特許第6772018号(P6772018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772018極細化に適した極細化用繊維を製造する方法、極細繊維を製造する方法、極細化に適した極細化用繊維、及び、極細繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772018
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】極細化に適した極細化用繊維を製造する方法、極細繊維を製造する方法、極細化に適した極細化用繊維、及び、極細繊維
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20201012BHJP
   D21H 11/16 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   D21H11/18
   D21H11/16
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-197247(P2016-197247)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-179685(P2017-179685A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-198625(P2015-198625)
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-65612(P2016-65612)
(32)【優先日】2016年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109233
【氏名又は名称】チカミミルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】千頭 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 純
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−014078(JP,A)
【文献】 特開2009−243014(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103726378(CN,A)
【文献】 特開2012−000550(JP,A)
【文献】 特開2008−075214(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/136147(WO,A1)
【文献】 特表2017−510730(JP,A)
【文献】 特開2013−107927(JP,A)
【文献】 KIBBLEWHITE, R. P.,Effects of Pulp Freezing and Frozen Pulp Storage on Fibre Characteristics,WOOD SCIENCE AND THECNOLOGY,1980年,Vol.14,p.p. 143-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより極細化に適した極細化用繊維を製造する方法であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、
前記加圧加温処理後の前記セルロース系繊維を凍結させた後融解させる凍結融解処理と、を行う方法。
【請求項2】
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより極細化に適した極細化用繊維を製造する方法であって、
前記セルロース系繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる凍結融解処理と、
前記凍結融解処理後の前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、を行う方法。
【請求項3】
前記加圧加温処理として、前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下の沸騰水に所定時間浸漬させる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記沸騰水は酸水溶液を沸騰させたものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース系繊維には予め亀裂を生じさせておく請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により製造した極細化用繊維に極細化処理を施して極細繊維を製造する方法。
【請求項7】
得られる前記極細繊維の平均繊維径が1〜1000nmである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより製造される極細化に適した極細化用繊維であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、
前記加圧加温処理後の前記セルロース系繊維を凍結させた後融解させる凍結融解処理と、が施された極細化用繊維。
【請求項9】
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより製造される極細化に適した極細化用繊維であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる凍結融解処理と、
前記凍結融解処理後の前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、が施された極細化用繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細化に適した極細化用繊維を製造する方法、その極細化用繊維を用いて極細繊維を製造する方法、極細化に適した極細化用繊維、及び、極細繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は様々な用途で使用されている。そして、例えば、浄水器、空気清浄器およびマスク等の各種フィルター、正極材と負極材を分離する電池セパレータ、透過膜および保護膜等のフィルム、皮膚の貼付材料、各種低目付シートの補強材料等の分野に用いる繊維として、その吸着力等の性能を高めるために、繊維に対し叩解処理等の極細化処理を行い、比表面積を高めた極細繊維が用いられている。
【0003】
さらに、近年では、ナノファイバーと呼ばれる、直径が1〜100nmで長さが直径の100倍以上ある繊維も知られている。ナノファイバーは、ナノサイズの直径により新たな特性を有することがわかっており、これを活かして様々な分野への応用が試みられている。例えば、セルロース系繊維から製造するセルロースナノファイバーは、低密度高強度、より大きい比表面積といった特性から、上記したフィルター、フィルム、電池セパレータ、補強材料等の様々な分野への応用が期待されている。
【0004】
例えば、このようなセルロースナノファイバーを得る方法としては、高圧ホモジナイザーにより極細化する方法や、回転する砥石間で繊維を磨砕する方法などの機械的処理により繊維を極細化してセルロースナノファイバーを得る方法が知られている(特開2010−216021号公報(特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−216021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、特許文献1に記載の方法など、繊維を極細化するには、要する加工時間が長く、また大きな労力や機械的エネルギーを必要とすることや、極細化処理を施した繊維の全てが所望の繊維径まで極細化できるわけではなく、極細繊維の生産効率の上昇が望まれているなど、改善の余地がある。
【0007】
そこで、ナノファイバーや、ナノファイバーとまではいかずとも極めて繊維径の小さい繊維など極細繊維を製造する上で、繊維の芯の部分を残さない極細繊維を製造するとともに、要する加工時間を短縮することにより、極細繊維を製造するのに要する労力・エネルギーを低減し、極細繊維の生産効率を高める方法の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る極細化に適した極細化用繊維を製造する方法は、
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより極細化に適した極細化用繊維を製造する方法であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、
前記加圧加温処理後の前記セルロース系繊維を凍結させた後融解させる凍結融解処理と、を行う。
【0010】
また、本発明に係る極細化に適した極細化用繊維を製造する方法は、
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより極細化に適した極細化用繊維を製造する方法であって、
前記セルロース系繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる凍結融解処理と、
前記凍結融解処理後の前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、を行う。
【0012】
発明者は、繊維に極細化処理を施すのに先立って、その繊維に対し、繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、含水させた繊維を凍結させた後融解させる凍結融解処理との両方又は一方を施すことで、その後の極細化処理による繊維の解繊性が効果的に高まるとともにフィブリル化が効果的に促進される等、極細化における処理性能が効果的に向上することを見出した。さらに、この加圧加温処理と凍結融解処理とを組み合わせて実行するとその後の極細化処理による繊維の処理性能が一層効果的に高まることも見出した。そこで、これらの構成によれば、繊維の極細化処理に先立って、加工処理として繊維に対して加圧加温処理と凍結融解処理との両方又はいずれか一方を施し、極細化に適した極細化用繊維を製造する。このような処理性能が高められた極細化用繊維を用いて極細化処理を行えば、繊維の太い芯の部分を残さず全体的に極細繊維を製造することができ、また、要する加工時間を短縮することにより、極細繊維を製造するのに要する労力・エネルギーを効果的に低減し、極細繊維の生産効率を効果的に高めることができる。また、この構成によれば、フィルター、フィルム、電池セパレータ、補強材料等に適した極細繊維の製造に適した極細化用繊維を得ることができる。
【0013】
1つの態様として、前記加圧加温処理として、前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下の沸騰水に所定時間浸漬させると好適である。
【0014】
この構成によれば、例えば圧力鍋といった容易に入手可能な機器を用いて加圧加温処理を行うことができる。
【0015】
1つの態様として、前記沸騰水は酸水溶液を沸騰させたものであると好適である。
【0016】
発明者は、上記態様において沸騰水を酸水溶液を沸騰させたものとすることにより、繊維の極細化における処理性能が一層効果的に高まることを見出した。そして、この構成によれば、極細化における処理性能が一層効果的に高められた極細化用繊維を得ることができる。
【0017】
1つの態様として、前記セルロース系繊維には予め亀裂を生じさせておくと好適である。
【0018】
この構成によれば、繊維の含水率を高めることができ加圧加温処理又は凍結融解処理により極細化における処理性能を一層効果的に高めることができる。
【0021】
本発明に係る極細繊維を製造する方法は、
上記方法により製造した前記極細化用繊維に極細化処理を施して極細繊維を製造する。
【0022】
この構成によれば、繊維の太い芯の部分を残さず全体的に極細繊維を製造することができ、また、要する加工時間を短縮することにより、製造に要する労力・エネルギーが効果的に低減され、且つ、極細繊維の生産効率が効果的に高められた極細化用繊維を用いることで、極めて効率的に極細繊維を製造することができる。
【0023】
一つの態様として、得られる前記極細化用繊維の平均繊維径が1〜1000nmであると好適である。
【0024】
この構成によれば、高性能のフィルター、フィルム、電池セパレータ、補強材料等を製造できる極細繊維を得ることができる。
【0025】
本発明に係る極細化に適した極細化用繊維は、
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより製造される極細化に適した極細化用繊維であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、
前記加圧加温処理後の前記セルロース系繊維を凍結させた後融解させる凍結融解処理と、が施された極細化用繊維である。
また、本発明に係る極細化に適した極細化用繊維は、
セルロース系繊維に加工処理を施すことにより製造される極細化に適した極細化用繊維であって、
前記加工処理として、前記セルロース系繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる凍結融解処理と、
前記凍結融解処理後の前記セルロース系繊維を大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、が施された極細化用繊維である。
【0026】
つまり、これら構成のように、繊維に加圧加温処理及び凍結融解処理を施すことで、極細化に適した極細化用繊維を得ることができる。具体的に説明すると、図15〜17(それぞれ叩解処理後の繊維であって、図15が加工処理として加圧加温処理を行った繊維で、図16が加工処理として加圧加温処理と凍結融解処理とを行った繊維で、図17が加工処理を行っていない繊維)に示すように、図15の加圧加温処理を行った繊維は、図17の加工処理を行っていない繊維に比べ、繊維の断面に多くの亀裂が確認でき、また、繊維の表面からより極細の繊維に分かれている。つまり、繊維内部で生じていた亀裂に沿って繊維が細かく裂けていっていることがわかる。さらに、図16の加圧加温処理と凍結融解処理とを行った繊維では、繊維内部で生じていた亀裂に沿って、図15に比べさらに細かく繊維が裂けていっていることがわかる。このように、本構成に係る加工処理を行うことにより繊維内部に細かな亀裂が生じ、その細かな亀裂に沿って繊維が細かく裂けていっていることがわかる。つまり、上記の加工処理を施した極細化用繊維は、繊維内部に細かな亀裂が生じたものとなっており、これにより、極細繊維の生産効率が高められた繊維となっている。
なお、上記の加工処理を施すことで、繊維内部に細かな亀裂が生じるという新規で且つ特徴的な構造を有する極細化用繊維を得ることができるが、この繊維内部に生じた細かな亀裂の構造等を具体的に特定することは極めて困難であり、そのため、本構成に係る極細化用繊維は、繊維に施した加工処理の内容(加圧加温処理又は凍結融解処理)によって初めて具体的に特定されるものとなっている。
【0027】
本発明に係る極細繊維は、
上記本発明に係る極細化用繊維に叩解処理を施すことで製造される極細繊維である。
【0028】
上記したように、本発明に係る極細化用繊維は繊維内部に細かな亀裂が生じるという新規で且つ特徴的な構造を有するものであり、このような極細化用繊維によれば、化学的処理で繊維に変性をもたらすことなく、極細繊維を容易に得ることができる。このような極細繊維は、極細化用繊維に叩解処理を施すことで製造されることによって初めて特定されるものであり、上記構成により、製造に要するコストが低減された極細繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1における試料の拡大図
図2】実施例2における試料の拡大図
図3】実施例3における試料の拡大図
図4】実施例4における試料の拡大図
図5】比較例1における試料の拡大図
図6】比較例2における試料の拡大図
図7】実施例5における試料の拡大図
図8】比較例3における試料の拡大図
図9】実施例6における試料の拡大図
図10】実施例7における試料の拡大図
図11】比較例4における試料の拡大図
図12】実施例6における繊維の断面拡大図
図13】実施例7における繊維の断面拡大図
図14】比較例4における繊維の断面拡大図
図15】実施例6における叩解処理後の繊維の断面拡大図
図16】実施例7における叩解処理後の繊維の断面拡大図
図17】比較例4における叩解処理後の繊維の断面拡大図
図18】加工処理フローおよび加工処理後の評価フローを示す図
図19】本実施形態に係る極細繊維の比引張強度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る極細化に適した極細化用繊維を製造する方法、極細繊維を製造する方法、極細化に適した極細化用繊維、及び、極細繊維の実施形態について、詳細に説明する。本実施形態に係る方法では、繊維に加工処理を施すことにより極細化に適した極細化用繊維を製造する。より詳しくは、加工処理として、繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する加圧加温処理と、繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる凍結融解処理との両方又はいずれか一方を行い、極細化における処理性能(以下、単に処理性能と称する)を向上させた極細化用繊維を製造する。そして、製造した極細化用繊維に極細化処理を施して極細繊維を製造する。以下、この方法についてより詳しく説明する。
【0031】
〔繊維〕
本実施形態に用いる繊維としては、セルロース系繊維を用いることができる。セルロース系繊維は特に限定されず、綿、麻、ホヤなどの天然セルロース繊維、クラフトパルプ、サルファイトパルプなどの木材化学処理パルプ、セミケミカルパルプ、古紙またはその再生パルプ等が挙げられる。また、セルロース系繊維以外でも、機械的処理により極細化させる繊維であれば特に限定されない。
【0032】
また、本実施形態に用いる繊維は、元々その繊維表面に傷や縦筋・縦目等が存在し、その傷や縦筋・縦目等に水分を浸透させた状態において加工処理(加圧加温処理や凍結融解処理)をすることにより、処理性能を高めることができるが、この加工処理に先立って、繊維に予め亀裂(ヒビ・割れ・裂け・傷・縦筋等)を生じさせておくと、さらに好適である。これにより、繊維の含水率を高めることができ、加圧加温処理又は凍結融解処理により処理性能を高めることができる。例えば、亀裂を生じさせるのは、公知の叩解処理の手段により行える。具体的には、ビーター、リファイナー、ニーダー、サンドグラインダー、高圧ホモジナイザー、回転型ミル、ジェットミル等、公知の機械的処理設備が利用できる。
【0033】
〔加圧加温処理〕
加圧加温処理では繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温する。高温高圧で処理することにより、繊維表面や内部に浸透した水分が膨張等することで、繊維の処理性能を向上できる。そして、繊維に予め亀裂を生じさせておくと、水が繊維の内部まで入り込みやすく、繊維の処理性能を一層向上できる。この加圧加温処理は、水を用いた一般的なオートクレーブ処理により行うことができ、例えば、繊維を大気圧以上の圧力下の沸騰水に所定時間浸漬させることにより行うことができる。これは圧力鍋や圧力釜等を用いて行うことができる。また、この他にも、繊維を沸騰水に浸漬させて加温するのではなく、例えば大気圧以上の圧力下で含水させた繊維をヒーターにより加温する等で行ってもよく、加圧加温処理の具体的方法は、繊維を含水させて大気圧以上の圧力下で加温するものであれば特に限定されず、また、その処理時間や処理温度、処理圧力も特に限定されない。加圧加温処理における圧力は、例えば100kPa以上であると好ましい。上限についても特に限定されずどのような圧力であってもよいが、例えば処理の安全性や行い易さなどの観点からは1500kPa以下であれば好適である。また、加圧加温処理の後は、繊維にかける圧力は徐々に減圧させてもよいが、加圧加温処理の後は繊維を高圧下から一気に大気圧下に移すなど、繊維にかかる圧力を瞬時に減圧させると、一層繊維の処理性能を一層向上させることができ、極細化処理を行うことにより、繊維をより分割・解繊させることができる。
【0034】
繊維を大気圧以上の圧力下の沸騰水に所定時間浸漬させる場合、沸騰水は酸水溶液を沸騰させたものであると好適である。酸により水の繊維への浸透性が上がり、処理性能の向上効果が高まるからと考えられる。用いる酸は特に限定されないが、例えば分子量が小さく特に浸透性に優れるグリコール酸が挙げられる。また、沸騰水を用いない場合でも、繊維を酸水溶液により含水させてもよい。例えば、グリコール酸水溶液を用いる場合、その濃度は特に限定されないが、繊維の解繊性等と、繊維の断裂のし易さを考慮し、1〜20wt%の範囲が望ましく、さらにいえば1〜10wt%がより好適である。グリコール酸水溶液の濃度が高いほど、繊維強度が低下し、加工処理時において繊維自身が横方向(直径方向)に断裂し易くなり、繊維長が短くなってしまうからである。なお、好適な濃度の範囲は加圧加熱処理を行う温度圧力条件等により適宜変化させることができる。
【0035】
〔凍結融解処理〕
凍結融解処理では繊維を含水させた後凍結させ、その後融解させる。含水させた繊維を凍結させることにより、繊維に含まれた水分が凍って膨張し、これにより繊維の処理性能を向上できる。そして、同様に、繊維に予め亀裂を生じさせておくと、水が繊維の内部まで入り込みやすく、繊維の処理性能を一層向上できる。繊維を凍結させる方法としては、例えば、含水させた繊維を断熱容器に入れ、そこに液体窒素を導入する方法が挙げられる。ただし、これに限定されず、含水させた繊維を冷凍庫に入れて凍結させたり、ドライアイスを用いて凍結させる等、含水させた繊維を凍結できる方法であれば限定されず、また、その処理時間も特に限定されない。そして、繊維を凍結させた後は、常温で放置する等通常の方法で繊維を融解させる(解凍する)。なお、融解を早めるために公知の加熱器等により加温しても良い。
【0036】
加工処理として、加圧加温処理及び凍結融解処理の両方を行ってもよいし、何れか一方のみを行ってもよい。また、両方を行う場合、加圧加温処理を行った後、凍結融解処理を行ってもよいし、凍結融解処理を行った後、加圧加温処理を行ってもよい。
【0037】
〔極細化処理〕
極細化用繊維を製造した後は、その極細化用繊維に対して極細化処理を施し極細繊維を製造する。どの程度まで繊維を極細にするかは、目的の用途に応じて設定すればよく、特に限定されないが、例えば、得られる極細繊維の平均繊維径が1〜1000nmであると好適である。また、平均繊維径が1〜100nmとなるまで極細化処理を行いナノファイバーを得てもよい。上記の加工処理を経ることにより極細化用繊維は処理性能が極めて高められているので、目的とする繊維径まで繊維を極細化するのに要する時間を短縮でき、また、要する加工時間を短縮することにより、要する労力・エネルギーを低減し、またそのような極細繊維の生産効率が高められている。極細化処理としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、上記した公知の叩解処理の手段により行えばよい。具体的には、ビーター、リファイナー、ニーダー、サンドグラインダー、高圧ホモジナイザー、回転型ミル、ジェットミル等、公知の機械的処理設備が利用できる。また、本実施形態における極細化用繊維は処理性能が極めて高められているので、ハンマーにより繊維を叩いたり、擦ったりする方法、砥石により繊維を擦る方法等の人力による叩解処理によっても効率的に繊維を極細化できる。
【0038】
〔用途〕
上記のようにして製造した極細繊維は、特に限定されることなく、利用可能なあらゆる用途で用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
実施例1では、加工処理として加圧加温処理のみを行ったものを示す。具体的には原料としてセルロース原綿を用い、公知の適当な叩解処理により予め繊維に亀裂を生じさせた。加圧加温処理として、圧力鍋を用いて144kPaの圧力下で60分、セルロース原綿を沸騰水に浸漬させた。そして、その後セルロース原綿が含水した状態で、極細化処理として、砥石(粒度#240)を用いて、砥石の間に含水したセルロース原綿を挟み、砥石を両手で押さえつけながら縦横各10往復及び円を描くように時計回りと反時計回りとで各20回ずつ砥石を擦る叩解処理を行った。図1に、極細化処理後、乾燥機により乾燥させた実施例1における試料を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。なお、図1及び以下の他の図で示す写真の撮影には電子顕微鏡を用いた。
【0041】
[比較例1]
比較例1として、加工処理を行わず、実施例1と同様の極細化処理のみを行ったものを示す。図5に、極細化処理後、乾燥機により乾燥させた比較例1における試料を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。
【0042】
図1図5とを対比すると、図5では繊維径が10μmを超えるものが解繊されることなくそのまま残っているが、図1では少しの極細化処理により効果的に解繊されていることがわかる(例えば図1中の矢印参照)。このように、加工処理として加圧加温処理を行った後の繊維は処理性能が高められていることがわかる。
【0043】
[実施例2]
実施例2では、加工処理として凍結融解処理のみを行ったものを示す。具体的には原料としてセルロース原綿を用いた。凍結融解処理として、デュワーフラスコに液体窒素を導入し、その中に含水させたセルロース原綿を5分間浸漬させた後、常温で自然融解させた。その後セルロース原綿が含水した状態で、実施例1と同様の極細化処理を行った。図2に、極細化処理後、乾燥機により乾燥させた実施例2における試料を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。
【0044】
図2図5(比較例1)とを対比すると、図5では繊維径が10μmを超えるものが解繊されることなくそのまま残っているが、図2では例えば図中の矢印で指す繊維など図5に比べ繊維の解繊度合が高いことがわかる。このように、加工処理として凍結融解処理を行った後の繊維は処理性能が高められていることがわかる。
【0045】
また、図1図2とを対比すると、図1の方が繊維の解繊度合が高く、このことから、加圧加温処理と凍結融解処理とでは、それぞれ単独で実行した場合、加圧加温処理の方が繊維の処理性能の向上効果が高いといえる。
【0046】
[実施例3]
実施例3では、加工処理として加圧加温処理と凍結融解処理との両者を行ったものを示す。具体的には上記と同様に原料としてセルロース原綿を用い、公知の適当な叩解処理により予め繊維に亀裂を生じさせた。そして、実施例1と同じ加圧加温処理を行った後、実施例2と同じ凍結融解処理を行った。その後セルロース原綿が含水した状態で、実施例1と同様の極細化処理を行った。図3に、極細化処理後、乾燥機により乾燥させた実施例3における試料を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。
【0047】
図3図5(比較例1)とを対比すると、図3では少しの極細化処理により効果的に解繊されていることがわかる。このように、加工処理として加圧加温処理と凍結融解処理とを行った後の繊維は処理性能が高められていることがわかる。
【0048】
また、比較のため、図6に、比較例2として、加工処理を行わずに極細化処理を十分に施した従来技術による試料(いわば比較例1の試料に対しさらに追加的に十分な極細化処理を行った試料)を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。図3図6とを対比すると、図3における方が効果的に解繊されていることがわかり、実施例3における優れた処理性能の向上が確認できる。
【0049】
また、図3を、図1及び図2と対比すると、図3が最も繊維の解繊度合が高いことがわかる。このことから、加圧加温処理と凍結融解処理との両者を行うことにより、繊維の処理性能を一層向上させることができるのがわかる。
【0050】
[実施例4]
実施例4では、実施例1と基本的には同じ処理を行ったが、加圧加温処理において、グリコール酸水溶液(濃度10wt%)を沸騰させた沸騰水にセルロース原綿を浸漬させた。図4に、極細化処理後、乾燥機により乾燥させた実施例4における試料を1000倍に拡大して撮影した写真を示す。
【0051】
図4から明らかなように、少しの極細化処理により効果的に繊維が解繊されていることがわかる。そして、図1(実施例1)と図4とを比較すると、図4に示す繊維の方がより解繊度合が高いといえる。このことから、加圧加温処理において、酸水溶液(グリコール酸水溶液)を沸騰させた沸騰水を用いる方が繊維の処理性能をより高めることができるのがわかる。
【0052】
[実施例5]
実施例5では、極細化処理を行う前の試料の状態を示す。具体的には、セルロース原綿に対し叩解処理を行った後、フィブリル化していないいわゆる芯の部分のみを叩解処理後の繊維から分離し、その芯の部分を試料とした。また、この試料には、上記と同様に公知の適当な叩解処理により予め繊維に亀裂を生じさせた。そして、その後、実施例4と同様にして、加圧加温処理において、圧力鍋を用いて144kPaの圧力下で30分、グリコール酸水溶液(濃度5wt%)を沸騰させた沸騰水に試料を浸漬させた。図7に、加圧加温処理後、乾燥機により乾燥させた実施例5における試料を5000倍に拡大して撮影した写真を示す。
【0053】
図7と、実施例5における加圧加温処理前の芯の部分の試料(比較例3)を5000倍に拡大して撮影した写真を示す図8とを比較すると、図8の加圧加温処理前の状態から、図7では繊維の芯の部分が効果的に解繊されていることがわかる。このように、加圧加温処理を行うことにより、繊維の処理性能が高められていることがわかる。
【0054】
[実施例6,7、比較例4]
さらに、繊度1.7dtexのリヨセル繊維に対し、上記の加工処理を行った例について説明する。以下では、このリヨセル繊維について、加工処理として、オートクレーブ装置を用いて、700kPaの圧力下で、165℃まで昇温させた水に一時間含浸させる加圧加温処理を行ったものを実施例6とし、実施例6と同様の加圧加温処理を行った後、実施例2と同様の凍結融解処理を行ったものを実施例7とし、加工処理を行わなかったものを比較例4として説明する。
【0055】
まず、図9〜11を用いて、加工処理後の繊維の状態を示す。図9〜11は1000倍に拡大した各例のリヨセル繊維の写真であり、図9が実施例6、図10が実施例7、図11が比較例4のリヨセル繊維を示す。図9〜11を比較すると、加工処理を行った繊維を示す図9,10では、各繊維の表面に長さ方向に延びる縦筋が生じており、また表面がナノサイズの極細繊維に分かれていっていることがわかる。また、図9図10とを比較すると、加工処理としてさらに凍結融解処理を行った繊維を示す図10では、より一層極細繊維に分かれていることがわかる。
【0056】
次に、図12〜17を用いて、加工処理が繊維に与える影響について説明する。図12〜14は5000倍に拡大した各例のリヨセル繊維の断面の写真であり、図12が実施例6、図13が実施例7、図14が比較例4のリヨセル繊維の断面を示す。図12〜14を比較すると、加工処理を行った図12,13に示す繊維については断面に細かな穴が生じていることがわかる。この穴は繊維の裂け目に相当するものであり、つまり、加工処理を行った繊維については、繊維内部において繊維の長さ方向に沿った多数の亀裂が生じていることがわかる。
【0057】
図15〜17は、さらに繊維に対して叩解処理(ビーターで1時間程度)を行った後の状態を示し、5000倍に拡大した叩解処理後の各例のリヨセル繊維の断面を示す。図15が実施例6、図16が実施例7、図17が比較例4のリヨセル繊維の断面を示す。図15〜17を比較すると、加工処理として加圧加温処理を行った繊維を示す図15では、加工処理を行っていない繊維を示す図17に比べ、繊維の断面に多くの亀裂が確認でき、また、繊維の表面からより極細の繊維に分かれていっていることがわかる。つまり、繊維内部で生じていた亀裂に沿って繊維が細かく裂けていっていることがわかる。さらに、加工処理として加圧加温処理と凍結融解処理とを行った繊維を示す図16では、繊維内部で生じていた亀裂に沿って、図15に比べさらに細かく繊維が裂けていっていることがわかる。このように、本実施形態の加工処理を行うことにより繊維内部に細かな亀裂が生じ、その細かな亀裂に沿って繊維が細かく裂けていっていることがわかる。つまり、繊維内部に細かな亀裂が生じることにより、加工処理を行うことによって極細繊維の生産効率が高められていることがわかる。
【0058】
次に、表1を用いて、加工処理を行った繊維から生成した極細繊維の強度について説明する。表1は、実施例6,7及び比較例4の繊維について、極細化処理としてそれぞれビーターにより2kg荷重で6時間叩解処理を行った各極細繊維をシート状に成形した後の各シートについての坪量(単位面積当たりの重さ)、厚さ、密度、及び、引張試験を行うことにより得た引張強度と比引張強さのデータを示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、加工処理を行わなかった比較例4の繊維に比べ、加工処理を行った実施例6,7の繊維では比引張強さが高くなっている。特に、加工処理として加圧加温処理に加えて凍結融解処理を行った実施例7の繊維では、比較例4の繊維に比べて、比引張強さが2倍以上に高められている。一本一本の繊維が極めて細い状態となると、単位体積当たりの繊維の構成本数が増加することにより強度が高まることがわかっており、実施例6,7の繊維は、比較例4の繊維に比べ、極細化が進展していることがわかる。このように加工処理を施した極細化用繊維を用いて極細繊維を製造することにより、極めて効率的に極細繊維を製造することができ、また、その結果、製造された極細繊維の強度を高めることも可能となる。
【0061】
さらに、加圧加温処理や凍結融解処理等の加工処理を施した極細化用繊維に対して叩解処理を行って得られた極細繊維を用いて抄紙したシートの比引張強さの試験結果を図18,19を用いて示す。図18は、加工処理の効果を確認するために行った実験試料作製方法と評価フローを示し、図18(及び図19)において「G」とあるのは何の前処理も行わなかったリヨセル繊維であり、図18に示すように、リヨセル繊維に対してそのまま後述の叩解処理が行われている。「G−A」は加圧加温処理を行って叩解処理を行ったリヨセル繊維であり、具体的には加圧加温処理(高温・高圧処理)としてオートクレーブ(容量120リッター、蒸気加熱式)を用いて0.6MPaの圧力下で沸騰水に1時間浸漬させた後のリヨセル繊維である。「G−A−N1」及び「G−A−N2」は、加圧加温処理と凍結融解処理とを行って叩解処理を行ったリヨセル繊維であり、具体的には「G−A」と同様の加圧加温処理を行った後に、「G−A−N1」では凍結融解処理(凍結処理)として液体窒素を用いて−196℃の温度下で10分間放置した後融解させる処理を行い、「G−A−N2」では凍結融解処理として家庭用冷凍庫を用いて−15℃の温度下で1時間放置した後融解させる処理を行った。そして、各リヨセル繊維についてビーターによる叩解処理を所定時間(1時間、2時間、及び、4時間)行い、各繊維について処理時間ごと(1時間、2時間、及び、4時間)に熊谷理機工業(株)製の角形シートマシンを用いて250mm×250mm、坪量20g/mのシートを作製して、各シートの物性値を測定した。表2〜5に各シートの物性値を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図19は、各シートに対して行った引張試験の結果であり、処理時間と比引張強さ(N/m・g)との関係を示す。なお、極細化が進むと、上記のように比引張強さも高くなるという関係にあり、即ち、比引張強さはシートの繊維径と相関があり、極細化がどの程度進んでいるのかの指標となる値である。
【0067】
図19から明らかなように、加圧加温処理や凍結融解処理の加工処理を行っている繊維(「G−A」、「G−A−N1」、「G−A−N2」)は、加工処理を行っていない繊維(「G」)に比べ、明らかに比引張強さが高くなっている。つまり、加工処理を行っている繊維(「G−A」、「G−A−N1」、「G−A−N2」)の方がより極細化が進んでいることを示す。また、加圧加温処理のみを行っている繊維(「G−A」)と、加圧加温処理に加え凍結融解処理を行っている繊維(「G−A−N1」、「G−A−N2」)と、を比較すると、叩解処理を2時間行った時点の比引張強さが加圧加温処理に加え凍結融解処理を行っている繊維の方が明らかに高くなっており、凍結融解処理も併せて行うことにより、より極細化が進んでいることがわかる。なお、4時間行った時点で「G−A−N1」、「G−A−N2」の比引張強さが低下しているが、これは叩解処理を行い過ぎたことにより繊維が長さ方向に千切れて短繊維化が起きていることによるものと考えられる。ただし、この短繊維化は、4時間の叩解処理を終えるまでに十分に繊維が極細化したことで、繊維を極細にするために加えられていた力が、繊維を千切れさせるように働くことになったことによるものであるといえ、「G−A−N1」、「G−A−N2」による極細繊維の生産効率の高さを反映したものといえる。
【0068】
本評価実験で用いたビーターは熊谷理機工業(株)製のナイアガラビータ(TAPPI標準型)を用いたが、本評価におけるビーターによる叩解は叩解方法の一例であって、叩解処理に用いる装置はビーターに限られない。また、本評価実験の目的は、あくまでも、加工処理なしの試料と比較することにより本発明の加工処理方法が叩解特性の向上と極細化繊維を得るのに格段に優れる効果を有することを示すことにある。したがって、叩解処理に用いる装置と叩解条件はその用途に応じて適宜選択される。
【0069】
本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば繊維を極細化するのに利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19