【0018】
また、珪酸塩の含有量は、耐火粉末100質量%に対して外がけで3質量%以上20質量%以下である。珪酸塩の含有量が3質量%未満では稼働時の接着性向上の効果が十分には得られない。一方、珪酸塩の含有量が20質量%を超えると、施工時に多量の施工水(添加水分)が必要となるため組織が粗となり、結果として乾燥後及び稼働時の接着強度が低下する。
なお、再乳化形粉末樹脂と珪酸塩とを併用する場合、耐水性、耐火れんがとの接着性をさらに向上する観点から、再乳化形粉末樹脂の含有量は、耐火粉末100質量%に対して外がけで0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、珪酸塩の含有量は、耐火粉末100質量%に対して外がけで7質量%以上15質量%以下が好ましい。
また、珪酸塩としては、珪酸ソーダ、珪酸カリウム等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
(実施例A)
表1に示す各例の耐火モルタルについて、オートクレーブ処理後の接着強度、稠度変化を測定し、これらの測定結果から総合評価を行った。なお、表1に示す配合において結合剤(硬化剤)は、耐火粉末100質量%に対する外がけの質量%である。
【0021】
【表1】
【0022】
オートクレーブ処理後の接着強度、稠度変化の測定方法は以下のとおりである。
(1)オートクレーブ処理後の接着強度
表1の各例の配合に対して適量(外がけで25〜35質量%程度)の施工水を添加して混練し、その混練物を2個の耐火れんが間の目地部(厚さ2mm)に施工し、20℃で48時間養生して試験体とした。この試験体をオートクレーブ内に入れ、110℃、0.5MPaの環境下に4時間曝す処理(オートクレーブ処理)を実施した。オートクレーブ処理後の試験体について耐火れんが間のせん断応力を測定し、これを接着強度とした。すなわち、前述のオートクレーブ処理は、溶融金属容器又は2次精錬炉における耐火れんがの築造後の乾燥工程の水蒸気環境を模擬したもので、このオートクレーブ処理後の接着強度が高いほど、耐水性に優れることを意味する。具体的には実施例1の接着強度を100とした相対値を求め、その相対値が90超100以下の場合を◎(良)、70超90以下の場合を○(可)、70以下の場合を×(不可)として3段階評価した。
【0023】
(2)稠度変化
稠度は、JIS R2506「耐火モルタルのちょう度試験方法」によって測定した。具体的には、混練直後の混練物の稠度と、その混練物を袋詰め(密封)して2日経過後の稠度を測定し、稠度変化が0以上30以下を◎(良)、30超を×(不可)とした。この稠度変化は保管性の指標であり、稠度変化が小さいほど保管性に優れることを意味する。
【0024】
(3)総合評価
オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)、稠度変化(保管性)がいずれも◎の場合を◎(良)、いずれか1つが○の場合は○(可)、いずれか1つが×の場合は×(不可)とし、◎(良)又は○(可)を合格とした。
【0025】
表1に示すとおり、本発明の範囲内にある実施例1〜5は、いずれも接着強度(耐水性)及び稠度変化(保管性)が良好で合格レベルであった。なかでも、再乳化形粉末樹脂の含有量が好ましい範囲(2質量%以上4質量%以下)にある実施例1、4、5は、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)に優れており特に良好であった。
【0026】
比較例1は、結合剤として珪酸ソーダを使用した従来の気硬性モルタルの例で、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)が×(不可)であった。比較例2は、結合剤として珪酸ソーダ、硬化剤としてケイフッ化ソーダを使用した従来の自硬性モルタルの例で、稠度変化(保管性)が×(不可)であった。
【0027】
比較例3は再乳化形粉末樹脂の含有量が少ない例、比較例4は再乳化形粉末樹脂の含有量が多い例で、いずれもオートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)が×(不可)であった。
【0028】
(実施例B)
表2に示す各例の耐火モルタルについて、オートクレーブ処理後の接着強度、稠度変化及び焼成後の接着強度を測定し、これらの測定結果から総合評価を行った。なお、表2に示す配合において結合剤(硬化剤)は、耐火粉末100質量%に対する外がけの質量%である。
【0029】
【表2】
【0030】
オートクレーブ処理後の接着強度及び稠度変化の測定方法は上記実施例Aと同様である。焼成後の接着強度測定方法は以下のとおりである。
(4)焼成後の接着強度
上記(1)のオートクレーブ処理を実施した後、さらに400℃で3時間焼成処理をした後の試験体について耐火れんが間のせん断応力を測定し、これを焼成後の接着強度とした。この焼成後の接着強度が高いほど、稼働時における耐火れんがと耐火モルタルとの接着性向上効果(目地切れの抑制効果)に優れることを意味する。具体的には表1の実施例2における焼成後の接着強度を100とした相対値を求め、その相対値が120超の場合を◎、100以上120以下の場合を○、90以上100未満の場合を△、90未満の場合を×として評価した。
総合評価については、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)、稠度変化(保管性)、焼成後の接着強度(耐火れんがとの接着性)がいずれも◎の場合を◎(良)、いずれか1つが○又は△の場合は○(可)、いずれか1つが×の場合は×(不可)とし、◎(良)又は○(可)を合格とした。
【0031】
表2に示すとおり、粘土を耐火粉末100質量%に対して外かけで3質量%、20質量%添加した実施例6、7では、焼成後の接着強度向上効果が得られた。なお、粘土を耐火粉末100質量%に対して外かけで0.5質量%、25質量%添加した実施例8、9では、焼成後の接着強度が実施例2に比べ若干低下したが、実施例8、9も実用可能なレベルである。
【0032】
(実施例C)
表3に示す各例の耐火モルタルについて、オートクレーブ処理後の接着強度、稠度変化及び焼成後の接着強度を測定し、これらの測定結果から総合評価を行った。なお、表3に示す配合において結合剤(硬化剤)は、耐火粉末100質量%に対する外がけの質量%である。
また、オートクレーブ処理後の接着強度、稠度変化、焼成後の接着強度の測定方法及び総合評価の方法は実施例Bと同じである。
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示すとおり、本発明の範囲内で再乳化形粉末樹脂と珪酸塩とを併用した実施例10〜16は、いずれの評価項目も合格レベルであり、特に焼成後の接着強度が向上した。なお、表3の表記上、実施例11、12の焼成後の接着強度は実施例2と同じ「○」レベルであるが、焼成後の接着強度の数値上は実施例11、12が実施例2を上回っており、再乳化形粉末樹脂と珪酸塩との併用による焼成後の接着強度向上効果は確認された。
【0035】
一方、比較例5は、再乳化形粉末樹脂の含有量が少ない例であり、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)が×(不可)であった。
比較例6は、再乳化形粉末樹脂の含有量が多い例で、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)、稠度変化(保管性)及び焼成後の接着強度(耐火れんがとの接着性)が×(不可)であった。
比較例7は、珪酸ソーダの含有量が多い例であり、オートクレーブ処理後の接着強度(耐水性)及び焼成後の接着強度(耐火れんがとの接着性)が×(不可)であった。