(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の工程及び前記第二の工程を、前記第一の脱水素触媒が充填された第一の反応器及び前記第二の脱水素触媒が充填された第二の反応器が直列に連結された反応装置内で、連続して行う、請求項1に記載の共役ジエンの製造方法。
アルカンと水とを含有する原料ガスを、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層と第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層とにこの順で接触させて、共役ジエンを含有する生成ガスを得る工程を備え、
前記第一の脱水素触媒がスズ及び白金を含み、
前記第二の触媒層を通過するガス中の炭化水素に対する水のモル比が、前記第一の触媒層を通過するガス中の炭化水素に対する水のモル比より大きくなるように、前記第一の触媒層と前記第二の触媒層の間で水を添加する、共役ジエンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係る共役ジエンの製造方法は、アルカンと水とを含有する第一の原料ガスを第一の脱水素触媒に接触させて、オレフィンを含有する第一の生成ガスを得る第一の工程と、前記第一の生成ガスと水とを混合した第二の原料ガスを第二の脱水素触媒に接触させて、共役ジエンを含有する第二の生成ガスを得る第二の工程と、を備えている。この製造方法において、第二の原料ガス中の炭化水素に対する水のモル比は、第一の原料ガス中の炭化水素に対する水のモル比より大きい。
【0021】
本実施形態では、第一の工程の反応系中の水の量を第二の工程より少なくすることで、第一の生成ガス中の水素(H
2)量を抑制し、第二の工程におけるオレフィンの脱水素反応の反応効率を向上させている。また、本実施形態では、第二の工程に供する第二の原料ガスを第一の生成ガスと水とを混合したものとし、第二の工程の反応系中の水の量を第一の工程より多くすることによって、第二の工程における触媒劣化が抑制され、良好な共役ジエン収率が長時間維持される。
【0022】
(第一の工程)
第一の工程は、アルカン及び水を含有する第一の原料ガスを第一の脱水素触媒に接触させて脱水素反応を行うことにより、アルカンの少なくとも一部をオレフィンに変換し、オレフィンを含有する第一の生成ガスを得る工程である。
【0023】
アルカンの炭素数は、目的とする共役ジエンの炭素数と同じであってよい。すなわち、アルカンは、目的の共役ジエン中の二重結合を全て水素化した場合に得られる炭化水素であってよい。アルカンの炭素数は、4以上であり、好ましくは4〜10であり、4〜6であってもよい。
【0024】
アルカンは、例えば、鎖状であってよく、環状であってもよい。鎖状アルカンは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。鎖状アルカンとしては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等が挙げられる。直鎖状アルカンとしては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等が挙げられる。分枝状アルカンとしては、例えば、イソブタン、イソペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2、3−ジメチルペンタン、イソヘプタン、イソオクタン、イソデカン等が挙げられる。環状アルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。第一の原料ガスは、一種又は二種以上のアルカンを含んでいてよい。
【0025】
第一の原料ガスは、アルカン以外の他の炭化水素を更に含有していてよい。他の炭化水素としては、オレフィン、ジエン等が挙げられる。これらの炭化水素の炭素数は、アルカンと同じであってよく、異なっていてもよい。他の炭化水素は、鎖状又は環状であってよい。他の炭化水素の炭素数は、例えば10以下であってよく、6以下であってよい。他の炭化水素としては、例えば、上述したアルカンの脱水素反応により得られるオレフィン又はジエンが挙げられる。
【0026】
第一の原料ガス中、炭化水素に占めるアルカンの割合は、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、100モル%であってもよい。
【0027】
第一の原料ガスにおいて、アルカンの分圧は特に限定されず、例えば1.0MPa以下であってよく、0.01MPa以下であってもよい。また、アルカンの分圧は、例えば0.001MPa以上であってよく、0.005MPa以上であってもよい。
【0028】
第一の原料ガス中、炭化水素(アルカンを含む全炭化水素)に対する水のモル比は1.6未満であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましい。第一の原料ガス中の水の量を少なくすることで、第一の生成ガス中の水素(H
2)の量が低減される傾向がある。また、第一の原料ガス中、炭化水素に対する水のモル比は0.05以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。第一の原料ガス中の水の量を0.05以上とすることで、第一の工程における触媒劣化が抑制され、アルカンからオレフィンへの脱水素反応が第一の工程でより効率良く進行する。
【0029】
第一の原料ガスは、炭化水素及び水以外の成分を更に含有していてよい。例えば、第一の原料ガスは、窒素(N
2)、アルゴン等の不活性ガスを更に含有していてよい。また、第一の原料ガスは、水素(H
2)、酸素(O
2)、一酸化炭素、二酸化炭素等を更に含有していてもよい。
【0030】
第一の脱水素触媒は、少なくともアルカンからオレフィンへの脱水素反応を触媒するものであればよく、オレフィンからジエンへの脱水素反応を更に触媒してもよい。
【0031】
第一の脱水素触媒は、例えば、スズ(Sn)及び白金(Pt)を含有する触媒であってよい。
【0032】
第一の脱水素触媒において、白金に対するスズのモル比(Sn/Pt)は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。これにより、副反応(例えば、C−C結合の開裂反応)が抑制され、脱水素反応がより効率良く進行する傾向がある。また、第一の脱水素触媒において、白金に対するスズのモル比(Sn/Pt)は、13未満であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。これにより、アルカンからオレフィンへの脱水素反応の反応効率が向上する傾向がある。
【0033】
第一の脱水素触媒中の白金の含有量は、第一の脱水素触媒の全質量基準で0.05質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、第一の脱水素触媒中の白金の含有量は、第一の脱水素触媒の全質量基準で3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。このような含有量であると、担体上に形成される白金粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金量あたりの白金表面積が大きくなって、より好適な反応系が実現できる。また、このような担持量とすることで、触媒コストを抑制しながら高い反応活性を得ることができる。
【0034】
第一の脱水素触媒は、例えば、第一の担体と、第一の担体に担持された第一の担持金属と、を有する触媒であってよい。このとき、第一の脱水素触媒は、第一の担持金属として白金を含有していてよい。また、第一の脱水素触媒は、スズを、第一の担体又は第一の担持金属として(好ましくは第一の担持金属として)含有していてよい。
【0035】
第一の担体は、例えば、無機酸化物担体であってよく、アルミニウム(Al)を含む無機酸化物担体であってもよい。無機酸化物担体は、アルミニウム以外の金属元素を更に含んでいてよく、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、インジウム(In)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、セリウム(Ce)、ランタン(La)等を更に含んでいてよい。
【0036】
無機酸化物担体は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)を含む担体であってよく、アルミニウムと他の金属との複合酸化物を含む担体であってもよい。複合酸化物は、例えば、アルミニウムとマグネシウム(Mg)との複合酸化物、アルミニウムとスズ(Sn)との複合酸化物、アルミニウムと鉛(Pb)との複合酸化物、アルミニウムと亜鉛(Zn)、セレン(Se)、鉄(Fe)又はインジウム(In)との複合酸化物、等が挙げられる。
【0037】
第一の担体の酸性度は、副反応が抑制されるという観点から中性付近であることが好ましい。ここで、担体の酸性度は、一般的に、水に担体を分散させた状態におけるpHで評価される。本明細書中、担体の酸性度は、担体1質量%を懸濁させた懸濁液のpHで表すことができる。第一の担体の酸性度は、好ましくはpH5.5〜8.5であり、より好ましくはpH6.0〜8.0である。
【0038】
第一の担体の比表面積は、30m
2/g以上であることが好ましく、50m
2/g以上であることがより好ましい。第一の担体の比表面積を大きくすることでアルカンの転化率が向上する傾向がある。第一の担体の比表面積は、1000m
2/g以下であってよく、500m
2/g以下であってよい。このように第一の担体の比表面積を小さくすることで、第一の脱水素触媒の強度が十分に確保されて取扱性が向上し、第一の脱水素触媒を工業的により好適に利用できる。なお、本明細書中、第一の担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される値を示す。
【0039】
第一の担持金属は、酸化物として担持されていてよく、単体の金属として担持されていてもよい。また、第一の脱水素触媒は、第一の担持金属として1種又は2種以上の金属を有していてよい。
【0040】
第一の担持金属は、白金を含有することが好ましく、白金及びスズを含有することがより好ましい。第一の担持金属は、これら以外の担持金属を更に含有していてもよく、例えば、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、鉄(Fe)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、セリウム(Ce)、ランタン(La)等を更に含有していてよい。
【0041】
第一の脱水素触媒の形状は特に限定されず、例えばペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
【0042】
第一の脱水素触媒は、前処理として還元処理が行われたものを用いてよい。還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下、40〜600℃に触媒を保持することで実施してよい。保持時間は、例えば0.05〜24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等であってよい。還元処理を行った触媒を用いることで、脱水素反応の初期の誘導期(触媒の活性が低い状態)を短くすることができる。
【0043】
第一の工程における脱水素反応(以下、第一の脱水素反応)は、例えば、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層を有する反応器に第一の原料ガスを流通させて実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0044】
第一の脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点からは固定床式が好ましい。
【0045】
第一の脱水素反応の反応温度は、特に限定されず、反応効率が良好となる観点からは300〜800℃であることが好ましく、500〜700℃であることがより好ましい。また、第一の脱水素反応の反応温度は、第二の脱水素反応の反応温度より低いことが好ましい。これにより、第一の脱水素反応において、アルカンからオレフィンへの反応の選択性が向上し、共役ジエンの生成量が好ましい範囲に抑制され、第一の脱水素触媒の触媒劣化が抑制される。第一の脱水素反応の反応温度と第二の脱水素反応の反応温度との差は、例えば20〜150℃であってよく、50〜100℃であってもよい。
【0046】
第一の脱水素反応の反応圧力は、特に限定されず、例えば0.01〜1MPaであってよく、0.05〜0.8MPaであってよく、0.1〜0.5MPaであってよい。
【0047】
第一の脱水素反応において、第一の原料ガスの重量空間速度(WHSV)は、特に限定されず、例えば0.1h
−1以上であってよく、1.0h
−1以上であってもよく、100h
−1以下であってよく、30h
−1以下であってもよい。ここで、WHSVとは、連続式の反応装置における、触媒質量に対する原料ガスの供給速度(供給量/時間)の比(供給速度/触媒質量)である。
【0048】
第一の生成ガスは、少なくとも、第一の脱水素反応により生成したオレフィンを含有する。第一の生成ガスはまた、第一の原料ガスに含まれていたアルカン(未反応分)を更に含有していてよい。また、第一の生成ガスは、第一の原料ガスに含まれていた他の成分(他の炭化水素、水、不活性ガス等)を更に含有していてよい。
【0049】
第一の生成ガスは、第一の脱水素触媒との接触時に発生する水素(H
2)を更に含有していてよい。本実施形態では、第一の工程の反応系中の水の量を第二の工程より少なくすることで、第一の生成ガス中のH
2量が抑制される。
【0050】
本実施形態に係る製造方法では、第一の生成ガスに水を添加して第二の原料ガスとし、第二の工程を実施する。水の添加量は、少なくとも、第二の原料ガス中の炭化水素に対する水の含有割合が、第一の原料ガス中の炭化水素に対する水の含有割合より大きくなる量とする。
【0051】
(第二の工程)
第二の工程は、第一の生成ガスと水とを混合した第二の原料ガスを第二の脱水素触媒に接触させて脱水素反応を行うことにより、第一の生成ガスが含むオレフィンの少なくとも一部を共役ジエンに変換し、共役ジエンを含有する第二の生成ガスを得る工程である。
【0052】
第二の工程では、第一の生成ガスに水を添加して、第二の原料ガス中の炭化水素に対する水のモル比を第一の原料ガスより大きくしている。これにより、第二の工程における触媒劣化が抑制され、良好な共役ジエン収率が長時間維持される。
【0053】
第二の原料ガスは、少なくともオレフィンを含有しており、オレフィン以外の他の炭化水素を更に含有していてよい。他の炭化水素としては、アルカン、ジエン等が挙げられる。他の炭化水素は、第一の原料ガスに含まれており、未反応分として第一の生成ガスにも含まれていた成分であってよい。また、他の炭化水素は、第一の工程における第一の脱水素反応又は副反応により生成した成分であってもよい。具体的には、例えば、アルカンは、第一の原料ガス由来の未反応分であってよく、第一の原料ガス中のオレフィン又はジエンの還元反応により生成した成分であってもよい。また、ジエンは、第一の原料ガス由来の未反応分であってよく、第一の原料ガス中のアルカン又はオレフィンの脱水素反応によって生成した成分であってもよい。
【0054】
第二の原料ガス中の炭化水素の組成は、第一の生成ガスの組成と同じであってよく、第一の生成ガスに更に炭化水素を合流させることで、第一の生成ガスの組成と異なっていてもよい。第二の原料ガス中、炭化水素に占めるオレフィンの割合は、例えば20モル%以上であってよく、40モル%以上であることが好ましい。また、第二の原料ガス中、炭化水素に占めるオレフィンの割合は、例えば90モル%以下であってよく、70モル%以下であってもよい。
【0055】
第二の原料ガスにおいて、オレフィンの分圧は特に限定されず、例えば0.5MPa以下であってよく、0.3MPa以下であってもよく、0.005MPa以上であってよく、0.01MPa以上であってもよい。
【0056】
第二の原料ガス中、炭化水素(オレフィンを含む全炭化水素)に対する水のモル比は、1.6以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましい。第二の原料ガス中の水の量を多くすることで、第二の工程における触媒劣化が抑制され、共役ジエンをより効率良く得ることができる。また、第二の原料ガス中、炭化水素に対する水のモル比は、6.0以下であってよく、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下であってよい。第二の原料ガス中の水の量を減らすことで、水を所定の反応温度まで加熱する際の燃料費が削減できる。
【0057】
第二の原料ガスは、第一の脱水素触媒との接触時に発生した水素(H
2)を更に含有していてよい。本実施形態では、第一の工程の反応系中の水の量を第二の工程より少なくすることで第一の生成ガス中のH
2量が抑制されており、これにより第二の原料ガス中のH
2量も抑制される。
【0058】
第二の原料ガスは、炭化水素、水及び水素以外の他の成分を更に含有していてよい。例えば、第二の原料ガスは、窒素(N
2)、アルゴン等の不活性ガスを更に含有していてよい。また、第二の原料ガスは、酸素(O
2)、一酸化炭素、二酸化炭素等を更に含有していてもよい。また、これらの成分は、第一の生成ガス由来の成分であってよく、第一の生成ガスに水と共に追加された成分であってもよい。
【0059】
第二の脱水素触媒は、少なくともオレフィンから共役ジエンへの脱水素反応を触媒するものであればよく、アルカンからオレフィンへの脱水素反応を更に触媒してもよい。
【0060】
第二の脱水素触媒は、例えば、スズ(Sn)及び白金(Pt)を含有する触媒であってよい。
【0061】
第二の脱水素触媒において、白金に対するスズのモル比(Sn/Pt)は、13以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、18以上であることが更に好ましい。これにより、オレフィンから共役ジエンへの脱水素反応の反応効率が向上する傾向がある。また、第二の脱水素触媒における白金に対するスズのモル比(Sn/Pt)は、35以下であってよく、30以下であってもよい。白金の比率を多くすることで、白金原子とオレフィンとが接触しやすくなり、反応活性が向上する傾向がある。
【0062】
第二の脱水素触媒中の白金の含有量は、第二の脱水素触媒の全質量基準で0.05質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、第二の脱水素触媒中の白金の含有量は、第二の脱水素触媒の全質量基準で3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。このような含有量であると、担体上に形成される白金粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金量あたりの白金表面積が大きくなって、より好適な反応系が実現できる。また、このような担持量とすることで、触媒コストを抑制しながら高い反応活性を得ることができる。
【0063】
第二の脱水素触媒は、例えば、第二の担体と、第二の担体に担持された第二の担持金属と、を有する触媒であってよい。このとき、第二の脱水素触媒は、第二の担持金属として白金を含有していてよい。また、第二の脱水素触媒は、スズを、第二の担体又は第二の担持金属として(好ましくは第二の担持金属として)含有していてよい。
【0064】
第二の担体は、例えば、無機酸化物担体であってよく、アルミニウム(Al)を含む無機酸化物担体であってもよい。無機酸化物担体は、アルミニウム以外の金属元素を更に含んでいてよく、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、インジウム(In)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、セリウム(Ce)、ランタン(La)等を更に含んでいてよい。
【0065】
無機酸化物担体は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)を含む担体であってよく、アルミニウムと他の金属との複合酸化物を含む担体であってもよい。複合酸化物は、例えば、アルミニウムとマグネシウム(Mg)との複合酸化物、アルミニウムとスズ(Sn)との複合酸化物、アルミニウムと鉛(Pb)との複合酸化物、アルミニウムと亜鉛(Zn)、セレン(Se)、鉄(Fe)又はインジウム(In)との複合酸化物、等が挙げられる。
【0066】
第二の担体の酸性度は、副反応が抑制されるという観点から中性付近であることが好ましい。ここで、担体の酸性度は、一般的に、水に担体を分散させた状態におけるpHで評価される。本明細書中、担体の酸性度は、担体1質量%を懸濁させた懸濁液のpHで表すことができる。第二の担体の酸性度は、好ましくはpH5.5〜8.5であり、より好ましくはpH6.0〜8.0である。
【0067】
第二の担体の比表面積は、30m
2/g以上であることが好ましく、50m
2/g以上であることがより好ましい。第二の担体の比表面積を大きくすることで、第二の工程におけるオレフィンの転化率が向上する傾向がある。第二の担体の比表面積は、1000m
2/g以下であってよく、500m
2/g以上であってよい。このように第二の担体の比表面積を小さくすることで、第二の脱水素触媒の強度が十分に確保されて取扱性が向上し、第二の脱水素触媒を工業的により好適に利用できる。なお、本明細書中、第二の担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される値を示す。
【0068】
第二の担持金属は、酸化物として担持されていてよく、単体の金属として担持されていてもよい。また、第二の脱水素触媒は、第二の担持金属として1種又は2種以上の金属を有していてよい。
【0069】
第二の担持金属は、白金を含有することが好ましく、白金及びスズを含有することがより好ましい。第二の担持金属は、これら以外の担持金属を更に含有していてもよく、例えば、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、鉄(Fe)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、セリウム(Ce)、ランタン(La)等を更に含有していてよい。
【0070】
第二の脱水素触媒の形状は特に限定されず、例えばペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
【0071】
第二の脱水素触媒は、前処理として還元処理が行われたものを用いてよい。還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下、40〜600℃に触媒を保持することで実施してよい。保持時間は、例えば0.05〜24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等であってよい。還元処理を行った触媒を用いることで、脱水素反応の初期の誘導期(触媒の活性が低い状態)を短くすることができる。
【0072】
第二の工程における脱水素反応(以下、第二の脱水素反応)は、例えば、第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層を有する反応器に第二の原料ガスを流通させて実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0073】
第二の脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点からは固定床式が好ましい。
【0074】
第二の脱水素反応の反応温度は、特に限定されず、反応効率が良好となる観点からは300〜800℃であることが好ましく、500〜700℃であることがより好ましい。また、第二の脱水素反応の反応温度は、第一の脱水素反応の反応温度より高いことが好ましい。これにより、第二の脱水素反応におけるブタジエン生成量を増加させることができる。第二の脱水素反応の反応温度と第一の脱水素反応の反応温度との差は、例えば20〜150℃であってよく、50〜100℃であってもよい。
【0075】
第二の脱水素反応の反応圧力は、特に限定されず、例えば0.01〜1MPaであってよく、0.05〜0.8MPaであってよく、0.1〜0.5MPaであってよい。
【0076】
第二の脱水素反応において、第二の原料ガスの重量空間速度(WHSV)は、特に限定されず、例えば0.1h
−1以上であってよく、1.0h
−1以上であってもよく、100h
−1以下であってよく、30h
−1以下であってもよい。ここで、WHSVとは、連続式の反応装置における、触媒質量に対する原料ガスの供給速度(供給量/時間)の比(供給速度/触媒質量)である。
【0077】
第二の生成ガスは、少なくとも、第二の脱水素反応により生成した共役ジエンを含有する。第二の生成ガスはまた、第二の原料ガスに含まれていたアルカンを更に含有していてよく、第二の原料ガスに含まれていた又は第二の脱水素反応により生成したオレフィンを更に含有していてよい。
【0078】
本実施形態において、第一の工程と第二の工程は異なる反応器で実施してよく、同一の反応器で連続して実施してもよい。
【0079】
一態様に係る製造方法では、例えば、第一の脱水素触媒が充填された第一の反応器及び第二の脱水素触媒が充填された第二の反応器が直列に連結された反応装置で、第一の工程及び第二の工程を実施してよい。この場合、例えば、第一の反応器と第二の反応器の間、又は第二の反応器の入口で、反応系に水を添加して、第二の反応器に導入される第二の原料ガス中の水の含有割合を大きくしてよい。すなわち、反応装置は、例えば、第一の反応器の出口と第二の反応器の入口との間、又は、第二の反応器の入口付近に、反応系に水を添加するための水導入口を備えていてよい。この態様では、第一の反応器と第二の反応器の反応条件をそれぞれ設定でき、第一の脱水素反応及び第二の脱水素反応を互いに異なる反応条件で容易に実施できる。なお、第一の反応器は、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層を有する反応器であってよく、第二の反応器は、第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層を有する反応器であってよい。
【0080】
また、他の一態様に係る製造方法では、第一の工程及び第二の工程を、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層と第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層とを有する反応器内で連続して行ってよい。この場合、例えば、第一の触媒層と第二の触媒層との間で反応系に水を添加して、第二の原料ガス中の炭化水素に対する水の含有割合を第一の原料ガス中の炭化水素に対する水の含有割合より大きくしてよい。すなわち、反応器は、第一の触媒層及び第二の触媒層の間に水を導入する水導入口を更に有していてよい。この態様では、一つの反応器でアルカンから共役ジエンが得られるため、製造装置の縮小、運転コストの低減を図ることができる。
【0081】
本実施形態において、第一の工程と第二の工程とはそれぞれ分離可能である必要はなく、連続した一工程として実施されてよい。
【0082】
例えば、本実施形態に係る製造方法は、アルカンと水とを含有する原料ガスを、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層と第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層とにこの順で接触させて、共役ジエンを含有する生成ガスを得る工程を備える製造方法であってもよい。この場合、第一の触媒層と第二の触媒層の間で水を添加することで、第二の触媒層を通過するガス中の水の含有割合を、第一の触媒層を通過するガス中の水の含有割合より大きくできる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の一側面は、アルカンを含む原料ガスから共役ジエンを含む生成ガスを得るための反応装置であってよい。
【0084】
この反応装置は、一態様において、第一の脱水素触媒が充填された第一の反応器と、第二の脱水素触媒が充填され、第一の反応器と直列に連結された第二の反応器と、を備えていてよい。また、第一の反応器出口と第二の反応器入口との間、又は、第二の反応器の入口付近に、反応系に水を添加するための水導入口が設けられていてよい。
【0085】
また、他の一態様において、反応装置は、第一の脱水素触媒を含む第一の触媒層と第二の脱水素触媒を含む第二の触媒層とを有する反応器を備えていてよく、反応器には、第一の触媒層と第二の触媒層との間で反応系に水を添加するための水導入口が設けられていてよい。
【実施例】
【0086】
以下、参考試験により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0087】
(合成例1:担体(S)の合成)
0.5〜1mmに分級されたγ−アルミナ15g(ネオビードGB−13、(株)水澤化学工業製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)と、18.8gのMg(NO
3)
2・6H
2Oを56mLの水に溶解させた溶液Aとを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaAで30分間撹拌した後、40℃、常圧で更に30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間、800℃で3時間の2段階で焼成した。次に、上記溶液Aを再度調製し、得られた焼成体と溶液Aとを混合し、上記と同様の手順で撹拌、水の除去、乾燥、及び焼成の操作を繰り返し行った。これにより、担体(S)を得た。
【0088】
(合成例2:第一の脱水素触媒(A−1)の合成)
15.0gの担体(S)と、398.3mgのH
2PtCl
6・2H
2Oを80mLの水に溶解させた水溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaAで30分間撹拌し、40℃、常圧で30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間焼成した。次に、得られた焼成体と、1.56gのSnCl
2・2H
2Oを100mLのEtOHに溶解させた溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、常圧で1時間撹拌し、その後減圧下でEtOHを除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間焼成した後、水素による還元を行い、第一の脱水素触媒(A−1)を得た。水素による還元は、水素と窒素を1:1(モル比)で混合した混合ガスの流通下、焼成後の固体を550℃で2時間保持することにより行った。
【0089】
(合成例3:第二の脱水素触媒(B−1))
10.2gの担体(S)と、3.15gのSnCl
2・2H
2Oを150mLのEtOHに溶解させた溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、常圧で1時間撹拌し、その後、混合液を撹拌しながら減圧下でEtOHを除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間、800℃で3時間の2段階で焼成した。次に、得られた焼成体と、306mgのH
2PtCl
6・2H
2Oを60mLの水に溶解させた水溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaAで30分間撹拌し、40℃、常圧で30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間焼成した後、水素による還元を行い、第二の脱水素触媒(B−1)を得た。水素による還元は、水素と窒素を1:1(モル比)で混合した混合ガスの流通下、焼成後の固体を550℃で2時間保持することにより行った。
【0090】
(参考試験1−1)
1.0gの第一の脱水素触媒(A−1)を管型反応器に充填し、反応器を固定床流通式反応装置に接続した。次に、水素及び窒素の混合ガス(水素:窒素=1:1(モル比))を100mL/minで流通させながら反応器を550℃まで昇温し、当該温度で30分間保持した。次に、窒素を100mL/minで流通させながら、水を液体状態の流量で0.2mL/minで反応器に15分間供給した。続いて、n−ブタン、水及び窒素の混合ガス(原料ガス)を反応器に供給し、n−ブタンの脱水素反応を行った。ここで、原料ガスの組成は、モル比でn−ブタン/H
2O/N
2=1/0.6/7.9に調整した。反応器への原料ガスの供給速度は、60mL/minに調整した。n−ブタンのWHSVは1h
−1に調整した。反応器の原料ガスの圧力は0MPaGに調整した。
【0091】
反応開始から1時間が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料ガスの供給が開始された時間である。採取された生成ガスを、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフ(TCD−GC)を用いて分析した。分析の結果、生成ガスがn−ブタン、n−ブテン(1−ブテン、t−2−ブテン及びc−2−ブテン)、1,3−ブタジエン、及び水素を含有することが確認された。上記ガスクロマトグラフに基づき、採取された生成ガス中のn−ブタン、n−ブテン、1,3−ブタジエン、及び水素のモル比を定量した。定量の結果、生成ガスの組成はn−ブタン/n−ブテン/ブタジエン/H2=0.37/0.51/0.099/0.77(原料ガス中のn−ブタンを1としたモル比)であった。結果を表1に示す。
【0092】
(参考試験1−2)
原料ガスの組成をn−ブタン/H
2O/N
2=1/1.2/7.3に変更したこと以外は、参考試験1−1と同様にして、脱水素反応を行った。採取された生成ガスの組成は、n−ブタン/n−ブテン/ブタジエン/H
2=0.38/0.51/0.095/0.82であった。結果を表1に示す。
【0093】
(参考試験1−3)
原料ガスの組成をn−ブタン/H
2O/N
2=1/3.2/5.3に変更したこと以外は、参考試験1−1と同様にして、脱水素反応を行った。採取された生成ガスの組成は、n−ブタン/n−ブテン/ブタジエン/H
2=0.35/0.51/0.098/1.02であった。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
参考試験1−1、1−2及び1−3の結果から、第一の工程において原料ガス中の水の含有割合を小さくすることで、生成ガスの炭化水素組成をほとんど変化させることなく、水素(H
2)の含有割合を小さくできることが確認された。
【0096】
(参考試験2−1)
1.0gの第二の脱水素触媒(B−1)を管型反応器に充填し、反応器を固定床流通式反応装置に接続した。次に、水素及び窒素の混合ガス(水素:窒素=1:1(モル比))を100mL/minで流通させながら反応器を600℃まで昇温し、当該温度で30分間保持した。次に、窒素を100mL/minで流通させながら、水を液体状態の流量で0.2mL/minで反応器に15分間供給した。続いて、n−ブタン、n−ブテン(t−2−ブテンとc−2ブテンの混合物)、1,3−ブタジエン、水素、水及び窒素の混合ガス(原料ガス)を反応器に供給し、原料ガス中の炭化水素の脱水素反応を行った。ここで、原料ガスの組成は、モル比でn−ブタン/n−ブテン/1,3−ブタジエン/H
2/H
2O/N
2=0.4/0.5/0.1/0.75/3.2/5.3に調整した。なお、この原料ガスは、炭化水素及び水素の比率を参考試験1−1の生成ガスとほぼ一致させており、参考試験1−1の生成ガスに水を添加した原料ガスの模擬試料としている。反応器への原料ガスの供給速度は、65mL/minに調整した。炭化水素のWHSVは1h
−1に調整した。反応器の原料ガスの圧力は0MPaGに調整した。
【0097】
反応開始時から1時間が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。また、反応開始時から10時間が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料ガスの供給が開始された時間である。各時点において採取された生成ガスを、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフ(TCD−GC)を用いて分析した。分析の結果、生成ガスがn−ブタン、n−ブテン(1−ブテン、t−2−ブテン及びc−2−ブテン)及び1,3−ブタジエンを含有することが確認された。上記ガスクロマトグラフに基づき、各時点において採取された生成ガス中のn−ブテン及び1,3−ブタジエンの、原料ガス中の炭化水素(n−ブタン+n−ブテン+1,3−ブタジエン)に対するモル比を定量した。
【0098】
生成ガス中のn−ブテン及び1,3−ブタジエンの、原料ガス中の炭化水素に対するモル比から、各時点におけるn−ブテンの収率(n−ブテン収率)及び1,3−ブタジエンの収率(ブタジエン収率)を算出した。また、各時点におけるブタジエン収率から、(10時間後のブタジエン収率/1時間後のブタジエン収率)を算出した。算出の結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は45.1%、ブタジエン収率は20.7%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は46.1%、ブタジエン収率は20.8%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は1.0であった。結果を表2に示す。
【0099】
なお、n−ブテン収率は下記式(1)により定義され、ブタジエン収率は下記式(2)により定義される。
Y
1=M
1/M
0×100 (1)
Y
2=M
2/M
0×100 (2)
式(1)におけるY
1はn−ブテンの収率である。式(2)におけるY
2はブタジエンの収率である。式(1)〜(2)におけるM
0は、原料ガス中の炭化水素(n−ブタン+n−ブテン+1,3−ブタジエン)のモル数である。式(1)におけるM
1は、生成ガス中のn−ブテンのモル数である。式(2)におけるM
2は、生成ガス中の1,3−ブタジエンのモル数である。
【0100】
(参考試験2−2)
原料ガスの組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、参考試験2−1と同様にして、脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は43.1%、ブタジエン収率は21.1%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は43.4%、ブタジエン収率は20.3%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は0.96であった。
【0101】
(参考試験2−3)
原料ガスの組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、参考試験2−1と同様にして、脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は45.2%、ブタジエン収率は21.3%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は38.9%、ブタジエン収率は18.1%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は、0.85であった。
【0102】
(参考試験2−4)
原料ガスの組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、参考試験2−1と同様にして、脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は45.4%、ブタジエン収率は17.2%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は46.1%、ブタジエン収率は14.6%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は、0.85であった。
【0103】
(参考試験2−5)
原料ガスの組成を表3に示す組成に変更し、反応器への原料ガスの供給速度を66.5mL/minに調整したこと以外は、参考試験2−1と同様にして、脱水素反応を行った。なお、この試験では、原料ガス中の炭化水素及び水素の比率を参考試験1−3の生成ガスとほぼ一致させている。
【0104】
脱水素反応の結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は45.2%、ブタジエン収率は18.7%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は46.1%、ブタジエン収率は17.6%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は、0.94であった。
【0105】
(参考試験2−6)
原料ガスの組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、参考試験2−5と同様にして、脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は46.0%、ブタジエン収率は19.2%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は44.5%、ブタジエン収率は18.5%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は、0.96であった。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
表2及び表3に記載の結果から、第二の工程において、原料ガス中のH
2量を少なくすることでブタジエン収率が向上することが確認された。また、参考試験2−1〜2−4の結果から、第二の工程における原料ガス中の水の量(炭化水素に対する水のモル比)を、第一の工程(参考試験1−1)より大きくすることで、触媒劣化が抑制され、高いブタジエン収率が長時間維持されることが確認された。
【0109】
(参考試験3−1)
1.0gの第一の脱水素触媒(A−1)を管型反応器の上部(原料ガス入口側)に充填し第1の触媒層とした。次に、1.0gの第二の脱水素触媒(B−1)を管型反応器の下部(生成ガス出口側)に充填し、第2の触媒層とした。次いで、反応管を固定床流通式反応装置に接続した。次に、水素及び窒素の混合ガス(水素:窒素=1:1(モル比))を100mL/minで流通させながら、第1の触媒層を550℃まで昇温し、当該温度で30分間保持した。同時に、第2の触媒層を600℃まで昇温し、当該温度で30分間保持した。次に、窒素を100mL/minで流通させながら、水を液体状態の流量で0.2mL/minで反応器に15分間供給した。続いて、n−ブタン、水及び窒素の混合ガス(原料ガス)を反応器に供給し、原料ガス中のn−ブタンの脱水素反応を行った。ここで、原料ガスの組成は、モル比でn−ブタン/H
2O/N
2=1/3.2/5.3に調整した。反応器への原料ガスの供給速度は、60mL/minに調整した。触媒全量に対するn−ブタンのWHSVは0.5h
−1に調整した。反応器の原料ガスの圧力は0MPaGに調整した。
【0110】
反応開始時から1時間が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。また、反応開始時から10時間が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。参考試験2−1と同様に、採取したガスをガスクロマトグラフ(TCD−GC)で分析し、各時点におけるn−ブテンの収率(n−ブテン収率)及び1,3−ブタジエンの収率(ブタジエン収率)を算出した。また、各時点におけるブタジエン収率から、(10時間後のブタジエン収率/1時間後のブタジエン収率)を算出した。算出の結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は43.6%、ブタジエン収率は16.0%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は40.9%、ブタジエン収率は15.1%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は0.94であった。結果を表4に示す。
【0111】
(参考試験3−2)
原料ガスの組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、参考試験3−1と同様にして脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は47.4%、ブタジエン収率は20.6%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は39.0%、ブタジエン収率は17.6%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は0.85であった。結果を表4に示す。
【0112】
(参考試験3−3)
原料ガスの組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、参考試験3−1と同様にして脱水素反応を行った。その結果、反応開始から1時間後におけるn−ブテン収率は47.4%、ブタジエン収率は15.7%であった。また、反応開始から10時間後におけるn−ブテン収率は37.8%、ブタジエン収率は13.2%であった。また、1時間後のブタジエン収率に対する10時間後のブタジエン収率の比は0.84であった。結果を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
参考試験3−1〜3−3に示すとおり、第一の工程と第二の工程との間で水を添加せず、単に第一の脱水素触媒による反応と第二の脱水素触媒による反応とを連続して実施した場合では、良好なブタジエン収率が得られない、触媒劣化が進行しやすい等の理由で、ブタジエンを効率良く得ることができなかった。
【0115】
以上の参考試験の結果から、第二の原料ガス中の炭化水素に対する水のモル比を、第一の原料ガス中の炭化水素に対する水のモル比より大きくすることで、アルカンから共役ジエンを効率良く得ることができることが確認された。