(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡散抑制層は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、または、これらから選ばれる少なくとも1種の元素の窒化物を含んで構成されている
請求項3に記載のスイッチ素子。
前記スイッチ層は、前記メモリセルを低抵抗化する書き込み電圧が前記メモリセルに印加されたときの、前記第1電極および前記第2電極間の第3電圧の絶対値が第3閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第3電圧の絶対値が前記第3閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層は、前記メモリセルを高抵抗化する消去電圧が前記メモリセルに印加されたときの、前記第1電極および前記第2電極間の第4電圧の絶対値が第4閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第4電圧の絶対値が前記第4閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層では、前記第3閾値電圧の絶対値と前記第4閾値電圧の絶対値とが互いに異なるように、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
請求項5に記載の記憶装置。
前記スイッチ層では、前記第4閾値電圧の絶対値が前記第3閾値電圧の絶対値よりも大きくなるように、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
請求項6に記載の記憶装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
スイッチ層が2層で構成されている例
2.変形例
変形例A:スイッチ層内に拡散抑制層を設けた例
変形例B:スイッチ層を3つ以上の層で構成した例
変形例C:スイッチ層内の組成比が積層方向にグラデーションを有する例
変形例D:メモリ層のバリエーション
変形例E:スイッチ素子とメモリ素子の接続方法のバリエーション
変形例F:ビット線またはワード線が積層方向に延在している例
3.実施例
【0014】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係るメモリセルアレイ1の斜視構成を表したものである。メモリセルアレイ1は、本開示の「記憶装置」の一具体例に相当する。メモリセルアレイ1は、所謂クロスポイントアレイ構造を備えており、例えば、
図1に示したように、各ワード線WLと各ビット線BLとが互いに対向する位置(クロスポイント)に1つずつ、メモリセル10を備えている。つまり、メモリセルアレイ1は、複数のワード線WLと、複数のビット線BLと、クロスポイントごとに1つずつ配置された複数のメモリセル10とを備えている。メモリセル10は、本開示の「メモリセル」の一具体例に相当する。ワード線WLおよびビット線BLは、本開示の「第1配線」「第2配線」の一具体例に相当する。
【0015】
各ワード線WLは、互いに共通の方向に延在している。各ビット線BLは、ワード線WLの延在方向とは異なる方向(例えば、ワード線WLの延在方向と直交する方向)であって、かつ互いに共通の方向に延在している。複数のワード線WLは、1または複数の層内に配置されており、例えば、
図1に示したように、複数の階層に分かれて配置されている。複数のビット線BLは、1または複数の層内に配置されており、例えば、
図1に示したように、複数の階層に分かれて配置されている。
【0016】
複数のワード線WLが複数の階層に分かれて配置されている場合、複数のワード線WLが配置された第1の層と、複数のワード線WLが配置された、第1の層に隣接する第2の層との間の層内に、複数のビット線BLが配置されている。複数のビット線BLが複数の階層に分かれて配置されている場合、複数のビット線BLが配置された第3の層と、複数のビット線BLが配置された、第3の層に隣接する第4の層との間の層内に、複数のワード線WLが配置されている。複数のワード線WLが複数の階層に分かれて配置されるとともに、複数のビット線BLが複数の階層に分かれて配置されている場合、複数のワード線WLおよび複数のビット線BLは、メモリセルアレイ1の積層方向において交互に配置されている。
【0017】
(メモリセル10)
メモリセルアレイ1は、基板上に2次元もしくは3次元配置された複数のメモリセル10を備えている。基板は、例えば、各ワード線WLおよび各ビット線BLと電気的に接続された配線群や、その配線群と外部回路とを連結するための回路などを有している。メモリセル10は、メモリ素子30と、メモリ素子30に直接接続されたスイッチ素子20とを含んで構成されている。スイッチ素子20は、本開示の「スイッチ素子」の一具体例に相当する。メモリ素子30は、本開示の「メモリ素子」の一具体例に相当する。
【0018】
例えば、メモリ素子30がワード線WL寄りに配置され、スイッチ素子20がビット線BL寄りに配置されている。なお、メモリ素子30がビット線BL寄りに配置され、スイッチ素子20がワード線WL寄りに配置されていてもよい。また、ある層内において、メモリ素子30がワード線WL寄りに配置され、スイッチ素子20がビット線BL寄りに配置されている場合に、その層に隣接する層内において、メモリ素子30がビット線BL寄りに配置され、スイッチ素子20がワード線WL寄りに配置されていてもよい。また、各層において、メモリ素子30がスイッチ素子20上に形成されていてもよいし、その逆に、スイッチ素子20がメモリ素子30上に形成されていてもよい。
【0019】
次に、スイッチ素子20およびメモリ素子30について説明する。
図2A、
図2Bは、スイッチ素子20の断面構成の一例を表したものである。
図3A、
図3Bは、メモリ素子30の断面構成の一例を表したものである。
図4〜
図7は、メモリセル10の断面構成の一例を表したものであり、スイッチ素子20およびメモリ素子30の組み合わせの一例を表したものである。
【0020】
(スイッチ素子20)
スイッチ素子20は、第1電極21と、第1電極21に対向配置された第2電極23と、第1電極21と第2電極23との間に設けられたスイッチ層22とを有している。第1電極21および第2電極23は、本開示の「第1電極」「第2電極」の一具体例に相当する。第1電極21は、
図2A、
図2Bに示したようにビット線BLまたはワード線WLを兼ねていてもよいし、ビット線BLおよびワード線WLとは別体で設けられていてもよい。第1電極21がビット線BLおよびワード線WLとは別体で設けられている場合には、第1電極21は、ビット線BLまたはワード線WLと電気的に接続されている。第2電極23は、メモリ素子30の電極を兼ねていてもよいし、メモリ素子30の電極とは別体で設けられていてもよい。第2電極23がメモリ素子30の電極とは別体で設けられている場合には、第2電極23は、メモリ素子30の電極と電気的に接続されている。
【0021】
第1電極21および第2電極23は、例えば、半導体プロセスに用いられる配線材料によって構成されている。第1電極21および第2電極23は、例えば、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)、炭素(C)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、またはシリサイド等により構成されている。第1電極21または第2電極23がCu等の電界でイオン伝導が生じる可能性のある材料により構成されている場合には、Cu等よりなる第1電極21または第2電極23の表面が、イオン伝導や熱拡散しにくいバリア性の材料で被覆されていてもよい。イオン伝導や熱拡散しにくいバリア性の材料としては、例えば、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)、または窒化タンタル(TaN)、チタンタングステン(TiW)、窒化チタンタングステン(TiWN)等が挙げられる。
【0022】
第2電極23は、電界の印加によってスイッチ層22またはイオン源層32B(後述)に含まれるカルコゲン元素が拡散することを防ぐ材料によって構成されていることが好ましい。これは、例えば、イオン源層32Bにはメモリ動作し書き込み状態を保持させる元素として遷移金属元素が含まれている場合があり、その場合には、遷移金属元素が電界の印加によってスイッチ層22に拡散するとスイッチ特性が劣化する虞があるためである。また、第1電極21は、電界の印加によってスイッチ層22に含まれるカルコゲン元素が拡散することを防ぐ材料によって構成されていることが好ましい。
【0023】
これは、スイッチ層22に含まれ得るカルコゲン元素の1つであるTeは、Al、Cu等を主とした一般的な半導体回路に用いられる電極材料と接すると、反応、あるいは合金化しやすく、そのような反応が起こることでスイッチ素子20の特性が著しく劣化するためである。従って、第1電極21および第2電極23のうち少なくとも一方の電極は、遷移金属元素の拡散およびイオン伝導を防止するバリア性を有するバリア材料を含んで構成されていることが好ましい。バリア材料としては、例えば、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)、炭素(C)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタンタングステン(TiW)、窒化チタンタングステン(TiWN)等が挙げられる。なお、第1電極21または第2電極23の全てが、遷移金属元素の拡散およびイオン伝導を防止するバリア性を有するバリア材料によって構成されている必要はない。例えば、第1電極21または第2電極23のうち、スイッチ層22に接する部分だけが、遷移金属元素の拡散およびイオン伝導を防止するバリア性を有するバリア材料によって構成されていてもよい。
【0024】
スイッチ層22は、周期律表第16族の元素、具体的には、テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素を含んで構成されている。OTS現象を有するスイッチ素子20では、スイッチングのための電圧バイアスを印加してもスイッチ層22はアモルファス構造を維持して相変化しないことが好ましく、アモルファス構造が安定であるほど、安定してOTS現象を生じさせることができる。スイッチ層22は、上記カルコゲン元素のほかに、ホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種の付随元素をさらに含んで構成されていることが好ましい。スイッチ層22は、さらに、窒素(N)を含んで構成されていることがより好ましい。スイッチ層22は、BTe、CTe、BCTe、CSiTe、BSiTe、BCSiTe、BTeN、CTeN、BCTeN、CSiTeN、BSiTeN、BCSiTeNのうちのいずれかの組成を含んで構成されていることが好ましい。
【0025】
比較的原子半径の大きな元素に比較的原子半径の小さな元素が添加されると、構成元素の原子半径の差が大きくなり、結晶構造を形成することが容易ではなくなるので、アモルファス構造が安定化しやすくなる。よって、スイッチ層22のように、原子半径の比較的大きなTe等のカルコゲン元素を含む層内に比較的原子半径の小さなホウ素(B)等の元素が添加されている場合には、層内には原子半径の異なる複数の元素が存在することとなり、アモルファス構造が安定化する。
【0026】
ホウ素(B)では、半金属のなかでも特に単体でも導電性が低いので、スイッチ層22内にホウ素(B)が含まれることにより、スイッチ層22の抵抗値が高くなる。また、ホウ素(B)では、カルコゲン元素と比較して原子半径が小さいので、スイッチ層22内にホウ素(B)が含まれることにより、スイッチ層22のアモルファス構造が安定化し、OTS現象が安定して発現する。
【0027】
炭素(C)は、グラファイト等で見られるsp2軌道をとる構造以外では、スイッチ層22を高抵抗化することができる。また、炭素(C)では、カルコゲン元素と比較してイオン半径が小さいので、スイッチ層22のアモルファス構造が安定化し、OTS現象が安定して発現する。
【0028】
窒素(N)は、ホウ素(B)、炭素(C)、またはケイ素(Si)と結合する。そのため、スイッチ層22内に、窒素(N)と、ホウ素(B)、炭素(C)、またはケイ素(Si)とがスイッチ層22に含まれることにより、スイッチ層22の抵抗値が高くなる。例えば、窒素(N)とホウ素(B)とが結合したa−BNのバンドギャップは、アモルファス状態でも5.05となっている。このように、スイッチ層22内に、窒素(N)が含まれている場合には、スイッチ層22内に窒素(N)が含まれていない場合と比べて、スイッチ層22の抵抗値が大きいので、リーク電流が抑制される。また、窒素(N)と、ホウ素(B)、炭素(C)、またはケイ素(Si)との結合物がスイッチ層22内に分散することにより、アモルファス構造が安定化する。
【0029】
スイッチ層22は、アモルファス相と結晶相との相変化を伴うことなく、印加電圧を所定の閾値電圧(スイッチング閾値電圧)以上に上げることにより低抵抗状態に変化し、印加電圧を上記の閾値電圧(スイッチング閾値電圧)より低い電圧に下げることにより高抵抗状態に変化するものである。即ち、スイッチ層22は、図示しない電源回路(パルス印加手段)から第1電極21および第2電極23を介した電圧パルスあるいは電流パルスの印加によって、スイッチ層22の相変化を生じないものである。また、スイッチ層22は、電圧印加によるイオンの移動によって形成される伝導パスが印加電圧消去後にも維持される等のメモリ動作をしないものである。
【0030】
スイッチ層22は、双方向スイッチとして機能するようになっている。スイッチ層22は、第1電極21の電圧が第2電極23の電圧よりも高くなる第1電圧が第1電極21および第2電極23間に印加されたときに、第1電圧の絶対値が第1閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、第1電圧の絶対値が第1閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっている。スイッチ層22は、さらに、第2電極23の電圧が第1電極21の電圧よりも高くなる第2電圧が第1電極21および第2電極23間に印加されたときに、第2電圧の絶対値が第2閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、第2電圧の絶対値が第2閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっている。
【0031】
スイッチ層22は、メモリセル10を低抵抗化する書き込み電圧Vwがメモリセル10に印加されたときの、第1電極21および第2電極23間の第3電圧の絶対値が第3閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、第3電圧の絶対値が第3閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっている。スイッチ層
22は、メモリセル10を高抵抗化する消去電圧Vrがメモリセル10に印加されたときの、第1電極21および第2電極23間の第4電圧の絶対値が第4閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、第4電圧の絶対値が第4閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっている。
【0032】
スイッチ層22では、メモリセル10へのデータ書き込みが行われる時(以下、「書き込み時」と称する。)のIV特性と、メモリセル10へ書き込まれたデータの消去が行われる時(以下、「消去時」と称する。)のIV特性とが互いに異なっている。具体的には、スイッチ層22では、書き込み時の閾値電圧Vth1(第3閾値電圧)の絶対値と、消去時の閾値電圧Vth2(第4閾値電圧)の絶対値とが互いに異なっている。つまり、スイッチ層22は、書き込み時と消去時とでIV特性(具体的には閾値電圧)が互いに異なる非対称性を有している。
【0033】
スイッチ層22では、第1電極21寄りの第1領域22αと、第1領域22αと比べて第2電極23寄りの第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。スイッチ層22では、さらに、第1領域22αと第2領域22βとにおいて、上述の付随元素の組成比、または、上述の付随元素の種類が互いに異なっている。
【0034】
スイッチ層22では、第1閾値電圧の絶対値と、第2閾値電圧の絶対値とが互いに異なるように、第1領域22αと第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素やその他の成分元素の種類が互いに異なっている。具体的には、スイッチ層22では、書き込み時の閾値電圧Vth1(第3閾値電圧)の絶対値と、消去時の閾値電圧Vth2(第4閾値電圧)の絶対値とが互いに異なるように、第1領域22αと第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素やその他の成分元素の種類が互いに異なっている。より具体的には、スイッチ層22では、消去時の閾値電圧Vth2(第4閾値電圧)の絶対値が書き込み時の閾値電圧Vth1(第3閾値電圧)の絶対値よりも大きくなるように、第1領域22αと第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素やその他の成分元素の種類が互いに異なっている。
【0035】
抵抗変化層32Aがイオン源層32Bよりもスイッチ素子20寄りの位置に設けられている場合には、第1領域22αおよび第2領域22βのうち、カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方(第1領域22α)が、メモリ素子30から離れた位置に配置されている(
図4、
図7参照)。また、抵抗変化層32Aがイオン源層32Bよりもスイッチ素子20から離れた位置に設けられている場合には、第1領域22αおよび第2領域22βのうち、カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方(第2領域22β)が、メモリ素子30寄りの位置に配置されている(
図5、
図6参照)。
【0036】
第1領域22αが、第1電極21および第2電極23のうち、消去時に電位の高い方の電極寄りの領域であるとする(
図4、
図7参照)。このとき、テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素の組成比が、第1領域22αにおいて相対的に小さく、第2領域22βにおいて相対的に大きくなっている。さらに、ホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種の付随元素の組成比が、第1領域22αにおいて相対的に大きく、第2領域22βにおいて相対的に小さくなっている。スイッチ層22が、例えば、テルル(Te)およびホウ素(B)を含んで構成されているとする。このとき、テルル(Te)の組成比が、第1領域22αにおいて相対的に小さく、第2領域22βにおいて相対的に大きくなっており、ホウ素(B)の組成比が、第1領域22αにおいて相対的に大きく、第2領域22βにおいて相対的に小さくなっている。
【0037】
第2領域22βが、第1電極21および第2電極23のうち、消去時に電位の高い方の電極寄りの領域であるとする(
図5、
図6参照)。このとき、テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素の組成比が、第2領域22βにおいて相対的に小さく、第1領域22αにおいて相対的に大きくなっている。さらに、ホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種の付随元素の組成比が、第2領域22βにおいて相対的に大きく、第1領域22αにおいて相対的に小さくなっている。スイッチ層22が、例えば、テルル(Te)およびホウ素(B)を含んで構成されているとする。このとき、テルル(Te)の組成比が、第2領域22βにおいて相対的に小さく、第1領域22αにおいて相対的に大きくなっており、ホウ素(B)の組成比が、第2領域22βにおいて相対的に大きく、第1領域22αにおいて相対的に小さくなっている。
【0038】
スイッチ層22は、例えば、
図2A、
図2Bに示したように、積層された2つの層(第1層22A、第2層22B)を有している。第1層22Aと第2層22Bとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。さらに、第1層22Aと第2層22Bとにおいて、上述の付随元素の組成比、または、上述の付随元素の種類が互いに異なっている。
【0039】
第1閾値電圧の絶対値と、第2閾値電圧の絶対値とが互いに異なるように、第1層22Aと第2層22Bとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。具体的には、書き込み時の閾値電圧Vth1(第3閾値電圧)の絶対値と、消去時の閾値電圧Vth2(第4閾値電圧)の絶対値とが互いに異なるように、第1層22Aと第2層22Bとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。より具体的には、消去時の閾値電圧Vth2(第4閾値電圧)の絶対値が書き込み時の閾値電圧Vth1(第3閾値電圧)の絶対値よりも大きくなるように、第1層22Aと第2層22Bとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。
【0040】
抵抗変化層32Aがイオン源層32Bよりもスイッチ素子20寄りの位置に設けられている場合には、第1層22Aおよび第2層22Bのうち、カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方(第1層22A)が、メモリ素子30から離れた位置に配置されている(
図4、
図7参照)。また、抵抗変化層32Aがイオン源層32Bよりもスイッチ素子20から離れた位置に設けられている場合には、第1層22Aおよび第2層22Bのうち、カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方(第1層22A)が、メモリ素子30寄りの位置に配置されている(
図5、
図6参照)。このとき、第1層22Aは、第1電極21および第2電極23のうち、消去時に電位の高い方の電極寄りに設けられており、第2層22Bは、第1電極21および第2電極23のうち、消去時に電位の低い方の電極寄りに設けられている(
図4〜
図7参照)。テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素の組成比が、第1層22Aにおいて相対的に小さく、第2層22Bにおいて相対的に大きくなっている。さらに、ホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種の付随元素の組成比が、第1層22Aにおいて相対的に大きく、第2層22Bにおいて相対的に小さくなっている。第1層22Aおよび第2層22Bが、例えば、テルル(Te)およびホウ素(B)を含んで構成されているとする。このとき、テルル(Te)の組成比が、第1層22Aにおいて相対的に小さく、第2層22Bにおいて相対的に大きくなっており、ホウ素(B)の組成比が、第1層22Aにおいて相対的に大きく、第2層22Bにおいて相対的に小さくなっている。
【0041】
(メモリ素子30)
メモリ素子30は、第3電極31と、第3電極31に対向配置された第4電極33と、第3電極31および第4電極33の間に設けられたメモリ層32とを有している。メモリ素子は、双方向抵抗変化メモリである。メモリ層32は、抵抗変化層32Aおよびイオン源層32Bが積層された積層構造によって構成されている。
【0042】
イオン源層32Bは、電界の印加によって抵抗変化層32A内に伝導パスを形成する可動元素を含んでいる。この可動元素は、例えば、遷移金属元素、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはカルコゲン元素である。カルコゲン元素としては、例えば、テルル(Te)、セレン(Se)、または硫黄(S)が挙げられる。遷移金属元素としては、周期律表第4族〜第6族の元素であり、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、またはタングステン(W)などが挙げられる。イオン源層32Bは、上記可動元素を1種あるいは2種以上含んで構成されている。また、イオン源層32Bは、酸素(O)、窒素(N)、上記可動元素以外の元素(例えば、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、または白金(Pt))、またはケイ素(Si)等を含んでいてもかまわない。
【0043】
抵抗変化層32Aは、例えば、金属元素もしくは非金属元素の酸化物、または、金属元素もしくは非金属元素の窒化物によって構成されており、第3電極31および第4電極33の間に所定の電圧を印加した場合に抵抗変化層32Aの抵抗値が変化するものである。抵抗変化層32Aは、例えば、アルミニウム(Al)を含む酸化物層である。例えば、第3電極31および第4電極33の間に電圧が印加されると、イオン源層32Bに含まれる遷移金属元素が抵抗変化層32A内に移動して伝導パスが形成され、これにより抵抗変化層32Aが低抵抗化する。また、抵抗変化層32A内で酸素欠陥や窒素欠陥等の構造欠陥が生じて伝導パスが形成され、抵抗変化層32Aが低抵抗化する。また、抵抗変化層32Aが低抵抗化するときに印加される電圧の向きとは逆方向の電圧が印加されることによって、伝導パスが切断されるか、または導電性が変化し、抵抗変化層32Aは高抵抗化する。
【0044】
なお、抵抗変化層32Aに含まれる金属元素および非金属元素は必ずしも全てが酸化物の状態でなくてもよく、一部が酸化されている状態であってもよい。また、抵抗変化層32Aの初期抵抗値は、例えば数MΩから数百GΩ程度の素子抵抗が実現されればよく、素子の大きさやイオン源層32Bの抵抗値によってもその最適値が変化するが、その膜厚は例えば1nm〜10nm程度が好ましい。
【0045】
第3電極31は、
図4〜
図7に示したようにスイッチ素子20の電極を兼ねていてもよいし、スイッチ素子20の電極とは別体で設けられていてもよい。第4電極33は、ワード線WLまたはビット線BLを兼ねていてもよいし、ワード線WLおよびビット線BLとは別体で設けられていてもよい。第4電極33がワード線WLおよびビット線BLとは別体で設けられている場合には、第4電極33は、ワード線WLまたはビット線BLと電気的に接続されている。
【0046】
次に、比較例を参照しつつ、本実施の形態のメモリセルアレイ1の動作について説明する。
【0047】
図8は、メモリ素子30に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図9は、比較例に係るスイッチ素子120に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図10は、
図8のメモリ素子30および
図9のスイッチ素子120を備えたメモリセル110に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図11は、比較例に係るスイッチ素子220に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図12は、
図8のメモリ素子30および
図11のスイッチ素子220を備えたメモリセル210に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図13は、スイッチ素子20に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。
図14は、
図8のメモリ素子30および
図13のスイッチ素子20を備えたメモリセル10に印加される電圧および電流の関係の一例を表したものである。なお、本開示のスイッチ素子20、メモリ素子30およびメモリセル10は、ここで例としている電圧や電流値に限定されるものではない。
【0048】
図8からわかるように、メモリ素子30では、順バイアス(書き込み電圧)の増加に伴って電流値が上昇し、所定の書き込み電圧(例えば、およそ3.5V程度)において抵抗変化層32Aにおける伝導パスの形成による書き込み動作が行われ、メモリ層32が低抵抗状態へと変化して電流が増大する。即ち、メモリ素子30は、書き込み電圧の印加によって低抵抗状態となり、この低抵抗状態は印加電圧停止後も維持される。
【0049】
スイッチ素子120に書き込み電圧が印加されると、スイッチ素子120では、書き込み電圧の増加に伴って電流が上昇し、所定の閾値電圧Vth1(例えば、4V程度)を超えるとOTS動作により急激に電流が増大、あるいは抵抗が低くなり、オン状態となる。この後、書き込み電圧を減少させていくと、スイッチ素子120の電極に流れる電流値は徐々に減少する。例えば、スイッチ素子120を構成する材料および形成条件にもよるが、増加時とほぼ同等の閾値電圧で急激に抵抗が上昇してオフ状態となる。
【0050】
メモリセル110の書き込み電圧の印加開始および停止における電流値のスイッチング挙動は、
図9のスイッチ素子120および
図8のメモリ素子30のIV曲線を合わせたIV曲線となる(
図10参照)。このようなメモリセル110では、例えば、V/2バイアス方式において、メモリセル110の読み出し電圧(Vread)がIV曲線上の急激に抵抗変化する閾値よりも大きな電圧に設定され、Vread/2が抵抗変化の閾値よりも小さい電圧に設定される。これにより、VreadバイアスとVread/2バイアスとの電流比で定義される選択比(オン/オフ比)が大きくなる
。また、上記のように、メモリセル110のIV曲線は、スイッチ素子120のIV曲線と、メモリ素子30のIV曲線とを合わせたものであるので、スイッチ素子120の閾値前後の抵抗変化(あるいは電流変化)が大きいほど選択比(オン/オフ比)が大きくなる。また、選択比が大きければ大きいほど読み出しマージンが大きくなるため、誤読み出しすることなくクロスポイントアレイサイズを大きくすることが可能となり、メモリセルアレイの更なる大容量化が可能となる。
【0051】
これは、読み出し動作だけでなく、書き込み動作についても同様である。クロスポイントアレイでは、対象のメモリセル110と同じビット線BLあるいはワード線WLに多数のビットが接続されている。このため、
図10に示したように、Vwrite/2とIV曲線の点線のSet状態のIVループの交点で示される、Vwrite/2にバイアスされた非選択時のリーク電流が大きいと、非選択のメモリセル110で誤書き込みを生じる虞がある。よって、書き込み動作では、メモリ素子30を書き込む際に必要な電流が得られる電圧(例えば、およそ6Vよりも大きな電圧)に書き込み電圧Vwriteが設定されたうえで、Vwrite/2にバイアスされた非選択のメモリセル110が誤書き込みを生じない程度のリーク電流に抑えることが好ましい。即ち、Vwrite/2にバイアスされた非選択時のリーク電流が小さければ小さいほど、大規模なクロスポイントアレイを誤書き込みなく動作させることができる。従って、書き込み動作時もスイッチ素子のオン/オフ比を大きくすることが、メモリセルアレイの大容量化につながる。
【0052】
一方、逆バイアス(ここでは消去電圧)が印加されると、スイッチ素子120の消去電圧印加時における電流値の変化は、書き込み電圧を印加した際と同様の挙動を示す(
図9のIV曲線)。これに対して、メモリ素子30の消去電圧印加時における電流値の変化は、消去閾値電圧(例えば、およそ2〜3V程度)以上の電圧印加によって、低抵抗状態から高抵抗状態へと変化する(
図8のIV曲線)。更に、メモリセル110の消去電圧印加時における電流値の変化は、書き込み電圧印加時と同様に、スイッチ素子120のIV曲線とメモリ素子30のIV曲線とを合わせたものとなる(
図10のIV曲線)。
【0053】
ところで、メモリ素子30が低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が生じで消去動作が行われた後、さらに大きな消去電圧を印加していく場合、高抵抗状態のメモリセル110にスイッチ素子120の閾値電流以上の電流が流れるとスイッチ素子120が再度スイッチして高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移する。このとき、スイッチ素子120には保持電圧の電圧が分圧され、それ以外の電圧はメモリ素子30に印加される。この再スイッチにより、メモリ素子30に過大な電圧が印加される。正方向と負方向でスイッチ素子120のIV特性が対称であり、メモリ素子30の高抵抗状態の抵抗値も正方向と負方向で対称であり、メモリ素子30の抵抗変化閾値電流が十分に大きいなどの条件では、理論的には正方向のスイッチ電圧と、負方向の再スイッチ電圧は等しくなる。そのため、
図10に示したように、消去電圧がおよそ6Vで消去動作後の再スイッチが起こる。このときに、メモリ素子30の逆方向耐圧が、再スイッチ電圧から保持電圧を引いた電圧値よりも小さい場合には、メモリ素子30に過大な電圧がかかるので、メモリ素子30が破壊される。また、
図10に示したように、消去が完了する電圧がおよそ5Vであり、再スイッチする電圧はおよそ6Vであり、そのマージンMGは1Vと小さい。メモリ素子30の消去が完了する電圧には、一般的にばらつきが生じやすい。そのため、マージンMGが十分に大きくなければ、メモリ素3
0を完全に消去し高抵抗化する電圧の設定が困難となり、書き込みと消去の安定的な繰り返し動作が困難となる。
【0054】
次に、
図11のスイッチ素子220について説明する。
図11のスイッチ素子220では、
図9のスイッチ素子120と比べて、閾値電圧、閾値電流が大きくなっている。書き込み電圧を印加する際に、スイッチ素子220の閾値電圧が大きく、同時に閾値電流が大きいので、メモリセル210の閾値電圧はおよそ8Vとなる(
図12)。消去電圧を印加したときには、
図10に記載の挙動と同様の挙動を示し、スイッチ素子220の閾値電圧、閾値電流に達すると、スイッチ素子220がスイッチし、その結果、メモリ素子30に十分な電流・電圧が印加され、メモリ素子30が低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移し、メモリ素子30に書き込まれたデータが消去される。消去電圧は、スイッチ素子220の閾値の上昇により、
図10のときの消去電圧と比較して大きくなる。
【0055】
消去動作が行われた後、さらに大きな消去電圧を印加していくと、スイッチ素子220で再スイッチが起こる。しかし、その閾値電圧は大きくなるので、メモリセル210としての過消去電圧の耐久性が、8Vに向上する。また、マージンMGも2Vに向上する。そのため、安定に消去できる電圧を設定しやすくなることから、メモリセル210の書き込み・消去動作の信頼性が向上する。この様にスイッチ素子220の閾値電圧を増大させることによりメモリ素子30の消去が安定化し、メモリセル210の書き換え動作の安定化に繋がる。しかし、
図11のスイッチ素子220をメモリセル210に用いた場合には、メモリセル210の書き込み電圧が大きくなりすぎる。メモリアレイ動作の消費電力を低減して、より高速な動作を実現するには、動作電圧をなるべく低減することが好ましい。
【0056】
一方、本実施の形態のスイッチ素子20は、スイッチ素子120と同様に、書き込み側において、おおよそ4Vでスイッチし、消去側においては、5Vでスイッチする。これにより、書き込み電圧が6Vと低く抑えられると共に、消去側の再スイッチ電圧が8Vと大きくなる(
図14)。また、消去完了電圧がおよそ6Vであり、消去電圧と再スイッチ電圧のマージンMGを大きく取ることができるので、安定な消去動作が実現される。
【0057】
次に、メモリセル10において
図14に示したIV特性が発現する原理について説明する。
【0058】
例えば、
図4〜
図7に示したように、メモリ層32における、イオン源層32B側の電圧が、抵抗変化層32A側の電圧よりも高くなるように、メモリセル10に電圧が印加された場合には、そのような電圧印加により、メモリセル10では書き込み動作が行われる。このとき、
図4〜
図7のスイッチ層22において、電圧の相対的に高い側の層または領域のスイッチ特性が発現する。従って、
図4、
図7のスイッチ層22における第2層22B(第2領域22β)、または
図5、
図6のスイッチ層22における第2層22B(第1領域22α)のスイッチ特性が発現するので、カルコゲン元素の組成比の大きなスイッチ素子と同様、書き込み側の閾値電圧が小さくなる。
【0059】
また、例えば、
図4〜
図7に示したように、メモリ層32における、抵抗変化層32A側の電圧が、イオン源層32B側の電圧よりも高くなるように、メモリセル10に電圧が印加された場合には、そのような電圧印加により、メモリセル10では消去動作が行われる。このとき、
図4〜
図7のスイッチ層22において、電圧の相対的に高い側の層または領域のスイッチ特性が発現する。従って、
図4、
図7のスイッチ層22における第1層22A(第1領域22α)、または
図5、
図6のスイッチ層22における第1層22A(第2領域22β)のスイッチ特性が発現するので、カルコゲン元素の組成比の小さなスイッチ素子と同様、消去側の閾値電圧が大きくなる。
【0060】
なお、ここで示した、メモリ素子30の書き込みおよび消去電圧はあくまでも一例であり、例えば、0.2V〜5V程度の値をとることができる。同様に、スイッチ素子20のスイッチ閾値電圧も0.5V〜5V程度の値をとることができる。これによりメモリセル10の書き込み消去電圧も任意に調整することができるが、本開示では、ここまで説明したように、正・負バイアス方向で異なるスイッチ閾値電圧を異なる構成とすることで、メモリセル10の動作を安定させることができる。
【0061】
次に、本実施の形態のメモリセルアレイ1の効果について説明する。
【0062】
本実施の形態では、スイッチ層22における第1電極21寄りの第1領域22αと、スイッチ層22における第2電極23寄りの第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類が互いに異なっている。これにより、スイッチ層22が例えば
図13に示したような非対称のIV特性となるように、第1領域22αおよび第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比、または、カルコゲン元素の種類を設定することができる。その結果、スイッチ素子20における、リセット側の閾値電圧を、スイッチ素子20における、セット側の閾値電圧よりも大きくすることができる。従って、過消去によるメモリ素子30の劣化を抑制し、信頼性の高いメモリ動作を行うことができる。
【0063】
<2.変形例>
以下に、上記実施の形態のメモリセルアレイ1の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
【0064】
[変形例A]
図15A、
図15Bは、上記実施の形態のスイッチ素子20の一変形例を表したものである。本変形例では、スイッチ層22は、第1領域22αと第2領域22βとの間で、または、第1層22Aと第2層22Bとの間で、第1領域22αおよび第2領域22β(または、第1層22Aおよび第2層22B)に含まれるカルコゲン元素やその他の成分元素が拡散するのを抑制する拡散抑制層24を有している。拡散抑制層24は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、または、これらから選ばれる少なくとも1種の元素の窒化物を含んで構成されている。
【0065】
メモリセル10に対して書き込み電圧Vwや消去電圧Vrが繰り返し印加されているうちに、第1層22Aに含まれるカルコゲン元素が第2層22Bに拡散したり、第2層22Bに含まれるカルコゲン元素やその他の成分元素が第1層22Aに拡散したりすることがある。この場合、第1層22Aに含まれるカルコゲン元素の組成比と、第2層22Bに含まれるカルコゲン元素の組成比との差が次第に小さくなり、スイッチ層22が有するIV特性の非対称性が損なわれたときには、マージンMGが小さくなってしまう。しかし、本変形例では、拡散抑制層24が設けられていることにより、そのような可能性を確実に減らすことができる。
【0066】
[変形例B]
図16A、
図16Bは、上記実施の形態および変形例Aのスイッチ素子20の一変形例を表したものである。上記実施の形態および変形例Aでは、スイッチ層22は、第1層22Aおよび第2層22Bが積層された積層構造によって構成されていた。しかし、上記実施の形態および変形例Aにおいて、スイッチ層22が、第1層22Aおよび第2層22Bを含む3つ以上の層が積層された積層構造によって構成されていてもよい。例えば、スイッチ層22が、第1層22Aと第2層22Bとの間に第5層25が挿入された3つの層によって構成されていてもよい。このようにした場合であっても、上記実施の形態と同様、過消去によるメモリ素子30の劣化を抑制し、信頼性の高いメモリ動作を行うことができる。
【0067】
[変形例C]
図17は、上記実施の形態および変形例Aのスイッチ素子20の一変形例を表したものである。上記実施の形態および変形例Aでは、スイッチ層22は、第1層22Aおよび第2層22Bが積層された積層構造によって構成されていた。しかし、上記実施の形態および変形例Aにおいて、スイッチ層22が、第1領域22αと第2領域22βとにおいて、カルコゲン元素の組成比が互いに異なるように構成された単層で構成されていてもよい。ただし、本変形例では、スイッチ層22は、カルコゲン元素の組成比がスイッチ素子20の積層方向において連続的に変化するグラデーション構造となっている。このようにした場合であっても、上記実施の形態と同様、過消去によるメモリ素子30の劣化を抑制し、信頼性の高いメモリ動作を行うことができる。
【0068】
[変形例D]
上記実施の形態および変形例A〜Cでは、メモリ層32は、抵抗変化層32Aおよびイオン源層32Bが積層された積層構造によって構成されていた。しかし、上記実施の形態および変形例A〜Cにおいて、メモリ層32は、そのような構成に限定されるものではなく、例えば、TaOx、HfOxまたはTiOxなどの酸化物を用いた抵抗変化メモリや、GeTeSbなどを用いた相変化メモリ、トンネル磁気抵抗素子を用いたスピントランスファートルク型MRAM(STT−MRAM)、PCM(相変化メモリ)、カーボンナノチューブもしくはグラフェンなどの炭素材料を用いた抵抗変化メモリであってもよい。
【0069】
[変形例E]
上記実施の形態および変形例A〜Dでは、スイッチ素子20とメモリ素子30とが互いに積層されている場合が例示されていた。しかし、上記実施の形態および変形例A〜Dにおいて、スイッチ素子20とメモリ素子30との間に、非線形抵抗素子が挟み込まれていてもよい。また、スイッチ素子20とメモリ素子30が電極を共有せずに、別体で形成されていてもよい。
【0070】
[変形例F]
上記実施の形態および変形例A〜Eにおいて、ワード線WLまたはビット線BLがメモリセルアレイ1の積層方向に延在していてもよい。この場合、各ワード線WLと、各ビット線BLとは、メモリセルアレイ1の積層面内方向において互いに対向することになり、各メモリセル10に含まれるスイッチ素子20およびメモリ素子30は、メモリセルアレイ1の積層面内方向に直列に接続されることになる。
【0071】
<3.実施例>
次に、上記実施の形態のメモリセルアレイ1の実施例について、比較例を参照しつつ説明する。
【0072】
3つの試料01〜03を作成した。以下に、これらの試料01〜03に製造方法について説明する。
【0073】
試料01を以下のようにして製造した。まず、基板上に、TiN層を形成したのち、TiN層の表面に、厚さ20nmのBCTeN層(具体的にはB
40C
13Te
17N
30層)を形成した。次に、BCTeN層の表面にW層を形成した。その後、フォトリソグラフィおよびドライエッチングなどの公知の技術を用いて、TiN層、BCTeN層およびW層からなる積層体を選択的にエッチングすることにより、基板上に、比較例に係る複数のスイッチ素子20を形成した。このようにして形成したものを試料01と称する。
【0074】
試料02を以下のようにして製造した。まず、基板上に、TiN層を形成したのち、TiN層の表面に、厚さ10nmの1つ目のBCTeN層(具体的にはB
40C
13Te
17N
30層)を形成したのち、続いて、厚さ10nmの2つ目のBCTeN層(具体的にはB
43C
14Te
7N
36層)を形成した。次に、2つ目のBCTeN層の表面にW層を形成した。その後、フォトリソグラフィおよびドライエッチングなどの公知の技術を用いて、TiN層、組成比の互いに異なる2つのBCTeN層およびW層からなる積層体を選択的にエッチングすることにより、基板上に、組成比の互いに異なる2つのBCTeN層からなるスイッチ層22を備えた複数のスイッチ素子20を形成した。このようにして形成したものを試料02と称する。
【0075】
試料03を以下のようにして製造した。まず、基板上に、TiN層を形成したのち、TiN層の表面に、厚さ10nmの1つ目のBCTeN層(具体的にはB
43C
14Te
7N
36層)を形成したのち、続いて、厚さ10nmの2つ目のBCTeN層(具体的にはB
40C
13Te
17N
30層)を形成した。次に、2つ目のBCTeN層の表面にW層を形成した。その後、フォトリソグラフィおよびドライエッチングなどの公知の技術を用いて、TiN層、組成比の互いに異なる2つのBCTeN層、およびW層からなる積層体を選択的にエッチングすることにより、基板上に、組成比の互いに異なる2つのBCTeN層からなるスイッチ層22を備えた複数のスイッチ素子20を形成した。このようにして形成したものを試料03と称する。
【0076】
試料01〜03の各スイッチ素子20のIV特性を計測し、その結果を
図18A、
図18B、
図18Cに示した。
図18Aに試料01のIV特性を、
図18Bに試料02のIV特性を、
図18Cに試料03のIV特性を示した。なお、各試料01〜03において、最上面の電極に正の電圧を印加するとともに、基板側の電極をグラウンド電位にした時に得られたIV特性を各図の右側のグラフに示した。また、各試料01〜03において、最上面の電極をグラウンド電位にするとともに、基板側の電極に負の電圧を印加した時に得られたIV特性を各図の左側のグラフに示した。
【0077】
図18Aから、スイッチ層全体の組成が概ね均一となっている場合には、正バイアス時のスイッチ電圧と、負バイアス時のスイッチ電圧とが互いに等しくなっていることがわかった。また、
図18Bから、スイッチ層における1つ目のBCTeN層に含まれるTeの組成比が、スイッチ層における2つ目のBCTeN層に含まれるTeの組成比よりも大きくなっている場合には、負バイアス時のスイッチ電圧の絶対値が、正バイアス時のスイッチ電圧の絶対値よりも小さくなっていることがわかった。また、
図18Cから、スイッチ層における1つ目のBCTeN層に含まれるTeの組成比が、スイッチ層における2つ目のBCTeN層に含まれるTeの組成比よりも小さくなっている場合には、負バイアス時のスイッチ電圧の絶対値が、正バイアス時のスイッチ電圧の絶対値よりも大きくなっていることがわかった。以上のことから、スイッチ層において、カルコゲン元素の組成比をスイッチ素子20の積層方向で異ならせることにより、スイッチ層のIV特性の非対称性を制御することができる。
【0078】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本技術が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0079】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
第1電極と、
前記第1電極に対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素を含むスイッチ層と
を備え、
前記スイッチ層では、前記第1電極寄りの第1領域と、前記第1領域と比べて前記第2電極寄りの第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
スイッチ素子。
(2)
前記スイッチ層は、さらに、ホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種の付随元素をさらに含み、
前記スイッチ層では、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記付随元素の組成比、または、前記付随元素の種類が互いに異なっている
(1)に記載のスイッチ素子。
(3)
前記スイッチ層は、前記第1電極の電圧が前記第2電極の電圧よりも高くなる第1電圧が前記第1電極および前記第2電極間に印加されたときに、前記第1電圧の絶対値が第1閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第1電圧の絶対値が前記第1閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層は、前記第2電極の電圧が前記第1電極の電圧よりも高くなる第2電圧が前記第1電極および前記第2電極間に印加されたときに、前記第2電圧の絶対値が第2閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第2電圧の絶対値が前記第2閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層では、前記第1閾値電圧の絶対値と前記第2閾値電圧の絶対値とが互いに異なるように、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
(1)または(2)に記載のスイッチ素子。
(4)
前記スイッチ層は、前記第1領域と前記第2領域との間で、前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記カルコゲン元素が拡散するのを抑制する拡散抑制層を有する
(1)ないし(3)のいずれか1つに記載のスイッチ素子。
(5)
前記拡散抑制層は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、または、これらから選ばれる少なくとも1種の元素の窒化物を含んで構成されている
(4)に記載のスイッチ素子。
(6)
複数のメモリセルを備え、
各前記メモリセルは、メモリ素子および前記メモリ素子に直接接続されたスイッチ素子を含み、
前記スイッチ素子は、
第1電極と、
前記第1電極に対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、テルル(Te)、セレン(Se)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1種のカルコゲン元素を含むスイッチ層と
を有し、
前記スイッチ層では、前記第1電極寄りの第1領域と、前記第1領域と比べて前記第2電極寄りの第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
記憶装置。
(7)
前記スイッチ層は、前記メモリセルを低抵抗化する書き込み電圧が前記メモリセルに印加されたときの、前記第1電極および前記第2電極間の第3電圧の絶対値が第3閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第3電圧の絶対値が前記第3閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層は、前記メモリセルを高抵抗化する消去電圧が前記メモリセルに印加されたときの、前記第1電極および前記第2電極間の第4電圧の絶対値が第4閾値電圧以上に上がることにより低抵抗状態に変化し、前記第4電圧の絶対値が前記第4閾値電圧より低い電圧に下がることにより高抵抗状態に変化するようになっており、
前記スイッチ層では、前記第3閾値電圧の絶対値と前記第4閾値電圧の絶対値とが互いに異なるように、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
(6)に記載の記憶装置。
(8)
前記スイッチ層では、前記第4閾値電圧の絶対値が前記第3閾値電圧の絶対値よりも大きくなるように、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記カルコゲン元素の組成比、または、前記カルコゲン元素の種類が互いに異なっている
(7)に記載の記憶装置。
(9)
前記メモリ素子は、双方向抵抗変化メモリである
(6)ないし(8)のいずれか1つに記載の記憶装置。
(10)
前記メモリ素子は、
イオンを供給するイオン源層として、銅(Cu)、テルル(Te)、ジルコニウム(Zr)およびアルミニウム(Al)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むカルコゲナイド層と、
抵抗変化層として、アルミニウム(Al)を含む酸化物層と
を有する
(9)に記載の記憶装置。
(11)
前記抵抗変化層が前記イオン源層よりも前記スイッチ素子寄りの位置に設けられており、
前記第1領域および前記第2領域のうち、前記カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方の領域が、前記メモリ素子から離れた位置に配置されている
(9)に記載の記憶装置。
(12)
前記抵抗変化層が前記イオン源層よりも前記スイッチ素子から離れた位置に設けられており、
前記第1領域および前記第2領域のうち、前記カルコゲン元素の組成比が相対的に小さい方の領域が、前記メモリ素子寄りの位置に配置されている
(9)に記載の記憶装置。
(13)
所定の方向に延在する複数の第1配線と、
前記第1配線と交差する方向に延在する複数の第2配線と
をさらに備え、
複数の前記メモリセルは、各前記第1配線と各前記第2配線とが互いに対向する位置に設けられている
(6)ないし(12)のいずれか1つに記載の記憶装置。
【0080】
本出願は、日本国特許庁において2015年3月31日に出願された日本特許出願番号第2015−073053号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0081】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。