1)における前記灌水装置(5)の制御を行う灌水制御装置(22)とを備え、
この灌水制御装置(22)は、前記ファン(6)による前記植物生育基盤(4)の通気量に応じて灌水量を制御する。
この灌水制御装置(22)は、
前記ファン(6)により前記植物生育基盤(4)に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算する通気量認識手段(25)と、
前記通気量認識手段(25)で加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置(5)に一定量の灌水を行わせ、前記加算された点数をリセットする通気量対応灌水量制御手段(26)とを有する。
【0008】
植物生育基盤(4)に通気を行う植栽システムでは、植物生育基盤(4)の乾燥の最大の要因は通気である。そこで、この発明では、植物生育基盤(4)の通気量に応じて灌水量の制御を行う。このため、過湿、過乾燥を抑制する適切な灌水が行える。また、通気量に応じて灌水を行うため、土壌水分センサが不要である。そのため、センサ代が不要で低コスト化が図れ、またセンサの設置スペースや精度を考慮する必要がない。さらに、常時水分に触れて寿命の短い土壌水分センサを用いないことから、センサの寿命や交換等を考慮しなくて済む。
【0009】
参考提案例を説明すると、灌水制御装置(22)は、1回に行う灌水の量を一定量とし、前回から今回までの灌水の間隔を制御することで、前記通気量に応じた灌水量の制御を行うようにしてもよい。
1回に行う灌水の量が一定量であると、灌水の制御が行い易い。また、1回に行う灌水の量が過多となることが回避される。
【0010】
他の参考提案例を説明すると、灌水制御装置(22)は、各回の灌水を行う時刻が定められていて、1回に行う灌水の量を制御することで、前記通気量に応じた灌水量の制御を行うようにしてもよい。前記灌水を行う時刻は、1日における時刻に限らず、周単位等で定められていてもよい。
灌水装置(5)のポンプ(13)等は騒音となる可能性があるが、灌水を行う時刻を一定とする制御であると、ポンプ音が問題とならない時間帯に灌水を行うことができる。また、通気用のファン(6)の運転時間に応じて灌水装置の運転を行うことが可能となり、ファン(6)と同時運転できないときに灌水装置を作動させることができる。
【0011】
なお、さらに他の参考提案例を説明すると、各回の灌水を行う間隔が一定であって、1回に行う灌水の量を制御するようにしてもよい。また、上記の各制御方法の他に、1回に行う灌水の量と、灌水の時刻または間隔との両方を通気量に応じて変更する制御方法を採用してもよい。
【0012】
この発明において、前記灌水制御装置(22)の前記通気量対応灌水量制御手段(26)は、前記通気量が零であっても、定められた灌水量の灌水を行わせる停止時灌水制御部(26a)を有していてもよい。
通気を行っていない場合、植物生育基盤(4)の蒸発量は少ないが、植物が植わっている以上、植物が生育に必要な水分を吸収するため蒸発も行われ、徐々に乾燥していく。そのため、通気量が零であっても、ある程度の灌水を行うことが、植物の生育の上で好ましい。
この発明において、前記灌水制御装置(22)の前記通気量対応灌水量制御手段(26)は、この通気量対応灌水量制御手段(26)による基本的な灌水量を、周囲環境センサ(30)から得られる所定の環境量によって補正し、または通気量の積算を行う過程で、温度、湿度、照度に応じ、加算する点数を変える周囲環境対応灌水量補正部(26b)を有していてもよい。
【0013】
この発明において、前記植栽装置(1)は、前記植物生育基盤(4)に植えられた植物(3)によって緑化を行い、前記植物生育基盤(4)にファン(6)で強制的に通気を行うことにより空気の浄化を行う空気浄化緑化装置であってもよい。
植物生育基盤(4)に通気を行うと、植物生育基盤(4)がフィルタとして機能し、空気の浄化が行える。植物生育基盤(4)とファン(6)とを備える植栽システムとしては、空気浄化緑化装置が一般的であり、その場合にこの発明における前記各効果が効果的に発揮される。
【0014】
この発明の植栽装置の灌水調整方法は、植物(3)が植えられる植物生育基盤(4)、この植物生育基盤(4)に灌水を行う灌水装置、および前記植物生育基盤(4)に強制的に通気を行うファン(6)を有する植栽装置(1)において、前記灌水装置(5)による灌水を調整する植栽装置(1)の灌水調整方法であって、
前記ファン(6)により前記植物生育基盤(4)に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算し、
加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置に一定量の灌水を行わせ、前記加算した点数をリセットする
【0015】
この灌水調整方法によると、この発明の植栽システムにつき説明したと同様に、過湿、過乾燥を抑制する適切な灌水が行え、かつ土壌水分センサが不要で、センサ類の精度や寿命を考量せずに済む。
【発明の効果】
【0016】
この発明の植栽システムは、植物が植えられる植物生育基盤、この植物生育基盤に灌水を行う灌水装置、および前記植物生育基盤に強制的に通気を行うファンを有する植栽装置と、この植栽装置における前記灌水装置の制御を行う灌水制御装置とを備え、この灌水制御装置は、前記ファンにより前記植物生育基盤に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算する通気量認識手段と、前記通気量認識手段で加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置に一定量の灌水を行わせ、前記加算された点数をリセットする通気量対応灌水量制御手段とを有するため、過湿、過乾燥を抑制する適切な灌水が行え、かつ土壌水分センサが不要で、センサ類の精度や寿命を考量せずに済む。
【0017】
この発明の植栽装置の灌水調整方法は、植物が植えられる植物生育基盤、この植物生育基盤に灌水を行う灌水装置、および前記植物生育基盤に強制的に通気を行うファンを有する植栽装置において、前記灌水装置による灌水を調整する植栽装置の灌水調整方法であって、前記ファンにより前記植物生育基盤に通気を行う通気強度の段階で区分される風量とその区分された風量で通気を単位時間行ったときに与える点数との関係が設定されていて、通気を行う間は前記風量に応じた前記点数を加算し、加算された点数が設定累積点に達したときに前記灌水装置に一定量の灌水を行わせ、前記加算した点数をリセットするため、過湿、過乾燥を抑制する適切な灌水が行え、かつ土壌水分センサが不要で、センサ類の精度や寿命を考量せずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の第一の実施形態に係る植栽システムにおける植栽装置の断面図とその制御系のブロック図とを示す説明図である。
図2】同植栽システムの動作例の流れ図である。
図3】同流れ図に行う制御の一例の説明図である。
図4参考提案例に係る植栽システムの他の動作例の流れ図である。
図5】同流れ図に行う制御の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の第1の実施形態を図1図3と共に説明する。この植栽システムは、植栽装置1と、この植栽装置1の通気および灌水の制御を行う全体制御装置2とで構成される。植栽装置1は、空気浄化型壁面緑化システム等の空気浄化緑化装置となる。
【0020】
植栽装置1は、植物3が片面に植えられる土壌層等の植物生育基盤4と、この植物生育基盤4に灌水を行う灌水装置5と、植物生育基盤4に強制的に通気を行うファン6とを備える。植物生育基盤4は、前面が開口した薄箱状のケース7内における前後面がメッシュ材8、9で仕切られた空間内に充填されている。植物生育基盤4は、ケース7内を上下に仕切るメッシュ材等からなる基盤支持材10によって上下に区分されている。ケース7内における植物生育基盤4の背面には、メッシュ材9とケース7の背面板部7aとの間に通気空間11が形成されている。
【0021】
灌水装置5は、タンク12と、このタンク12内の水をポンプ13によってケース7内における植物生育基盤4の上部に供給する給水路14と、植物生育基盤4の排水をタンク12に導く排水路15と、ポンプ13を駆動するモータ16とで構成されている。なお、灌水装置5は、水道から前記植物生育基盤4に水を導く装置であってもよく、その場合、開閉バルブまたは流量バルブ等のバルブと配管とで構成される。また、灌水の供給用のタンク12とは別に、排水を貯めるタンク(図示せず)を設けることが、排水の混入によって灌水用の水の成分が変わらないことで好ましい。
ファン6は、モータおよび旋回羽からなり、ファン6から通気空間11へ通気を行うダクト17と共に、通気装置18を構成する。
【0022】
植物生育基盤4としては、通気性のある軽量土壌が用いられる。具体的には、自然土壌の他に、バーク堆肥等の有機系土壌改良材、或いはパーライト等の無機系土壌改良材等の様々な一般に流通する資材を適宜組み合わせたものを用いる。また、活性炭等の多孔物質が土壌中に含まれていてもよい。
【0023】
全体制御装置2は、マイクロコンピュータ等の情報処理機器とこれに実行されるプログラム、並びに電子回路等によって構成され、通気制御装置21と灌水制御装置22とを備える。
【0024】
通気制御装置21は、ファン6を制御する装置であり、汚れ対応通気量制御手段23と、手動入力対応通気量制御手段24とを有する。汚れ対応通気量制御手段23と、手動入力対応通気量制御手段24とは、モードスイッチ(図示せず)等で切り換えて使用され、または常時は汚れ対応通気量制御手段23で制御し、手動入力手段29の入力があると手動入力を優先して手動入力対応通気量制御手段24で制御するようにしてもよい。
汚れ対応通気量制御手段23は、汚れ検知センサ28で検知された汚れの程度に応じて通気量の制御を行う手段であり、ファン6のオンオフおよび回転速度等の通気強度を制御する。汚れ検知センサ28は、植栽装置1が配置された室内等の環境空間における空気の汚れを検知するセンサである。
【0025】
手動入力対応通気量制御手段24は、手動入力手段29の入力に応じて通気量の制御を行う手段であり、ファン6のオンオフおよび回転速度等の通気強度を制御する。手動入力手段29は、オンオフの他、段階的または連続的な通気強度の指令を入力可能なダイヤルスイッチ、キーボード、タッチパネル等のスイッチ類で構成される。
【0026】
灌水制御装置22は、灌水量を制御する手段であり、ファン6による植物生育基盤4の通気量に応じて灌水量を制御する。灌水制御装置22は、通気量認識手段25および通気量対応灌水手段量26を有する。
通気量認識手段25は、ファン6による植物生育基盤4への通気量を認識する手段であり、例えば通気制御装置21のファン6を駆動する通気指令から通気量を認識する。前記通気指令は、オンオフの指令と、回転速度等の通風強度の指令とである。
【0027】
通気量対応灌水量制御手段26は、通気量認識手段25で認識された通気量に応じて、定められた規則に従って灌水装置5のポンプ13の駆動を制御する手段である。
前記定められた規則は、例えば、図2図3と共に後述するように、1回に行う灌水の量を一定量とし、前回から今回までの灌水の間隔を制御することで、前記通気量に応じた灌水量の制御を行う規則(以下「第1の規則」と称する場合がある)である。
前記定められた規則は、例えば、図4図5と共に後述するように、各回の灌水を行う時刻が定められていて、1回に行う灌水の量を制御することで、前記通気量に応じた灌水量の制御を行う規則(以下「第2の規則」と称する場合がある)であってもよい。
【0028】
通気量対応灌水量制御手段26は、停止時灌水制御部26aおよび周囲環境対応灌水量補正部26bを有していて、停止時灌水制御部26aにより、前記通気量が零であっても、定められた灌水量の灌水を行わせる。
周囲環境対応灌水量補正部26bは、通気量対応灌水量制御手段26による基本的な灌水量を、周囲環境センサ30から得られる所定の環境量によって補正する手段である。前記「所定の環境量」は、例えば、温度、湿度、照度等であり、このうちの一つであっても、任意の二つ、または三つの組み合わせであってもよい。周囲環境センサ30は、温度センサ、湿度センサ、および照度センサ等の複数種であっても、一つでも良く、図1は代表して一つで図示している。周囲環境対応灌水量補正部26bは、通気量の積算を行う過程で、温度、湿度、照度に応じ、カウントする点数を変えるようにしてもよい。
【0029】
次に、上記構成の動作および構成の具体例の説明を行う。
図3は、前記第1の規則に従って行う灌水のイメージを示す。横軸に時間(日)、縦軸に運転量(通気量(換言すれば「通気風量レベル」))を示す。また、1日の中で斜線で示す時間が運転、網点で示す時間が停止を示す。
運転によって運転量(通気量)は可変されていき、ある一定の積算量となる運転(通気)がされたときに、一定量の灌水を行う。
【0030】
例えば、同図の例では、1日目は良く動いたので、運転時間内に2回灌水が行われ、2日目は少し動いたので、1回の灌水が行われる。3日目は停止しているが、徐々に運転量が加算されていき、灌水が行われている。停止時の運転量の考え方については後述する。
【0031】
この運転(通気)量の計算方法について説明する。図1の通気量認識手段25は、この計算方法に従って通気量を認識する。
風量(通気量)1〜5の5段階プラス停止(風量0)の状態があるとした場合、例えば表1に示すように単位時間(表の例では1分動いた場合に与える点数)を設定しておく。 なお、予め、各風量を通気した場合の植物生育基盤4の蒸発量を測定しておくことが必要である。
【0032】
【表1】
表1の「1分動かした時の点数」については、任意の点数で良く、また1分毎でなくても、秒毎でも、また任意の単位時間毎で構わない。
【0033】
上記のように点数を定めておき、例えば植物生育基盤4の1L当たり、25ml蒸発したら25ml灌水を行うように設定したい場合は、通気量の積算(図2のステップS1)として点数を加算し、点数が設定累積点(この例では3600点)まで達したか否かを判断して(ステップS2)、設定累積点まで達した段階で一定量(例えば25ml)を灌水する(ステップS3)という規則にする。
【0034】
常に風量「5」で動かしたい場合は、3600/5=720(分)、つまり12時間の運転で一度灌水される。
常に風量「2」で動かしたい場合は、3600/2=1800(分)、つまり30時間の運転で一度灌水される。
室内空気の汚れに合わせて随時風量が変化した場合も、それぞれの風量に対して点数が加算され、3600点まで累積したら灌水される。
【0035】
ここで、停止状態の場合の考え方であるが、通気はしていないため、植物生育基盤4の蒸発量としては少ないが、植物が植わっている以上、植物が生育に必要な水分を吸収するため蒸発も行われ、通気による影響よりは小さいが徐々に乾燥していく。そのため、停止時灌水制御部26aにより、通気していない場合であっても点数が加算されるように定めておく。例えば、停止状態でも、前回の灌水時からの時間の経過に従って、一定量(例えば、3600/0.2=18000(分)、つまり12.5日)の点数となる時間が経過すると、灌水されるようにする。
【0036】
また、この通気量対応灌水量制御手段26は、上記点数につき、灌水が行われた時点でリセットし(ステップS4)、通気量の積算のステップS1に戻る。
【0037】
灌水中に通気を点数化するか否かについては、灌水時間が与える影響度合いに応じて設定すればよい。例えば、数時間の運転に対して、数分の灌水時間であれば、あまり影響はないとし、灌水終了時点から次の灌水のための運転について点数化してもよい。
【0038】
この構成の植栽システムによると、上記のように通気強度に合わせて点数を与え、それぞれ加点し、一定の点数が累積したら灌水するため、次の各利点が得られる。
1.通気量に合わせた灌水ができるため、過湿、過乾燥を抑制できる。
2.土壌水分センサによらずに必要な灌水量を推定することができる。
3.土壌水分センサ分のコストが削減される。
4.土壌水分センサを使用しないので、このセンサの精度を考慮しなくて済む。
5.土壌水分センサを使用しないので、このセンサの寿命や交換を考慮しなくてよい。 6.周囲温度や湿度を併せて測定し、これらの考慮をすることで、必要な灌水量をより精度良く求め、その量の灌水が行える。
7.設置事例のデータを集めておき、上記点数等で示される通気量に対応して行う灌水量に反映させることで、より精度良く灌水が行える。
【0039】
図4、5は参考提案例を示す。この実施形態では、図1の通気量対応灌水制御手段26が積算値に応じた量の灌水を行うにつき、各回の灌水を行う時刻が定められていて、その判断を行い(ステップR2)、設定時刻に達した時に1回に行う灌水の量を制御することで(ステップR3)、前記通気量に応じた灌水量の制御を行う。図4における他のステップR1、R4は、図2の例のステップS1、S4とそれぞれ同じである。
【0040】
例えば、灌水を開始する時刻を一定とし、それまでに累積した点数に応じた量の灌水を行う。前記実施形態で説明した内容と同じ運転パターンを用いてこの例の場合の灌水イメージを図5と共に説明する。
この例では、毎日、定められた1回の時刻(例えば、0:00時)に灌水を行う。
図5の例では、1日目は良く動いたので、多く灌水が行われている。
2日目は少し動いたので、中程度に灌水が行われる。
3日目は停止しているが、徐々に点数が加算されるので、少しだけ灌水が行われている。
【0041】
第1のパターン(図2、3の例)と、第2のパターン(図4、5の例)のいずれを採るかについては、例えば、灌水ポンプ13(音を発生する)をいつでも動かして良いか否か、通気用のファン6(図1参照)とポンプ13を一緒に動かすことができるか否か、植物生育基盤4の水分状態の変動幅に制限を付けたいか否かによって変えればよい。灌水ポンプ13を動かす時間や、通気用のファン6と一緒に動かすことができない場合は第2のパターンが好ましく、水分状態の変動幅に制限を付けたい場合は第1のパターンが好ましい。
【0042】
また、第2のパターンとする場合に、灌水ポンプ13を動かす時間については、ファン6の運転時間と合わせた制御を行ってもよい。例えば、ファン6の運転開始時間の一定時間(例えば30分)前において、もうすぐ灌水タイミングになりそうであれば、点数が設定累積点に達する前であっても灌水をしておくようにしてもよい。もうすぐ灌水タイミングになりそうであるか否かは、前記累積点よりも若干低い累積点を設定しておくことで判断できる。
【0043】
これとは逆に、ファン6の運転終了時間の一定時間(例えば30分)前において、点数は既に累積したが、運転時間の終了まで待って灌水を行うという制御を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、上記各実施形態は、植物生育基盤4に空気を送り込むようにしたが、植物生育基盤4からファンで吸引して通気を行うようにしてもよい。また、上記実施形態は、いずれも空気浄化緑化装置に適用した場合につき説明したが、この発明は、緑化に限らず、野菜等の植物を生育するシステムにも適用でき、また浄化を行うか否かに係わらず、植物生育基盤4に通気を行う場合であれは、一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…植栽装置
2…全体制御装置
3…植物
4…植物生育基盤
5…灌水装置
6…ファン
13…ポンプ
21…通気制御装置
22…灌水制御装置
23…汚れ対応通気量制御手段
24…手動入力対応通気量制御手段
28…汚れ検知センサ
25…通気量認識手段
26…通気量対応灌水量制御手段
図1
図2
図3
図4
図5