特許第6772019号(P6772019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772019熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772019
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20201012BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20201012BHJP
   F24F 11/83 20180101ALI20201012BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20201012BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20201012BHJP
【FI】
   F24F11/63
   F24F11/46
   F24F11/83
   F24F5/00 101Z
   F24F140:20
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-198199(P2016-198199)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-59680(P2018-59680A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 智
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】筈井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠
(72)【発明者】
【氏名】花崎 広隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−057865(JP,A)
【文献】 特開2016−044952(JP,A)
【文献】 特開2013−160415(JP,A)
【文献】 特開2010−127559(JP,A)
【文献】 特開2001−221541(JP,A)
【文献】 特開2016−006355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、
前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対し上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度制御を行う熱媒出口温度変更手段を備えた熱源システムの制御装置。
【請求項2】
前記変更後予測値は、前記第2熱源機の熱媒出口温度であり、
前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の熱媒出口温度に基づく値である請求項1に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項3】
前記変更後予測値は、前記第2熱源機の熱媒入口温度であり、
前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の熱媒入口温度に基づく値である請求項1に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項4】
前記変更後予測値は、前記第2熱源機の負荷率であり、
前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の負荷率に基づく値である請求項1に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項5】
前記第2熱源機の前記変更後予測値が、前記第2軽負荷停止閾値に対し上回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱源システムの制御装置。
【請求項6】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機の軽負荷停止となる第1軽負荷停止閾値に対して下回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻す前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えた請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱源システムの制御装置。
【請求項7】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が前記第1軽負荷停止閾値に対し下回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行う請求項6に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項8】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機が過負荷となる第1過負荷閾値に対して下回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えた請求項1から請求項7のいずれかに記載の熱源システムの制御装置。
【請求項9】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が前記第1過負荷閾値に対し下回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行う請求項8に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項10】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態で、前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機が過負荷となる前記第1過負荷閾値に対して上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻す前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えた請求項8または請求項9に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項11】
前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での前記第1熱源機の負荷率が前記第1過負荷閾値に対し上回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行う請求項10に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の熱源システムの制御装置を備える熱源システム。
【請求項13】
複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、
前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対し上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度変更過程を有する熱源システムの制御方法。
【請求項14】
複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御プログラムであって、
前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、
前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対し上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度変更過程を有する熱源システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽負荷停止及び過負荷運転を回避可能な熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源機の中でもCOP(Coefficient of Performance:成績係数)が高い熱源機、および、当該熱源機よりもCOPが低い熱源機により構成された複合熱源システムが知られている。この複合熱源システムにおいては、COPの高い熱源機の製造熱量を増やし、COPの低い熱源機の製造熱量を減らすことで熱源システム全体のCOP向上を図っている。
例えば、特許文献1には、COPの高いヒートポンプ式冷凍機をベース熱源とし、COPの低い吸収式冷凍機が稼働している間はヒートポンプ式冷凍機の冷水出口温度設定値を下げることが開示されている。特許文献1の発明は、冷房運転に対する技術であるが、これを暖房運転に適用することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−44952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、冷房運転もしくは暖房運転において冷温水出口温度設定値を変更したことにより、熱源機が軽負荷もしくは過負荷に至る場合があるため、熱源機が停止する可能性があるという問題があった。
例えば、冷房運転において冷水出口温度設定値をステップ状に急減させた場合、冷水入口温度の急激な低下に伴い、COPの低い吸収式冷凍機の冷水出口温度が下がる、または吸収式冷凍機の負荷が下がることによって吸収式冷凍機が軽負荷停止となる虞がある。これに至る要因は、冷水出口温度設定の変更による急激な製造熱量の変化に対し、ヒートポンプ式冷凍機と吸収式冷凍機で応答の速度が異なることが挙げられる。一般的に、吸収式冷凍機はヒートポンプ式冷凍機と比較して応答が遅く、能力を急に変更することが困難である。
また、上記特許文献1に開示された発明では、吸収式冷凍機が稼働しておらずかつ冷水入口温度が一定以下であれば、冷水出口温度設定を元の状態に戻すとしていることにより、冷水入口温度が十分に低い状態で冷水出口温度設定値を戻す場合があるため、過渡的に冷水出口温度と冷水入口温度との温度差が小さくなり、ヒートポンプ式冷凍機が軽負荷停止に至る可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軽負荷停止及び過負荷運転を回避可能な熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムは以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る熱源システムの制御装置は、複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対して上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度制御を行う熱媒出口温度変更手段を備える。
【0007】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第2熱源機の変更後予測値が第2熱源機の軽負荷停止閾値より大きければ熱媒出口温度を変更する。熱媒出口温度の変化に伴う熱源システムの運転状態の変化を予測し、第2熱源機が軽負荷停止にならないように制御することから、第2熱源機が軽負荷停止をおこす虞がなく、第1熱源機の熱媒出口温度を変更することができる。
また、各熱源機の効率(COP)に基づいた負荷分配制御を行うことができる。
また、第2熱源機が軽負荷停止すると判定されると、第1熱源機の熱媒出口温度を変更しないため、第2熱源機の軽負荷停止を回避することができる。
ここで、変更後予測値とは、第2熱源機の熱媒出口温度、熱媒入口温度、負荷率等である。
【0008】
上記第一態様では、前記変更後予測値は、前記第2熱源機の熱媒出口温度であり、前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の熱媒出口温度に基づく値であることが好ましい。
【0009】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第2熱源機の熱媒出口温度が第2熱源機の軽負荷停止閾値より大きければ第1熱源機の熱媒出口温度を変更する。熱媒出口温度の変化に伴う第2熱源機の熱媒出口温度の変化を予測し、第2熱源機が軽負荷停止にならないように制御することから、第2熱源機が軽負荷停止をおこす虞がなく、第1熱源機の熱媒出口温度を変更することができる。
【0010】
上記第一態様では、前記変更後予測値は、前記第2熱源機の熱媒入口温度であり、前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の熱媒入口温度に基づく値であることが好ましい。
【0011】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第2熱源機の熱媒入口温度が第2熱源機の軽負荷停止閾値より大きければ第1熱源機の熱媒出口温度を変更する。熱媒出口温度の変化に伴う第2熱源機の熱媒入口温度の変化を予測し、第2熱源機が軽負荷停止にならないように制御することから、第2熱源機が軽負荷停止をおこす虞がなく、第1熱源機の熱媒出口温度を変更することができる。
【0012】
上記第一態様では、前記変更後予測値は、前記第2熱源機の負荷率であり、前記第2軽負荷停止閾値は、前記第2熱源機の負荷率に基づく値であることが好ましい。
【0013】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第2熱源機の負荷率が第2熱源機の軽負荷停止閾値より大きければ第1熱源機の熱媒出口温度を変更する。熱媒出口温度の変化に伴う第2熱源機の負荷率の変化を予測し、第2熱源機が軽負荷停止にならないように制御することから、第2熱源機が軽負荷停止をおこす虞がなく、第1熱源機の熱媒出口温度を変更することができる。
ここで、熱源機の負荷率とは、その熱源機の定格出力に対する熱源機の出力の割合を示す。
【0014】
上記第一態様では、前記第2熱源機の前記変更後予測値が、前記第2軽負荷停止閾値に対し、上回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行うことが好ましい。
【0015】
本構成によれば、第2熱源機の変更後予測値(第2熱源機の熱媒出口温度、第2熱源機の熱媒入口温度、及び第2熱源機の負荷率)は、熱源システムにおける各熱源機やポンプ、外部負荷の変動に応じて過渡的に変化する値である。例えば、第2熱源機が吸収冷凍機である場合、吸収冷凍機の起動後の一定期間は能力を発揮するのに時間を要するため、変更後予測値は値が変化し続ける。この変化中の値に基づいた変更後予測値と第2軽負荷停止閾値とを用いて判定を行う場合、変更後予測値は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム全体のCOPが低下するだけでなく、軽負荷停止に至る可能性がある。
そこで、第2熱源機の変更後予測値が第2軽負荷停止閾値より大きい期間が一定期間以上であった場合に熱媒出口温度制御を行うものとする。これにより、変更後予測値の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム全体のCOPが向上し、軽負荷停止を回避することができる。
【0016】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機の軽負荷停止となる第1軽負荷停止閾値に対して下回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻す前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率が第1熱源機の軽負荷停止閾値より小さければ第1熱源機の熱媒出口温度を事前に変更前の値に戻す。熱媒出口温度の変化に伴う第1熱源機の負荷率の変化を予測し、第1熱源機が軽負荷停止にならないように制御することから、第1熱源機が軽負荷停止をおこす虞がなく、各熱媒出口温度を変更することができる。
また、第1熱源機が軽負荷停止すると判定されると、熱媒出口温度を事前に変更前の値に戻すため、第1熱源機の軽負荷停止を回避することができる。
【0018】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が前記第1軽負荷停止閾値に対し下回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行うことが好ましい。
【0019】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率は、熱源システムにおける各熱源機やポンプ、外部負荷の変動に応じて過渡的に変化する値である。この過渡的に変化する第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率と第1軽負荷停止閾値とを用いて判定を行う場合、第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム全体のCOPが低下するだけでなく、軽負荷停止に至る可能性がある。
そこで、第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率が第1軽負荷停止閾値より小さい期間が一定期間以上であった場合に熱媒出口温度制御を行うものとする。これにより、第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム全体のCOPが向上し、軽負荷停止を回避することができる。
【0020】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機が過負荷となる第1過負荷閾値に対して下回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えることが好ましい。
【0021】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した時、第1熱源機の負荷率が第1熱源機の過負荷閾値(第1熱源機の定格能力)より小さければ第1熱源機の熱媒出口温度を変更する。熱媒出口温度の変化に伴う第1熱源機の負荷率の変化を予測し、第1熱源機が過負荷にならないように制御することから、第1熱源機が過負荷をおこす虞がなく、熱媒出口温度を変更することができる。
また、各熱源機の効率(COP)に基づいた負荷分配制御を行うことができる。
また、第1熱源機が過負荷になると判定されると、熱媒出口温度を変更しないため、第1熱源機の過負荷運転を回避することができる。
【0022】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の前記第1熱源機の負荷率が前記第1過負荷閾値に対し下回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行うことが好ましい。
【0023】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率は、熱源システムにおける各熱源機やポンプ、外部負荷の変動に応じて過渡的に変化する値である。この過渡的に変化する第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率と第1過負荷閾値とを用いて判定を行う場合、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム全体のCOPが低下するだけでなく、過負荷運転に至る可能性がある。
そこで、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率が第1過負荷閾値より小さい期間が一定期間以上であった場合に熱媒出口温度制御を行うものとする。これにより、第1熱源機の熱媒出口温度を変更したと仮定した場合の第1熱源機の負荷率の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム全体のCOPが向上し、過負荷運転を回避することができる。
【0024】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態で、前記第1熱源機の負荷率が、前記第1熱源機が過負荷となる第1過負荷閾値に対して上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更前の値に戻す前記熱媒出口温度制御を行う前記熱媒出口温度変更手段を備えることが好ましい。
【0025】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率が第1熱源機の過負荷閾値より大きければ第1熱源機の熱媒出口温度を事前に変更前の値に戻す。第1熱源機が過負荷運転にならないように制御することから、第1熱源機が過負荷をおこす虞がなく、熱媒出口温度を変更することができる。
また、第1熱源機が過負荷運転すると判定されると、熱媒出口温度を事前に変更前の値に戻すため、第1熱源機の過負荷運転を回避することができる。
【0026】
上記第一態様では、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での前記第1熱源機の負荷率が前記第1過負荷閾値に対し上回る期間が一定期間以上であった場合に前記熱媒出口温度制御を行うことが好ましい。
【0027】
本構成によれば、第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率は、熱源システムにおける各熱源機やポンプ、外部負荷の変動に応じて過渡的に変化する値である。この過渡的に変化する第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率と第1過負荷閾値とを用いて判定を行う場合、第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム全体のCOPが低下するだけでなく、過負荷運転に至る可能性がある。
そこで、第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率が第1過負荷閾値より大きい期間が一定期間以上であった場合に熱媒出口温度制御を行うものとする。これにより、第1熱源機の熱媒出口温度を変更した状態での第1熱源機の負荷率の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム全体のCOPが向上し、過負荷運転を回避することができる。
【0028】
本発明の第二態様に係る熱源システムは、上述のいずれかに記載の熱源システムの制御装置を備える。
【0029】
本発明の第三態様に係る制御方法は、複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対し上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度変更過程を有する。
【0030】
本発明の第四態様に係る制御プログラムは、複数の熱源を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒出口温度が設定温度となるように第1熱源機及び第2熱源機を制御する熱源システムの制御プログラムであって、前記第1熱源機は、前記第2熱源機よりも成績係数(COP)が高く、前記第1熱源機の熱媒出口温度を熱媒出口温度変更後設定温度に変更したと仮定した場合に前記第1熱源機の熱媒出口温度変更前設定温度及び前記熱媒出口温度変更後設定温度を用いて導出される前記第2熱源機の変更後予測値が、前記第2熱源機の軽負荷停止となる第2軽負荷停止閾値に対し上回る時、前記第1熱源機の熱媒出口温度を変更する熱媒出口温度変更過程を有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、軽負荷停止及び過負荷運転となるか否かを判定した上で熱媒出口温度を変更するので、軽負荷停止及び過負荷運転を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の熱源システムを示した概略構成図である。
図2】本発明の熱源システムの制御装置を示したブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態における冷水出口温度制御の前処理を示したフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態における冷水出口温度制御の後処理を示したフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態における冷水出口温度制御を示したフローチャートである。
図6】本発明の第3実施形態における冷水出口温度制御を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムの各実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る熱源システムの概略構成が示されている。
図1に示されるように、熱源システム1は、熱源機(熱源)2と、ポンプ3と、サプライヘッダ4と、リターンヘッダ5と、外部負荷6を主な構成として備えている。
熱源機2は、ヒートポンプ式冷凍機(第1熱源機)2a、2b及び吸収式冷凍機(第2熱源機)2c、2dとから構成される。ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dは、外部負荷6に対して各々並列に設置されている。一般的に、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bは、吸収式冷凍機2c、2dに対しCOPが高いとされる。
ポンプ3は、冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dとから構成される。
【0034】
冷熱出力運転を行う場合の冷水(熱媒)流れからみたヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dの上流側には、それぞれ、冷水を圧送する冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dが設置されている。これら冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dによって、リターンヘッダ5からの冷水がヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dへと送られる。
【0035】
サプライヘッダ4には、ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dを経由した冷水が集められる。サプライヘッダ4に集められた冷水は、外部負荷6に供給される。外部負荷6にて空調などに供され昇温した冷水は、リターンヘッダ5に送られる。冷水は、リターンヘッダ5において分岐され、上述したようにヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dへと送られる。
【0036】
図2には、熱源システムの制御装置を示したブロック図が示されている。
図2に示されるように、ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dの制御装置である冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、上位制御装置20と接続されている。上位制御装置20は、例えば熱源システム1全体を制御する制御装置であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dの制御を行う他、例えば冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dの回転数制御等を行う。
【0037】
上位制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、各処理を実行するためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有しており、CPU(Central Processing Unit)がこの記録媒体に記録されたプログラムをRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置に読み出して実行することにより、各処理が実現される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
上位制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、一つのMPUによって具現化されてもよいし、個別のMPUによって具現化されてもよい。
【0038】
図3には、本実施形態における冷水出口温度制御の前処理がフローチャートに示されている。また、図4には、本実施形態における冷水出口温度制御の後処理がフローチャートに示されている。
上位制御装置20は、外部負荷6へ供給する冷水の温度である冷水出口温度(熱媒出口温度)の制御を行う冷水出口温度制御(熱媒出口温度制御)を行っている。
上位制御装置20は、冷水出口温度制御を行うにあたり、吸収式冷凍機2c、2d各々の軽負荷停止条件に従い、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度(熱媒出口温度)の設定値の変更を許可する。
図3のフローチャートに示されるヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度制御は、各ヒートポンプ式冷凍機2a、2bに対し実行される。本実施形態では、吸収式冷凍機2cの軽負荷停止条件に基づくヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度制御について説明する。
まず、上位制御装置20は、全ての吸収式冷凍機2c、2dに対し以下の処理を行ったかどうかの判定を行う(S300)。ステップS300において全ての吸収式冷凍機2c、2dに対し処理を行ったと判定された場合は、図4のステップS309へ遷移する。ステップS309の処理については後述する。ステップS300において全ての吸収式冷凍機2c、2dに対し処理を行っていないと判定された場合は、ステップS301へ遷移する。
ステップS301において、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値変更を行うにあたり、吸収式冷凍機2cの軽負荷停止条件が次のいずれであるかを判定する。
(A)吸収式冷凍機2cの冷水出口温度最小値の予測値(変更後予測値)をT2out_aとすると、T2out_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
(B)吸収式冷凍機2cの冷水入口温度最小値の予測値(変更後予測値)をT2in_aとすると、T2in_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
(C)吸収式冷凍機2cの負荷率の予測値(変更後予測値)をL2_aとすると、L2_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
ここで、吸収式冷凍機2cの負荷率とは、その吸収式冷凍機2cの定格出力に対する吸収式冷凍機2cの出力の割合を示す。
【0039】
本実施形態では、ステップS301において3つの条件のうちいずれかの条件のみを判定するとしたが、上記の(A)〜(C)の組み合わせによる判定としても良く、また3つの条件を全て満たす場合にヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更するとしてもよい。
【0040】
ステップS301において(A)であると判定された場合は、ステップS302へ遷移する。ステップS301において(B)であると判定された場合は、ステップS304へ遷移する。ステップS301において(C)であると判定された場合は、ステップS306へ遷移する。
ステップS301において(A)であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値変更に伴い変化する吸収式冷凍機2cの冷水出口温度の過渡的な最小値の予測値T2out_aを予測する(S302)。
T2out_aは、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前の吸収式冷凍機2cの冷水出口温度をT2out_b、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更後設定温度をT1out_a、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前設定温度をT1out_b、稼働中のヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水流量をFR1_on、稼働中の全ての熱源機2の冷水流量をFRA_onとすると、以下の(1)式で表される。
【0041】
T2out_a=T2out_b+{(T1out_a−T1out_b)×Σ(FR1_on)}/Σ(FRA_on) (1)
【0042】
次に、(1)式で導出されたT2out_aが、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至る閾値である第2軽負荷停止閾値(a)より大きいか否かを判定し(S303)、T2out_aが第2軽負荷停止閾値(a)より大きいと判定された場合はステップS308へ遷移する。T2out_aが第2軽負荷停止閾値(a)以下であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至ると判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ステップS302へ遷移し、再度T2out_aの予測が行われる。
ここで、第2軽負荷停止閾値(a)は、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止する時の吸収式冷凍機2cの冷水出口温度である。さらには、これに余裕度αを加えた温度とすることが好ましい。余裕度αを加えることにより、軽負荷停止をより未然に防ぐことができる。
【0043】
ステップS303にてT2out_aが第2軽負荷停止閾値(a)より大きいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に入らないと判断することが可能であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更可能と判定し(S308)、ステップS300へ遷移する。
【0044】
ステップS301において(B)であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値変更に伴い変化する吸収式冷凍機2cの冷水入口温度(熱媒入口温度)の過渡的な最小値の予測値T2in_aを予測する(S304)。
T2in_aは、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前の吸収式冷凍機2cの冷水入口温度をT2in_bとすると、以下の(2)式で表される。
【0045】
T2in_a=T2in_b+{(T1out_a−T1out_b)×Σ(FR1_on)}/Σ(FRA_on) (2)
【0046】
次に、(2)式で導出されたT2in_aが、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至る閾値である第2軽負荷停止閾値(b)より大きいか否かを判定し(S305)、T2in_aが第2軽負荷停止閾値(b)より大きいと判定された場合はステップS308へ遷移する。T2in_aが第2軽負荷停止閾値(b)以下であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至ると判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ステップS304へ遷移し、再度T2in_aの予測が行われる。
ここで、第2軽負荷停止閾値(b)は、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止する時の吸収式冷凍機2cの冷水入口温度である。さらには、これに余裕度αを加えた温度とすることが好ましい。余裕度αを加えることにより、軽負荷停止をより未然に防ぐことができる。
【0047】
ステップS305にてT2in_aが第2軽負荷停止閾値(b)より大きいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に入らないと判断することが可能であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更可能と判定し(S308)、ステップS300へ遷移する。
【0048】
ステップS301において(C)であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値変更に伴い変化する吸収式冷凍機2cの負荷率の過渡的な最小値の予測値L2_aを予測する(S306)。
L2_aは、吸収式冷凍機2cのヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更に伴い過渡的に生じる吸収式冷凍機2cの冷水出口温度と冷水入口温度との差の最小値をT2dif_a、吸収式冷凍機2cの冷水流量をFR2(m/h)、冷水の比熱をc(kcal/kg℃)、冷水の比重をd(kg/m)、吸収式冷凍機2cの定格能力をRC2(kW)とすると、以下の(3)式で表される。
【0049】
L2_a=(T2dif_a×FR2×c×d)/(860×RC2) (3)
【0050】
ここで、T2dif_aは、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前の吸収式冷凍機2cの冷水出口温度と冷水入口温度との差をT2dif_bとすると、以下の(4)式で表される。
【0051】
T2dif_a=T2dif_b+{(T1out_a−T1out_b)×Σ(FR1_on)}/Σ(FRA_on) (4)
【0052】
次に、(3)式で導出されたL2_aが、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至る閾値である第2軽負荷停止閾値(c)より大きいか否かを判定し(S307)、L2_aが第2軽負荷停止閾値(c)より大きいと判定された場合はステップS308へ遷移する。L2_aが第2軽負荷停止閾値(c)以下であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至ると判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ステップS306へ遷移し、再度L2_aの予測が行われる。
ここで、第2軽負荷停止閾値(c)は、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止する時の吸収式冷凍機2cの負荷率である。さらには、これに余裕度αを加えた負荷率とすることが好ましい。余裕度αを加えることにより、軽負荷停止をより未然に防ぐことができる。
【0053】
ステップS307にてL2_aが第2軽負荷停止閾値(c)より大きいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後に吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至らないと判断することが可能であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更可能と判定し(S308)、ステップS300へ遷移する。
以上の処理を全ての吸収式冷凍機2c、2dに対して行った後ステップS300へ遷移すると、全ての吸収式冷凍機2c、2dに対し処理を行ったと判定され、図4のステップS309へ遷移する。全ての吸収式冷凍機2c、2dにおいてヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値が変更可能となったか否かを判定する(S309)。全ての吸収式冷凍機2c、2dにおいて変更可能であると判定された場合はステップS310へ遷移する。ステップS309において、いずれかまたは全ての吸収式冷凍機2c、2dにおいて変更可能となっていないと判定された場合は、条件を満たさないためヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更可能か否かの判定情報を初期化し(S311)、ステップS300へ遷移する。ステップS309において全ての吸収式冷凍機2c、2dにおいて設定値が変更可能であると判定された場合は、全ての吸収式冷凍機2c、2dが条件を満たすことから、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値をT1out_aに変更する(S310)。
【0054】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更したと仮定した場合の吸収式冷凍機2c、2dの冷水出口温度が吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止閾値より大きければヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更する。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴う吸収式冷凍機2c、2dの冷水出口温度の変化を予測し、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止にならないように制御することから、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を制御することから、各熱源機2の効率(COP)に基づいた負荷分配制御を行うことができる。
また、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止すると判定されると、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度を変更しないため、吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止を回避することができる。
【0055】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更したと仮定した場合の吸収式冷凍機2c、2dの冷水入口温度が吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止閾値より大きければヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更する。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴う吸収式冷凍機2c、2dの冷水入口温度の変化を予測し、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止にならないように制御することから、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
【0056】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更したと仮定した場合の吸収式冷凍機2c、2dの負荷率が吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止閾値より大きければヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更する。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴う吸収式冷凍機2c、2dの負荷率の変化を予測し、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止にならないように制御することから、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図5を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、吸収式冷凍機の軽負荷停止条件に従い、ヒートポンプ式冷凍機の冷水出口温度の設定値の変更を行うとしたが、本実施形態では、変更したヒートポンプ式冷凍機の冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻す際に発生するヒートポンプ式冷凍機及び吸収式冷凍機の軽負荷停止を回避するものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0058】
図5には、熱源システムの本実施形態における冷水出口温度制御がフローチャートに示されている。
図5のフローチャートに示される冷水出口温度制御は、各ヒートポンプ式冷凍機2a、2bに対し実行される。本実施形態では、ヒートポンプ式冷凍機2aに対する冷水出口温度制御について説明する。
図4のステップS310において変更されたヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻すにあたり、これによるヒートポンプ式冷凍機2aの負荷率の過渡的な最小値の予測値L1_arを予測する(S401)。
L1_arは、ヒートポンプ式冷凍機2aの現在の冷水入口温度をT1in_n、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前(すなわち元に戻した場合)のヒートポンプ式冷凍機2aの冷水出口温度をT1out_b、ヒートポンプ式冷凍機2aの冷水流量をFR1、ヒートポンプ式冷凍機2aの定格能力をRC1とすると、以下の(5)式で表される。
【0059】
L1_ar={(T1in_n−T1out_b)×FR1×c×d}/(860×RC1) (5)
【0060】
次に、(5)式で導出された予測値L1_arが、ヒートポンプ式冷凍機2aが軽負荷停止に至る閾値である第1軽負荷停止閾値より小さいか否かを判定し(S402)、L1_arが第1軽負荷停止閾値より小さいと判定された場合はステップS403へ遷移する。L1_arが第1軽負荷停止閾値以上であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を元に戻した後にヒートポンプ式冷凍機2aが軽負荷停止に至らないと判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を元に戻さず、ステップS405へ遷移する。
ここで、第1軽負荷停止閾値は、ヒートポンプ式冷凍機2aが軽負荷停止する時のヒートポンプ式冷凍機2aの負荷率である。さらには、これに余裕度αを加えた負荷率とすることが好ましい。余裕度αを加えることにより、軽負荷停止をより未然に防ぐことができる。
【0061】
ステップS402にて予測値L1_arが第1軽負荷停止閾値より小さいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻した後にヒートポンプ式冷凍機2aが軽負荷停止に入ると判断することが可能であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値をヒートポンプ式冷凍機2aが軽負荷停止に至る前に変更前の設定値T1out_bに戻す(S403)。
次に、以上の冷水出口温度制御を残りのヒートポンプ式冷凍機(本実施形態の場合、ヒートポンプ式冷凍機2b)に対しても同様に実行する。
【0062】
また、冷水出口温度を変更前の値に戻す場合に、吸収式冷凍機2c、2dについても軽負荷停止を回避する。
以下に、例えば吸収式冷凍機2cの軽負荷停止を回避する場合の処理について説明する。
ステップS402にてL1_arが第1軽負荷停止閾値以上であると判定された場合は、ステップS405へ遷移する。
変更されたヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻すにあたり、現在の吸収式冷凍機2cの負荷率L2_nを算出する(S405)。
L2_nは、吸収式冷凍機2cの冷水出口温度と冷水入口温度との差をT2dif_n、吸収式冷凍機2cの冷水流量をFR2(m/h)、冷水の比熱をc(kcal/kg℃)、冷水の比重をd(kg/m)、吸収式冷凍機2cの定格能力をRC2(kW)とすると、以下の(6)式で表される。
【0063】
L2_n=(T2dif_n×FR2×c×d)/(860×RC2) (6)
【0064】
次に、(6)式で導出されたL2_
nが、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至る閾値である第2軽負荷停止閾値(c)より小さいか否かを判定し(S406)、L2_nが第2軽負荷停止閾値(c)より小さいと判定された場合はステップS403へ遷移する。L2_nが第2軽負荷停止閾値(c)以上であると判定された場合は、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に至らないと判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻さず、ステップS401へ遷移する。
【0065】
ステップS406にてL2_nが第2軽負荷停止閾値(c)より小さいと判定された場合は、吸収式冷凍機2cが軽負荷停止に入ると判断することが可能であり、軽負荷停止に至る前にヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の設定値T1out_bに戻し(S403)、軽負荷停止を防ぐ。
吸収式冷凍機2c、2dが複数台備えられた熱源システム1においては、ステップS405の判定を各吸収式冷凍機2c、2dに対して実行してもよい。
【0066】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更前の値に戻したと仮定した場合のヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率が、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの軽負荷停止閾値より小さければヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を元の値に戻す。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴うヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率の変化を予測し、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが軽負荷停止にならないように制御することから、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが軽負荷停止をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが軽負荷停止すると判定されると、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度を変更前の値に戻すため、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの軽負荷停止を回避することができる。
【0067】
また、吸収式冷凍機2c、2dの負荷率が、吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止閾値より小さければヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を元の値に戻す。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴う吸収式冷凍機2c、2dの現在の負荷率を算出し、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止にならないように制御することから、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
また、吸収式冷凍機2c、2dが軽負荷停止すると判定されると、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度を変更前の値に戻すため、吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止を回避することができる。
【0068】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について、図6を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、ヒートポンプ式冷凍機の冷水出口温度の設定値の変更に伴う吸収式冷凍機の軽負荷停止を回避するとしたが、本実施形態では、ヒートポンプ式冷凍機の冷水出口温度の設定値の変更に伴うヒートポンプ式冷凍機の過負荷運転を回避するものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0069】
図6には、熱源システムの本実施形態における冷水出口温度制御がフローチャートに示されている。
図6のフローチャートに示される冷水出口温度制御は、各ヒートポンプ式冷凍機2a、2bに対し実行される。本実施形態では、ヒートポンプ式冷凍機2aに対する冷水出口温度制御について説明する。
冷水出口温度の設定値変更を行うにあたり、まず、冷水出口温度の設定値変更に伴い変化するヒートポンプ式冷凍機2aの負荷率の過渡的な最大値の予測値L1_aを予測する(S501)。
L1_aは、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更に伴い過渡的に生じるヒートポンプ式冷凍機2aの冷水出口温度と冷水入口温度との差の最大値をT1dif_a、ヒートポンプ式冷凍機2aの冷水流量をFR1(m/h)、冷水の比熱をc(kcal/kg℃)、冷水の比重をd(kg/m)、ヒートポンプ式冷凍機2aの定格能力をRC1(kW)とすると、以下の(7)式で表される。
【0070】
L1_a=(T1dif_a×FR1×c×d)/(860×RC1) (7)
【0071】
ここで、T1dif_aは、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度変更前のヒートポンプ式冷凍機2aの冷水出口温度と冷水入口温度との差をT1dif_b、稼働中の吸収式冷凍機2c、2dの冷水流量をFR2_onとすると、以下の(8)式で表される。
【0072】
T1dif_a=T1dif_b−{(T1out_a−T1out_b)×Σ(FR2_on)}/Σ(FRA_on) (8)
【0073】
次に、(7)式で導出されたL1_aが、ヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至る閾値である第1過負荷閾値以下か否かを判定し(S502)、L1_aが第1過負荷閾値以下であると判定された場合はステップS503へ遷移する。L1_aが第1過負荷閾値より大きいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後にヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至ると判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ステップS501へ遷移し、再度L1_aの予測が行われる。
ここで、過負荷運転とは、定格能力を超えた負荷がかかる状態である。第1過負荷閾値は、ヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至る時のヒートポンプ式冷凍機2aの負荷率であり、定格負荷、つまり100%である。さらには、これに余裕度にあたるパラメータαを減算した負荷率とすることが好ましい。パラメータαを減算することにより、過負荷をより未然に防ぐことができる。
【0074】
ステップS502にてL1_aが第1過負荷閾値以下であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更した後にヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷に至らないと判断することが可能であり、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値をT1out_aに変更する(S503)。
次に、以上の冷水出口温度制御を残りのヒートポンプ式冷凍機(本実施形態の場合、ヒートポンプ式冷凍機2b)に対しても同様に実行する。
【0075】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが複数台備えらえた熱源システム1においては、ステップS502にてL1_aが第1過負荷閾値以下であると判定された場合は、一部のヒートポンプ式冷凍機、例えばヒートポンプ式冷凍機2aのみ冷水出口温度の設定値を変更するとしてもよい。
【0076】
さらに、冷水出口温度の設定値を変更した後におけるヒートポンプ式冷凍機2aの過負荷運転の回避について説明する。
まず、図6のステップS503において変更されたヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻すにあたり、現在のヒートポンプ式冷凍機2aの負荷率L1_nを算出する(S504)。
L1_nは、ヒートポンプ式冷凍機2aの現在の冷水出口温度と冷水入口温度との差をT1dif_n、ヒートポンプ式冷凍機2aの冷水流量をFR1(m/h)、冷水の比熱をc(kcal/kg℃)、冷水の比重をd(kg/m)、ヒートポンプ式冷凍機2aの定格能力をRC1(kW)とすると、以下の(9)式で表される。
【0077】
L1_n=(T1dif_n×FR1×c×d)/(860×RC1) (9)
【0078】
次に、(9)式で導出されたL1_nが、ヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至る閾値である第1過負荷閾値以上か否かを判定し(S505)、L1_nが第1過負荷閾値以上であると判定された場合はステップS506へ遷移する。L1_nが第1過負荷閾値より小さいと判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更前の値に戻さずとも後にヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至らないと判断できる。よって、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値を変更せず、ステップS504へ遷移し、再度L1_aの算出が行われる。
【0079】
ステップS505にてL1_nが第1過負荷閾値以上であると判定された場合は、ヒートポンプ式冷凍機2aが過負荷運転に至ると判断することが可能であり、冷水出口温度の設定値を変更前の設定値T1out_bに戻し(S506)、過負荷運転に至るのを防ぐ。
次に、以上の冷水出口温度制御を残りのヒートポンプ式冷凍機(本実施形態の場合、ヒートポンプ式冷凍機2b)に対しても同様に実行する。
【0080】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが複数台備えらえた熱源システム1においては、ステップS505にてL1_nが第1過負荷閾値以上であると判定された場合は、一部のヒートポンプ式冷凍機、例えばヒートポンプ式冷凍機2aのみ冷水出口温度の設定値を変更する(変更前の値に戻す)としてもよい。
【0081】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更したと仮定した時、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率がヒートポンプ式冷凍機2a、2bの第1過負荷閾値以下であればヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更する。ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の変化に伴うヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率の変化を予測し、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが過負荷運転にならないように制御することから、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが過負荷をおこす虞がなく、各冷水出口温度を変更することができる。
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を制御することから、各熱源機2の効率(COP)に基づいた負荷分配制御を行うことができる。
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bが過負荷になると判定されると、冷水出口温度を変更しないため、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの過負荷運転を回避することができる。
【0082】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度変更後の現在の負荷率がヒートポンプ式冷凍機2a、2bの第1過負荷閾値以上であればヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更前の値に戻す。これによりヒートポンプ式冷凍機2a、2bが過負荷をおこす虞がなく、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの各冷水出口温度を変更することができる。
【0083】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について、説明する。
上記した第1乃至第3実施形態では、冷水出口温度、冷水入口温度及び各熱源機の負荷率等に基づき条件の判定を行うとしたが、本実施形態では、これら条件判定に用いる値の過渡的な揺らぎを除外するものである。その他の点については第1乃至第3実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0084】
例えば第1実施形態の場合、吸収式冷凍機2cの軽負荷停止条件が次のいずれであるかにより、条件の判定が異なる。
(A)T2out_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
(B)T2in_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
(C)L2_aが第2軽負荷停止閾値以下であること。
すなわち、吸収式冷凍機2cの冷水出口温度最小値の予測値T2out_a、吸収式冷凍機2cの冷水入口温度最小値の予測値T2in_a、及び吸収式冷凍機2cの負荷率の予測値L2_aに基づき軽負荷停止の条件判定を行っている。
【0085】
しかし、上述した条件判定に用いる各値は、熱源システム1の各熱源機2、ポンプ3及び外部負荷6の発停等による負荷もしくは冷水温度の計測値の変動に応じて過渡的に揺らぐ値である。
例えば、吸収式冷凍機2c、2d起動後の一定期間は、一般的に吸収式冷凍機2c、2dは能力を発揮するのに時間を要するため、上述した条件判定に用いる各値が変化し続ける。この変化中の値に基づいて軽負荷停止の条件判定を行うと、意図しない判断が行われる場合がある。この時システムCOPが低下するだけでなく、軽負荷停止に至る可能性がある。
【0086】
そこで、例えば吸収式冷凍機2cの軽負荷停止条件が(A)T2out_aが第2軽負荷停止閾値(a)以下であることである場合、本実施形態では、上述した条件判定に用いる各値が安定した値となってから、すなわちT2out_aが第2軽負荷停止閾値(a)より大きいという条件(図3のステップS303のYES)が一定期間満たされた場合にヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値の変更を行うものとする。
このように、軽負荷停止条件及び過負荷条件の条件判定に用いる各値が条件を一定期間満たした場合に、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの冷水出口温度の設定値の変更または戻しを行う。
【0087】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法及び熱源システムの制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
吸収式冷凍機2c、2dの軽負荷停止の条件判定に用いる各値(吸収式冷凍機2c、2dの冷水出口温度、吸収式冷凍機2c、2dの冷水入口温度、及び吸収式冷凍機2c、2dの負荷率)は、熱源システム1における各熱源機2、ポンプ3及び外部負荷6の変動に応じて過渡的に変化する値である。例えば、吸収式冷凍機2cの起動後の一定期間は能力を発揮するのに時間を要するため、前述の条件判定に用いる各値は値が変化し続ける。この変化中の値に基づいた前述の条件判定に用いる各値と第2軽負荷停止閾値とを用いて判定を行う場合、前述の条件判定に用いる各値は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム1全体のCOPが低下するだけでなく、軽負荷停止に至る可能性がある。
そこで、吸収式冷凍機2c、2dの前述の条件判定に用いる各値が第2軽負荷停止閾値より大きい期間が一定期間以上であった場合に冷水出口温度制御を行うものとする。これにより、前述の条件判定に用いる各値の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム1全体のCOPが向上し、軽負荷停止を回避することができる。
【0088】
また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの軽負荷停止及び過負荷の条件判定に用いる値である負荷率は、熱源システム1における各熱源機2、ポンプ3及び外部負荷6の変動に応じて過渡的に変化する値である。この過渡的に変化するヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率と第1軽負荷停止閾値とを用いて判定を行う場合、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率は過渡的な揺らぎを含むため正確な判定にはならない虞がある。過渡的な揺らぎを含む判定により不必要な制御が発生し、熱源システム1全体のCOPが低下するだけでなく、軽負荷停止に至る可能性がある。
そこで、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率が第1軽負荷停止閾値より大きい期間が一定期間以上であった場合に冷水出口温度制御を行うものとする。また、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率が第1過負荷閾値より小さい期間が一定期間以上であった場合に冷水出口温度制御を行うものとする。これにより、ヒートポンプ式冷凍機2a、2bの負荷率の過渡的な揺らぎを含む判定を回避することができる。また、熱源システム1全体のCOPが向上し、軽負荷停止を回避することができる。
過負荷運転を回避する場合も同様のことがいえる。
【0089】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
例えば、上述した各実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0090】
また、上述した各実施形態においては、ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dの設置台数及び組合せについては任意に決定することができる。
【0091】
また、上述した各実施形態においては、第1熱源機がヒートポンプ式冷凍機、第2熱源機が吸収式冷凍機であるとしたが、第1熱源機が熱源機の中でもCOPの高い熱源機であり、第2熱源機が第1熱源機よりもCOPの低い熱源機であれば、その種類は問わない。例えば、第1熱源機と第2熱源機の組合せは、電気熱源機と燃料系熱源機、大型ターボ冷凍機と小型ターボ冷凍機、可変速ターボ熱源機と固定速ターボ熱源機等が挙げられる。
【0092】
また、上述した各実施形態においては、ヒートポンプ式冷凍機2a、2b及び吸収式冷凍機2c、2dは、冷水を冷却するもの、すなわち冷熱出力の場合における説明としたが、冷水を加熱するもの、すなわち温熱出力の場合であってもよい。また、冷却機能と加熱機能とを兼ね備えるものであってもよい。また、冷水に代えて、ブラインなどの他の熱媒を冷却または加熱するシステムであってもよい。
温熱出力の場合は、例えば吸収式冷凍機2cの軽負荷停止条件において、吸収式冷凍機2cの冷水出口温度が一定値以上であることが軽負荷停止条件となるなど、温度の取り扱いが冷熱出力の場合の逆になる。
【符号の説明】
【0093】
1 熱源システム
2 熱源機
2a、2b ヒートポンプ式冷凍機
2c、2d 吸収式冷凍機
3 ポンプ
4 サプライヘッダ
5 リターンヘッダ
6 外部負荷
10a、10b、10c、10d 冷凍機制御装置
20 上位制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6