(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲート信号生成部は、前記位相調整部で位相調整した各相のキャリア信号を用いて、前記パルス幅変調部により前記制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を生成する構成であり、
前記制御量を、各相について前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に移相する移相部を備え、
前記位相調整部は、前記各相について、前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相がずれたキャリア信号を生成し、
前記パルス幅変調部は、前記制御量と前記各相のキャリア信号との振幅比較に基づいてゲート信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
前記ゲート信号生成工程は、前記位相調整工程で位相調整した各相のキャリア信号を用いて、前記パルス幅変調工程により前記制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を生成する工程であり、
前記制御量を、各相について前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に移相する移相工程を備え、
前記位相調整工程は、前記各相について、前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相がずれたキャリア信号を生成し、
前記パルス幅変調工程は、前記制御量と前記各相のキャリア信号との振幅比較に基づいてゲート信号を生成することを特徴とする、請求項4に記載の電源装置の制御方法。
前記ゲート信号生成工程は、前記パルス幅変調工程により生成した前記制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を、前記位相調整工程により位相調整する工程であり、
前記パルス幅変調工程は、各相の前記制御量と同一のキャリア信号との比較に基づいて各相のゲート信号を生成し、
前記位相調整工程は、前記パルス幅変調工程で生成した各相のゲート信号を、前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相をずらすことを特徴とする、請求項4に記載の電源装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図14はパルス幅変調部(PWM制御)によるチョッパ回路の回路構成を説明するための図である。
図14に示すチョッパ回路は単相チョッパの回路構成であり、スイッチング素子S1,S2をゲート信号(Gate1及びGate2)でオン/オフ制御することによってPWM制御を行う。ゲート信号(Gate1及びGate2)は、一般的に、三角波(Triangle or Sawtooth)と制御量(MV)を比較器(Comparator)で比較して生成する。
【0009】
制御量(MV)は、チョッパ回路を含む制御回路の主回路(Controller)において、指令信号(Vref)とフィードバックされた出力信号(出力電圧Vout、インダクタンス電流iL、又はキャパシタ電流iC)との差分に基づいて形成される。スイッチング周波数を固定とするPWM制御では、主回路のフィードバック制御によって生成した制御量に基づいて、比較器(Comparator)によってゲート信号(Gate1及びGate2)を生成する。制御量の生成、及びゲート信号の生成は所定の周期で行われる。ゲート信号は生成時点(以下、サンプリング点とする)毎に生成されるため、次のゲート信号の生成は次のサンプリング点においてその時点で算出されている制御量に基づいて行われる。そのため、固定PWM制御では、隣り合うサンプリング点間の区間においてゲート信号のデューティーは固定される。
【0010】
固定PWM制御では、ゲート信号を生成するサンプリング点は固定されているのに対して、主回路による制御量の生成タイミングは指令信号の変更時点に依存して変動する。そのため、チョッパ回路のパルス幅変調(PWM)制御による電圧可変制御では、指令信号が発生するタイミングが変動し、ゲート信号生成回路の生成時点であるサンプリング点に対して、前の時点あるいは後の時点に時点が変動すると、ゲート信号生成部で生成されるゲート信号の立ち上がりに1周期分の位相ずれ(以下、ジッタとする)が生じる。
【0011】
図15は単相チョッパ回路で発生するジッタを説明するための図であり、通常の単相PWM制御を行う降圧チョッパによってHigh/Lowのパルス運転をした場合のタイミングチャート例を示している。
【0012】
図15(a)、(b)は、
指令電圧Vref及び出力電圧Vout、キャリア信号の三角波信号(triangle)及び制御量(MV)、ゲート信号(Gate1, Gate2)、インダクタンス電流iLを示し、
図15(c)は
指令電圧Vref及び出力電圧Vout、キャリア信号の三角波信号(triangle)及び制御量(MV)、インダクタンス電流iLを示している。
【0013】
図15(a)は、サンプリング点kの直前の時点において、指令信号(指令電圧Vref)が変更された状態を示している。この場合には、例えば、指令電圧(Vref)がサンプリング点kよりも前の時点でLow状態からHigh状態に変動すると、サンプリング点kにおいて制御量MVは即時に更新される。そのため、サンプリング点kと次のサンプリング点(k+1)との間の区間においてゲート信号(Gate1及びGate2)のデューティー(Duty)が更新される。
【0014】
一方、
図15(b)は、サンプリング点kの直後の時点において、指令信号(指令電圧Vref)が変更された状態を示している。この場合には、指令電圧(Vref)がサンプリング点kよりも後の時点でLow状態からHigh状態に変動すると、次のサンプリング点(k+1)で制御量MVの更新がなされる。そのため、1周期遅れたサンプリング点(k+1)と次のサンプリング点(k+2)との間の区間においてゲート信号(Gate1及びGate2)のデューティー(Duty)が更新される。このため、指令電圧(Vref)がLow状態からHigh状態又はHigh状態からLow状態に急変した場合、デューティー(Duty)の変更が最大で1周期分だけ位相が遅れる。
【0015】
図15(c)は、
図15(a),(b)に示された2つの状態を合わせて示し、出力電圧Voutに1周期分のジッタが発生していることを示している。
【0016】
このデューティー変更の位相遅れは出力電圧の制御に影響し、出力電圧の位相遅れとして表れる。このように、最大1周期の位相遅れは出力電圧可変制御時(High/Lowパルス)の出力電圧の立ち上がりおよび立下りのジッタとなる。
【0017】
このジッタは、半導体製造装置などではプラズマ品質(再現性)の問題となる。従来は制御の応答性を向上するために、スイッチング周波数の高周波化で対応してきたが、高周波化による高速化はスイッチング素子の速度や損失耐量の点で制約を受けるため、高周波化には限界がある。
【0018】
また、従来の電源装置において、主回路だけを三相インターリーブ構成として、制御量を更新するタイミング、及びゲート信号を生成するサンプリング点を単相チョッパと同じとする構成が提案されているが、やはり最大1周期分のジッタが生じる。
【0019】
なお、特許文献1の並列多重チョッパ装置は、出力信号を検出するタイミングとゲート信号を生成するPWMキャリア信号とを同期させることによって、移動平均を用いることによって電流検出の遅延を低減することが記載されると共に、ゲート信号の生成において、各チョッパ回路のPWMキャリア信号を、360度をチョッパ回路の台数で除算した値の位相差だけずらすことが示されている。
【0020】
しかしながら、特許文献1で示される並列多重チョッパ装置は、出力信号の検出とPWM信号のピーク値とを同期させ、PWM信号のピーク値の時点における指令信号(電流指令)を用いて制御を行う構成であるため、常に、指令信号が発生するタイミングとゲート信号を生成する時点であるサンプリング点とは一致する。したがって、特許文献1の構成においては、指令信号とゲート信号とのタイミングは常に一致しているため、ゲート信号の立ち上がりのジッタは構成上から発生しない。また、ジッタについても何ら示唆していない。
【0021】
本発明は前記した従来の問題点を解決し、チョッパ回路を備える電源装置において、指令信号の発生とゲート信号の生成時点であるサンプリング点とがずれることで発生するジッタについてその量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、電源装置のチョッパ部を複数の降圧チョッパ回路を並列接続し、各降圧チョッパ回路を互いに位相がずれたゲート信号によって多相制御することによって、降圧チョッパ回路の出力信号が変更される周期を短縮し、この周期を短縮することによって、指令信号の発生とゲート信号の生成時点であるサンプリング点とがずれることにより発生するジッタの量を低減する。
【0023】
本発明は、電源装置の態様と電源装置の制御方法の態様とを備える。
【0024】
(電源装置の態様)
本発明の電源装置は出力電圧を可変とする電源装置であり、
(a)複数の相の降圧チョッパ回路が並列接続された多相のチョッパ部
(b)チョッパ部の出力のフィードバック信号、及び指令信号によってチョッパ部を制御する制御量を算出する制御部
(c)制御量に基づいて各相の降圧チョッパ回路が備えるスイッチング素子のオン/オフ動作を互いに位相をずらして多相制御するゲート信号を生成するゲート信号生成部
とを備える。
【0025】
ゲート信号及びゲート信号生成部は、以下の特徴を有している。
(d)ゲート信号の相数は、降圧チョッパ回路の相数と同数である。
(e)ゲート信号生成部において、
(e1)ゲート信号の生成と同期で、指令信号とは非同期のサンプリングによって、相毎に同一のサンプリング周期でゲート信号を生成する。
(e2)ゲート信号の生成時点であるサンプリング点は、制御部が制御量を算出する算出時点後のサンプリング点である。
【0026】
本発明の電源装置は、多相制御において、ゲート信号の相数と降圧チョッパ回路の相数とを同数とすることによってチョッパ部の出力信号が変更される周期を短縮する。チョッパ部の出力信号の変更周期は、単相制御、及び多相制御の各降圧チョッパ回路における出力信号の変更周期よりも短縮されるため、指令信号の発生とゲート信号の生成時点であるサンプリング点とがずれたとしても、このずれによって発生するジッタの量を最大でも短縮した変更周期内に抑えることができる。
【0027】
ゲート信号生成部は、パルス幅変調部、及び位相調整部を備える。
位相調整部は、各相のゲート信号間において、互いの位相を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす位相調整を行い、パルス幅変調部は、制御量に応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成する。
【0028】
本発明による複数の降圧チョッパ回路の多相制御は、各降圧チョッパ回路を互いに位相がずれた複数の相で制御を行う必要があるため、パルス幅変調部は、制御量に応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成すると共に、位相調整部によって、各相ゲート信号の互いの位相を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす。さらに、パルス幅変調部によるゲート信号の生成において、制御量を生成される各相のゲート信号の位相に合わせるために、移相部によって制御量をゲート信号の位相差分ずらす。
【0029】
ゲート信号生成部は複数の形態とすることができる。
(ゲート信号生成部の第1の形態)
ゲート信号生成部の第1の形態は、位相調整部で位相調整した各相のキャリア信号を用いて、パルス幅変調部により前記制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を生成する構成であり、位相調整部及びパルス幅変調部に加えて、制御量を、各相について前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に移相する移相部を備える。
【0030】
位相調整部は、各相について、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相がずれたキャリア信号を生成する。パルス幅変調部は、制御量と前記各相のキャリア信号との振幅比較に基づいてゲート信号を生成する。
【0031】
(ゲート信号生成部の第2の形態)
ゲート信号生成部の第2の形態は、パルス幅変調部により生成した制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を、位相調整部により位相調整を行う構成である。
【0032】
パルス幅変調部は、各相の前記制御量と同一のキャリア信号との比較に基づいて各相のゲート信号を生成する。位相調整部は、パルス幅変調部で生成した各相のゲート信号を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相をずらす。
【0033】
(電源装置の制御方法の態様)
本発明の電源装置の制御方法は、並列接続された複数相の降圧チョッパ回路からなる多相のチョッパ部のフィードバック制御により出力電圧を可変とする電源装置の制御方法であり、フィードバック制御の制御量に基づいて、各相の降圧チョッパ回路が備えるスイッチング素子のオン/オフ動作を制御するゲート信号を相毎に同一のサンプリング周期で行うサンプリングによって生成するゲート信号生成工程を備える。
【0034】
ゲート信号生成工程は、
(a)制御量に応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成するパルス幅変調工程
(b)各相のゲート信号間において、互いの位相を、前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす位相調整を行う位相調整工程
の各工程を備える。
(c)サンプリングは、ゲート信号の生成と同期で、指令信号とは非同期である。
【0035】
本発明の電源装置の制御方法は、多相制御において、ゲート信号の相数と降圧チョッパ回路の相数とを同数にすることによってチョッパ部の出力信号が変更される周期を短縮する。チョッパ部の出力信号の変更周期を、単相制御、及び多相制御の各降圧チョッパ回路における出力信号の変更周期よりも短縮することによって、指令信号の発生とゲート信号の生成時点であるサンプリング点とがずれたとしても、このずれによって発生するジッタの量を最大でも短縮した変更周期内に抑えることができる。
【0036】
ゲート信号生成工程は、パルス幅変調工程、及び位相調整工程を備える。パルス幅変調工程は、制御量に応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成し、位相調整工程は、各相のゲート信号間において、互いの位相を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす位相調整を行う。
【0037】
本発明の電源装置の制御方法において、複数の降圧チョッパ回路の多相制御は、各降圧チョッパ回路を互いに位相がずれた複数の相で制御を行う必要があるため、パルス幅変調工程は、制御量に応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成すると共に、位相調整工程によって、各相ゲート信号の互いの位相を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす。さらに、パルス幅変調工程によるゲート信号の生成において、制御量を生成される各相のゲート信号の位相に合わせるために、移相工程によって制御量をゲート信号の位相差分ずらす。
【0038】
ゲート信号生成工程は複数の形態例とすることができる。
(ゲート信号生成工程の第1の形態例)
ゲート信号生成工程の第1の形態例は、パルス幅変調工程、及び位相調整工程に加えて移相工程を備える。
【0039】
位相調整工程で位相調整した各相のキャリア信号を用いて、パルス幅変調工程により、制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を生成する。移相工程は、制御量を移相して各相のキャリア信号の位相に合わせる。
【0040】
移相工程は、制御量を、各相について前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に移相する。位相調整工程は、各相について、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相がずれたキャリア信号を生成する。パルス幅変調工程は、制御量と各相のキャリア信号との振幅比較に基づいてゲート信号を生成する。
【0041】
(ゲート信号生成工程の第2の形態例)
ゲート信号生成工程の第2の形態例は、パルス幅変調工程により生成した前記制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を、位相調整工程により位相調整を行う。
【0042】
パルス幅変調工程は、制御量とキャリア信号とを比較してゲート信号を生成し、位相調整工程は、パルス幅変調工程で生成したゲート信号を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相をずらすことによって各相のゲート信号を生成する。
【0043】
本発明の形態によれば、複数の降圧チョッパ回路を備える電源装置において、指令信号の発生とゲート信号の生成時点であるサンプリング点とがずれることで発生するジッタについてその量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の電源装置、及び電源装置の制御方法について
図1〜
図13を用いて説明する。 以下、
図1を用いて本発明の電源装置の概略構成例を説明し、
図2〜10を用いて本発明の電源装置の第1の構成例及び制御方法の第1の形態例を説明し、
図11〜13を用いて本発明の電源装置の第2の構成例及び制御方法の第2の形態例を説明する。
【0046】
[本発明の電源装置の概略構成]
図1は本発明の電源装置の概略構成例を説明するための図である。電源装置1は、入力電圧Vinを電圧制御して出力電圧Voutを出力するチョッパ部30と、チョッパ部30を電圧制御する制御部10と、制御部10で制御した制御量MVに基づいて、チョッパ部30を制御する複数相のゲート信号を生成するゲート信号生成部20とを備える。
【0047】
チョッパ部30は、降圧チョッパ回路30A〜30Nを並列接続し、各降圧チョッパ回路30A〜30Nを各相で駆動する多相制御を行う。
【0048】
制御部10は、チョッパ部30の出力をフィードバックし、このフィードバック信号と指令電圧Vrefとを比較して電圧制御を行い、チョッパ部30を制御する制御量MVを算出する。フィードバック信号は、例えば出力電圧Vout、入力電圧Vin、降圧チョッパ回路が備えるインダクタンスに流れるインダクタンス電流iL、あるいは、降圧チョッパ回路が備えるキャパシタンスに流れるキャパシタンス電流iCを用いることができる。
【0049】
ゲート信号生成部20は、制御部10が算出した制御量MVに基づいて各相の降圧チョッパ回路30A〜30Nが備えるスイッチング素子(
図1には示していない)のオン/オフ動作を多相制御するゲート信号を生成する。ゲート信号は、互いに位相ずれした複数相のゲート信号(A相ゲート信号、B相ゲート信号、…N相ゲート信号)であり、各相において同一のサンプリング周期で生成する。したがって、各相のゲート信号において、ゲート信号間の間隔は同一であり、各相のゲート信号は相間で互いに位相がずれている。ゲート信号生成部20のゲート信号の相数は、降圧チョッパ回路30A〜30Nの相数Nに合わせた同数である。なお、ここでは、複数相の相数をN(2以上の整数)とするN相について示している。
【0050】
ゲート信号生成部20において、サンプリングは、ゲート信号の生成と同期しているが、指令信号とは非同期である。一方、制御部10の主制御では、指令信号とフィードバック信号とに基づいてフィードバック制御を行って制御量MVを求めている。したがって、サンプリングは、ゲート信号の生成と同期しているが、指令信号とは非同期であるため、制御部10で算出する制御量MVの算出タイミングと、ゲート信号生成部20が生成するゲート信号の生成タイミングとは必ずしも一致しない。
【0051】
本発明のゲート信号生成部20は、ゲート信号の生成時点であるサンプリング点を、制御部10が制御量MVを算出する算出時点の後の時点に現れるサンプリング点としてサンプリングを行い、ゲート信号を生成する。以下、ゲート信号の生成時点をサンプリング点の用語を用いて説明する。
【0052】
制御量MVの算出時点とその後のサンプリング点時点のサンプリング点との間には、最大で複数相のサンプリング点において、隣接するサンプリング点間の周期分のずれが生じる。
【0053】
ゲート信号生成部20は、制御量MVに応じたパルス幅のゲート信号を相毎に生成するパルス幅変調部20bと、各相のゲート信号間において、互いの位相を、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけずらす位相調整を行う位相調整部20aを備える。
【0054】
位相調整部20aは、各相のゲート信号の位相調整によって、複数相の隣接する相のゲート信号間を、サンプリング周期を相数で除した位相差に相当する周期に短縮し、これによって、隣接するサンプリング点間のずれ量を低減させ、出力電圧の立ち上がりの時間ずれであるジッタの量を低減させる。
【0055】
図1(b)〜(d)はA相ゲート信号,B相ゲート信号、及びN相ゲート信号の例を示し、
図1(e)はA相からN相の全ての相を重ね合わせた複数相のゲート信号の例を示している。
【0056】
A相ゲート信号,B相ゲート信号、及びN相ゲート信号の信号間の周期Tphは共通であり、それぞれ周期Tphを相数Nで除算したT(=Tph/N)だけ位相がずれている。これによって、これらの相を重ね合わせた複数相のゲート信号間の周期Tは、各相の周期Tphの1/Nとなる。
【0057】
ゲート信号生成部20は移相部20cを備える構成として、制御部10が算出する制御量MVを、各相についてサンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に移相する。移相部20cによって制御量MVを移相することによって、パルス幅変調部20bによるゲート信号の生成において、制御量の位相と生成される各相のゲート信号の位相とを合わせることができる。
【0058】
[本発明の電源装置び制御方法の第1の形態]
次に、
図2〜
図10を用いて、本発明の電源装置及び制御方法の第1の形態を説明する。
図2は第1の電源装置の概略構成例を示し、
図3,4はキャリア信号を用いたパルス幅変調部を備えた概略構成例、及び一構成例を示している。
【0059】
図2に示す概略構成例はゲート信号生成部20の構成例を示し、その他の構成は
図1に示した概略構成例と共通であるため、ここではゲート信号生成部20の構成例について説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0060】
電源装置1が備えるゲート信号生成部の第1の形態は、位相調整部20aで位相調整した各相のキャリア信号を用いて、パルス幅変調部20bにより制御量MVに応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を生成する構成である。
【0061】
図2のゲート信号生成部20は、A相ゲート信号生成部20A、B相ゲート信号生成部20B、…、N相ゲート信号生成部20Nを備え、それぞれ互いに位相がずれたA相〜N相の多相のゲート信号(A相ゲート信号〜B相ゲート信号、…、N相ゲート信号)を生成する。
【0062】
各相のゲート信号生成部は共通の構成を備えているため、ここではA相ゲート信号生成部20Aについて説明し、他の相のゲート信号生成部の説明は省略する。
【0063】
A相ゲート信号生成部20Aは、制御部10が算出した制御量MVを入力する移相部20cと、移相部20cにおいてサンプリング周期を相数で除した位相差分だけ移相した制御量MVを入力するパルス幅変調部20bと、パルス幅変調部20bにおいて制御量MVと振幅比較するキャリア信号の位相を調整する位相調整部20aとを備える。
【0064】
位相調整部20aは、各相について、サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ互いに位相がずれたキャリア信号を生成し、パルス幅変調部20bは、制御量MVと位相調整部20aで位相調整した各相のキャリア信号との振幅を比較してゲート信号を生成する。
【0065】
なお、各移相部20cは、各相について前記サンプリング周期を相数で除した位相差分だけ順に制御量を移相する。したがって、A相ゲート信号生成部20Aの移相部20Acよる移相量、B相ゲート信号生成部20Bの移相部20Bcによる移相量、及びN相ゲート信号生成部20Nの移相部20Ncによる移相量はそれぞれ異なり、移相量は順に位相差分ずつ増加している。
【0066】
図3は
図2に示したゲート信号生成部20の構成において、パルス幅変調に用いるキャリア信号として三角波信号を用いた例を示している。
図3においてもA相ゲート信号生成部20Aについて説明し、他の相のゲート信号生成部の説明は省略する。
【0067】
A相ゲート信号生成部20Aにおいて、パルス幅変調部20Abは、移相部20Acで移相した制御量MVを三角波のキャリア信号と振幅比較することによってゲート信号を生成する。なお、三角波は、波形の立ち上がり及び立ち下がりにおいて振幅が直線状の増減する波形形状や、波形の立ち
上がりでは振幅がステップ状に立ち上がり、立ち下がりでは振幅が直線状に減少する波形形状の歯状波等、振幅が直線状に変化する任意の波形形状とすることができる。
【0068】
図3に示す構成では、位相調整部20
Cによって、各パルス幅変調部20Ab、20Bb、…20Nbに供給するキャリア信号の位相を調整し、各パルス幅変調部20Ab、20Bb、…20Nbから出力されるゲート信号間に位相ずれを形成する。
【0069】
各移相部20Ac〜20Ncは、各パルス幅変調部20Ab〜20Nbにおいて振幅比較を行うキャリア信号との位相を合わせることによって、何れのパルス幅変調部20Ab〜20Nbにおいても、キャリア信号との比較において制御量MVとの位相ずれを解消することができる。仮に、各移相部20Ac〜20Ncにおいて制御量MVの移相が行われない場合には、位相調整によって位相ずれしたキャリア信号と振幅変調することになり、生成されるゲート信号に位相ずれが生じる場合があるが、移相部20Ac〜20Ncによって制御量MVの位相をキャリア信号の位相に合わせることで、位相調整におけるゲート信号の位相ずれを防ぐことができる。
【0070】
(2相制御の形態)
以下、
図4〜
図7を用いて、2相制御を行う形態について説明する。
図4はチョッパ回路を多相制御して2相制御を行う場合の電源装置の回路例を示している。
【0071】
チョッパ部30はA相のチョッパ回路30AとB相のチョッパ回路30Bとの並列接続で構成され、2つのチョッパ回路30A,30Bは並列接続されたコンデンサC及び負荷Rに接続される。チョッパ部30は、チョッパ回路30A,30Bを互いに異なる位相によって2相制御し、入力電圧Vinを電圧制御して出力電圧Voutを出力する。
【0072】
チョッパ回路30Aは、直列接続されるスイッチング素子S1Aと並列接続されるスイッチング素子S2A、及び直列接続されるインダクタンスLAを備え、チョッパ回路30Bは、直列接続されるスイッチング素子S1Bと並列接続されるスイッチング素子S2B、及び直列接続されるインダクタンスLBを備える。
【0073】
スイッチング素子S1A及びスイッチング素子S2Aは、ゲート信号Gate1−A、及びゲート信号Gate2−Aによってオン/オフ動作が制御される。同様に、スイッチング素子S1B及びスイッチング素子S2Bは、ゲート信号Gate1−B、及びゲート信号Gate2−Bによってオン/オフ動作が制御される。なお、ゲート信号Gate1−Aとゲート信号Gate2−A、及びゲート信号Gate1−Bとゲート信号Gate2−Bは、それぞれ互いに反転した関係にあり、各ゲート信号で駆動されるスイッチング素子は、互いに逆相でオン/オフ動作が行われる。
【0074】
チョッパ部30の主制御は制御部(controller)10によって行われ、チョッパ部30のフィードバック信号と指令電圧Vrefとの差分に基づいて電圧制御を行い。制御量MVを出力する。電圧制御は、例えば指令電圧Vrefとして高電圧と低電圧を交互に入力することでHigh/Low制御を行うことができる。
【0075】
制御部10から出力された制御量MVはゲート信号生成部20に入力される。ゲート信号生成部20は、A相ゲート信号生成部20AとB相ゲート信号生成部20Bを備え、それぞれチョッパ回路30Aとチョッパ回路30Bのスイッチング素子を駆動するゲート信号を生成する。A相ゲート信号生成部20Aは移相部(ShifterA)とパルス幅変調部(ComparatorA)を備え、制御量MVの位相を0度又は180度ずらした後、キャリア信号の三角波(Triangle-A又はSawtooth-A)と振幅比較することによってA相のゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。B相ゲート信号生成部20Bについても、A相ゲート信号生成部20Aと同様に、移相部(ShifterB)とパルス幅変調部(ComparatorB)を備え、制御量MVの位相を0度又は180度ずらした後、キャリア信号の三角波(Triangle-B又はSawtooth-B)と振幅比較することによってB相のゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。
【0076】
図5は、2相制御のサンプリング点を示している。
図5(a)はA相のサンプリング点(kA-1,kA,kA+1,kA+2,kA+3)を示し、
図5(b)はB相のサンプリング点(kB-1,kB,kB+1,kB+2,kB+3)を示している。サンプリング点はゲート信号の生成時点であり、A相とB相のサンプリング点の周期は等しく、位相は互いにπ(=2π/2)ずれた関係である。
【0077】
図5(c),(d)はA相とB相の2相分のサンプリング点を重ね合わせたサンプリング点を示している。2相分のサンプリング点を重ねることによって、2相制御のサンプリング点の周期はA相及びB相の各単相のサンプリング点の周期の1/2に短縮される。
【0078】
サンプリング点の周期を1/2に短縮することによって、指令信号の変更時点とゲート信号の更新時点との間の時間遅れの幅を短縮することができる。
図5(c)はサンプリング点kAより前の時点で指令が変更された状態を示し、
図5(d)はサンプリング点kAより後の時点で指令が変更された状態を示している。サンプリング点kAより前の時点で指令が変更された場合には、ゲート信号はサンプリング点kAとサンプリング点kB+1との間で更新され、サンプリング点kAより後の時点で指令が変更された場合には、ゲート信号は単相周期の1/2の周期だけ遅れたサンプリング点kB+1とサンプリング点kA+1との間で更新される。ジッタは上記した2つのゲート信号の更新時間によって発生するが、両ゲート信号の更新時間の時間幅は最大で単相周期の1/2の周期であるため、単相制御と比較してジッタ量は低減する。
【0079】
次に、
図6のフローチャートを用いて2相制御によるゲート信号の生成を説明する。以下、"S"の符号を用いて説明する。
【0080】
指令電圧Vrefが変更されると(S1)、電源制御の制御部はチョッパ部の出力信号と指令電圧Vrefとを比較する主制御によって制御量MVを求める(S3)。なお、指令電圧Vrefが変更されるまでは、前回に求めたゲート信号(GateA,GateB)を維持する(S2)。
【0081】
指令電圧Vrefが変更された後に現れる最初のサンプリング点においてゲート信号の生成を行う(S4)。
【0082】
指令電圧Vrefの変更後、A相のサンプリング点kAが現れた場合には(S4)、A相を基準相とし(S5)、制御量MVとA相のキャリア信号とを振幅比較してA相のゲート信号GateAを生成する(S6)。基準相であるA相の制御量MVの位相をπ(=2π/2)ずらす移相を行い、B相の制御量MV-Bを生成する(S7)。生成した制御量MV-BとB相のキャリア信号とを振幅比較してB相のゲート信号GateBを生成する(S8)。
【0083】
指令電圧Vrefの変更後、B相のサンプリング点kBが現れた場合には(S4)、B相を基準相とし(S9)、制御量MVとB相のキャリア信号とを振幅比較してB相のゲート信号GateBを生成する(S10)。基準相であるB相の制御量MVの位相をπ(=2π/2)ずらす移相を行い、A相の制御量MV-Aを生成する(S11)。生成した制御量MV-AとA相のキャリア信号とを振幅比較してA相のゲート信号GateAを生成する(S12)。
【0084】
図7は2相制御によるゲート信号の生成、及び出力電圧のジッタを示している。
図7(a)はサンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更されたときのゲート信号の生成を示し、
図7(b)はサンプリング点kAの直後で指令電圧Vrefが変更されたときのゲート信号の生成を示し、
図7(c)は出力電圧のジッタを示している。
【0085】
図7(a)において、サンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更された場合には、A相を基準相として2相制御を行う。
【0086】
基準相であるA相のゲート信号については、制御量MVを制御量MV-Aとし、サンプリング点kAにおいて、制御量MV-Aとキャリア信号(Triangle-A)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。一方、B相のゲート信号については、次のサンプリング点kB+1において、基準相のA相の制御量MV-Aをπ(=2π/2)だけ移相して得た制御量MV-Bとキャリア信号(Triangle-B)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。
【0087】
A相のゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を用いてA相のチョッパ回路を駆動することによって、インダクタンスLAにはインダクタンス電流iL-Aが流れる。B相のゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を用いてB相のチョッパ回路を駆動することによって、インダクタンスLBにはインダクタンス電流iL-Bが流れる。iLはインダクタンス電流iL-Aとインダクタンス電流iL-Bとを合わせた電流を示している。
【0088】
図7(b)において、サンプリング点kAの直後で指令電圧Vrefが変更された場合には、B相を基準相として2相制御を行う。
【0089】
基準相であるB相のゲート信号については、制御量MVを制御量MV-Bとし、サンプリング点kB+1において、制御量MV-Bとキャリア信号(Triangle-B)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。一方、A相のゲート信号については、次のサンプリング点kA+1において、制御量MV-Bをπ(=2π/2)だけ移相して得た制御量MV-Aとキャリア信号(Triangle-A)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。
【0090】
B相のゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を用いてB相のチョッパ回路を駆動することによって、インダクタLBにはインダクタンス電流iL-Bが流れる。A相のゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を用いてA相のチョッパ回路を駆動することによって、インダクタンスLAにはインダクタンス電流iL-Aが流れる。iLはインダクタンス電流iL-Aとインダクタンス電流iL-Bとを合わせた電流を示している。
【0091】
図7(c)は、
図7(a)で示す状態で得られた出力電圧及びインダクタンス電流iL(図中の実線で示す)と
図7(b)で示す状態で得られた出力電圧及びインダクタンス電流iL(図中の破線で示す)を示している。両出力電圧の時間差はジッタを示している。
【0092】
サンプリング点kAの前後で指令電圧が変更されたときの出力電圧のジッタは、最大で単相制御時の周期の1/2である。
【0093】
(3相制御の形態)
以下、
図8〜
図10を用いて、3相制御を行う形態について説明する。
図8は、3相制御のサンプリング点を示している。
図8(a)はA相のサンプリング点(kA-1,kA,kA+1,kA+2,kA+3)を示し、
図8(b)はB相のサンプリング点(kB-1,kB,kB+1,kB+2,kB+3)を示し、
図8(c)はC相のサンプリング点(kC-1,kC,kC+1,kC+2,kC+3)を示している。サンプリング点はゲート信号の生成時点であり、A相、B相、及びC相のサンプリング点の周期は等しく、位相は互いにπ(=2π/3)ずれた関係である。
【0094】
図8(d),(e)はA相、B相、及びC相の3相分のサンプリング点を重ね合わせたサンプリング点を示している。3相分のサンプリング点を重ねることによって、3相制御のサンプリング点の周期はA相、B相、及びC相の各単相のサンプリング点の周期の1/3に短縮される。
【0095】
サンプリング点の周期を1/3に短縮することによって、指令信号の変更時点とゲート信号の更新時点との間の時間遅れの幅を短縮することができる。
図8(d)はサンプリング点kAより前の時点で指令が変更された状態を示し、
図8(e)はサンプリング点KAより後の時点で指令が変更された状態を示している。サンプリング点kAより前の時点で指令が変更された場合には、ゲート信号はサンプリング点kAとサンプリング点kB+1との間で更新され、サンプリング点kAより後の時点で指令が変更された場合には、ゲート信号は単相周期の1/3の周期だけ遅れたサンプリング点kB+1とサンプリング点kC+2との間で更新される。ジッタは上記した2つのゲート信号の更新時間によって発生するが、両ゲート信号の更新時間の時間幅は最大で単相周期の1/3の周期であるため、単相制御と比較してジッタ量は低減する。
【0096】
次に、
図9のフローチャートを用いて3相制御によるゲート信号の生成を説明する。以下、"S"の符号を用いて説明する。
【0097】
指令電圧Vrefが変更されると(S21)、電源制御の制御部はチョッパ部の出力信号と指令電圧Vrefとを比較する主制御によって制御量MVを求める(S23)。なお、指令電圧Vrefが変更されるまでは、前回に求めたゲート信号(GateA,GateB)を維持する(S22)。
【0098】
指令電圧Vrefが変更された後に現れる最初のサンプリング点においてゲート信号の生成を行う(S24)。
【0099】
指令電圧Vrefの変更後、A相のサンプリング点kAが現れた場合には(S
24)、A相を基準相とし(S25)、制御量MVとA相のキャリア信号とを振幅比較してA相のゲート信号GateAを生成する(S26)。基準相であるA相の制御量MVの位相を2π/3ずらす移相を行い、B相の制御量MV-Bを生成する(S27)。生成した制御量MV-BとB相のキャリア信号とを振幅比較してB相のゲート信号GateBを生成する(S28)。基準相であるA相の制御量MVの位相を4π/3(=2・(2π/3))ずらす移相を行い、C相の制御量MV-Cを生成する(S29)。生成した制御量MV-CとC相のキャリア信号とを振幅比較してC相のゲート信号GateCを生成する(S
30)。
【0100】
指令電圧Vrefの変更後、B相のサンプリング点kBが現れた場合には(S24)、B相を基準相とし(S31)、制御量MVとB相のキャリア信号とを振幅比較してB相のゲート信号GateBを生成する(S32)。基準相であるB相の制御量MVの位相を2π/3ずらす移相を行い、C相の制御量MV-Cを生成する(S33)。生成した制御量MV-CとC相のキャリア信号とを振幅比較してC相のゲート信号GateCを生成する(S34)。基準相であるB相の制御量MVの位相を4π/3(=2・(2π/3))ずらす移相を行い、A相の制御量MV-Aを生成する(
S35)。生成した制御量MV-AとA相のキャリア信号とを振幅比較してA相のゲート信号GateAを生成する(S36)。
【0101】
指令電圧Vrefの変更後、C相のサンプリング点kCが現れた場合には(S24)、C相を基準相とし(S37)、制御量MVとC相のキャリア信号とを振幅比較してC相のゲート信号GateCを生成する(S38)。基準相であるC相の制御量MVの位相を2π/3ずらす移相を行い、A相の制御量MV-Aを生成する(S39)。生成した制御量MV-AとA相のキャリア信号とを振幅比較してA相のゲート信号GateAを生成する(S40)。基準相であるC相の制御量MVの位相を4π/3(=2・(2π/3))ずらす移相を行い、B相の制御量MV-Bを生成する(S41)。生成した制御量MV-BとB相のキャリア信号とを振幅比較してB相のゲート信号GateBを生成する(S42)。
【0102】
図10は3相制御によるゲート信号の生成を示している。
図10(a)はサンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更されたときのゲート信号の生成を示し、
図10(b)はサンプリング点kAの直後で指令電圧Vrefが変更されたときのゲート信号の生成を示している。なお、
図10はA相を基準相とする例を示している。
【0103】
図10(a)において、サンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更された場合には、A相を基準相として3相制御を行う。
【0104】
基準相であるA相のゲート信号については、制御量MVを制御量MV-Aとし、サンプリング点kAにおいて、制御量MV-Aとキャリア信号(Triangle-A)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。B相のゲート信号については、次のサンプリング点kB+1において、基準相のA相の制御量MV-Aを2π/3だけ移相して得た制御量MV-Bとキャリア信号(Triangle-B)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。C相のゲート信号については、更に次のサンプリング点kC+2において、基準相のA相の制御量MV-Aを4π/3だけ移相して得た制御量MV-Cとキャリア信号(Triangle-C)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-C,Gate2-C)を生成する。
【0105】
図10(b)において、サンプリング点kAの直後で指令電圧Vrefが変更された場合には、B相を基準相として3相制御を行う。
【0106】
基準相であるB相のゲート信号については、制御量MVを制御量MV-Bとし、サンプリング点kB+1において、制御量MV-Bとキャリア信号(Triangle-B)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。C相のゲート信号については、次のサンプリング点kC+2において、基準相のB相の制御量MV-Bを2π/3だけ移相して得た制御量MV-Cとキャリア信号(Triangle-C)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-C,Gate2-C)を生成する。A相のゲート信号については、更に次のサンプリング点kC+2において、基準相のB相の制御量MV-Bを4π/3だけ移相して得た制御量MV-Aとキャリア信号(Triangle-A)との振幅比較によってゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。
【0107】
(本発明の第2の電源装置の構成例及び制御方法の形態例)
次に、
図11〜
図13を用いて、本発明の電源装置及び制御方法の第2の形態を説明する。
図11は第2の形態の電源装置の概略構成例を示し、
図12は第2の形態のフローチャートを示し、
図13は制御量およびゲート信号のタイミングチャートを示している。
【0108】
第2の形態は、ゲート信号生成部において、パルス幅変調部により生成した制御量に応じたパルス幅を有する各相のゲート信号を、位相調整部により位相調整する構成である。
【0109】
図11に示す概略構成例はゲート信号生成部20の構成例を示している。その他の構成は
図1に示した概略構成例と共通であるため、ここではゲート信号生成部20の構成例について説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0110】
第2の形態のゲート信号生成部20は、パルス幅変調部20bにおいて、制御部10の制御量MVと、キャリア信号生成部20dで生成したキャリア信号とをしてゲート信号を生成する。位相調整部20Aa、20Ba、…20Naは、パルス幅変調部20bで生成したゲート信号を、それぞれサンプリング周期を相数Nで除した位相差分だけ互いに位相をずらし、各相のゲート信号(A相ゲート信号、B相ゲート信号、…、N相ゲート信号)として生成する。
【0111】
位相調整部20Aa、20Ba、…20Naが行うゲート信号の位相調整は、基準相に対する位相ずれに合わせて行う。例えば、A相を基準相とした場合には、A相の位相調整部20Aaは位相調整が不要であるため、パルス幅変調部20bのゲート信号をそのまま位相調整することなくA相ゲート信号として出力する。
【0112】
一方、A相を基準相とした場合には、B相の位相調整部20Baは、パルス幅変調部20bのゲート信号を2π/Nの位相差分だけ位相調整してB相ゲート信号として出力し、C相の位相調整部20Caは、パルス幅変調部20bのゲート信号を2・(2π/N)の位相差分だけ位相調整してC相ゲート信号として出力し、N相の位相調整部20Naは、パルス幅変調部20bのゲート信号を(N−1)・(2π/N)の位相差分だけ位相調整してN相ゲート信号として出力する。
【0113】
第2の形態のゲート信号生成部20では、パルス幅変調部20bにおいて制御量MVとキャリア信号との比較で得られたゲート信号の位相を、位相調整部20Aa〜位相調整部20Naによって各相に合わせて調整する構成であるため、第1の形態において制御量とキャリア信号の位相を合わせるために設けた移相部を不要とすることができる。
【0114】
次に、
図12のフローチャートを用いて、第2の形態のゲート信号の生成について2相制御の場合を例として説明する。以下、"S"の符号を用いて説明する。
【0115】
指令電圧Vrefが変更されると(S51)、電源制御の制御部はチョッパ部の出力信号と指令電圧Vrefとを比較する主制御によって制御量MVを求める(S53)。なお、指令電圧Vrefが変更されるまでは、前回に求めたゲート信号(GateA,GateB)を維持する(S52)。
【0116】
指令電圧Vrefが変更された後に現れる最初のサンプリング点においてゲート信号の生成を行う。最初のサンプリング点がA相のサンプリング点であるときは、生成したゲート信号をA相のゲート信号GateAとして、A相のチョッパ回路を制御する。一方、最初のサンプリング点がB相のサンプリング点であるときは、生成したゲート信号をB相のゲート信号GateBとして、B相のチョッパ回路を制御する(S54)。
【0117】
次に、生成したゲート信号をπだけずらして、次のサンプリング点における他相のゲート信号を生成する。
【0118】
最初のサンプリング点がA相のサンプリング点であるときは、先に生成したゲート信号をπだけ位相調整してゲート信号GateBとして、B相のチョッパ回路を制御する。一方、最初のサンプリング点がB相のサンプリング点であるときは、先に生成したゲート信号をπだけ位相調整してゲート信号GateAとして、A相のチョッパ回路を制御する (S55)。
【0119】
図13は第2の形態において、2相制御によるゲート信号の生成を示している。
図13はサンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更されたときのゲート信号の生成を示している。
【0120】
図13において、サンプリング点kAの直前で指令電圧Vrefが変更された場合には、A相を基準相として2相制御を行う。
【0121】
基準相であるA相のゲート信号については、サンプリング点kにおいて、制御量MVとキャリア信号との振幅比較によってゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を生成する。一方、B相のゲート信号については、A相ゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)をπだけ位相をずらしてB相ゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を生成する。
【0122】
A相のゲート信号(Gate1-A,Gate2-A)を用いてA相のチョッパ回路を駆動し、B相のゲート信号(Gate1-B,Gate2-B)を用いてB相のチョッパ回路を駆動する。
【0123】
本発明の第1の形態及び第2の形態によれば、電源装置においてHigh/Lowのパルス制御を行うことによって、出力電圧のジッタは相数分に応じて低減することができる。
【0124】
例えば、スイッチング周波数をfsw、相数をNとすると、ジッタの時間幅Jitterは以下の演算式で表すことができる。
Jitter=(1/fsw)×(1/N)
【0125】
本発明の第1の形態及び第2の形態によれば、チョッパ回路を駆動するスイッチング周波数がスイッチング素子の損失等の制限によって上昇させることができない場合であっても、チョッパ回路の相数Nを増やすことによって、出力電圧のジッタの時間幅を大幅に低減させることができる。
【0126】
例えば、スイッチング素子として、スイッチング周波数fsw がfsw=20kHz程度の低周波数のIGBT等を用いた場合であっても、ジッタの時間幅を100nsとした場合には、N=(1/fsw)/Jitterの式から500(=(1/20kHz)/100ns)相によって実現することができる。
【0127】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る電源装置の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。