【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、
閉じた第1の端部と、対向する第2の端部とを有する管状体を備えるレシーバであって、該管状体が可変形壁を有する、レシーバと、
管状体内に入れられた接着剤組成物と、
管状体上に実装され、かつ上記接着剤を塗布するための塗布器具の外側の塗布器具表面を有する発泡材料を備える塗布器具先端部と、
を備える接着剤塗布器具であって、該塗布器具が、管状体の変形により、塗布器具先端部を通じて上記接着剤を圧出させるようなものであり、発泡材料が網状フォームフェルトである、接着剤塗布器具が提供される。
【0011】
このため、本発明の塗布器具は、接着剤を基体に塗布する手段である網状フォームフェルトを備える塗布器具先端部を有する。本発明者らは、網状フォームフェルトの使用により、接着剤のかなり広範な粘度条件、及びアンプルを破損させるとともにフォームフェルトを通じて接着剤を圧出させるような塗布器具の可変形体に印加される圧力にわたって、フォームフェルトを通じてそれらの塗布器具表面への接着剤の比較的一定のフローが可能となることを見出した。このため、塗布の一貫性が確かなものとなる。
【0012】
レシーバは合成プラスチック材料のものであることが好ましい。
【0013】
接着剤は好ましくは、このような塗布器具に従来使用されているように、重合性シアノアクリレート部分を含む。接着剤がオクチルシアノアクリレート(例えば1−メチルヘプチルシアノアクリレート(CAS 133978−15−1))を含む場合、塗布器具は特定の用途を有するが、用途はそれらだけに限らない。
【0014】
本発明の塗布器具は、例えば本明細書の始めのパラグラフで概説したように、接着剤組成物を創傷部及び皮膚部に塗布するための医薬用途において特定の有用性を有する。
【0015】
本発明は、翼部を押し合うことにより管状体を変形させて、接着剤を放出及び圧出させる塗布器具に対する特定の用途を有する。
【0016】
塗布器具は、管状体の第2の端部が開いており、かつ接着剤が脆弱な材料でできている密閉アンプル内に入れられているため、壁の変形によりアンプルが破損して、アンプル内に入っている接着剤組成物が放出し、接着剤組成物が塗布器具先端部を通じて圧出するものとすることができる。このため例えば、塗布器具は、特許文献1に開示されているような同様の汎用タイプのものであってもよい。
【0017】
代替的に、塗布器具は、管状体の第2の端部にプラグを配して接着剤組成物を内部に保有し、また、管状体の変形時にプラグを塗布器具先端方向に移動可能なものとして、接着剤を管状体から放出させて塗布器具先端部を通じて圧出させるタイプのものであってもよい。このため例えば、塗布器具は、特許文献2に開示されているような汎用タイプのものであってもよい。
【0018】
代替的に、塗布器具は、国際公開第2006/131747号に開示されているようなタイプのものであってもよい。
【0019】
本発明の塗布器具は、接着剤の塗布に有用な特性を有する特有形態の発泡材料、すなわち網状フォームフェルトを利用する。網状フォームフェルトは、アンプルから放出される接着剤を吸収するとともに透過させるものであり、接着剤を基体表面上に直接施すものである。
【0020】
網状フォームフェルトは、大きな空隙容積、均一な多孔度、大きな通気性及び均一なテクスチャを有する。また、網状フォームフェルトは強い「吸上」特性を有し、発泡体がその発泡構造内に液体を吸い込むことができることにより、網状フォームフェルトを液体用貯蔵槽として利用することができる。それは、網状フォームフェルトを、本発明の塗布器具における使用に申し分のないものとする特性である。本明細書に使用されるフォームフェルトは、破損したアンプルから放出される液体を、接着剤の貯蔵槽としてのその3D発泡構造内に逃すことができる。さらに、その均一な表面テクスチャは、網状フォームフェルトが、内部に貯蔵される液体接着剤を基体表面上に施す一貫性のある塗布器具として機能し得ることを意味する。
【0021】
網状フォームは、発泡体内に独立気泡又は気泡間に膜が(あったとしても)ごく僅かしか存在しないような骨格構造を有する一種の連続気泡発泡体であると当該技術分野では理解されている。このため、網状フォームの構造は(その名前が示すように)、骨格構造を形成する接点で交わる「フィラメント」の3D網状網目構造である。
【0022】
網状フォームフェルトは、網状フォームを永続的に圧縮することによって作製されるため、その3D骨格構造が連続気泡のより密集した網目構造を形成する。通例、熱を用いることで、構造体を「硬化させる」ことにより、圧縮が解かれた後もその形状を維持することができる。このように圧縮は、発泡材料の密度を増大させること、孔径を小さくすること、また発泡体の硬さ(firmness)を増大させることによって発泡材料に上述の特性を付すこととなる。
【0023】
網状フォームフェルト材料は好ましくは、ポリウレタン、例えばポリエーテルポリウレタン又はポリエステルポリウレタンから構成される。ポリウレタンフォームは、良好な生体適合性を有するため、医薬用途に特に有用となる。
【0024】
フォームフェルト材料は好ましくは、少なくとも約2、好ましくは約5以下の硬度(firmness grade)(「圧縮比」としても知られる)を有する。圧縮比は、約2〜約4、好ましくは約3とすることができる。硬度/圧縮比は、圧縮前の発泡材料の厚みを、圧縮後の材料の厚みで除算することによって算出される。好ましくは、本発明の塗布器具に使用される網状フォームフェルトは、80ppi〜100ppi(1リニアインチ当たりの発泡個数(pores per linear inch))、より好ましくは85ppi〜95ppi、例えば約90ppiを有する網状フォームの圧縮によって作製される。本発明の使用に好適なフォームフェルト材料はFoamex(商標)により得られ、また商品名「SIF Felt」としても販売されている。
【0025】
本発明の塗布器具の塗布器具先端部に使用される網状フォームフェルトは、1mm〜10mm、例えば約3mmの厚みを有することが好ましい。
【0026】
網状フォームフェルトは、接着剤を基体(例えば皮膚又は他の組織)に塗布するのに適した任意の形状を有することが認識されよう。しかしながら、塗布器具先端部は、2つの平らな塗布器具表面を互いに鋭角に設けるように構成される単一のフォームフェルト片を備えることが好ましい。この形状により、配向に応じて繊細な及び広範囲の塗布が可能となる。
【0027】
少なくとも、塗布器具が接着剤組成物を含有する脆弱なアンプルを備える場合には、塗布器具が、アンプルと網状フォームフェルトとの間に、アンプルが破損した際の破片がフォームフェルト材料と接触することを阻止するための破片障壁(shard barrier)を更に備えることが好ましい。破片障壁は網形態であることが好ましい。網における開口は、0.5mmより大きな寸法を有する破片を通過させないような寸法を有することが好ましい。網の開口は正方形である場合、網の各開口は、0.35mmの辺長を有し得る。しかしながら、他の構成、例えば直径が0.5mm以下、より好ましくは0.35mm以下の丸穴も可能であることが認識されよう。このような開口は、網状フォームフェルトを通過して損傷を引き起こすのに十分大きいと思われる破片の通過を阻害することができる。
【0028】
塗布器具先端部が、管状体の開放端上に実装され、管状体から離れておりかつ該管状体の長軸に対して傾斜した透かしが施された端面を有する中空芯(former)を備えることが好ましい。このような実施形態において、透かしが施された端面が網として構成され、上記網状フォームフェルトが芯の端面上に支持される。
【0029】
好ましい実施形態において、芯が、互いに対向するとともに管状体から種々の長さで延在する第1及び第2の平らな側面を有する。このような実施形態において、芯は互いに対向する第3及び第4の平らな側面を更に備え、上記フォームフェルト材料が、上記端面上の第1及び第2の側面上に少なくとも部分的に位置する。
【0030】
第1、第2、第3及び第4の平らな側面が接着剤に対して不透過性であることが好ましい。
【0031】
網状フォームフェルトは、芯の基部の周りに位置づけられた環(collar)によって、適所に保持することができる。環は、2つの対向する突起部を有し、該突起部がそれぞれ、芯の基部の第3及び第4の平らな側面の各々の上に位置づけられるように構成され、第3及び第4の平らな側面及び上記突起部が、環を適所に配するような連携する構造部(formations)を有する。
【0032】
しかしながら、発泡体を適所に固定する他の方法、例えば音波溶接、熱溶接、接着剤等も採用し得ることが認識されよう。
【0033】
第3及び第4の側面それぞれに、管状体の軸の横方向に延在する稜線部により形成される隆起した構造部を設けることができ、上記突起部はそれぞれ、その内面に該隆起した構造部と相補的な凹み伴って形成し、また上記稜線部と相補的な溝を伴って形成することができる。
【0034】
塗布器具は、管状体に対して180度反対に位置する一対の翼部を更に備えていてもよく、各翼部の一端はレシーバに固定され、もう一方の端部は管状壁から外に広がっているものの、管状体の壁を変形させるように(例えば、管状体内にあるアンプルを破損させるか、又は接着剤組成物を管状体内に保留するプラグを移動させるように)使用者が該一対の広がった端部に、向かい合う圧力を指で加えると、管状壁方向に動かすことができる。翼部はそれぞれ、管状壁に対して向き合うとともにその上に担持される加圧尖頭部(pressure barb:加圧バーブ)を有し、これらの翼部を動かすことで、加圧尖頭部を通じて破損させる力が管状壁に印加され得る。
【0035】
加圧尖頭部の距離は、密閉アンプルの端部から2mm以上8mm以下とすることができる。
【0036】
翼部のそれぞれが、管状壁に対して向き合う圧力パッドを付加的に備え、該圧力パッドを通じて圧迫力が管状壁に印加されることで、管状体から接着剤が圧出し得る。
【0037】
接着剤組成物の単量体形が、下記式I:
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル、2−エトキシエチル、3−メトキシブチル)、及び式II:
【化2】
(式中、各R’は独立して水素及びメチルから選択され、R’’は、炭素数1〜6のアルキル;炭素数2〜6のアルケニル;炭素数2〜6のアルキニル;炭素数3〜8のシクロアルキル;ベンジル、メチルベンジル及びフェニルエチルから選択されるアラルキル;フェニル;並びに、ヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ニトロ、炭素数1〜4のアルキル、及び炭素数1〜4のアルコキシから選択される1つ〜3つの置換基で置換されたフェニルから選択される)により表される重合性シアノアクリレートエステル接着剤を含むことができる。
【0038】
「重合性シアノアクリレートエステル」という用語は、シアノアクリレートモノマーを含む重合性製剤、又は単量体形が好ましくは、上記の式Iにより表される化合物である重合性オリゴマーを指すことを理解すべきである。
【0039】
このようなシアノアクリレート組成物のin situ重合が、切り口又は創傷を閉じ、また封止するように働く粘着性の高分子フィルムをもたらす。
【0040】
高分子フィルムは塗布後2日〜4日で皮膚表面から自然に落ちるため、手術後に接着剤を除去する必要がないので、手術用の縫合糸又はステープルの除去に関連付けられるような皮膚外傷が回避される。
【0041】
本明細書に記載される重合性シアノアクリレートエステルは、水蒸気又は組織タンパク質の存在下で急速に重合し、n−ブチル−シアノアクリレートが、組織毒性又は細胞毒性を生じることなく哺乳動物の皮膚組織と結合する。皮膚表面を、重合を進行させるのに好適な条件に維持しておけば、重合は皮膚周囲温度で起こる。概して、重合に必要とされる時間の長さは、塗布する接着剤組成物の量、皮膚の温度、皮膚の含水率、接着剤を塗布した皮膚の表面積等の因子に応じて変動すると考えられる。しかしながら、皮膚を周囲条件に維持しておけば、重合は通例、約10秒〜約60秒以内に完了する。
【0042】
重合性シアノアクリレートエステルは当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第3,527,224号、同第3,591,676号、同第3,667,472号、同第3,995,641号、同第4,035,334号、及び同第4,650,826号(その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。
【0043】
シアノアクリレートエステルは1−メチルヘプチルシアノアクリレートであることが好ましい。
【0044】
実施の形態において、塗布器具によって据えられる液体シアノアクリレートの封止補強層は、約1ミリメートル以下の厚みを有し、約1ミリメートル以下の厚みを有する重合シアノアクリレート組成物層を得る。ポリマー層及び液体層は、約2μm〜約500μm、例えば約20μm〜約100μmの均一な厚みを有していてもよい。
【0045】
接着剤組成物は硬化促進剤を含んでいてもよく、この例は、米国特許第8729121号、同第6475331号、国際公開第2003/000815号、米国特許第6835789号、及び同第4906317号に開示されている。
【0046】
接着剤組成物はレオロジー改質剤、例えばポリメチルメタクリレートを含んでいてもよい。
【0047】
接着剤組成物は、酸性安定化剤(例えば二酸化硫黄)及び/又はフリーラジカル安定化剤(例えばブチル化ヒドロキシアニソール)を含んでいてもよい。
【0048】
任意に、本発明の塗布器具により塗布されるシアノアクリレート組成物は、「生体適合性可塑剤」を含んでいてもよい。本明細書に使用される場合、「生体適合性可塑剤」という用語は、シアノアクリレート組成物に可溶性又は分散性であり、皮膚表面上に得られる高分子フィルム塗膜の可撓性を増大させ、また、採用される量で、中等度から重度の皮膚刺激がないことにより測定される皮膚と適合性を示す、任意の材料を指すものである。好適な可塑剤は当該技術分野において既知であり、米国特許第2,784,127号及び同第4,444,933号(その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されているものが挙げられる。具体的な可塑剤としては、ほんの一例として、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリヘキシルシトレートブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルシトレート、ジエチレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。
【0049】
任意に、シアノアクリレート接着剤製剤は、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤(antimicrobial agents)等の治療薬を含んでいてもよい。
【0050】
本明細書に使用される場合、「抗菌剤」という用語は、病原菌(microbes)(すなわち、細菌、真菌、酵母菌、プリオン及びウイルス)を破壊することにより、それらの育成及びそれらの病原作用を防ぐ作用物質を指すものである。好ましい実施の形態では、シアノアクリレート組成物が、約0.01重量パーセント〜約5重量パーセントの抗菌物質(antimicrobial)を含有していてもよい。抗菌剤をシアノアクリレート組成物に添付することにより、重合シアノアクリレート組成物から抗菌物質が徐放されることで、術後感染を防止する量の抗菌物質がもたらされる。
【0051】
本発明の実施に有用なシアノアクリレート組成物は、米国特許第5,480,935号(その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす)にも開示されている。一実施の形態において、シアノアクリレート接着剤組成物は、抗菌に有効な量の適合性抗菌剤を更に含む。このような組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかとして、組成物の総重量に対して約0.1重量パーセント〜約40重量パーセント、例えば1重量パーセント〜30重量パーセント、又は5重量パーセント〜20重量パーセントの適合性抗菌剤を含んでいてもよい。適合性抗菌剤とは、シアノアクリレート組成物に可溶性又は分散性であり、シアノアクリレート組成物の早期重合を引き起こさず、哺乳動物の皮膚に塗布する場合にシアノアクリレート組成物の重合を妨げず、また、患者の皮膚との生体適合性を含む、使用目的に関する適合性を示すものである。好適なかかる組成物は、米国特許第5,762,919号(その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されている。
【0052】
生体適合性抗菌剤は、生体適合性ポリマーとのヨウ素分子錯体を含んでいてもよい。このような錯体は当該技術分野において既知であり、得られる錯体は通例、ともに利用可能なヨウ素及びヨウ化物アニオンを含むものである。これらの錯体は、哺乳動物の皮膚と接触すると、抗菌性のヨウ素源を供給する。好適な生体適合性ポリマーとしては、ほんの一例として、ヨウ素で錯化されるとBASF(米国ニュージャージー州マウントオリーブ)から入手可能なポビドンヨードという慣用名で称されることもあるポリビニルピロリドンポリマーが挙げられる。ポビドンヨードをシアノアクリレート組成物に使用する場合には、組成物の総重量に対して約5重量パーセント〜約40重量パーセント、例えば約10重量パーセント〜約25重量パーセントをシアノアクリレート組成物に添加することができる。
【0053】
他の好適な抗菌剤としては、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリイソシアネートで架橋された、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ビニルピロリドンとビニル官能基とのコポリマー、ピロリドンのポリマー等とのヨウ素分子錯体が挙げられる。
【0054】
組成物に適合性抗菌剤を使用すると、適合性抗菌剤が高分子フィルムから放出するため、フィルム下の微生物の成長が抑えられる。
【0055】
シアノアクリレート組成物との併用に適する他の薬剤としては、米国特許第5,962,010号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)においてGreff, et al.により記載されるような副腎皮質ホルモン剤(corticoid steroids:ステロイド剤)、及びリドカイン等の鎮痛剤化合物が挙げられる。前者は適用部位の炎症を軽減させるのに対し、後者は痛みを軽減させる。ステロイド剤と鎮痛剤との組合せも検討される。
【0056】
接着剤は、重合開始剤及び/又は促進剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0057】
ここで、ほんの一例として添付の図面を参照して本発明を更に説明する。