(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
従来のA4WPに基づくワイヤレス充電システムは約6.78MHzで動作する。そのような充電システムの電力送信ユニット(PTU)は、通常、受信ユニット(PTU)に給電するために必要なカップリングと磁場の均一性とを提供するために、マルチターンの螺旋(multi-turn spirals)を必要とする。PTUコイル設計、特に、大きなアクティブ・エリアに関連する深刻な問題は、コイルにおいて築き上げられる大きなセルフ・キャパシタンス又は自己容量(self-capacitance)に起因して、コイルがかなり高い損失を招いてしまうことである。
【0007】
図1(A)は従来のマルチターン・ワイヤレス充電コイルを示す。
図1(B)は、
図1(A)の充電コイルに対する簡略化された等価回路図を示す。
図1(A)のコイル回路は、コイルを通じて電流が流れる場合に、セルフ・キャパシタンスCを蓄積する。
図1(B)では、セルフ・キャパシタンスは、コイルの多数のターンの間に存在するキャパシタンスの組み合わせを表し;Lはマルチターン・コイルの全インダクタンスを表し;Rはコイルの放射及びオーミック抵抗の組み合わせを表す。セルフ・キャパシタンスCが導入されると、
図1(B)に示される並列LC回路の等価的なレジスタンス及びリアクタンスは、それぞれ以下の数式(1)及び(2)により記述されることが可能である:
【0008】
【数1】
コイルのLCの組み合わせが、動作周波数ωより充分に低い共振周波数を有する場合、並列LC回路を説明する等価的なレジスタンス及びインダクタンスは、次のように簡略化されることが可能である:
【0009】
【数2】
数式(3)及び(4)に示されるように、小さな分路キャパシタンス(shunt capacitance)は、コイル・インダクタンス及びレジスタンスの双方に対する乗算器(multiplier)として作用する。小さな並列キャパシタを追加することは、二次的な電流経路が、インダクタLに流れる電流とは逆方向に流れることを許容する。従って、組み合わせ回路が、(多くの場合、A4WPワイヤレス充電システムのような)定電流源により駆動される場合、L及びRを流れる電流(I+ΔI)は、入力電流(I)より高くなり、そのような上昇は、等価的なレジスタンス及びインダクタンスの増加となる。この関係は
図1(C)で表現されている。電力の伝達に使用される意図される磁界(Hフィールド)に加えて、築き上げられるセルフ・キャパシタンスは、PTUコイル付近のエリアで強い電界(Eフィールド)(近接場)を導入する。PTUコイルにおける強い(望まれていない)Eフィールドは、PRUデバイスにつながり、(例えば、タッチ・センサ、タッチ・スクリーン等のような)センサの干渉を引き起こす。強いEフィールドは、ユーザがPRUデバイスに触れる際に、電気ショックを引き起こしかねない。PTUコイルにおける望まれないEフィールドは、かなりの放射も生成し、そのような放射は、PTUシステムの電磁適合性(electromagnetic compatibility:EMC)規制の認可を妨げる。増強されたEフィールドは、PTUコイルのチューニングを、外的なオブジェクトの近接に対して非常に敏感にし、これにより、PTUシステムを不安定にしてしまう。典型的な外的なオブジェクトは、テーブル表面や人体などのような誘電体材料を含む。従来のワイヤレス充電コイル設計は、築き上げられるセルフ・キャパシタンスによって制限されてしまう。築き上げられるセルフ・キャパシタンスは、配置の柔軟性や電力伝達距離を制限してしまう。
【0010】
開示される形態は、従来のPTUコイルに共通するセルフ・キャパシタンスの現象を軽減する方法及びシステムを提供する。一実施例では、1つ以上の容量チューニング・コンポーネントがマルチターン充電コイル設計とともに或る方策に従って配置され、多数のコイル・ターンのうちのセルフ・キャパシタンスの影響を減少させる。
【0011】
一形態では、容量チューニング・コンポーネントは各コイルターンを個別的に共振させ、隣接するコイル・ターンの間でAC電圧が蓄積してゆくことを回避する。容量チューニング・コンポーネントは、Eフィールド生成を最小化する一方、近接場のHフィールドを無傷に維持する。開示される形態は、EMI及びRF干渉(RF interference:RFI)放射を減らし、ユーザに対する電気ショックの危険を最小化し、PRTタッチ・センサーに対する干渉を軽減する。
【0012】
別の形態では、本開示は、コイルを最適化する低放射でロバスト性のあるコイル設計のためのプロセスを提供する。最適化は、コイル全体を通じた電流分布の平坦化を可能にし、それにより、Eフィール生成を最小化する。
【0013】
別の形態では、キャパシタが、螺旋コイル区間の中央に追加され、それにより、コイルの各ターンに1つ以上のキャパシタを追加する場合と比較して、Eフィールドを減少させる影響の最大化をもたらす。従って、螺旋コイルにおける唯一箇所が、1つのキャパシタを追加することで分断される。
【0014】
図2は、入力に1つのチューニング・キャパシタを有する従来のマルチターンPTUコイルを示す。
図2では、コイルの様々な場所の電圧が、V
1,V
2,V
3,V
4,V
5として示されている。
【0015】
寄生容量が、隣接するコイル・ワイヤのペア各々の間に形成され、それらは、破線によるキャパシタC
12,C
23,C
34,C
45により示されている。これらのキャパシタは、寄生容量であり、通常のコイル設計には本質的に存在する。一形態において、本開示は、寄生容量の影響を緩和するために、直列容量(及び容量性エレメント)を追加する。容量性エレメントは、コイルに沿って追加される。
【0016】
図3には
図2の等価回路モデルが示され、個々のターンのそれぞれはインダクタLn及びレジスタRnにより表現され、各ターンの等価回路は直列に接続され、コイル全体を表現する。連続するターンの間のキャパシタンス(Cmn)が、ターンの間の分路におけるモデルに追加される。コイル・ターンの間の相互インダクタンスは、
図3の等価回路ではMmnにより表現される。
【0017】
図3の等価回路モデルは、隣接していないターンの間のかなり小さな相互容量を省略することによって、簡略化されてもよい。全ての相互インダクタンス(Mmn)は、各ターンのインダクタンスLnにより充分に表現されることが、仮定されてもよい。
図3の完全な回路モデルは、
図4に示される近似的なモデル回路に簡略化されてよい。
【0018】
隣接するターン同士の間の寄生容量(C
n(n+1))は、各ターンのインダクタンス及びレジスタンスを拡大する。従って、結合されるレジスタンス及びインダクタンスは、各ターンのインダクタンス及びレジスタンスの単なる総和よりもかなり大きい。例えば、6.78MHzというA4WP動作周波数では、L
1=L
2=L
3=L
4=L
5=3uH,C
12=C
23=C
34=C
45=10pF,R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=0.1オーム(Ω)であることが仮定されている。
【0019】
図5(A)は
図4の回路の回路インピーダンスのシミュレーション結果を示す。ここでは、等価インダクタンス510及びレジスタンス512は何れも、寄生容量に起因して、各ターンの値の総和よりもかなり高い。
【0020】
図4の回路がAC定電流源(例えば、I
0=1A)により駆動される場合、各ターンのよりいっそう高い等価レジスタンス及びインダクタンスは、コイルの隣接するターンの同じ場所の間で高い電位差を生成する(そのような電位差は、
図3においてV
1-V
5により示されている)。各ターンのシミュレーション電圧は、
図5(B)に示されるように、その従来の螺旋コイルのターンにかかる電圧の大きさが徐々に蓄積される様子を示し、ここで、隣接するターン同士の間の電位差は、約160Vの差を示す。ターン同士の間の寄生容量(例えば、C
12-C
45)に高い交流電圧が印加されることは、かなりの近接場電界を引き起こし、その高電界は、デバイスの充電不足及び/又は外的な対象物によるデチューニングに対して、コイルを過敏にする。これは、遠視野放射(far field radiation)にも大きく影響し、PRUデバイスにおける電気ショックを引き起こす、或いは、タッチ・センサその他の類似するデバイスに対する干渉を引き起こす。
図5(A)及び5(B)においては、ライン520(V
1),522(V
2),524(V
3),526(V
4)及び528(V
5)の各々は、コイルの対応する地点の電圧及び周波数の間の関係を示す。
【0021】
本開示の一形態では、マルチターン・コイルに沿って戦略的に設計された場所に容量チューニング・コンポーネントを配置することにより、高損失性の大きな電界はかなり軽減される。容量チューニング・コンポーネント(「エレメント」と言い換えられてもよい)は、コイルの多数のターンの中でのセルフ・キャパシタンスの影響を減らす。本開示の一形態では、各コイル・ターンは個別的に共振し、それにより、隣接するコイル・ターンの間での電圧の蓄積を防止する。これは、電界の生成を最小化しつつ、近接場Hフィールドを無傷に維持する。開示される形態は、RFI放出も減らす。
【0022】
図6は、本開示の一形態によるコイル設計例を概略的に示す。具体的には、
図6は、各ターンに沿って追加される容量チューニング・エレメントを有する新規なコイル設計を示す。一形態では、(複数の)チューニング・エレメントは、図示されるようにコイルの横断線に沿って分散される。チューニング・エレメントは、コイルの様々な場所にわたって分散されてもよい(図示せず)。
図6において、容量エレメント602,604,606,608及び610は、隣接するコイル・ターンの各ペアの間に位置する。直列に追加されるキャパシタ(C
s1-C
s5)の値を注意深く選択することにより、隣接するターンの間の電位差(例えば、V
1-V
2)は最小化される。その結果、隣接するターンの間に寄生キャパシタンス(C
12,C
23,...C
45)が残っていたとしても、寄生容量には何らの電圧も印加されないので、寄生容量には何らの電流も流れない。従って、コイルは、インダクタンス及びレジスタンスを最小化する。
【0023】
図7は、
図6の回路に対する等価回路モデルの概略表現である。
図7では、追加されるインライン・キャパシタ(602,604,606,608及び610)は、各ターンを表現するインダクタンス(L
1-L
5)及びレジスタンス(R
1-R
5)に直列に追加されるチューニング・キャパシタンス(C
s1-C
s5)としてモデル化される。一般的なコイル寸法に関し、直列チューニング容量(C
sn)は、以下において詳細に説明されるように、EMシミュレーションにより最適化される。簡明化のため、各ターンで同じインダクタンス、レジスタンス及びキャパシタンスを仮定し(L
1=L
2=L
3=L
4=L
5=3uH;C
12=C
23=C
34=C
45=10pF;R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=0.1オーム)、各ターンでコイルを共振させるために必要な直列キャパシタンスは同一であるとする(C
s1=C
s2=C
s3=C
s4=C
s5=〜180pF)。
図7では、C
s1-C
s5は、インライン又は直列的な容量エレメントを表現し、かつ、各キャパシタで実質的に等しい電圧を有する。
【0024】
一形態では、追加される直列的なキャパシタンスは、各ターンにおける等価的なインダクタンスをキャンセルし(調整して排除し)、それにより、各ターンに沿った対応する位置の間(
図6に示されるようなV
1,V
2,...,V
5)で、リアクタンスがゼロになるようにする。これは、コイルがAC定電流源により駆動される場合に、各ターンに沿う実質的に同じ場所同士の間で最小電圧をもたらす。この条件は、寄生容量を介して流れる電流(ΔI6-ΔI9)が実質的にゼロになるように強制し、各コイル・ターンは、電流源710により駆動されるように、実質的に同じ定電流(I
0)を有する。コイル間のゼロ電圧条件は、近接場電界が最小化されることを保証する。等価的な全体のコイル・インダクタンス及びレジスタンスは、各ターンによるものの合計となり(この例では、15uH及び0.5オーム)、従来のコイル構成よりも相当少ない(結果は
図5Aに示される)。
【0025】
図8(A)は、
図7の等価回路のノードV
1〜V
5に分散する電圧のシミュレーション結果を示す。6.78MHzという設計周波数で適切に選択された直列チューニング容量(
図7)により、各コイル・ターンの実質的に同様な場所でのAC電圧は、ほぼゼロである。このゼロ電圧は、近接場の中でコイルに最小のEフィールドしか生成しない。
図8(B)は、従来のコイル構成(
図2)と、インライン・キャパシタンスを有する提案されるソリューション(
図6)とを、コイル電流による比較例を示す。
図8(B)において、ライン822は約1Ampの回路バイアスであり;ライン824は
図6の新規回路に関する電流変化を周波数の関数として示し、ライン826は同様な条件で従来のコイルに対するものを示し、ライン828はライン824と826との間の差分を示す。ライン828は、従来のコイル設計において流れる余分な電流を示し、この余分な電流が、より大きな損失及びより低い電力伝達効率を招く結果となる。
【0026】
図8(B)に見受けられるように、開示される形態は、適切なチューニング・キャパシタ(Cs)を選択することにより、コイルの各ターンを通じて実質的に同じ電流を維持することが可能である(I
6〜I
10=I
0)。これは、従来のコイル設計を上回る著しい改善であり、従来は、寄生容量による蓄積に起因して各コイル・ターンで大きな電流を被る(I
1〜I
5〜ΔI
1〜ΔI
5=I
0)。
【0027】
上記の例では、各ターンの等価インダクタンス、レジスタンス及び相互キャパシタンス/インダクタンスは、簡明化のため、等しいものであるように仮定されている。実際には、任意形状のコイルとともに、これらの値はEMシミュレーションにより算出されることが可能である。
【0028】
開示される形態が従来設計を上回る有効性を有することを明らかにするために、比較用の試作品が準備された。
図9(A)は従来のコイルを示し、
図9(B)は、本開示の一形態による各コイル・ターンにキャパシタが追加される低Eフィールド設計例を示す。
図9(A)及び9(B)のコイルは、同じ寸法を有しており、製造された一方は、コイルの入力に1つのチューニング・キャパシタが備わったものである一方(
図9(A))、製造された他方はコイルの各ターンに追加されるチューニング・キャパシタを含んでいる(
図9(B))。
図9(A)及び
図9(B)のコイル設計は、コイル表面から12mmの場所で均一なHフィールド分布となるように最適化されている。その最適化は、コイルの各ターン半径の不均等な配分をもたらす。低Eフィールド・コイルは、EMシミュレーションに基づくプロシジャを合成し、最適化は、各ターンに沿って追加されるべき容量値を決定するために使用される。
【0029】
近接場測定−
図9(A)及び9(B)に示されるコイルは、6.78MHzという同じRF定電流源に接続された状態で検査された。近接場Eフィールド及びHフィールドは何れも、10-20mmの分離範囲内で検査プローブを利用して測定された。その結果は
図10(A)及び
図10(B)に示されている。具体的には、
図10(A)は、従来のコイルの測定された近接場Eフィールド(ライン1010)と、開示される設計例によるもの(ライン1012)との比較例を示す。
図10(B)は、従来のコイルの測定されたHフィールド(ラインn1016)と、開示される設計例によるもの(ライン1014)との比較例を示す。
【0030】
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、測定結果は、同じ近接場Hフィールドを提供する一方、
図9(B)の提案される低電界放出ロバスト・コイルは、近接Eフィールドに関して10倍の低減効果を提供する。これは、コイルのロバスト性に関して著しい改善であり、そのため、人体又は充電されるデバイスを含む近辺のオブジェクトによって、容易には影響されない(すなわち、デチューニングされる)。
【0031】
改善されたコイルのロバスト性を明らかにするために、一連の実験が実行され、コイル近辺の様々な場所に手を置くことによって、コイルに近接した人体が模擬された。測定された実際のレジスタンス及びリアクタンスのシフトは、
図11(A)及び
図11(B)に示されるように記録された。
図11(A)は、損失性の誘電体対象物が接近する場合における、従来コイル及び開示されるコイル設計の間の測定レジスタンス・シフトの比較例を示す。
図11(B)は、損失性の誘電体対象物が接近する場合における、従来コイル及び開示されるコイル設計の間の測定リアクタンス・シフトの比較例を示す。
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、人間の手が接近したことに応じて、従来のコイルは、レジスタンス(ライン1112)及びリアクタンス(ライン1122)に関して(100x+)を越える著しい変動を示す。これは、強い近接場Eフィールドの存在に起因する。Eフィールドは、高誘電定数材料(例えば、人間の手)が近辺にある場合に、乱されやすい。手が10mm未満の近くにある場合に、コイル・インピーダンスの著しい変動は、コイルを不安定化してしまう。
【0032】
これに対して、提案されるコイル構造(
図11(B))は、コイル・インピーダンスに関してほとんど変化を示さず(ライン1114,1124)、その不変性は、開示される実施形態を、高誘電定数を有する外的対象物に対して、実質的に影響を受けないようにする。これは、
図9(B)の実施形態によりもたらされる低い近接磁場に起因する。
【0033】
EMI評価結果−
図9(A)及び9(B)に示される2つのコイル試作品に同じスイッチ・モード電力増幅器が接続される場合に、広範囲に及ぶEMI検査が実行された。電力増幅回路は、豊富な高調波及びブロードバンド・ノイズ成分を有し、かつ、実質的に定電流源として動作する。
図12(A)-12(D)は、2つのコイル設計例についての測定された放出の比較例を示す。
【0034】
具体的には、
図12(a)-12(d)は、従来のコイル(
図12(A))水平,(
図12(B))垂直を有する送信回路、及び、提案されるコイル手段(
図12(C))水平,(
図12(D))垂直を有する送信回路についての測定されたEMIプロファイルを示す。従来のコイル設計の放出プロファイル(
図12(A)及び12(B)のグラフ)は、本願で開示される低放出コイル構造設計(すなわち、
図12(C)及び
図12(D)のグラフ)の場合と比較した場合に、著しく高い(10+dB)ノイズ(ノイズ・フロア及び6.78の高調波の双方)を示す。
【0035】
所定の形態において、本開示は、ワイヤレス充電コイルの容量成分の最適な設計配置を決定する方法及び装置を提供する。(
図13(A)に示されるような)x-y平面内にあるコイル例に関し、Hフィールドについては、z方向が支配的である。X及びYの寸法はメートル単位である。φ方向のEフィールド(成分)は小さく、その理由は、φ方向はコイル・ワイヤに対して実質的に接線方向だからである。大きなEフィールドは、z及びρ方向に存在し得ることが分かる。上述したように、大きなEフィールドは、大きな放射を引き起こし、コイルのロバスト性を劣化させてしまう。大きなEフィールドは、充電時のデバイス(the device under charge:DUC)に関して電気ショックを引き起こし、及び、DUCのタッチ・センサに対する干渉を引き起こすおそれもある。
【0036】
蓄積された寄生容量が全く又は少ししかないコイルは、小さな電流変動しか有しない。これは、Eフィールド振幅を限定し、コイルを更にロバスト的にする。開示される一形態では、ロバスト性という用語は、周辺状態によって実質的に影響を受けないままでいられる能力を指すように使用されている。周辺状態は、例えば、物理的な対象物(例えば、人間の手)の影響を含んでもよい。1つ以上のコイル・ターンのチューニングは、コイル内に築き上げられるリアクタンス(インダクタンス)を排除する。そのチューニングは、コイルの区間にわたる電界だけでなく、不要な放射も著しく減らす。
【0037】
図13(A)は、
図9(A)と同様に均一なHフィールドを提供するように設計される従来のコイル構成を示す。コイルは、モーメント法(MoM)ツールを利用して、そのターンによる電流分布を見出し、Eフィールドを推定するようにシミュレーションされる。約1アンペアのAC定電流がコイルに提供される。
図13(B)は、X=0,z=6mmの断面における電界を示し、ρ及びz方向の電界は何れの非常に強い。言い換えれば、
図13(B)は、
図13(A)のコイル断面におけるEフィールドの3成分を示す。
【0038】
三次元EフィールドのEzフィールドが、
図13(C)において、約9000V/mという最大値とともに示されている。電流分布は
図13(D)にプロットされており、シミュレーションされる構造に関し、電流変動は約8%である。従って、
図13(D)は、
図13(A)の側面図における電流分布を示し、
図13(A)のコイル表面における(様々な高さにより表現される)電流変動を示す。
【0039】
図13(A)-13(D)の測定は、本願で開示される原理に応じて設計されるコイルについても行われた。
図14(A)に示されるように、改善されるコイルは、各ターンに関し、
図13(A)に示される設計例と実質的に同じ寸法を有する。(
図14(A)の表に示される)様々な容量値を有するキャパシタが、各コイル・ターンに沿って直列に追加された。キャパシタの値は、一般的なアルゴリズムに基づく最適化を利用して導出された。
図14(D)は、(
図6及び
図9(B)に示されるように)各ターンでキャパシタを追加した後のEフィールドを示す。ρ及びz方向のEフィールドの値は、上述した従来構成についての値の1/12に削減された。その場合、全コイルにわたる電流変動は、
図14(B)に示されるように僅か0.3%に過ぎなかった。
図14(C)は、提案されるコイル構造に対する3DのEzフィールドのシミュレーション結果を示し、Eフィールドは、(最適されたインライン・キャパシタを有しない)従来のコイルと比較して、かなり低い。大きなフィールドが、コイルに対する給電点付近で観測されており、給電点付近はターン同士の間の移行接続部であり、インライン・キャパシタが設けられる場所である。
【0040】
最適化プロセスの一例として、Hフィールドz成分均一性に関して最適化されるコイルが、この例では選択されている(各コイル・ループに均一で同じ電流を仮定する)。キャパシタの位置は、コイルについての或る半径カットに沿って選択された(
図9(B)に示される)。キャパシタの最適値は、最適化プロセスにより導出された。最適値は、Eフィールドを減らし、コイルに沿って実質的に均一な電流を提供するように設定された。
【0041】
一実施例では、最適化プロセスは、Eフィールド成分(E
z及びE
ρ)に基づくものであり、そのゴールは、これらの成分の組み合わせの平均値を最小化することである。モーメント法(MoM)のコードは、コイル・ワイヤの電流を予測し、近接電界の3成分(E
z,E
ρ及びE
φ)を算出するために使用された。MoMは、電磁場問題を解くために使用され、その場合において、ワイヤの未知電流は、未知係数/振幅とともにN個の既知関数(基底関数)により表現される。この問題は、N個の線形連立方程式を規定する境界条件に関してテストされる。方程式は、基底関数の係数を発見するように機械的に解かれる。方程式系は次式(5)により記述される:
L(f)=g (5)
方程式(5)において、Lは線形システムであり(この例では、積分演算子)/未知電流の関数であり、gは励振源である。
【0042】
最適化に関し、ワイヤが薄いという近似が使用され、その場合、電流はワイヤの中心にあるフィラメントでありIバー(r
、)、r
、は電流を担うワイヤに沿う位置ベクトルであり、電流はワイヤに対して接線方向に向いたベクトルである。線形オペレータは積分方程式である:
【0043】
【数3】
数式(6)の左側は線形演算子であり、右側は励振源である。Gはグリーン関数(e
-jkr)/(2πr)であり、▽は勾配演算子(又は偏微分演算子)である。電流は、N個の重み付けされた基底関数f
nを利用して近似され、それらはワイヤの至る場所で接線方向にある。電流に適用される線形演算子は、基底関数の総和に適用することと等価である。
【0044】
【数4】
積分方程式は、N個のテスト関数f
m(r)により評価され、テスト関数は基底関数と同一であるとした。積分方程式は境界条件において評価される(すなわち、ワイヤ表面では、ソースを除いて接線方向の場がゼロになる)。
【0045】
【数5】
この演算は、N×N線形連立方程式Z
mna
n=b
mを形成し、この方程式は、a
n及び電流を発見するために解かれる。磁気ベクトル・ポテンシャルAにより、電磁場が見出される。
【0046】
【数6】
最適化プロセスは、キャパシタの初期値(すなわち、初期集団(initial population))とともにスタートする。MoMは、最適化時間を促進するために、z
0=6mm,x
0=0という1カットの観察ポイントにおける電場成分を算出するために使用される。最適化アルゴリズムが最小化を試みるコスト関数は、E
ρ及びE
z値の平均値である。最適化を制御するために一般的なアルゴリズムが使用される:アルゴリズムは、キャパシタの値を偏向し、対応するコスト関数を保存する。一形態では、最適化は、コスト関数値が改善を示さなくなった場合に停止する。
【0047】
一実施例では、コイルは6つのキャパシタを有し、各ループにつき1つのキャパシタが備わっている。キャパシタ値C={c
1,c
2,...,c
6}は、最適化の変数である。最適化問題は、次のように規定されてもよい:
【0048】
【数7】
上記の方程式において、x
0,y
0,z
0は、電場が最小化される場所の観測点である。
【0049】
図15は、本開示の一形態による最適化アルゴリズムを示す例示的なフローチャートないしアルゴリズムを示す。アルゴリズムは、任意の初期集団を選択するステップ1510から始まる。一形態では、キャパシタの初期値は、螺旋コイル全体の一連のチューニング・キャパシタに、追加される予定のインライン・キャパシタの数を乗算したものに等しいものであるように選択されることが可能である。
【0050】
ステップ1520では、MoMによりコイル構造を求め、観測地点に沿ってEフィールドの大きさを加算することにより、選択された集団のコスト関数を算出する。
【0051】
アルゴリズムは、ステップ1530において、コスト関数を追跡しながら、最適化変数(すなわち、キャパシタ値)を変化させ続ける。最小コスト関数をもたらすキャパシタ値を発見することにより最適化が終点にたどり着くまで、本プロセスは継続される。これらのステップは、ステップ1530及び1550に示されている。ステップ1540における終点は、コスト関数の低減がもはや有意ではない場合に到達する。
【0052】
以下は、本開示の例示であって非限定的な形態を示している。具体例1は、送信機充電ステーションに関連し、送信機充電ステーションは:1つ以上の軸の周りに1つ以上のターンを有するマルチターン螺旋コイルを形成する或る長さの導電性ワイヤと、個々の複数のターンに対する個別的な複数のキャパシタとを有し、複数のキャパシタのうち少なくとも2つのキャパシタは、実質的に同じ共振周波数を有するように構成される。
【0053】
具体例2は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタのうちマルチターン螺旋コイルの第1部分に沿う第1のキャパシタは、複数のキャパシタのうちマルチターン螺旋コイルの第2部分に沿う第2のキャパシタと実質的に同じ共振周波数を有するように構成される。コイルの第1又は第2部分は、マルチターン螺旋コイルのコイルによるターンを規定し、或いは、それは或る長さの導電性ワイヤの第1及び第2部分を規定する。
【0054】
具体例3は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタのうち少なくとも2つのキャパシタは、マルチターン螺旋コイルの断面に沿って直線状に並んでいる。
【0055】
具体例4は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタのうち少なくとも1つのキャパシタは、残りのキャパシタと異なるキャパシタンス値を有する。
【0056】
具体例5は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタの各々は、実質的に同じキャパシタンス値を有する。
【0057】
具体例6は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタに対するキャパシタンス値は、マルチターン螺旋コイルの表面上の近接場電界を最小化するように選択される。
【0058】
具体例7は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタは直列に接続されている。
【0059】
具体例8は具体例1の送信機充電ステーションに関連し、複数のキャパシタのうちマルチターン螺旋コイルのそれぞれの部分に沿う少なくとも2つのキャパシタは、実質的に同じ共振周波数を有するように構成される。
【0060】
具体例9は、充電ステーションの近接場電界放出を低減させる方法に関連し、本方法は、1つ以上の軸の周りにm回のターンを有するマルチターン螺旋コイルを形成する或る長さの導電性ワイヤを提供するステップと、個々の複数のターンについてn個の個別的なキャパシタを配置するステップと、マルチターン螺旋コイルのターン数(m)及び複数のキャパシタに関連するコスト関数に応じてn個の個別的なキャパシタ各々に対するキャパシタンス値を選択するステップとを有する。
【0061】
具体例10は具体例9の方法に関連し、m及びnは整数であり、mは、nに等しい、nより大きい又はnより小さい。
【0062】
具体例11は具体例9の方法に関連し、充電ステーション上の観測地点における、複数のキャパシタのうち少なくとも何れかのキャパシタについてのコスト関数を決定するステップを有する。
【0063】
具体例12は具体例9の方法に関連し、本方法は、個別的なキャパシタのうち導電性ワイヤの第1部分に沿う第1のキャパシタを選択するステップを有し、第1のキャパシタは、個別的なキャパシタのうち導電性ワイヤの第2部分に沿う第2のキャパシタと実質的に同一の共振周波数を有するように構成される。
【0064】
具体例13は具体例9の方法に関連し、複数のキャパシタのうち少なくとも何れかは、他のものと異なるキャパシタンス値を有する。
【0065】
具体例14は具体例9の方法に関連し、複数のキャパシタは、実質的に同じキャパシタンス値を有する。
【0066】
具体例15は具体例9の方法に関連し、マルチターン螺旋コイルの断面に沿って複数のキャパシタのうち少なくとも2つを整列させるステップを有する。
【0067】
具体例16は具体例9の方法に関連し、複数のキャパシタに対する合計キャパシタンス値は、マルチターン螺旋コイルの表面上の近接場電界を最小化するように選択される。
【0068】
具体例17は、ワイヤレス充電ステーションに関連し、ワイヤレス充電ステーションは、1つ以上の軸の周りに複数のターンを有するマルチターン螺旋コイルを形成する或る長さの導電性ワイヤと、複数のターンの各々に対応して、或る長さの導電性ワイヤに沿って、マルチターン螺旋コイルに共振するように配置される複数のチューニング・エレメントとを有する。
【0069】
具体例18は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、或る長さの導電性ワイヤに電流を伝達する第1電極及び第2電極を有する。
【0070】
具体例19は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、チューニング・エレメントのうち少なくとも何れかは、容量性エレメントを含む。
【0071】
具体例20は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、各々のチューニング・エレメントは容量性エレメントを規定し、各チューニング・エレメントは各コイル・ターンを個別的に共振させる。
【0072】
具体例21は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、複数のチューニング・エレメントのうちマルチターン螺旋コイルの第1部分に沿う第1のチューニング・エレメントは、複数のチューニング・エレメントのうちマルチターン螺旋コイルの第2部分に沿う第2のチューニング・エレメントと実質的に同じ共振周波数を有するように構成される。
【0073】
具体例22は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、複数のチューニング・エレメントのうち少なくとも2つのチューニング・エレメントは、直列に接続され、マルチターン螺旋コイルの断面に沿って線状に並んでいる。
【0074】
具体例23は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、少なくとも1つのチューニング・エレメントは、他のチューニング・エレメントと異なるキャパシタンス値を有する。
【0075】
具体例24は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、複数のチューニング・エレメントの各々は、実質的に同じキャパシタンス値を有する。
【0076】
具体例25は具体例17のワイヤレス充電ステーションに関連し、複数のチューニング・エレメントに対するキャパシタンス値は、ワイヤレス充電ステーションの表面上の近接場電磁界を最小化するように選択される。
【0077】
以上、本開示の原理が本願に示される実施例に関連して説明されてきたが、本開示の原理は、記述されているものに限定されず、それらについての何らかの修正、変形又は置換を包含する。