特許第6772095号(P6772095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772095
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】医療機器用ハンドルおよび医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   A61M25/092 510
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-53238(P2017-53238)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153460(P2018-153460A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中神 一樹
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0256489(US,A1)
【文献】 特許第3450325(JP,B2)
【文献】 特開2013−017693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するチューブ状部材の基端側に装着されるハンドルであって、
ハンドル本体と、
前記ハンドル本体に対して回転自在に装着された回転板を含んで構成され、前記チューブ状部材の先端付近を撓ませる回転操作の際に用いられる回転操作部と
を備え、
前記回転板は、
前記回転操作の際に操作される本体部と、
前記本体部に対して着脱可能に構成されており、前記回転操作に応じて前記チューブ状部材の先端付近を撓ませるための1または複数の操作用ワイヤにおける経路を規定する案内機構を有する取付部材と
を備え
前記操作用ワイヤの基端が、前記取付部材側ではなく、前記本体部に固定されている
医療機器用ハンドル。
【請求項2】
前記取付部材は、前記回転板における回転面内方向に沿って着脱可能に構成されており、
前記案内機構の周側面上に、前記経路を規定するための溝が形成されている
請求項1に記載の医療機器用ハンドル。
【請求項3】
前記案内機構における前記経路を規定する曲率の大きさに応じて、前記回転操作の際における前記操作用ワイヤの基端側への引き込み量が規定される
請求項1または請求項2に記載の医療機器用ハンドル。
【請求項4】
前記曲率が相対的に大きくなるのに応じて、前記引き込み量が相対的に小さくなると共に、
前記曲率が相対的に小さくなるのに応じて、前記引き込み量が相対的に大きくなる
請求項3に記載の医療機器用ハンドル。
【請求項5】
前記操作用ワイヤが、前記チューブ状部材の先端付近を双方向に撓ませるための第1および第2の操作用ワイヤにより構成されており、
前記案内機構において、前記第1の操作用ワイヤについての前記経路を規定する第1の曲率と、前記第2の操作用ワイヤについての前記経路を規定する第2の曲率とが、互いに異なっている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の医療機器用ハンドル。
【請求項6】
前記案内機構における前記経路の形状が異なる複数種類の前記取付部材がそれぞれ、前記本体部に対して着脱可能となっている
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の医療機器用ハンドル。
【請求項7】
可撓性を有するチューブ状部材と、
前記チューブ状部材の基端側に装着されたハンドルと
を備え、
前記ハンドルは、
ハンドル本体と、
前記ハンドル本体に対して回転自在に装着された回転板を含んで構成され、前記チューブ状部材の先端付近を撓ませる回転操作の際に用いられる回転操作部と
を備え、
前記回転板は、
前記回転操作の際に操作される本体部と、
前記本体部に対して着脱可能に構成されており、前記回転操作に応じて前記チューブ状部材の先端付近を撓ませるための1または複数の操作用ワイヤにおける経路を規定する案内機構を有する取付部材と
を備え
前記操作用ワイヤの基端が、前記取付部材側ではなく、前記本体部に固定されている
医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば不整脈の検査(診断)や治療等に用いられる電極カテーテルやシースイントロデューサなどの医療機器、およびこのような医療機器に適用される医療機器用ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、血管を通して体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈の検査や治療等に用いられるものである。このような電極カテーテルでは一般に、体内に挿入されたカテーテルチューブの先端(遠位端)付近の形状が、体外に配置される基端(近位端,後端,手元側)に装着された操作部の操作に応じて、片方向あるいは両方向に変化(偏向,湾曲、撓む)するようになっている。
【0003】
また、このような電極カテーテル等のカテーテルを体内に挿入する際に、先行して血管内に導入されてカテーテルの挿入を補助する役割を果たすシース(シースチューブ)を備えたシースイントロデューサ(カテーテルシース装置)が知られている。
【0004】
このような電極カテーテルやシースイントロデューサ等の医療機器用のハンドルの一例は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1のハンドルには、ハンドル本体の延在方向(長手方向)を回転軸として回転自在な回転操作部が、ハンドル本体に装着されている。このような回転操作部には、カテーテルチューブやシースチューブ等のチューブ状部材における先端付近を撓ませるための操作用ワイヤの基端側が、それらのチューブ状部材内から延伸されている。このような回転操作部を回転操作することで、チューブ状部材における先端付近を撓ませることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−54513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したような医療機器では一般に、例えば、上記した操作用ワイヤを利用する回転操作部を簡易に実現して、利便性を向上することが求められている。したがって、利便性を向上させることが可能な医療機器用ハンドルおよび医療機器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルは、可撓性を有するチューブ状部材の基端側に装着されるハンドルであって、ハンドル本体と、このハンドル本体に対して回転自在に装着された回転板を含んで構成され、チューブ状部材の先端付近を撓ませる回転操作の際に用いられる回転操作部とを備えたものである。上記回転板は、上記回転操作の際に操作される本体部と、この本体部に対して着脱可能に構成されており、上記回転操作に応じてチューブ状部材の先端付近を撓ませるための1または複数の操作用ワイヤにおける経路を規定する案内機構を有する取付部材とを備えている。また、上記操作用ワイヤの基端は、上記取付部材側ではなく、上記本体部に固定されている。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る医療機器は、可撓性を有するチューブ状部材と、このチューブ状部材の基端側に装着された、上記本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルとしてのハンドルとを備えたものである。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルおよび医療機器では、回転操作部における回転板が、チューブ状部材の先端付近を撓ませる回転操作の際に操作される本体部と、この本体部に着脱可能な取付部材とにより構成されている。そして、この取付部材には、上記回転操作に応じてチューブ状部材の先端付近を撓ませるための操作用ワイヤにおける経路を規定する、案内機構が設けられている。すなわち、回転板の本体部に対して着脱可能な別部材である取付部材に、操作用ワイヤの経路を規定する案内機構が設けられている。これにより、回転板に案内機構が容易に形成できるようになると共に、例えば、案内機構の形状等が異なる複数種類の取付部材が、単一の本体部に対して共用化できるようになる。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルおよび医療機器では、上記取付部材を、回転板における回転面内方向に沿って着脱可能に構成すると共に、上記案内機構の周側面上に、上記経路を規定するための溝を形成するようにしてもよい。このようにした場合、取付部材の着脱操作が容易になると共に、上記経路を規定するための溝が、案内機構の周側面上に容易に形成できるようになる。したがって、利便性の更なる向上が図られる。
【0011】
また、上記案内機構における上記経路を規定する曲率(曲率半径)の大きさに応じて、上記回転操作の際における操作用ワイヤの基端側への引き込み量が規定されるようにしてもよい。具体的には、例えば、上記曲率が相対的に大きくなる(上記曲率半径が相対的に小さくなる)のに応じて、上記引き込み量が相対的に小さくなると共に、上記曲率が相対的に小さくなる(上記曲率半径が相対的に大きくなる)のに応じて、上記引き込み量が相対的に大きくなるようにしてもよい。このようにした場合、回転操作部(回転板の本体部)への回転操作に対する、チューブ状部材の先端付近の撓み度合い(湾曲具合)が、案内部材において上記経路を規定する曲率(曲率半径)の大きさに応じて、任意に設定できるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルおよび医療機器では、上記操作用ワイヤを、チューブ状部材の先端付近を双方向に撓ませるための第1および第2の操作用ワイヤにより構成すると共に、上記案内機構において、第1の操作用ワイヤについての上記経路を規定する第1の曲率(第1の曲率半径)と、第2の操作用ワイヤについての上記経路を規定する第2の曲率(第2の曲率半径)とを、互いに異ならせるようにしてもよい。このようにした場合、チューブ状部材の先端付近において、一方向への撓み度合いと他方向への撓み度合いとを、互いに異ならせることができるようになる。また、上記第1の曲率(第1の曲率半径)と上記第2の曲率(第2の曲率半径)との大きさの比率に応じて、各方向への撓み度合いの比率も任意に調整できるようになる。したがって、利便性の更なる向上が図られる。
【0013】
また、上記案内機構における上記経路の形状が異なる複数種類の取付部材がそれぞれ、本体部に対して着脱可能となっているようにしてもよい。このようにした場合、上記したように、複数種類の取付部材が単一の本体部に対して共用化できるようになる結果、例えば、種類の異なる取付部材に付け替えるだけで、回転操作部への回転操作に対するチューブ状部材の先端付近の撓み度合いを、任意に調整できるようになる。したがって、利便性の更なる向上が図られる。
【0015】
なお、上記チューブ状部材としては、例えば、シースチューブまたはカテーテルチューブなどが挙げられる。換言すると、本発明が適用される医療機器としては、例えば、シースイントロデューサまたは各種のカテーテル(電極カテーテル等)などが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施の形態に係る医療機器用ハンドルおよび医療機器によれば、回転板の本体部に対して着脱可能な取付部材に、操作用ワイヤの経路を規定する案内機構を設けるようにしたので、回転板に案内機構を容易に形成することができると共に、例えば、案内機構の形状等が異なる複数種類の取付部材を、単一の本体部に対して共用化することができる。よって、医療機器における利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る医療機器としての電極カテーテルの概略構成例を表す模式図である。
図2図1に示した回転操作部付近の内部構成例を表す模式平面図である。
図3図2に示した回転操作部の内部構成例を表す模式斜視図である。
図4図2に示した回転操作部付近の内部構成例を表す模式分解斜視図である。
図5A図1に示した医療機器の使用状態の一例を表す模式図である。
図5B図1に示した医療機器の使用状態の他の例を表す模式図である。
図6】比較例に係る回転操作部付近の内部構成を表す模式平面図である。
図7】変形例1に係る回転操作部付近の内部構成例を表す模式平面図である。
図8】変形例2に係る回転操作部付近の内部構成例を表す模式平面図である。
図9】変形例3に係る医療機器としてのシースイントロデューサの概略構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(医療機器が電極カテーテルである場合の例)
2.変形例
変形例1(案内機構における曲率が相対的に小さい場合の回転操作部の例)
変形例2(案内機構における曲率が左右で非対称である場合の回転操作部の例)
変形例3(医療機器がシースイントロデューサである場合の例)
3.その他の変形例
【0019】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る医療機器としての電極カテーテル1の概略構成例を、模式的に表したものである。具体的には、図1は、この電極カテーテル1の上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表している。
【0020】
電極カテーテル1は、血管を通して体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈の検査や治療等に用いられるものである。この電極カテーテル1は、カテーテル本体(長尺部分)としてのカテーテルチューブ2(カテーテルシャフト)と、このカテーテルチューブ2の基端側に装着されたハンドル3とを備えている。
【0021】
(A.カテーテルチューブ2)
カテーテルチューブ2は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。具体的には、カテーテルチューブ2の軸方向の長さは、ハンドル3の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて数倍〜数十倍程度に長くなっている。なお、このカテーテルチューブ2は、その軸方向に向かって同じ特性のチューブで構成されていてもよいが、比較的可撓性に優れた先端部分と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分とを有するようにするのが好ましい。
【0022】
カテーテルチューブ2の先端側には、一対の操作用ワイヤ(操作用ワイヤ41a,41b)における各先端が固定されている。これらの操作用ワイヤ41a,41bはそれぞれ、詳細は後述するが、カテーテルチューブ2の先端付近を双方向に撓ませるためのワイヤである。そして、これら操作用ワイヤ41a,41bの各基端側は、カテーテルチューブ2内からハンドル3内(後述する回転板320における留め具323a,323b)へ延伸されるようになっている。なお、これらの操作用ワイヤ41a,41bはそれぞれ、本発明における「第2の操作用ワイヤ」および「第1の操作用ワイヤ」の一具体例に対応している。
【0023】
カテーテルチューブ2はまた、自身の軸方向に沿って延在するように内部に1つのルーメン(細孔,貫通孔)が形成された、いわゆるシングルルーメン構造、あるいは複数(例えば4つ)のルーメンが形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、カテーテルチューブ2の内部において、シングルルーメン構造からなる領域とマルチルーメン構造からなる領域との双方が設けられていてもよい。このようなカテーテルチューブ2におけるルーメンには、各種の細線(上記した一対の操作用ワイヤ41a,41bや、図示しない導線等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0024】
カテーテルチューブ2は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。カテーテルチューブ2の軸方向の長さは、約300〜1200mm程度であり、そのうちの先端付近の可撓性部分の長さは、約20〜150mm程度である。また、カテーテルチューブ2の外径(X−Y断面の外径)は、約0.6〜3mm程度(例えば2.0mm)である。
【0025】
また、カテーテルチューブ2の先端付近には、複数の電極(ここでは、3つのリング状電極21および1つの先端電極22)が、所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、リング状電極21は、カテーテルチューブ2の外周面上に固定配置される一方、先端電極22は、カテーテルチューブ2の最先端に固定配置されている。これらの電極は、前述したカテーテルチューブ2のルーメン内に挿通された複数の導線(図示せず)を介して、ハンドル3の内部と電気的に接続されるようになっている。なお、このような導線は、例えば銅等の金属材料により構成されていると共に絶縁性の樹脂で被覆されており、その径は約50〜200μm程度(例えば100μm)である。
【0026】
これらのリング状電極21および先端電極22はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、SUS、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。なお、電極カテーテル1の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。また、これらのリング状電極21および先端電極22の外径は、特には限定されないが、上記したカテーテルチューブ2の外径と同程度であることが望ましい。
【0027】
(B.ハンドル3)
ハンドル3は、電極カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル3は、図1に示したように、カテーテルチューブ2の基端側に装着されたハンドル本体31と、回転板320を含む回転操作部32とを有している。なお、回転板320は、ハンドル本体31に対して、その長手方向(Z軸方向)に垂直な回転軸Ar(Y軸方向)を中心として回転自在に装着された部材である。この回転操作部32は、後述するように、カテーテルチューブ2の先端付近を撓ませる(偏向させる)操作である、回転操作の際に用いられる部分である。
【0028】
(B−1.ハンドル本体31)
ハンドル本体31は、Z軸方向に沿って延在する2つの分割片(図示せず)からなる分割構造となっており、これら2つの分割片によって回転板320を挟み込むようになっている。このハンドル本体31全体の軸方向の長さは、操作者が片手で把持できる程度となっているのが好ましいが、特に限定されない。このようなハンドル本体31は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリル、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン等の合成樹脂により構成されている。
【0029】
(B−2.回転操作部32)
ここで、図1に加えて図2図4を参照して、このようなハンドル3における回転操作部32の詳細構成例について説明する。図2は、図1に示したハンドル3における回転操作部32付近の内部構成例を、模式的に平面図(Z−X平面図)で表したものである。図3は、図2に示した回転操作部32の内部構成例を、模式的に斜視図で表したものである。図4は、図2に示した回転操作部32付近の内部構成例を、模式的に分解斜視図で表したものである。
【0030】
回転操作部32は、図1図4に示したように、前述した回転板320を含んで構成されている。なお、このような回線操作部32(回線板320)もまた、上記したハンドル本体31と同様に、Y軸に沿って分割可能な2つの分割部材により構成されており、分割構造となっている。以降の図2図4ではそれぞれ、主に、これら2つの分割部材のうちの一方(回転操作部32の内部構造)について図示している。
【0031】
回転板320は、前述した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状からなる。具体的には、この例では図1および図2中の矢印d1a,d1bで示したように、ハンドル本体31に対し、回転板320をZ−X平面内で双方向に回転させる操作(回転軸Arを回転中心とした回転操作)が可能となっている。なお、回転板320上には、このような回転操作を可能とするための穴(貫通孔)が、回転軸Ar(回転中心)付近に形成されている。
【0032】
この回転板320の側面には、一対の摘み321a,321bが回転板320と一体的に設けられている。この例では図1図4に示したように、回転軸Arを中心として、摘み321aと摘み321bとが、Z軸を対称軸として互いに線対称となる位置に配置されている。これらの摘み321a,321bはそれぞれ、操作者が回転板320を回転操作させる際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。なお、このような回転板320は、例えば前述したハンドル本体31と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0033】
また、このような回転板320の面上(後述する本体部D1の面上)には、図1図4に示した、一対の留め具323a,323bが設けられている。また、この回転板320(本体部D1)の面上には、このような留め具323a,323bを配置するための窪みが形成されている。これらの留め具323a,323bはそれぞれ、前述した一対の操作用ワイヤ41a,41bの各基端を、ねじ止め等により個別に固定するための部材(ワイヤ留め具)である。なお、これらの留め具323a,323bではそれぞれ、操作用ワイヤ41a,41bの各基端を固定する際のその基端付近の引き込み長(引き込み量)を、任意に調整することが可能となっている。
【0034】
このような操作用ワイヤ41a,41bはそれぞれ、例えばステンレス鋼(SUS)、ニッケルチタン(NiTi)等の超弾性金属材料により構成されており、それらの径は約100〜500μm程度(例えば200μm)である。ただし、必ずしも金属材料で構成されていなくともよく、例えば高強度の非導電性ワイヤ等で構成されていてもよい。
【0035】
ここで、例えば図2図4に示したように、本実施の形態の回転操作部32における回転板320は、互いに分離可能な2つの部材である、本体部D1および取付部材D2により構成されている。
【0036】
本体部D1は、上記した回転操作の際に、操作者によって実際に操作される部分に相当する。この本体部D1は、この例では図2および図4に示したように、回転板320における基端側に位置する、略半円盤状の部材となっている。このような本体部D1の側面に、上記した一対の摘み321a,321bがそれぞれ、一体的に設けられている。また、本体部D1上における基端側の領域に、上記した一対の留め具323a,323bがそれぞれ設けられている。つまり、操作用ワイヤ41a,41bの各基端は、この本体部D1上で固定されている。
【0037】
取付部材D2は、例えば図4中の破線の矢印P1で示したように、本体部D1に対して着脱可能(取付自在)に構成されている部材である。具体的には、この例では図4に示したように、取付部材D2は、回転板320における回転面内方向(Z−X面内方向)に沿って、着脱可能に構成されている。
【0038】
このような取付部材D2には、図2図4に示したように、操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定する案内機構としての、ガイドレール322が設けられている。このガイドレール322は、この例では図3および図4に示したように、全体としてY軸方向に沿って突出した形状を有している。また、ガイドレール322の周側面上(回転板320における外周面の一部)には、このような操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定するための溝G1が、Z軸方向に沿って形成されている。すなわち、このような溝G1がガイドレール322の周側面上に形成されていることで、この溝G1内に操作用ワイヤ41a,41bの各経路が規定されるようになっている。また、このようなZ軸方向に沿った溝G1がガイドレール322の周側面上に形成されていることを換言すると、例えば図3に示したように、ガイドレール322における厚み方向(Y軸方向)に沿った上部分が、Z軸方向に沿って突出した形状となっている。
【0039】
ここで、例えば図2に示したように、このようなガイドレール322における操作用ワイヤ41a,41bの各経路(溝G1)の形状は、略円弧状となっている。また、これらの各経路を規定する曲率を曲率k1、曲率半径を曲率半径R1(=1/k1)とすると、以下のようになっている。すなわち、このような曲率k1(曲率半径R1)の大きさに応じて、詳細は後述するが、回転板320(本体部D1)に対する回転操作の際における、各操作用ワイヤ41a,41bの基端側への引き込み量が規定されるようになっている。
【0040】
[作用・効果]
(A.基本動作)
この電極カテーテル1では、不整脈等の検査や治療の際に、カテーテルチューブ2が血管を通して患者の体内に挿入される。このとき、操作者による回転操作部32(回転板320)に対する回転操作に応じて、体内に挿入されたカテーテルチューブ2の先端付近の形状が、両方向に変化する。
【0041】
具体的には、例えば、操作者がハンドル本体31を片手で掴み、その片手の指で摘み321aを操作することにより、回転板320を図1図2中の矢印d1a方向(右回り)に回転させた場合、以下のようになる。
【0042】
すなわち、例えば図5Aに示したように、カテーテルチューブ2およびハンドル本体31の内部で、前述した一対の操作用ワイヤ41a,41bのうちの一方(この例では操作用ワイヤ41a)が、基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ2の先端付近が、図1中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0043】
一方、例えば、操作者が摘み321bを操作することにより、回転板320を図1図2中の矢印d1b方向(左回り)に回転させた場合、以下のようになる。
【0044】
すなわち、例えば図5Bに示したように、カテーテルチューブ2およびハンドル本体31の内部で、一対の操作用ワイヤ41a,41bのうちの他方(この例では操作用ワイヤ41b)が、基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ2の先端付近が、図1中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0045】
このように、操作者が回転操作部32(回転板320)を回転操作することにより、カテーテルチューブ2の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体31を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、カテーテルチューブ2が患者の体内に挿入された状態のまま、カテーテルチューブ2の先端付近の湾曲方向の向きを、自由に設定することができる。
【0046】
ここで、電極カテーテル1が、例えば不整脈等の検査に用いられる場合、患者の体内に挿入されたカテーテルチューブ2の電極(先端電極22やリング状電極21)を用いて、心電位が測定される。そして、この心電位の情報を基に、検査部位における不整脈等の有無や程度に関する検査が行われる。
【0047】
一方、電極カテーテル1が、例えば不整脈等の治療に用いられる場合、患者の体表に装着された対極板(図示せず)と、患者の体内に挿入された電極カテーテル1の電極との間で、高周波(RF;Radio Frequency)通電がなされる。このような高周波通電によって、治療対象の部位(血管等)が選択的に焼灼(アブレーション)され、不整脈等の経皮的治療がなされる。
【0048】
(B.ハンドル3における作用)
続いて、このような電極カテーテル1のハンドル3における作用について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0049】
(B−1.比較例)
図6は、比較例に係るハンドルにおける回転操作部103付近の内部構成を、模式的に平面図(Z−X平面図)で表したものである。なお、この比較例の回線操作部103(後述する回線板101)もまた、本実施の形態の回転操作部32(回転板320)と同様に、Y軸に沿って分割可能な2つの分割部材により構成されており、分割構造となっている。この図6では、これら2つの分割部材のうちの一方(回転操作部103の内部構造)について図示している。
【0050】
この比較例の回転操作部103は、本実施の形態の回転操作部32において、回転板320の代わりに回転板101を設けたものに対応している。この比較例の回転板101は、本実施の形態の回転板320とは異なり、単一の略円盤状の部材により構成されている。すなわち、この回転板101には、回転板320とは異なり、一対の摘み321a,321b、一対の留め具323a,323b、および、一対の操作用ワイヤ41a,41bの各経路を規定する案内機構としてのガイドレール102のいずれもが、設けられている。
【0051】
このガイドレール102は、操作用ワイヤ41a,41bの各経路を規定する円弧状の形状となっており、回転板101上でY軸方向に沿って立設された壁状構造を有している。そして、操作用ワイヤ41aの基端は、このガイドレール102を経由して、回転板101上の留め具323aに固定されていると共に、操作用ワイヤ41bの基端は、ガイドレール102を経由して、回転板101上の留め具323bに固定されている。
【0052】
ところが、このような構成からなる比較例の回転操作部103では、以下のような問題が生じるおそれがある。
【0053】
すなわち、まず、上記したガイドレール102は、回転板101上に立設された壁状構造であることから、以下のことが言える。すなわち、このガイドレール102の壁面上に操作用ワイヤ41a,41bをそれぞれ沿わせた状態で、操作用ワイヤ41a,41bの基端をそれぞれ留め具323a,323bに固定する作業が、困難なものとなる。
【0054】
また、このようなガイドレール102を成形する際には、一般に金型が用いられる。ここで、例えば上記した壁状構造のガイドレール102を備える回転板を、金型によって成型する場合、この金型は、Y軸方向に沿って回転板101を挟み込むものとなる。これは、Z軸方向に沿って挟み込むような金型では、Y軸方向に沿った穴や窪み等(例えば、前述した回転軸Ar付近の貫通孔や、留め具323a,323bを配置するための窪み等)を、形成することができないからである。一方で、このようなY軸方向に沿って挟み込む金型を用いた場合、Y軸方向に沿って立設された壁状構造を有するガイドレール102の側面に、Z軸方向に沿った溝を形成することができない。これは、成型後にY軸方向に沿って金型を外すときに、このZ軸方向に沿った溝に引っかかって金型が抜けなくなってしまうからである。このようにして、金型を用いて回転板101にガイドレール102を一体成型する場合、このガイドレール102の壁面(側面)上に、操作用ワイヤ41a,41bを沿わせるための溝(Z軸方向に沿った溝)を形成することはできないと言える。
【0055】
これらのことから、この比較例の回転操作部103では、各操作用ワイヤ41a,41bを沿わせる作業が容易となるようなガイドレール102を形成することが困難となり、利便性が損なわれるおそれがある。
【0056】
(B−2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態の電極カテーテル1におけるハンドル3は、図2図4に示したように、以下の構成となっている。
【0057】
すなわち、このハンドル3では、回転操作部32における回転板320が、カテーテルチューブ2の先端付近を撓ませる回転操作の際に操作される本体部D1と、この本体部D1に着脱可能な取付部材D2とにより構成されている。そして、この取付部材D2には、上記した回転操作に応じてカテーテルチューブ2の先端付近を撓ませるための操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定する、ガイドレール322が設けられている。すなわち、このハンドル3では、回転板320の本体部D1に対して着脱可能な別部材である取付部材D2に、操作用ワイヤ41a,41bの各経路を規定するガイドレール322が設けられている。
【0058】
このような構成によりハンドル3では、上記した比較例のハンドルと比べ、回転板320にガイドレール322が、容易に形成できるようになる。具体的には、このガイドレール322は、上記したように、本体部D1とは別部材である取付部材D2に設けられていることから、この取付部材D2を成形する際に、各操作用ワイヤ41a,41bを沿わせる作業が容易となるようなガイドレール322を形成することが容易となる。詳細には、このようなガイドレール322を金型を用いて成形する際に、前述した溝G1を形成することが容易となるため、この溝G1を利用して各操作用ワイヤ41a,41bを固定する作業が、容易なものとなる。
【0059】
これは、以下の理由によるものである。すなわち、まず、取付部材D2には、上記した比較例の回転板101とは異なり、Y軸方向に沿った穴や窪み等(例えば、回転軸Ar付近の貫通孔や、留め具323a,323bを配置するための窪み等)が設けられていない。したがって、この取付部材D2については、Z軸方向に沿って挟み込む金型を用いて成型することが可能である。また、このZ軸方向に沿って挟み込む金型の場合、上記比較例とは異なり、Y軸方向に沿って突出した形状(壁状構造)を有するガイドレール322の周側面上に、Z軸方向に沿った溝G1を形成することが可能となる。これは、上記比較例とは異なり、成型後にZ軸方向に沿って金型を外すときに、このZ軸方向に沿った溝G1に引っかかって金型が抜けなくなるおそれがないからである。このようにして本実施の形態の回転操作部32(回転板320)では、本体部D1については、上記比較例と同様にして、Y軸方向に沿って挟み込む金型を用いて成型する一方、取付部材D2については、Z軸に沿って挟み込む金型を用いて成型するようにしている。このようにして本実施の形態では、本体部D1と取付部材D2とをそれぞれ、個別の金型を用いて成形することから、双方の部材とも、簡単な構造の金型を用いて容易に成形することが可能となる。その結果、上記したように、ガイドレール322を金型を用いて成形する際に、溝G1を形成することが容易となると言える。
【0060】
また、このようなハンドル3では、例えば、ガイドレール322の形状等が異なる複数種類の取付部材D2が、単一の本体部D1に対して共用化できるようになる。その結果、後述する変形例1,2等にて詳述するが、例えば、形状や長さが異なるガイドレール322を有する取付部材D2に付け替えることで、カテーテルチューブ2の先端付近の撓み度合い(湾曲具合)を、容易に調整できるようになる。
【0061】
これらのことから、本実施の形態のハンドル3では比較例のハンドルと比べ、利便性の向上が図られることになる。
【0062】
また、本実施の形態のハンドル3では、例えば図4等に示したように、取付部材D2が、回転板320における回転面内方向に沿って着脱可能に構成されていると共に、ガイドレール322の周側面上に、上記した各経路を規定するための溝G1が形成されている。これにより、取付部材D2の着脱操作が容易になると共に、ガイドレール322の周側面上に、そのような溝G1が容易に形成できるようになる。したがって、利便性の更なる向上が図られる。
【0063】
更に、このハンドル3では前述したように、ガイドレール322における曲率k1(曲率半径R1)の大きさに応じて、回転板320に対する回転操作の際における、各操作用ワイヤ41a,41bの基端側への引き込み量が規定されるようになっている。具体的には、曲率k1が相対的に大きくなる(曲率半径R1が相対的に小さくなる)のに応じて、回転操作に対する操作用ワイヤ41a,41bの反応が相対的に鈍感となり、引き込み量が相対的に小さくなる。一方、曲率k1が相対的に小さくなる(曲率半径R1が相対的に大きくなる)のに応じて、回転操作に対する操作用ワイヤ41a,41bの反応が相対的に敏感となり、引き込み量が相対的に大きくなる。このようにして、回転板320への回転操作に対するカテーテルチューブ2の先端付近の撓み度合い(湾曲具合)が、ガイドレール322における曲率k1(曲率半径R1)の大きさに応じて、任意に設定できるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0064】
以上のように本実施の形態では、回転板320の本体部D1に対して着脱可能な取付部材D2に、操作用ワイヤ41a,41bの経路を規定するガイドレール322を設けるようにしたので、以下のようになる。すなわち、回転板320にガイドレール322を容易に形成することができると共に、例えば、ガイドレール322の形状等が異なる複数種類の取付部材D2を、単一の本体部D1に対して共用化することができる。よって、医療機器としての電極カテーテル1において、利便性を向上させることが可能となる。
【0065】
<変形例>
続いて、本発明の変形例(変形例1〜3)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0066】
[変形例1]
図7は、変形例1に係るハンドルにおける回転操作部32A付近の内部構成例を、模式的に平面図(Z−X平面図)で表したものである。
【0067】
この変形例1の回転操作部32Aは、実施の形態における回転操作部32と同様に、本体部D1および取付部材D2を有する回転板320Aを含んで構成されている。また、本変形例の回転板320Aは、実施の形態における回転板320において、取付部材D2の形状を一部変更したものに対応しており、他の構成(本体部D1等の構成)は基本的には同様となっている。
【0068】
具体的には、本変形例の取付部材D2は、実施の形態の取付部材D2において、ガイドレール322の代わりにガイドレール322Aを設けたものに対応している。このガイドレール322Aの周側面上(回転板320Aにおける外周面の一部)には、ガイドレール322の場合と同様に、操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定するための、溝G2が形成されている。すなわち、このような溝G2がガイドレール322Aの周側面上に形成されていることで、この溝G2内に操作用ワイヤ41a,41bの各経路が規定されるようになっている。
【0069】
ここで、例えば図7に示したように、ガイドレール322Aにおいて、操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定する曲率を曲率k2、曲率半径を曲率半径R2(=1/k2)とすると、以下のようになっている。すなわち、これらの曲率k2および曲率半径R2と、実施の形態で説明したガイドレール322における曲率k1および曲率半径R2との大小関係について、以下の(1)式および(2)式が成り立つようになっている。具体的には、本変形例の曲率k2は、実施の形態の曲率k1よりも大きくなるように設定されていると共に、本変形例の曲率半径R2は、実施の形態の曲率半径R1よりも小さくなるように設定されている。
k2>k1 ……(1)
R2<R1 ……(2)
【0070】
なお、曲率k1,k2はそれぞれ、本発明における「第1の曲率」および「第2の曲率」の一具体例に対応している。また、曲率半径R1,R2はそれぞれ、本発明における「第1の曲率半径」および「第2の曲率半径」の一具体例に対応している。
【0071】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0072】
また、特に本変形例では、操作用ワイヤ41a,41bの各経路を規定する形状が異なる複数種類の取付部材D2をそれぞれ、本体部D1に対して実際に着脱可能としている。具体的には、例えば、実施の形態で説明したガイドレール322を有する取付部材D2や、本変形例で説明したガイドレール322Aを有する取付部材D2などがそれぞれ、単一の本体部D1に対して着脱可能となっている。したがって、実施の形態においても述べたように、複数種類の取付部材D2が単一の本体部D1に対して共用化できるようになる結果、例えば、種類の異なる取付部材D2に付け替えるだけで、回転操作に対するカテーテルチューブ2の先端付近の撓み度合い(湾曲具合)を、任意に調整できるようになる。よって本変形例では、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0073】
なお、本変形例とは逆に、実施の形態の曲率k1よりも小さい曲率(実施の形態の曲率半径R1よりも大きい曲率半径)を有するガイドレールを、回転板における取付部材に設けるようにしてもよい。
【0074】
[変形例2]
図8は、変形例2に係るハンドルにおける回転操作部32B付近の内部構成例を、模式的に平面図(Z−X平面図)で表したものである。
【0075】
この変形例2の回転操作部32Bも、実施の形態における回転操作部32と同様に、本体部D1および取付部材D2を有する回転板320Bを含んで構成されている。また、本変形例の回転板320Bも、実施の形態における回転板320において、取付部材D2の形状を一部変更したものに対応しており、他の構成(本体部D1等の構成)は基本的には同様となっている。
【0076】
具体的には、本変形例の取付部材D2は、実施の形態の取付部材D2において、ガイドレール322の代わりにガイドレール322Bを設けたものに対応している。このガイドレール322Bの周側面上(回転板320Bにおける外周面の一部)には、ガイドレール322,322Aの場合と同様に、操作用ワイヤ41a,41bにおける各経路を規定するための、溝が形成されている。
【0077】
ただし、この本変形例のガイドレール322Bでは、ガイドレール322,322Aの場合とは異なり、このような経路を規定する曲率(曲率半径)の大きさが、操作用ワイヤ41a側の領域と操作用ワイヤ41b側の領域とで、非対称となっている。すなわち、このガイドレール322Bでは、図8に示したように、操作用ワイヤ41aについての経路を規定する曲率k2(曲率半径R2)と、操作用ワイヤ41bについての経路を規定する曲率k1(曲率半径R1)とが、互いに異なっている(k1≠k2,R1≠R2)。具体的には、前述した図7を参照すると、操作用ワイヤ41a側の曲率k2は、操作用ワイヤ41b側の曲率k1よりも大きくなるように設定されていると共に、操作用ワイヤ41a側の曲率半径R2は、操作用ワイヤ41b側の曲率半径R1よりも小さくなるように設定されている(k2>k1,R2<R1)。このようにガイドレール322Bの周側面上には、曲率k1および曲率半径R1を有する溝G1(操作用ワイヤ41b側の領域)と、曲率k2および曲率半径R2を有する溝G2(操作用ワイヤ41a側の領域)とが、それぞれ形成されるようになっている。
【0078】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0079】
また、特に本変形例のガイドレール322Bでは、上記したように、操作用ワイヤ41aについての経路を規定する曲率k2(曲率半径R2)と、操作用ワイヤ41bについての経路を規定する曲率k1(曲率半径R1)とが、互いに異なっている。これにより、カテーテルチューブ2の先端付近において、一方向への撓み度合い(例えば図1中の矢印2a参照)と、他方向への撓み度合い(例えば図1中の矢印d2b参照)とを、互いに異ならせることができるようになる。また、曲率k1(曲率半径R1)と曲率k2(曲率半径R2)との大きさの比率に応じて、各方向への撓み度合いの比率も、任意に調整できるようになる。よって本変形例では、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0080】
[変形例3]
(構成)
図9は、変形例3に係る医療機器としてのシースイントロデューサ5の概略構成例を、模式的に表したものである。具体的には、この図9は、シースイントロデューサ5の上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表している。
【0081】
シースイントロデューサ5は、電極カテーテル等におけるカテーテルチューブ2を患者の体内に挿入する際に、これに先行してシースチューブ6が体内に導入されることで、血管内にカテーテルチューブ2が挿通される通路を確保するための装置である。このシースイントロデューサ5は、シース本体(長尺部分)としてのシースチューブ6(シースシャフト)と、このシースチューブ6の基端側に装着されたハンドル3とを備えている。
【0082】
ここで、ハンドル3の構成は、基本的は、実施の形態等で説明したハンドル3と同様のものとなっている。具体的には、ハンドル3は、ハンドル本体31と、回転操作部32,32A,32Bのいずれかと、を備えている。また、このシースイントロデューサ5におけるハンドル本体31には、例えば図9に示したように、エクステンションチューブ70の先端側が挿入されており、このエクステンションチューブ70の基端側には、2つの分岐路721,722を有する三方活栓71が設けられている。
【0083】
シースチューブ6は、カテーテルチューブ2と同様に、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。このシースチューブ6内には、例えば図9に示したように、カテーテルチューブ2を挿通することができるようになっている。また、シースチューブ6の先端側には、カテーテルチューブ2の場合と同様に、前述した一対の操作用ワイヤ41a,41bにおける各先端が固定されている。そして、これら操作用ワイヤ41a,41bの各基端側も、カテーテルチューブ2の場合と同様に、シースチューブ6内からハンドル3内(回転板320,320A,320Bのいずれかにおける留め具323a,323b)へ延伸されるようになっている。
【0084】
このようなシースチューブ6は、例えばカテーテルチューブ2と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。シースチューブ6の軸方向の長さは、約300〜900mm程度であり、そのうちの先端付近の可撓性部分の長さは、約20〜150mm程度である。また、シースチューブ6の外径(X−Y断面の外径)は、約2.0〜5.0mm程度(好ましくは、約2.6〜4.3mm程度)であり、シースチューブ6の内径(X−Y断面の内径)は、約1.6〜4.3mm程度(好ましくは、約2.0〜2.8mm程度)である。
【0085】
エクステンションチューブ70は、ハンドル本体31内を介して以下説明する薬液L1,L2等をシースチューブ6内へ注入させる際の、薬液L1,L2等の流路となるチューブ状部材である。なお、このエクステンションチューブ70もまた、例えばカテーテルチューブ2と同様の合成樹脂等により構成されている。
【0086】
三方活栓71は、分岐路721,722とエクステンションチューブ70との間で、流路の接続状態および遮断状態を選択的に切り替えすることが可能な部材(分岐コネクタ)である。これにより、この例では、分岐路721側から注入される薬液L1を選択的にエクステンションチューブ70側へ注入させたり、分岐路722側から注入される薬液L2を選択的にエクステンションチューブ70側へ注入させたり、これら分岐路721,722側の双方を遮断させたりすることが可能となっている。なお、このような薬液L1,L2としては、例えば造影剤等が挙げられる。
【0087】
(作用・効果)
このシースイントロデューサ5では、不整脈等の検査や治療の際に、電極カテーテル等におけるカテーテルチューブ2に先行して、シースチューブ6が血管を通して患者の体内に挿入される。これにより挿入先の血管内に挿通路が確保され、カテーテルチューブ2の挿入が補助される。
【0088】
ここで、シースチューブ6の体内への導入方法(操作者による操作方法)としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0089】
すなわち、まず、シースチューブ6の内孔にダイレータ(図示せず)が挿入され、このダイレータと一体化されたシースチューブ6が患者の血管内に挿入される。そして、操作者による回転操作部32に対する回転操作が行われつつ、予め挿入されているガイドワイヤ(図示せず)に沿って、シースチューブ6が目的部位(患部)に向けて移動される。このとき、回転操作部32への回転操作に応じて、体内に挿入されたシースチューブ6の先端付近の形状が、両方向に変化する。
【0090】
具体的には、例えば、操作者がハンドル本体31を片手で掴み、その片手の指で摘み321aを操作することにより、回転板320を図9中の矢印d1a方向(右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、シースチューブ6およびハンドル本体31の内部で、一対の操作用ワイヤ41a,41bのうちの一方(この例では操作用ワイヤ41a)が、基端側へ引っ張られる。すると、このシースチューブ6の先端付近が、図9中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0091】
一方、例えば、操作者が摘み321bを操作することにより、回転板320を図9中の矢印d1b方向(左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、シースチューブ6およびハンドル本体31の内部で、一対の操作用ワイヤ41a,41bのうちの他方(この例では操作用ワイヤ41b)が、基端側へ引っ張られる。すると、このシースチューブ6の先端付近が、図9中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0092】
このように、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、シースチューブ6の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体31を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、シースチューブ6が患者の体内に挿入された状態のまま、シースチューブ6の先端付近の湾曲方向の向きを自由に設定することができる。
【0093】
続いて、シースチューブ6の先端開口が目的部位(患部)の近傍に到達した時点で、上記したダイレータおよびガイドワイヤが抜去される。これによりシースチューブ6の先端部分が、患者の体内に留置される。そして、このようにして体内に導入されたシースチューブ6を利用して、カテーテルチューブ2を体内に挿入することができる。
【0094】
なお、カテーテルチューブ2の体内への挿入方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0095】
すなわち、まず、カテーテルチューブ2の先端が、ハンドル3の基端からシースチューブ6の内孔へ挿入される。そして、操作者によるカテーテルの回転操作部(カテーテルチューブ2の基端側に設けられたハンドル内に配置:図9中に図示せず)に対する回転操作が行われつつ、シースチューブ6の内孔に沿ってカテーテルチューブ2が移動される。これにより例えば図9に示したように、シースチューブ6の先端開口から、カテーテルチューブ2の先端付近が延び出される。
【0096】
続いて、操作者が上述したカテーテルの回転操作部を回転操作することにより、カテーテルチューブ2の首振り偏向動作を行う。また、必要に応じて、シースイントロデューサ5における回転操作部32を回転操作することにより、シースチューブ6の首振り偏向動作を行う。これにより、カテーテルチューブ2の先端部(例えば、電極カテーテルにおけるリング状電極21および1つの先端電極22等)の位置が調整され、目的部位(患部)に到達することができる。
【0097】
このようにしてカテーテルチューブ2の先端部が位置決めされた後、カテーテルによる手技(検査や治療等)が行われる。そして、カテーテルによる手技の終了後、カテーテルチューブ2が体内から抜去され、次いで、シースチューブ6が体内から抜去される。以上のようにして、シースイントロデューサ5および電極カテーテル等のカテーテルを用いた、不整脈等の検査や治療が行われる。
【0098】
本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。具体的には、本変形例のシースイントロデューサ5においても、上記実施の形態と同様の構成のハンドル3を設けるようにしたので、医療機器としてのシースイントロデューサ5において、利便性を向上させることが可能となる。
【0099】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0100】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の構成(形状や配置位置、個数、材料等)は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、個数、材料等としてもよい。具体的には、例えば、ハンドル本体や回転操作部、回転板(本体部および取付部材)、案内機構(ガイドレール)等の構成(形状や配置位置、個数、材料等)は、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の構成としてもよい。詳細には、例えば上記実施の形態等では、案内機構の周側面上に溝が形成されていることで、この溝の内部に操作用ワイヤの経路が規定されるようになっていたが、例えば回転板上に立設された突起(壁状構造)等によって、そのような経路を規定する案内機構を構成するようにしてもよい。また、例えば上記実施の形態等では、このような操作用ワイヤの経路(溝)の形状が、略円弧状となっている場合について説明したが、この例には限られず、例えば、この操作用ワイヤの経路(溝)が直線状などの他の形状となっているようにしてもよい。更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータ(曲率や曲率半径等)の大きさや大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の大きさや大小関係等であってもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、チューブ状部材(カテーテルチューブ2およびシースチューブ6)の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばカテーテルチューブ2の内部に、首振り部材として、撓み方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、カテーテルチューブ2における電極の構成(リング状電極21および先端電極22の配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。
【0102】
更に、上記実施の形態等では、ハンドル(ハンドル本体および回転操作部)の構成についても具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態等では、操作用ワイヤの基端が回転板上(本体部)に固定されている場合の例を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、操作用ワイヤの基端が、回転板上(本体部)には固定されていないようにしてもよい。具体的には、例えば、操作用ワイヤの基端が、回転板における回転動作に連動して動く(変位する)部材に固定されているようにしてもよい。
【0103】
加えて、チューブ状部材(カテーテルチューブ2またはシースチューブ6)における先端付近の形状の態様は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。具体的には、上記実施の形態等では、チューブ状部材における先端付近の形状が回転操作部への回転操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)の医療機器を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明は、例えば、チューブ状部材における先端付近の形状が回転操作部への回転操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)の医療機器にも、適用することが可能である。なお、この場合、操作用ワイヤおよび留め具等をそれぞれ、1本(1つ)だけ設けることとなる。
【0104】
また、本発明に係る医療機器の一具体例としての電極カテーテルは、不整脈等の検査用の電極カテーテル(いわゆるEPカテーテル)、および不整脈等の治療用の電極カテーテル(いわゆるアブレーションカテーテル)のいずれにも適用することが可能である。
【0105】
更に、上記実施の形態等では、本発明に係る医療機器の一具体例として、電極カテーテルおよびシースイントロデューサを挙げて説明したが、これらには限られない。すなわち、本発明に係る医療機器用ハンドルは、例えば、ガイドカテーテル(ガイディングカテーテル)、血管造影用カテーテルおよびマイクロカテーテル等の他の医療機器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1…電極カテーテル、2…カテーテルチューブ、21…リング状電極、22…先端電極、3…ハンドル、31…ハンドル本体、32,32A,32B…回転操作部、320,320A,320B…回転板、321a,321b…摘み、322,322A,322B…ガイドレール(案内機構)、323a,323b…留め具、41a,41b…操作用ワイヤ、5…シースイントロデューサ、6…シースチューブ、70…エクステンションチューブ、71…三方活栓、721,722…分岐路、Ar…回転軸、D1…本体部、D2…取付部材、R1,R2…曲率半径、k1,k2…曲率、G1,G2…溝、L1,L2…薬液。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9