特許第6771938号(P6771938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771938測定システムの測定場所の位置を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771938
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】測定システムの測定場所の位置を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   G01N35/04 A
   G01N35/04 G
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-85686(P2016-85686)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-206197(P2016-206197A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】15164797.1
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング・シュタインバッハ
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−198489(JP,A)
【文献】 特開昭59−069765(JP,A)
【文献】 特表2005−522691(JP,A)
【文献】 特開2011−075560(JP,A)
【文献】 特開2000−258433(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0093519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
H03L 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムの複数の測定場所の位置を決定する方法であって、前記測定システムは、
a)円軌道上に配置された複数の測定場所、および物理的基準場所を有する、反応容器を受けるための円形装置と、
b)測定装置と
を含み、ここで、反応容器を受けるための装置が、その垂直軸周りで回転可能であるか、または測定装置が、反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で可動であり、
i. 反応容器を受けるための装置をその垂直軸周りで回転させる、または反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で測定装置を動かす工程であって、それぞれの場合に回転速度が一定である工程と、
ii. 各回転中に物理的基準場所で物理的基準信号を測定する工程と、
iii. 位相ロックループによって仮想基準場所を決定する工程と、
iv. 仮想基準場所に基づいて測定場所の位置を計算する工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
物理的基準信号は、物理的基準場所にある光電センサで生成される遮られた光信号からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定場所の位置は仮想基準場所からの時間間隔に基づいて計算される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
仮想基準場所を決定するための位相ロックループは、位相検出器、ループフィルタおよびパルス発生器を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
位相検出器は、ロック状態で、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、最後に測定された物理的基準信号のずれを確立し、これをループフィルタへ送る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ループフィルタは、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、物理的基準信号の最後に測定された位相のずれ、および既定の補正係数をパルス発生器へ送り、さらに、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値を確立し、これも同様にパルス発生器へ送る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
パルス発生器は、次にパルス信号列を生成し、その周期は、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値に対応し、パルスの位相角は、物理的基準信号の最後の測定された位相の平均位相角からのずれが最小限になるように補正係数によって補正され、次にパルス発生器は、第1に、パルス信号列を位相検出器へ送り、第2に、これらを出力パルス列として出力し、この出力パルス列の各パルスが、関連付けられた回転の仮想基準場所に対応する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ループフィルタは、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値を連続的に各回転ごとに適合させる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
位相検出器は、最初に第1と第2の物理的基準信号の間の周期を測定し、これを測定システムの始動中に、それが依然としてロック解除状態にある間に、パルス発生器へ送る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
依然としてロック解除状態にあるパルス発生器は物理的基準信号を位相検出器へ送る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
位相検出器は、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、最後に測定された物理的基準信号のずれを確立し、次に位相ロックループは、ずれが既定の閾値未満になったときにロック状態に切り換えられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ずれが既定の閾値未満であるという条件が、少なくともn≧2の連続回転の回数について満たされなければならない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
測定システムを有する自動分析デバイスであって、前記測定システムは、
a. 円軌道上に配置された複数の測定場所、および物理的基準場所を有する、反応容器を受けるための円形装置と、
b. 測定装置と
を含み、ここで、反応容器を受けるための装置が、その垂直軸周りで回転可能であるか、または測定装置が、反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で可動であり、
分析デバイスはさらに、制御ユニットおよび集積回路を有し、ここで、制御ユニットは、
i. 反応容器を受けるための装置をその垂直軸周りで回転させる、または反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で測定装置を動かす工程であって、それぞれの場合に回転速度が一定である工程と、
ii. 各回転中に物理的基準場所で基準信号を測定する工程と、
iii. 仮想基準場所に基づいて測定システムの複数の測定場所の位置を決定する工程と
を含む方法を制御するように構成され、ここで、集積回路は、仮想基準場所を決定する位相ロックループとして構成されることを特徴とする、前記自動分析デバイス。
【請求項14】
集積回路はデジタル集積回路であり、特に好ましくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)である、請求項13に記載の自動分析デバイス。
【請求項15】
測定装置は光度測定装置である、請求項13または14に記載の自動分析デバイス。
【請求項16】
物理的基準場所は光電センサ装置から形成される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の自動分析デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析デバイス、特に生体外診断用、の分野であり、分析デバイスの測定システムの複数の測定場所の位置を決定する方法、およびこのような方法のためのコントローラを有する自動分析デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
分析、法科学、微生物学および臨床診断学に日常的に使用される現在の分析デバイスは、試料についての複数の検出反応および分析を実行することができる。複数の試験を自動的に実行できるようにするには、測定セル、反応コンテナおよび試薬コンテナを空間移送するための様々な自動動作装置、たとえばグリッパ機能付き移送アーム、搬送ベルトまたは回転搬送ホイールなど、ならびに、たとえばピペット装置など液体を移送するための装置が必要になる。これらのデバイスは中央制御ユニットを含み、この中央制御ユニットは、適切なソフトウェアを用いて、所望の分析のための作業工程を、大部分は自律的に計画しそれに対処することができる。
【0003】
このような自律動作分析デバイスに使用される分析方法の多くは、光学的方法に基づく。たとえば分析物の濃度または活性などの臨床関連パラメータの決定は、測定セルでもあり得る反応容器内で1つまたはそれ以上の試薬と混合されている試料の一部によって実行されることが多く、その結果、生化学的反応または特定の結合反応、たとえば抗原/抗体結合反応が開始されて、試験設定の光学的な、または他の物理的な特性の測定可能な変化が生じる。
【0004】
分光光度法および比濁法に加えて、比濁分析は広く使用される分析方法である。したがって、対応する分析デバイスには対応する光度測定装置がある。
【0005】
光度測定装置は、少なくとも1つの光源および少なくとも1つの光検出器を含む。通常、光源および光検出器の配置は、光源から放出された光が記録場所に配置された測定セルを通過し、測定セルから再び出る光を光検出器が測定するように選ばれる。
【0006】
光度測定装置が測定セルに対して可動である、または測定セルが光度測定装置に対して可動である分析デバイスを使用することが多くなっている。これは、測定装置がいわば複数の試料を同時に検査することができ、これにより試料スループットが著しく向上するという点で有利である。
【0007】
特許文献1には、試料の光度検査用装置が記載されており、複数の固定測定場所が、反応容器を受けるための円形装置の円軌道上に配置されており、光度測定装置は、反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平軌道上で可動である。当然、光度測定装置に固定実施形態があること、および反応容器を受けるための装置がその垂直軸周りで回転することもまた別法として可能である。
【0008】
光度測定装置が測定セルに対して(またはその逆に)動くこのような光度計システムでは、測定場所の1つずつに対し少なくとも1つの測定値が1回転ごとに検出される。正しい測定値検出のためにここで保証されなければならないのは、各測定場所が各回転中に固定され、かつ光度測定装置によって取り出されることである。この目的のために、システムは、測定装置と測定場所の間の相対的な動きの初期位置を規定する基準点としての物理的基準場所を含む。そして個々の測定場所は、既知の一定回転速度の場合には、物理的基準場所に対する時間間隔を測定することによって決定される。測定された時間間隔は次に、特定の測定場所と関連付けられる。例として、物理的基準場所は、各回転中に1回通過する二叉光バリアによって形成することができる。
【0009】
しかし、物理的基準場所の決定精度は、たとえば光電センサ信号中の干渉もしくはノイズ、または特にステッピングモータによる駆動の場合に発生することが多い測定装置もしくは測定場所の均一性の不十分な動きなど、様々な要因によって実際には制限される。物理的基準位置の不正確な決定により、その後の回転における測定場所の決定が不正確になり、ひいては測定値検出の精度が低下することになる。これがひいては、完全に無効な誤測定値につながる可能性があり、これは測定システムのスループットを低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP−A1−2309251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、冒頭で記載したタイプの自動分析デバイス用の測定システムを、正確な測定値検出が保証されるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、位相ロックループを用いて決定される仮想基準場所の位置によって、測定システムの測定場所の位置をより正確に決定することを可能にして、その物理的基準場所の決定位置から次に進む方法を提供することによって達成される。
【0013】
本発明による方法は、場所の誤りに原因をたどることができる不正確な測定の数を減らすと結論づけられている。
【0014】
したがって、本発明の主題は、測定システムの複数の測定場所の位置を決定する方法であり、測定システムは、
a)円軌道上に配置された複数の測定場所、および物理的基準場所を有する、反応容器を受けるための円形装置と、
b)測定装置と
を含み、ここで、反応容器を受けるための装置が、その垂直軸周りで回転可能であるか、または測定装置が、反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で可動であるかのいずれかである。この方法は、
i. 反応容器を受けるための装置をその垂直軸周りで回転させる、または反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で測定装置を動かす工程であって、それぞれの場合に回転速度が一定である工程と、
ii. 各回転中に物理的基準場所で物理的基準信号を測定する工程と、
iii. 位相ロックループによって仮想基準場所を決定する工程と、
iv. 仮想基準場所に基づいて測定場所の位置を計算する工程と
を含む。
【0015】
物理的基準場所は、好ましくは、たとえば二叉光バリアの形の、たとえば使い捨て光電センサ装置などの光電子センサシステムによって形成される。この目的のために、光源と光検出器は、測定装置上で互いに向かい合わせに配置され、絞り(stop)が反応容器を受けるための装置上の位置に設けられ、この絞りは、光源から光検出器に当たる光信号を遮ることができる。絞りが配置される位置は、物理的基準場所を画成する。それに応じて、物理的基準信号は、この場合、物理的基準場所にある光電センサで生成される遮られた光信号からなる。
【0016】
あるいは、物理的基準場所はまた、他のセンサシステムによっても、たとえばホールセンサシステムまたは容量センサシステムによっても、画成可能である。
【0017】
本発明によれば、物理的基準場所の物理的基準信号は、反応容器を受けるための装置の、その垂直軸周りの各回転中、または反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上における測定装置の各回転中に記録され、仮想基準場所が位相ロックループによって決定される。位相ロックループ(PLL)は電子回路装置であり、フィードバック制御ループを含み、一般に、ある場所の安定した位相角を周期的手順にわたって設定する働きをする。
【0018】
本発明による仮想基準場所を決定するのに適している位相ロックループは、位相検出器、たとえばローパスフィルタなどのループフィルタ、およびパルス発生器を少なくとも含む。
【0019】
原則的には、位相ロックループのロック解除状態(「unlocked PLL」)と位相ロックループのロック状態(「locked PLL」)とは区別される。測定システムが動作状態にされるとき、実際に測定された物理的基準信号のパルス列と、パルス発生器で生成されたパルス信号列との間の位相角はまだ不明である。すなわち位相ロックループはロック解除状態にある。位相ロックループは、パルス発生器が補正済みパルス信号列を生成し、後者を位相検出器に送った後にようやくロック状態になり、そのパルス信号列の位相ずれは規定の最小位相ずれ未満に減少する。
【0020】
好ましくは、位相ロックループは、位相検出器が、ロック状態で、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、最後に測定された物理的基準信号のずれを確立し、後者をループフィルタへ送るように構成される。
【0021】
次に、ループフィルタは、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、物理的基準信号の最後に測定された位相のずれをパルス発生器へ、既定の補正係数と共に送る。さらに、ループフィルタは、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値を確立し、これもまたパルス発生器へ送る
【0022】
好ましくは、ループフィルタは、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値を連続的に各回転ごとに適合させる。
【0023】
ロック状態で、パルス発生器は次にパルス信号列を生成し、その周期は、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値に対応し、パルスの位相角は、物理的基準信号の最後の測定された位相の平均位相角からのずれが最小限になるように補正係数によって補正される。このパルス信号列は次に、第1に、閉ループ制御目的のために位相検出器へ戻され、第2に、出力パルス列として出力される。この出力パルス列の各パルスは次に、関連付けられた回転の仮想基準場所に対応する。
【0024】
補正係数は、位相ロックループが位相補正を行うための利得または減衰に対応する。補正係数は、シミュレーション実験によって所与のシステムごとに実験的に確立されなければならない。あるいは、補正係数はまた、数学モデルを利用して計算することも、試行設定で確立することもできる。
【0025】
好ましくは、位相ロックループはさらに、位相検出器は、最初に第1と第2の物理的基準信号の間の周期を測定し、これを測定システムの始動中に、すなわちそれが依然としてロック解除状態にある間に、パルス発生器へ送るように構成される。
【0026】
パルス発生器は物理的基準信号を位相検出器へ、依然としてロック解除状態で送る。
【0027】
それによって、位相検出器は、パルス発生器で生成されたパルス信号列の位相からの、最後に測定された物理的基準信号のずれを確立する。位相ロックループは、次にずれが既定の閾値より小さくなった場合にロック状態に切り換えられる。閾値は、シミュレーション実験によって所与のシステムごとに実験的に確立されなければならない。あるいは、閾値はまた、数学モデルを利用して計算することも、試行設定で確立することもできる。
【0028】
好ましくは、ずれが既定の閾値未満であるという条件が、少なくとも2つ以上(n≧2)の連続回転の回数について満たされなければならない。
【0029】
本発明のさらなる主題は、測定システムを有する自動分析デバイスに関し、前記測定システムは、
a. 円軌道上に配置された複数の測定場所、および物理的基準場所を有する、反応容器を受けるための円形装置と、
b. 測定装置と
を含み、ここで、反応容器を受けるための装置が、その垂直軸周りで回転可能であるか、または測定装置が、反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で可動であるかのいずれかである。本発明による分析デバイスはさらに、制御ユニットおよび集積回路を有し、ここで、制御ユニットは、
i. 反応容器を受けるための装置をその垂直軸周りで回転させる、または反応容器を受けるための装置の垂直軸周りの水平円軌道上で測定装置を動かす工程であって、それぞれの場合に回転速度が一定である工程と、
ii. 各回転中に物理的基準場所で物理的基準信号を測定する工程と、
iii. 仮想基準場所に基づいて測定システムの複数の測定場所の位置を決定する工程と
を含む方法を制御するように構成される。
【0030】
集積回路は、仮想基準場所を決定する位相ロックループとして構成される。好ましくは、集積回路はデジタル集積回路である。特に好ましくは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)がデジタル集積回路として使用される。
【0031】
好ましい分析デバイスでは、測定システムは光度測定装置を含む。光度測定装置は、1つまたはそれ以上の分光測光装置、および/または1つまたはそれ以上の比濁分析装置を有することができる。好ましい測定装置が特許文献1に記載されている。
【0032】
好ましくは、反応容器を受けるための円形装置における物理的基準場所は、光電センサ装置から形成される。この目的のために、たとえば絞りが、反応容器を受けるための装置上の位置に設けられ、前記絞りは、測定装置に適用される光源から、同様に測定装置に適用される光検出器に入射する光信号を遮ることができる。絞りが配置される位置は、物理的基準場所を画成する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】光度計が固定試料受け板周りで回転する測定システムにおける測定データ検出および場所計算を概略的に示す図である。
図2図1による測定システムの測定場所の位置を決定するときに位相ノイズを低減させるための位相ロックループを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および図2は、125個の円筒形反応容器を受けるための円形リング状の試料板周りで光度計が一定速度(2Hz)で回る測定システムを含む自動分析デバイスを説明するために使用される(ここではこれ以上詳細に図示せず)。
【0035】
図1は、光度計が案内されて通過する使用可能な125箇所の受け位置のうちのいくつかを概略的に示す。物理的基準場所は、二叉光バリア(200)の絞りから形成され、基準点または初期位置を規定し、ここから測定場所1〜125が既知の間隔をおいて配置される。物理的基準場所と第1の測定場所の間の既知の間隔は、両方向矢印で示されている。測定場所は、試料板に導入された反応容器の中の反応標本の光学特性を測定できるように、反応容器の受け場所の中に位置している。
【0036】
測定値を正しく検出する目的のために、各測定場所が各回転中に正しく取り出されることを保証する必要がある。既知の一定回転速度の場合には、個々の測定場所は、物理的基準場所に対する時間間隔を測定することによって決定される。測定時間間隔は次に、測定場所と関連付けられる。
【0037】
しかし、物理的基準場所を決定する精度は、たとえば光電センサ信号中の干渉もしくはノイズ、または均一性が不十分な光度計の動き、などの様々な要因によって制限される。物理的基準位置を不正確に決定することにより、その後の回転の際の測定場所の決定が不正確になり、ひいては測定値検出の精度が低下することになる。これがひいては、完全に無効な誤測定値をもたらして、測定システムのスループットを低下させる可能性がある。
【0038】
このような誤測定値を減らすために、本明細書に記載の自動分析デバイスは、FPGAの形のデジタル集積回路を有し、その一部の機能は、仮想基準場所を決定する位相ロックループとして構成される。
【0039】
図2は、FPGAをプログラムすることによって実現された位相ロックループの設計を概略的に示す。制御要素は破線で描かれている。情報を含む要素は実線で描かれている。
【0040】
この装置の入力信号(pulse_in)は、光度計が測定システムの物理的基準場所を通過するたびに二叉光バリアで生成される物理的基準信号である。
【0041】
測定システムが始動されると、すなわちロック解除状態になると、位相検出器(PHASE DETECTOR、ΔΦ)が最初に第1と第2の物理的基準信号の間の時間間隔、すなわち周期をカウンタによって確立し、その結果(period_in)がさらなる処理のためにループフィルタ(LOWPASS FILTER)に提供される。後で、位相ロックループのロック状態において(「locked PLL」)、パルス発生器(PULSE GENERATOR)で生成されたパルス信号列(pulse_feedback)からの、最後の物理的基準信号の現在の位相ずれが確立され、この結果(phase_in)もまた、さらなる処理のためにループフィルタに提供される。位相検出器における位相比較の完了および周期持続時間の確立(period_in)は、制御信号phase_rdyによって信号伝達される。
【0042】
ループフィルタは、平均周期値をこのように確立するために、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値(period_average)を計算し、これをパルス発生器へ送る。さらに、ループフィルタは、既定の補正係数(phase_corr)が乗じられた現在の位相ずれをパルス発生器へ送る。ループフィルタにおけるN個の測定された周期の平均値確立の完了は、制御信号calc_rdyによって伝えられる。
【0043】
補正係数は、位相ロックループが引き続き位相補正を行うための利得(または減衰)に対応する。補正係数が小さいと、出力パルス(pulse_out)と入力パルス(pulse_in)との位相角の差がゆっくりとしかゼロに補正されない、動作の遅いシステムがもたらされる。ここでは、フィルタ効果が高い。すなわち個々のパルスの偏位は、その時間的位置に関して小さい。補正係数が大きいと、より速い位相差の補正が、より低いフィルタ効果と共に、したがってパルス偏位の増大と共に同時にもたらされる。ここで実際に実現されたシステムでは、補正係数は、シミュレーションに基づいて1/2(0.015625)と決定された。
【0044】
使用されたループフィルタは、フィルタ深さに動的に適合する特性を有する。すなわち、フィルタ深さNは、測定システムが始動されて最初の1回転の結果、2回転の平均結果などから開始するときに、フィルタ結果として連続して適合される。平均値を計算するときの切換え支出を低く保つために、動的平均値形成は、N=2、k=0,1,...10に制限された。その結果平均値形成は、2進値の簡単なシフト操作によって実行することができる。
【0045】
パルス発生器は、ロック状態でパルス信号列を発生する。このパルス信号列の周期は、物理的基準信号のN個の測定された周期の平均値に対応する。位相角、したがって正確なパルス場所も同様に、前のパルス場所から出てくる。1回転からの位相ずれが直接、補正係数によって調整可能な位相補正につながる。回転持続時間を監視する目的のために、最後のパルスの時間間隔が上位コンピュータに送られる(period_actual)。
【0046】
実際に測定された物理的基準信号のパルス列と、パルス発生器で生成されたパルス信号列との間の位相角は、測定システムが始動された直後には分からない。したがって、最初のパルスが、実際に測定された物理的基準信号(pulse_in)から直接導き出され、装置の出力部に送られ(pulse_out)また位相検出器に送られる(pulse_feedback)。位相検出器で確立された位相ずれがいくつかの測定にわたって既定の閾値未満に低下した後に、制御信号phase_lockがオンに切り換えられ、すなわち配置がロック状態に移行する(「locked PLL」)。その結果、ローパスフィルタの動的フィルタリングが起動し、パルス発生器におけるパルス発生が、フィルタリングされるパルス周期および位相補正に切り換えられる。
【0047】
ロック位相の出力パルス列(pulse_out)の各パルスは、関連付けられた回転の仮想基準場所に対応する。出力パルス列は、上位計算ユニットに送られ、このユニットは次に、仮想基準場所に基づいて、光度測定システムの測定場所の位置を決定する。
【符号の説明】
【0048】
200 二叉光バリア
図1
図2