特許第6772010号(P6772010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772010
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】輪転機用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/44 20060101AFI20201012BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20201012BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20201012BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20201012BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C11D3/44
   C11D3/18
   C11D3/20
   C11D1/72
   C11D1/12
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-186204(P2016-186204)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48287(P2018-48287A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−164684(JP,A)
【文献】 特開平7−34097(JP,A)
【文献】 特開2015−127366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00
C11D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性溶媒(A)を60〜85質量%、界面活性剤(B)を5〜20質量%、水(C)を9〜20質量%含有し、
疎水性溶媒(A)は、引火点70〜120℃の炭化水素(a1)を含有し、
80℃における2時間後の蒸発減量が、疎水性溶媒(A)と水(C)との合計に対して50〜85質量%である輪転機用洗浄剤。
【請求項2】
疎水性溶媒(A)は、炭素数8〜12の脂肪酸と炭素数1〜4の1価アルコールとから得られる脂肪酸エステル(a2)をさらに含有し、
炭化水素(a1)と脂肪酸エステル(a2)との質量比(a1):(a2)が1:0.4〜1:1である請求項1に記載の輪転機用洗浄剤。
【請求項3】
界面活性剤(B)は、
スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤(b1)と、
ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、および多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(b2)とを含有し、
アニオン界面活性剤(b1)とノニオン界面活性剤(b2)との質量比(b1):(b2)が1:2〜2:1である請求項1または2に記載の輪転機用洗浄剤。
【請求項4】
炭素数12〜18の脂肪酸(D)をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の輪転機用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転機用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷機等の輪転機のブランケットやインキローラー等には、インキや紙粉が付着し易く、特に高粘度インキを用いると、インキと絡まった紙粉の堆積が多くなる。ブランケットやインキローラー等に堆積したインキや紙粉は、インキの転写不良の原因となり、あるいはオフセット印刷版の画線部を破壊して印刷品質の低下をきたす原因となる。このため、印刷の途中や印刷終了時や版の交換時等に、ブランケットやインキローラー等に付着堆積したインキや紙粉のカスを洗浄除去している。
【0003】
ここに用いられる輪転機用洗浄剤は、インキや紙粉のカスを洗浄することができること、そして印刷の途中や印刷終了時に洗浄する際に、洗浄液が飛散、付着してオフセット印刷版の画線部を破壊し印刷物に色抜け等を生じないことが求められる。従来、輪転機用洗浄剤として、環境への悪影響や毒性等が懸念されるフロン系溶剤や塩素系溶剤の使用を回避することが望まれている中、炭化水素に水、界面活性剤を配合した洗浄剤が提案されている(特許文献1〜5)。
【0004】
このような炭化水素に水、界面活性剤を配合した洗浄剤は、乾燥速度が遅いと、洗浄後のブランケット等から乾燥に時間を要するため、洗浄、乾燥工程としての時間が長くなり、洗浄効率が悪くなる。さらに乾燥速度が遅く粘度も高い場合、洗浄剤をポンプから吐出する際に吐出ムラが発生する場合があり、洗浄、乾燥工程に時間を要したり洗浄作業性が悪くなったりする要因となり得る。また粘度の増加はインキの洗浄性にも影響し得る。乾燥速度を速め、かつ低粘度化するためには、低分子の原料を使用するのが望ましいが、低分子の原料は引火点が低いため、法規制を満たすための非危険物化に必要な水の量が増え、最終製品の粘度は高くなってしまう傾向がある。また従来の輪転機用洗浄剤は、乾燥速度が速い原料組成では、インキと紙粉のカスの両方を十分に洗浄することが困難であった。
【0005】
また、上記の炭化水素に水、界面活性剤を配合した洗浄剤は、製品として外観が透明均一であることが求められる。界面活性剤を所定量用いた可溶化によって外観は透明均一になるが、その場合にも、低温下、例えば冬場のような気温の低い時期などに長期間保管すると濁りが生じ、さらには分離や固体の析出が見られる場合がある。したがって輪転機用洗浄剤には低温での安定性も望まれている。
【0006】
特許文献1、2に記載の技術は、実施例に具体的に開示されたものは、炭化水素の引火点が130℃以上と高いが、水の含有量が5質量%と少なく、界面活性剤の組み合わせなどからも、総合的には、乾燥速度と、インキおよび紙粉のカスの洗浄性や版の画線部の破壊抑制とをバランス良く兼ね備える点からの検討はされていない。また疎水性溶媒として炭化水素のみを使用していることから、乾燥速度を速めると共に低粘度化することによる吐出ムラの低減やインキの洗浄性の向上にはさらに改良の余地があり、また低温での安定性の観点から添加剤を加えることについては考慮されていない。
【0007】
特許文献3は、界面活性剤の含有量を少なくすることでエマルジョンの安定性を抑え、紙面やブランケットの表面で石油系有機溶剤と水とが容易に分離することで洗浄性の向上を図った技術である。しかし、界面活性剤の含有量が3質量%程度と少なく石油系有機溶剤と水とが容易に分離するため、乾燥速度と、インキおよび紙粉のカスの洗浄性や版の画線部の破壊抑制とをバランス良く兼ね備える点は考慮されておらず、また製品の外観を透明均一とすることや低温での安定性を確保する点からは懸念がある。そして疎水性溶媒として炭化水素のみを使用していることから、乾燥速度を速めると共に低粘度化することによる吐出ムラの低減やインキの洗浄性の向上にはさらに改良の余地があり、また低温での安定性の観点から添加剤を加えることについては考慮されていない。
【0008】
特許文献4では、水分の腐敗による配管詰まりなどを抑制する点から、水を5.5〜8質量%と少なくし、金属不活性化剤等を配合している。しかし、炭化水素系溶剤は低沸点で、容易に揮発して引火爆発を引き起こす虞があるため、通常は水の含有量が8質量%以下であると、引火点が測定不可となるように調製して非危険物化に必要な法規制を満たすことが難しく、また紙粉のカスを洗浄除去しにくくなることから、紙粉のカスを洗浄除去するために洗浄剤の使用量を増やすと洗浄、乾燥工程に長時間を要する。したがって水を一定量以上含有しながらも、洗浄、乾燥工程に長時間を要することのない、インキおよび紙粉のカスの洗浄性や版の画線部の破壊抑制も兼ね備えた技術が望まれていた。
【0009】
本出願人は、特許文献5において、炭化水素および1価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種の疎水性溶媒と、脂肪酸アルカノールアミドおよび多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と、水とを含有する洗浄剤を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−034097号公報
【特許文献2】特開平7−126687号公報
【特許文献3】特開2000−144192号公報
【特許文献4】特開2015−127366号公報
【特許文献5】特開2006−182824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この洗浄剤は、インキおよび紙粉のカスの洗浄性に優れているが、乾燥速度と、インキや紙粉のカスの洗浄性や版の画線部の破壊の抑制とをバランスよく兼ね備える点からはさらに改良の余地があった。実施例に具体的に開示されたものは、炭化水素の引火点、疎水性溶媒や水の含有量、あるいは界面活性剤の組み合わせなどからも、総合的には、乾燥速度と、インキおよび紙粉のカスの洗浄性や版の画線部の破壊抑制とをバランス良く兼ね備える点からの検討はされていない。
【0012】
また1価アルコール脂肪酸エステルの使用については、ラウリルアルコールオクチル酸エステル等の、分子量が比較的大きい炭素数8〜18のアルコールと炭素数8〜18の脂肪酸とのエステルを対象としていることから、乾燥速度を速めると共に低粘度化することによる吐出ムラの低減やインキの洗浄性の向上には着目されていなかった。
【0013】
またpHを調整するために適量のオレイン酸を添加した例はあるが、低温での安定性の観点から添加剤を加えることについては考慮されていない。
【0014】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、インキおよび紙粉のカスに対する洗浄性および版の画線部の破壊抑制と、洗浄後の乾燥速度とを兼ね備えた輪転機用洗浄剤を提供することを課題としている。
【0015】
本発明は、水を一定量以上含有しても、乾燥を速め、かつ低粘度化することができ、吐出ムラの抑制やインキの洗浄性をさらに改良した輪転機用洗浄剤を提供することを別の課題としている。
【0016】
本発明は、冬場のような低温下においても、保管時における濁りの発生や、分離と固体の析出を抑制できる輪転機用洗浄剤を提供することをさらに別の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の輪転機用洗浄剤は、疎水性溶媒(A)を60〜85質量%、界面活性剤(B)を5〜20質量%、水(C)を9〜20質量%含有し、疎水性溶媒(A)は、引火点70〜120℃の炭化水素(a1)を含有し、80℃における2時間後の蒸発減量が、疎水性溶媒(A)と水(C)との合計に対して50〜85質量%であることを特徴としている。
【0018】
この輪転機用洗浄剤は、疎水性溶媒(A)が、炭素数8〜12の脂肪酸と炭素数1〜4の1価アルコールとから得られる脂肪酸エステル(a2)をさらに含有し、炭化水素(a1)と脂肪酸エステル(a2)との質量比(a1):(a2)が1:0.4〜1:1であることが好ましい。
【0019】
この輪転機用洗浄剤は、界面活性剤(B)が、スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤(b1)と、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、および多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(b2)とを含有し、アニオン界面活性剤(b1)とノニオン界面活性剤(b2)との質量比(b1):(b2)が1:2〜2:1であることが好ましい。
【0020】
この輪転機用洗浄剤は、炭素数12〜18の脂肪酸(D)をさらに含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インキおよび紙粉のカスに対する洗浄性および版の画線部の破壊抑制と、洗浄後の乾燥速度とを兼ね備えることができる。
【0022】
本発明によれば、疎水性溶媒(A)として、炭素数8〜12の脂肪酸と炭素数1〜4の1価アルコールとから得られる脂肪酸エステル(a2)を炭化水素(a1)と共に上記の比率で含有することで、低粘度化することができ、吐出ムラの抑制やインキの洗浄性を改良できる。
【0023】
本発明によれば、炭素数12〜18の脂肪酸(D)をさらに含有することで、冬場のような低温下においても、保管時における濁りの発生や、分離と固体の析出を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明に使用される疎水性溶媒(A)は、炭化水素(a1)を含有する。この炭化水素(a1)は、引火点が70〜120℃であり、好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。引火点がこの範囲内であると、乾燥性が良好となり、洗浄後のブランケットやインキローラー等は速やかに乾燥する。
【0026】
好ましい例として、引火点が70〜100℃、好ましくは70〜90℃の炭化水素を単独で用いて炭化水素(a1)とするか、あるいは引火点が70〜100℃、好ましくは70〜90℃の炭化水素と、引火点が100℃超120℃以下の炭化水素とを、これらの質量比が2.5:1以下となるように組み合わせて炭化水素(a1)とする。あるいは引火点が70〜100℃、好ましくは70〜90℃の炭化水素と、上記脂肪酸エステル(a2)とを組み合わせて疎水性溶媒(A)とする。このような例によれば、乾燥性が特に良好となる。
【0027】
炭化水素(a1)としては、脂肪族系、ナフテン系、芳香族系等を挙げることができ、印刷装置に使用されているゴムや樹脂に対して影響の少ない点を考慮すると、脂肪族系とナフテン系が好ましい。脂肪族系としては、主に炭素数12〜13の炭化水素が好ましい。参考として、アルカンの引火点は炭素数11で65℃、炭素数12で74℃、炭素数13で108℃、炭素数14で120℃である。
【0028】
疎水性溶媒(A)は、炭化水素(a1)と共に、脂肪酸エステル(a2)を含有することが好ましい。この脂肪酸エステル(a2)は、炭素数8〜12の脂肪酸と炭素数1〜4の1価アルコールとから得られる脂肪酸エステルである。この脂肪酸エステル(a2)を含有することにより、低粘度化することができ、ポンプから吐出する際に吐出ムラが発生することや、インキの洗浄性を改良できる。
【0029】
脂肪酸エステル(a2)の原料である炭素数8〜12の脂肪酸としては、飽和、不飽和のいずれでもよく、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、例えば、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸等が挙げられる。脂肪酸エステル(a2)の原料である炭素数1〜4の1価アルコールとしては、飽和、不飽和のいずれでもよく、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。脂肪酸エステル(a2)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
脂肪酸エステル(a2)は、引火点が70〜140℃であることが好ましい。
【0031】
脂肪酸エステルの中でも、メチルエステルは、炭化水素に比べて洗浄性(インキ溶解性)が優れていることに加え、同炭素数の炭化水素に比べて高引火点かつ低粘度であるため、安全性の点およびポンプから吐出する際の吐出ムラを改善する点から高引火点で低粘度の洗浄性に優れた洗浄剤とすることができ、好ましく用いることができる。
【0032】
疎水性溶媒(A)における、炭化水素(a1)と脂肪酸エステル(a2)との質量比(a1):(a2)は、1:0.4〜1:1が好ましい。疎水性溶媒(A)として、炭化水素(a1)と共に脂肪酸エステル(a2)を使用する場合、本発明の輪転機用洗浄剤の25℃での動粘度は、7.5mm/s以下が好ましく、6mm/s以下がより好ましく、5mm/s以下が特に好ましい。このような範囲内であると、低粘度化することができ、ポンプから吐出する際に吐出ムラが発生することや、インキの洗浄性を改良できる。
【0033】
本発明の輪転機用洗浄剤における疎水性溶媒(A)の含有量は、60〜85質量%であり、好ましくは70〜85質量%である。疎水性溶媒(A)の含有量が60質量%以上であるとインキの洗浄性が良い。炭化水素(a1)の含有量が85質量%以下であると紙粉のカスの除去性が良く、引火等の事故発生の可能性も低減できる。
【0034】
本発明に使用される界面活性剤(B)は、疎水性溶媒(A)と水(C)とを可溶化する。界面活性剤(B)としては、特に限定されるものではなく、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いることができる。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
疎水性溶媒(A)との組み合わせにおいて、版の画線部の破壊を抑制する点を考慮すると、次の界面活性剤(b1)と(b2)を併用することが好ましい。
(b1)スルホン酸塩型アニオン界面活性剤
(b2)ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤
スルホン酸塩型アニオン界面活性剤(b1)としては、ジオクチルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、テトラデセンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0038】
ノニオン界面活性剤(b2)のうち、ポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0039】
ノニオン界面活性剤(b2)のうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、炭素数12〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコールのプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
ノニオン界面活性剤(b2)のうち、多価アルコール脂肪酸エステルとしては、多価アルコールと脂肪酸の部分エステル、完全エステルのいずれも使用可能である。多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和および不飽和脂肪酸、例えばオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、イコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。多価アルコール脂肪酸エステルをより具体的に例示すると、エチレングリコールモノオレイン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノミリスチン酸エステル、ソルビトールモノオレイン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンジオレイン酸エステル、グリセリントリオレイン酸エステル等が挙げられる。上記多価アルコールエステルの中でもグリセリンやソルビトールと、炭素数12〜18の飽和または不飽和脂肪酸とのモノエステル、ジエステルが好ましい。
【0041】
アニオン界面活性剤(b1)とノニオン界面活性剤(b2)との質量比(b1):(b2)は、1:2〜2:1が好ましい。この範囲内であると、疎水性溶媒(A)との組み合わせにおいて、版の画線部の破壊を抑制することができる。
【0042】
本発明の輪転機用洗浄剤における界面活性剤(B)の含有量は、5〜20質量%であり、好ましくは5〜12質量%である。界面活性剤(B)の含有量が5質量%以上であると洗浄剤の外観が均一で低温での安定性も良い。界面活性剤(B)の含有量が20質量%以下であると、CTP用印刷版やPSポジ版に洗浄液が飛散して付着した場合でも、版の画線部の破壊を抑制することができ、洗浄を繰り返した後でも色抜け等のない明瞭な印刷物を得ることができる。
【0043】
本発明に使用される水(C)は、紙粉カスの除去性能を高め、かつ引火点が測定不可となるように調製して非危険物化に必要な法規制を満たすことができる。
【0044】
本発明の輪転機用洗浄剤における水(C)の含有量は、9〜20質量%であり、好ましくは9〜17質量%である。水(C)の含有量が9質量%以上であると、紙粉カスの除去性能を高めることができ、引火等の事故発生の可能性も低減できる。水(C)の含有量が20質量%以下であると、インキの洗浄性が良く、また低温での安定性が良いため、冬場のような低温下においても、保管時における濁りの発生や、分離と固体の析出を抑制できる。
【0045】
本発明の輪転機用洗浄剤は、80℃における2時間後の蒸発減量が、疎水性溶媒(A)と水(C)との合計に対して50〜85質量であり、好ましくは60〜80質量%である。引火点が低い疎水性溶媒(A)を使用し、成分(A)〜(C)の配合と組成を上記に例示したような範囲にすることで、この範囲にすることができる。80℃での蒸発減量がこの範囲内であると、実際に輪転機で使用する際、インキおよび紙粉カスの洗浄が十分にでき、尚且つ洗浄後のブランケットやインキローラー等は速やかに乾燥する。
【0046】
本発明の輪転機用洗浄剤は、上記成分(A)〜(C)と共に、炭素数12〜18の脂肪酸(D)を含有することが好ましい。低温での安定性が良いため冬場のような低温下においても、保管時における濁りの発生や、分離と固体の析出を抑制できる。
【0047】
炭素数12〜18の脂肪酸(D)としては、飽和、不飽和のいずれでもよく、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、例えば、ドデカン酸、テトラデカン酸、テトラデセン酸、ヘキサデカン酸、ヘキサデセン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等が挙げられる。
【0048】
本発明の輪転機用洗浄剤における炭素数12〜18の脂肪酸(D)の含有量は、低温安定性を高めることができる点を考慮すると、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0049】
本発明の輪転機用洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記成分(A)〜(D)の他に、他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、防錆剤等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、BHT、トコフェロール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明の輪転機用洗浄剤は、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等の各種印刷機やそれらの版銅、ブランケット銅、印刷版、インキローラー等の洗浄用として使用できる。その中でも、インキおよび紙粉の洗浄性に優れ、ブランケット等に残留して印字品質の低下をきたす等の虞がなく、オフセット印刷のCTP用印刷版およびPSポジ版の画線部を破壊することがないことから、CTP用印刷版やPSポジ版を使用するオフセット印刷機用の洗浄剤として好適に使用できる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1および表2に示す配合量は質量%を表す。
1.輪転機用洗浄剤の調製
表1および表2に示す配合で各成分を混合し、攪拌機によって攪拌して水を分散させて可溶化し、輪転機用洗浄剤を得た。各表に示す疎水性溶媒(A)、界面活性剤(B)、脂肪酸(D)について以下に補足する。
【0052】
炭化水素(a1)
(エクソールD−40)
ナフテン系炭化水素 引火点47℃ 初留:166℃、乾点/最終沸点:191℃ エクソンモービル社製
(フォッグソルベント)
石油系炭化水素70質量%以上80質量%未満 ナフテン系合成炭化水素30質量%未満 引火点84℃ 沸騰範囲:初留点−終点210〜275℃ JXエネルギー社製
(ベースソルベント21)
石油系炭化水素100質量% 引火点75℃ 沸点:初留点−終点210〜240℃ JXエネルギー社製
(ドデカン(C12))
引火点74℃、沸点214〜216℃
(エクソールD−110)
ナフテン系炭化水素 引火点114℃ 初留:248℃、乾点/最終沸点:265℃ エクソンモービル社製
(エクソールD−130)
ナフテン系炭化水素 引火点140℃ 初留:279℃、乾点/最終沸点:313℃ エクソンモービル社製
(オクタデカン(C18))
引火点165℃ 沸点317℃
【0053】
脂肪酸エステル(a2)
(C8メチルエステル)
n−オクタン酸メチル 引火点72℃ 沸点193℃
(C10メチルエステル)
n−デカン酸メチル 引火点94℃ 沸点229℃
(C12メチルエステル)
n−ドデカン酸メチル 引火点136℃ 沸点260℃
(C8ブチルエステル)
n−オクタン酸ブチル 引火点124℃ 沸点245℃
(C18'メチルエステル)
n−オクタデセン酸メチル 引火点163℃
【0054】
界面活性剤(b1)
(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)
Cytec社製 エアロゾルOT−70PG ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのプロピレングリコール/水の混合物溶液
【0055】
界面活性剤(b2)
(グリセリンモノオレイン酸エステル)
ミヨシ油脂社製 MOP グリセリンモノオレイン酸エステル
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)
三洋化成工業社製 サンノニックFN−80
【0056】
脂肪酸(D)
(脂肪酸1)
ミヨシ油脂社製 PM500 C12:2%、C14:1%、C16:5%、C18:2%、C18':76%、C18'':13%、C18''':1%(「'」は炭素−炭素二重結合の数を表わす)
(脂肪酸2)
東京化成工業社製 オレイン酸(C18':>99.0%)
(クエン酸)
東京化成工業社製
【0057】
表1および表2に示した実施例および比較例の輪転機用洗浄剤について、次の評価を行った。
【0058】
2.評価
(1)物性
[動粘度]
25℃での洗浄剤の動粘度(mm/s)をJIS K2283に準拠して測定した。
【0059】
[蒸発減量]
80℃における2時間後の洗浄剤の蒸発減量を、疎水性溶媒(A)と水(C)との合計を基準として次の方法で測定した。各洗浄剤5.00gをガラス製シャーレに計り取る。それらを80℃恒温槽に所定時間放置し、30分毎の重量を測定し、重量変化から蒸発減量を算出した。
【0060】
(2)性能評価
[洗浄性]
印刷インキ(藍色)80質量部と紙粉20質量部とを混合したもの0.1gを、オフセット印刷機用のゴムブランケットから作製した試料片(8cm×8cm)に塗布した後、洗浄剤を含ませて20分経過した不織布(10cm×10cmの不織布に洗浄剤3gを含浸させたもの)でブランケットを拭き取り、拭き取り後のブランケットへのインキおよび紙粉の残存状態を観察し、以下の基準で評価した。
【0061】
洗浄性(インキ溶解性)
評価基準
◎:インキの残存が認められない。
○:インキの残存が僅かに認められる。
×:インキの残存が多い。
【0062】
洗浄性(紙粉のカスの除去性)
評価基準
◎:紙粉の残存が認められない。
○:紙粉の残存が僅かに認められる。
×:紙粉の残存が多い。
【0063】
[版への影響]
CTP用印刷版上に洗浄剤を0.5ミリリットル滴下し、滴下20分後の版の画線部の破壊の程度を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:画線部の破壊なし。
○:僅かに画線部の破壊が認められる。
×:画線部の破壊程度が大きい。
【0064】
[乾燥性]
蒸発減量の評価において、80℃2時間後の蒸発減量から乾燥性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:蒸発減量が60%以上80質量%以下
○:蒸発減量が50%以上60質量%未満もしくは80質量%超85質量%以下
×:80℃2時間後の蒸発減量が50%未満もしくは85%超
【0065】
(3)外観評価
[洗浄剤の外観]
洗浄剤を調製後の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
評価基準
○:均一
×:不均一
【0066】
[低温安定性]
洗浄剤を調製後、5℃で2週間放置した後の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:透明均一
△:わずかに濁りあり
×:分離や固体の析出が見られる
【0067】
上記の評価結果を表1および表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
なお、外観評価が×評価であった比較例6、9、11については、本発明の目的に沿わないものとして、性能評価を行わなかった。洗浄性または版への影響の評価が×の評価であった比較例4、5、7、8については、本発明の目的に沿わないものとして、乾燥性の評価は行わなかった。
【0070】
表1より、疎水性溶媒(A)を60〜85質量%、界面活性剤(B)を5〜20質量%、水(C)を9〜20質量%含有し、疎水性溶媒(A)は、引火点70〜120℃の炭化水素(a1)を含有し、80℃における2時間後の蒸発減量が、疎水性溶媒(A)と水(C)との合計に対して50〜85質量%である輪転機用洗浄剤を用いた実施例1〜14では、インキと紙粉のカスの洗浄性が良好で、版の画線部の破壊も抑制された。さらに洗浄工程後の乾燥性が良好で、拭き取り後のブランケットは速やかに乾くことが確認された。
【0071】
実施例1〜3、6、10〜14では、疎水性溶媒(A)として炭化水素(a1)のみ用いた。これに対して実施例4、5、7〜9では炭化水素(a1)と共に脂肪酸エステル(a2)を配合した。この場合、実施例3と実施例4、5との対比に見られるように、乾燥性を維持しながら動粘度が低くなり、更に洗浄性(インキ溶解性)も向上することが確認された。一方、脂肪酸エステルとしてオクタデセン酸(オレイン酸)メチルエステルを用いた実施例9では、炭素数8〜12の脂肪酸のメチルエステルを用いた実施例4、5、7の洗浄剤より高粘度となり、洗浄性(インキ溶解性)の向上も見られなかった。また、実施例4、5、7〜9の洗浄剤を別途にポンプを用いてブランケット表面に吐出したところ、目視において吐出ムラは低減し、中でも炭素数8〜12の脂肪酸メチルエステルを用いた実施例4、5、7は動粘度が(5.0mm/s)以下であり、目視において吐出がほぼ均一であり、洗浄工程への良好な効果を示した。すなわち、インクを短時間で容易かつ速やかに拭き取りつつ、その後は速やかに乾燥し、洗浄、乾燥工程を速やかに行うことができることが確認された。
【0072】
乾燥性については、引火点74℃、75℃、84℃の炭化水素(a1)をベースとする80℃における2時間後の蒸発減量が60質量%以上ものは乾燥性が特に良く(実施例2〜9、12〜14)、疎水性溶媒(A)としてこれらの炭化水素(a1)と共に脂肪酸エステル(a2)を配合した実施例4、5、7〜9も蒸発減量が60質量%以上となり、乾燥性が特に良好であった。
【0073】
界面活性剤(B)として、スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤(b1)と、ノニオン界面活性剤(b2)とを質量比(b1):(b2)=1:2〜2:1の範囲で組み合わせた実施例1〜9、13、14では、上記の効果が確認されると共に、版の画線部の破壊がなかった。質量比(b1):(b2)が、上記範囲外の実施例12は、洗浄性、乾燥性は良好であるが版の画線部の破壊が僅かに認められた。
【0074】
炭素数12〜18の脂肪酸(D)を配合した実施例1〜13では、洗浄剤を調製後、5℃で2週間放置した後も透明均一で、低温安定性が良好であった。炭素数12〜18の脂肪酸(D)を配合しない実施例14では、放置後にわずかに濁りが生じ、冬場などの低温での製品保管時に外観が悪化することが示唆された。
【0075】
表2より、比較例1は、炭化水素の引火点が低いものを用いたが、乾燥が速過ぎて洗浄性(インキ溶解性)が著しく悪化した。
【0076】
比較例2、3は、炭化水素の引火点が高いものを用いたが、乾燥が遅く、洗浄後に十分に乾燥するまでの時間が長くなり、洗浄、乾燥工程に長時間を要した。
【0077】
比較例4は、疎水性溶媒(A)の含有量が少なく、インキを十分に洗浄除去することができなかった。比較例5は、疎水性溶媒(A)の含有量が多く、水の含有量が少なく、紙粉を十分に洗浄除去することができなかった。
【0078】
比較例6は、界面活性剤(B)の含有量が少なく、可溶化が不十分で外観が不均一となり、製品として不適であった。比較例7は、界面活性剤(B)の含有量が多く、画線部の破壊が生じた。
【0079】
比較例8は、水(C)の含有量が少なく、紙粉を十分に洗浄除去することができなかった。比較例9は、水(C)の含有量が多く、洗浄剤を調製後、5℃で2週間放置した後に分離や固体の析出が見られ、外観が著しく悪化した。
【0080】
比較例10は、80℃における2時間後の蒸発減量が低く、乾燥が遅いため、洗浄後に十分に乾燥するまで長時間を要した。
【0081】
比較例11は、脂肪酸(D)としてクエン酸を用いたが、洗浄剤を調製後、5℃で2週間放置した後に分離や固体の析出が見られ、外観が著しく悪化した。