(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の同時2軸延伸機は、クリップ側ガイドレールと、反クリップ側ガイドレールと、スプロケットと、を有している。
クリップ側ガイドレールは、リンク装置のクリップ側のローラを転動可能に構成されている。一方、反クリップ側ガイドレールは、リンク装置の反クリップ側のローラを転動可能に構成されている。ここで、2本のガイドレールの間隔を調節する。リンク装置を伸長させる。これにより、つかみ子(clip)のピッチを拡大させることができる。
【0008】
更に、スプロケットは、リンク装置を2本のガイドレールに沿って巡回させることが可能に構成されている。スプロケットは、反クリップ側のローラと噛み合っている。
【0009】
かかる同時2軸延伸機によれば、3個のローラによって、リンク装置の姿勢が定まると共に、リンクの伸長具合が定まる。この場合、3個のローラにおいて、2個のローラは、反クリップ側ガイドレールを転動する2個のローラであって、かつ、互いに隣接する(隣り合う)2個のローラである。残りの1個のローラは、クリップ側ガイドレールを転動するローラであって、かつ、反クリップ側ガイドレールを転動する2個のローラの相互間を転動するローラである。
【0010】
同時2軸延伸機の予熱ゾーンや熱処理ゾーンでは、2本のガイドレールの間隔が一定で直線状に配置される。このため、ガイドレールを転動するローラとは連結されていない子リンクもガイドレールに沿って移動する。
【0011】
予熱ゾーンと熱処理ゾーンとの間の延伸ゾーンでは、2本のガイドレールの間隔が徐々に狭められている。予熱ゾーンと接続される接続部では、2本のガイドレールを湾曲させつつ間隔が徐々に狭まるようにしている。このため、予熱ゾーンを移動してきたリンク装置は、滑らかに延伸ゾーンに移行する。
【0012】
この延伸ゾーンの接続部では、クリップ側ガイドレールの曲率よりも反クリップ側ガイドレールの曲率の方が相対的に大きい。このため、隣接するリンク装置のクリップ側の2個のローラは、意図せずに、その間隔が大きくなる。これにより、この接続部では、リンク装置(親リンク)のつかみ子(clip)の移動の軌跡と、子リンクのつかみ子(clip)の移動の軌跡との差が大きくなる。この結果、リンク装置(親リンク)のつかみ子(clip)で把持した部分の延伸状態と、子リンクのつかみ子(clip)で把持した部分の延伸状態とが、互いに異なってしまう。
【0013】
本発明の目的は、シート状部材を同時2軸延伸する場合に、予め設定されたシート状部材の延伸のパターンに適合した同時2軸延伸を行うことが可能なクリップ式延伸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明のクリップ式延伸装置は、クリップを有する第1のクリップ担持部材を備える主リンク装置と、クリップを有する従リンク装置と、クリップの巡回経路を画定する基準レールと、基準レールとの離間距離によって第1のクリップ担持部材同士の間のピッチを設定するピッチ設定レールと、第1のクリップ担持部材の第1の軸部材に設けられた駆動ローラが係合して第1のクリップ担持部材を走行させる駆動用スプロケットと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動用スプロケットが、第1の軸部材の駆動ローラと係合する。このため、無端状に連結された第1のクリップ担持部材を、巡回経路に沿って走行させることができる。このとき、延伸ゾーンの接続部において、隣接する第1の軸部材同士のピッチ(間隔)が、意図せずに大きくなることはない。これにより、第1の軸部材の走行軌跡と、係合子(engaging element)が設けられていない第6の軸部材の走行軌跡との差を、許容範囲に収めることができる。この場合、第1のクリップ担持部材に設けられたクリップの走行軌跡と、第2の担持部材に設けられたクリップの走行軌跡と間の差も、許容範囲に収まる。この結果、延伸ゾーンの接続部においてフィルムの延伸状態が異なる、といった問題を抑えることができる。かくして、予め設定された延伸パターンに基づいて、シート状部材に対する同時2軸延伸を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「一実施形態」
図1〜
図5に示すように、クリップ式延伸装置1は、平面視で左右両側に、無端ループ11Rと11Lとを具備している。左右の無端ループ11R、11Lは、複数のクリップ10が移動可能に構成されている。クリップ10は、延伸対象のシートやフィルムなどのシート状部材を把持可能に構成されている。なお、シート状部材の入口1a側から見て右側の無端ループを右側の無端ループ11R、左側の無端ループを左側の無端ループ11Lと言う。
【0018】
左右の無端ループ11R、11Lのクリップ10は、各々、基準レール12に案内されてループ状に巡回移動する。右側の無端ループ11Rは、時計廻り方向に巡回移動する。左側の無端ループ11Rは反時計廻り方向に巡回移動する。延伸前のシート状部材は、入口1aでクリップ10にその両縁部を把持され、延伸された後、出口1bでクリップ10の把持から解放される。
【0019】
シート状部材の入口1a側(上流側)から出口1b側(下流側)へ向けて、予熱ゾーンA、延伸ゾーンB、熱処理ゾーンCが、この順番に配置構成されている。
【0020】
予熱ゾーンAでは、左右の無端ループ11R、11Lの相互間の距離が、横延伸初期幅相当となり、比較的小さく設定されている。予熱ゾーンAの全域に亘って、左右の無端ループ11R、11Lは、互いに平行な配置になっている。
【0021】
延伸ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左右の無端ループ11R、11Lの相互間の距離が、徐々に拡大されている。延伸ゾーンBの全域に亘って、左右の無端ループ11R、11Lは、非平行の配置になっている。延伸ゾーンBにおいて、左右の無端ループ11R、11Lの相互間の距離は、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では横延伸初期幅相当に設定され、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では横延伸最終幅相当に設定されている。
【0022】
ここで、予熱ゾーンAとの接続部Bfにおいて、左右の無端ループ11R、11Lは、クリップ10側に張り出すように湾曲させて構成されている。これにより、予熱ゾーンAを移動してきたクリップ10は、滑らかに延伸ゾーンBに移行可能となる。
【0023】
熱処理ゾーンCでは、左右の無端ループ11R、11Lの相互間の離間が、横延伸最終幅相当となり、比較的大きく設定されている。熱処理ゾーンCの全域に亘って、左右の無端ループ11R、11Lは、互いに平行な配置になっている。
【0024】
次に、
図2〜
図4を参照してクリップ式延伸装置1の詳細構造について説明する。
【0025】
クリップ10は、シート状部材Wを把持可能に構成されている。クリップ10は、ヨーク形状のクリップ本体20と、クリップ本体20に固定装着された下側固定クリップ部材21と、ピン22によってクリップ本体20に回動可能に取り付けられた可動レバー23と、可動レバー23の下端にピン24によって揺動可能に取り付けられた上側可動クリップ部材25と、を有している。
【0026】
下側固定クリップ部材21と上側可動クリップ部材25とで、シート状部材Wの側縁を挟み込んで支持可能に構成されている。これにより、クリップ10は、シート状部材Wを挟んで支持したり、その支持状態を解放させたりすることが可能となる。
【0027】
なお、複数のクリップ10は、その半数が主リンク装置30に個々に設けられ、残りの半数が従リンク装置60に個々に設けられている。
【0028】
「主リンク装置30」
図2〜
図3に示すように、主リンク装置30は、長方形状を有する第1のクリップ担持部材(clip support member)31を備えている。第1のクリップ担持部材31は、クリップ10を担持可能に構成されている。クリップ10は、第1のクリップ担持部材31の長手方向の一端部(前側)に担持されている。
【0029】
第1のクリップ担持部材31は、上梁32、下梁33、前壁34、後壁35によって閉じられたフレーム構造(
図3参照)を有している。かかるフレーム構造は、強固で剛性に優れた構成を有している。第1のクリップ担持部材31の両端(前壁34、後壁35)には、走行輪38、39が設けられている。走行輪38、39は、各々、軸36、37に回転可能に支持されている。走行輪38、39は、基台80に形成された水平な走行路面81、82上を転動する。走行路面81、82は、全域に亘って基準レール12に並行している。
【0030】
上梁32の他端側(後側)、及び、下梁33の他端側(後側)には、それぞれ、第1の長孔(長形の穴)40が構成されている。上下の第1の長孔(長形の穴)40は、長手方向に長い形状を有している。上下の第1の長孔40には、第1のスライダ41がスライド可能に係合されている。
【0031】
第1のクリップ担持部材31の一端部(クリップ10側)の近傍には、上梁32、下梁33を貫通して一本の第1の軸部材42が垂直に設けられている。第1のクリップ担持部材31の上下の第1のスライダ41には、一本の第2の軸部材43が垂直に貫通して設けられている。
【0032】
第1のクリップ担持部材31の第1の軸部材42には、第1のリンク部材44の一端が枢動連結(Pivot connection)されている。第1のリンク部材44の他端は、シート状部材Wの搬送方向の下流側に隣接する第1のクリップ担持部材31の第2の軸部材43に枢動連結されている。
【0033】
更に、第1のリンク部材44の中間部には、第3の軸部材46が設けられている。第3軸部材46には、第2のリンク部材45の一端が枢軸連結(Pivot connection)されている。第2のリンク部材45の他端は、シート状部材Wの搬送方向の下流側に隣接する第1のクリップ担持部材31の第1の軸部材42に枢動連結されている。この場合、第2のリンク部材45における第3の軸部材46と第1の軸部材42との間の距離は、第1のリンク部材44における第3の軸部材46と第1の軸部材42との間の距離と等しく設定されている。
【0034】
かかる構成において、第1のリンク部材44、第2のリンク部材45によるリンク機構により、第1のスライダ41が、第1のクリップ担持部材31の他端側(反クリップ側)に移動するに従って、隣接する第1のクリップ担持部材31同士のピッチが小さくなる。そして、
図2に示すように、第1のスライダ41が、第1のクリップ担持部材31の一端側(クリップ側)に移動すると、これに従って、シート状部材Wの搬送方向に沿って隣接する第1のクリップ担持部材31同士のピッチが大きくなる。
【0035】
第1の軸部材42の下端には、案内ローラ(第1の係合子(engaging element))47が回転可能に設けられている。案内ローラ47は、凹溝形状の基準レール12の凹溝83に係合している。基準レール12(凹溝83)は、基台80上に設けられている。基準レール12(凹溝83)は、クリップ10の巡回経路を画定している。
【0036】
第1の軸部材42の上端には、駆動ローラ48が回転可能に設けられている。 駆動ローラ48は、駆動用スプロケット14、15(
図1参照)に選択的に係合する。駆動用スプロケット14、15は、電動モータ(図示せず)によって回転駆動されている。駆動用スプロケット14、15は、第1のクリップ担持部材31の駆動ローラ48と選択的に係合する。このとき、第1のクリップ担持部材31を巡回経路に沿って走行させる力を、第1のクリップ担持部材31に与える。かくして、第1のクリップ担持部材31を、巡回経路に沿って走行させる。
【0037】
第2の軸部材43の下端には、ピッチ設定ローラ(第2の係合子)49が回転可能に設けられている。ピッチ設定ローラ49は、凹溝形状のピッチ設定レール13の凹溝84に係合している。ピッチ設定レール13(凹溝84)は、基台80上に設けられている。ピッチ設定レール13(凹溝84)は、第1の長孔40における第1のスライダ41の位置を設定する。
【0038】
ピッチ設定レール13は、基準レール12との離間距離によって、第1の長孔40における第1のスライダ41の位置を決める働きをする。ピッチ設定レール13は、シート状部材Wの搬送方向に沿って隣接する第1のクリップ担持部材31同士のピッチを可変設定する。例えば、ピッチ設定レール13と、基準レール12との離間距離が長いほど、つまり、ピッチ設定レール13が基準レール12より遠ざかっているほど、第1のスライダ41を、第1のクリップ担持部材31の他端側(反クリップ側)に移動させる。かくして、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが小さくなる。
【0039】
これに対して、ピッチ設定レール13と、基準レール12との離間距離が短いほど、つまり、ピッチ設定レール13が基準レール12に近づいているほど、第1のスライダ41を、第1のクリップ担持部材31の一端側(クリップ側)に移動させる。かくして、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが大きくなる。
【0040】
ここで、
図1に示すように、予熱ゾーンAの全域に亘って、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最大値となるように設定されている。予熱ゾーンAにおいて、ピッチ設定レール13は、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが最小となるように設定されている。
【0041】
延伸ゾーンBは、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)と、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)との間に構成されている。
【0042】
延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)において、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最大値になっていると共に、第1のクリップ担持部材31同士のピッチは、最小となっている。一方、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)において、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最小値となっていると共に、第1のクリップ担持部材31同士のピッチは、最大となっている。
【0043】
言い換えると、延伸ゾーンBは、延伸開始端から延伸終了端に向かうに従って、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離が徐々に短くなるように構成されている。即ち、延伸ゾーンBは、延伸開始端から延伸終了端に向かうに従って、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが徐々に大きくなるように構成されている。
【0044】
熱処理ゾーンCの全域に亘って、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最大値となるように設定されている。熱処理ゾーンCにおいて、ピッチ設定レール13は、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが最大となるように設定されている。
【0045】
上記したように、基準レール12とピッチ設定レール13とを配置構成する。これにより、シート状部材Wを把持する多数のクリップ10を有する無端ループ11Rと11Lクリップ10の巡回経路が設定される。この結果、シート状部材Wが入口1aから出口1bまで移動する間に施される延伸パターンが画定される。
【0046】
「従リンク装置60」
図2、
図4に示すように、従リンク装置60は、長方形状を有する第2のクリップ担持部材(clip support member)61を備えている。第2のクリップ担持部材61は、クリップ10を担持可能に構成されている。クリップ10は、第2のクリップ担持部材61の長手方向の一端部(前側)に担持されている。
【0047】
第2のクリップ担持部材61は、上梁62、下梁63、前壁64、後壁65によって閉じられたフレーム構造(
図4参照)を有している。かかるフレーム構造は、強固で剛性に優れた構成を有している。
【0048】
上梁62の他端側(後側)、及び、下梁63の他端側(後側)には、それぞれ、第2の長孔(長形の穴)66が構成されている。上下の第2の長孔(長形の穴)66は、長手方向に長い形状を有している。上下の第2の長孔66には、第2のスライダ67がスライド可能に係合されている。上下の第2のスライダ67には、一本の第3の軸部材46が垂直に貫通して設けられている。
【0049】
更に、従リンク装置60は、第3のリンク部材68と、第4のリンク部材70と、を有している。
【0050】
第3のリンク部材68の一端は、第1のリンク部材44の中間部に回転可能に連結されている。第1のリンク部材44の中間部は、第1の軸部材42と第3の軸部材46との中間に設定されている。中間部には、第4軸部材69が設けられている。かくして、第3のリンク部材68の一端は、第4の軸部材69に枢動連結されている。
【0051】
第4のリンク部材70の一端は、第2のリンク部材45の中間部に回転可能に連結されている。第2のリンク部材45の中間部は、第1の軸部材42と第3の軸部材46との中間に設定されている。中間部には、第5の軸部材71が設けられている。かくして、第4のリンク部材70の一端は、第5の軸部材71に枢動連結されている。
【0052】
第3のリンク部材68における第4の軸部材69と第6の軸部材72との間の距離は、第1のリンク部材44における第4の軸部材69と第1の軸部材42との間の距離と等しく設定されている。
【0053】
第4のリンク部材70における第5の軸部材71と第6の軸部材72との間の距離は、第2のリンク部材45における第5の軸部材71と第1の軸部材42との間の距離と等しく設定されている。
【0054】
また、第3のリンク部材68の他端、及び、第4のリンク部材70の他端は、第6の軸部材72によって互いに枢動可能に連結されている。第6の軸部材72は、第2のクリップ担持部材61の一端部(クリップ10側)の近傍で、上梁62、下梁63を貫通して取付けられている。なお、第2のクリップ担持部材61の第6の軸部材72と、クリップ10との間の距離は、第1のクリップ担持部材31の第1の軸部材42とクリップ10との間の距離と等しく設定されている。
【0055】
以上、従リンク装置60において、第3のリンク部材68は、主リンク装置30の第1のリンク部材44に枢動可能に連結され、第4のリンク部材70は、主リンク装置30の第2のリンク部材45に枢動可能に連結されている。従リンク装置60は、主リンク装置30の伸長に合わせて伸長可能に構成されている。更に、従リンク装置60の第6の軸部材72は、隣接する主リンク装置30同士の第1の軸部材42を結ぶ直線上に位置付けられている。即ち、第6の軸部材72は、隣接する第1の軸部材42の相互間の中間部(中間点)に位置付けられている。
【0056】
上述の如く、多数のクリップ10を有する左右の無端ループ11R、11Lは、それぞれ、無端状に連結された多数の主リンク装置30と、複数の従リンク装置60と、を備えている。従リンク装置60は、隣接する主リンク装置30同士の間に、1つずつ設けられている。
【0057】
「クリップ式延伸装置1の動作」
右側の無端ループ11Rの駆動用スプロケット14、15は、電動モータ(図示せず)によって、時計廻り方向に回転駆動される。左側の無端ループ11Lの駆動用スプロケット14、15は、電動モータ(図示せず)によって、反時計廻り方向に回転駆動される。駆動用スプロケット14、15には、第1のクリップ担持部材31の駆動ローラ48が係合している。
【0058】
この場合、駆動用スプロケット14、15から駆動ローラ48を介して、第1のクリップ担持部材31に走行力が与えられる。これにより、右側の無端ループ11Rは、時計廻り方向に巡回移動する。左側の無端ループ11Lは、反時計廻り方向に巡回移動する。この結果、延伸前のシート状部材Wが、入口1aから、左右の無端ループ11R、11L間に取り込まれる。
【0059】
この入口1aにおいて、左右の無端ループ11R、11Lのクリップ10によって、シート状部材Wの両側縁が把持(クリップ・オン)される。
【0060】
ここで、左右の無端ループ11R、11Lの移動、つまり、基準レール12に案内された主リンク装置30の移動と、それに伴う従リンク装置60の移動により、シート状部材Wは、まず、予熱ゾーンAに進入する。
【0061】
上記したように、予熱ゾーンAの全域に亘って、ピッチ設定レール13と基準レール12とは、互いに平行に対向させた配置されている。ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最大値となるように設定されている。予熱ゾーンAにおいて、ピッチ設定レール13は、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが最小となるように設定されている。
【0062】
よって、予熱ゾーンAにおいては、シート状部材Wに対して、横延伸も、縦延伸も行われず、予熱だけが行われる。
【0063】
予熱後、シート状部材Wは、続いて延伸ゾーンBに進入する。
【0064】
上記したように、延伸ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左右の無端ループ11R、11Lの相互間の距離が、徐々に拡大されている。延伸ゾーンBは、延伸開始端から延伸終了端に向かうに従って、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離が徐々に短くなるように構成されている。即ち、延伸ゾーンBは、延伸開始端から延伸終了端に向かうに従って、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが徐々に大きくなるように構成されている。
【0065】
かかる構成において、主リンク装置30の第1のスライダ41が第1のクリップ担持部材31の一端側(クリップ側)に移動する。よって、延伸ゾーンBでは、シート状部材Wに対して、横延伸と同時に縦延伸が行われる。このとき、従リンク装置60は、第6の軸部材72が、隣接する主リンク装置30同士の第1の軸部材42を結ぶ直線上の中間部に位置するように、伸長する。
【0066】
同時2軸延伸後、シート状部材Wは、続いて熱処理ゾーンCに進入する。
【0067】
上記したように、熱処理ゾーンCの全域に亘って、ピッチ設定レール13と基準レール12との離間距離は、最大値となるように設定されている。熱処理ゾーンCにおいて、ピッチ設定レール13は、第1のクリップ担持部材31同士のピッチが最大となるように設定されている。
【0068】
よって、熱処理ゾーンCにおいては、シート状部材Wに対して、横延伸も、縦延伸も行われず、熱処理だけが行われる。
【0069】
熱処理ゾーンCの終端の出口1bでは、左右の無端ループ11R、11Lのクリップ10によって、シート状部材Wに対する把持が解放(クリップ・オフ)される。この後、シート状部材Wは、直進する。また、主リンク装置30と従リンク装置60は、基準レール12に案内されてループ状に巡回移動する。
【0070】
「実施形態の効果」
駆動用スプロケット14、15が、クリップ10側の第1の軸部材42に設けられた駆動ローラ48と係合する。これにより、第1のクリップ担持部材31を巡回経路に沿って走行させる。この結果、
図5に示すように、クリップ10が延伸ゾーンBの接続部Bfを通過する際、2個の案内ローラ(第1の係合子)47と1個のピッチ設定ローラ(第2の係合子)49の3点で、主リンク装置30の姿勢を安定化させることができる。
【0071】
この場合、基準レール12とピッチ設定レール13との離間間隔を調整する。そうすると、隣接する第1の軸部材42同士の間隔を調整することができる。同時に、第1の軸部材42の走行軌跡と、係合子が設けられていない第6の軸部材72の走行軌跡と、の差Eを許容範囲に収めることができる。このとき、第1のクリップ担持部材31に設けられたクリップ10の走行軌跡と、第2の担持部材61に設けられたクリップ10の走行軌跡と、の差も許容範囲に収まる。
【0072】
なお、主リンク装置30の第1のリンク部材44に従リンク装置60の第3のリンク部材68を枢動連結する第4の軸部材69は、第1の軸部材42と第3の軸部材46との中間に設定されている。更に、主リンク装置30の第2のリンク部材45に従リンク装置60の第4のリンク部材70を枢動連結する第5の軸部材71も、第1の軸部材42と第3の軸部材46との中間に設定されている。
【0073】
ここで、基準レール12及びピッチ設定レール13に直交する方向において、基準レール12とピッチ設定レール13との間隔をLとする。そうすると、駆動用スプロケット14、15に係合する第1のリンク部材44の駆動ローラ48と、第4の軸部材69及び第5の軸部材71と、の間隔は、上記した直交する方向で見て、L/4となる。かかる間隔(L/4)は、第1のクリップ担持部材31を巡回経路に沿って走行させる力の作用点に近い位置関係となる。この結果、安定して従リンク装置60を伸長(伸縮、展開)させることができる。
【0074】
かくして、延伸ゾーンBの接続部Bfでのフィルムの延伸状態が異なるという従来の問題を抑えつつ、予め設定されたシート状部材Wの延伸のパターンに適合した同時2軸延伸を行うことができる。