(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記境界線の中央部に設けられた前記折り曲げ容易部が形成されていない領域の長さは、前記巻回型電極体の厚みに対して40%以上95%以下である、請求項1に記載されている角形二次電池。
前記境界線の中央部において前記折り曲げ容易部の厚みよりも大きい厚みを有する部分の長さは、前記巻回型電極体の厚みに対して40%以上95%以下である、請求項5に記載されている角形二次電池。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)や電気自動車(EV)用の電源として、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池やニッケル水素二次電池等の二次電池が利用されている。
【0003】
これらの二次電池は、特にスペース効率が要求される場合においては円筒形のものよりも角形の電池に対するニーズが高い。更に、物理的強度が必要とされる場合、電池の外装体として金属製のケースが一般的に採用されている。
【0004】
例えば角形非水電解質二次電池は、以下のようにして作製される。すなわち、帯状の銅箔等からなる負極芯体(集電体)の両面に負極活物質を含有する負極活物質合剤を塗布して負極極板を作製する。また、帯状のアルミニウム箔等からなる正極芯体の両面に正極活物質を含有する正極活物質合剤を塗布した正極極板を作製する。
【0005】
次いで、負極極板と正極極板とを、微多孔性ポリエチレンフィルム等からなるセパレータを間に配置して重ね合わせ、負極極板及び正極極板をセパレータにより互いに絶縁した状態で円柱状の巻き芯に渦巻状に巻回して、円筒状の巻回型電極体を作製する。
【0006】
次いで、この円筒状巻回型電極体をプレス機で押し潰し、角形の電池外装体に挿入できるような偏平状巻回型電極体に成形した後、これを角形外装体に収容し、電解液の注液孔を除いて電池外装体の開口部を封口し、電解液を注液して最後に電解液の注液孔を閉じることで角形非水電解質二次電池としている。
【0007】
また、外装体として金属製のケースを採用した場合は上記に加えて更に、外装体である金属ケース(以下、「外装缶」という)と電極体との間の絶縁のために、電気絶縁性を有する部材で上記偏平状巻回型電極体を予め包んでから外装缶内に収容することで、外装缶を有する角形非水電解質二次電池が作製される(特許文献1〜3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
偏平状の巻回型電極体と角形外装体を絶縁するために偏平状の巻回型電極体と角形外装体の間に絶縁シートが配置された角形二次電池であっても、その角形二次電池の使用条件によっては、正極又は負極が角形外装体と短絡してしまう可能性があることを本願発明者らは見出した。この短絡は、正極の正極芯体露出部分または負極の負極芯体露出部分と対向する角形外装体の側面と底面との境界近傍で発生する可能性があることを見出した。このような現象は特許文献1乃至3にも他の文献にも記載されていない現象である。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、絶縁シートで覆われた偏平状の巻回型電極体の角形外装体への挿入性に優れ、正極又は負極が角形外装体と短絡することを防止できる角形二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態の角形二次電池は、一つの面が開口している箱状の金属製の角形外装体と、前記開口を封口する封口板と、正極と負極がセパレータを介して巻回され、前記角形外装体に収容される巻回型電極体と、前記巻回型電極体と前記角形外装体の間に配置される絶縁シートを備え、前記角形外装体は、前記開口に対向する底面と、互いに対向する一対の第1側壁と、前記第1側壁の面積よりも大きな面積を有し互いに対向する一対の第2側壁とを有しており、前記巻回型電極体は、巻回軸方向における一方の端部に巻回された正極芯体露出部を有し、前記巻回軸方向における他方の端部に巻回された負極芯体露出部を有しているとともに、巻回軸が前記角形外装体の前記底面と平行に前記角形外装体内に収容されており、前記正極芯体露出部は前記一対の第1側壁のうち一方側に配置されており、前記負極芯体露出部は前記一対の第1側壁のうち他方側に配置されており、前記絶縁シートは、前記巻回型電極体と前記角形外装体の前記底面との間に配置される底部領域と、前記底部領域から前記封口板に向かって延びると共に前記第1側壁と前記巻回型電極体との間に配置されている第1領域を有し、前記底部領域と前記第1領域の境界線の両端部には、周辺に比べて厚みを減少させている部分及び少なくとも一部を切断させている部分の少なくとも一方からなる折り曲げ容易部が形成されており、前記境界線の中央部には前記折り曲げ容易部が形成されていない構成を有している。
【0012】
上述の角形二次電池においては、絶縁シートの底部領域と第1領域の境界線の両端部に折り曲げ容易部を設けて境界線を折り曲げやすくしている。このため、絶縁シートが所望の形状となり、絶縁シートで覆われた巻回型電極体の角形外装体への挿入性が向上する。また、上述の角形二次電池においては、正極芯体露出部又は負極芯体露出部が突き刺さるおそれがある絶縁シートの底部領域と第1領域の境界線の中央部には折り曲げ容易部を設けない。このため、正極又は負極が角形外装体と短絡することを確実できる。また、上述の角形二次電池によると、絶縁シートで覆われた巻回型電極体の角形外装体への挿入性が向上するため、角形外装体ないし絶縁シート等に損傷が生じることが抑制された信頼性の高い角形二次電池となる。
【0013】
前記境界線の中央部に設けられた前記折り曲げ容易部が形成されていない領域の長さは、前記巻回型電極体の厚みに対して40%以上95%以下であることが好ましく、45%以上85%以下であることがより好ましく、50%以上80%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
前記折り曲げ容易部は、切れ目、薄肉部及びミシン目のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0015】
前記折り曲げ容易部は薄肉部であり、 前記薄肉部は、前記絶縁シートのうち前記巻回型電極体と向かい合う面を凹ませて形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の一形態の角形二次電池は、一つの面が開口している箱状の金属製の角形外装体と、前記開口を封口する封口板と、正極と負極がセパレータを介して巻回され、前記角形外装体に収容される巻回型電極体と、前記巻回型電極体と前記角形外装体の間に配置される絶縁シートを備え、前記角形外装体は、前記開口に対向する底面と、互いに対向する一対の第1側壁と、前記第1側壁の面積よりも大きな面積を有し互いに対向する一対の第2側壁とを有しており、前記巻回型電極体は、巻回軸方向における一方の端部に巻回された正極芯体露出部を有し、前記巻回軸方向における他方の端部に巻回された負極芯体露出部を有しているとともに、巻回軸が前記角形外装体の前記底面と平行に前記角形外装体内に収容されており、前記正極芯体露出部は前記一対の第1側壁のうち一方側に配置されており、前記負極芯体露出部は前記一対の第1側壁のうち他方側に配置されており、前記絶縁シートは、前記巻回型電極体と前記角形外装体の前記底面との間に配置される底部領域と、前記底部領域から前記封口板に向かって延びると共に前記第1側壁と前記巻回型電極体との間に配置されている第1領域を有し、前記底部領域と前記第1領域の境界線の両端部には、周辺に比べて厚みが小さい部分からなる折り曲げ容易部が形成されており、前記境界線の中央部の厚みは、前記折り曲げ容易部の厚みよりも大きい構成を有している。
【0017】
上述の角形二次電池においては、絶縁シートの底部領域と第1領域の境界線の両端部には折り曲げ容易部を設けて境界線を折り曲げやすくしている。このため、絶縁シートが所望の形状となり、絶縁シートで覆われた巻回型電極体の角形外装体への挿入性が向上する。また、上述の角形二次電池においては、正極芯体露出部又は負極芯体露出部が突き刺さるおそれがある絶縁シートの底部領域と第1領域の境界線の中央部の厚みを、折り曲げ容易部の厚みよりも大きくしている。このため、正極又は負極が角形外装体と短絡することを確実できる。また、上述の角形二次電池によると、絶縁シートで覆われた巻回型電極体の角形外装体への挿入性が向上するため、角形外装体ないし絶縁シート等に損傷が生じることが抑制された信頼性の高い角形二次電池となる。
【発明の効果】
【0018】
絶縁シートで覆われた巻回型電極体の角形外装体への挿入性に優れ、正極又は負極が角形外装体と短絡することが防止された角形二次電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態について説明を行う前に、本願発明に至った経緯を説明する。
【0021】
一枚の絶縁シートを有底箱状に折り曲げ加工し、その内部に偏平状の巻回型電極体が配置された角形二次電池を作製し、この角形二次電池を、激しい振動にさらされる環境において長時間使用したところ、正極又は負極が金属製の角形外装体と短絡してしまう現象が、稀ではあるが発生することが判明した。その原因を調べたところ、絶縁シートのうち、正極又は負極の芯体露出部分が対向している側面と底面との境界部分が、正極又は負極の芯体である金属箔により突き破られて、その芯体と角形外装体とが接触していることがわかった。
【0022】
上記の角形二次電池においては、絶縁シートを有底箱状に折り曲げ加工するために、側面と底部の境界となる部分にミシン目ないしは薄肉部を設けた。そして、絶縁シートにおいてミシン目ないしは薄肉部が形成されている部分を、巻回された正極芯体露出部又は巻回された負極芯体露出部において湾曲した部分の先端部が突き破り、正極芯体露出部又は負極芯体露出部と角形外装体とが接触することが分かった。そこで当該側面と底面との境界部分にミシン目も薄肉部も設けないようにしたところ、絶縁シートにおいて側面と底面との境界近傍が所望の形状となり難く、絶縁シートに収容された巻回型電極体の角形外装体への挿入が困難になる。例えば、絶縁シートに収容された巻回型電極体が角形外装体内の所定の位置に配置されない可能性がある。あるいは、絶縁シートないし角形外装体が損傷する等のおそれがある。本願発明者らはこのような事態を解決するために鋭意検討を行った結果本願発明を想到するに至った。
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0024】
最初に本実施形態に係る非水電解質を用いた角形二次電池を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。この角形二次電池10は、正極極板と負極極板とがセパレータ(何れも図示省略)を介して巻回された偏平状の巻回型電極体11を、絶縁シート301で被覆した後、箱状の角形外装体12の内部に収容し、封口板13によって角形外装体12を密閉したものである。なお、
図1及び
図2においては、絶縁シート301の図示は省略してある。
【0025】
角形外装体12は、封口板13によって密閉される開口に対向している底面12cと、互いに対向する一対の第1側壁12a,12aと、第1側壁12a,12aよりも面積が大きく且つ互いに対向する一対の第2側壁12b,12bとを有している。
【0026】
正極極板は、正極芯体としてのアルミニウム箔の両面に、帯状のアルミニウム箔が露出している正極芯体露出部14が形成されるように、正極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することにより作製されている。また、負極極板は、負極芯体としての銅箔の両面に、帯状の銅箔が露出している負極芯体露出部15が形成されるように、負極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することによって作製されている。そして、巻回型電極体11は、正極極板及び負極極板を、正極芯体露出部14及び負極芯体露出部15とが、それぞれ対向する電極の活物質合剤塗布部分と重ならないようにずらした状態で、かつ、巻回軸方向の一方の端部には正極芯体露出部14が、もう一方の端部には負極芯体露出部15がそれぞれ位置するように、例えばポリエチレン製の多孔質セパレータ(図示省略)を介して巻回された後、偏平状に形成されることにより作製されている。
【0027】
このうち、正極芯体露出部14は正極集電体16を介して正極端子17に接続され、負極芯体露出部15は負極集電体181を介して負極端子19に接続されている。なお、正極集電体16は本体部16a及びこの本体部16aから略垂直に折り曲げられたリブ16bを有しており、本体部16aが正極集電受け部品(図示省略)と正極芯体露出部14を挟んで抵抗溶接されている。同じく負極集電体181は本体部181a及びこの本体部181aから略垂直に折り曲げられたリブ181bを有しており、負極集電受け部品182は本体部182a及びこの本体部182aから略垂直に折り曲げられたリブ182bを有しており、負極集電体181の本体部181aが負極集電受け部品182の本体部182aと負極芯体露出部15を挟んで抵抗溶接されている。なお、
図1における破線丸印部分が抵抗溶接箇所である。
【0028】
なお、巻回型電極体11は、巻回軸を角形外装体12の底面12cと平行にして角形外装体12の中に収容されている。そして、正極芯体露出部14は一対の第1側壁12a,12aのうちの一方側に面するように配置されており、負極芯体露出部15は一対の第1側壁12a,12aのうちの他方側に面するように配置されている。
【0029】
また、正極端子17、負極端子19はそれぞれ絶縁部材20、21を介して封口板13に固定されている。この角形二次電池10は、巻回型電極体11を金属製の角形外装体12内に挿入した後、封口板13を角形外装体12の開口部にレーザ溶接し、その後電解液注液孔(図示省略)から非水電解液を注液して、この電解液注液孔を密閉することにより作製されている。
【0030】
ここで、本実施形態の角形二次電池10における、巻回型電極体11及び絶縁シート301の具体的構成と、巻回型電極体11を絶縁シート301で被覆する方法について説明する。
【0031】
[正極極板の作製]
正極極板は次のようにして作製した。まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO
2)粉末94質量%と、導電剤としてのアセチレンブラックあるいはグラファイト等の炭素系粉末3質量%と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)よりなる結着剤3質量%とを混合し、得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる有機溶剤を加えて混練して正極活物質合剤スラリーを調製した。次いで、アルミニウム箔(例えば、厚さが20μmのもの)からなる正極芯体を用意し、上述のようにして作製した正極活物質合剤スラリーを正極芯体の両面に、均一に塗布して正極活物質合剤層を塗布した。この際、正極活物質合剤層の一方側には、正極活物質合剤スラリーの塗布されていない所定幅(ここでは12mmとした)の非塗布部(正極芯体露出部14)が正極芯体の端縁に沿って形成されるように塗布した。この後、正極活物質合剤層を形成した正極芯体を乾燥機中を通過させて、スラリー作製時に必要であったNMPを除去して乾燥させた。乾燥後に、ロールプレス機により厚さが0.06mmとなるまで圧延して正極極板を作製した。このようにして作製した正極極板を幅が95mmとなる短冊状に切り出し、幅が10mmの帯状のアルミニウムからなる正極芯体露出部14を設けた正極極板を得た。
【0032】
[負極極板の作製]
負極極板は次のようにして作製した。まず、負極活物質としての天然黒鉛粉末98質量%と、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)をそれぞれ1質量%ずつ混合し、水を加えて混練して負極活物質合剤スラリーを調製した。次いで、銅箔(例えば、厚さが12μmのもの)からなる負極芯体を用意し、上述のようにして作製した負極活物質合剤スラリーを負極芯体の両面に均一に塗布して、負極活物質合剤層を形成した。この場合、負極活物質合剤層の一方の側には、負極活物質合剤スラリーの塗布されていない所定幅(ここでは10mmとした)の非塗布部(負極芯体露出部15)が負極芯体の端縁に沿って形成されるように塗布した。この後、負極活物質合剤層を形成した負極芯体を乾燥機中を通過させて乾燥させた。乾燥後に、ロールプレス機により厚さが0.05mmとなるまで圧延して負極極板を作製した。このようにして作製した負極極板を幅が100mmとなる短冊状に切り出し、幅が8mmの帯状の負極芯体露出部15を設けた負極極板を得た。
【0033】
[巻回型電極体の作製]
上述のようにして得られた正極極板の正極芯体露出部14と負極極板の負極芯体露出部15とがそれぞれ対向する電極の活物質合剤層と重ならないようにずらして、ポリエチレン製の多孔質セパレータ(厚さが0.022mmで、幅が100mmのもの)を介して巻回することで、巻回型電極体11を作製した。その際、巻回型電極体の最外周側が多孔質セパレータで覆われる状態とした。
【0034】
次いで、巻回型電極体をプレスして偏平状となした後、正極芯体露出部14にはアルミニウム製の正極集電体16及び正極集電体受け部品(図示せず)を、負極芯体露出部15には銅製の負極集電体181及び負極集電体受け部品182を、それぞれ抵抗溶接によって取り付けることで、実施形態の巻回型電極体11を作製した。なお、巻回型電極体11の寸法は、幅(正極芯体露出部側の端部から負極芯体露出部側の端部までの長さ)を107mmとし、厚み(正極極板の正極活物質合材層が形成された部分と、負極極板の負極活物質合材層が形成された部分がセパレータを介して積層されている部分の厚み)を11.6mmとした。
【0035】
ここで、巻回型電極体11の幅(正極芯体露出部側の端部から負極芯体露出部側の端部までの長さ)が、絶縁シートにおける大面積側の側面と対向する電極体の幅に相当する。また、巻回型電極体11の厚み(正極極板の正極活物質合材層が形成された部分と、負極極板の負極活物質合材層が形成された部分がセパレータを介して積層されている部分の厚み)が、絶縁シートにおける小面積側の側面と対向する電極体の幅に相当する。
【0036】
[絶縁シートの作製]
本実施形態の角形二次電池10で使用する絶縁シート301の素材としては、厚さが150μmのポリプロピレン製シートを用いた。このシートを、
図3に示すように、正面部分30a、背面部分30b、底面部分(底部領域)30c、一対の側面部分30dと、一対の第一の折り返し部30e、及び、一対の小舌片状の第二の折り返し部(第1領域)30fを備えた形状に切り出した。2点鎖線で示した部分で折り曲げを行うため、折り曲げる部分のうち底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界を除いた部分にミシン目を形成することで絶縁シート301を作製した。
【0037】
底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界は、
図5に示すように、両端部に切れ目40,40(折り曲げ容易部)が設けられて両端部に挟まれた中央部分に何も設けられていない。すなわち、境界線の中央部分は、境界線の両側の底面部分30cと第二の折り返し部30fと同様に無加工のポリプロピレン製シートの状態である。両端のそれぞれの切れ目40,40の長さLは境界線の長さWと比較して、L/Wが0.2である。
【0038】
[巻回型電極体の被覆]
絶縁シート301をミシン目および切れ目40に沿って全て山折りで折り目を付けた後、
図4に示すように、絶縁シート301で形成される空間内に巻回型電極体11を、巻回型電極体11の巻回軸方向を横向きとし、正極集電体(不図示)及び負極集電体(不図示)がそれぞれ絶縁シート301の側面部分30dに対向するように挿入する。その後、第一の折り返し部30eと正面部分30aとの重なり部分を熱溶着によって接着することで、巻回型電極体11を箱形形状に形成された絶縁シート301で被覆した。
【0039】
第一の折り返し部30eと正面部分30aとの重なり部分を熱溶着によって接着すると、第二の折り返し部30fを除いた部分が開口した略直方体形状の箱形となり、第二の折り返し部30fはその箱形から小舌片として外方にやや開いた状態で突き出していることになる。つまり、底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界には両端部に切れ目40,40が設けられているので、この境界線に折り目を付けると第二の折り返し部30fは一対の側面部分30dとなす角が鋭角になって羽を広げたような形状となる。
【0040】
この後、絶縁シート301で被覆された巻回型電極体11を角形外装体12内に挿入する際には、底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界に折り目が入れられているため、第二の折り返し部30fと角形外装体12の内面との抵抗が小さくなって、極めて挿入し易くなる。そのため組み立て工程が短時間で行うことができ、底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界に大きな力がかかることがないため当該境界が損傷することがない。
【0041】
なお、上述のように挿入のしやすさを確保するためには、上記の境界部分の両端のそれぞれの切れ目40,40の長さLは境界線の長さWに比較して、0.025≦L/W≦0.3であることが好ましく、0.075≦L/W≦0.275であることがより好ましく、0.1≦L/W≦0.25であることがさらに好ましい。
【0042】
図4に示すように正極芯体(金属箔)が露出している部分のうち、箱形の絶縁シート301の底面部分30c側に配置される正極芯体露出下部14aは、側面部分30d(角形外装体の第1側壁12aと対向する側面)と平行な断面においては、最下部が半円状態になっている。即ち、箱形の絶縁シート301の底面部分30cと側面部分30dとの境界線の中央部分には正極芯体が接触する可能性があるが、境界線の両端部分には接触し難い構成となっている。
【0043】
角形二次電池に非常に強い衝撃や振動を与えた場合、特に角形外装体の一対の第1側壁12a,12aに垂直な方向の衝撃や振動が与えられると、正極集電体16及び負極集電体181が変形し、絶縁シート301の上記境界線の中央部分には正極芯体露出下部14aあるいは負極芯体露出部15aが衝突する場合がある。このとき、この境界線の中央部分に切れ目、薄肉部又はミシン目が存在していると、これらは周囲の無加工のシートに比べて強度に劣るため、金属箔である正極芯体によりこの中央部分が切れて正極芯体が絶縁シート301の外側に飛び出し、角形外装体に接触してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上記境界線の中央部分には切れ目、薄肉部又はミシン目のいずれも存しておらず、正極芯体により切断されるおそれはない。負極側においても同様の構成であるため、負極芯体により上記境界線の中央部分が切断されるおそれはない。従って、本実施形態の角形二次電池は、振動等が引き起こす正極又は負極と角形外装体との短絡を防止できる。
【0044】
一方、上記境界線の両端部は、非常に強い衝撃や振動等によって正極芯体又は負極芯体と接触することはないので、折り曲げ容易部である切れ目40,40を設けてもそこから正極芯体又は負極芯体が絶縁シート301の外側へ飛び出すことはない。
【0045】
なお、絶縁シート301の底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界において、両端部の折り曲げ容易部である切れ目40,40に挟まれた何も設けられていない中央部の領域は、偏平状の巻回型電極体11(より詳しくは、その端部である正極芯体露出部14および負極芯体露出部15)の厚みとの関係で適切な長さが存在することが判明した。以下
図6を参照にして説明を行う。
【0046】
図6は、巻回型電極体(正極芯体露出部14又は負極芯体露出部15)をその巻回軸に沿って観察し、絶縁シート301の底面に近い部分を拡大した模式図である。説明を行いやすくするために、正極芯体露出部14又は負極芯体露出部15と絶縁シート30の底面のみを表示している。ここで、巻回型電極体(正極芯体露出部14又は負極芯体露出部15)の厚み(巻回軸に垂直な面において、底面12cに平行な方向における長さ)を2rとする。ここで、巻回型電極体の厚み2rは、最も厚みが大きい部分の厚みである。巻回型電極体(正極芯体露出部14又は負極芯体露出部15)の下端は半円形となっており、その直径が2rとなる。また、巻回型電極体(正極芯体露出部14又は負極芯体露出部15)と絶縁シート301の底面との距離をAとする。
【0047】
この場合、絶縁シート301の底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界において、両端部の折り曲げ容易部である切れ目40,40に挟まれた何も設けられていない中央部の領域の長さは、{r
2−(r−A)
2}
1/2よりも大きいことが好ましい。これは実験の繰り返しより得られた、非常に強い衝撃や振動等によっても正極芯体又は負極芯体が絶縁シート301の外側に飛び出すことがない長さの範囲である。
【0048】
(変形例)
絶縁シートの形状は
図3に示される形状に限定されない。例えば、
図7及び
図8に示した、絶縁シート302、303のような形状がそれぞれ第1変形例及び第2変形例として挙げられる。
【0049】
図7に示される第1変形例では、絶縁シート302の正面部分30aにも一対の側面部分30gと、一対の第一の折り返し部30hとが設けられている点が
図3の絶縁シート301と異なっている点であり、それ以外は同じである。従って、第1変形例においても底面部分30cと第二の折り返し部30fとの境界線において、両端部に折り曲げ容易部である切れ目が設けられ、中央部分には折り曲げ容易部がなく境界線に隣接する部分と同じ構成のシートとなっている。
【0050】
図8に示される第2変形例では、第二の折り返し部30fが一対の側面部分30dに変更され、その一対の側面部分30dの両脇に第一の折り返し部30e,30gが設けられている。従って、第2変形例では、底面部分30cと一対の側面部分30dとの境界線において、両端部に折り曲げ容易部である切れ目が設けられ、中央部分には折り曲げ容易部がなく境界線に隣接する部分と同じ構成のシートとなっている。
【0051】
第1及び第2の変形例においても、
図3の絶縁シートと同様の効果を奏する。
【0052】
(実施形態2)
実施形態2は、折り曲げ容易部がミシン目である点が実施形態1と異なっており、それ以外は実施形態1と同じであるので、実施形態1と異なっている点を以下に説明する。
【0053】
図9、
図10に示すように、本実施形態の絶縁シート304には折り曲げ容易部としてミシン目41が形成されている。本実施形態は実施形態1と同じ効果を奏するとともに、実施形態1よりも折り曲げ容易部の機械強度が大きく、中央領域に切れ目が入ってしまうことを防止できる。
【0054】
(実施形態3)
実施形態3は、折り曲げ容易部が薄肉部である点が実施形態1と異なっており、それ以外は実施形態1と同じであるので、実施形態1と異なっている点を以下に説明する。
【0055】
図11、
図12、
図13、
図14に示すように、本実施形態の絶縁シート305には折り曲げ容易部として薄肉部42が形成されている。薄肉部42は周囲よりも絶縁シート305の厚みが小さい部分である。本実施形態は実施形態1と同じ効果を奏するとともに、実施形態1よりも折り曲げ容易部の機械強度が大きく、中央領域に切れ目が入ってしまうことを防止できる。
【0056】
(実施形態4)
実施形態4は、中央領域も薄肉部を形成した点が実施形態3と異なっており、それ以外は実施形態3と同じであるので、実施形態1と異なっている点を以下に説明する。
【0057】
図15、
図16、
図17、
図18に示すように、本実施形態の絶縁シート306には折り曲げ容易部として第1薄肉部43が形成されているとともに、折り曲げられる中央領域にも第2薄肉部50が形成されている。第2薄肉部50は第1薄肉部43よりも厚みが大きく形成されている。本実施形態は実施形態1と同じ効果を奏するとともに、実施形態1よりも折り曲げ容易部の機械強度が大きく、中央領域に切れ目が入ってしまうことを防止でき、さらに第2薄肉部50が存在するため、より折り曲げやすくなっている。
【0058】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0059】
上記の実施形態では、絶縁シートの側面と底面との境界の両端部に折り曲げ容易部として切れ目を設けたが、切れ目の代わりにミシン目又は薄肉部にしてもよい。またこれらの複数種類を使用しても構わない。ミシン目は小さな切れ目が連なっているものと言うことができる。薄肉部にする場合は、巻回型電極体と向かい合う面を凹ませて薄肉部を形成すると、折り曲げて角形外装体に挿入する場合に、角形外装体と引っかかることが防止できるため、好ましい。
【0060】
上記の実施形態では、小舌片状の第二の折り返し部(第1領域)30fが側面部分30dの外側に配置される例を示したが、小舌片状の第二の折り返し部(第1領域)30fを側面部分30dの内側に配置することもできる。なお、小舌片状の第二の折り返し部(第1領域)30fが側面部分30dの外側に配置されると、絶縁シート301で覆った巻回型電極体11を角形外装体12に挿入する際、側面部分30dの下端部が角形外装体12の開口に引っかかることを防止できるため好ましい。
【0061】
本発明の角形二次電池は、絶縁シートの底部領域と第1領域との境界の両端部に折り曲げ容易部を設け、中央部分には折り曲げ容易部を設けないという点を除いて、従来の角形二次電池と同様の方法で製造することができる。
【0062】
上記実施形態では絶縁シートとして、150μmの厚みを有する1枚のポリプロピレン製シートを特定の寸法に切り出し成形して用いたが、絶縁シートとしては柔軟性及び絶縁性を有する任意の素材を使用することができ、任意の成形方法を採用することが可能である。例えば、樹脂を箱形に成形したものも使用することができ、また、ポリプロピレン製のものだけでなく、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ナイロン等によって作製されたものも使用し得る。
【0063】
なお、絶縁シートの厚みは100μm〜500μmであることが好ましく、100μm〜300μmであることがより好ましく、100μm〜200μmであることがさらに好ましい。
【0064】
折り曲げ容易部として薄肉部を設ける場合は、薄肉部の厚みは80μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましい。
【0065】
薄肉部とした場合、薄肉部の厚みは薄肉部が形成されていない部分の厚みの75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0066】
また、薄肉部の密度は、他の部分の密度よりも高いことが好ましい。このような薄肉部を形成するためには、絶縁シートをプレス加工することにより絶縁シートに薄肉部を形成することが好ましい。このような方法により、プレス加工により薄肉部となる部分が圧縮されて、他の部分より高密度となる。このような構成であると、絶縁シートの破れを抑制できる。
【0067】
角形外装体12及び封口板13は、金属製であり、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、又は鉄合金等からなることが好ましい。
【0068】
図6から説明される、絶縁シートの底面部分と第二の折り返し部との境界において、両端部の折り曲げ容易部に挟まれた何も設けられていない中央部の領域は、実施形態2、3の折り曲げ容易部がミシン目又は薄肉部である場合や、実施形態4の中央部にも薄肉部が設けられている場合でも、{r
2−(r−A)
2}
1/2よりも大きいことが好ましい。
【0069】
なお、角形二次電池において、底部領域と第1領域の境界は正極芯体露出部側及び負極芯体露出部側の2箇所に存在する。当該2箇所の内、少なくとも一方に本発明が適用されていればよい。ただし、両方に本発明が適用されていることが好ましい。