特許第6772044号(P6772044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特許6772044タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置
<>
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000002
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000003
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000004
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000005
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000006
  • 特許6772044-タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772044
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】タイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20201012BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20201012BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-231014(P2016-231014)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-86780(P2018-86780A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 正徳
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−088471(JP,A)
【文献】 特開2007−190808(JP,A)
【文献】 特開2010−241017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫成型後のタイヤの一対のビード部を一対のリムによって保持する工程と、
前記一対のリムの間に配置されている径方向に拡縮可能な円環状のプレートを縮径状態から拡径状態とすることで、前記プレートの外周面によって前記タイヤのトレッド部の内周面を支持するとともに、前記プレートの両面にそれぞれ固定されているブラダーを膨張させることで、前記ブラダーによって前記タイヤのサイド部の内面を支持する工程と、を含むタイヤのポストキュアインフレーション方法。
【請求項2】
前記ビード部は、前記タイヤのタイヤ軸が水平となるように保持されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤのポストキュアインフレーション方法。
【請求項3】
前記リム及び前記プレートを回転駆動して前記タイヤを回転させながら冷却する工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤのポストキュアインフレーション方法。
【請求項4】
加硫成型後のタイヤの一対のビード部を保持する一対のリムと、
前記一対のリムの間に配置され、径方向に拡がることで外周面によって前記タイヤのトレッド部の内周面を支持する円環状のプレートと、
前記プレートの両面にそれぞれ固定され、膨張することで前記タイヤのサイド部の内面を支持するブラダーと、を備えるタイヤのポストキュアインフレーション装置。
【請求項5】
前記プレートは、周方向に分割された複数のセグメントで構成されており、
前記セグメントが径方向内側へ向かって移動することで、前記プレートの外径が前記タイヤのビード部の内径よりも小さくなり、前記セグメントが径方向外側へ向かって移動することで、前記プレートの外径が前記タイヤのトレッド部の内径と同じとなることを特徴とする請求項4に記載のタイヤのポストキュアインフレーション装置。
【請求項6】
前記リムは、前記タイヤのタイヤ軸が水平となるように前記ビード部を保持することを特徴とする請求項4又は5に記載のタイヤのポストキュアインフレーション装置。
【請求項7】
前記リム及び前記プレートは、前記タイヤとともにタイヤ軸周りに回転可能であることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のタイヤのポストキュアインフレーション装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫成型後のタイヤを内側から内圧を加えた状態で冷却するタイヤのポストキュアインフレーション方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造方法において、未加硫タイヤを加硫成型した後、加硫されたタイヤにポストキュアインフレーションを行うことが知られている(例えば下記特許文献1〜3)。ポストキュアインフレーションは、モールドから取り出した高温のタイヤを内側から内圧を加えた状態で冷却する処理であり、タイヤに埋設された補強コードの収縮を抑えてタイヤの変形を防止しながら冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−241017号公報
【特許文献2】特開2010−12658号公報
【特許文献3】特開2008−137286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポストキュアインフレーションにおいて、従来のエアにより内圧を加える方法ではタイヤの成長がばらつき、ユニフォミティが悪化し、又は目標とする外径や総幅が得られないことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、タイヤの成長のばらつきを抑制できるタイヤのポストキュアインフレーション方法及びポストキュアインフレーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0007】
すなわち、本発明のタイヤのポストキュアインフレーション方法は、加硫成型後のタイヤの一対のビード部を一対のリムによって保持する工程と、
前記一対のリムの間に配置されている径方向に拡縮可能な円環状のプレートを縮径状態から拡径状態とすることで、前記プレートの外周面によって前記タイヤのトレッド部の内周面を支持するとともに、前記プレートの両面にそれぞれ固定されているブラダーを膨張させることで、前記ブラダーによって前記タイヤのサイド部の内面を支持する工程と、を含むものである。
【0008】
この構成によれば、ポストキュアインフレーションを行う際、タイヤのトレッド部の内周面をプレートによって支持するため、トレッド部に不要な成長が発生するのを防ぎ、サイド部の内面をブラダーによって支持するため、サイド部には適切なテンションをかけることができる。その結果、本発明によれば、タイヤの成長のばらつきを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記ビード部は、前記タイヤのタイヤ軸が水平となるように保持されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、タイヤの左右のサイド部にかかるテンションを同じにすることができるため、タイヤの左右の形状を同じとしてユニフォミティを向上できる。
【0011】
本発明において、前記リム及び前記プレートを回転駆動して前記タイヤを回転させながら冷却する工程を備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、タイヤの周方向での重量アンバランスを解消できる。
【0013】
また、本発明のタイヤのポストキュアインフレーション装置は、加硫成型後のタイヤの一対のビード部を保持する一対のリムと、
前記一対のリムの間に配置され、径方向に拡がることで外周面によって前記タイヤのトレッド部の内周面を支持する円環状のプレートと、
前記プレートの両面にそれぞれ固定され、膨張することで前記タイヤのサイド部の内面を支持するブラダーと、を備えるものである。
【0014】
この構成によれば、ポストキュアインフレーションを行う際、タイヤのトレッド部の内周面をプレートによって支持するため、トレッド部に不要な成長が発生するのを防ぎ、サイド部の内面をブラダーによって支持するため、サイド部には適切なテンションをかけることができる。その結果、本発明によれば、タイヤの成長のばらつきを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記プレートは、周方向に分割された複数のセグメントで構成されており、前記セグメントが径方向内側へ向かって移動することで、前記プレートの外径が前記タイヤのビード部の内径よりも小さくなり、前記セグメントが径方向外側へ向かって移動することで、前記プレートの外径が前記タイヤのトレッド部の内径と同じとなることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、セグメントを径方向内側へ向かって移動させてプレートを縮径状態とすることで、プレートをタイヤの内部に挿入しやすくし、セグメントを径方向外側へ向かって移動させてプレートを拡径状態とすることで、プレートによりタイヤのトレッド部の内周面を支持することができる。
【0017】
本発明において、前記リムは、前記タイヤのタイヤ軸が水平となるように前記ビード部を保持することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、タイヤの左右のサイド部にかかるテンションを同じにすることができるため、タイヤの左右の形状を同じとしてユニフォミティを向上できる。
【0019】
本発明において、前記リム及び前記プレートは、前記タイヤとともにタイヤ軸周りに回転可能であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、タイヤの周方向での重量アンバランスを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るタイヤのポストキュアインフレーション装置の分解斜視図
図2図1に示すポストキュアインフレーション装置の縦断面図
図3】ポストキュアインフレーション装置にタイヤを装着した状態の断面図
図4】プレートの正面図
図5】ポストキュアインフレーション方法の工程図
図6】別実施形態に係るポストキュアインフレーション装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、タイヤのポストキュアインフレーション装置1(以下、PCI装置1と称する)の分解斜視図である。図2は、図1に示すPCI装置1の中心軸に沿って切断した断面図である。図3は、PCI装置1にタイヤ9を装着した状態の断面図である。
【0023】
PCI装置1は、一対のリム2,3と、一対のリム2,3の間に配置される円環状のプレート4と、プレート4の軸方向の両面にそれぞれ設けられるブラダー5と、を備えている。
【0024】
不図示の加硫機によって加硫されたタイヤ9は、一対のビード部91,92がリム2,3によりタイヤ幅方向外側から保持される。リム2,3は、円錐台状をしており、互いの上面2a,3aが向かい合うように配置される。リム2,3の外周面2b,3bがビード部91,92に接する。リム2の上面2aには、回転可能な連結軸21が設けられ、リム2の下面2cには、回転可能なリム軸22が設けられている。また、リム3の上面3aには、回転可能な主軸31が設けられ、リム3の下面3cには、回転可能なリム軸32が設けられている。主軸31と連結軸21は、接続可能であり、リム2とリム3は同時に回転することができる。また、リム2とリム3は、不図示の移動機構により軸方向に相対的に移動して、図2のような準備姿勢と、図3のような保持姿勢とを取り得る。
【0025】
図4は、プレート4の正面図であり、(a)は縮径状態を示し、(b)は拡径状態を示している。プレート4は、周方向に分割された複数のセグメント40で構成されている。本実施形態のプレート4は、4個のセグメント40で構成されている。
【0026】
セグメント40は、正面視扇状の板状部材であり、周方向に沿って複数配置されることで、全体として円環状のプレート4を構成する。セグメント40の板状部41には、内周側に開口する扇状の凹部42が形成されている(図2図3を参照)。また、セグメント40の円弧状の外周縁には、板状部41の板面から突出するフランジ部43が設けられている。
【0027】
主軸31には、回転ディスク44が装着されており、回転ディスク44は主軸31とともに回転する。回転ディスク44は、セグメント40の凹部42に挿入される。セグメント40の凹部42内には、不図示のエア式や油圧式のピストンが設けられており、このピストンを伸縮させることでセグメント40を主軸31に対して近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0028】
セグメント40は、主軸31を中心として径方向の内外に移動することができる。セグメント40が径方向内側へ向かって移動することで、図4(a)に示すようにプレート4は縮径状態となり、このとき、プレート4の外径はタイヤ9のビード部91,92の内径よりも小さい。一方、セグメント40が径方向外側へ向かって移動することで、図4(b)に示すようにプレート4は拡径状態となり、このとき、プレート4の外径はタイヤ9のトレッド部93の内径、すなわち内周面93aの径と同じとなる。プレート4が径方向に拡がって拡径状態となることで、プレート4の外周面4aによってタイヤ9のトレッド部93の内周面93aを支持することができる。
【0029】
各セグメント40の両面には、それぞれブラダー5が固定されている。ブラダー5は、内部に気体が供給されることで膨張し、タイヤ9のサイド部94の内面94aを支持する。
【0030】
ブラダー5は、正面視扇状であり、その外縁部が全周に亘ってセグメント40に対して固定されている。ブラダー5の円弧状の内周縁5aは、セグメント40の板状部41に固定される。また、ブラダー5の円弧状の外周縁5bは、セグメント40のフランジ部43の先端に固定される(図2図3を参照)。ブラダー5の周方向両端5c,5cは、図4に示すようにセグメント40の周方向両端にそれぞれ固定される。これにより、図4(b)に示すようなプレート4の拡径状態においてセグメント40同士の間に隙間が生じた際にも、隣り合う膨張したブラダー5同士が押し合い、協働してタイヤ9のサイド部94の内面94aを支持することができる。
【0031】
ただし、ブラダー5の周方向両端5c,5cのうちセグメント40のフランジ部43に近い部分5d,5dは、セグメント40の周方向両端よりも少し内側にて固定されている。これにより、図4(b)に示すようなプレート4の拡径状態においてセグメント40同士の間に隙間が生じた際、膨張したブラダー5がセグメント40同士の隙間からはみ出してタイヤ9のトレッド部93の内周面93aに接触するのを抑えることができる。
【0032】
次に、上記のPCI装置1を用いたポストキュアインフレーション方法を図5を用いて説明する。本発明のポストキュアインフレーション方法は、加硫成型後のタイヤ9の一対のビード部91,92を一対のリム2,3によって保持する工程と、一対のリム2,3の間に配置されている径方向に拡縮可能な円環状のプレート4を縮径状態から拡径状態とすることで、プレート4の外周面4aによってタイヤ9のトレッド部93の内周面93aを支持するとともに、プレート4の両面にそれぞれ固定されているブラダー5を膨張させることで、ブラダー5によってタイヤ9のサイド部94の内面94aを支持する工程と、を含むものである。
【0033】
初めに、図5(a)のように、リム2をリム3及びプレート4から離して配置する。このとき、プレート4は縮径状態であり、ブラダー5は膨張していない。
【0034】
次いで、図5(b)のように、加硫成型後のタイヤ9をプレート4の外側に配置する。その後、リム2とリム3を近づけ、リム2,3によってタイヤ9のビード部91,92をタイヤ幅方向外側から保持する。
【0035】
次いで、図5(c)のように、プレート4を拡径状態とし、プレート4の外周面4aによってタイヤ9のトレッド部93の内周面93aを支持する。その後、ブラダー5を膨張させ、膨張したブラダー5によってタイヤ9のサイド部94の内面94aを支持する。
【0036】
その後、図5(c)の状態のまま、リム2,3及びプレート4を回転駆動してタイヤ9を回転させながら所定時間をかけて冷却する。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の改良変更が可能である。前述の実施形態では、タイヤ9をタイヤ軸が水平となるように保持する縦型のPCI装置の構造を示したが、本発明は、これに限定されず、例えばタイヤ9をタイヤ軸が鉛直方向となるように保持する横型のPCI装置の構造としてもよい。
【0038】
前述の実施形態では、プレート4が4個のセグメント40で構成されている例を示したが、本発明は、これに限定されず、例えば、プレート4を6個、8個等のセグメント40で構成してもよい。
【0039】
前述の実施形態では、エア式や油圧式のピストンによりセグメント40を回転ディスク44に対して移動させる例を示したが、本発明は、これに限定されず、回転ディスク44とセグメント40の凹部42との摺動面に互いに噛み合い式の歯を設け、セグメント40を回転ディスク44に対して移動させるようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、ポストキュアインフレーションを効率よく行うために、図6に示すように1つの回転軸に対して2つのプレート4を設け、2つのタイヤ9を同時に冷却するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ポストキュアインフレーション装置
2 リム
3 リム
4 プレート
4a プレートの外周面
5 ブラダー
9 タイヤ
40 セグメント
91 ビード部
92 ビード部
93 トレッド部
93a トレッド部の内周面
94 サイド部
94a サイド部の内面


図1
図2
図3
図4
図5
図6