(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態1に係る瓦型モジュール(瓦型太陽電池モジュール)1の概略構成を示す平面図である。瓦型モジュール1は、太陽光を光電変換する四角形状の太陽電池パネル2と、この太陽電池パネル2の周縁部に配置した枠3とで構成されている。枠3は、太陽電池モジュールの4辺のそれぞれに対して取り付けられる4本のモジュール枠によって構成される。瓦型モジュール1では、屋根の水流れ方向に沿って対向する2辺において、軒側に取り付けられる前枠31と棟側に取り付けられる後枠32とが異なる形状となっている。
【0014】
太陽電池パネル2は、例えば2枚のガラス板の間に、透明電極膜、光電変換層(半導体層)、及び裏面電極膜を順次積層してなる太陽電池セルを挟み込んで、各ガラス板の端部を封止したものである。この太陽電池パネル2についてより詳細に説明すれば、透光性基板であるガラス基板に透明電極と、半導体層からなる光電変換層と、裏面電極層とをこの順に積層して、太陽電池セルを形成し、裏面電極層側に保護板である透光性のガラス基板を貼り合わせて、各ガラス基板間を封止した構成である。あるいは、1枚のガラス板と保護層(バックシート)の間に太陽電池セルを挟み込んで封止したものでもよい。
【0015】
図2は、瓦型モジュール1の軒側端部の構成を拡大して示す断面図である。前枠31は、例えばアルミ材からなり、長手方向に垂直な断面の形状は、何れの箇所でも同一形状となっている。また、前枠31の上記断面は、
図2に示すように、第1ないし第6の面31a〜31fから構成されている。
【0016】
第1の面31aおよび第2の面31bは互いに直交しており、第2の面31bの途中から第1の面31aが後方に(棟側に向かって)突出するように形成されている。第3の面31cは、第2の面31bの下端から後方に折り曲げられて形成されている。第4の面31dは、第1の面31aの後端(棟側)から斜め後方に折り曲げられて形成されている。第5の面31eは、第4の面31dの後端から下方に折り曲げられて形成されている。第6の面31fは、第5の面31eの下端から前方に(軒側に向かって)折り曲げられて形成されている。第5および第6の面31e,31fは、これら2面で形成される略「L」字形状の前枠係合部311を形成している。より具体的には、前枠係合部311は、太陽電池パネル2の裏面(受光面と反対側の面)に対して、垂直に下垂する垂直面と該垂直面の下端から軒側に突出する水平面とから構成される。この例では、第5の面31eが上記垂直面に、第6の面31fが上記水平面に相当する。
【0017】
第1の面31a、および第2の面31bの一部(第1の面31aより上の部分)は、太陽電池パネル2の裏面の一部及び軒側の端面を覆うように配置されており、これらの面と接着剤等によって接着されている。この接着により、太陽電池パネル2に前枠31が固定される。尚、
図2の構成では、太陽電池パネル2の裏面(受光面と反対側の面)はバックシート2aとされている。
【0018】
尚、
図2に示す前枠31の断面構造は、あくまで一例であり、本発明はこの構造に限定されるものではない。例えば、第5の面31eは太陽電池パネル2の受光面に対して必ずしも垂直である必要は無く、第6の面31fは太陽電池パネル2の受光面に対して必ずしも水平である必要は無い。前枠31の断面構造の変形例を、
図3(a),(b)に示す。
図2に例示した前枠31の断面構造は、後述する後枠32の第3の面32cと滑らかに係合するといった利点がある。
【0019】
図4は、瓦型モジュール1の棟側端部の構成を拡大して示す断面図である。後枠32は、例えばアルミ材からなり、長手方向に垂直な断面の形状は、何れの箇所でも同一形状となっている。また、後枠32の上記断面は、
図4に示すように、第1ないし第6の面32a〜32fから構成されている。
【0020】
第1の面32aおよび第2の面32bは互いに直交しており、第1の面32aの後端から第2の面32bが上方に立設するように形成されている。第3の面32cは、第2の面32bの上端から後方に折り曲げられて形成されている。第4の面32dは、第1の面32aの先端(軒側)から斜め後方に折り曲げられて形成されている。第5の面32eは、第4の面32dの下端から後方に折り曲げられて形成されている。第6の面32fは、第5の面32eの後端付近で下方に突出して形成されている。
【0021】
第1の面32aおよび第2の面32bの一部は、太陽電池パネル2の裏面の一部及び棟側の端面を覆うように配置されており、これらの面と接着剤等によって接着されている。この接着により、太陽電池パネル2に後枠32が固定される。また、第2の面32bの上部は太陽電池パネル2の受光面よりも上方に突出しており、この第2の面32bの上部と第3の面32cとは、これら2面で形成される略「逆L」字形状の後枠係合部321を形成している。より具体的には、後枠係合部321は、太陽電池パネル2の受光面に対して、垂直に立設する垂直面と該垂直面の上端から棟側に突出する水平面とから構成される。この例では、第2の面32bが上記垂直面に、第3の面32cが上記水平面に相当する。
【0022】
尚、
図4に示す後枠32の断面構造は、あくまで一例であり、本発明はこの構造に限定されるものではない。例えば、第2の面32bは太陽電池パネル2の受光面に対して必ずしも垂直である必要は無く、第3の面32cは太陽電池パネル2の受光面に対して必ずしも水平である必要は無い。
【0023】
続いて、瓦型モジュール1の屋根取付構造について、
図5を参照して説明する。
図5では、2枚の瓦型モジュール1を屋根の水流れ方向Aに沿って配置したときの、前枠31と後枠32とを用いた屋根取付構造を例示する。
【0024】
瓦型モジュール1が取り付けられる屋根の野地板100上には瓦桟101が所定の間隔で配置されており、これらの瓦桟101間に瓦型モジュール1を架け渡して固定する。瓦型モジュール1は、屋根の軒側から棟側に向かう順序で葺かれていくものであり、屋根の水流れ方向Aに沿って配置される2枚の瓦型モジュール1について、ここでは説明の便宜上、軒側に配置されるモジュールを瓦型モジュール(軒側瓦型モジュール)1Aとし、棟側に配置されるモジュールを瓦型モジュール(棟側瓦型モジュール)1Bとする。この場合、軒側の瓦型モジュール1Aが先に葺かれ、その上に棟側の瓦型モジュール1Bが葺かれる。
【0025】
まず、瓦桟101上に軒側の瓦型モジュール1Aの後枠32を載せて固定する。具体的には、後枠32の第5の面32eを木ねじ102等で瓦桟101上に締結固定する。このとき、第6の面32fが瓦桟101の側面に引っ掛けられて後枠32が位置決めされるようにしてもよい。
【0026】
次に、棟側の瓦型モジュール1Bにおける前枠31の第3の面31cを軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2上(受光面側)に載せつつ、瓦型モジュール1Bを棟側から軒側へ向けて(すなわち、水流れ方向Aの下流側に向けて)移動させることにより、後枠32の後枠係合部321と前枠31の前枠係合部311を係合させる。具体的には、後枠32の第3の面32cの下に前枠31の第6の面31fを入り込ませる。このような後枠係合部321と前枠係合部311との係合により、瓦型モジュール1は相応の吹き上げ荷重(負荷重)にも耐えられるようになる。より詳しくは、棟側の瓦型モジュール1Bに負荷重がかかった場合でも、瓦型モジュール1Bの前枠31の第6の面31fが、軒側の瓦型モジュール1Aの後枠32の第3の面32cに抑えられることにより、モジュールの吹き上げを防ぐことが可能となる。同時に、瓦型モジュール1Aは、棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31の面31cからかかる正荷重により、負荷重がかかった場合でもモジュールの吹き上げを防ぐことができる。
【0027】
上述のように後枠係合部321と前枠係合部311とを係合させた後は、瓦桟101上に棟側の瓦型モジュール1Bの後枠32が載っている。この後枠32の第5の面32eを木ねじ102等で瓦桟101上に締結固定することにより、棟側の瓦型モジュール1Bが屋根に固定される。その後は、上記作業を繰り返すことにより、瓦型モジュール1を水流れ方向Aに沿って順次取り付けていくことが可能である。
【0028】
尚、瓦型モジュール1は、水流れ方向Aだけでなく、水平方向(水流れ方向Aと直交する方向)に沿っても複数並べて配置される。このように水平方向に並べられる瓦型モジュール1同士も枠3によって接続されるが、この接続構造は周知の構造を利用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
本発明の瓦型モジュール1を用いて屋根を葺く場合、屋根全体に瓦型モジュール1を使用するとは限らず、瓦型モジュール1と通常の瓦とを併用する場合もありうる。
図6及び
図7は、瓦型モジュール1と通常の瓦200とによる屋根取付構造を示す断面図である。
図6は瓦200を軒側に瓦型モジュール1を棟側に配置している場合を示し、
図7は瓦型モジュール1を軒側に瓦200を棟側に配置している場合を示している。
【0030】
図6に示す屋根取付構造では、瓦200の棟側端部を木ねじ103等で瓦桟101上に締結固定する。また、瓦200上面の棟側端部付近の所定箇所には接続部材201が同じ木ねじ103により取付固定されている。接続部材201の断面は、
図6に示すように、第1ないし第3の面201a〜201cから構成されている。第1の面201aは、瓦200の上面に接触してねじ止めされている。第2の面201bは、第1の面201aの前端から上方に立設するように形成されている。第3の面201cは、第2の面201bの上端から後方に折り曲げられて形成されている。
【0031】
瓦200と共に屋根に取り付けられた接続部材201に対し、瓦200の棟側に配置される瓦型モジュール1は、前枠31の第3の面31cを瓦200の上面に載せつつ、瓦型モジュール1を棟側から軒側へ向けて(すなわち、水流れ方向Aの下流側に向けて)移動させることにより、前枠31の前枠係合部311と接続部材201とを係合させる。
【0032】
瓦200の軒側に瓦型モジュール1を配置する屋根取付構造では、
図7に示すように、瓦型モジュール1の棟側の端部付近に瓦200の前端部が載せられ、瓦200によって瓦型モジュール1の後枠32が覆われる。
【0033】
本実施の形態1に係る瓦型モジュール1は、上述のように、軒側の瓦型モジュール1Aの後枠係合部321に、棟側の瓦型モジュール1Bの前枠係合部311を係合させるにあたって、瓦型モジュール1Bを棟側から軒側へ向けて移動させる。すなわち、後枠係合部321に対して前枠係合部311を棟側から差し込むようにして係合させる。
【0034】
このような係合方法では、従来のように、棟側の瓦型モジュール1Bを軒側の瓦型モジュール1Aに対して下から上に引き上げることがなく、太陽電池パネル2のガラス(特にAR(Anti-Reflection)コートガラスを用いた場合)の露出面(瓦型モジュール1Bが載っていない面)にキズが付くことを防止できる。
【0035】
このため、
図5に示すように軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2上に、棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31が直接載る構造とすることができる。言い換えれば、瓦型モジュール1の施工状態(軒側の瓦型モジュール1Aの後枠係合部321と棟側の瓦型モジュール1Bの前枠係合部311とが係合している状態)において、棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31が軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2を上から押さえる構造とすることができる。この構造では、瓦型モジュール1Aの後枠係合部321に瓦型モジュール1Bの前枠係合部311を係合させる動作において、下段の後枠32に上段の前枠31を置いてから引き上げ動作を行う必要はないため、後枠32を大きめのサイズとする必要もない。したがって、後枠32の製造コストが増加することを回避できる。
【0036】
また、この構造では、瓦型モジュール1の施工状態において、軒側の瓦型モジュール1Aの後枠32は棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31によって完全に隠れた(完全に覆われた)状態となる。また、軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2は棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31によって上から押さえられるため、吹き上げ荷重によっても太陽電池パネルが枠3から外れにくくなっている。このため、本実施の形態1に係る瓦型モジュール1では、前枠31および後枠32において断面コの字形状の嵌合部を設けることなく、太陽電池パネル2の下面に前枠31および後枠32が接着固定されるようになっている。
【0037】
したがって、施工した状態の瓦型モジュール1を上方向(屋根面に直交する方向)から見た場合、
図8に示すように、瓦型モジュール1Aの後枠32は瓦型モジュール1Bの前枠31に隠れて視認できない。さらに、前枠31においても断面コの字形状の嵌合部に太陽電池パネル2が嵌め込まれていないため、前枠31の視認面積も極めて小さい。このように、施工した状態で前枠31および後枠32の視認面積を小さくできることは、瓦型モジュール1において太陽電池パネル2の受光面積を増加させることになり、発電効率の増加につながる。また、前枠31および後枠32が視認されにくいことは、施工状態の瓦型モジュール1の意匠性も向上させる。
【0038】
〔実施の形態2〕
図9は、本実施の形態2に係る瓦型モジュール11の概略構成を示す図であり、2枚の瓦型モジュール11を屋根の水流れ方向Aに沿って配置したときの屋根取付構造を例示する。本実施の形態2に係る瓦型モジュール11は、実施の形態1における瓦型モジュール1の前枠31および後枠32の代わりに、軒側及び棟側の両方で略同一形状のモジュール枠を用いたことを特徴としている。ここでは、軒側及び棟側の両方で同一形状のモジュール枠34を用いた構成を例示する。
【0039】
モジュール枠34は、基本的には、実施の形態1における前枠31とほぼ同様の構成とすることができる。すなわち、
図9におけるモジュール枠34は、第1ないし第6の面34a〜34fから構成されており、モジュール枠34における第1ないし第6の面34a〜34fは、
図2に示す前枠31の第1ないし第6の面31a〜31fに対応している。尚、モジュール枠34として、
図3(a),(b)に示す前枠31を用いることも当然ながら可能である。
【0040】
また、本実施の形態2に係る瓦型モジュール11を屋根に取り付けるためには、接続部材40が用いられる。接続部材40は、例えばアルミ材からなり、長手方向に垂直な断面の形状は、何れの箇所でも同一形状となっている。また、接続部材40の断面は、
図9に示すように、第1ないし第5の面40a〜40eから構成されている。
【0041】
第1の面40aおよび第2の面40bは互いに直交しており、第1の面40aの途中から第2の面40bが上方に立設するように形成されている。第3の面40cは、第2の面40bの上端から後方に折り曲げられて形成されている。第4の面40dは、第1の面40aの後端から斜め上方に傾斜して延設されている。第5の面40eは、第4の面40dの後端付近で下方に突出して形成されている。また、接続部材40では、第2の面40bの上部と第3の面40cとが、これら2面で形成される略「逆L」字形状の係合部401を形成している。
【0042】
瓦型モジュール11が取り付けられる屋根の野地板100上には瓦桟101が所定の間隔で配置されており、これらの瓦桟101間に瓦型モジュール11を架け渡して固定する。瓦型モジュール11は、屋根の軒側から棟側に向かう順序で葺かれていくものであり、屋根の水流れ方向Aに沿って配置される2枚の瓦型モジュール11について、ここでは説明の便宜上、軒側に配置されるモジュールを瓦型モジュール11Aとし、棟側に配置されるモジュールを瓦型モジュール11Bとする。この場合、軒側の瓦型モジュール11Aが先に葺かれ、その上に棟側の瓦型モジュール11Bが葺かれる。
【0043】
まず、瓦桟101上に接続部材40を載せて固定する。具体的には、接続部材40の第4の面40dを木ねじ102等で瓦桟101上に締結固定する。このとき、第5の面40eが瓦桟101の側面に引っ掛けられて接続部材40が位置決めされるようにしてもよい。
【0044】
軒側の瓦型モジュール11Aは、モジュール枠34の第3の面34cを接続部材40の第1の面40aに載せ、かつ、モジュール枠34の第2の面34bを接続部材40の第2の面40bに接触させて配置される。また、モジュール枠34の第2の面34bと接続部材40の第2の面40bとをビス104によって締結することで、瓦型モジュール11Aが接続部材40に取付固定される。
【0045】
次に、棟側の瓦型モジュール11Bにおけるモジュール枠34の第3の面34cを軒側の瓦型モジュール11Aの太陽電池パネル2上(受光面側)に載せつつ、瓦型モジュール11Bを棟側から軒側へ向けて(すなわち、水流れ方向Aの下流側に向けて)移動させることにより、接続部材40の係合部401とモジュール枠34の係合部341(第5および第6の面34e,34f)とを係合させる。具体的には、接続部材40の第3の面40cの下にモジュール枠34の第6の面34fを入り込ませる。このような係合部401と係合部341との係合により、瓦型モジュール1は相応の吹き上げの吹き上げ荷重(負荷重)にも耐えられるようになる。
【0046】
その後は、上記作業を繰り返すことにより、瓦型モジュール11を水流れ方向Aに沿って順次取り付けていくことが可能である。
【0047】
このような係合方法では、従来のように、棟側の瓦型モジュール11Bを軒側の瓦型モジュール11Aに対して下から上に引き上げることがなく、太陽電池パネル2のガラス(特にAR(Anti-Reflection)コートガラスを用いた場合)の露出面(瓦型モジュール1Bが載っていない面)にキズが付くことを防止できる。
【0048】
このため、
図9に示すように軒側の瓦型モジュール11Aの太陽電池パネル2上に、棟側の瓦型モジュール11Bのモジュール枠34が直接載る構造とすることができる。言い換えれば、瓦型モジュール11の施工状態(接続部材40の係合部401と棟側の瓦型モジュール11Bの係合部341とが係合している状態)において、棟側の瓦型モジュール11Bのモジュール枠34が軒側の瓦型モジュール11Aの太陽電池パネル2を上から押さえる構造とすることができる。
【0049】
この構造では、瓦型モジュール11の施工状態において、軒側の瓦型モジュール11Aのモジュール枠34は棟側の瓦型モジュール11Bのモジュール枠34によって完全に隠れた状態となる。また、軒側の瓦型モジュール11Aの太陽電池パネル2は棟側の瓦型モジュール11Bのモジュール枠34によって上から押さえられるため、吹き上げ荷重(負荷重)によっても太陽電池パネルがモジュール枠34から外れにくくなっている。このため、本実施の形態2に係る瓦型モジュール11では、モジュール枠34において断面コの字形状の嵌合部を設けることなく、太陽電池パネル2の下面にモジュール枠34が接着固定されるようになっている。
【0050】
したがって、施工した状態の瓦型モジュール11を上方向(屋根面に直交する方向)から見た場合、実施の形態1と同様に、瓦型モジュール11Aのモジュール枠34は瓦型モジュール11Bのモジュール枠34に隠れて視認できない。さらに、モジュール枠34において断面コの字形状の嵌合部に太陽電池パネル2が嵌め込まれていないため、上段のモジュール枠34の視認面積も極めて小さい。このように、施工した状態でモジュール枠34の視認面積を小さくできることは、瓦型モジュール11において太陽電池パネル2の受光面積を増加させることになり、発電効率の増加につながる。また、モジュール枠34が視認されにくいことは、施工状態の瓦型モジュール11の意匠性も向上させる。
【0051】
また、接続部材40の係合部401に瓦型モジュール11Bの係合部341を係合させる動作において、下段のモジュール枠34に上段のモジュール枠34を置いてから引き上げ動作を行う必要はないため、モジュール枠34を大きめのサイズとする必要もない。したがって、モジュール枠34の製造コストが増加することも回避できる。
【0052】
本実施の形態2に係る瓦型モジュール11では、軒側及び棟側の両方で略同一形状のモジュール枠34を水流れ方向の向きを逆にして用いるため、前枠と後枠とを共用することができ、瓦型モジュール11のコストダウンを図ることが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態2では、前枠と後枠とを共用することで、瓦型モジュール11の施工時にモジュールの軒側と棟側とを任意に決めることができる。
【0054】
瓦型モジュール11は、その出力を取り出すために、正極側、負極側の2個の端子ボックスを用いる構成とすることができる。このような2個の端子ボックスを用いる構造は、1個の端子ボックスでモジュール同士を接続する場合と比較して、電気接続のためのケーブル長を短くすることが可能となるため、配線抵抗による出力損失を減らしてコストを下げることが可能となる。
【0055】
一方、2個の端子ボックスを用いる構造では、
図10に示すように、屋根の水流れ方向Aに沿って隣接する二段分のモジュール列において、第1の段(例えば上段)の瓦型モジュール11と、第2の段(例えば下段)の瓦型モジュール11とで、正極側の端子ボックス51と負極側の端子ボックス52との配置位置を逆にする必要がある。これは、瓦型モジュール11の出力を取り出す場合に、第1の段におけるモジュール列と第2の段におけるモジュール列とは屋根の端で折り返すように直列接続されるためである。
【0056】
このとき、軒側と棟側とのモジュール枠の構造が異なっていれば、第1の段と第2の段とで端子ボックスの位置が逆となるように、それぞれ別の瓦型モジュール11を用意する必要がある。これに対し、本実施の形態2に係る構造では、軒側と棟側とのモジュール枠の構造が同じであるため、接続部材を用いれば、施工時に配置の向きを逆にするだけで第1の段と第2の段とで同じ構造の瓦型モジュールを使用することが可能となる。すなわち、全ての段で同じ構造の瓦型モジュール11を用いることができ、モジュールの共通化によるコストダウンも図ることができる。
【0057】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1では、棟側の瓦型モジュール1Bにおける前枠31の第3の面31cを軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2上に直接載せる構成となっている。これに対し、本実施の形態3では、
図11に示すように、棟側の瓦型モジュール1Bにおける前枠31の第3の面31cと軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2との間に封止緩衝材35を挿入した構成としている。封止緩衝材35は、例えばEPDM(エチレン・プレプレン・ジエンゴム)発砲体で形成することができる。
【0058】
この封止緩衝材35を挿入することにより、本実施の形態3に係る構造では、以下の効果を得ることができる。
(1) 封止緩衝材35の緩衝作用により、太陽電池パネル2のガラス割れを防止できる。
(2) 封止緩衝材35の封止作用により、前枠31と太陽電池パネル2との間の止水性を改善できる。
(3) 消音効果(緩衝作用により前枠31と太陽電池パネル2との衝突音発生防止効果、および封止作用により外部音の防音効果)を得ることができる。
【0059】
瓦型モジュール1の施工前では、封止緩衝材35は前枠31の第3の面31cに予め貼付されるものであってもよく、太陽電池パネル2の受光面上に予め貼付されるものであってもよい。
【0060】
〔実施の形態4〕
上記実施の形態1では、前枠31および後枠32において断面コの字形状の嵌合部を設けることなく、太陽電池パネル2の下面に前枠31および後枠32が接着剤等によって固定されるようになっている。これは、瓦型モジュール1の施工状態において、軒側の瓦型モジュール1Aの太陽電池パネル2が棟側の瓦型モジュール1Bの前枠31によって上から押さえられており、吹き上げ荷重によっても太陽電池パネル2が枠3から外れにくくなっているためである。
【0061】
ただし、前枠31が太陽電池パネル2を上から押さえているのは、太陽電池パネル2の後端部のみである。このため、本実施の形態4では、太陽電池パネル2の前端部においても吹き上げ荷重による太陽電池パネル2の外れに対し対策構造を有している。
【0062】
具体的には、
図12(a)に示すように、
図1に示す前枠31に対して係止部312を追加した構成としている。本実施の形態4に係る前枠31では、第2の面31bが太陽電池パネル2の上面よりもさらに上方に突出して形成され、第2の面31bの上端から後方に折り曲げられて第7の面31gが形成されている。そして、太陽電池パネル2の上面よりも突出した第2の面31bおよび第7の面31gによって断面L字形状の係止部312が形成されている。すなわち、係止部312は、太陽電池パネル2の上面より上に突出しており、かつ、太陽電池パネル2の受光面に直交する方向から見て太陽電池パネル2に重複する領域を有している。ここで、係止部312(第7の面31g)と太陽電池パネル2の上面との間には隙間を設けることが望ましい。太陽電池パネル2と前枠31の第1の面31aとを両面テープを用いて接着する場合でも、隙間があることにより、前枠31の第1の面31aに両面テープを貼った後、太陽電池パネル2を差し込むことが可能となる。
【0063】
これにより、仮に太陽電池パネル2と前枠31の第1の面31aとの接着が剥がれたとしても、太陽電池パネル2の前端部が係止部312に引っ掛かり、太陽電池パネル2が前枠31から完全に外れることを防止できる。また、
図12(b)に示すように、係止部312と太陽電池パネル2の上面との隙間に、例えばシリコーン樹脂等のコーキング材313を充填すれば、太陽電池パネル2と第1の面31aとの接着の剥がれ自体が防止できるため、より好ましい。
【0064】
また、係止部312は、
図13(a)に示すように前枠31の長手方向のほぼ全体に形成してもよいが、
図13(b)に示すように前枠31の長手方向に沿って断続的に複数箇所に形成することが好ましい。すなわち、前枠31において係止部312の間に切欠き314が設けられていてもよい。このように切欠き314を形成する構成では、切欠き314の形成箇所で、前枠31の上端面と太陽電池パネル2の上面とをフラットにすることができるため、この部分で水が流れやすくなり雨水等の溜りや太陽電池パネル2の汚れを防止できる。尚、
図13(a),(b)では、太陽電池パネル2と前枠31とのみを図示しており、太陽電池パネル2の短辺側に取り付けられる枠3は図示を省略している。
【0065】
〔実施の形態5〕
本実施の形態5は、実施の形態1における瓦型モジュール1に、前枠31のずれを防止するための補強バーを追加した構成を示すものである。
【0066】
本実施の形態5に係る瓦型モジュール1は、
図14および
図15に示すように、瓦型モジュール1の裏面側にて前枠31と後枠32とを補強バー36にて接続している。
図14は本実施の形態5に係る瓦型モジュール1の断面図、
図15は裏面図である。
【0067】
補強バー36は、
図15に示すように、少なくとも2本以上の補強バー36を、太陽電池パネル2の長手方向の中心に対して対照的に配置することが好ましい。このように補強バー36を用いて前枠31と後枠32とを接続することにより、前枠31に屋根の水流れ方向に沿った外力が働き、太陽電池パネル2と前枠31とが外れそうになった場合でも、補強バー36によって前枠31と後枠32とがつながれていれば、太陽電池パネル2と前枠31とが外れることを防ぐことができる。
【0068】
太陽電池パネル2と前枠31との接着にシリコーン樹脂を用いた場合、接着面と直交する方向には強固な接着力が得られるが、接着面の面内方向に対しては比較的接着力が弱い傾向があった。補強バー36を用いることによって、太陽電池パネル2と前枠31との間でずれが生じることをより確実に防ぐことが可能となった。
【0069】
また、少なくとも2本以上の補強バー36を、太陽電池パネル2の長手方向の中心に対して対照的に配置することで、前枠31に太陽電池パネル2との接着面の面内方向に回転力が働いたとしても、太陽電池パネル2と前枠31とのずれが防止できる。
【0070】
以上のように、本発明に係る瓦型太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、該太陽電池パネルを縁どって保持する枠とを備えて構成されている。上記瓦型太陽電池モジュールは、前記瓦型太陽電池モジュールを屋根に設置する時に、前記太陽電池パネルに対して屋根の軒側に位置し、かつ、前枠係合部を有する前枠と、前記瓦型太陽電池モジュールを屋根に設置する時に、前記太陽電池パネルに対して屋根の棟側に位置し、かつ、前記前枠係合部と係合する後枠係合部を有する後枠とを有している。かつ、前記前枠および前記後枠は、前記前枠係合部と前記後枠係合部とが係合される前記瓦型太陽電池モジュールの施工状態において、棟側の瓦型太陽電池モジュールの前枠が軒側の瓦型太陽電池モジュールの太陽電池パネルを上から押さえる構造である。
【0071】
上記の構成によれば、軒側の瓦型太陽電池モジュールの後枠係合部に棟側の瓦型太陽電池モジュールの前枠係合部を係合させる動作において、軒側の瓦型太陽電池モジュールの後枠に棟側の瓦型太陽電池モジュールの前枠を置いてから引き上げ動作を行う必要はない。このため、後枠を大きめのサイズとする必要がなく、後枠の製造コストが増加することを回避できる。
【0072】
また、上記瓦型太陽電池モジュールは、前記瓦型太陽電池モジュールの施工状態において、前記軒側の瓦型太陽電池モジュールの後枠が前記棟側の瓦型太陽電池モジュールの前枠によって完全に覆われる構造である。
【0073】
上記の構成によれば、施工した状態の瓦型太陽電池モジュールを上方向(屋根面に直交する方向)から見た場合、軒側の瓦型太陽電池モジュールの後枠が視認されず、施工した状態で枠の視認面積を小さくできる。これにより、太陽電池パネルの受光面積を増やし、モジュール変換効率の増加につなげることができる。また、枠が視認されにくいことは、施工状態の瓦型太陽電池モジュールの意匠性も向上させる。
【0074】
また、上記瓦型太陽電池モジュールでは、前記前枠と前記後枠とは、略同一形状のモジュール枠を屋根の水流れ方向の向きを逆にして用いた構造とすることができる。
【0075】
上記の構成によれば、前枠と後枠とで同一形状のモジュール枠を共用することができ、瓦型太陽電池モジュールのコストダウンを図ることが可能となる。
【0076】
また、上記瓦型太陽電池モジュールでは、前記前枠は、前記太陽電池パネルの上面より上に突出し、かつ、前記太陽電池パネルの受光面に直交する方向から見て前記太陽電池パネルに重複する領域を有する係止部を備えている構成とすることができる。
【0077】
上記の構成によれば、仮に太陽電池パネルと前枠との接着が剥がれたとしても、太陽電池パネルの前端部が係止部に引っ掛かり、太陽電池パネルが前枠から完全に外れることを防止できる。
【0078】
また、上記瓦型太陽電池モジュールは、前記前枠と前記後枠とを接続する補強部材を備えている構成とすることができる。
【0079】
上記の構成によれば、前枠に屋根の水流れ方向に沿った外力が働き、太陽電池パネルと前枠とが外れそうになった場合でも、補強部材によって前枠と後枠とがつながれていれば、太陽電池パネルと前枠とが外れることを防ぐことができる。
【0080】
また、本発明の瓦型太陽電池モジュールの屋根取付構造は、屋根の水流れ方向に沿って配置される請求項1から5の何れか1項に係る2枚の前記瓦型太陽電池モジュールについて、軒側に配置される前記瓦型太陽電池モジュールを軒側瓦型モジュール、軒側に配置される前記瓦型太陽電池モジュールを棟側瓦型モジュールとする場合、屋根の瓦桟上に前記軒側瓦型モジュールの前記後枠を載せて固定する。さらに、前記棟側瓦型モジュールの前枠が前記軒側瓦型モジュールの前記太陽電池パネルを上から押さえている状態で、前記軒側瓦型モジュールの前記後枠係合部に前記棟側瓦型モジュールの前記前枠係合部を係合させてなることを特徴としている。
【0081】
また、上記屋根取付構造では、前記棟側瓦型モジュールの前枠と前記軒側瓦型モジュールの太陽電池パネルとの間に封止緩衝材が挿入されている構成とすることができる。
【0082】
上記の構成によれば、封止緩衝材を設けることにより、太陽電池パネルのガラス割れ防止、前枠と太陽電池パネルの間の止水性改善、および消音の効果等を得ることができる。
【0083】
以上、実施の形態1から実施の形態5について具体的に説明を行ったが、本発明はそれらに限定されるものではない。上述した5つの実施形態それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。