(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3スコアが、前記中間部との接続側から前記第2スコアとの接続側にかけて、残厚部の厚みを段階的に増加させて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶蓋。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は特許文献2に記載されるように、内容物を外部に注出する第1開口部とともに第2開口部を設けることにより、第1開口部の開口からの内容物の注出の際に第2開口部の開口から安定して空気を流入できるので、第1開口部において注出しようとする内容物と流入しようとする空気とが交差して脈動が生じることを防止でき、第1開口部から円滑に内容物を注出できる。また、第1開口部を画成する第1スコアに第2開口部を画成する第2スコアが連続して形成されていることから、開缶作業時は、一つのタブの操作により第1開口部と第2開口部とを開口させることができる。
【0007】
ところが、第1スコアに連続して第2スコアを形成した場合には、スコア全長が長くなることから、第1開口部に加えて第2開口部を開口させるためには、開缶作業時に大きな破断力が必要となり、開口性(開缶性)が悪くなる。一方で、開口部の良好な開口性を維持するために、スコアの残厚を小さく(薄く)することにより、開缶作業時の破断力の増加を抑制することが考えられるが、この場合には、缶内部の内圧が上昇してバックリングが発生した際にスコアの破断(スコア切れ)が生じたり、開口部のヒンジ切れが生じたりするおそれがある。また、スコアの破断が生じた場合には、缶内部の内容物の漏洩が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スコアの破断や内容物の漏洩の発生を防止できるとともに、開缶作業時に開口部を容易に開口させて開口性を高めることができ、内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出すことができる良好な注ぎ性を有する缶蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の缶蓋は、缶蓋本体と、該缶蓋本体に取り付けられるタブとを備え、前記缶蓋本体には、スコアにより画成された開口部と、前記缶蓋本体の上面中央部に突出して前記タブが取り付けられるリベットとが形成されており、前記スコアは、第1スコアと、第2スコアと、前記第1スコアと前記第2スコアとの間を接続する第3スコアとを有し、前記開口部は、前記第1スコアにより画成され、前記リベットの周辺部から前記缶蓋本体の上面周縁部に張り出した第1開口部と、前記第2スコアにより画成され、前記リベットを挟んで前記第1開口部と反対側の領域に張り出した第2開口部とを有し、前記缶蓋本体の上面の平面視において、前記リベットの中心を通り前記第1スコアの前記リベットから最も離れた位置を通る線をY軸とし、前記リベットの中心を通り前記Y軸に直交する線をX軸としたときに、前記第2スコアの終端が前記X軸を挟んで前記第1スコアと反対側の領域まで延伸され、前記第1スコアは、前記リベットの周辺部に形成された始端部と、前記缶蓋本体の径方向外方へ凸とされ前記第3スコアと接続される円弧形状の中間部とを有し、前記第3スコアは前記スコアが前記X軸に交差する点を含む位置に形成され、前記第3スコアの残厚部の厚みが前記中間部の残厚部の厚みよりも15%以上40%以下の範囲内で大きく形成され、前記第2スコアの残厚部の厚みが前記中間部の残厚部の厚み以上でかつ前記第3スコアの残厚部の厚み未満の大きさに形成され、前記第3スコアの長さが1.5mm以上5.0mm以下に形成されている。
【0010】
本発明の缶蓋では、開口部を、缶蓋本体の上面周縁部に張り出した第1開口部とともに、リベットを挟んで第1開口部と反対側の領域に張り出した第2開口部を有する構成とし、さらに第2開口部を画成する第2スコアの終端をX軸を挟んで第1スコアと反対側の領域まで延伸させたことで、第1開口部の開口から内容物を注出する際に、第2開口部の開口から安定して空気を流入できるので、脈動の発生を防止でき、第1開口部の開口から外部に内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出せる。
また、この缶蓋では、第1スコアと第2スコアとの間を接続する第3スコアの長さが1.5mm以上5.0mm以下で形成され、その第3スコアの残厚部の厚みが中間部よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく(厚く)形成されているので、タブの後端部を引き起こす第1操作により第1スコアを破断させて第1開口部を開口する際に、中間部よりもスコアの深さが浅い、すなわち残厚部の厚みが大きく形成された第3スコアにおいて破断の進行にブレーキをかけることができる。このように、第3スコアにおいて確実にスコアの破断が停止されることから、第1操作において第1開口部と第2開口部との間を確実に折り曲げて、第1開口部のみを開口させることができる。
そして、第2開口部は、第1開口部を開口した後(第1操作の後)、タブを起こした状態でタブをリベット回りに第2スコアの延伸方向に回す(第2操作を行う)ことにより、容易に開口できる。この際、第2スコアの残厚部の厚みが第3スコアよりも小さく(薄く)形成されているので、第2スコアの破断力を比較的低く維持でき、第2開口部を容易に開口できる。
なお、第3スコアの長さが1.5mm未満、すなわち1.5mmを下回ると、第1操作において、スコアの破断を第3スコアで確実に停止させることが難しくなる。一方、第3スコアの長さが5.0mmを超えると、第2操作において、第2スコアを破断させる際の抵抗が大きくなり、第2開口部を開口し難くなる。
また、第3スコアの残厚部の厚みと中間部の残厚部の厚みとの差分が中間部の残厚部の厚みの15%未満である場合も、第1操作においてスコアの破断を第3スコアで停止させることが難しくなる。そして、第3スコアの残厚部の厚みと中間部の残厚部の厚みとの差分が中間部の残厚部の厚みの40%を超える場合も、第2操作において、第2スコアを破断させる際の抵抗が大きくなり、第2開口部を開口し難くなる。
【0011】
このように、本発明の缶蓋では、タブの後端部を引き起こす第1操作と、タブをリベット回りに回動する第2操作とを組み合わせて、第1開口部と第2開口部とを開口させることにしており、第1操作において、第3スコアでスコアの破断の伝播を停止し、第1開口部と第2開口部との間を折り曲げて、第1開口部を開口させることから、第1操作におけるスコアの破断力を低く維持できる。
一方で、第2操作は、タブをリベット回りに回動することにより第2開口部を押圧し、第2スコアを引き裂くように作用させることから、中間部よりも浅く形成された第3スコアであっても(中間部よりも残厚部の厚みが厚く形成されていても)、容易に破断させることができる。また、このように第3スコアを中間部よりも浅く形成することにより、第2スコアを設けてスコア全長を長く形成しているにもかかわらず、缶蓋の耐圧強度の低下を抑制できる。したがって、缶内部の内圧が上昇してバックリングが発生した場合でも、スコアの破断や内容物の漏洩等が生じることを防止できる。
【0012】
本発明の缶蓋において、前記第2スコアの残厚部の厚みが、前記中間部の残厚部の厚みよりも大きく形成されているとよい。
【0013】
第2スコアの残厚部の厚みを中間部よりも大きく(厚く)形成することにより、缶蓋の耐圧強度の低下を抑制できる。したがって、第3スコアよりも第2スコアの残厚部の厚みを小さく形成して第2スコアの破断力を比較的低く維持し、第2スコアの良好な開缶性の向上を図ることができるとともに、第1スコアの中間部よりも第2スコアの残厚部の厚みを大きく形成することで、スコアの破断や内容物の漏洩等が生じることを確実に防止できる。
【0014】
本発明の缶蓋において、前記第3スコアが、前記中間部との接続側から前記第2スコアとの接続側にかけて、残厚部の厚みを段階的に増加させて形成されているとよい。
【0015】
第3スコアの残厚部の厚みを段階的に増加させて形成することで、その段差が変わるごとにスコア破断の進行に対して深くブレーキをかけることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1開口部と第2開口部とを備える開口部を有する缶蓋においても、スコアの破断や内容物の漏洩の発生を防止でき、開口部を円滑に開口させて良好な開缶性を維持でき、内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る缶蓋の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の缶蓋101は、例えば、飲料用等の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ方式の缶蓋であり、
図1に示すように、缶蓋本体1Aと、この缶蓋本体1Aに取り付けられたタブ2とにより構成される。これらの缶蓋本体1A及びタブ2は、それぞれアルミニウム合金により形成されている。
【0021】
缶蓋本体1Aは、
図1に示すように、略円板状のパネル部10と、このパネル部10の外周部に沿って下方に凸となるように設けられた環状のカウンターシンク部11とを備えている。パネル部10の上面には、凹状に形成されたパネルデボス12が設けられており、このパネルデボス12の底面であって、パネル部10(缶蓋本体1A)の中央部に、突出して形成されたリベット13が形成され、このリベット13にタブ2が取り付けられている。また、パネルデボス12の底面には、スコア3により画成された開口部8が形成され、この開口部8とは反対側(
図1では上側)に指かけ凹部14が設けられており、これらリベット13と指かけ凹部14との間には、ディンプルと称される凸部15が形成されている。
【0022】
リベット13は、パネル部10の上面をリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部10の中心部を上方に張り出させることによりパネル部10と一体に形成されている。
また、指かけ凹部14は、タブ2の後端部(引き上げ部22)に沿うようにして、その下方近傍に、パネルデボス12の底面の一部をさらに深く凹状にして形成されている。開封者は、指かけ凹部14から指をタブ2の後端部の下側に入れることができ、これにより後端部に指をかけて容易に引き上げることができる。
【0023】
スコア3は開口部8を画成しており、タブ2により開口部8を押圧してスコア3を破断させることで、開口部8を缶内部に押し込み、飲み口を開口する構成とされる。なお、スコア3の内側には、スコア3に隣接して平行に形成された補助スコア9が形成されており、スコア3の始端部31及び終端部39で、スコア3と補助スコア9とが接続されている。補助スコア9は、スコア3よりも浅く形成されており、タブ2の押圧によっては破断されない構成となっている。
【0024】
そして、スコア3は、
図3に示すように、第1スコア4と、第2スコア5Aと、これら第1スコア4と第2スコア5Aとの間を接続する第3スコア6とを有する構成とされ、開口部8は、第1スコア4により画成される第1開口部81と、第2スコア5Aにより画成される第2開口部82とから構成されている。このうち第1開口部81は、リベット13の周辺部から缶蓋本体1Aの上面周縁部に張り出して形成され、第2開口部82は、リベット13を挟んで第1開口部81と反対側の領域に張り出して形成される。
【0025】
第1スコア4は、
図3に示すように、リベット13の周辺部に形成され補助スコア9の始端部と接続される始端部31と、リベット13をほぼ半分囲む円弧状の凹円弧部32と、缶蓋本体1Aの径方向外方へ凸とされ第3スコア6と接続させる円弧形状の中間部33とを有し、
図3の下側部分のハッチングで示したように、第1開口部81を画成している。また、第1開口部81は、第1スコアの始端部31と中間部33に連続して形成される第3スコア6との間に、
図3に破線で示したように、第1ヒンジ部C1を一部残して形成される。第1スコア4を構成する始端部31、凹円弧部32、中間部33、及び第3スコア6は、それぞれ、互いが接続される端点において接線を共有して緩やかに接続されている。
なお、凹円弧部32は、リベット13周囲のコイニングにより押しつぶされたリング状印圧部分に形成され、タブ2により開口部8を押圧した際の初期破断部となる。
【0026】
第3スコア6は、
図1及び
図3に示すように、缶蓋本体1Aの上面の平面視において、リベット13の中心O1を通り第1スコア4のリベット13から最も離れた位置(缶蓋本体1Aの最外周位置の点P1)を通る線をY軸とし、リベット13の中心O1を通り第1スコア4のY軸に直交する線をX軸としたときに、スコア3がX軸に交差する点Q1を含む位置に形成され、その長さL(
図4参照)が1.5mm以上5.0mm以下に設けられている。また、第3スコア6は、第1スコア4の中間部33よりも深さが浅く形成されており、
図4に示すように、第3スコア6(一段目34a,二段目34b)の残厚部の厚みE31,E32が、それぞれ中間部33の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく(厚く)形成されている。このため、タブ2の後端部を引き起こす第1操作により第1スコア4を破断させて第1開口部81を開口する際に、この残厚部の厚みが大きく形成された第3スコア6において破断の進行にブレーキがかけられることで、スコア3の破断が停止されるようになっている。
【0027】
なお、第3スコアの全体の長さLが1.5mm未満、すなわち1.5mmを下回ると、第1操作において、スコア3の破断を第3スコア6で確実に停止させることが難しくなる。一方、第3スコア6の長さLが5.0mmを超えると、スコア3の破断を第3スコアで停止させることはできるが、第2スコア5Aを破断させる第2操作の際に抵抗が大きくなり、第2開口部82を開口し難くなる。
【0028】
また、第3スコア6の残厚部の厚みE31,E32と中間部33の残厚部の厚みE11との差分が中間部33の残厚部の厚みE11の15%未満である場合も、第1操作においてスコア3の破断を第3スコア6で停止させることが難しくなる。そして、第3スコア6の残厚部の厚みE31,E32と中間部33の残厚部の厚みE11との差分が中間部33の残厚部の厚みE11の40%を超える場合は、第2操作において、第2スコア5Aを破断させる際の抵抗が大きくなり、第2開口部82を開口し難くなる。
【0029】
なお、
図5(a)に第1スコア4の中間部33の横断面、(b)に第3スコア6の一段目34aの横断面を示したように、スコア3は刃底に向かうにしたがって開口幅が狭くなる左右対称の逆台形状に形成されており、両側面部の開き角度αは例えば50°に形成される。また、スコア3は、第1スコア4の始端部31から凹円弧部32、中間部33、第3スコア6、第2スコア5Aの延伸部38、終端部39にかけて両側面の一部分が連続して形成されており、刃底の高さを変更することにより、各位置におけるスコア3の深さが設定されている。
【0030】
また、この缶蓋101では、
図4に示すように、第3スコア6が、中間部33との接続側から第2スコア5A(延伸部38)との接続側にかけて、残厚部の厚みを段階的に増加させた形状に形成されている。
図4に示す例では、第3スコア6は、中間部33よりも浅く形成された一段目34aと、一段目34aよりもさらに浅く形成された二段目34bとで構成されており、一段目34aの残厚部の厚みE31よりも二段目34bの残厚部の厚みE32の方が大きく形成されている。これにより、第3スコア6では、中間部33から一段目34a、一段目34aから二段目34bというように、段差が変わるごとに、スコア3の破断の進行に対して深くブレーキがかけられるようになっている。
なお、
図4に示す例では、第3スコア6を構成する一段目34aと二段目34bとが同じ長さ(均等)に設けられているが、これらを合算した第3スコア6の長さLを1.5mm以上5.0mm以下で設けることができれば、段差ごとに長さを変更することも可能である。
【0031】
そして、第1ヒンジ部C1は、第1操作による第1開口部81の開口時に折り曲げられる部分であり、
図3に示すように、始端部31の破断到達点と第3スコア6の破断到達点とを結ぶようにして形成される。このため、第1ヒンジ部C1の位置は、始端部31と第3スコア6とがどこまで破断されるかによってわずかに変動する。
【0032】
第2スコア5Aは、
図3に示すように、第3スコア6に連続して形成され、リベット13の反対側の領域に延伸する延伸部38と、補助スコア9の終端部と接続される終端部39とで構成され、第3スコア6と延伸部38、延伸部38と終端部39とは、直線又は曲率半径の大きな湾曲線で形成されており、互いが接続される端点において接線を共有して緩やかに接続されている。また、第2スコア5Aは、
図1に示すように、缶蓋本体1A(パネル部10)の上面の平面視において、第2スコア5A(スコア3)の終端が、X軸を挟んで第1スコア4と反対側の領域まで延伸されている。そして、第2スコア5Aは、リベット13の中心O1とスコア3の終端部(第2スコア5Aの終端部39)との間に破線で示したように第2ヒンジ部C2を一部残して形成され、
図3の上側部分のハッチングで示したように、第1開口部81に連続した第2開口部82を画成している。
【0033】
第2ヒンジ部C2は、タブ2を回動させる第2操作による第2開口部82の開口時に折り曲げられる部分であり、
図3に示すように、終端部39の破断到達点とリベット13の中心O1とを結ぶようにして形成される。このため、第2ヒンジ部C2の位置は、終端部39がどこまで切断されるかによってわずかに変動する。
【0034】
また、第2スコア5A(延伸部38及び終端部39)は、中間部33の深さ以下でかつ第3スコア6よりも深く形成される。つまり、第2スコア5Aの残厚部の厚みE21は、中間部33の残厚部の厚みE11以上でかつ第3スコア6の残厚部の厚み(ここでは最も厚みがある二段目E32の厚み)未満の大きさに形成される。このように、第3スコア6を所定の厚み、長さで、中間部33よりも浅く(残厚部の厚みを大きく)形成することにより、第2スコア5Aを設けてスコア3の全長を長く形成しているにもかかわらず、缶蓋101の耐圧強度の低下を抑制できる。
なお、
図4に示す場合では、第2スコア5A(延伸部38)は第3スコア6(一段目34a,二段目34bの両方)よりも深く形成されており、また中間部33より浅く形成されている。つまり、第2スコア5Aの残厚部の厚みE21は、第3スコア6の残厚部の厚みE31,E32よりも小さく、かつ中間部33の残厚部の厚みE11よりも大きく形成されている。このように、第3スコア6よりも第2スコア5Aの残厚部の厚みを小さく形成することにより、第2スコア5Aの破断力を比較的低く維持できるので、第2開口部82を容易に開口できる。
【0035】
なお、本実施形態の缶蓋101では、
図3に示すように、缶蓋本体1Aの平面視において、Y軸と第1スコア4(第1開口部81)とが交わる2つの交点P1,P2の中間位置O2を基準として、第1スコア4の先端の交点P2と相対する方向を0時(交点P1の方向)とすると、第3スコア6は約10時半の位置に長さLが3mmで形成されている。そして、第1スコア4の残厚部の厚みは、中間部33の3時〜10時の位置(厚みE11)で0.085mm〜0.100mmとされ、第3スコア6の残厚部の厚み(厚みE31,E32)は0.100mm〜0.125mmとされ、第3スコア6の残厚部の厚みE31,E32が、中間部33の3時〜10時の部分の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きくなるように設定されている。また、タブ2の先端部側において第1スコア4とが重なる位置(交点Q2)の残厚部の厚みは、その前後の残厚部の厚みよりも大きくなるように設定されている。
【0036】
また、第2スコア5Aの残厚部の厚みE21は、延伸部38が0.100mm〜0.110mmとなるように設定されており、第2スコア5Aの延伸部38及び終端部39の残厚部の厚みは、第3スコア6よりも小さく形成されるが、中間部33の3時〜10時までの間よりも大きく形成されている。
【0037】
また、この缶蓋101では、リベット13の中心O1からタブ2の幅方向(X軸方向)の側端部(点U1)までの距離をAとし、X軸上のリベット13の中心O1からスコア3(この場合、第3スコア6)までの距離をBとした場合に、距離Aが距離Bよりも小さく形成され、スコア3がタブ2の幅方向の側端部(点U1)よりもリベット13の中心O1から離れて配置されている。
【0038】
この場合において、距離Bと距離Aとの差分(B−A)は、0.3mm以上3.0mm以下に形成されているとよい。差分(B−A)が大きくなるほど、スコア3とタブ2とが離れて配置されることになるので、差分(B−A)を0.3mm以上とすることで、タブ2とスコア端面との接触を確実に回避でき、円滑に第2開口部82を開口できる。また、差分(B−A)を3.0mm以下とすることで、スコア3の位置を、タブ2と開口部8(第1開口部82及び第2開口部82)とが接触する作用点から近い位置に配置できるので、開缶作業時に必要なスコア3(第2スコア5A)の破断力を比較的小さくでき、良好な開口性を確保できる。なお、差分(B−A)を3.0mmを超える大きさとした場合、スコア3の位置がタブ2と開口部8とが接触する作用点から遠くなるため、開缶作業時に大きな破断力が必要となり、開口性が悪くなる。
【0039】
また、第1スコア4により画成される第1開口部81は、
図1及び
図3に示すように、缶蓋本体1Aの上面の平面視において、Y軸上の開口長さをH(Y軸と第1スコア4との交点P1,P2間の距離)とし、X軸に平行な最大幅をWとした場合に、最大幅Wと開口長さHとの比率(W/H)が0.7以上1.4以下となる大きさに形成されている。このように、第1開口部81は、最大幅Wが開口長さHと同じ程度に形成され、比較的幅狭の形状に形成されているので、第1開口部81の開口から注出される内容物の流れの幅を細く整えることができる。この場合において、最大幅Wと開口長さHとの比率(W/H)は、1.2以下に設けることが望ましい。第1開口部81を、比率(W/H)が0.7以上1.2以下となる大きさに制限することで、より安定した注ぎ性が得られる。
【0040】
なお、比率(W/H)が1.4を超えると、第1開口部81の開口が幅広となるので、多量の内容物が幅広の第1開口部81から勢いよく注出されることにより、容器から内容物の一部が外れて内容物をこぼす可能性がある。また、第1開口部81の開口から内容物を直接飲用する際に、内容物の一部が口元から外れてこぼれる可能性もある。一方、比率(W/H)が0.7未満となると、第1開口部81の開口面積が小さくなり、第1開口部81の開口からの内容物の注出量を十分に確保することが難しくなる。
【0041】
また、開口部8上には、補強のためにスコア3及び補助スコア9に沿うようにして上面から突出したインナービード41,42が形成されている。インナービード41,42は、第1ヒンジ部C1及び第2ヒンジ部C2を除く部分に形成することが好適である。第1開口部81上に形成されたインナービード41は、第1開口部81の中心付近(点O2付近)を囲むようにして、第1スコア4の中間部33に沿った、また缶蓋本体1Aの径方向外方に沿った凸形状とされている。また、インナービード41と同じく第1開口部81上に形成されたインナービード42は、第3スコア6に近い位置でスコア3に沿って形成されている。
【0042】
また、リベット13と指かけ凹部14との間に形成された凸部15は、リベット13(Y軸)を挟んで第2開口部82と反対側の領域に形成されている。凸部15は、パネルデボス12の底面に突出しており、
図1に示すようにタブ2を引き上げる前の状態では、タブ2の外側縁部の下面が凸部15に引っかかることで、タブ2がリベット13回りに回転移動することが防止される。
【0043】
タブ2は、前述したようにリベット13に取り付けられており、タブ本体2の一端部に、タブ2の長手方向を缶蓋本体1AのY軸と平行に配置したときに第1開口部81の上方に重なって配置される押圧部21が形成され、リベット13(X軸)を挟んだ反対側に配置される他端部に、引き上げ部22が形成されている。
図1及び
図3に示すように、押圧部21は円弧状に形成されており、この押圧部21と引き上げ部22との間に、U字状のスロット23によりタング部24が形成され、タング部24にリベット孔(図示略)が形成されている。そして、リベット孔にリベット13が挿入され、タング部24の下面をパネルデボス12(缶蓋本体1A)の上面に当接させた状態で、タブ2が缶蓋本体1Aに取り付けられている。また、タブ2の引き上げ部22には、タブ2の厚み方向に開口するタブホール部25が形成されている。
【0044】
次に、このように構成される缶蓋101において、開口部8を開口する方法について説明する。
(第1操作)
まず、タブ2の押圧部21を第1開口部81に重ねた状態(
図1の状態)で、タブ2の引き上げ部22を引き上げる第1操作を行う。タブ2の引き上げ部22が引き上げられると、タブ2の押圧部21が第1開口部81の上面に当接し、押圧部21が支点となってリベット13が上方に持ち上げられる。このとき、第1スコア4の凹円弧部32の第1開口部81側の部分はタブ2により押さえられた状態であり、凹円弧部32のリベット13側の部分が上方に持ち上げられることで、凹円弧部32にせん断力が作用して破断する(ポップ動作)。なお、第1開口部81はインナービード41により補強されており、変形が抑制されていることから、凹円弧部32に確実にせん断力を作用させることができ、円滑に破断させることができる。
【0045】
そして、さらにタブ2の引き上げ部22を持ち上げていくと、リベット13が支点、タブ2の押圧部21が作用点となり、第1スコア4に囲まれた第1開口部81がタブ2により缶内部に押し込まれながら第1スコア4が順次破断して、第1開口部81を周回するように開口する(ティア動作)。そして、スコア3の破断が第3スコア6に到達すると、中間部33よりも残厚部の厚みが大きく形成された第3スコア6において確実にブレーキがかけられ、スコア3の破断進行が停止される。次いで、第3スコア6の破断停止点に応力が集中し、第3スコア6と始端部31との連結部分の第1ヒンジ部C1が折り曲げられる。そして、第1開口部81が缶内部に押し込まれることで、
図6(a)に示すように、第1開口81oが開口する。
【0046】
(第2操作)
その後、
図6(a)に矢印Tで示すように、タブ2を起こした状態(缶蓋本体1Aの上面に対して略垂直に立ち上げた状態)を維持したまま、リベット13回りに第2スコア5Aの延伸方向(時計回りT方向)に回動させてねじる第2操作を行うことにより、第2スコア5Aとリベット13との間の第2開口部82をタブ2の側端部により押圧する。このとき、リベット13の中心O1からタブ2の側端部(点U1)までの距離Aが、リベット13の中心O1からスコア3(ここでは、第1スコア4)の距離Bよりも小さく形成されているので、タブ2を起こした状態で回転させても、破断されたスコア端面にタブ2が接触することを回避できる。このタブ2の回動に伴い、
図6(b)に示すように、第2開口部81が缶内部に押し下げられるとともに、第2スコア5Aが引き裂かれ、第2スコア5Aの延伸部38から終端部39に向けて順次破断が進行し、第2ヒンジ部C2が折り曲げられる。そして、第2開口部82が缶内部に押し込まれ、リベット13を挟んで第1開口81oと反対側の領域に第2開口82oが開口する。
【0047】
また、第2操作により、第2開口部82に第1ヒンジ部C1を介して接続された第1開口部81がさらに缶内部に押し込まれることで、第1開口部81の第1開口81oから外部に臨む部分の面積が小さくなる。このように、第1操作による第1スコア4の破断後に、第2操作により第2スコア5Aを続けて破断させることで、X軸(リベット13)を挟んだ第1開口部81と反対側の領域に、第1開口部81に続いて第2開口部82が開口させられ、第1開口部81の開口面積S1と第2開口部82の開口面積S2とを有する開口80oが形成される。
【0048】
そして、第2スコア5Aを破断させて開口部8を開口させた後、
図6(c)に示すように、タブ2を元の位置に戻す。
なお、第1スコア4を破断させて第1開口部81(第1開口81o)を開口させた後、タブ2を回動させることなく元の位置に倒して開栓前の状態に戻した場合には、第2開口部82を開口させることなく、第1開口部81のみを開口させた状態を維持できる。このように、缶蓋101では、第3スコア6が存在するので、開口部8の開口を完全開口(開口80o)の前に一度止めることができ、タブ2の操作により、通常開口(第2スコア5Aが無い通常の缶蓋において開く領域のみの開口であり、本実施形態でいう第1開口81oに相当する開口)と、完全開口(第2開口82oまで開いた開口80o)とを、消費者が選択することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の缶蓋101では、缶蓋本体1Aの上面に、第1スコア4と第2スコア5Aとにより画成された開口部8(第1開口部81及び第2開口部82)が、第2ヒンジ部C2により接続されており、第1操作の後にタブ2をリベット13回りに回動させる第2操作によって第1スコア4及び第3スコア6に連続して第2スコア5Aを破断させたときには、第2開口部82とともに第1開口部81が缶内部に押し込まれることで、缶蓋本体1Aには、第1開口部81と第2開口部82とからなる開口部8が開口し、開口面積の大きな開口80oが形成されるようになっている。そして、第2開口部82を画成する第2スコア5Aの終端をリベット13(X軸)を挟んで第1スコア4と反対側の領域まで延伸させたことで、第1開口部81の第1開口81oから内容物を注出する際に、第2開口部82の第2開口82oから安定して空気を流入できるので、脈動の発生を防止でき、第1開口81oから外部に内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出せる。
【0050】
また、缶蓋101においては、開口部8を第1開口部81と第2開口部82とで構成し、それぞれ第1ヒンジ部C1と第2ヒンジ部C2とを順に折り曲げて開口部8の開口80oを開口する構成としているので、最初に開口させた第1開口部81を、第2開口部82の開口とともに缶内部に深く折り込むことができる。これにより、第1開口部81の第1開口81oに開口部8が被さって開口から外部に臨む部分を小さくできる。したがって、缶を傾けて第1開口部81の第1開口81oから内容物を外部に向けて流出する際に、開口部8が障害となって脈動を発生させることを回避でき、第1開口部81の第1開口81oから外部に内容物を円滑に注ぎ出せる。
【0051】
また、この缶蓋101では、タブ2を引き起こす第1操作と、タブ2をリベット13回りに回動する第2操作とを組み合わせて、第1開口部81と第2開口部82とを開口させることにしており、第1操作において、第3スコア6でスコア3の破断の伝播を確実に停止し、第1開口部81と第2開口部82との間を折り曲げて、第1開口部81を開口させることから、第1操作におけるスコア3(第1スコア4)の破断力を低く維持できる。
【0052】
一方で、第2操作は、タブ2をリベット13回りに回動することにより第2開口部82を押圧し、第2スコア5Aを引き裂くように作用させることから、中間部33よりも浅く形成された第3スコア6や第2スコア5Aであっても、すなわち、中間部33よりも残厚部の厚みが大きく形成されていても、容易に破断させることができる。また、第3スコア6の残厚部の厚みE31,E32よりも第2スコア5Aの残厚部の厚みE21を小さく形成することで、第2スコア5Aの破断力を比較的低く維持でき、第2開口部82の開缶性の向上を図ることができる。
そして、このように、第2スコア5Aを第3スコア6よりも深く形成するとともに、中間部33よりも浅く形成した場合には、第2スコア5Aを設けてスコア3の全長を長く形成しているにもかかわらず、缶蓋101の耐圧強度の低下を抑制できる。したがって、缶内部の内圧が上昇してバックリングが発生した場合でも、スコア3の破断や内容物の漏洩等が生じることを防止できる。
【0053】
なお、上記第1実施形態の缶蓋101では、第2スコア5Aを比較的短く形成し、終端部39を延伸部38に連続した直線又は緩やかな湾曲線で形成していたが、延伸部38及び終端部39の形状は、これに限定されない。例えば、
図7及び
図8に示す第2実施形態の缶蓋102(缶蓋本体1B)のように、第2スコア5Bの全長を長く形成する場合には、第2スコア5Bの終端部39を湾曲させ、タブ2の背面領域の範囲内において形成するとよい。具体的には、終端部39を、パネル部10のリベット2と指かけ凹部14との間の領域に形成し、可能な限りリベット2に近づけて形成するとよい。
なお、タブ2は、第1実施形態と同じものであり、
図7及び
図8において、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
この第2実施形態の缶蓋102においても第1実施形態の缶蓋101と同様に、第3スコア6の長さを1.5mm以上5.0mm以下で形成し、第3スコア6の残厚部の厚みを中間部33の残厚部の厚みよりも15%以上40%以下の範囲内で大きく形成することで、第1操作により第1スコア4を破断させて第1開口部81を開口する際に、中間部33よりもスコア3の深さが浅い、すなわち残厚部の厚みが大きく形成された第3スコア6において確実にスコア3の破断を停止でき、第1開口部81と第2開口部82との間を確実に折り曲げて、第1開口部81を開口させることができる。
そして、第2開口部82は、第1開口部81を開口した後(第1操作の後)、タブ2を起こした状態でタブ2をリベット13回りに第2スコア5Bの延伸方向に回す(第2操作を行う)ことにより、容易に開口できる。
【0055】
なお、第2実施形態の缶蓋102のように、第2開口部82の開口面積S2を大きくするには、第2スコア5Bの全長を長くする必要があるが、第2スコア5Bの全長が長くなり、終端部39の位置がリベット2の中心O1から遠くなる程に、第2スコア5Bの位置とタブ2による第2開口部82の押圧部分との距離が離れる(遠くなる)ため、第2スコア5Bを破断する際に必要な破断力が増加する傾向がある。この点、第2実施形態の缶蓋102のように、第2スコア5Bの終端部39を、リベット2から大きく離さずに曲げて形成することで、タブ2を回動させる際に、第2スコア5Bの位置とタブ2による第2開口部82の押圧部分との距離を大きく増加させることなく形成できる。したがって、第2スコア5Bの開缶作業時において必要な第2スコア5Bの破断力を増加させることがなく、タブ2を回動させる際に指に大きな負担がかかることを回避できるので、開口面積S2の大きな第2開口部82を確実に開口できる。
【0056】
また、第2スコア5Bの終端部39を、パネル部10の周縁部に近くまで形成すると、缶蓋102の耐圧強度の低下を招きやすい。そこで、終端部39の形成位置をリベット2の周辺領域に留めておくことにより、缶蓋102の耐圧強度の低下を回避できる。
さらに、第2実施形態の缶蓋102のように、第2スコア5Bの形成範囲を、タブ2の背面領域の範囲内に収めることで、第2スコア5Bの全長を長くして、第2開口部82の開口面積S2を大きく形成した場合であっても、第2開口部82の開口部分をタブ2の背面に隠すことができるので、外観を損ねることを回避できる。
【0057】
次に、
図9に示す本発明の第3実施形態の缶蓋103について説明する。
この第3実施形態の缶蓋103では、
図9及び
図10に示すように、スコア3が、第1スコア4と、この第1スコア4に連続して形成される第2スコア5Cとを有する構成とされる。そして、第2スコア5Cは、
図9に示すように、スコア3がX軸に交差する点を含む位置に形成され、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22が第1スコア4の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく(厚く)形成される。
なお、第3実施形態の缶蓋103において、タブ2等の一部の構成は第1実施形態と同じものであり、
図9及び
図10において、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
この缶蓋103では、タブ2の後端部を引き起こす第1操作により第1スコア4を破断させて第1開口部81を開口する際に、第1スコア4の中間部33よりもスコアの深さが浅い、すなわち残厚部の厚みが大きく形成された第2スコア5Cにおいて、スコア3の破断の進行にブレーキをかけることができる。そして、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22を第1スコア4の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく(厚く)形成したことで、第1スコア4の中間部33に連続する第2スコア5Cの前半部分(第2スコア5Cの始端から長さN=5mmの範囲内)において確実にスコア3の破断を停止できる。このため、第1操作において、第1開口部81を第2開口部82との間を確実に折り曲げて、第1開口部81を開口させることができる。なお、第1ヒンジ部C1の前半部分の長さNの範囲と第1スコア4の始端部31との連結部分に形成される。
【0059】
そして、第2開口部82は、第1開口部81を開口した後(第1操作の後)、タブ2を起こした状態でタブ2をリベット13回りに第2スコア5Cの延伸方向に回す(第2操作を行う)ことにより、容易に開口できる。このとき、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22は、中間部33の残厚部の厚みE11の15%以上40%以下の範囲内において大きく形成されているので、第2スコア5Cの破断力が極端に高くなることが回避できるとともに、第2スコア5Cの破断力を比較的低く維持できるので、第2開口部82を容易に開口できる。また、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22を中間部33の残厚部の厚みE11の15%以上40%以下の範囲内において大きく形成したことにより、第2スコア5Cを設けてスコア3の全長を長く形成しているにもかかわらず、缶蓋103の耐圧強度の低下を抑制できる。したがって、缶内部の内圧が上昇してバックリングが発生した場合でも、スコア3の破断や内容物の漏洩が生じることを防止できる。
【0060】
なお、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22と中間部33の残厚部の厚みE11との差分が中間部33の残厚部の厚みE11の15%未満である場合は、第1操作において、スコア3の破断を第2スコア5Cの前半部分(長さN)で停止させることが難しくなる。また、缶蓋103の耐圧強度が低下し、バックリングが発生した際にスコア3の破断等が生じるおそれがある。そして、第2スコア5Cの残厚部の厚みE22と中間部33の残厚部の厚みE11との差分が中間部33の残厚部の厚みE11の40%を超える場合は、第2操作において、第2スコア5Cを破断させる際の抵抗が大きくなり、第2開口部82を開口し難くなる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明する。
下記の表1に示す条件の缶蓋(公称径206、成形前の元板厚0.280mm)を作製し、これらの缶蓋について、開口性能(開口性)と耐圧性能を評価した。また、表1のNo.1〜8の缶蓋については、スコアを第1スコアと第2スコアと第3スコアとで構成し、各寸法は、
図3に示す寸法に対応したものである。そして、表2のNo.9〜11の缶蓋については、スコアを第1スコアと第2スコアとで構成し、各寸法は、
図10に示す寸法に対応したものである。また、No.1の缶蓋においては第3スコアを二段階の深さで形成し、中間部に接続される一段目の前半部と、第2スコアに接続される二段目の後半部とを、それぞれ第3スコアの全長Lの半分(1.5mm)の長さで形成した。なお、No.2〜8の缶蓋においては第3スコアを複数の段差で形成することなく一段で形成したことから、表1の「二段目」の欄は「―」で表した。
【0062】
(開口性能)
各缶蓋を固定した状態でタブの引き上げ部を強制的に引き上げた後、リベット回りにタブを時計回りに回動して、第1開口部と第2開口部とを順に開口させ、開口性能を確認した。
開口性能の確認は、表1又は表2に示す条件の缶蓋ごとに50個実施した。そして、タブを引き上げる第1操作をした際に、No.1〜8については第3スコア、No.9〜11については第2スコアの前半部分の長さN=5mmの範囲内で破断が停止しない缶蓋が50個中1個でもあった場合、又は第1操作の後にタブを回動する第2操作をした際に、スコア(第2スコア)の終端まで開缶しない半開缶の缶蓋が50個中1個でもあった場合の、いずれかであった場合を「×」と評価した。また、50個の缶蓋すべてが、第1操作においてNo.1〜8については第3スコア、No.9〜11について第2スコアの前半部分の長さN=5mmの範囲内で破断が停止し、第1操作後の第2操作においてスコアの終端まで開口できた場合を「○」と評価した。
【0063】
(耐圧性能)
耐圧性能の評価は、空の缶体に各缶蓋を巻き締めた状態とし、缶体を中間位置で切断した後、有限会社フローリスエンタープライズ製の耐圧試験装置を使用して、100kPa/30秒の昇圧速度で水圧をかけて、缶蓋の一部が部分的に突出する角出しと呼ばれるバックリング現象やスコア割れが生じたときの圧力を測定する耐圧試験により行った。そして、700kPaまでバックリングやスコア割れが生じなかったものを良品「○」とし、バックリングやスコア割れが生じたものを「×」と評価した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表3からわかるように、第3スコアの残厚部の厚みE31,E32を中間部の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく形成するとともに、第3スコアの長さLを1.5mm以上5.0mm以下に形成した缶蓋(No.1〜3,6)では、第1操作において第3スコアでスコアの破断を停止でき、また、第1操作後の第2操作においてスコアの終端まで確実に破断でき、良好な開口性能が得られた。また、これらの缶蓋については、第2スコアの延伸部の残厚部の厚みE21が、中間部の残厚部の厚みE11以上に形成されており、耐圧試験において良好な耐圧性能を発揮できた。 一方、第3スコアの残厚部の厚みE31を中間部の残厚部の厚みE11よりも15%未満の範囲内で大きくした缶蓋(No.5)では、第1操作におけるスコアの破断の進行に対するブレーキのかかりが浅く、第3スコアにおいてスコアの破断を停止させることができなかった。また、第3スコアの残厚部の厚みE31を中間部の残厚部の厚みE11よりも40%を超える範囲内で大きくした缶蓋(No.4)では、スコアの終端まで開缶させることができずに、半開缶となった。そして、第3スコアの長さLを1.5mm未満に形成した缶蓋(No.7)では、第1操作において、スコアの破断を第3スコアで停止させることができなかった。また、第3スコアの長さLが5.0mmを超える缶蓋(No.8)では、第2操作において、スコアの終端まで開缶させることができずに、半開缶となった。
【0068】
また、第2スコアの残厚部の厚みE22を中間部の残厚部の厚みE11よりも15%以上40%以下の範囲内で大きく形成した缶蓋(No.9)については、第1操作において第2スコアの長さN=5mmの範囲でスコアの破断を停止でき、また、第1操作後の第2操作においてスコアの終端まで確実に破断でき、良好な開口性能が得られた。また、このNo.9缶蓋については、耐圧試験において良好な耐圧性能を発揮できた。
一方、第2スコアの残厚部の厚みE22を中間部の残厚部の厚みE11よりも15%未満の範囲内で大きくした缶蓋(No.11)では、第1操作において第2スコアの長さN=5mmの範囲でスコアの破断を停止させることができなかった。また、第2スコアの残厚部の厚みE22を中間部の残厚部の厚みE11よりも40%を超える範囲内で大きくした缶蓋(No.10)では、スコアの終端まで開缶させることができずに、半開缶となった。
以上の結果から、No.1〜3,6,9の缶蓋のようにスコアの残厚部の厚みや長さを調整することにより、スコアの開口性能(開缶性)の向上を図ることができるとともに、良好な耐圧性能を維持できる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。